説明

皮膚洗浄剤組成物

【課題】流れずに肌に留まり、伸ばしやすく、なめらかな泡で、洗いにくい部位まで、すみずみ洗え、しかもすすぎ直後は残留感がなく、乾き際にはべたつかない素肌感が得られる皮膚洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)一般式(1)
【化1】


(式中、R1は炭素数4〜22のアルキル基を示し、nは0〜20の数を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す)
で表されるアルキルエーテルカルボン酸又はその塩であって、R1の平均炭素数が10.8〜12.8であり、n=0の成分を9.6質量%を超え27質量%以下、n=1の成分とn=2の成分を合計で21質量%以上40質量%未満含むアルキルエーテルカルボン酸又はその塩 0.5〜15質量%、
(B)両性界面活性剤 0.25〜10質量%、
(C)水
を含有する皮膚洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキルエーテルカルボン酸系界面活性剤は、肌に対して低刺激な界面活性剤として知られているが、泡立ちが悪い、すすぎ時にぬるぬるとした感触を与えてしまうなどの課題があった。
これらの課題を解決するため、特定のエチレンオキサイドの付加モル分布を有するエーテルカルボン酸系界面活性剤を含有する洗浄剤組成物(特許文献1)や、カチオンポリマーと組み合わせた洗浄剤組成物(特許文献2)などが検討されている。
【0003】
また、アルキルエーテル硫酸塩等の他の界面活性剤との併用も検討されている(特許文献3)が、泡立ちやすすぎについての効果が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−175799号公報
【特許文献2】特開2008−285479号公報
【特許文献3】特開2009−263290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの洗浄剤組成物から得られる泡は、水っぽく、全身など広範囲を洗うには、泡の広がりが悪く、伸ばしにくいなど、効果が不十分であった。
本発明の課題は、流れずに肌に留まり、伸ばしやすく、なめらかな泡で、しかもすすぎ直後は残留感がなく、乾き際にはべたつかない素肌感が得られる皮膚洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の分布を有するアルキルエーテルカルボン酸塩と、両性界面活性剤を組み合わせて用いれば、上記課題を解決した皮膚洗浄剤組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は炭素数4〜22のアルキル基を示し、nは0〜20の数を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す)
で表されるアルキルエーテルカルボン酸又はその塩であって、R1の平均炭素数が10.8〜12.8であり、n=0の成分を9.6質量%を超え27質量%以下、n=1の成分とn=2の成分を合計で21質量%以上40質量%未満含むアルキルエーテルカルボン酸又はその塩 0.5〜15質量%、
(B)両性界面活性剤 0.25〜10質量%、
(C)水
を含有する皮膚洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、流れずに肌に留まり、伸ばしやすく、なめらかな泡が得られ、屈曲部、関節等の洗いにくい部位まで、すみずみまで洗え、しかもすすぎ直後は残留感がなく、乾き際にはべたつかない素肌感が得られ、落屑も少ないものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いる成分(A)のアルキルエーテルカルボン酸又はその塩は、一般式(1)で表されるものである。
式中、R1は炭素数4〜22のアルキル基であり、炭素数6〜20のアルキル基、更に炭素数8〜18のアルキル基が好ましく、炭素数8〜16、更には炭素数10〜16のアルキル基がより好ましい。また、R1のアルキル鎖は、直鎖又は分岐鎖のいずれでも良いが、起泡性の点から、直鎖アルキル基が好ましい。また、R1の平均炭素数は10.8〜12.8であり、好ましくは10.8〜12.5であり、より好ましくは12.1〜12.4である。この範囲内であれば、起泡性及び泡質、さらに低温安定性の点で優れるので好ましい。
また、R1は2種以上のアルキル基を含むことが好ましく、一番含有量の多いアルキル鎖長を有する成分が55質量%以上97質量%未満であるのが好ましく、60〜95質量%がより好ましく、さらに70〜95質量%であるのが、泡量及び泡質に優れるので好ましい。
【0012】
また、式中、nは0〜20の数を示し、0〜12がより好ましい。なお、nは、エチレンオシキシドの付加モル数を示すが、成分(A)の組成中の平均付加モル数(nの平均値)は、泡立ちが良好である点から、1.5〜10が好ましく、2.5〜6.4がより好ましく、2.5〜3.7がさらに好ましく、2.5〜3.4がさらに好ましく、2.8〜3.4がさらに好ましく、2.8〜3.1がさらに好ましい。
