説明

皮膚化粧料及び飲食品

【課題】安全性の高い天然抽出物を有効成分とする抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤及びサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、並びに当該天然抽出物を配合した皮膚化粧料及び飲食品を提供する。
【解決手段】本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤に、ビワの花部からの抽出物を含有せしめる。また、本発明の皮膚化粧料又は飲食品に、ビワの花部からの抽出物を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤及びサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、並びに皮膚化粧料及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に生体成分を酸化させる要因として、活性酸素が注目されており、その生体への悪影響が問題となっている。活性酸素は、生体細胞内のエネルギー代謝過程で生じるものであり、活性酸素としては、スーパーオキサイド(すなわち酸素分子の一電子還元で生じるスーパーオキシドアニオン:・O)、過酸化水素(H)、ヒドロキシラジカル(・OH)及び一重項酸素()等が挙げられる。これらの活性酸素は、食細胞の殺菌機構にとって必須であり、ウィルスや癌細胞の除去に重要な働きを果たしている。
【0003】
しかしながら、活性酸素の過剰な生成は、生体内の膜や組織を構成する生体内分子を攻撃し、各種疾患を誘発する。通常、生体内で生産され、他の活性酸素の出発物質ともなっているスーパーオキサイドは、細胞内に含まれているスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)の触媒作用により逐次消去されているが、スーパーオキサイドの産生が過剰である場合、又はSODの作用が低下している場合には、スーパーオキサイドの消去が不十分となり、スーパーオキサイド濃度が高くなり、これが関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、しわ、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等を引き起こす。
【0004】
特に、皮膚は、紫外線等の環境因子の刺激を直接受けることから、スーパーオキサイドが生成しやすい器官であるため、スーパーオキサイド濃度の上昇により、例えば、コラーゲン等の生体組織を分解し、変性し又は架橋したり、油脂類を酸化して細胞に障害を与える過酸化脂質を生成したりすると考えられており、活性酸素によって引き起こされる障害が、皮膚のしわ形成や皮膚の弾力低下等の老化の原因になるものと考えられている(非特許文献1参照)。したがって、活性酸素や生体内ラジカルの生成を阻害・抑制することにより、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素が関与する各種障害を予防、治療又は改善できるものと考えられる。
【0005】
そこで、活性酸素消去物質、ラジカル消去物質等を安全性の点で有利な天然物から得る試みがなされており、このような作用を有するものとして、アブラナ科ブラシカ属植物からの抽出物(特許文献1参照)等が知られている。
【0006】
炎症性疾患、例えば、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れを伴う各種皮膚疾患等の原因及び発症機構は、多種多様である。その原因として、主にマクロファージから産生される腫瘍壊死因子(以下「TNF−α」と称することもある。)によるもの、ヒアルロニダーゼの活性の亢進によるもの、及びヒスタミンの遊離によるもの等が知られている。
【0007】
TNF−αは、腫瘍を壊死させる因子として見出されたが、最近では腫瘍に対してだけでなく、正常細胞の機能を調節するメディエーター的な役割を担うサイトカインであると考えられている。TNF−αは、炎症の初発から終息までの過程において重要な役割を担っているが、その持続的かつ過剰な産生は、皮膚を含む組織の障害を引き起こし、全身的には発熱やカクケシアの原因となり、炎症の悪化を引き起こす。このような炎症としては、例えば、関節リウマチ、変形性関節症等の慢性炎症性疾患が代表的である。したがって、病的な炎症においては、TNF−αの過剰な産生を抑制することが重要となる。このようなTNF−α産生抑制作用を有するものとして、例えば、シソ抽出液(非特許文献2参照)、ヒガンバナ科アルカロイドのリコリン及びリコシジノール(非特許文献3参照)等が知られている。
【0008】
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸の加水分解酵素である。体組織への親和性を保つヒアルロン酸塩は、含水系の中では紫外線、酸素等によって分解され、分子量の低下に伴って保水効果も減少する。また、ヒアルロン酸は、生体内において細胞間組織として存在し、血管透過性にも関与している。さらに、ヒアルロニダーゼは、肥満細胞中に存在するが、その活性化により起こる脱顆粒により遊離され、炎症系ケミカルメディエーターとして作用する。したがって、ヒアルロニダーゼの活性を阻害することで、保湿の強化及び炎症の予防・軽減が期待される。このようなヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有するものとして、例えば、オスベッキア属植物の抽出物(特許文献2参照)、藤茶抽出物(特許文献3参照)等が知られている。
【0009】
ヒスタミン遊離は、肥満細胞内のヒスタミンが細胞外に遊離する現象であり、遊離されたヒスタミンが炎症反応を引き起こす。そのため、ヒスタミン遊離を阻害又は抑制する物質により、アレルギー性疾患及び炎症性疾患を予防又は治療する試みがなされている。しかし、ヒスタミンの遊離を直接的に評価することは困難であり、ヒスタミンの遊離と同時に遊離されることが確認されているヘキソサミニダーゼの遊離を指標にヒスタミンの遊離を評価することができる。したがって、ヘキソサミニダーゼの遊離を抑制することにより、同時にヒスタミンの遊離も抑制でき、これにより炎症性疾患等の予防、治療又は改善に効果があるものと考えられる。このようなヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を有する植物抽出物としては、上記藤茶からの抽出物(特許文献3参照)等が知られている。
【0010】
皮膚においてメラニンは、紫外線から生体を保護する役目も果たしているが、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化やシミの原因となる。一般にメラニンは、色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、ついで5,6−ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成されるものとされている。したがって、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)、シミ、ソバカス等を予防、治療又は改善するためには、メラニンの産生に関与するチロシナーゼの活性を阻害すること、又はメラニンの産生を抑制することが考えられる。
【0011】
従来、皮膚色素沈着症、シミ、ソバカス等の予防、治療又は改善には、ハイドロキノン等の化学合成品を有効成分とする美白剤を外用する処置が行われてきた。しかしながら、ハイドロキノン等の化学合成品は、皮膚刺激、アレルギー等の副作用のおそれがある。そこで、安全性の高い天然原料を有効成分とする美白剤の開発が望まれており、チロシナーゼ活性阻害作用を有するものとしては、例えば、藤茶抽出物(特許文献4参照)、ヤナギタデ抽出物(特許文献5参照)等が知られている。また、メラニン産生抑制作用を有するものとしては、例えば、トウゴマ根部からの抽出物(特許文献6参照)、サウスウレア(Saussurea)属に属する植物からの抽出物(特許文献7参照)等が知られている。
【0012】
従来の美白剤開発は、メラニン生成の律速酵素であるチロシナーゼに注力して進められてきたが、近年、紫外線(UV−B)照射後に表皮ケラチノサイトから産生され、メラノサイトを活性化するサイトカインとして、α−メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)、エンドセリン−1(ET−1)、一酸化窒素(NO)等が知られており、これらが関与する情報伝達系を遮断することによりメラニンの産生を抑制して美白効果を導く各種作用剤の開発が盛んに行われてきている。
【0013】
また、循環器系疾患(例えば、心筋梗塞、高血圧、虚血性心疾患等)や腎疾患(例えば、急性腎不全等)の患者において、血中エンドセリン−1(ET−1)濃度が上昇していることが知られているため、エンドセリン−1(ET−1)の過剰分泌を抑制すること、すなわちエンドセリン−1mRNAの発現上昇を抑制することによって、これらの疾患の予防・治療効果が期待できると考えられる。
【0014】
このような考えに基づき、エンドセリン−1(ET−1)のメラノサイトへの作用を阻害する生薬としては、カミツレ抽出物・アルテア抽出物(非特許文献4参照)等が知られており、表皮ケラチノサイトからのエンドセリン−1(ET−1)産生を抑制する生薬としては、ジユ抽出物(非特許文献4参照)、β−グリチルレチン酸ステアリル(特許文献8参照)等が知られている。
【0015】
幹細胞増殖因子(Stem Cell Factor,SCF)は、Must Cell Growth Factor、C-Kit Ligand、Steel Factor等とも呼ばれ、角化細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、骨髄ストローマ細胞等から産生されるタンパク質である。SCFは、多能性造血幹細胞、生殖細胞、肥満細胞、巨核球系前駆細胞、顆粒球・マクロファージ系前駆細胞、色素細胞等の増殖や分化を促進する作用を有することが知られている。また、SCFは、シミ部位や紫外線照射等によって発現が亢進することが知られている(非特許文献5参照)。
【0016】
SCFとしては、273のアミノ酸残基からなる膜結合型SCFと、タンパク質分解酵素の作用により切断され、膜から遊離する分泌型SCFとが知られている。膜結合型SCFは、角化細胞等に結合したまま色素細胞のSCFレセプターに結合し、色素細胞の増殖を促進する。また、分泌型SCFは、その結合部位にて切断され、細胞膜から遊離し、色素細胞のSCFレセプターに結合することによって、色素細胞の増殖を促進する。さらに、SCFは、急性骨髄性白血病患者において、インターロイキン−3(Interleukin-3,IL−3)や顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子(Granulocyte Macrophage Colony Stimulating Factor,GM−CSF)の共存下で骨髄芽球の増殖を促進することが知られている(非特許文献6参照)。
【0017】
そのため、SCFの異常産生は、色素細胞の異常増殖につながり、メラニン産生を亢進させ、シミ、ソバカス、くすみ等の原因となると考えられる。また、SCFの異常産生は、骨髄芽球の異常増殖につながり、それにより骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病(AML)等の疾患を引き起こすものと考えられる。
【0018】
したがって、SCFmRNAの発現上昇を抑制することは、色素細胞の増殖を抑制し、皮膚におけるメラニンの過剰産生を抑制し、日焼け後の色素沈着、シミ、ソバカス等の予防又は抑制に有用であると考えられる。また、SCFmRNAの発現上昇を抑制することは、骨髄芽球の異常増殖を抑制し、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病等の予防又は治療に有用であると考えられる。
【0019】
このような考えに基づき、SCFの産生・放出を抑制する作用を有するものとして、例えば、アルニカからの抽出物等が知られている(特許文献9参照)。
【0020】
皮膚表皮細胞から分泌されてメラニンの生成に関与するホルモンであるACTHやメラノサイトを活性化するサイトカインとしてのα−MSHは、プロオピオメラノコルチン(POMC)を前駆体として産生されることが知られている。そのため、POMCの産生を抑制すること、すなわちPOMCmRNAの発現上昇を抑制することで、結果的にメラニンの生成を抑制することができ、日焼け後の色素沈着、シミ、ソバカス等を予防又は改善することができると考えられる。
【0021】
従来、POMCの発現を抑制する作用を有するものとしては、例えば、パンテノール、塩酸ピリドキシン及びニコチン酸アミド等が知られている(特許文献10参照)。
【0022】
皮膚の老化には、様々な因子が複雑に関与している。皮膚の老化の予防又は遅延を目的として、例えば、皮膚に存在し皮膚の分解に関与するマトリックス系プロテアーゼの活性阻害等が盛んに研究されている。
【0023】
皮膚の表皮及び真皮は、表皮細胞、線維芽細胞及びこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するエラスチン、コラーゲン等の細胞外マトリックスにより構成されている。若い皮膚においては、これら皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
【0024】
ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、細胞外マトリックスの主要構成成分であるエラスチンが分解・変質し、また、コラーゲンの産生量が減少するとともに架橋による弾力性低下を引き起こす。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、角質の異常剥離が生じるため、肌は、張りや艶を失い、肌荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。このように、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等には、コラーゲン、エラスチン等の真皮マトリックス成分の減少、変性等が関与している。
【0025】
近年、皮膚の老化に伴う変化を誘導する因子として、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs;Matrix metalloproteinases)の関与が指摘されている。このMMPsの中でも、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)は、皮膚の真皮細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲンを分解する酵素として知られているが、その発現は紫外線の照射により大きく増加し、コラーゲンの減少・変性の一因となり、皮膚のシワの形成、弾力性の低下等の大きな要因となると考えられている。したがって、MMP−1の活性を阻害することは、皮膚の老化症状を予防・改善する上で重要である。このようなMMP−1阻害作用を有するものとしては、例えば、ヒマラヤザクラからの抽出物(特許文献11参照)、ショウガ科ジンギバーカッサムナー又はクワ科フィカスネリフォリアからの抽出物(特許文献12参照)等が知られている。
【0026】
皮膚の構造は、大きく分けて、表皮、基底膜、真皮、皮下組織からなり、このうちの基底膜は、皮膚の構造、恒常性の維持にとってきわめて重要な役割を果たしている。したがって、基底膜の構造が変化すると、しわ、たるみ等の皮膚の老化症状を呈するようになる。特に、基底膜の主要成分であるIV型コラーゲンの産生量が減少すると、基底膜の構造が変化し、しわ、たるみ等の皮膚の老化症状を呈するようになる。
【0027】
また、皮膚の真皮は、繊維芽細胞及びこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するエラスチン、ヒアルロン酸、I型コラーゲン等の細胞外マトリックスにより構成されている。そのため、真皮は、皮膚の張りや艶に必要な、水分保持、柔軟性、弾力性の確保に重要な役割を果たしている。したがって、紫外線の照射や、乾燥等、ある種の外的因子の影響、加齢等によりI型コラーゲンの産生量が減少すると、真皮の構造が変化し、保湿機能の低下、肌の弾力性の低下、張りや艶の低下等の皮膚の老化症状を呈するようになる。
