説明

皮膚化粧料

【課題】β−アラニン誘導体(塩)と、酵母エキスおよび/またはアスコルビン酸誘導体(塩)を併用する系において、経時において変色・変臭を生じず、使用性(しっとりさ、はり感)に優れ、さらに乳化系においては乳化安定性にも優れる皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】(a)β−アラニン誘導体またはその塩〔例えば、3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸またはその塩、等〕を0.001〜10質量%、(b)酵母エキス、アスコルビン酸誘導体またはその塩の中から選ばれる1種または2種以上を0.001〜2質量%、および(c)亜硫酸塩を0.002〜0.02質量%含有する皮膚化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚化粧料に関する。さらに詳しくは、β−アラニン誘導体と、酵母エキスおよび/またはアスコルビン酸誘導体を併用する系において、経時において変色・変臭を生じず、使用性(しっとりさ、はり感)に優れ、さらに乳化系においては乳化安定性にも優れる皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
β−アラニン誘導体、酵母エキス、アスコルビン酸誘導体は、それぞれ皮膚への有効成分として従来より化粧料に配合されており、一般に、化粧料中にβ−アラニン誘導体を配合するとしっとりさが得られ、酵母、アスコルビン酸誘導体を配合するとはり感が付与されることが知られている。β−アラニン誘導体の化粧料配合については、例えば、特開2006−312597号(特許文献1)に、β−アラニン誘導体が皮膚の不全角化抑制作用、毛穴縮小効果、肌荒れ改善・防止効果等を有することが示されている。また酵母エキス、アスコルビン酸誘導体に関しては、例えば特開平8−163983号公報(特許文献2)に酵母エキスが皮膚保湿成分として知られるヒアルロン酸の産生促進作用を有することが記載され、特開2002−145751号公報(特許文献3)にアスコルビン酸誘導体が保湿効果、美白効果等を有することが記載されている。
【0003】
しかしながら、使用性の向上を図ってβ−アラニン誘導体と、酵母エキスおよび/またはアスコルビン酸誘導体を組合せて配合すると、変臭および変色が生じ、特に乳化系では乳化安定性に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−312597号公報
【特許文献2】特開平8−163983号公報
【特許文献3】特開2002−145751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、β−アラニン誘導体と、酵母エキスおよび/またはアスコルビン酸誘導体を併用する系において、経時において変色・変臭を生じず、使用性(しっとりさ、はり感)に優れ、さらに乳化系においては乳化安定性にも優れる皮膚化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、(a)β−アラニン誘導体またはその塩を0.001〜10質量%、(b)酵母エキス、アスコルビン酸誘導体またはその塩の中から選ばれる1種または2種以上を0.001〜2質量%、および(c)亜硫酸塩を0.002〜0.02質量%含有する皮膚化粧料を提供する。
【0007】
上記において、(a)成分が、3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸、β−アラニンアミド、N−モノメチル−β−アラニン、N−シクロヘキシル−β−アラニン、N−シクロヘキシルメチル−β−アラニン、N−シクロヘキシル−N−メチル−β−アラニン、N−シクロヘキシルカルボニル−β−アラニン、N−(2’−ピリジル)−β−アラニン、N−ニコチノイル−β−アラニン、N−ベンジルオキシカルボニル−β−アラニン、N−ベンジル−β−アラニン、N−ベンゼンスルホニル−β−アラニン、N−ベンゾイル−β−アラニン、N−p−アニソイル−β−アラニン(N−4’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−m−アニソイル−β−アラニン(N−3’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−o−アニソイル−β−アラニン(N−2’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−3’,4’,5’−トリメトキシベンゾイル−β−アラニン、N−フェニルアセチル−β−アラニン、またはこれらの塩の中から選ばれる1種または2種以上であるのが好ましく、より好ましくは(a)成分が3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸またはその塩である。
【0008】
また上記において、(c)成分が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、および亜硫酸カルシウムの中から選ばれる1種または2種以上であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚化粧料は、β−アラニン誘導体と、酵母エキスおよび/またはL−アスコルビン酸誘導体を併用する系において、経時において変色・変臭を生じず、使用性(しっとりさ、はり感)に優れ、さらに乳化系においては乳化安定性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。
【0011】