成分(A)のアルキルエーテルカルボン酸又はその塩は、一般式(1)において、n=0の成分を9.6質量%を超え27質量%以下、好ましくは9.8〜27質量%、より好ましくは9.9〜27質量%、更に好ましくは9.9〜16質量%、より好ましくは9.9〜15質量%含むものである。この範囲内とすることにより、泡量、泡質に優れる。
さらに、n=1の成分とn=2の成分を合計で21〜40質量%未満、好ましくは27〜37質量%、より好ましくは27〜36.5質量%、さらに好ましくは35〜36.1質量%含むのが、泡質、泡量の観点から好ましい。
【0013】
また、式中、Mとしては、水素原子;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のアンモニウムなどが挙げられる。これらの中で、起泡性、低温安定性、経時での着色のなさの点から、アルカリ金属が好ましい。
【0014】
成分(A)のアルキルエーテルカルボン酸又はその塩は、一般式(1)中、n=0、1、2、3、4の成分の質量割合が、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:0.99〜3.50:0.89〜3.00:0.76〜3.00:0.63〜1.52であることが、起泡性、洗浄性、すすぎ時のきしみ感の両立性の点から、好ましい。
【0015】
また、一般式(1)中、n=0の成分を9.9質量%以上12質量%未満含み、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:1.53〜1.87:1.59〜2.25:1.33〜2.16:1.14〜1.52となるか、又は、n=0の成分を12質量%以上17質量%以下含み、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:0.99〜1.34:0.89〜1.40:0.76〜1.23:0.63〜0.99となるのが、泡質、泡量の観点から好ましい。
【0016】
さらに、一般式(1)中、n=0の成分を9.9〜11.5質量%含み、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:1.58〜1.84:1.72〜2.17:1.49〜2.00:1.14〜1.52となるか、又は、一般式(1)中、n=0の成分を13〜15質量%含み、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:1.00〜1.31:0.93〜1.34:0.79〜1.18:0.63〜0.99となるのが、泡質、泡量の点から好ましい。
【0017】
成分(A)において、一般式(1)中、R1は炭素数4〜22のアルキル基であり、R1の平均炭素数は10.8〜12.8であり、また、一番含有量の多いアルキル鎖長を有する成分が55質量%以上97質量%未満であり、更に、nは0〜20の数を示し、nの付加モル数の平均値は、1.5〜10、さらには2.5〜6.4であり、n=0の成分を9.8〜27質量%、n=1の成分とn=2の成分を合計で27〜37質量%含有することが好ましい。また、式中、Mとしては、水素原子、ナトリウム、カリウム、アンモニウムが好ましい。このようにすることで、起泡を早めることができる。
【0018】
成分(A)において、一般式(1)中、R1は炭素数6〜20のアルキル基が好ましく、R1の平均炭素数は10.8〜12.8であり、また、一番含有量の多いアルキル鎖長を有する成分が55質量%以上97質量%未満であり、更に、nは0〜20の数を示し、nの平均値は、2.5〜3.7であり、n=0の成分を9.8〜27質量%、n=1の成分とn=2の成分を合計で27〜37質量%含有することが好ましい。また、式中、Mとしては、水素原子、ナトリウム、カリウム、アンモニウムが好ましい。このようにすることで、起泡性を早めることができる。
【0019】
成分(A)において、一般式(1)中、R1は炭素数8〜18のアルキル基であり、R1の平均炭素数は10.8〜12.8であり、また、一番含有量の多いアルキル鎖長を有する成分が55質量%以上97質量%未満であり、更に、nは0〜20の数を示し、nの平均値は、2.5〜3.4であり、n=0の成分を9.9〜27質量%、n=1の成分とn=2の成分を合計で27〜36.5質量%含有することが好ましい。また、式中、Mとしては、水素原子、ナトリウム、カリウム、アンモニウムが好ましい。このようにすることで、すすぎ時のストップフィーリング性を強めることができる。
【0020】
成分(A)において、一般式(1)中、R1は炭素数8〜16のアルキル基であり、R1の平均炭素数は10.8〜12.5であり、また、一番含有量の多いアルキル鎖長を有する成分が60〜95質量%であり、更に、nは0〜20の数を示し、nの平均値は、2.8〜3.4であり、n=0の成分を9.9〜16質量%、n=1の成分とn=2の成分を合計で27〜36.5質量%含むものが好ましい。また、式中、Mとしては、水素原子、ナトリウム、カリウム、アンモニウムが好ましい。このようにすることで、泡量、泡質を向上させることができる。
【0021】
