説明

皮膚または膣粘膜へ適用するための徐放性エマルジョン

本発明によるエマルジョンは、薬物を標的組織に送達する徐放性水中油型エマルジョンであって、高分子界面活性剤により安定化された疎水性内相中に完全に溶解した親油性活性成分を含有するものであり、疎水性液滴の周囲のこのポリマーの存在により、活性成分の親水性外相への移動、したがって、その再結晶化が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子界面活性剤により親水性外相から安定化された疎水性内相中に完全に溶解した水不溶性活性成分を含有する、皮膚または粘膜表面に適用するのに適した水中油型エマルジョンに関する。
【0002】
疎水性内相に閉じ込められ安定化した活性成分は親水性相へ移動せず、したがって40℃で6カ月間貯蔵しても再結晶化しない。
【背景技術】
【0003】
水不溶性活性成分は製剤化することが困難である。当技術分野において、薬物は同様の溶媒を使用することにより溶解できることが知られている。したがって、親油性薬物は、無極性溶媒、例えば油を使用することにより溶解する。
【0004】
皮膚または粘膜表面に適用する、水中油型または油中水型クリームおよびローションの形態の水中油型または油中水型組成物は、薬物の製剤化の魅力的な手段である。
【0005】
半固形エマルジョン(すなわち、クリームおよびローション)は、一方の相(分散または内相)が他方(連続または外相)に細かく分散している二相組成物である。分散相は、疎水性ベース(水中油型クリーム)でも水性ベース(油中水型クリーム)でもよい。クリームは、各相の間の界面を安定化するのに使用する系の性質に応じて水中油型または油中水型であることが知られている。
【0006】
適切な界面活性剤(すなわち、表面活性成分)の使用によりエマルジョンの物理的安定性が改善し、無極性および極性表面の間の接触角が低下し、したがって、相に溶解する活性成分が減少することが知られている。大部分の医薬エマルジョンにおいて、安定化系は、イオン性および非イオン性界面活性剤のいずれかからなる。しかし、界面活性剤分子は自己会合する傾向があり、ミセルまたはラメラ構造を形成し、エマルジョンの安定性を改変する。時間と共に、半固形物は、その物理的化学的性質(すなわち、粘度、外観および均一性)を改変する傾向があり、活性成分は、最終製品への均一な分布およびその送達などの性能を改変する他方の相への移動が原因で、再結晶化する傾向がある。
【0007】
水不溶性活性成分(シクロピロクスオラミン)を、水中油型エマルジョン(コカミドDEA(ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド)、ソルビタンモノステアレートおよびポリソルベート−60からなる乳化系がクリーム等を安定化するのに使用する標準的乳化系である)へ溶解することが教示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1により開示されている製剤は、活性成分が親水性外相へ移動し、そこで再結晶化する傾向があるという欠点を有する。
【0008】
標準的乳化系に基づいた水エマルジョンも開示されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第03/084538号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0075745号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0087564号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】R. Savic et al. J Drug Target, 2006:14(6):343-355
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、疎水性内相中に閉じ込められ安定化された活性成分が親水性相へ移動せず、したがって長期間貯蔵しても再結晶化しない水中油型エマルジョンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的であるO/Wエマルジョンは、内相の改質を回避する高分子界面活性剤を使用することにより安定化する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】各実施例(曲線A、B、C、およびD)における流動性曲線を示す。
【図2】各実施例(曲線A、B、C、およびD)における粘弾性曲線を示す。
【図3】本実施例1の組成物の50℃での貯蔵1週間後の写真である。
【図4】国際公開第03/084538号パンフレットの実施例1の組成物の50℃での貯蔵2時間後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