【0028】
従来、コラーゲン産生促進作用を有するものとしては、五斂子抽出物(特許文献4参照)、加水分解カゼイン、ブナの芽、エリスリナ、可溶性卵殻膜、カッコン、西洋キヅタよりなる群から選ばれる植物及び動物由来の抽出物等が知られている(特許文献13参照)。
【0029】
皮膚に紫外線が照射されると、皮膚の細胞は障害を受けたり、細胞死が引き起こされたりし、肌は張りや弾力を失い、肌荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。したがって、紫外線の照射によるダメージ(例えば、細胞障害、細胞死等)を抑制・回復することによって、皮膚の老化の予防・改善が期待できる。紫外線照射によるダメージ回復作用を有するものとして、例えば、油溶性甘草抽出物(特許文献14参照)等が知られている。
【0030】
近年、飽食や運動不足等の生活習慣が原因となって体脂肪が増加し、肥満が増えている。このような肥満の増加は、人間ばかりでなく、ペットや家畜においても見られる。肥満は、高脂血症や動脈硬化等の成人病の原因になるため、美容の面で問題となるばかりでなく、健康の面でも大きな問題となる。
【0031】
生体内の脂肪を分解するためには、サイクリックAMPの役割が重要となる。サイクリックAMPは生体内に存在するリパーゼを活性化し、活性化されたリパーゼによって脂肪が脂肪酸とグリセロールとに分解される。しかし、サイクリックAMPホスホジエステラーゼが活性化されるとサイクリックAMPの分解が誘発され、リパーゼの活性化が阻害される。そのため、サイクリックAMPホスホジエステラーゼの活性を阻害することにより細胞内におけるサイクリックAMPが増量し、脂肪の分解を促進することができるものと考えられる。このようなサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有するものとして、ピーナッツ渋皮抽出物(特許文献15参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2003−81848号公報
【特許文献2】特開2003−55242号公報
【特許文献3】特開2003−12532号公報
【特許文献4】特開2002−370962号公報
【特許文献5】特開2004−83488号公報
【特許文献6】特開2001−213757号公報
【特許文献7】特開2002−201122号公報
【特許文献8】特開2004−300048号公報
【特許文献9】特開2008−169118号公報
【特許文献10】特開2007−176810号公報
【特許文献11】特開2003−176232号公報
【特許文献12】特開2003−176230号公報
【特許文献13】特開2004−18471号公報
【特許文献14】特開2004−250368号公報
【特許文献15】特開2004−26719号公報
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】「フレグランスジャーナル臨時増刊」,1995年,No.14,p.156
【非特許文献2】「炎症」,1993年,Vol.13,No.4,p.337-340
【非特許文献3】「薬学雑誌」,2001年,Vol.121,No.2,p.167-171
【非特許文献4】「フレグランスジャーナル」,2000年,第28巻,第9号,p.65−71
【非特許文献5】Hachiya A et al.,J. Invest. Dermatol.,No.116,2001,p.578-586
【非特許文献6】Virginia C. Broudy et al.,Blood,Vol.80,No.1,1992,p.60-67
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明は、安全性の高い天然抽出物及び/又は天然抽出物由来成分を有効成分とする抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤及びサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、並びに当該天然抽出物及び/又は当該天然抽出物由来成分を配合した皮膚化粧料及び飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記目的を達成するために、抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、ビワの花部からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。また、本発明の皮膚化粧料又は飲食品は、ビワの花部からの抽出物を配合したことを特徴とする。
【0036】
本発明の抗酸化剤においては、前記ビワの花部からの抽出物が、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を有するのが好ましく、本発明の抗炎症剤においては、前記ビワの花部からの抽出物が、腫瘍壊死因子(TNF−α)産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用及びヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有するのが好ましく、本発明の美白剤においては、前記ビワの花部からの抽出物が、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制作用及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現上昇抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有するのが好ましく、本発明の抗老化剤においては、前記ビワの花部からの抽出物が、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用及び紫外線照射によるダメージ回復作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、天然物であるビワの花部からの抽出物を有効成分として含有し、安全性の高い抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、皮膚化粧料及び飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
〔抗酸化剤,抗炎症剤,美白剤,抗老化剤,抗肥満剤,サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤〕
本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、ビワの花部からの抽出物を有効成分として含有する。
【0039】
ここで、本発明において「抽出物」には、ビワ(学名:Eriobotrya japonica)の花部を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0040】
ビワ(Eriobotrya japonica)は、バラ科ビワ属に属する常緑高木であり、中国南西部原産であり、長崎、千葉、鹿児島等で栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用するビワの構成部位は花部である。ここで、「花」とは、一般に、種子植物の有性生殖にかかわる器官の総体をいい、葉の変形である花葉と茎の変形である花軸とから構成され、花葉には、萼、花弁、雄しべ、心皮等の器官が含まれる。本発明において抽出原料として使用する「花部」には、種子植物の有性生殖にかかわる器官の総体の他、その一部、例えば、花葉、花被(萼と花冠)、花冠、花弁等も含まれる。
【0041】
ビワの花部からの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。この際、抽出原料の乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機により行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、抽出原料の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0042】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0043】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0044】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0045】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10〜90容量部を混合することが好ましい。
【0046】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0047】
精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。得られた抽出液はそのままでも抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0048】
ビワの花部からの抽出物は、特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料又は飲食品に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。なお、ビワの花部からの抽出物は、薄い茶色を呈し、その色調が薄いため、ビワの花部からの抽出物の皮膚化粧料又は飲食品への配合量を増加させたとしても、皮膚化粧料又は飲食品の色調に影響を与えるおそれがない。
【0049】
上記のようにして得られるビワの花部からの抽出物は、抗酸化作用、抗炎症作用、美白作用、抗老化作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有しているため、それぞれの作用を利用して抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害剤の有効成分として用いることができる。
【0050】
ビワの花部からの抽出物が有する抗酸化作用は、例えば、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用に基づいて発揮される。ただし、ビワの花部からの抽出物が有する抗酸化作用は、これらの作用に基づいて発揮される抗酸化作用に限定されるものではない。
【0051】
ビワの花部からの抽出物が有する抗炎症作用は、例えば、腫瘍壊死因子(TNF−α)産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用及びヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用に基づいて発揮される。ただし、ビワの花部からの抽出物が有する抗炎症作用は、これらの作用に基づいて発揮される抗炎症作用に限定されるものではない。
【0052】
ビワの花部からの抽出物が有する美白作用は、例えば、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制作用及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現上昇抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用に基づいて発揮される。ただし、ビワの花部からの抽出物が有する美白作用は、これらの作用に基づいて発揮される美白作用に限定されるものではない。
【0053】
ビワの花部からの抽出物が有する抗老化作用は、例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用及び紫外線照射によるダメージ回復作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用に基づいて発揮される。ただし、ビワの花部からの抽出物が有する抗老化作用は、これらの作用に基づいて発揮される抗老化作用に限定されるものではない。
【0054】
ビワの花部からの抽出物が有する抗肥満作用は、例えば、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用に基づいて発揮される。ただし、ビワの花部からの抽出物が有する抗肥満作用は、この作用に基づいて発揮される抗肥満作用に限定されるものではない。
【0055】
なお、ビワの花部からの抽出物は、活性酸素消去作用、ラジカル消去作用、腫瘍壊死因子(TNF−α)産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制作用、プロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現上昇抑制作用、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用又は紫外線照射によるダメージ回復作用を有するため、それらの作用を利用して、活性酸素消去剤、ラジカル消去剤、腫瘍壊死因子(TNF−α)産生抑制剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、チロシナーゼ活性阻害剤、メラニン産生抑制剤、エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制剤、プロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現上昇抑制剤、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害剤、I型コラーゲン産生促進剤、IV型コラーゲン産生促進剤又は紫外線照射によるダメージ回復剤の有効成分として使用してもよい。
【0056】
また、ビワの花部からの抽出物は、そのエンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用を利用して、エンドセリン−1mRNAの発現上昇に起因する疾患の予防・治療剤(例えば、心筋梗塞、高血圧等の循環器系疾患の予防・治療剤等)の有効成分として用いることもできる。
【0057】
さらに、ビワの花部からの抽出物は、そのSCFmRNA発現上昇抑制作用を利用して、SCFmRNAの発現上昇に起因する疾患の予防・治療剤(例えば、骨髄異形成症候群予防・治療剤、急性骨髄性白血病予防・治療剤、抗腫瘍剤等)の有効成分として用いることもできる。
【0058】
さらにまた、ビワの花部からの抽出物は、そのPOMCmRNA発現上昇抑制作用を利用して、POMCmRNAの発現上昇に起因する疾患(例えば、ストレス性の皮膚掻痒症等)の予防・治療剤の有効成分として用いることもできる。
【0059】
本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害剤は、ビワの花部からの抽出物のみからなるものであってもよいし、ビワの花部からの抽出物を製剤化したものであってもよい。
【0060】
ビワの花部からの抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。また、ビワの花部からの抽出物は、他の組成物(例えば、皮膚化粧料、飲食品等)に配合して使用することができる。
【0061】
なお、本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、必要に応じて、抗酸化作用、抗炎症作用、美白作用、抗老化作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有する他の天然抽出物等を配合して有効成分として用いることができる。
【0062】
本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の投与方法としては、一般に経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。
【0063】
また、本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0064】
