説明

皮膚外用材及びそれを用いた外用止痒剤、しわ取り具

本発明の皮膚外用材は、アルギン酸塩とリン酸系の弱酸およびエチレンジアミン四酢酸系の弱酸のうちの少なくとも1種の弱酸と水とを含有する酸性組成物(A)と、皮膚に付着した酸性組成物(A)に供給して用いられる、カルシウム塩を含有する凝固ゲル化剤(B)とを含んでいる。さらに、場合により、酸性組成物(A)を含浸するための吸収体をも含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、主として止痒効果を即時に得ることができ、さらに吸収体を用いることでしわ取り効果をも得ることができる皮膚外用材及びそれを用いた外用止痒剤、しわ取り具に関する。
【背景技術】
従来から、アルギン酸塩とカルシウム塩とを組み合わせて用いる各種の皮膚外用材が提案されている。例えば、(1)アルギン酸ナトリウム水溶液が収納された容器と、2価以上の金属イオンを含む水溶液が収納された容器とからなる創傷被覆材(特開平11−178910号公報参照)や、(2)アルギン酸の水可溶性塩を含む皮膚塗布用の組成物と、アルカリ土類金属の水可溶性塩を含有する、前記皮膚塗布用の組成物を硬化させる為の組成物とを構成要素とするパック化粧料(特開2002−128636号公報参照)が提案されている。
これら創傷被覆材やパック化粧料は、アルギン酸塩の水溶液または懸濁液がカルシウムイオンによりゲルを形成することを利用したものである。しかし、弱酸を用いておらず、止痒効果については報告されていない。また、吸収体を用いるとしわ取り効果を奏することについても報告されていない。
ところで、痒みには、虫さされ、湿疹、あせも等によるものや、老人性掻痒症などが知られている。いずれの痒みも、一般に、持続すれば持続するほど不快感が募り、精神衛生面で好ましくないので、痒みを即時に止めることが可能な技術の開発が嘱望されていた。また、目尻や額などにあるしわは、特に女性にとって美容の大敵であるので、しわを簡単に取ることが可能な技術の開発が嘱望されていた。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、即時に止痒効果を得ることができる皮膚外用材及びそれを用いた外用止痒剤の提供をその目的とする。さらに、吸収体を用いることでしわ取り効果をも簡単に得ることができる皮膚外用材及びそれを用いたしわ取り具の提供をその目的とする。
【発明の開示】
本発明者は、アルギン酸塩を含む酸性多糖を中心に種々研究を重ねていた。その過程で、アルギン酸塩とリン酸系の弱酸およびエチレンジアミン四酢酸系の弱酸のうちの少なくとも1種の弱酸と水とを含有する酸性組成物(A)と、カルシウム塩を含む凝固ゲル化剤(B)とを用いれば、従来全く知られていなかった、即効性の止痒効果が発現することを見いだし、本発明を完成した。さらに、酸性組成物(A)と凝固ゲル化剤(B)の他に、酸性組成物(A)を含浸することができる吸収体を用いれば、しわ取り効果も発現することを見いだし、本発明を完成した。
本発明の皮膚外用材は、下記の酸性組成物(A)と、皮膚に付着した酸性組成物(A)に供給して用いられる下記の凝固ゲル化剤(B)とを含むことを特徴としている。
(A)アルギン酸塩とリン酸系の弱酸およびエチレンジアミン四酢酸系の弱酸のうちの少なくとも1種の弱酸と水とを含有する酸性組成物。
(B)カルシウム塩を含有する凝固ゲル化剤。
上記の構成によれば、例えば、酸性組成物(A)を皮膚表面に付着させた後、その上から凝固ゲル化剤(B)を塗布すると、凝固ゲル化剤(B)が酸性組成物(A)中に入り込んでアルギン酸塩がゲル化して凝固し、即効性の止痒効果が得られる。また、本発明の皮膚外用材は、酸性多糖としてのアルギン酸塩と酸としてのリン酸系の弱酸、エチレンジアミン四酢酸系の弱酸とを含んでいるので、肌のきめを整え、皮膚の緊張を高め、肌を白くし、肌に透明感を与え、肌にうるおい感を与え、シミを薄くする美容効果や、医薬品や化粧料等の外用剤の皮膚への浸透促進効果が得られるという利点を有する。
ここで、本発明において「皮膚外用材」とは、上記酸性組成物(A)と凝固ゲル化剤(B)とからなる皮膚外用剤だけでなく、これら酸性組成物(A)と凝固ゲル化剤(B)に加えて吸収体を用いる態様をも含む趣旨である。
上記の皮膚外用材において、前記アルギン酸塩としてアルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸カリウムのうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。この場合、得られる酸性組成物(A)が皮膚表面に対し親和性の高いものになるという利点を有する。また、凝固ゲル化剤(B)との反応によってより短時間でより凝固したゲルになるという利点を有する。
また、前記リン酸系の弱酸としてリン酸二水素ナトリウムおよびリン酸二水素カリウムのうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。この場合、エチレンジアミン四酢酸系の弱酸であるエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等に比べ、より即効性の止痒効果が得られるという利点を有する。しかも、前記の美容および医療効果がより強くなるという利点を有する。
また、前記カルシウム塩として塩化カルシウムおよびグリセロリン酸カルシウムのうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。塩化カルシウムを用いると、カルシウムイオンの利用率が高いため、酸性組成物(A)と接触すると瞬時に凝固したゲルを形成するという利点を有する。一方、グリセロリン酸カルシウムを用いると、皮膚や眼等への刺激が少ないという利点を有する。