高分子界面活性剤という用語は、物理的および化学的特性を付与するのに十分な量で互いに結合した、1つもしくは複数の原子種の多数の繰返しまたは原子の群(繰返し構成単位)を特徴とする分子(1つまたは少数の繰返し構成単位の追加または除去に伴って顕著に変動しない)からなる物質を指す。高分子界面活性剤は、個々のブロックコポリマー(ユニマー)が非共有結合性の相互作用により共に保持される超分子自己集合を形成する(例えば、非特許文献1参照)。
【0015】
高分子界面活性剤の使用は、当技術分野において既に知られている。安定化系は、非イオン性ポリマー例えばポロキサマーブロックコポリマー)または高分子電解質(例えば、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸)またはこれらの混合物を含む。これらの分子を使用することにより作製されたエマルジョンはより安定である。
【0016】
Pemulen(登録商標)TR−1および2などのアクリル酸のポリマーは、非常に低い濃度(0.2〜0.5%(w/w)で使用することができ、分散疎水性相の液滴の周囲でゼリー化する。一般に、この種のポリマーは、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、有機アミン塩基、例えばトリエタノールアミン、トロメタミン、アミノメチルプロパノールなどを使用することにより「活性化」しなければならない。これらのポリマー活性化剤は、乳化ステップの前に既に水相中に存在しなければならない。活性化により、液滴の周囲で組織化するポリマーのコイル状の形態が非コイル状の形態に変換する。
【0017】
本発明において、特定の濃度での特定の高分子界面活性剤の使用により、最終製品の物理的特性が安定化する(すなわち、相が分離しない、またはその粘度が変化しない)だけではなく、驚くべきことに、活性成分の親水性外相への移動が回避される。したがって、活性成分は、40℃で6カ月間貯蔵した場合でさえ再結晶化しない。
【0018】
本発明によるO/Wエマルジョンは、ローション、クリームまたはゲルの形態であることが好ましく、好適なアプリケーターにより皮膚または膣腔に局所適用することが好ましい。
【0019】
これらのエマルジョンは、該エマルジョンの重量に対して1から40重量%、好ましくは5から30%、より好ましくは10から25%の間の範囲の量で疎水性内相を含有し、前記疎水性内相は、ベンジルアルコールおよび2−オクチルドデカノールを含有することが好ましく、より好ましくは重量換算で1:3から1:13、好ましくは1:5から1:11の範囲の比で含有し、好ましい比は1:5、1:10または1:11であり、疎水性内相は、中鎖モノ、ジおよびトリグリセリド(すなわち、6から12個の炭素原子を有するグリセロールのモノ、ジおよびトリ脂肪酸エステル)、ポリエチレングリコール、イソプロピルミリステート、鉱油、シリコーン油、植物油、例えば、ヤシ、綿実、落花生、オリーブ、パーム、ヒマワリ種子、ゴマ、トウモロコシ、ダイズ油など、またはそれらの混合物ないし組合せを含む群から選択されることが好ましい他の疎水性の添加物も含有し得る。
【0020】
該エマルジョンは、該エマルジョンの重量に対して60から99重量%、好ましくは70から95%、より好ましくは75から90%の間の範囲の量で親水性外相を含有し、前記親水性相は、低級アルカノール、多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはそれらの混合物、ならびに、好ましくは、80重量%以下、より好ましくは60重量%以下の精製水(特に好ましい実施形態によると、含水率は45%から60重量%である)を含有することが好ましく、重量パーセンテージは、親水性相の重量について意図したものである。
【0021】
本O/Wエマルジョンは、該エマルジョンの重量に対して0.50から2.50重量%、好ましくは1.00から2.00%の範囲の量で少なくとも1種の高分子界面活性剤を含有し、前記高分子界面活性剤は、アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレートクロスポリマー(すなわち、ペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋した、アクリル酸および長鎖アルキルメタクリレートの高分子量コポリマー)の群またはセルロースエーテル、例えば、アルキルセルロース、好ましくはメチルセルロース、およびヒドロキシアルキルセルロースヒドロキシプロピルメチルセルロース(好ましくはMethocel(登録商標)AおよびKタイプ)などの群から選択されることが好ましい。いずれのタイプのセルロースもセルロースの骨格を有するが、ヒドロキシプロピル対メトキシル置換基の比は異なる。
【0022】
これらの濃度は、親油性活性成分を閉じ込めるための「壁」の様な厚い層を液滴の周囲に得るのに重要である。中和剤の添加は、該系を安定化するのに必要ではない。
【0023】
