説明

皮脂分泌抑制剤及びそれを用いた飲食物及び組成物

【課題】皮脂分泌抑制剤及びそれを用いた飲食物及び組成物の提供を課題とする。
【解決手段】本発明者らは鋭意研究の結果、コラーゲンを加水分解したコラーゲンペプチドを経口摂取することにより、皮脂の分泌が抑制されることを見出し、コラーゲン加水分解物からなる経口用皮脂分泌抑制組成物及びそれを含有する飲食物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
皮脂分泌抑制剤及びそれを用いた飲食物及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮脂は、ヒト表皮に存在する脂質をいい、皮脂腺からの分泌物と表皮由来の脂質の混合物であり、トリグリセリド、脂肪酸、ワックスエステル、脂肪酸等で構成される。ヒト表皮には常時0.05〜0.4mg/cmの皮脂が存在するといわれる。皮脂は角層に湿度、柔軟性を与え、また、外部からの有害物質や細菌の侵入を防ぎ、体内からの水分などの物質の放出を防ぐ。皮脂の量は、体の部位、年齢、性別、季節、温度、摂取する脂肪の量などによって異なる。一般的に、ヒトでは男性の方が女性よりも皮脂量が多く、また、胎児及び新生児、思春期、また、中年以降の男性で多くなることが知られる。
【0003】
皮脂量は肌質を決める上で、大きな要素となる。皮脂量が多いと、脂っぽい肌に分類され、少ないと脂っぽくない肌に分類される。肌の脂っぽさが高くなると、皮膚がべたつき、本人が不快と感じるのみでなく、他人に不快感を与えることもある。また、皮脂量が過剰であると、皮脂が毛穴内に角質とともに蓄積し、にきびの発生を誘発する場合もある。
【0004】
そこで、皮脂分泌を抑制する皮脂分泌抑制剤が求められる。外用薬の皮脂分泌抑制剤は様々なものが存在するが、外用薬による抑制は根本的な解決に至らない場合が多く、経口投与が可能な皮脂分泌抑制剤が求められる。経口投与が可能な皮脂分泌抑制剤は、安全性を担保するために、食品あるいは天然物に由来する成分からなることが望ましい。そこで本発明は、コラーゲン分解物からなる、皮脂分泌抑制剤を提供する。
【0005】
食品あるいは天然物に由来する成分からなる経口投与される美肌組成物として、以下のものが報告されている。特許文献1はキウイ種子の極性溶媒抽出物を有効成分とする、美肌用組成物及び育毛剤を開示する。しかしながら、特許文献1は有効成分と皮脂分泌抑制との関連については、なんら言及していない。また、特許文献2はキウイフルーツの抽出物を含む脱毛および脂漏性皮膚疾患の予防および治療用組成物を開示する。しかし、特許文献2は主に脱毛の抑制を示すものであり、皮脂分泌抑制効果については、詳細な検討をしたものではない。
【0006】
コラーゲンまたはその分解物に関する経口投与される美肌組成物等としては、以下のものが報告されている。すなわち、特許文献3は鳥類の皮をプロテアーゼ等で消化して得られるコラーゲン、ヒアルロン酸等の成分を含む美肌組成物を開示する。特許文献4はコラーゲン等と、その他の物質からなる、経口用皮膚美容促進組成物を開示する。特許文献5はコラーゲンの加水分解物を含む組成物を開示する。しかしながら、これらのいずれも、コラーゲンあるいはコラーゲン分解物と皮脂分泌抑制の関連について、示唆または開示するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−99751
【特許文献2】特表2008−509905
【特許文献3】特開平11−308977
【特許文献4】特開2007−320891
【特許文献5】特開2008−194010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
皮脂分泌抑制剤及びそれを用いた飲食物及び組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意研究の結果、コラーゲンを加水分解したコラーゲンペプチドを経口摂取することにより、皮脂の分泌が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、コラーゲン加水分解物からなる経口用皮脂分泌抑制組成物及びそれを含有する飲食物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
コラーゲンは哺乳類の生体で総タンパクあたり占める割合が高く、安価に入手することができる。また、コラーゲンはゼラチンやにかわの原料であり、古くから食材として利用されるものであり、さらに、日常的にも肉の煮込みなどから摂取されるものであり、安全性が広く確認されている。
また、本発明の皮脂分泌抑制剤は、皮脂分泌効果が短期間で、しかも顕著に得られるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】パウダー試験食の摂取開始前、摂取中、及び摂取後の被験者の皮脂量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明のコラーゲン加水分解物からなる経口用皮脂分泌抑制組成物及びそれを含有する飲食物について説明する。
【0013】
コラーゲンは動物の結合組織を構成する主要タンパク質成分であり、コラーゲン三重らせん構造をもつことを特徴とする。コラーゲンは全部で30種類以上が報告されており、それぞれ、I型,II型のように呼ばれる。真皮、靱帯、腱、骨などではI型コラーゲンが、関節軟骨ではII型コラーゲンが主成分である。また、すべての上皮組織の裏打ち構造である基底膜にはIV型コラーゲンが主に含まれている。体内で最も豊富に存在しているのはI型コラーゲンである。
【0014】
本発明の皮脂分泌抑制組成物においては、コラーゲンの由来は特に限定されることなく、ウシやブタ等の哺乳類、ニワトリ、ダチョウ等の鳥類、サメ等の魚類等に由来するものを用いることができる。ウシ、ブタ、ニワトリなど家畜に由来するものは大量に入手しやすいため、特に好ましい。また、コラーゲンの型は特に限定されることなく、いずれの型も用いることができ、また、複数の型のコラーゲンの混合物であってもよい。