成分(A)において、一般式(1)中、R1は炭素数10〜16のアルキル基であり、R1の平均炭素数は12.1〜12.4であり、また、一番含有量の多いアルキル鎖長を有する成分が70〜95質量%であり、更に、nは0〜20の数を示し、nの平均値は、2.8〜3.1であり、n=0の成分を9.9〜15質量%、n=1の成分とn=2の成分を合計で35〜36.1質量%含むものが好ましい。また、式中、Mとしては、水素原子、ナトリウム、カリウム、アンモニウムが好ましい。このようにすることで、泡量、泡質、を向上させることができる。
【0022】
なお、本発明の成分(A)において、R1のアルキル鎖長の分布、R1の平均アルキル鎖長、n=0の成分量、nの平均付加モル数、n=0、1、2、3、4の成分の質量割合は、一般式(1)で表されるアルキルエーテルカルボン酸においてガスクロマトグラフィーによる分析を行い、以下のようにして求める。
【0023】
〔R1のアルキル鎖長の分布〕
ガスクロマトグラフィーより得られるピーク面積のうち、n=0モルに相当する各アルキル鎖長のピーク面積を求め、それらの総和を100とし、各アルキル鎖長分布の百分率を求めた。n=1〜3モルにおいても同様に計算し、n=0〜3モルの各アルキル鎖長分布の百分率の値を平均し、R1のアルキル鎖長の分布を求めた(これより、R1の組成のうち最も多く含有するアルキル基成分を特定できる)。
【0024】
〔R1の平均アルキル鎖長〕
上記のようにして求めたR1のアルキル鎖長の分布より、各成分の割合を求め、得られた割合に対応するアルキル鎖長分の炭素数を各々掛け、これらの総和を得た。これを平均アルキル鎖長とした。
【0025】
〔n=0の成分量、n=1の成分とn=2の成分の合計量〕
1の組成のうち、最も多く含有するアルキル鎖長を特定し、その成分のn=0〜10に相当するガスクロマトグラフィーの面積を合計した。その合計量を100%として、n=0の成分量、n=1の成分とn=2の成分の合計量を算出した。
【0026】
〔nの平均付加モル数〕
1の組成のうち最も多く含有するアルキル鎖長を特定し、その成分のn=0〜10に相当するガスクロマトグラフィーの面積を合計した(nが11以上のものは微量であり、計算から除いた)。その合計量を1として、n=0〜10の各々の割合を求めた。この割合に、各々の付加モル数を掛け、これらの合計をnの平均付加モル数とした。
【0027】
〔n=0、n=1、n=2、n=3、n=4の成分の質量割合〕
EO付加モル数の異なる各成分の質量割合に関しては、ガスクロマトグラフィーにより得られるピーク面積から、上記に示した方法でR1のアルキル鎖長の分布を求め、R1の組成のうち最大含有量のアルキル鎖長成分を特定し、その最大成分のn=0、n=1、n=2、n=3、n=4の面積比から特定した。
【0028】
成分(A)のアルキルエーテルカルボン酸又はその塩は、1種以上を用いることができ、前記のような組成を有するもので、泡量、泡質の点から、全組成中に0.5〜15質量%含有され、1〜10質量%が好ましく、更に、2〜8質量%含有されるのが好ましい。なお、ここでの含有量は、アルキルエーテルカルボン酸としての含有量を示す。
【0029】
また、成分(A)の中和率をコントロールすることにより、泡質、更に泡の弾性率をコントロールすることができる。更に、中和率を1以下にすることにより、泡は、肌に留まりやすく、伸ばしやすくなり、皮膚のひだの部分など洗い難いところも、容易に洗いやすく改善することができる。中和度は、0.45〜0.9が好ましく、更に、0.5〜0.65が好ましい。
【0030】
本発明で用いる成分(B)の両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド型界面活性剤、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン型界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等のアミドベタイン型界面活性剤、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型界面活性剤などが挙げられる。
これらのうち、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等のアミドベタイン型界面活性剤、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型界面活性剤が好ましい。
【0031】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、泡量の点から、全組成中に0.25〜10質量%含有され、更に、0.5〜9質量%含有されるのが好ましい。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物において、成分(A)と(B)を組み合わせることにより、泡質を著しく変えることができ、肌に留まりやすく、伸ばしやすい泡を得る点から、成分(A)及び(B)の質量割合は、(A):(B)=3:7〜9:1が好ましく、50:50〜88:12がより好ましい。なお、ここでの成分(A)の値は、アルキルエーテルカルボン酸としての含有量を示す。