該エマルジョンは、該エマルジョンの重量に対して0.5から1.5%の間の範囲の割合で生体/粘膜付着性成分を含有することができ、前記生体/粘膜付着性成分は、カルボマーの群から選択され、親水性相に分散している。
【0024】
該エマルジョンは、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピルセルロースを含む半合成セルロース、多糖類ガム、例えば、トラガカント、ペクチン、カラギーナンおよびグアーなど、アルギン酸およびそのナトリウム塩ならびにポロキサマーの群から選択されるゼリー化剤も含有し得る。
【0025】
該エマルジョンは、疎水性内相に溶解した少なくとも1種の水不溶性活性医薬成分を、該エマルジョンの重量に対して0.01から25重量%、好ましくは0.5から15%、より好ましくは1.0から10%の範囲の量で含有する。該活性成分は、特異的および非特異的感染症(例えば細菌、真菌および原虫が原因)または抗炎症薬において有用であることが好ましい。各組成物は、ホルモンを送達するのにも有用であり得る。該組成物は、従来の技法に従って調製され、相溶性の添加物および薬学的に許容される担体、例えばイオン化剤、抗酸化剤、キレート化剤、保湿剤、充血除去剤、保存剤、消毒薬および/または抗菌剤、矯味剤および着色剤を含有し得る。
【0026】
該組成物は、補完的、またはいずれにせよ有用な活性を有する他の活性成分も一緒に含有し得る。本発明に従って調製するこれらの組成物の例としては、ローション、クリームまたはゼリー状エマルジョンが挙げられる。
【0027】
本発明の医薬組成物およびその使用は、以下の実施例により詳細に記載する。しかし、そのような実施例は制限ではなく例示の手段として示すものであることに留意すべきである。
【実施例1】
【0028】
以下のw/w%組成を有するゼリー状水中油型エマルジョンを調製した。
1)シクロピロクスUSP 0.77%
2)ポリカルボフィル1 1.00%
3)グリセロールUSP 15.00%
4)落花生油 9.00%
5)アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレート2 1.00%
6)PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリド3 2.00%
7)プロピレングリコールUSP 25.00%
8)2−オクチルドデカノール4 11.00%
9)ベンジルアルコール 1.00%
10)精製水 34.23%
1Noveon AA1(登録商標)、2Pemulen TR−1、3Labrasol、4Eutanol G
【0029】
室温でシクロピロクスを磁気撹拌によりベンジルアルコールおよびオクチルドデカノールで溶解した。次いで、落花生油、LabrasolおよびPemulen TR−1を添加し混合して、均一な懸濁液を得た(相A)。グリセロール、プロピレングリコールおよび水を室温で混合した。(相B)。相Aを室温で相Bに添加し、均一な半固形の製剤が得られるまで高いrpmで混合した。ポリカルボフィルを添加し、均一なゼリー状エマルジョンが得られるまで製剤を穏やかに混合した。得られたゼリー状エマルジョンは白く、外観は均一であった。光学顕微鏡分析は、活性成分の結晶の存在を示さなかった。
【実施例2】
【0030】
以下のw/w%組成を有する水中油型ローション製剤を調製した。
1)シクロピロクスUSP 0.77%
2)グリセロールUSP 15.00%
3)落花生油 9.00%
4)PEG−6ステアレート(および)PEG−32ステアレート1 5.00%
5)アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレート2 2.00%
6)プロピレングリコールUSP 15.00%
7)鉱油 2.00%
8)2−オクチルドデカノール3 9.00%
9)ベンジルアルコール 1.00%
10)精製水 40.23%
1Tefose 1500(登録商標)、2Pemulen(登録商標)TR−1、3Eutanol G
【0031】
室温でシクロピロクスを磁気撹拌によりベンジルアルコールおよびオクチルドデカノールで溶解した。落花生油、鉱油およびPemulen TR−1を添加し混合した。Tefose 1500を溶融し、先の成分に添加し、均一な懸濁液が得られるまで混合した(相A)。グリセロール、プロピレングリコールおよび水を混合し、少し加熱した。(相B)。相Aを相Bに添加し、高いrpmで混合し、均一な半固形の製剤が得られるまで温度を低下させた。得られたローションは白く、外観は均一であり、約1500mPasの粘度を有していた。光学顕微鏡分析は、活性成分の結晶の存在を示さなかった。
【実施例3】
【0032】
以下のw/w%組成を有する水中油型クリーム製剤を調製した。
【0033】
1)ニフラテル 10.00%
2)グリセロールUSP 15.00%
3)扁桃油 3.00%
4)PEG−6ステアレート(および)グリコールステアレート(および)PEG−32ステアレート1 8.00%
5)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.00%