また、前記凝固ゲル化剤(B)としてグリセロリン酸カルシウムと乳酸とを含有する水溶液を用いるのが好ましい。この場合、難溶性であるグリセロリン酸カルシウムが乳酸により溶解されやすくなる。さらに、酸性度が高くなりすぎないため、酸性組成物(A)が凝固しやすいだけでなく、また凝固ゲル化剤(B)の酸性の強さに起因する皮膚や眼などへの刺激を抑えることができる。
また、前記酸性組成物(A)がさらに皮膚表面との親和性を高めるための粘着剤を含んでいるのが好ましい。この場合、皮膚との粘着性がより高まるので、痒みのある部位から垂れたりせず、確実に所定部位に対し止痒効果を奏するものとなる。
さらに、上記の皮膚外用材において、前記酸性組成物(A)と凝固ゲル化剤(B)の他に、前記酸性組成物(A)を含浸させるとともに、前記酸性組成物(A)を含浸させた状態で皮膚表面に直接貼付してその皮膚表面に酸性組成物(A)を付着させるための吸収体を含んだ構成にすることもできる。この場合、酸性組成物(A)を含浸させた吸収体をしわのある部位に貼付し、その上から凝固ゲル化剤(B)を供給した場合、急激にゲル化が進行し、しわを簡単に取ることができる。なお、吸収体を用いても、酸性組成物(A)と凝固ゲル化剤(B)とを用いているので、即効性の止痒効果も得られる。さらに、上述した、美容効果なども得られる。
特に、前記吸収体として、顔面の略全体を覆うフェイスマスク形状であるものを用いた場合には、特に女性の美容の大敵である目尻や額などのしわを簡単にとることができる。
前記皮膚外用材からなる外用止痒剤は、虫さされや湿疹など、痒みの種類を問わず即効性の痒み止め効果を示す。
前記吸収体を含んで構成された皮膚外用材からなるしわ取り具や、前記フェイスマスク形状の吸収体を含んで構成されたフェイスマスク型しわ取り具は、即効性のあるしわ取り効果を示す。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の皮膚外用材の一実施形態である外用止痒剤の使用方法の一例を説明するための模式図である。
第2図は、本発明の皮膚外用材の一実施形態であるしわ取り具の使用方法の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の皮膚外用材の実施形態について、止痒効果を得ることを主目的とした外用止痒剤と、しわ取り効果を得ることを主目的としたしわ取り具とに分けて説明する。
(外用止痒剤について)
本実施形態に係る外用止痒剤は、アルギン酸塩とリン酸系の弱酸およびエチレンジアミン四酢酸系の弱酸のうちの少なくとも1種の弱酸と水とを含む酸性組成物(A)と、カルシウム塩を含む凝固ゲル化剤(B)とからなる。
酸性組成物(A)を構成するアルギン酸塩としては、カルシウム塩により凝固したゲルを形成するものであれば特に制限するものではなく、アルギン酸のナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩やトリエタノールアミン塩等の有機アミン塩、アルギニン塩やリジン塩等の塩基性アミノ酸塩などがあげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。なかでも、使用感の好適な酸性組成物(A)が得られる等の理由から、アルギン酸のアルカリ金属塩が好ましい。さらに、得られる酸性組成物(A)が皮膚表面に対し親和性の高いものになる、凝固ゲル化剤(B)との反応によってより短時間でより凝固したゲルになる等の理由から、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムが好適である。
そして、酸性組成物(A)中のアルギン酸塩の濃度は、0.1重量%以上が好適である。0.1重量%未満であると、凝固ゲル化剤(B)のカルシウム塩の濃度が充分に高かったとしても凝固したゲルを形成しないおそれがあるからである。なお、痒みのある部位に塗布しやすい酸性組成物(A)が得られる濃度であれば、アルギン酸塩の濃度に特に上限はない。
酸性組成物(A)を構成するリン酸系の弱酸は、リン酸を含み、通常、1重量%水溶液のpHが4.0以上7.0未満の範囲のものをいい、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウムがあげられる。一方、エチレンジアミン四酢酸系の弱酸は、エチレンジアミン四酢酸を含み、通常、1重量%水溶液のpHが4.0以上7.0未満の範囲のものをいい、例えば、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムがあげられる。なかでも、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウムは、エチレンジアミン四酢酸系の弱酸に比べ、より即効性の止痒効果が確実に得られ、しかも前記の美容および医療効果がより強くなる等の理由から好適である。なお、上記した弱酸は単独であるいは2種以上併せて用いてもよい。
上記した弱酸以外に、リン酸、ホウ酸、炭酸などの無機酸や、ギ酸、酢酸、アクリル酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸等のカルボン酸、乳酸等のオキシカルボン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、チロシン、トレオニン、シスチン、チロキシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸などの有機酸を用いてもよい。
そして、酸性組成物(A)中のリン酸系、エチレンジアミン四酢酸系の弱酸の濃度は、後述する凝固ゲル化剤(B)との反応によって短時間に凝固したゲルを形成できるとともに、酸性組成物(A)自体が凝固してしまい本発明の効果が得られないといったことがない程度が好ましい。例えば、リン酸二水素ナトリウムを用いる場合は、酸性組成物(A)中における濃度は、0.1〜5.0重量%の範囲内が好適である。
酸性組成物(A)を構成する水としては、特に制限はなく、天然水、水道水や、イオン交換水、膜濾過水、蒸留水などの精製水等が用いられる。