本発明の抗酸化剤は、ビワの花部からの抽出物が有する活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を通じて、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素が関与する各種障害を予防・改善することができる。ただし、本発明の抗酸化剤は、これらの用途以外にも活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0065】
本発明の抗炎症剤は、ビワの花部からの抽出物が有する腫瘍壊死因子(TNF−α)産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用及びヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れを伴う各種炎症性皮膚疾患等を予防・改善することができる。ただし、本発明の抗炎症剤は、これらの用途以外にも腫瘍壊死因子(TNF−α)産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用及びヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0066】
本発明の美白剤は、ビワの花部からの抽出物が有するチロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制作用及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現上昇抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着を予防・改善することができる。ただし、本発明の美白剤は、これらの用途以外にもチロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制作用及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現上昇抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0067】
本発明の抗老化剤は、ビワの花部からの抽出物が有するマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用及び紫外線照射によるダメージ回復作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、皮膚の老化症状等を予防・改善することができる。ただし、本発明の抗老化剤は、これらの用途以外にもマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用及び紫外線照射によるダメージ回復作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0068】
本発明の抗肥満剤は、ビワの花部からの抽出物が有するサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を通じて、サイクリックAMPの産生を促進し、脂肪細胞の分解をすることができ、この結果、肥満症、それに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な疾病を予防・改善することができる。ただし、本発明の抗肥満剤は、これらの用途以外にもサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0069】
本発明のサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害剤は、ビワの花部からの抽出物が有するサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を通じて、サイクリックAMPの産生を促進し、脂肪細胞の分解を促進することができ、この結果、肥満症、それに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な疾病を予防・改善することができる。ただし、本発明のサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害剤は、これらの用途以外にもサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0070】
〔皮膚化粧料〕
ビワの花部からの抽出物は、抗酸化作用、抗炎症作用、美白作用、抗老化作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有しており、皮膚に適用した場合の使用感又は安全性に優れているため、皮膚化粧料に配合するのに好適である。
【0071】
この場合において、皮膚化粧料には、ビワの花部からの抽出物をそのまま配合してもよいし、ビワの花部からの抽出物から製剤化した抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を配合してもよい。
【0072】
ビワの花部からの抽出物、又は当該ビワの花部からの抽出物から製剤化した抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤若しくはサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を配合することにより、皮膚化粧料に抗酸化作用、抗炎症作用、美白作用、抗老化作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を付与することができる。
【0073】
ビワの花部からの抽出物を配合し得る皮膚化粧料の種類は特に限定されるものではなく、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーション等が挙げられる。
【0074】
ビワの花部からの抽出物を皮膚化粧料に配合する場合、その配合量は、皮膚化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.0001〜10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.001〜1質量%である。
【0075】
本発明の皮膚化粧料は、ビワの花部からの抽出物が有する抗酸化作用、抗炎症作用、美白作用、抗老化作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を妨げない限り、通常の皮膚化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された上記成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた使用効果をもたらすことがある。
【0076】
本発明の皮膚化粧料は、高い安全性を有しており、かつ抗酸化作用、抗炎症作用、美白作用、抗老化作用、抗肥満作用及びサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素が関与する各種障害;接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れを伴う各種炎症性皮膚疾患;皮膚の黒化、シミ、ソバカス等の色素沈着;皮膚の老化症状;肥満症、肥満症に伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等を予防、治療又は改善することができる。
【0077】
〔飲食品〕
ビワの花部からの抽出物は、抗酸化作用、抗炎症作用、美白作用、抗老化作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有しており、消化管で消化されるようなものではないことが確認されており、安全性にも優れているため、飲食品に配合するのに好適である。
【0078】
この場合に、ビワの花部からの抽出物をそのまま配合してもよいし、ビワの花部からの抽出物から製剤化した抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を配合してもよい。
【0079】
ビワの花部からの抽出物、又はビワの花部からの抽出物から製剤化した抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤若しくはサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を飲食品に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの抽出物摂取量が約1〜1000mgになるようにするのが好ましい。
【0080】
本発明の飲食品は、ビワの花部からの抽出物をその活性を妨げないような任意の飲食品に配合したものであってもよいし、ビワの花部からの抽出物を主成分とする栄養補助食品であってもよい。
【0081】
本発明の飲食品を製造する際には、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類等の任意の助剤を添加して任意の形状の飲食品にすることができる。
【0082】
ビワの花部からの抽出物を配合し得る飲食品は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等が挙げられ、これらの飲食品にビワの花部からの抽出物を配合するときに、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
【0083】
なお、本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、抗老化剤、抗肥満剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、皮膚化粧料又は飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0084】
以下、製造例、試験例及び配合例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
【0085】
〔製造例1〕ビワ花部水抽出物の製造
ビワの花部の乾燥物30gに水300mLを加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。残渣についてさらに同様の抽出処理をした。得られた抽出液を合わせて減圧下で濃縮し、さらに乾燥してビワ花部水抽出物6.2gを得た(試料1)。
【0086】
〔製造例2〕ビワ花部30%エタノール抽出物の製造
抽出溶媒として30容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=7:3)300mLを使用した以外は製造例1と同様にして、ビワ花部30%エタノール抽出物5.6gを得た(試料2)。
【0087】
〔製造例3〕ビワ花部80%エタノール抽出物の製造
抽出溶媒として80容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:4)300mLを使用した以外は製造例1と同様にして、ビワ花部80%エタノール抽出物4.4gを得た(試料3)。
【0088】
〔試験例1〕スーパーオキサイド消去作用試験(NBT法)
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてスーパーオキサイド消去作用を試験した。
【0089】
試験管に、0.05MのNaCO緩衝液(pH10.2)を2.4mL、並びに3mMのキサンチン、3mMのEDTA、ウシ血清アルブミン溶液及び0.75mMのNBT(nitroblue tetrazolium)を0.1mLずつ加え、これに試料溶液(試料1〜3)0.1mLを添加し、25℃で10分間放置した。放置後、酵素溶液としてのキサンチンオキシダーゼ溶液を加えて素早く攪拌し、25℃で20分間反応させた。その後、6mMの塩化銅0.1mLを加えて反応を停止させて、波長560nmにおける吸光度を測定した。
【0090】
酵素溶液を添加しない場合についても、同様の操作と吸光度の測定を行い、さらに、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。得られた結果から、下記式によりスーパーオキサイド消去率(%)を算出した。
【0091】
スーパーオキサイド消去率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
式中、Aは「酵素溶液添加・試料溶液添加時の吸光度」を表し、Bは「酵素溶液無添加・試料溶液添加時の吸光度」を表し、Cは「酵素溶液添加・試料溶液無添加時の吸光度」を表し、Dは「酵素溶液無添加・試料溶液無添加時の吸光度」を表す。
【0092】
試料溶液の濃度を段階的に減少させて上記スーパーオキサイド消去率の測定を行い、スーパーオキサイド消去率が50%になる試料濃度IC50(μg/mL)を内挿法により求めた。
結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
表1に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたスーパーオキサイド消去作用(活性酸素消去作用)を有することが確認された。また、スーパーオキサイド消去作用の程度は、ビワ花部抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0095】
〔試験例2〕ラジカル消去作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてラジカル消去作用を試験した。
【0096】
1.5×10−4MのDPPH(diphenyl-p-picrylhydrazyl)エタノール溶液3mLに試料溶液(試料1〜3)3mLを加え密栓した後、振り混ぜて30分間放置した。放置後、波長520nmにおける吸光度を測定した。コントロールとして、試料溶液の代わりに試料を溶解した溶媒のみを用いて同様の操作をして、波長520nmの吸光度を測定した。また、ブランクとして、エタノールに試料溶液3mLを加えた後、直ちに波長520nmの吸光度を測定した。得られた結果から、下記式によりラジカル消去率(%)を算出した。
【0097】
ラジカル消去率(%)={1−(B−C)/A}×100
式中、Aは「コントロールの吸光度」を表し、Bは「試料溶液添加時の吸光度」を表し、Cは「ブランクの吸光度」を表す。
【0098】
試料溶液の濃度を段階的に減少させて上記ラジカル消去率の測定を行い、ラジカル消去率が50%になる試料濃度IC50(μg/mL)を内挿法により求めた。
結果を表2に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
表2に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたラジカル消去作用を有することが確認された。また、ラジカル消去作用の程度は、ビワ花部抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0101】
〔試験例3〕TNF−α産生抑制作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてTNF−α産生抑制作用を試験した。
【0102】
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、セルスクレーパーにより細胞を回収した。回収した細胞を1.0×10cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有ダルベッコMEM培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、4時間培養した。
【0103】
培養終了後、培地を抜き、終濃度2%DMSOを含む10%FBS含有ダルベッコMEMで溶解した試料溶液(試料1〜3,試料濃度は下記表3を参照)を各ウェルに100μLずつ添加し、終濃度1μg/mLで10%FBS含有ダルベッコMEMに溶解したリポポリサッカライド(LPS,E.coli0111;B4,DIFCO社製)を100μL加え、24時間培養した。培養終了後、各ウェルの培養上清中のTNF−α量を、サンドイッチELISA法を用いて測定し、測定結果から下記式によりTNF−α産生抑制率(%)を算出した。
【0104】
TNF−α産生抑制率(%)={(B−A)/B}×100
式中、Aは「試料溶液添加時のTNF−α量」を表し、Bは「試料溶液無添加時のTNF−α量」を表す。
結果を表3に示す。
【0105】
【表3】