6)プロピレングリコールUSP 14.00%
7)鉱油 2.00%
8)2−オクチルドデカノール3 9.00%
9)ベンジルアルコール 1.00%
10)精製水 37.00%
1Tefose(登録商標)63、2Methocel(登録商標)K100、3Eutanol G
【0034】
室温でニフラテルを磁気撹拌によりベンジルアルコールおよびオクチルドデカノールで溶解した。落花生油、鉱油を添加し混合した。Tefose 1500を溶融し、先の成分に添加し、均一な懸濁液が得られるまで混合した(相A)。グリセロール、プロピレングリコールおよび水を混合し、少し加熱した。次いで、Methocel K100を溶解した(相B)。相Aを相Bに添加し、高いrpmで混合し、均一な半固形の製剤が得られるまで温度を低下させた。
【0035】
得られた水中油型クリームは、ニフラテルの存在により黄色であり、外観は均一であり、約1500mPasの粘度を有していた。光学顕微鏡分析は、活性成分の結晶の存在を示さなかった。
【実施例4】
【0036】
以下のw/w%組成を有する熱硬化性ゲルを調製した。
【0037】
1)シクロピロクスUSP 0.77%
2)PEG4001 10.00%
3)ポロキサマー4072 18.00%
4)ポリカルボフィル3 1.00%
5)ヒドロキシプロピルメチルセルロース4 1.00%
6)プロピレングリコールUSP 20.00%
7)鉱油 2.00%
8)2−オクチルドデカノール5 5.00%
9)ベンジルアルコール 1.00%
10)精製水 41.23%
1Lutrol E400、2 Lutrol F127、3Noveon AA1(登録商標)、4Methocel(登録商標)K100、5Eutanol G
【0038】
実施例4について記載したのと同じ方法を使用することにより製剤を調製した。得られたゲルは白く、外観は均一であった。光学顕微鏡分析は、活性成分の結晶の存在を示さなかった。
【実施例5】
【0039】
以下のw/w%組成を有する熱硬化性ゲルを調製した。
1)シクロピロクスUSP 0.77%
2)ポロキサマー4071 18.00%
3)ポリカルボフィル2 1.00%
4)アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレート3 1.00%
5)プロピレングリコールUSP 20.00%
6)イソプロピルミリステート4 5.00%
7)2−オクチルドデカノール5 10.00%
8)ベンジルアルコール 1.00%
9)精製水 43.23%
1Lutrol F127、2Noveon AA1(登録商標)、3Pemulen TR−1、4Crodamol IPM、5Eutanol G
【0040】
実施例1について記載したのと同じ方法を使用することにより製剤を調製した。得られたゲルは白く、外観は均一であった。光学顕微鏡分析は、活性成分の結晶の存在を示さなかった。
【実施例6】
【0041】
以下のw/w%組成を有するゼリー状水中油型エマルジョンを調製した。
1)エストラジオール 0.03%
2)ポリカルボフィル1 1.00%
3)グリセロールUSP 15.00%
4)落花生油 9.00%
5)アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレート2 1.00%
6)PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリド3 2.00%
7)プロピレングリコールUSP 25.00%
8)2−オクチルドデカノール4 11.00%
9)ベンジルアルコール 1.00%
10)精製水 34.97%
1Noveon AA1(登録商標)、2Pemulen TR−1、3Labrasol、4Eutanol G
【0042】
実施例1について記載したのと同じ方法を使用することにより製剤を調製した。得られたゼリー状エマルジョンは白く、外観は均一であった。光学顕微鏡分析は、活性成分の結晶の存在を示さなかった。
【実施例7】
【0043】
以下のw/w%組成を有する熱硬化性ゲルを調製した。
1)イミキモド 5.00%
2)ポロキサマー4071 18.00%
3)ポリカルボフィル2 1.00%
4)アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレート3 1.00%
5)プロピレングリコールUSP 25.00%
6)2−オクチルドデカノール4 10.00%
7)ベンジルアルコール 1.00%
8)精製水 39.00%
1Lutrol F127、2Noveon AA1(登録商標)、3Pemulen TR−1、4Eutanol G
【0044】
実施例1について記載したのと同じ方法を使用することにより製剤を調製した。得られたゲルは白く、外観は均一であった。光学顕微鏡分析は、活性成分の結晶の存在を示さなかった。
【実施例8】
【0045】
以下のw/w%組成を有するゼリー状水中油型エマルジョンを調製した。