【0033】
成分(C)の水は、皮膚洗浄剤組成物中の溶剤として使用され、全組成中に、好ましくは30〜98質量%、より好ましくは40〜90質量%含有することができ、洗浄剤組成物を構成する前記成分及びその他成分の残部となる。
【0034】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、さらに、(D)アルキル硫酸塩又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を含有することができる。成分(D)は、成分(A)と(B)の泡質を維持した状態で、泡立ちや泡量を、より向上させることができる。
成分(D)としては、一般式(2)
【0035】
【化2】

【0036】
(式中、R2は炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を示し、mは0〜20の数を示し、Yは水素原子、又は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウム及びグルクアンモニウムから選ばれるカチオンを示す)
で表されるものが好ましい。
【0037】
一般式(2)中、R2は炭素数12〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、更に、炭素数12〜14の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。
また、使用感の点から、組成物中の平均値mは0.5〜12が好ましく、0.5〜5、更に0.5〜3がより好ましい。
【0038】
成分(D)は、1種以上を用いることができ、泡立ちや泡量の点から、全組成中に1〜20質量%含有するのが好ましく、2〜15質量%がより好ましく、更に、泡の伸ばしやすさの点から3〜12.5質量%が好ましい。なお、ここでは、成分(D)が塩を形成しているものとし、含有量を特定する。
【0039】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、更に、(E)カチオン基含有ポリマーを含有することができ、洗浄剤に適度な粘度を付与し、なめらかな感触を与えることができる。
かかるカチオン基含有ポリマーとしては、例えば、カチオン化セルロース、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー;ジメチルジアリルアンモニウムクロリドと(メタ)アクリル酸、又は(メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリルアミド等、他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、4級化ポリビニルピロリドン誘導体、ポリグリコールポリアミン縮合物、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体、ビニルピロリドン/4級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体、アルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体などが挙げられる。
【0040】
成分(E)のカチオン基含有ポリマーとしては、カチオン電荷密度が4.5meq/g以上のものが好ましい。
ここで、カチオン電荷密度とは、ポリマーを構成するモノマーユニット中のカチオン電荷の当量数(meq/g)をいう。
【0041】
カチオン電荷密度が4.5meq/g以上のカチオン基含有ポリマーとしては、例えば、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー;ジメチルジアリルアンモニウムクロリドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド等、他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0042】
より具体的には、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー(マーコート100;オンデオナルコ社製:電荷密度6.2meq/g)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドとアクリル酸の共重合体(マーコート295;オンデオナルコ社製:電荷密度6.0meq/g)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドとアクリル酸の共重合体(マーコート280;オンデオナルコ社製:電荷密度5.0meq/g)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドとアクリル酸とアクリルアミドの共重合体(マーコート3331;オンデオナルコ社製:電荷密度2.8meq/g)、ポリ塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(花王社製:電荷密度4.8meq/g)等が挙げられる。