(a)成分であるβ−アラニン誘導体またはその塩としては、化粧料に用いられ得るものであれば特に限定されるものでなく、例えば、3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸、β−アラニンアミド、N−モノメチル−β−アラニン、N−シクロヘキシル−β−アラニン、N−シクロヘキシルメチル−β−アラニン、N−シクロヘキシル−N−メチル−β−アラニン、N−シクロヘキシルカルボニル−β−アラニン、N−(2’−ピリジル)−β−アラニン、N−ニコチノイル−β−アラニン、N−ベンジルオキシカルボニル−β−アラニン、N−ベンジル−β−アラニン、N−ベンゼンスルホニル−β−アラニン、N−ベンゾイル−β−アラニン、N−p−アニソイル−β−アラニン(N−4’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−m−アニソイル−β−アラニン(N−3’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−o−アニソイル−β−アラニン(N−2’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−3’,4’,5’−トリメトキシベンゾイル−β−アラニン、N−フェニルアセチル−β−アラニン、あるいはこれらの塩などが挙げられる。中でも、3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸またはその塩が、薬剤安定性および肌に対する効果の点から最も好ましい。塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、等)、アンモニウム塩、有機アミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、等)などが挙げられる。(a)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0012】
(a)成分の配合量は、本発明の皮膚化粧料中に0.001〜10質量%であり、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。0.001質量%未満では(a)成分としての薬効効果を十分に発揮することができず、一方、10質量%超では製剤中で結晶が析出するため、好ましくない。
【0013】
(b)成分は酵母エキスおよび/またはL−アスコルビン酸誘導体またはその塩である。
【0014】
酵母エキスの酵母としては、サッカロミセス属(Saccharomyces)に属する菌類(酵母)、例えばビール酵母、清酒酵母、パン酵母等が用いられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。酵母エキスは、これら酵母が自己消化による分解、タンパク質分解酵素による分解、酸加水分解による分解等により得られる酵母分解物をそのまま酵母エキスとして用いてもよく、あるいは酵母分解物より常法により酵母抽出液を得、それを酵母エキスとして用いてもよい。酵母エキスは市販品を用いてもよく、例えば「バイオダインEMPP」(日本ジェネティクス社製)等として市販されている。
【0015】
アスコルビン酸誘導体またはその塩としては、例えばL−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルなどのL−アスコルビン酸モノエステル類や、L−アスコルビン酸−2−グルコシドなどのL−アスコルビン酸グルコシド類、あるいはこれらの塩などが挙げられる。塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、等)、アンモニウム塩、有機アミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、等)などが挙げられる。
【0016】
本発明では、(b)成分として、上記酵母エキス、アスコルビン酸誘導体またはその塩の中から1種または2種以上を用いることができる。酵母エキスを配合する場合、その配合量は、本発明の皮膚化粧料中に0.001〜1質量%であり、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜0.3質量%である。アスコルビン酸誘導体またはその塩を配合する場合、その配合量は、本発明の皮膚化粧料中に0.001〜1質量%であり、好ましくは0.005〜0.5質量%、より好ましくは0.01〜0.1質量%である。したがって(b)成分としての総量(合計配合量)は0.001〜2質量%となる。酵母エキス、アスコルビン酸誘導体またはその塩の配合量が低すぎると、それら成分の薬効効果を十分に発揮することができず、一方、酵母エキス、アスコルビン酸誘導体またはその塩の配合量が高すぎると薬剤自体の特異な臭いが発生するため、好ましくない。なお本発明では酵母エキス、アスコルビン酸誘導体またはその塩の両者を併用するのがより好ましい。
【0017】
(c)成分である亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウムなどが挙げられる。中でもピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等が好ましく用いられる。(c)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
(c)成分の配合量は、本発明の皮膚化粧料中に0.002〜0.02質量%であり、好ましくは0.004〜0.02質量%である。0.002質量%未満では変臭・変色防止効果等を十分に発揮することができず、一方、0.02質量%超では特に乳化系化粧料の場合乳化性に劣る。
【0019】
上記(a)〜(c)成分を含む本発明の皮膚化粧料は、(a)成分、(b)成分を安定に配合して変臭、変色を有効に防止し、かつ使用性(しっとりさ、はり感)、さらに乳化系においては乳化安定性にも優れる。
【0020】