【0015】
本発明においてコラーゲン加水分解物(以下、コラーゲンペプチドという場合がある)とは、コラーゲンを酸、アルカリ、酵素等で加水分解して得られる低分子コラーゲンをいう。例えば、コラーゲン加水分解物は、豚、牛及び鶏などの動物の皮や関節または魚のうろこや皮を酸またはアルカリ性の液に浸漬し、抽出によりゼラチンを得て、これを酵素や酸で処理して得ることができる。なお、コラーゲンは不溶性であり、ゼラチンとは、コラーゲンを酸やアルカリで前処理後、熱加水分解をして可溶化したものを指す。
【0016】
また、本発明の皮脂分泌抑制組成物は経口用であるが、その形態は問わず、例えば、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤などの形態で投与されうる。さらには、本発明の皮脂分泌抑制組成物は飲食物に含有して投与されてもよく、その場合、含有されるべき飲食物は限定されず、例えば清涼飲料、栄養飲料、酒類、菓子、栄養食品、冷菓、乳製品、肉類等及びこれらの原料となる食品を挙げることができる。
【0017】
本発明の皮脂分泌抑制組成物は、皮膚から分泌される皮脂を抑制する組成物を指し、特に、皮膚が体のどの部位であるかは問わないが、皮脂腺が多い部位として知られる、顔面、頭部、前胸部、背面、腋、股陰部等は皮脂分泌が豊富であるから、これらの部位が対象として挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下に本発明の詳細を実施例を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0019】
[実施例1]
コラーゲン加水分解物としては、分子量20000以下の市販品の「コラーゲンペプチド」(豚)を用いた。用いたコラーゲンペプチドは豚の皮を酸またはアルカリ性の液に浸漬後、抽出によりゼラチンを得たものを、酵素分解したものである。なお、本コラーゲンペプチドは、主に豚のI型コラーゲンに由来する。
コラーゲンペプチドを含む試験食として、表1の組成からなる、パウダー試験食を調製した。パウダー試験食は1食あたりコラーゲンペプチド10000mgとビタミンC100mgを含有する。なお、ビタミンCはコラーゲンの生体内での合成に必要であることから加えている。
【0020】
【表1】

【0021】
20歳代及び30歳代の男性16名が被験者となり上記パウダー試験食を経口摂取した。被験者らは上記パウダー試験食1回分を牛乳、ジュースまたは味噌汁などに加えたものを、好きな時間帯に1日1食、12日間継続して摂取した。パウダー試験食の摂取開始前、摂取中、及び摂取終了後に、被験者の皮脂量を測定した。測定日は、午後1時にぬるま湯と洗顔フォームで洗顔を実施し、2時間後の午後3時付近に測定を行った。測定には光学式皮脂測定器Triplesense(株式会社モリテックス)を用い、被験者の顔の眼の下約3cmの箇所に測定器のセンサー部分を当てて測定し、測定機器で油分測定値として表示される値(任意単位a.u.)を皮脂量とした。なお、パウダー試験食の摂取前、被験者のうちの10名は皮脂量が40a.u.以上であり、6名は40a.u.未満であった。これらをそれぞれ、摂取前皮脂量≧40群、摂取前皮脂量<40群と呼ぶ。パウダー試験食摂取前、摂取開始から1週間後、2週間後、及び摂取終了後1週間後の、皮脂量の、被験者全体の平均値、摂取前皮脂量≧40群の平均値、摂取前皮脂量<40群の平均値を表2に示す。同じく結果をグラフにしたものを図1に示す。図1中、△は被験者全体の平均値を指し、○は摂取前皮脂量≧40群の皮脂量の平均値を、□は摂取前皮脂量<40群の皮脂量の平均値を示す。
【0022】
【表2】

【0023】
パウダー試験食の摂取後は、摂取前と比較して、皮脂量がいずれの群でも低下しており、パウダー試験食の摂取により、皮脂分泌が抑制されたことが示された。特に摂取前皮脂量≧40群において皮脂分泌抑制効果は顕著であり、もともと脂っぽい肌の人は特に効果を得やすいと考えられる。摂取後1週間ですでに効果が現れ、また、摂取後1週間が経過すると、再び皮脂量が上昇していることから、効果は比較的短期間に得られるものと考えられる。
パウダー試験食を全く摂取しない群についても、上記と同様な試験を行ったが、皮脂抑制効果は観察されなかった。
【0024】
以上の試験結果から得られた脱臭化コラーゲンペプチドを飲食品または組成物に適用した例を以下に示す。
実施例1で示した方法により調製した本発明品(コラーゲンペプチド)を用いて、以下の処方により、飲料、散剤、錠剤、チューインガム、キャンディ、錠菓、グミゼリー、チョコレート、シャーベットを製造した。
【0025】
[実施例2]
飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
果糖ぶどう糖液糖 8.0重量部
砂糖 4.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 0.5重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【0026】
[実施例3]
飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
スクラロース 0.005重量部
ステビオサイド 0.008重量部
レバウディオサイド 0.008重量部
アセスルファムカリウム 0.01重量部
ピーチ香料 0.5重量部
ビタミンC 0.5重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【0027】
[実施例4]
飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
酸性乳性飲料 5.0重量部