【0106】
表3に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたTNF−α産生抑制作用を有することが確認された。
【0107】
〔試験例4〕ヒアルロニダーゼ活性阻害作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてヒアルロニダーゼ活性阻害作用を試験した。
【0108】
試料(試料1〜3)を溶解した0.1mol/Lの酢酸緩衝液(pH3.5)0.2mL(試料濃度は下記表4を参照)にヒアルロニダーゼ溶液(Type IV-S(from bovine testis),SIGMA社製,400NFunits/mL)0.1mLを加え、37℃で20分間反応させた。さらに、活性化剤として2.5mmol/Lの塩化カルシウム0.2mLを加え、37℃で20分間反応させた。これに0.4mg/mLのヒアルロン酸カリウム溶液(from Rooster Comb)0.5mLを加え、37℃で40分間反応させた。
【0109】
その後、0.4mol/L水酸化ナトリウムを0.2mL加えて反応を停止し、冷却した後、各反応溶液にホウ酸溶液0.2mLを加え、3分間煮沸した。氷冷後、p−DABA試薬(p-Dimethylaminobenzaldehyde,和光純薬工業社製)6mLを加え、37℃で20分間反応させた。その後、波長585nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。得られた測定結果から、下記式によりヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)を算出した。
【0110】
ヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
式中、Aは「試料添加・酵素溶液添加時の波長585nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料添加・酵素溶液無添加時の波長585nmにおける吸光度」を表し、Cは「試料無添加・酵素溶液添加時の波長585nmにおける吸光度」を表し、Dは「試料無添加・酵素溶液無添加時の波長585nmにおける吸光度」を表す。
結果を表4に示す。
【0111】
【表4】