本発明の皮膚化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内で通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の任意添加成分、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、高級アルコール、高級脂肪酸、合成エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、水溶性高分子、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、粉末成分、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調製剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0021】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等);3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー;2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール;2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン;5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等が挙げられる。
【0022】
その他の配合可能成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0023】
本発明の皮膚化粧料の剤型は任意であり、可溶化系、乳化系、粉末分散系、油−水の2層系、油−水−粉末の3層系等が例示されるが、これらに限定されるものでない。本発明皮膚化粧料は常法により製造することができる。
【0024】
なお本発明の皮膚化粧料が乳化系の場合、水中油型乳化系が好ましい。乳化系皮膚化粧料は常法により調製することができ、乳化の方法は特に限定されるものでない。例えば、水中油型乳化タイプの場合、油相(内相)と水相(外相)を、それぞれ70℃程度に加温し、加温した油相を水相に徐々に添加して、乳化機で乳化し、その後、室温まで放冷する等の方法が挙げられるが、これに限定されるものでない。水相(外相)は通常、化粧料全量に対して20〜80質量%が好ましく、より好ましくは30〜60質量%である。
【0025】
本発明の皮膚化粧料は、化粧水等の可溶化系の製品、乳化ファンデーションや日焼け止めエマルジョン等の乳液状製品、スキンクリーム等のクリーム状の製品などがあるが、これら例示に限定されるものでない。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限りすべて質量%である。
まず初めに、本実施例で用いた試験方法、評価方法について説明する。
【0027】
[変臭(50℃、1ヵ月間)]
試料を50℃の恒温槽中に1ヵ月間放置した後の臭いについて、下記評価基準により評価した。
(評価基準)
○:変臭(焦げた臭い)が生じなかった
△:やや変臭(焦げた臭い)が生じたが、実用上問題がない程度のものであった
×:変臭(焦げた臭い)が生じた。
【0028】
[変色(50℃、1ヵ月間)]
試料を50℃の恒温槽中に1ヵ月間放置した後の外観(変色)について、下記評価基準により評価した。
(評価基準)
○:変色(褐色)が生じなかった
△:やや変色(褐色)が生じたが、実用上問題がない程度のものであった
×:変色(褐色)が生じた。
【0029】
[調製直後の変臭(イオウ臭)]
試料を調製した直後の臭いについて、下記評価基準により評価した。
(評価基準)
○:イオウ臭が生じなかった
△:ややイオウ臭が生じたが、実用上問題がない程度のものであった
×:イオウ臭が生じた。
【0030】
[調製直後の乳化粒子]
試料を調製した直後の乳化粒子の大きさを測定した。
(評価基準)
○:乳化粒子径が1μm以下で、均一な乳化系であった
△:乳化粒子径が1〜5μmで、やや不均一な乳化系であった
×:乳化粒子径が1〜10μmのものが混在し、不均一な乳化系であった。
【0031】
[経時乳化安定性]
試料を50℃の恒温槽中に1ヵ月間放置した後の経時安定性(乳化安定性)について、外観を目視により下記の評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
○:外観に異常がなく、分離もみられなかった
△:やや不均一な外観と若干の分離がみられた
×:十分な乳化力がなく(乳化不良を起こし)完全に分離した。
【0032】
[しっとりさ]
各試料(製造直後の試料)を専門パネル(10名)が顔面に塗布し、しっとりさについて下記の評価基準により評価した。
(評価基準)
○:8名以上が、しっとりさに優れると回答
△:4〜7名が、しっとりさに優れると回答
×:3名以下が、しっとりさに優れると回答。
【0033】
[はり感]
各試料(製造直後の試料)を専門パネル(10名)が顔面に塗布し、皮膚のはり感について下記の評価基準により評価した。
(評価基準)
○:8名以上が、皮膚のはり感に優れると回答
△:4〜7名が、皮膚のはり感に優れると回答
×:3名以下が、皮膚のはり感に優れると回答。
【0034】
(比較例1〜8、実施例1〜4: 水中油型乳化皮膚化粧料)
下記表1〜2に示す組成の試料を常法により調製し、上記評価方法に従い、変臭(50℃、1ヵ月間)、変色(50℃、1ヵ月間)、調製直後のイオウ臭、調製直後の乳化粒子、乳化安定性(40℃、4週間)、しっとりさ、はり感について、評価した。結果を表1〜2に示す。
【0035】