1)アシクロビル 5.00%
2)ポリカルボフィル1 1.00%
3)グリセロールUSP 15.00%
4)落花生油 9.00%
5)アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレート2 1.00%
6)PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリド3 2.00%
7)プロピレングリコールUSP 20.00%
8)2−オクチルドデカノール4 11.00%
9)ベンジルアルコール 1.00%
10)精製水 34.00%
1Noveon AA1(登録商標)、2Pemulen TR−1、3Labrasol、4Eutanol G
【0046】
実施例1について記載したのと同じ方法を使用することにより製剤を調製した。得られたゼリー状エマルジョンは白く、外観は均一であった。光学顕微鏡分析は、活性成分の結晶の存在を示さなかった。
【実施例9】
【0047】
以下のw/w%組成を有するゼリー状水中油型エマルジョンを調製した。
1)メトロニダゾール 1.00%
2)ポリカルボフィル1 1.00%
3)グリセロールUSP 15.00%
4)落花生油 9.00%
5)アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレート2 1.00%
6)PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリド3 2.00%
7)プロピレングリコールUSP 25.00%
8)2−オクチルドデカノール4 11.00%
9)ベンジルアルコール 1.00%
10)精製水 34.00%
1Noveon AA1(登録商標)、2Pemulen TR−1、3Labrasol、4Eutanol G
【0048】
実施例1について記載したのと同じ方法を使用することにより製剤を調製した。得られたゼリー状エマルジョンは白く、外観は均一であった。光学顕微鏡分析は、活性成分の結晶の存在を示さなかった。
【実施例10】
【0049】
以下のw/w%組成を有するゼリー状水中油型エマルジョンを調製した。
1)クロトリマゾール 1.00%
2)ポリカルボフィル1 1.00%
3)グリセロールUSP 15.00%
4)落花生油 9.00%
5)アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレート2 1.00%
6)PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリド3 2.00%
7)プロピレングリコールUSP 25.00%
8)2−オクチルドデカノール4 11.00%
9)ベンジルアルコール 1.00%
10)精製水 34.00%
1Noveon AA1(登録商標)、2Pemulen TR−1、3Labrasol、4Eutanol G
【0050】
実施例1について記載したのと同じ方法を使用することにより製剤を調製した。得られたゼリー状エマルジョンは白く、外観は均一であった。光学顕微鏡分析は、活性成分の結晶の存在を示さなかった。
【実施例11】
【0051】
顕微鏡分析
活性成分の可溶化および貯蔵後の結晶の非存在を光学顕微鏡分析により調査した。利用した組成物は、実施例1、3、5および9に従って調製し、以下の水中油型クリームと比較した。
【0052】
【表1】

【0053】
少量の製品をガラススライドに慎重に適用し、20倍の対物レンズを使用することにより撮影した。画像分析ソフトウェアを使用して、試料の調製後すぐに撮影した様々な写真を比較し、活性成分が溶解したことを照明した。40℃での3および6カ月の貯蔵後にも写真を撮影して、活性成分の再結晶化を評価した。実施例1、3、5および9が完全に溶解した活性成分を含有し、40℃で6カ月後でさえ再結晶化しないと結論づけた。それとは反対に、水中油型クリームが最初に活性成分の完全な溶解を示した場合でさえ、40℃で6カ月後、内相に結晶が形成したことが観察された。
【実施例12】
【0054】
流体力学的評価
以下の項目を実施することにより各製剤の微細構造特性を評価した。
・ 流体力学的流動性試験:流動性曲線(流動性粘度)およびチキソトロピーの評価、
・ 動的機械的試験:製剤の小さい周期的変形の評価(構造の分解または再構成を判定する)。後者の場合、動的機械的「歪掃引」試験により、歪を加えながら、貯蔵弾性率G’(弾性挙動を示す)および損失弾性率G’’(動的粘性挙動の尺度)を評価した。弾粘性物質のエネルギー散逸率として動的粘度η’も調査した。
【0055】
流体力学的流動性試験
利用した組成物は以下の通りであった。
【0056】
市販の水中油型クリームと比較した実施例1、4、5および7。
コーン/プレートシステム(φ=35mm、角度=2°)および以下に記載のペルチェ温度コントローラーを備えたRheostress600レオメーターを使用することにより流動性曲線を求めた。
【0057】