【0112】
表4に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有することが確認された。
【0113】
〔試験例5〕ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を試験した。
【0114】
ラット好塩基球白血病細胞(RBL−2H3)を15%FBS添加S−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を4.0×10cells/mLの細胞密度に希釈し、終濃度0.5μg/mLとなるようにDNP-specific IgEを添加した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
【0115】
培養終了後、培地を抜き、シリガリアン緩衝液500μLにて洗浄を2回行った。次に、同緩衝液30μL及び同緩衝液にて調製した試料溶液10μL(試料1〜3,試料濃度は下記表5を参照)を加え、37℃にて10分間静置した。その後、100ng/mLのDNP−BSA溶液10μLを加え、37℃にて15分間静置し、ヘキソサミニダーゼを遊離させた。
【0116】
その後、96ウェルプレートを氷上に静置することにより遊離を停止した。各ウェルの細胞上清10μL及び1mmol/Lのp−NAG(p−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−グルコサイド)溶液10μLを、新たな96ウェルプレートに添加し、37℃で1時間反応させた。
【0117】
反応終了後、各ウェルに0.1mol/LのNaCO/NaHCO250μLを加え、波長415nmにおける吸光度を測定した。また、空試験として、細胞上清10μLと、0.1mol/LのNaCO/NaHCO250μLとの混合液の波長415nmにおける吸光度を測定し、補正した。得られた測定結果から、下記式によりヘキソサミニダーゼ遊離抑制率(%)を算出した。
【0118】
ヘキソサミニダーゼ遊離抑制率(%)={1−(B−C)/A}×100
式中、Aは「試料無添加での波長415nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料添加での波長415nmにおける吸光度」を表し、Cは「試料添加・p−NAG無添加での波長415nmにおける吸光度」を表す。
結果を表5に示す。
【0119】
【表5】