なお表1〜2中、「酵母エキス(*)」は「バイオダインEMPP」(日本ジェネティクス社製)を用いた。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
表1〜2に示す結果から明らかなように、β−アラニン誘導体と、酵母エキスおよび/またはアスコルビン酸誘導体を含む系に、亜硫酸塩を所定量配合することにより、変臭がなく均一な乳化系(水中油型乳化系)を得ることができ、50℃、1ヵ月間経過しても変臭・変色が生じず、しかも使用性(しっとりさ、はり感)に優れる効果を奏することが確認された。
【0039】
(比較例9〜11、実施例5〜7: 透明化粧水)
下記表3に示す組成の試料を常法により調製し、上記評価方法に従い、変臭(50℃、1ヵ月間)、変色(50℃、1ヵ月間)、調製直後のイオウ臭について評価した。結果を表3に示す。
【0040】
なお表3中、「酵母エキス(*)」は「バイオダインEMPP」(日本ジェネティクス社製)を用いた。
【0041】
【表3】

【0042】
表3に示す結果から明らかなように、β−アラニン誘導体と、酵母エキスおよび/またはアスコルビン酸誘導体を含む系(可溶化系皮膚化粧料)に、亜硫酸塩を所定量配合することにより、変臭がなく、50℃、1ヵ月間経過しても変臭・変色が生じないという優れた効果を奏することが確認された。
【0043】
以下に、さらに処方例を示す。
【0044】
(実施例8: 乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)精製水 残余
(2)カルボキシビニルポリマー 0.1
(3)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
(4)N−ベンゼンスルホニル−β−アラニン 3
(5)酵母エキス 0.1
(6)アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.05
(7)セリン 0.1
(8)グリシン 0.1
(9)トウキエキス 0.1
(10)亜硫酸カリウム 0.01
(11)ポリオキシエチレンメチルグルコシド 3
(12)グリセリン 6
(13)1.3−ブチレングリコール 5
(14)フェノキシエタノール 適量
(15)エタノール 5
(16)キサンタンガム 0.1
(17)水酸化カリウム 0.1
(18)ジメチルポリシロキサン 3
(19)デカメチルシクロペンタシロキサン 4
(20)イソヘキサデカン 3
(21)ヒマワリ油 1
(22)スクワラン 2
(調製方法)
(1)〜(16)を室温下で混合溶解させ、(17)を添加して中和する。ここに(18)〜(22)を室温下で混合溶解させたものを添加・乳化してディスパー処理を行うことで目的物を得る。
【0045】
(実施例9: クリーム)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)精製水 残余
(2)グリセリン 8
(3)ジプロピレングリコール 5
(4)エデト酸塩 適量
(5)カルボキシビニルポリマー 0.05
(6)3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸 0.5
(7)酵母エキス 0.1
(8)アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.05
(9)セリン 0.1
(10)グリシン 0.1
(11)トウキエキス 0.1
(12)ピロ亜硫酸ナトリウム 0.005
(13)フェノキシエタノール 適量
(14)水酸化カリウム 0.15
(15)流動パラフィン 3
(16)ワセリン 1
(17)ジメチルポリシロキサン 1
(18)ステアリルアルコール 1.8
(19)ベヘニルアルコール 1.6
(20)マカデミアナッツ油 2
(21)水添パーム油 3
(22)スクワラン 6
(23)ステアリン酸 2
(24)2−エチルヘキサン酸セチル 4
(25)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
(26)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 3
(調製方法)
(1)〜(13)を室温下で混合溶解させ、70℃に加温して、(14)を添加し、中和させる。ここに(15)〜(26)を70℃の温度下で混合溶解させたものを添加・乳化してディスパー処理を行い、その後、氷浴中で室温まで攪拌冷却することで目的物を得る。
【0046】
(実施例10: 日焼け止め乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)ジメチルポリシロキサン 5
(2)デカメチルシクロペンタシロキサン 5
(3)イソヘキサデカン 8
(4)カプリリルメチコン 2
(5)メチルフェニルポリシロキサン 2
(6)ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.5
(7)トリメチルシロキシケイ酸 1
(8)スクワラン 0.5
(9)セバシン酸ジイソプロピル 2
(10)パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 3
(11)オクトクリレン 1
(12)香料 適量
(13)4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 3
(14)コハク酸ジオクチル 5
(15)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
(16)脂肪酸被覆微粒子酸化チタン 4
(17)シリコーン被覆酸化亜鉛 6
(18)ポリメチルシルセスキオキサン 3
(19)精製水 残余
(20)1,3−ブチレングリコール 5
(21)エタノール 5
(22)エデト酸塩 適量
(23)3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸 5