ステップ1 剪断制御(CS)モード 0.000Pa〜1000.Pa 180.00s
ステップ2 速度制御(CR)モード 0.000 1/s〜250.0 1/s 120.00s
ステップ3 CRモード 250 1/s 30.00s
ステップ4 CRモード 250 1/s〜0.000 1/s 120.00s
【0058】
プラスチックスパチュラを使用することにより試料を低い方のプレートに適用して、製剤の剪断が絶対に起きないようにした。
【0059】
測定の全てのセットを25℃の一定の温度で少なくとも三重に実施した。結果(図1参照)は、実施例1(曲線B)に従って得られたゼリー状エマルジョンが、実施例5(曲線C)および実施例9(曲線D)に従って得られた単相ゲルに関する挙動より、実施例3(曲線A)に従って得られた水中油型エマルジョンの挙動に近い挙動を有していたことを示した。実際、曲線CおよびDから計算した高いチキソトロピー値(3×105Pa s-1超)は、応力を加えた後の単相ゲル構造の一般的な不十分な構造の回復を示し、単相ゲルネットワークは崩壊した。それとは反対に、ゼリー状エマルジョンのチキソトロピーは低く(1.8×104Pa s-1以下)、水中油型エマルジョンのチキソトロピーに非常に近く、応力を加えた後に良好な構造の回復を示した。
【0060】
動的機械的試験
利用した組成物は以下の通りであった。市販の水中油型クリームと比較した実施例1、4および5。
【0061】
コーン/プレートシステム(φ=35mm、角度=2°)および以下に記載のペルチェ温度コントローラーを備えたRheostress600レオメーターを使用することにより、振動応力掃引および周波数掃引測定を実施した。
【0062】
・ 振幅掃引調査:1Hzの一定の周波数で、増大する応力、0.000Paから1000Pa、に試料を曝した。この試験により、試料の線形の弾粘性領域の判定、したがって他方の振動試験で使用する応力値の必然的な選択が可能となった。
・ 周波数掃引調査:CSモード、100から0.1Hz、振幅掃引(G’線形領域)の結果から選択される剪断応力で実施する。
【0063】
全ての測定は、各試験項目について少なくとも三重に、および25℃の一定の温度で実施した。
結果は図2に示している。
【0064】
結果(図2参照)は、実施例1(曲線B)に従って得られたゼリー状エマルジョンが中間の線形の粘弾性挙動(δ°≒20)を有していたことを示した。実施例3(曲線A、δ°≒100)に従って得られた水中油型エマルジョンおよび実施例3および実施例9(それぞれ曲線CおよびD、いずれの場合もδ°≒5)に従って得られた2つの単相ゲルと比較して、ゼリー状エマルジョンの最内側の中間構造を確認した。
【実施例13】
【0065】
放出プロファイル
利用した組成物は以下の通りであった。市販のゲルと比較した実施例1および7。
エンハンサーセルを備えたUSP XXIV溶出装置2を使用することによりAPIの放出を評価した。製剤を正確に計り、エンハンサーセルに充填した。したがって、半固形物の上面のみが、GHP円盤膜(孔径:0.45μm)により分離した溶出溶媒リン酸緩衝液pH4.5と接触していた。
【0066】
エンハンサーセルは、37℃の温度で500mlの溶出溶媒を含有する容器の底に沈降した。セル表面と撹拌パドル(50rpm)の間の距離は2cmであった。UV分析をλ=305nmで5分毎に合計で10時間実施した。
【0067】
結果は、本発明の目的である製剤からの活性成分の放出が、一般的ゲルまたはクリームからの放出より遅いことを示す。
【実施例14】
【0068】
顕微鏡分析
活性成分の可溶化および貯蔵後の結晶の非存在を光学顕微鏡分析により調査した。
【0069】
本実施例1の組成物を国際公開第03/084538号パンフレットの実施例1の組成物と比較した。
【0070】
少量の組成物をガラススライドに慎重に適用し、20倍の対物レンズおよび偏光フィルターを使用することにより写真を撮影した。
【0071】
画像分析ソフトウェアを使用して、試料の調製後すぐに撮影した様々な写真を比較した。図3は、本実施例1の組成物の50℃での貯蔵1週間後の写真を示し、図4は、国際公開第03/084538号パンフレットの実施例1の組成物の50℃での貯蔵2時間後の写真を示す。
【0072】
2つの写真を比較すると、本発明による組成物が完全に溶解した活性成分を含有し、該活性成分が50℃で1週間後に再結晶化しないと結論づけることができる。それとは反対に、国際公開第03/084538号パンフレットの実施例1の組成物に関しては、50℃でわずか2時間後に内相に結晶が形成し、エマルジョンのミセル構造を崩壊および破壊する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1から40重量%の量の疎水性内相、
(ii)60から99重量%の量の親水性外相、
(iii)0.50から2.50重量%の量の少なくとも1種の高分子界面活性剤、および
(iv)0.01から25重量%の量の少なくとも1種の水不溶性活性成分、