【0043】
カチオン基含有ポリマーのカチオン電荷密度は、4.5meq/g以上が好ましく、より好ましくは4.5〜7meq/g、更に好ましくは5〜7meq/g、更に好ましくは5.5〜6.5meq/gである。この範囲の高いカチオン電荷密度を有するものであれば、成分(A)及び(B)を含有する洗浄剤、更に、成分(D)を含有する洗浄剤を混合することにより、すすぎ時のぬるつきが少なく、すすぎ直後の肌において、残留感を感じさせず、更に、乾き際のべたつき感もなくなるので、洗浄後は、非常にさっぱりした感じを付与することができる。
【0044】
成分(E)のポリマーとしては、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー(マーコート100;オンデオナルコ社製:電荷密度6.2meq/g)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドとアクリル酸の共重合体(マーコート295;オンデオナルコ社製:電化密度6.0meq/g)が、製造設備の耐腐食性の面からも好ましい。
【0045】
成分(E)は、1種以上を用いることができ、すすぎ時の残留感のなさ、乾き際のべたつきのなさ、の点から、全組成中に0.05〜2質量%含有するのが好ましく、0.075〜1.5質量%がより好ましく、更に、0.1〜0.8質量%が好ましい。
【0046】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、更に、通常の洗浄剤に用いられる成分、例えば、成分(A)、(B)及び(D)以外の界面活性剤、保湿剤、油性成分、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、塩類、パール化剤、スクラブ剤、香料、冷感剤、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、植物エキス等を含有することができる。
【0047】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、通常の方法により、配合成分を混合することにより製造される。得られる洗浄剤組成物は、液状又は固形状いずれでも良いが、液状である場合には、30℃において、B型粘度計(東京計器社製)で測定したときの粘度が200〜80000mPa・s であるのが好ましく、配合成分を適宜選択することにより調整することができる。
また、pHは、3〜12であることが好ましく、pH5〜10.5がより好ましく、更にpH5〜7であるのが好ましい。なお、pHの測定は、25℃において、各洗浄剤組成物をイオン交換水で20倍に希釈して行った値である。
【0048】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、顔、手足や胴体などの身体皮膚に適用し、洗浄のために使用し、洗浄した後、すすぐものに好適である。例えば、洗顔料、ボディーソープ、ハンドソープ等として好適であり、更にボディーソープが好ましい。
本発明の皮膚洗浄剤組成物を用いて皮膚を洗浄する方法は、例えば、以下のとおりである。すなわち、本発明の皮膚洗浄剤組成物を身体、つまり顔、手足、胴体などの身体皮膚部に適量を適用し、泡立てて洗浄した後、シャワー等の温水を利用してすすぐ方法である。また、タオル、スポンジ、ブラシ等の洗浄補助具に適量を適用し、泡立てて洗浄することもできる。
【0049】
(測定方法)
本発明において、アルキルエーテルカルボン酸のアルキル組成、EO付加モル分布及び各成分の比率は、ガスクロマトグラフィー(GC)により、以下の分析方法で測定した。
【0050】
(GC分析条件)
GC機器;アジレントテクノロジー社製、7890A
カラム;アジレントテクノロジー社製、DB−5
(30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)
検出器;FID
キャリア;ヘリウムガス、1mL/min
昇温条件;100℃から325℃まで5℃/minで昇温。その後、35分間325℃を保持。
【0051】
(サンプルの前処理方法)
アルキルエーテルカルボン酸150mgをメタノール50mLで溶解した。また、洗浄剤組成物については、アルキルエーテルカルボン酸として150mgとなるよう採取し、メタノール50mLで溶解した。なお、洗浄剤組成物がポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などの強アニオン性の界面活性剤を含む場合、それらが250mg以下となるように採取した。この溶液1mLを採取して、あらかじめメタノール4mLでコンディショニングを行った固相カートリッジ(Biotage製、Isolute SAX、1g、3mL、500-0100-B)に適用し、10mL丸底試験管に通過液を捕集した。その後、ギ酸4.6gに100mLのメタノールを加えた溶液6mLで溶出し、溶出液についても同じ試験管に捕集した。捕集した溶液は、50℃に加温したブロックヒーターに設置し、窒素ガスを吹き込み、1mL程度まで濃縮した後、さらに室温下で窒素ガスを吹き込み乾燥させた。そこに、ジアゾメタン−エーテル溶液2mLを加え、攪拌しながら室温下で10分間放置し誘導体化を行った。その後、室温下で窒素ガスを吹き込み、500μL以下になるまで濃縮した後、クロロホルムを加えて500μLとし、GC分析に供した。