なお、酸性組成物(A)には、アルギン酸塩、特定の弱酸、水の他に、本実施形態に係る外用止痒剤の効果を損なわない範囲で、粘着剤、防腐剤、保湿剤、界面活性剤、油分、香料、色素、紫外線吸収・散乱剤、生理活性物質等の公知の添加剤を用いてもよい。特に、皮膚に対する親和性を高めるための粘着剤を用いた場合には、痒みのある部位に酸性組成物(A)を塗布したのちに垂れが生じないので、確実に所定部位に止痒効果を発揮させることができる。
粘着剤としては、以下に示すような、天然高分子、半合成高分子、合成高分子、無機物を用いることができる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
天然高分子:アラビアゴム、カラギーナン、ガラクタン、寒天、クインスシード、グアガム、トラガントガム、ペクチン、マンナン、ローカストビーンガム、米澱粉、小麦粉澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉などの植物系高分子、カードラン、キサンタンガム、サクシノグルカン、デキストラン、ヒアルロン酸、プルランなどの微生物系高分子、アルブミン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロインなどの蛋白系高分子等。
半合成高分子:エチルセルロース、加工澱粉、カルボキシメチルセルロース及びその塩類、カルボキシメチルエチルセルロース及びその塩類、カルボキシメチルスターチ及びその塩類、クロスカルメロース及びその塩類、結晶セルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、粉末セルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系高分子、アルファー化澱粉、部分アルファー化澱粉、カルボキシメチル澱粉、デキストリン、メチル澱粉などの澱粉系高分子、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系高分子、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどのその他の多糖類系高分子等。
合成高分子:カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メタアクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタアクリル酸−メタアクリル酸エチルコポリマー、メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマー、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・メタアクリル酸メチルコポリマー等。
無機物:含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、コロイダルアルミナ、ベントナイト、ラポナイト等。
粘着剤を用いる場合、酸性組成物(A)中の粘着剤の濃度は、0.1〜5.0重量%の範囲内が好適である。0.1重量%未満であると皮膚に対する親和性が高くならないおそれがあり、逆に5.0重量%を超えるとゲル化速度が遅くなるおそれがあるからである。
そして、このような酸性組成物(A)は、例えば、水のなかに、アルギン酸塩、特定の弱酸、必要であればその他の添加剤を添加し、混合攪拌することにより調製することができる。
このような酸性組成物(A)とともに用いられ、アルギン酸塩をゲル化する凝固ゲル化剤(B)は、カルシウム塩を含んだものである。
カルシウム塩としては、塩化カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、無水リン酸二カルシウムなどがあげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。なかでも、粉末や顆粒などの固体状態で直接散布しても酸性組成物(A)中の水によってカルシウムイオンを供給できる等の理由から、水溶性のカルシウム塩が好適である。特に、カルシウムイオンの利用率が高く、より短時間で凝固したゲルが形成される等の理由から、塩化カルシウムが好ましい。また、皮膚や眼への刺激性を抑制したい場合には、グリセロリン酸カルシウムを用いるのが好ましい。なお、クエン酸カルシウムやリン酸一水素カルシウムなどの中性で水に対する溶解度が低いが、酸性で溶解度が高くなるカルシウム塩や、無水リン酸二カルシウムなどの中性で水に不溶だが、酸性で溶解するカルシウム塩は、各種の無機酸や有機酸を用いた酸性水溶液として用いてもよい。
そして、カルシウム塩の使用量や使用濃度などは、カルシウム塩の溶解度やカルシウム塩中のカルシウムの割合、および使用する酸性組成物(A)中のアルギン酸塩濃度などにより異なるが、通常、酸性組成物(A)が約10秒以内にゲル化して凝固する使用量や使用濃度などを適宜選択する。
凝固ゲル化剤(B)として塩化カルシウム水溶液を用いる場合、塩化カルシウムの濃度は、0.1〜10重量%の範囲内が好ましい。0.1重量%未満であると酸性組成物(A)が凝固したゲルとならないおそれがあり、逆に10重量%を超えるとゲル化がそれ以上速くならないだけでなく、皮膚などに刺激感を与えてしまうおそれがあるからである。
凝固ゲル化剤(B)としてグリセロリン酸カルシウム水溶液を用いる場合、グリセロリン酸カルシウムが難溶性で、溶解度が低いため、酸を含有させることが好ましい。酸の共存により、グリセロリン酸カルシウムの水への溶解性が高まり、その結果としてカルシウムイオン濃度が高まるからである。酸としては、有機酸、無機酸のいずれであっても用いることができる。なかでも、味や刺激性などの面から、乳酸が好ましい。凝固ゲル化剤(B)におけるグリセロリン酸カルシウムの濃度は1〜5重量%の範囲内で、酸の濃度は0.2〜2重量%の範囲内が好ましい。グリセロリン酸カルシウムの濃度が1重量%未満で、かつ酸の濃度が0.2重量%未満では、カルシウムイオンの濃度が低いために酸性組成物(A)が凝固したゲルにならないおそれがあるからである。一方、グリセロリン酸カルシウムの濃度が5重量%を超え、かつ酸の濃度が2重量%を超えると、ゲル化がそれ以上速くならないだけでなく、皮膚や眼などに刺激を与えたり、口に入ったときに不快な味がしたりするおそれがあるからである。