【0120】
表5に示す結果から、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を有することが確認された。
【0121】
〔試験例6〕チロシナーゼ活性阻害作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてチロシナーゼ活性阻害作用を試験した。
【0122】
48ウェルプレートに、Mcllvaine緩衝液(pH6.8)0.2mL,0.3mg/mLのチロシン溶液0.06mL、試料(試料1〜3,試料濃度は下記表6を参照)の25%DMSO溶液0.18mLを加え、37℃で10分間静置した。これに、800units/mLのチロシナーゼ溶液0.02mLを加え、引き続き37℃で15分間反応させた。反応終了後、波長475nmにおける吸光度を測定した。また、同様の方法で空試験を行った。得られた測定結果から、下記式によりチロシナーゼ活性阻害率(%)を算出した。
【0123】
チロシナーゼ活性阻害率(%)={1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100
式中、Stは「酵素溶液添加・試料溶液添加時の吸光度」を、Sbは「酵素溶液無添加・試料溶液添加時の吸光度」を、Ctは「酵素溶液添加・試料溶液無添加時の吸光度」を、Cbは「酵素溶液無添加・試料溶液無添加時の吸光度」を示す。
結果を表6に示す。
【0124】
【表6】

【0125】
表6に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたチロシナーゼ活性阻害作用を有することが確認された。
【0126】
〔試験例7〕メラニン産生抑制作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてメラニン産生抑制作用を試験した。
【0127】
B16メラノーマ細胞を、10%FBS含有ダルベッコMEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEMで25.0×10cells/mLの細胞密度に希釈した後、48wellプレートに1wellあたり300μLずつ播種し、6時間培養した。
【0128】
培養終了後、10%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEMで溶解した試料溶液(試料1〜3,試料濃度は下記表7を参照)を各wellに300μL添加し、4日間培養した。培養終了後、各wellから培地を取り除き、2mol/LのNaOH溶液200μLを添加して超音波破砕器により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定し、メラニン産生量とした。
【0129】
また、単位細胞あたりのメラニン産生抑制作用を評価するために、上記と同様にして培養した後、培養液を除去し、終濃度0.05mg/mLで10%FBS含有ダルベッコMEMに溶解したニュートラルレッドを各wellに200μL添加し、2.5時間培養した。培養後、ニュートラルレッド溶液を捨て、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各wellに200μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。
【0130】
さらに、空試験として、試料を添加せずに上記と同様にして培養した細胞について、波長475nmにおける吸光度及び540nmにおける吸光度を測定した。得られた結果から、下記式により単位細胞あたりのメラニン産生抑制率(%)を算出した。
【0131】
メラニン産生抑制率(%)={1−(B/D)/(A/C)}×100
式中、Aは「試料無添加時の475nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料添加時の475nmにおける吸光度」を表し、Cは「試料無添加時の540nmにおける吸光度」を表し、Dは「試料添加時の540nmにおける吸光度」を表す。
結果を表7に示す。
【0132】
【表7】

【0133】
表7に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたメラニン産生抑制作用を有することが確認された。
【0134】
〔試験例8〕エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてエンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用を試験した。
【0135】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(Normal Human Epidermis Keratinocyte,NHEK)を80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)において、37℃、5%CO−95%airの条件下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
【0136】
EpiLife-KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO−95%airの条件下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加えてUV−B照射(50mJ/cm)を行い、その後EpiLife-KG2で必要濃度に溶解した試験試料(試料1〜3,試料濃度は下記表8を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(ニッポンジーン社製,Cat.no.311-02501)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0137】
この総RNAを鋳型とし、エンドセリン−1及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler (Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR Kit(Perfect Real Time,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT-PCR反応により行った。エンドセリン−1のmRNAの発現量は、紫外線未照射・試料無添加、紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、さらに紫外線未照射・試料無添加の補正値を100とした時の紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加の補正値を算出した。得られた結果から、下記式によりエンドセリン−1mRNA発現抑制率(%)を算出した。
【0138】
mRNA発現抑制率(%)={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
式中Aは「紫外線未照射・試料無添加時の補正値」を表し、Bは「紫外線照射・試料無添加時の補正値」を表し、Cは「紫外線照射・試料添加時の補正値」を表す。
結果を表8に示す。
【0139】
【表8】