なお、ジアゾメタン−エーテル溶液は、ジアゾメタン生成装置(宮本理研工業製、GM−50)を用い、以下の手順で調製した。第1と第2の受け器、第2と第3の受け器をシリコンゴム栓およびテフロン(登録商標)チューブで連結する。第2の受け器に、N−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン0.8gを採取し、2.5mLのイオン交換水を加えた。第3の受け器に、t−ブチルメチルエーテル10mLを採取した。第1、第2、第3の受け器を氷冷した。続いて第2の受け器に、プラスチックシリンジを備え付け、このシリンジ中に水酸化ナトリウム20gをイオン交換水100mLに溶解させた溶液3mLを入れた。この水酸化ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下してジアゾメタンガスを生成させ、第1の受け器側から静かに窒素ガスを吹き込み、第3の受け器のt−ブチルメチルエーテルに溶解させて、ジアゾメタン−エーテル溶液を得た。
上記サンプルの前処理における試薬は、以下のものを使用した。
メタノール(関東化学製、高速液体クロマトグラフィー用、25183-1B)
ギ酸(和光純薬工業製、試薬特級、066-00461)
クロロホルム(関東化学製、鹿1級、07278-01)
N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(関東化学製、鹿1級、25596-51)
t−ブチルメチルエーテル(関東化学製、鹿特級、04418-00)
水酸化ナトリウム(和光純薬工業製、特級、196-13761)
【実施例】
【0052】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に用いる成分(A)のアルキルエーテルカルボン酸は、例えば以下のようにして製造することができる。なお、断りのない限り「%」は質量%を示す。
【0053】
製造例1
攪拌および温度調節機能を備えたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール[商品名:カルコール2098、花王製]1144g(6.14モル)、ミリスチルアルコール[商品名:カルコール4098、花王製]60.2g(0.281モル)、水酸化カリウム2.68g(0.0478モル)を仕込み、減圧脱水を行った。次いで、エチレンオキサイド(EO)996g(22.6モル)を155℃にて導入し、反応温度155℃、反応圧力0.4MPaで2時間反応を行った。反応終了後、80℃、6kPaの減圧条件で30分間攪拌し、未反応のエチレンオキサイドを除去した後、窒素を導入し常圧にし、4.82g(0.0482モル)の90%乳酸をオートクレーブ内に加え、80℃で30分間攪拌し、EO付加モル数3.55モルのアルキルエトキシレート(以下、「生成AE」ともいう)を得た。
攪拌機能、温度調節機能及び酸素ガス導入管を取り付けたガラス製反応容器に、上記生成物90g(0.2モル)と、48%水酸化ナトリウム水溶液16.7g(水酸化ナトリウムとして0.2モル)、パラジウム−白金−ビスマス系触媒(活性炭にパラジウム4%、白金1%及びビスマス5%を担持、含水率50%)0.9g、水494.4gをそれぞれ仕込んだ。攪拌条件下、液温を70℃まで昇温し、酸素を27モル%(対生成AE/時間)の割合で吹き込みながら、反応温度70℃で3.5時間接触酸化反応をさせた。反応率は89%であった。
反応終了後、反応液から触媒を濾別し、アルキルエーテルカルボン酸Na塩の水溶液を得た。続いて、35%塩酸を加え、分液操作を実施し、アルキルエーテルカルボン酸を得た。これをEC1とする。
【0054】
ガスクロマトグラフィーの分析の結果、EC1は、一般式(1)において、M=H、R1はラウリル基/ミリスチル基=95/5、平均炭素数は12.1、nの平均値は2.8、n=0の成分を14.7質量%含み、n=1の成分とn=2の成分の合計量は36.1質量%であった。
また、EO付加モル数の異なる各成分の比率に関しても、R1の組成のうち最大成分の測定値から算出した結果、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:1.22:1.23:1.06:0.83であった。
【0055】
製造例2
製造例1に倣い、デシルアルコール[商品名:カルコール1098、花王製]、ラウリルアルコール[商品名:カルコール2098、花王製]、ミリスチルアルコール[商品名:カルコール4098、花王製]、セチルアルコール[商品名:カルコール6098、花王製]を質量比10/70/15/5に混合した原料にEOを反応させ、EO付加モル数3.55モルのアルキルエトキシレートを得た。これを実施例1同様、酸化反応を行い、得られたアルキルエーテルカルボン酸塩を塩酸処理することにより、アルキルエーテルカルボン酸を得た。