なお、凝固ゲル化剤(B)には、カルシウム塩の他に、本実施形態に係る外用止痒剤の効果を損なわない範囲で、香料、色素等の公知の添加剤を用いてもよい。
そして、このような凝固ゲル化剤(B)は、液状物の場合、例えば、水などの溶媒のなかに、カルシウム塩を添加し、混合攪拌することにより調製することができる。
本実施形態に係る外用止痒剤は、例えば、つぎのようにして使用することができる。すなわち、図1に示すように、まず、手の甲1にある痒みのある部位2に酸性組成物(A)3を載せたのちブラシ4などで引き伸ばし適度の厚みとなるよう塗布する(同図(a)(b)参照)。ついで、酸性組成物(A)3の塗布面に対し凝固ゲル化剤(B)5をスプレー6から噴霧して供給する(同図(c)参照)。これにより、痒みのある部位2との接触界面は湿った状態で、さらにその上には凝固したゲルが短時間で形成されるので、即効性の止痒効果が得られる。また、酸性多糖としてのアルギン酸塩と酸としてのリン酸系の弱酸およびエチレンジアミン四酢酸系の弱酸のうちの少なくとも1種の弱酸を含んでいるので、美白効果などの美容効果等も得られる。
なお、酸性組成物(A)の塗布は上記の方法に限定されるものではなく、例えばスプレーなどを用いて噴霧するようにしてもよい。
また、凝固ゲル化剤(B)の供給は上記の方法に限定されるものではなく、例えば凝固ゲル化剤(B)を手のひらに載せたのち酸性組成物(A)の塗布面に塗るようにしてもよいし、あるいは凝固ゲル化剤(B)を不織布等の吸収体に含浸させたのち酸性組成物(A)の塗布面に接触させて凝固ゲル化剤(B)を移行させるようにしてもよい。また、固形物の場合は、酸性組成物(A)の塗布面に散布するようにしてもよい。さらに、凝固ゲル化剤(B)をマイクロカプセル内に内包した後、それを酸性組成物(A)中に分散させ、それを痒みのある部位に付着させた後、マイクロカプセルを破砕することで凝固ゲル化剤(B)を供給するようにしてもよい。
このような使用において、酸性組成物(A)を塗布する厚みは、0.1〜2.0mmの範囲内が好ましい。0.1mm未満であると、皮膚表面と直接接触する部分も短時間で凝固したゲルとなってしまい、止痒効果が充分に得られないおそれがあるからである。逆に、2.0mmを超えると、塗布された部分全体に渡って充分に凝固したゲルが形成されず、止痒効果が充分に得られないおそれがあるからである。
また、このような使用において、酸性組成物(A)と凝固ゲル化剤(B)との使用割合は、皮膚に付着した酸性組成物(A)に凝固ゲル化剤(B)が充分に行き渡るのであれば特に制限はない。
なお、上記では酸性組成物(A)と凝固ゲル化剤(B)とからなる外用止痒剤について説明したが、例えば後述する吸収体を用い、酸性組成物(A)を含浸させた状態で痒みのある部位に貼付し、その上から凝固ゲル化剤(B)を供給するようにしてもよい(外用止痒材)。この場合であっても止痒効果を得ることができる。なお、この場合には、吸収体を用いているので、後述するようにしわ取り効果も得ることができる。
本実施形態に係る外用止痒剤においては、止痒効果を得ることを主目的とするので、酸性組成物(A)としての、アルギン酸ナトリウムとリン酸系の弱酸(特にリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム)と水とを含む水溶液と、凝固ゲル化剤(B)としての塩化カルシウム水溶液またはグリセロリン酸カルシウムと乳酸とを含有する混合水溶液との組合せが好適である。
(しわ取り具について)
本実施形態に係るしわ取り具は、アルギン酸塩とリン酸系の弱酸およびエチレンジアミン四酢酸系の弱酸のうちの少なくとも1種の弱酸と水とを含む酸性組成物(A)と、カルシウム塩を含む凝固ゲル化剤(B)と、酸性組成物(A)を含浸するための吸収体とを備えている。
吸収体としては、酸性組成物(A)を含浸することが可能なものであれば特に制限はなく、織布、不織布、スポンジ等の各種の形態のものがあげられる。なかでも、不織布は軽く、しわになりにくいため好ましい。また、吸収体の材料としては、天然繊維、合成繊維、半合成繊維のいずれであってもよい。天然繊維としては、綿、麻等の植物性繊維、羊毛、絹、海綿等の動物性繊維などがあげられる。また、合成繊維としては、ナイロン、ビニロン、テトロン、アクリル、ポリエステルなどがあげられる。また、半合成繊維としては、ビスコースレーヨン(以下単に「レーヨン」ともいう)などの再生繊維や、アセテートレーヨンなどがあげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
吸収体の厚みは、酸性組成物(A)を含浸したときに0.1〜2.0mm程度となるのが好ましい。0.1mm未満では、凝固ゲル化剤(B)により酸性組成物(A)全体が凝固ゲルとなり、皮膚に対する粘着性を失うためにしわ取り効果が充分に得られないおそれがあるからである。2.0mmを超えると、凝固ゲル化剤(B)による凝固が不充分なためにしわ取り効果が充分に得られないおそれがあるからである。
また、吸収体の大きさは、用途に応じて適宜に設定される。例えば、目尻や額などの顔面にあるしわを一度に取る場合には、顔面の略全体を覆うことが可能な大きさにする。また、目尻、額といった顔面の一部のしわを取る場合には、その部分を覆うことが可能な大きさにすればよい。
なお、酸性組成物(A)と凝固ゲル化剤(B)は、上述した外用止痒剤と略同様である。