【0140】
表8に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたエンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用を有することが確認された。
【0141】
〔試験例9〕SCFmRNA発現上昇抑制作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてSCFmRNA発現上昇抑制作用を試験した。
【0142】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(Normal Human Epidermis Keratinocyte,NHEK)を80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)において、37℃、5%CO−95%airの条件下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
【0143】
EpiLife-KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO−95%airの条件下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加えてUV−B照射(50mJ/cm)を行い、その後EpiLife-KG2で必要濃度に溶解した試験試料(試料1〜3,試料濃度は下記表9を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(ニッポンジーン社製,Cat.no.311-02501)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0144】
この総RNAを鋳型とし、SCF及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler (Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR Kit(Perfect Real Time,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT-PCR反応により行った。エンドセリン−1のmRNAの発現量は、紫外線未照射・試料無添加、紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、さらに紫外線未照射・試料無添加の補正値を100とした時の紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加の補正値を算出した。得られた結果から、下記式によりSCFmRNA発現抑制率(%)を算出した。
【0145】
mRNA発現抑制率(%)={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
式中Aは「紫外線未照射・試料無添加時の補正値」を表し、Bは「紫外線照射・試料無添加時の補正値」を表し、Cは「紫外線照射・試料添加時の補正値」を表す。
結果を表9に示す。
【0146】
【表9】

【0147】
表9に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたSCFmRNA発現上昇抑制作用を有することが確認された。
【0148】
〔試験例10〕POMCmRNA発現上昇抑制作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてPOMCmRNA発現上昇抑制作用を試験した。
【0149】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(Normal Human Epidermis Keratinocyte,NHEK)を80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)において、37℃、5%CO−95%airの条件下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
【0150】
EpiLife-KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO−95%airの条件下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加えてUV−B照射(50mJ/cm)を行い、その後EpiLife-KG2で必要濃度に溶解した試験試料(試料1〜3,試料濃度は下記表10を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(ニッポンジーン社製,Cat.no.311-02501)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0151】
この総RNAを鋳型とし、POMC及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler (Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR Kit(Perfect Real Time,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT-PCR反応により行った。エンドセリン−1のmRNAの発現量は、紫外線未照射・試料無添加、紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、さらに紫外線未照射・試料無添加の補正値を100とした時の紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加の補正値を算出した。得られた結果から、下記式によりPOMCmRNA発現抑制率(%)を算出した。
【0152】
mRNA発現抑制率(%)={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
式中Aは「紫外線未照射・試料無添加時の補正値」を表し、Bは「紫外線照射・試料無添加時の補正値」を表し、Cは「紫外線照射・試料添加時の補正値」を表す。
結果を表10に示す。
【0153】
【表10】

【0154】
表10に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたPOMCmRNA発現上昇抑制作用を有することが確認された。
【0155】
〔試験例11〕MMP−1活性阻害作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてMMP−1活性阻害作用を試験した。
【0156】
蓋付試験管にて20mmol/Lの塩化カルシウムを含有する0.1mol/LのTris−HCL緩衝液(pH7.1)に溶解した試料溶液(試料1〜3,試料濃度は下記表11を参照)50μL、MMP−1溶液(COLLAGENASE Type IV from Clostridium histolyticum,Sigma社製)50μL及びPz-peptide溶液(Pz-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Arg-OH,BACHEM Feinchemikalien AG社製)400μLを混合し、37℃にて30分反応させた後、25mmol/Lのクエン酸溶液1mLを加え反応を停止した。
【0157】
その後、酢酸エチル5mLを加え、激しく振とうした。これを遠心(1600×g,10分)し、酢酸エチル層の波長320nmにおける吸光度を測定した。また、同様にして空試験を行い補正した。得られた結果から、下記式によりMMP−1活性阻害率(%)を算出した。
【0158】
MMP−1活性阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
式中、Aは「試料無添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度」を表し、Cは「試料添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度」を表し、Dは、「試料添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度」を表す。
結果を表11に示す。
【0159】
【表11】

【0160】
表11に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたMMP−1活性阻害作用を有することが確認された。
【0161】
〔試験例12〕I型コラーゲン産生促進作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてI型コラーゲン産生促進作用を試験した。
【0162】
ヒト正常線維芽細胞(Detroit 551)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×10cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を抜き、0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地に試料を溶解した試料溶液(試料1〜3,試料濃度は下記表12を参照)を各ウェルに150μLずつ添加し、3日間培養した。培養終了後、各ウェルの培地中のI型コラーゲン量をELISA法により測定した。同様にして試料溶液を添加せずにI型コラーゲン量を測定した。得られた結果から、下記式により試料溶液添加時のI型コラーゲン産生促進率(%)を算出した。
【0163】
I型コラーゲン産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「試料溶液添加時のI型コラーゲン量」を、Bは「試料溶液無添加時のI型コラーゲン量」を示す。
結果を表12に示す。
【0164】
【表12】

【0165】
表12に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたI型コラーゲン産生促進作用を有することが確認された。
【0166】
〔試験例13〕IV型コラーゲン産生促進作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてIV型コラーゲン産生促進作用を試験した。
【0167】
ヒト正常線維芽細胞(Detroit 551)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×10cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を抜き、0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地に試料を溶解した試料溶液(試料1〜3,試料濃度は下記表13を参照)を各ウェルに150μLずつ添加し、3日間培養した。培養終了後、各ウェルの培地中のIV型コラーゲン量をELISA法により測定した。同様にして試料溶液を添加せずにIV型コラーゲン量を測定した。得られた結果から、下記式により試料溶液添加時のIV型コラーゲン産生促進率(%)を算出した。
【0168】
IV型コラーゲン産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「試料溶液添加時のIV型コラーゲン量」を、Bは「試料溶液無添加時のIV型コラーゲン量」を示す。
結果を表13に示す。
【0169】
【表13】