【0056】
ガスクロマトグラフィーの分析の結果、一般式(1)において、M=H、R1はデシル基/ラウリル基/ミリスチル基/パルミチル基=10/70/15/5、平均炭素数は12.3、nの平均値は3.3、n=0の成分を15.2質量%含み、n=1の成分とn=2の成分の合計量は31.4質量%であった。
また、EO付加モル数の異なる各成分の比率に関しても、R1の組成のうち最大成分の測定値から算出した結果、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:1.07:1.00:0.85:0.67であった。
【0057】
製造例3
攪拌、温度調節機能を取り付けたガラス製反応容器に、ラウリルアルコール372g(2.00モル)を仕込み、攪拌条件下、液温を70℃まで昇温させ、モノクロロ酢酸ナトリウム256g(2.20モル)及び水酸化ナトリウム88g(2.20モル)を分割して加えながら、5時間反応を行った。反応終了後、析出物を濾別し、続いて35%塩酸を加え、酸型化し、アルキルエーテルカルボン酸を得た(一般式(1)において、M=H、R1はラウリル基、n=0)。
【0058】
製造例4
製造例1に倣い、デシルアルコールを原料にEOを反応させ、EO付加モル数3.55モルのアルキルエトキシレートを得た。これを実施例1同様、酸化反応を行い、得られたアルキルエーテルカルボン酸塩を塩酸処理することにより、アルキルエーテルカルボン酸を得た。
ガスクロマトグラフィーの分析の結果、一般式(1)において、M=H、R1はデシル基、nの平均値は3.1、n=0の成分を16質量%含み、n=1の成分とn=2の成分の合計量は37質量%であった。
【0059】
製造例5
製造例1に倣い、ラウリルアルコールを原料にEOを反応させ、EO付加モル数3.55モルのアルキルエトキシレートを得た。これを実施例1同様、酸化反応を行い、得られたアルキルエーテルカルボン酸塩を塩酸処理することにより、アルキルエーテルカルボン酸を得た。
ガスクロマトグラフィーの分析の結果、一般式(1)において、M=H、R1はラウリル基、nの平均値は3.1、n=0の成分を16質量%含み、n=1の成分とn=2の成分の合計量は37質量%であった。
【0060】
製造例6
製造例1に倣い、ミリスチルアルコールを原料にEOを反応させ、EO付加モル数3.55モルのアルキルエトキシレートを得た。これを実施例1同様、酸化反応を行い、得られたアルキルエーテルカルボン酸塩を塩酸処理することにより、アルキルエーテルカルボン酸を得た。
ガスクロマトグラフィーの分析の結果、一般式(1)において、M=H、R1はミリスチル基、nの平均値は3.1、n=0の成分を16質量%含み、n=1の成分とn=2の成分の合計量は37質量%であった。
【0061】
製造例7
製造例1に倣い、ラウリルアルコール、セチルアルコールを質量比20/80に混合した原料にEO付加し、EO付加モル数3.55モルのアルキルエトキシレートを得た。これを実施例1同様、酸化反応を行い、得られたアルキルエーテルカルボン酸塩を塩酸処理することにより、アルキルエーテルカルボン酸を得た。
ガスクロマトグラフィーの分析の結果、一般式(1)において、M=H、R1はラウリル基/パルミチル基=20/80、nの平均値は3.1、n=0の成分を16質量%含み、n=1の成分とn=2の成分の合計量は37質量%であった。
【0062】
製造例8
製造例1に倣い、ラウリルアルコールを原料にEO反応させ、EO付加モル数4.05モルのアルキルエトキシレートを得た。これを製造例1同様、酸化反応を行い、得られたアルキルエーテルカルボン酸塩を塩酸処理することにより、アルキルエーテルカルボン酸を得た。
【0063】
ガスクロマトグラフィーの分析の結果、一般式(1)において、M=H、R1はラウリル基、nの平均値は3.5、n=0の成分を11.4質量%含み、n=1の成分とn=2の成分の合計量は30.6質量%であった。
また、EO付加モル数の異なる各成分の比率に関しても、R1の組成のうち最大成分の測定値から算出した結果、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:1.31:1.38:1.25:1.06であった。
【0064】
製造例9
攪拌および温度調節機能を備えたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール[商品名:カルコール2098、花王製]1144g(6.14モル)、ミリスチルアルコール[商品名:カルコール4098、花王製]60.2g(0.281モル)、水酸化カリウム2.6g(0.0478モル)を仕込み、減圧脱水を行った。次いで、エチレンオキサイド(EO)718g(16.3モル)を155℃にて導入し、反応温度155℃、反応圧力0.4MPaで2時間反応を行った。反応終了後、冷却し、80℃、6kPaの減圧条件で30分間攪拌し、未反応のエチレンオキサイドを除去した後、窒素を導入し常圧にし、4.82g(0.0482モル)の90%乳酸をオートクレーブ内に加え、80℃で30分間攪拌し、EO付加モル数2.55モルのアルキルエトキシレートを得た。