本実施形態に係るしわ取り具は、例えば、つぎのようにして用いることができる。すなわち、図2に示すように、まず、顔面の略全体(目と口を除く)を覆うことが可能な吸収体(フェイスマスク)10を準備し、これを液状の酸性組成物(A)11が入った容器12に投入して、フェイスマスク10に酸性組成物(A)11を均一となるよう含浸させる(同図(a)参照)。なお、フェイスマスク10の略中央には鼻から息ができるように開閉可能な切り込みが入っており、またフェイスマスク10の縁部には顔面にぴったりとフィットするよう切り込みが入っている。ついで、酸性組成物(A)11含浸済みフェイスマスク10を、湿った状態のまま、目尻や額などにしわがある顔面13に貼付する(同図(b)参照)。その後、酸性組成物(A)11含浸済みフェイスマスク10の上から、スプレー15により凝固ゲル化剤(B)14を噴霧して供給する(同図(c)参照)。これにより、顔面13のしわのある部分との接触界面は湿った状態で、さらにその上には凝固したゲルが短時間で形成され、その結果として、しわを取ることができる。また、上記した外用止痒剤を用いているので、貼付された部位に痒みがある場合にはその痒みを止めることができる。さらに、酸性多糖としてのアルギン酸塩と酸としてのリン酸系の弱酸およびエチレンジアミン四酢酸系の弱酸のうちの少なくとも1種の弱酸を含んでいるので、美白効果などの美容効果等も得られる。
なお、酸性組成物(A)の含浸は上記の方法に限定されるものではなく、例えばフェイスマスク10の全面に行き渡るように酸性組成物(A)を噴霧などにより散布するようにしてもよい。この場合、上記の容器12が不要になるという利点がある。
また、凝固ゲル化剤(B)の供給は上記の方法に限定されるものではなく、例えば凝固ゲル化剤(B)を両方の手のひら全面に載せたのちその手をフェイスマスク10表面を覆うようにして接触させるようにしてもよいし、あるいは凝固ゲル化剤(B)を不織布等に含浸させたのちその凝固ゲル化剤(B)含浸済み不織布をフェイスマスク10表面に接触させて凝固ゲル化剤(B)を移行させるようにしてもよい。
このような使用において、酸性組成物(A)と凝固ゲル化剤(B)との使用割合は、皮膚に付着した酸性組成物(A)に凝固ゲル化剤(B)が充分に行き渡るのであれば特に制限はない。
なお、上記では顔面の略全体を覆うことが可能な吸収体を用いる方法を説明したが、目尻、額などの一部のみのしわを取るための小面積の吸収体を用いる場合であっても同様である。
本実施形態に係るしわ取り具においては、しわ取り効果を得ることを主目的とするので、酸性組成物(A)としての、アルギン酸のアルカリ金属塩(特にアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム)とリン酸系の弱酸(特に、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム)と水とを含む水溶液と、凝固ゲル化剤(B)としての塩化カルシウム水溶液またはグリセロリン酸カルシウムと乳酸とを含有する混合水溶液と、吸収体としてのレーヨン不織布又は綿不織布の組合せが好適である。
また、本実施形態に係るしわ取り具は、例えば、酸性組成物(A)と凝固ゲル化剤(B)と吸収体とを個別に包装したうえでこれらを一組のセットとしてもよいし、あるいは予め酸性組成物(A)を吸収体に含浸させておき、この酸性組成物(A)含浸済み吸収体を密閉袋体(酸性組成物(A)を乾燥させない袋等)で包装したうえで、これと凝固ゲル化剤(B)とを一組のセットとしてもよい。
以下に実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例1〜14、22〜25は止痒効果を主に検証するための例であり、実施例15〜21、26、27はしわ取り効果を主に検証するための例である。
【実施例1】
(酸性組成物の調製)
アルギン酸塩としてのアルギン酸ナトリウム1重量部(以下「部」と略す)、弱酸としてのリン酸二水素ナトリウム1部、粘着剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム1.5部、水としての精製水96.4部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて酸性組成物を調製した。
(凝固ゲル化剤の調製)
カルシウム塩としての塩化カルシウム0.5部、水としての精製水99.5部を用いて液状の凝固ゲル化剤を調製した。
そして、得られた酸性組成物と凝固ゲル化剤を組み合わせて外用止痒剤とした。
【実施例2】
(酸性組成物の調製)
アルギン酸塩としてのアルギン酸ナトリウム2部、弱酸としてのリン酸二水素ナトリウム1.5部、水としての精製水96.4部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて酸性組成物を調製した。
(凝固ゲル化剤の調製)
カルシウム塩としての塩化カルシウム2部、水としての精製水98部を用いて液状の凝固ゲル化剤を調製した。
そして、得られた酸性組成物と凝固ゲル化剤を組み合わせて外用止痒剤とした。
【実施例3】
(酸性組成物の調製)
アルギン酸塩としてのアルギン酸ナトリウム3部、弱酸としてのリン酸二水素カリウム2部、水としての精製水94.9部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて酸性組成物を調製した。
(凝固ゲル化剤の調製)
カルシウム塩としての塩化カルシウム5部、水としての精製水95部を用いて液状の凝固ゲル化剤を調製した。
そして、得られた酸性組成物と凝固ゲル化剤を組み合わせて外用止痒剤とした。
【実施例4】
(酸性組成物の調製)
アルギン酸塩としてのアルギン酸ナトリウム5部、弱酸としてのリン酸二水素ナトリウム3部、水としての精製水91.9部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて酸性組成物を調製した。
(凝固ゲル化剤の調製)
カルシウム塩としての塩化カルシウム10部、水としての精製水90部を用いて液状の凝固ゲル化剤を調製した。
そして、得られた酸性組成物と凝固ゲル化剤を組み合わせて外用止痒剤とした。
