説明

皮膚外用剤

【課題】本発明の課題は、有効性の高いサラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物に関して有効に活用する方法を見つけることにある。また一方で、敏感肌や肌アレといった皮膚の悩みを予防・改善する有効な皮膚外溶剤の開発が望まれている。
【解決手段】サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物がこれまで確認されていなかった機能、すなわちヒアルニダーゼ活性阻害作用を有することが分かり、その抗炎症作用によって敏感肌や肌アレといった皮膚の悩みに対して有効であることが分かった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明品は、サラシア属(Alicia oblong、Alicia reticulate、Alicia paranoids)植物の抽出物が、ヒアルロニダーゼ活性を優位に阻害することで抗炎症作用を示し、敏感肌、肌アレと言った皮膚の悩みを予防・改善する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
サラシア属の植物は、紀元前5000年以上前に端を発するアーユルベェーダ医学の医書の中にも記載がある植物で、傷害、痛み、高血圧、心臓疾患、泌尿器疾患についても効果があるとされる歴史の古い植物である。近年日本でもサラシア属の植物の研究が盛んに行われ、特に糖尿病やダイエット高脂血症などに効果があることが分かっている(非特許文献1、非特許文献1、非特許文献1)。また、それに関する特許も多数出願されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかしその多くは経口摂取による食品、医薬品用途であり、皮膚に外用することを訴求したものはわずか2件に限られ(特許文献4、特許文献5)、その用途についてもヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有し、敏感肌、肌アレの予防・改善を訴求したものは現在までに認められない。
【0003】
女性にとって外見の美しさは日常生活に欠かせない要素であり、また近年では女性の社会進出が進んでおり、とりわけ肌の美しさに多くの女性の関心が集まっている。一方で生活上のストレスが要因で、肌上の異物に対して過剰に反応してしまう敏感肌の人や肌アレを起こしやすい人も多くなっており、それに対応する皮膚外用剤が多数開発されている。
【0004】
ところでヒアルロン酸は皮膚、血管、関節など生体中に広く分布する高分子多糖である。皮膚ではヒアルロン酸は真皮マトリックスや表皮組織で水を保持し、弾力性、柔軟性、保湿性を保つ役割を果たしている。しかし外界からの異物に対して敏感に反応してしまうと炎症反応が誘起され、白血球や肥満細胞などの炎症性細胞からヒアルロニダーゼが放出され、ヒアルロン酸を分解し結合組織のマトリクスを破壊してしまう。これにより肌上では凹凸や赤みが生じ外観上の肌の美しさが損なわれてしまい、肌トラブル、肌悩みの原因となる。従って、ヒアルロン酸代謝を担うヒアルロニダーゼの活性を阻害し、その分解を阻害することは美しい肌の維持には欠かせない。
【非特許文献1】Life Sci.2004 Aug 20;75(14):1735−46
【非特許文献2】Toxicol Appl Pharmacol.2006 Jan 1;210(1−2):78−85.Epub 2005 Aug 29.
【非特許文献3】Toxicol Appl Phrmacol.2006 Feb 1;210(3):225−35.Epub 2005 Jun 21.
【特許文献1】特開2002−020308号
【特許文献2】特開2003−171295号
【特許文献3】特開2005−295991号
【特許文献4】特開2005−008572号
【特許文献5】特開2006−188463号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、今まで敏感肌、肌アレ対応剤としての効果については知られていないサラシア属(Alicia oblong、Alicia reticulate、Alicia paranoids)植物の抽出物がヒアルロニダーゼ活性を阻害することを見出し、抗炎症作用によって敏感肌や肌アレの予防・改善を成すため、さらにはこれを有効に活用するために種々検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、サラシア属(Alicia oblong、Alicia reticulate、Alicia paranoids)植物の抽出物にヒアルロニダーゼ活性阻害作用があることを見出し、これによる抗炎症作用により敏感肌やたるみを予防・改善することが分かった。
【0007】
上記したサラシア属(Alicia oblong、Alicia reticulate、Alicia paranoids)植物の抽出物は、皮膚に適応した場合の使用感と安全性に優れているため、皮膚外用剤に配合するのに好適である。本発明の皮膚外用剤は、上記サラシア属(Alicia oblong、Alicia reticulate、Alicia paranoids)植物の抽出物を含有し、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有する。もちろん、製剤化した本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害作用剤を含有するものも本発明の皮膚外用剤の範囲に含まれる
【0008】
サラシア属(Alicia oblong、Alicia reticulate、Alicia paranoids)植物の抽出物の形態はなんら限定されるものではないが、好ましくはサラシア属(Alicia oblong、Alicia reticulate、Alicia paranoids)植物の根を陰乾し、粉砕後、抽出溶媒(例えばエタノール等のアルコール、水またはこれら混合)とともに、3日間浸漬または1時間100℃にて加温、冷却、ろ過した液を使用する。
【0009】
サラシア属(Alicia oblong、Alicia reticulate、Alicia paranoids)植物の抽出物は0.001〜20重量%で配合すれば抗しわ効果等を十分発揮することから、この濃度で配合することが望ましい。
【0010】
本発明の皮膚外用剤は、常法に従い、通常の皮膚外用剤として知られる種々の形態の基材に配合して調製することができ、外用剤の形態としては特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、水溶液、パック等の任意の剤形を選択することができる。
【0011】
本発明の皮膚外用剤において、サラシア属(Alicia oblong、Alicia reticulate、Alicia paranoids)植物の抽出物とともに構成成分として利用可能なものは例えば、保湿剤・紫外線吸収剤・複合脂質・活性酸素消去作用を有する物質・抗炎症剤・ビタミンおよびその誘導体・油性成分・界面活性剤・防腐剤・粉体成分・精製水・高分子化合物・ゲル化剤・酸化防止剤・コレステロール類・植物ステロール類・リポプロテイン類・微生物由来成分・藻類抽出物・血行促進剤・抗脂漏剤・増粘剤・着色料・美容成分などをなどが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることが出来る。
【実施例】
【0012】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれになんら制約されるものではない。また使用した薬剤のエキス粉末についての抽出方法についても何ら限定されるものではない。
【0013】
(試験例1)ヒアルロニダーゼ活性阻害試験
水で1%に希釈した検体溶液1mLと、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)に希釈した0.4%ヒアルロン酸溶液6mLを混合し、37℃で5分間インキュベートした。インキュベート後、ヒアルロニダーゼ溶液を1mL加え20秒間攪拌し、混液6mLをオストワルド粘土計No.4に入れた。ヒアルロニダーゼを加えて1、5、10、20、40分後の粘土(内溶液を吸引した後の、上の線から下の線までの落下時間)を測定した。阻害率の算出方法は各時間ごとの落下時間の差の平均で表し、具体的には以下に記す。
阻害率(%)=[[{(A5−A1)−(B5−B1)}/(A5−A1)]+[{(A10−A5)−(B10−B5)}/(A10−A5)]+[{(A20−A10)−(B20−B10)}/(A20−A10)]+[{(A40−A20)−(B40−B20)}/(A40−A20)]]/4×100
A1;空液を添加した際の1分後の粘度(落下時間)
A5;空液を添加した際の5分後の粘度(落下時間)
A10;空液を添加した際の10分後の粘度(落下時間)
A20;空液を添加した際の20分後の粘度(落下時間)
A40;空液を添加した際の40分後の粘度(落下時間)
B1;試料溶液を添加した際の1分後の粘度(落下時間)
B5;試料溶液を添加した際の5分後の粘度(落下時間)
B10;試料溶液を添加した際の10分後の粘度(落下時間)
B20;試料溶液を添加した際の20分後の粘度(落下時間)
B40;試料溶液を添加した際の40分後の粘度(落下時間)
【0014】
【表1】