果糖ぶどう糖液糖 10.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 0.5重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【0028】
[実施例5]
飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
果糖ぶどう糖液糖 10.0重量部
蜂蜜 5.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 0.5重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【0029】
[実施例6]
ゼリー飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
スクラロース 0.005重量部
ステビオサイド 0.008重量部
レバウディオサイド 0.008重量部
アセスルファムカリウム 0.01重量部
ピーチ香料 0.5重量部
ビタミンC 0.5重量部
ゲル化用安定剤 0.5重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【0030】
[実施例7]
ゼリー飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
果糖ぶどう糖液糖 8.0重量部
砂糖 4.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 0.5重量部
ゲル化用安定剤 0.5重量部
酸味料を用いpH3.8に調整した後、精製水で100容量部とした。
【0031】
[実施例8]
コーヒー飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
コーヒーエキス 5.0重量部
砂糖 4.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 0.5重量部
重曹を用いpH6.5に調整した後、精製水で100容量部とした。
【0032】
[実施例9]
緑茶飲料の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
緑茶抽出液 10.0重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 0.5重量部
重曹を用いpH6.5に調整した後、精製水で100容量部とした。
【0033】
[実施例10]
散剤の処方
コラーゲンペプチド 90.0重量部
乳糖 5.0重量部
デキストリン 4.0重量部
ビタミンC 0.9重量部
【0034】
[実施例11]
錠剤の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
D−マンニトール 40.0重量部
乳糖 40.0重量部
結晶セルロース 10.0重量部
ビタミンC 0.05重量部
ヒドロキシプロピルセルロース 5.0重量部
【0035】
[実施例12]
チューインガムの処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
ガムベース 20.0重量部
砂糖 55.0重量部
グルコース 10.5重量部
水飴 9.0重量部
ビタミンC 0.05重量部
香料 0.5重量部
【0036】
[実施例13]
キャンディの処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
砂糖 50.0重量部
水飴 29.5重量部
香料 0.5重量部
ビタミンC 0.05重量部
水 15.0重量部
【0037】
[実施例14]
錠菓の処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
砂糖 73.5重量部
グルコース 17.0重量部
ショ糖脂肪酸エステル 0.2重量部
香料 0.2重量部
ビタミンC 0.05重量部
水 4.1重量部
【0038】
[実施例15]
グミゼリーの処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
ゼラチン 55.0重量部
水飴 23.0重量部
砂糖 8.5重量部
植物油脂 4.5重量部
マンニトール 3.0重量部
ビタミンC 0.05重量部
レモン果汁 1.0重量部
【0039】
[実施例16]
チョコレートの処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
粉糖 36.8重量部
カカオビター 20.0重量部
全脂粉乳 20.0重量部
カカオバター 17.0重量部
マンニトール 1.0重量部
ビタミンC 0.05重量部
香料 0.2重量部
【0040】
[実施例17]
シャーベットの処方
コラーゲンペプチド 5.0重量部
オレンジ果汁 25.0重量部
砂糖 23.0重量部
卵白 9.0重量部
ビタミンC 0.05重量部
水 38.0重量部
【0041】
以上の実施例により本発明を説明したが、これらにより本発明の実施の形態に何ら限定されることなく実施が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン加水分解物からなる経口用皮脂分泌抑制組成物。
【請求項2】
請求項1の経口用皮脂分泌抑制物を含有する飲食物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−136945(P2011−136945A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297848(P2009−297848)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(307013857)株式会社ロッテ (101)
【Fターム(参考)】