【実施例5】
(酸性組成物の調製)
アルギン酸塩としてのアルギン酸カリウム1部、弱酸としてのリン酸二水素カリウム1部、粘着剤としてのメチルセルロース2部、水としての精製水95.9部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて酸性組成物を調製した。
(凝固ゲル化剤の調製)
カルシウム塩としての硫酸カルシウム5部、酸としてのクエン酸1部、水としての精製水94部を用いて液状(一部粉末が沈殿)で酸性の凝固ゲル化剤を調製した。
そして、得られた酸性組成物と凝固ゲル化剤を組み合わせて外用止痒剤とした。
【実施例6】
(酸性組成物の調製)
アルギン酸塩としてのアルギン酸カリウム4部、弱酸としてのリン酸二水素ナトリウム2部、水としての精製水93.9部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて酸性組成物を調製した。
(凝固ゲル化剤の調製)
カルシウム塩としての乳酸カルシウム5部、酸としてのリンゴ酸5部、水としての精製水90部を用いて液状で酸性の凝固ゲル化剤を調製した。
そして、得られた酸性組成物と凝固ゲル化剤を組み合わせて外用止痒剤とした。
【実施例7】
(酸性組成物の調製)
アルギン酸塩としてのアルギン酸カリウム1部、弱酸としてのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム1部、水としての精製水97.9部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて酸性組成物を調製した。
(凝固ゲル化剤の調製)
カルシウム塩としての塩化カルシウム2部、水としての精製水98部を用いて液状の凝固ゲル化剤を調製した。
そして、得られた酸性組成物と凝固ゲル化剤を組み合わせて外用止痒剤とした。
【実施例8】
実施例1で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布(8cm×8cm×厚み0.3mm)とを組み合わせて外用止痒材とした。
【実施例9】
実施例2で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布(8cm×8cm×厚み0.3mm)とを組み合わせて外用止痒材とした。
【実施例10】
実施例3で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布(8cm×8cm×厚み0.3mm)とを組み合わせて外用止痒材とした。
【実施例11】
実施例4で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布(8cm×8cm×厚み0.3mm)とを組み合わせて外用止痒材とした。
【実施例12】
実施例5で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布(8cm×8cm×厚み0.3mm)とを組み合わせて外用止痒材とした。
【実施例13】
実施例6で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布(8cm×8cm×厚み0.3mm)とを組み合わせて外用止痒材とした。
【実施例14】
実施例7で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布(8cm×8cm×厚み0.3mm)とを組み合わせて外用止痒材とした。
【実施例15】
実施例1で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布製フェイスマスク(厚み0.3mm)とを組み合わせてフェイスマスク型のしわ取り具とした。
【実施例16】
実施例2で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布製フェイスマスク(厚み0.3mm)とを組み合わせてフェイスマスク型のしわ取り具とした。
【実施例17】
実施例3で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布製フェイスマスク(厚み0.3mm)とを組み合わせてフェイスマスク型のしわ取り具とした。
【実施例18】
実施例4で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布製フェイスマスク(厚み0.3mm)とを組み合わせてフェイスマスク型のしわ取り具とした。
【実施例19】
実施例5で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布製フェイスマスク(厚み0.3mm)とを組み合わせてフェイスマスク型のしわ取り具とした。
【実施例20】
実施例6で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布製フェイスマスク(厚み0.3mm)とを組み合わせてフェイスマスク型のしわ取り具とした。
【実施例21】
実施例7で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としてのレーヨン不織布製フェイスマスク(厚み0.3mm)とを組み合わせてフェイスマスク型のしわ取り具とした。
【実施例22】
(酸性組成物の調製)
アルギン酸塩としてのアルギン酸ナトリウム1.5部、弱酸としてのリン酸二水素ナトリウム1.5部、粘着剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム1部、水としての精製水95.9部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて酸性組成物を調製した。
(凝固ゲル化剤の調製)