(24)酵母エキス 0.1
(25)アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.05
(26)セリン 0.1
(27)グリシン 0.1
(28)トウキエキス 0.1
(29)ピロ亜硫酸ナトリウム 0.02
(30)フェノキシエタノール 適量
(調製方法)
(1)〜(12)を室温下で混合溶解させる。ここに(13)、(14)を70℃で混合溶解したものを添加した後、(15)〜(18)を添加し、ディスパーで室温分散させる。次いでここに(19)〜(30)を室温下で混合溶解させたものを添加・乳化してディスパー処理を行い、目的物を得る。
【0047】
(実施例11: ジェル)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)精製水 残余
(2)グリセリン 2
(3)1,3−ブチレングリコール 5
(4)エデト酸塩 適量
(5)カルボキシビニルポリマー 0.25
(6)フェノキシエタノール 適量
(7)3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸 1
(8)酵母エキス 0.1
(9)アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.05
(10)セリン 0.1
(11)グリシン 0.1
(12)トウキエキス 0.1
(13)亜硫酸ナトリウム 0.02
(14)水酸化カリウム 0.1
(調製方法)
(1)〜(13)を室温下で混合溶解させ、70℃に加温する。ここに(14)を添加し、中和させることで目的物を得る。
【0048】
(実施例12: 透明化粧水)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)ジプロピレングリコール 7
(2)1,3−ブチレングリコール 5
(3)グリセリン 2
(4)PPG−13デシルテトラデセス−24 0.5
(5)メチルパラベン 適量
(6)フェノキシエタノール 適量
(7)精製水 残余
(8)エデト酸塩 適量
(9)3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸 1
(10)酵母エキス 0.1
(11)アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.05
(12)セリン 0.1
(13)グリシン 0.1
(14)トウキエキス 0.1
(15)亜硫酸ナトリウム 0.02
(調製方法)
(1)〜(13)を70℃で均一溶解させる。それを室温で均一に溶解させた(4)〜(15)中へ添加することで目的物を得る。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の皮膚化粧料は、β−アラニン誘導体と、酵母エキスおよび/またはアスコルビン酸誘導体を併用する系でありながら、経時において変色・変臭を生じず、使用性(しっとりさ、はり感)に優れ、さらに乳化系においては乳化安定性にも優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)β−アラニン誘導体またはその塩を0.001〜10質量%、(b)酵母エキス、アスコルビン酸誘導体またはその塩の中から選ばれる1種または2種以上を0.001〜2質量%、および(c)亜硫酸塩を0.002〜0.02質量%含有する、皮膚化粧料。
【請求項2】
(a)成分が、3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸、β−アラニンアミド、N−モノメチル−β−アラニン、N−シクロヘキシル−β−アラニン、N−シクロヘキシルメチル−β−アラニン、N−シクロヘキシル−N−メチル−β−アラニン、N−シクロヘキシルカルボニル−β−アラニン、N−(2’−ピリジル)−β−アラニン、N−ニコチノイル−β−アラニン、N−ベンジルオキシカルボニル−β−アラニン、N−ベンジル−β−アラニン、N−ベンゼンスルホニル−β−アラニン、N−ベンゾイル−β−アラニン、N−p−アニソイル−β−アラニン(N−4’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−m−アニソイル−β−アラニン(N−3’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−o−アニソイル−β−アラニン(N−2’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−3’,4’,5’−トリメトキシベンゾイル−β−アラニン、N−フェニルアセチル−β−アラニン、またはこれらの塩の中から選ばれる1種または2種以上である、請求項1記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
(a)成分が3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸またはその塩である、請求項2記載の皮膚化粧料。
【請求項4】
(c)成分が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、および亜硫酸カルシウムの中から選ばれる1種または2種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膚化粧料。

【公開番号】特開2010−90113(P2010−90113A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204159(P2009−204159)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】