(注1)サラシア植物(Salacia oblanga)の抽出物はサラシア10gにエタノール300mLを加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
【0015】
【表2】

(注2)サラシア植物(Salacia oblanga)の抽出物はサラシア10gに精製水150mLとエタノール150mLの混合液を加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
【0016】
【表3】

(注3)サラシア植物(Salacia oblanga)の抽出物はサラシア10gに精製水300mLを加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
【0017】
(試験例2)皮膚外用剤の効果
実施例および比較例の処方を表4に示す。作成方法は常法により行った。なお表4は美容液の処方で、配合量は重量部で示す。
【表4】

(注4)サラシア属植物(Alicia oblong)の抽出物はサラシア10gに精製水150mLとエタノール150mLの混合液を加えて24時間精置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
【0018】
表4記載の実施例1〜2、比較例1の敏感肌・肌荒れ改善効果試験を実施した。
試験方法は25〜60歳の女性30名をパネルとし、毎日朝と夜の2回、12週間に渡って洗顔後に被験外用剤の適量を顔面に塗布した。塗布による敏感肌・肌荒れ改善効果の結果を表5に示す。
【0019】
【表5】


【0020】
サラシア属(Alicia oblong、Alicia reticulate、Alicia paranoids)植物の抽出物はヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有することが確認され、その抗炎症作用により敏感肌、肌アレの予防、改善効果があることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物を含有する敏感肌、肌荒れに対する皮膚外用剤。
【請求項2】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物がヒアルロニダーゼ活性阻害剤である請求項1記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2008−120775(P2008−120775A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332546(P2006−332546)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(599000212)香栄興業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】