を含有する水中油型エマルジョン。
【請求項2】
前記疎水性内相が、5から30重量%、好ましくは10から25重量%の量で存在する、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
前記疎水性内相が、ベンジルアルコールおよび2−オクチルドデカノールを含有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項4】
重量比ベンジルアルコール:2−オクチルドデカノールが1:3から1:13、好ましくは1:5から1:11の範囲である、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項5】
前記親水性外相が、70から95重量%、好ましくは75から90重量%の量で存在する、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項6】
前記親水性外相が、最大で80重量%の量の水を含有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項7】
前記親水性外相が、最大で60重量%の量の水を含有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項8】
前記親水性外相が、低級アルカノール、多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはそれらの混合物を含有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項9】
前記高分子界面活性剤が、1.00から.2.00重量%の量で存在する、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項10】
前記高分子界面活性剤が、アクリレート/C10〜C30アルキルアクリレートクロスポリマーおよび/またはセルロースエーテルの群から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項11】
前記セルロースエーテルが、アルキルセルロース、好ましくはメチルセルロース、およびヒドロキシアルキルセルロース、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される、ことを特徴とする請求項10に記載のエマルジョン。
【請求項12】
中和剤を含有しない、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項13】
生体/粘膜付着性成分、好ましくはカルボマーを、0.5から1.5重量%の量で存在する、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項14】
前記水不溶性活性成分が、0.5から15重量%、好ましくは1.0から10重量%の量で存在する、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項15】
前記水不溶性活性成分が、抗菌薬、抗真菌薬、抗原虫薬、抗炎症薬およびホルモンから選択されることを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項16】
前記水不溶性活性成分が、シクロピロクス、ニフラテル、エストラジオール、イミキモド、アシクロビル、メトロニダゾールおよびクロトリマゾールから選択される、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項17】
ローション、クリームまたはゲルである、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項18】
皮膚または膣腔への局所適用用の前記請求項1〜17のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項19】
膣感染症および/または膣炎症の治療用の前記請求項1〜18のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項20】
前記膣感染症が、細菌、真菌または原虫由来である、ことを特徴とする請求項19に記載のエマルジョン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−505171(P2012−505171A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530445(P2011−530445)
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062190
【国際公開番号】WO2010/040632
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(503459992)ポリケム・エスエイ (16)
【Fターム(参考)】