カルシウム塩としてのグリセロリン酸カルシウム4部、酸としての乳酸1部、水としての精製水90.9部、その他の原料としてのグリセリン5部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて液状で酸性の凝固ゲル化剤を調製した。
そして、得られた酸性組成物と凝固ゲル化剤を組み合わせて外用止痒剤とした。
【実施例23】
(酸性組成物の調製)
アルギン酸塩としてのアルギン酸ナトリウム2部、弱酸としてのリン酸二水素カリウム2部、粘着剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム1.5部、水としての精製水94.4部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて酸性組成物を調製した。
(凝固ゲル化剤の調製)
カルシウム塩としてのグリセロリン酸カルシウム3部、酸としてのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム1部、水としての精製水90.9部、その他の原料としてグリセリン5部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて液状で酸性の凝固ゲル化剤を調製した。
そして、得られた酸性組成物と凝固ゲル化剤を組み合わせて外用止痒剤とした。
【実施例24】
実施例22で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としての綿不織布(8cm×8cm×厚み0.3mm)とを組み合わせて外用止痒材とした。
【実施例25】
実施例23で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としての綿不織布(8cm×8cm×厚み0.3mm)とを組み合わせて外用止痒材とした。
【実施例26】
実施例22で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としての綿不織布製フェイスマスク(厚み0.3mm)とを組み合わせてフェイスマスク型のしわ取り具とした。
【実施例27】
実施例23で調製した酸性組成物と、凝固ゲル化剤と、吸収体としての綿不織布製フェイスマスク(厚み0.3mm)とを組み合わせてフェイスマスク型のしわ取り具とした。
比較例1
特開平11−178910号公報の実施例1に従い、1(重量/体積)%のアルギン酸ナトリウム水溶液と、5(重量/体積)%の塩化カルシウム水溶液を調製した。
比較例2
比較例1で調製したアルギン酸ナトリウム水溶液と、塩化カルシウム水溶液と、吸収体としてのレーヨン不織布製フェイスマスク(厚み0.3mm)とを準備した。
比較例3
(酸性組成物の調製)
アルギン酸塩としてのアルギン酸ナトリウム1部、酸としてのコハク酸1部、水としての精製水97.9部、防腐剤としてのメチルパラベン0.1部を用いて酸性組成物を調製した。
(凝固ゲル化剤の調製)
カルシウム塩としての塩化カルシウム2部、水としての精製水98部を用いて液状の凝固ゲル化剤を調製した。
そして、得られた酸性組成物と凝固ゲル化剤を組み合わせて比較用の外用止痒剤とした。
評価試験
このようにして得られた実施例および比較例についてつぎのようにして評価を行った。
評価1:虫さされの痒みに対する効果
13才の男児の左手甲の蚊による虫さされに対し、実施例2の酸性組成物0.3mlを塗布し(塗布厚み約0.5mm)、その上から実施例2の凝固ゲル化剤0.1mlをスプレーで噴霧したところ、直ちに酸性組成物は凝固し、それと同時に痒みが治まった。一方、右手甲の蚊による虫さされに対し、比較例1のアルギン酸ナトリウム水溶液0.3mlを塗布し(塗布厚み約0.5mm)、その上から比較例1の塩化カルシウム水溶液0.1mlをスプレーで噴霧したところ、直ちにアルギン酸ナトリウム水溶液は凝固したが、痒みに対する効果は認められなかった。
評価2:湿疹の痒みに対する効果
9才の女児の右大腿部の湿疹に対し、実施例3の酸性組成物2mlを塗布し(塗布厚み約0.5mm)、その上から実施例3の凝固ゲル化剤0.2mlをスプレーで噴霧したところ、直ちに酸性組成物は凝固し、それと同時に痒みが治まった。一方、左大腿部の湿疹に対し、比較例1のアルギン酸ナトリウム水溶液2mlを塗布し(塗布厚み約0.5mm)、その上から比較例1の塩化カルシウム水溶液0.2mlをスプレーで噴霧したところ、直ちにアルギン酸ナトリウム水溶液は凝固したが、痒みに対する効果は認められなかった。
評価3:あせもの痒みに対する効果
47才男性の鼻にできたあせもに対し、実施例4の酸性組成物1mlを塗布し(塗布厚み約0.5mm)、その上から実施例4の凝固ゲル化剤0.1mlをスプレーで噴霧したところ、直ちに酸性組成物は凝固し、それと同時に痒みが治まった。
評価4:老人性掻痒症に対する効果
71才男性の右足の老人性掻痒症に対し、実施例9の酸性組成物6mlを用いて含浸した不織布2枚(1枚あたり3ml)を貼付し、それぞれに実施例9の凝固ゲル化剤0.4mlをスプレーで噴霧したところ、不織布に含浸された酸性組成物は直ちに凝固し、それと同時に痒みが治まった。
評価5:痒みに対する効果
9才女児の右手掌の原因不明の痒みに対し、実施例7の酸性組成物0.5mlを塗布し(塗布厚み約0.1mm)、その上から実施例7の凝固ゲル化剤0.2mlをスプレーで噴霧したところ、直ちに酸性組成物は凝固し、それと同時に痒みが治まった。一方、同じく左手掌の原因不明の痒みに対し、比較例3の酸性組成物0.5mlを塗布し(塗布厚み約0.1mm)、その上から比較例3の凝固ゲル化剤0.2mlをスプレーで噴霧したところ、直ちに酸性組成物は凝固したものの、痒みは治まらなかった。そこで、左手掌を洗浄後、左手掌の原因不明の痒みに対し、実施例2の酸性組成物0.5mlを塗布し(塗布厚み約0.1mm)、その上から実施例2の凝固ゲル化剤0.2mlをスプレーで噴霧したところ、直ちに酸性組成物は凝固し、それと同時に痒みが治まった。そして、実施例7よりも実施例2の方が止痒効果が強かった。
評価6:顔面の目尻や額のしわ取り効果