【0170】
表13に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたIV型コラーゲン産生促進作用を有することが確認された。
【0171】
〔試験例14〕紫外線(UV−B)照射によるダメージ回復作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにして紫外線(UV−B)照射によるダメージ回復作用を試験した。
【0172】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10cells/mLの細胞密度になるようにα−MEM培地を用いて希釈した後、48ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ播種した。24時間培養後、培地を100μLのPBS(−)へ交換し、1.0J/cmのUV−Bを照射した。照射後、直ちに、PBS(−)を抜き、10%FBS含有D−MEMに溶解した試料溶液(試料1〜3,試料濃度は下記表14に参照)を各ウェルに400μLずつ添加し、24時間培養した。
【0173】
紫外線(UV−B)照射によるダメージ回復作用は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLで溶解したMTTを各ウェルに200μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出し、抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様に細胞を播種した後、UV−Bを照射しない細胞及びUV−Bを照射し試料溶液を添加しない細胞についても同様に測定し、それぞれ非照射群及び照射群とした。得られた結果から、下記式により紫外線(UV−B)照射によるダメージ回復率(%)を算出した。
【0174】
ダメージ回復率(%)={(Nt−C)−(Nt−Sa)}/(Nt−C)×100
式中、Ntは「UV−Bを照射していない細胞での吸光度」を表し、Cは「UV−Bを照射し試料溶液を添加していない細胞での吸光度」を表し、Saは「UV−Bを照射し試料溶液を添加した細胞での吸光度」を表す。
結果を表14に示す。
【0175】
【表14】

【0176】
表14に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れた紫外線(UV−B)照射によるダメージ回復作用を有することが確認された。
【0177】
〔試験例15〕サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用試験
製造例1〜3により得られたビワ花部抽出物(試料1〜3)について、以下のようにしてサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を試験した。
【0178】
5mMの塩化マグネシウムを含有する50mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.5)0.2mLに、2.5mg/mLのウシ血清アルブミン溶液0.1mL、0.1mg/mLのサイクリックAMPホスホジエステラーゼ溶液0.1mL及び50%DMSOに溶解した試料溶液(試料1〜3,試料濃度は下記表15を参照)0.05mLを加え、37℃の温度条件下で5分間インキュベーションした。
【0179】
この反応溶液に、0.5mg/mLのサイクリックAMP溶液0.05mLを加え、37℃の温度条件下で60分間インキュベーションした。3分間沸騰水浴上で煮沸することにより反応を停止させ、これを遠心(2260×g,10分間,4℃)し、上清中の反応基質であるサイクリックAMPを、下記の条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。また、試料溶液を添加せずに同様の方法で空試験を行った。
【0180】
<高速液体クロマトグラフィー条件>
製品名:Chromatocorder 12(SYSTEM INSTRUMENTS社製)
固定相:Wakosil 5C18(和光純薬工業社製)
カラム径:4.6mm
カラム長:250mm
移動相:1mM TBAP in 25mM KH2PO4:CH3CN=90:10
移動相流速:1.0mL/min
検出:UV,260nm
【0181】
次に、サイクリックAMP標準品のピーク面積(A)、試料無添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B1)及び試料添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B2)を求めた。得られた結果から、下記式により試料無添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(C)及び試料添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(D)を算出した。
【0182】
試料無添加時の標準品分解率(C,%)=(1−B1/A)×100
試料添加時の標準品の分解率(D,%)=(1−B2/A)×100
【0183】
その後、上記式により算出した各分解率(C,D)に基づいて、下記式によりサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)を算出した。
阻害率(%)=(1−D/C)×100
結果を表15に示す。
【0184】
【表15】

【0185】
表15に示すように、ビワ花部抽出物(試料1〜3)は、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有することが確認された。
【0186】
〔配合例1〕
下記組成の乳液を常法により製造した。
ビワ花部抽出物(製造例1〜3のいずれか1種) 0.1g
ホホバオイル 4.0g
オリーブオイル 2.0g
スクワラン 2.0g
セタノール 2.0g
モノステアリン酸グリセリル 2.0g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.5g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0g
黄杞エキス 0.1g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
イチョウ葉エキス 0.1g
コンキオリン 0.1g
オウバクエキス 0.1g
カミツレエキス 0.1g
1,3−ブチレングリコール 3.0g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0187】
〔配合例2〕
下記組成の化粧水を常法により製造した。
ビワ花部抽出物(製造例1〜3のいずれか1種) 0.1g
グリセリン 3.0g
1,3−ブチレングリコール 3.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 0.5g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
クエン酸 0.1g
クエン酸ソーダ 0.1g
油溶性甘草エキス 0.1g
海藻エキス 0.1g
キシロビオースミクスチャー 0.5g
クジンエキス 0.1g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0188】
〔配合例3〕
下記組成のクリームを常法により製造した。
ビワ花部抽出物(製造例1〜3のいずれか1種) 1.1g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
セタノール 3.0g
スクワラン 10.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
1,3−ブチレングリコール 6.0g
香料 0.1g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0189】
〔配合例4〕
下記の混合物を打錠して、錠剤状の栄養補助食品を製造した。
ビワ花部抽出物(製造例1〜3のいずれか1種) 50質量部
粉糖(ショ糖) 188質量部
グリセリン脂肪酸エステル 12質量部
【0190】
〔配合例5〕
下記の混合物を顆粒状にして、栄養補助食品を製造した。
ビワ花部抽出物(製造例1〜3のいずれか1種) 50質量部
ビートオリゴ糖 1000質量部
ビタミンC 167質量部
ステビア抽出物 10質量部
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明の抗酸化剤は、活性酸素種に起因する各種障害の予防・改善に、本発明の抗炎症剤は、各種炎症性疾患の予防・改善に、本発明の美白剤は、シミ、ソバカス、皮膚の色素沈着等の予防・改善に、本発明の抗老化剤は、皮膚の老化症状の予防・改善に、本発明の抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、肥満症等予防・改善に大きく貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビワの花部からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤。
【請求項2】
前記ビワの花部からの抽出物が、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を有することを特徴とする請求項1に記載の抗酸化剤。
【請求項3】
ビワの花部からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗炎症剤。
【請求項4】
前記ビワの花部からの抽出物が、腫瘍壊死因子(TNF−α)産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用及びヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有することを特徴とする請求項3に記載の抗炎症剤。
【請求項5】
ビワの花部からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白剤。
【請求項6】
前記ビワの花部からの抽出物が、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制作用及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現上昇抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有することを特徴とする請求項5に記載の美白剤。
【請求項7】
ビワの花部からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗老化剤。
【請求項8】
前記ビワの花部からの抽出物が、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用及び紫外線照射によるダメージ回復作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有することを特徴とする請求項7に記載の抗老化剤。
【請求項9】
ビワの花部からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗肥満剤。
【請求項10】
ビワの花部からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤。
【請求項11】
ビワの花部からの抽出物を配合したことを特徴とする皮膚化粧料。
【請求項12】
ビワの花部からの抽出物を配合したことを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2010−184967(P2010−184967A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28558(P2009−28558)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】