27〜42才の女性モニターにより、実施例15〜21の酸性組成物15mlを含浸させたレーヨン不織布製フェイスマスクを実施例ごとに一人1枚、および比較例2のアルギン酸ナトリウム水溶液15mlを含浸したレーヨン不織布製フェイスマスク1枚の合計7枚を、任意の1枚を任意の日に顔に貼付し、その上からそれぞれの実施例ごとに凝固ゲル化剤および比較例2の塩化カルシウム水溶液0.2mlをスプレーで噴霧した。その結果、実施例15〜21のしわ取り具では、酸性組成物は直ちに凝固し、モニター全員がフェイスマスクの顔への強い吸着感と顔の収縮感を感じた。一方、比較例2では、アルギン酸ナトリウム水溶液も直ちに凝固したが、フェイスマスクの顔への吸着感は弱く、顔の収縮感も弱かった。そして、5分後にフェイスマスクを外したところ、実施例15〜21のしわ取り具を使用したモニターは、全員が目尻や額などのしわがなくなっていた。また、肌に透明感が出る美白効果を非常に強力に得られていた。特にシャンプーのかぶれによる額の痒みがあったモニターは、すべての実施例のしわ取り具により、直ちに痒みが消失した。一方、比較例2では痒みに対する効果は認められず、またしわ取り効果も認められなかった。
なお、特に具体的には記載しないが、実施例1、5、6の外用止痒剤も実施例2、3、4、7と同様に止痒効果が認められ、実施例8、10、11、12、13、14の外用止痒材も実施例9と同様に止痒効果が認められたことを確認している。
評価7:湿疹の痒みに対する効果
10才の女児の右内腕の湿疹の半分に対し、実施例22の酸性組成物1mlを塗布し(塗布厚み約0.1mm)、その上から実施例22の凝固ゲル化剤0.2mlをスプレーで噴霧したところ、直ちに酸性組成物は凝固し、それと同時に痒みが治まった。前記酸性組成物を塗布していない残りの半分の湿疹に、前記凝固ゲル化剤を噴霧してみたが、痛み等の刺激は一切なかった。なお、前記凝固ゲル化剤は、口に入れても苦みなどは少なく、目に入れても刺激は弱かった。
なお、特に具体的には記載しないが、実施例23の外用止痒剤も実施例22と同様に止痒効果が認められ、また痛み等の刺激は一切なかったことを確認している。
また、実施例24、25の外用止痒材も実施例22と同様に止痒効果が認められ、さらに実施例26、27のしわ取り具は実施例15と同様にしわ取り効果が認められたことを確認している。
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明の皮膚外用材によれば、アルギン酸塩とリン酸系の弱酸およびエチレンジアミン四酢酸系の弱酸のうちの少なくとも1種の弱酸を用いているので、短時間で凝固したゲルを形成し、即効性の止痒効果が得られる。また、酸性多糖としてのアルギン酸塩と酸としてのリン酸系、エチレンジアミン四酢酸系などの弱酸を用いているので、美白効果といった美容効果なども得られる。また、酸性組成物(A)と凝固ゲル化剤(B)の他に吸収体も用いる本発明の皮膚外用材によれば、吸収体を用いて凝固したゲルを形成するので、簡単にしわを取ることができる。また、即効性の止痒効果や、美白効果といった美容効果なども得られる。したがって、本発明の皮膚外用材は、化粧品、医薬品、医薬部外品などとして好適に利用することができる。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の酸性組成物(A)と、皮膚に付着した酸性組成物(A)に供給して用いられる下記の凝固ゲル化剤(B)とを含むことを特徴とする皮膚外用材。
(A)アルギン酸塩とリン酸系の弱酸およびエチレンジアミン四酢酸系の弱酸のうちの少なくとも1種の弱酸と水とを含有する酸性組成物。
(B)カルシウム塩を含有する凝固ゲル化剤。
【請求項2】
前記アルギン酸塩が、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸カリウムのうちの少なくとも1種である請求項1記載の皮膚外用材。
【請求項3】
前記リン酸系の弱酸が、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸二水素カリウムのうちの少なくとも1種である請求項1記載の皮膚外用材。
【請求項4】
前記カルシウム塩が、塩化カルシウムおよびグリセロリン酸カルシウムのうちの少なくとも1種である請求項1記載の皮膚外用材。
【請求項5】
前記凝固ゲル化剤(B)が、グリセロリン酸カルシウムと乳酸とを含有する水溶液である請求項1記載の皮膚外用材。
【請求項6】
前記酸性組成物(A)が、さらに皮膚表面との親和性を高めるための粘着剤を含有する請求項1記載の皮膚外用材。
【請求項7】
前記酸性組成物(A)を含浸させるとともに、前記酸性組成物(A)を含浸させた状態で皮膚表面に直接貼付してその皮膚表面に酸性組成物(A)を付着させるための吸収体をさらに含む請求項1記載の皮膚外用材。
【請求項8】
前記吸収体が、顔面の略全体を覆うフェイスマスク形状である請求項7記載のフェイスマスク型皮膚外用材。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の皮膚外用材からなる外用止痒剤。
【請求項10】
請求項7記載の皮膚外用材からなるしわ取り具。
【請求項11】
請求項8記載のフェイスマスク型皮膚外用材からなるフェイスマスク型しわ取り具。

【国際公開番号】WO2004/052378
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【発行日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558430(P2004−558430)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015659
【国際出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【出願人】(596060893)
【Fターム(参考)】