攪拌、温度調節機能を取り付けたガラス製反応容器に、上記生成物600g(2.00モル)を仕込み、攪拌条件下、液温を70℃まで昇温し、モノクロロ酢酸ナトリウム256g(2.20モル)及び水酸化ナトリウム88g(2.20モル)を分割して加えながら、5時間反応を行った。反応終了後、35%塩酸をpHが2.8になるまで加え、酸型化し油層を分取し、アルキルエーテルカルボン酸を得た。これをEC6とする。
【0065】
ガスクロマトグラフィーの分析の結果、一般式(1)において、M=H、R1はラウリル基/ミリスチル基=94/6、平均炭素数は12.1、nの平均値は3.1、n=0の成分を9.9質量%含み、n=1の成分とn=2の成分の合計量は35.4質量%であった。
また、EO付加モル数の異なる各成分の比率に関しても、R1の組成のうち最大成分の測定値から算出した結果、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:1.65:1.92:1.74:1.32であった。
【0066】
実施例中、EC2に関しては、製造例5、製造例6、製造例7で得られたアルキルエーテルカルボン酸を、各々質量割合で78.75/15/6.25の比で混合し、EC2とした。
【0067】
実施例中、EC3に関しては、製造例2、製造例3で得られたアルキルエーテルカルボン酸を、各々質量割合で90/10の比で混合し、EC3とした。
【0068】
実施例中、EC4に関しては、製造例1で得られたEC1と製造例4で得られたアルキルエーテルカルボン酸を、各々質量割合で40/60の比で混合し、E4とした。
【0069】
実施例中、EC5に関しては、製造例2、製造例8で得られたアルキルエーテルカルボン酸を、各々質量割合で40/60の比で混合し、EC5とした。
【0070】
実施例1〜11、比較例1〜6
表3に示す組成の皮膚洗浄剤組成物を製造し、泡立ち、泡量、泡の貯蔵弾性率の変化率、流れずに肌に留まる泡、泡の伸ばしやすさ、すみずみ洗える(洗浄力)、すすぎ直後の残留感のなさ及び乾き際のべたつきのなさを評価した。結果を表3に併せて示す。
なお、実施例で使用した成分(A)の構成は、表1及び表2に示すとおりである。
また、実施例で使用した市販のアルキルエーテルカルボン酸(AKYPO RLM45(花王社製))の平均EO付加モル数は、各社販売元のカタログ値、ホームページで公開されている値を参考にした。不明なアルキル組成、n=0の成分量、n=1の成分とn=2の成分の合計量に関しては上記方法で分析した。
【0071】
(製造方法)
成分(C)イオン交換水又は、多価アルコールを含む場合は、多価アルコールと成分(C)イオン交換水との混合物を準備する。次に、表に記載の各成分、成分(A)、(B)、(D)、(E)及び水酸化ナトリウムを除く各成分を秤量し、順次、上記成分(C)と混合する。この混合物を50℃に加温し、十分攪拌して均一にする。更に、水酸化ナトリウムを適量添加して、目的の中和度になるように調整する。均一にした後、30℃まで冷却し、目的とする皮膚洗浄剤組成物を得た。
【0072】
(評価方法)
(1)泡立ち:
専門評価者1名が、各皮膚洗浄剤1gを片方の手に取り、水道水で希釈し、泡立てた初期の泡立てやすさを、以下の基準で評価した。
5;非常に泡立てやすい。
4;泡立てやすい。
3;どちらともいえない。
2;泡立てにくい。
1;非常に泡立てにくい。
【0073】
(2)泡量:
専門評価者1名が、各皮膚洗浄剤1gを片方の手に取り、水道水で希釈し、30秒間泡立てた後、泡のボリュームを、以下の基準で評価した。
5;泡に非常にボリュームがある。
4;泡にボリュームがある。
3;どちらともいえない。
2;泡にボリュームがない。
1;泡に全くボリュームがない。
【0074】
(3)泡の貯蔵弾性率の変化率:
水道水に浸したナイロンタオル(含水量約60g)を4つ折りにし、各皮膚洗浄剤6mLを取り、10回こすり・2回もみ込みを4回繰り返して泡立て、泡300mLを容器に集めた。Paar Physica社製、MCR300のレオメーターを用い、動的ひずみ掃引を測定した(ジオメトリー:φ50mm、ステンレス製パラレルプレート)。測定は、周波数:2Hz(一定)、ひずみ:1E−3〜1E+3%、測定温度:30℃、ギャップ:2mm固定、ひずみ:1E−3〜1E+3%を2回連続(1測定3分10秒)で行った。1回目及び2回目の測定において、ひずみ率1E+0%時の貯蔵弾性率を求め、1回目と2回目の貯蔵弾性率比(2回目/1回目)を算出した。結果を以下の基準で示す。この値が大きいほど、泡が安定して流動せず、重力で垂れにくいことを示す。
なお、使用したナイロンタオルは、マーナ社製、ウォーターカラー ナイロンタオル(ふつう)、ナイロン100%(大きさ:27cm×105cm)である。
A;変化率85%以上。
B;変化率70%以上85%未満。
C;変化率55%以上70%未満。
D;変化率55%未満。
【0075】
(4)流れずに肌に留まる泡:
専門評価者1名が、水道水に浸したナイロンタオル(含水量約60g)を4つ折りにし、各皮膚洗浄剤6mLを取り、10回こすり・2回もみ込みを4回繰り返して泡立てた。ナイロンタオルは、(3)と同様のものを使用した。手のひらに載る分量の泡を取り、反対の腕の手首から腕全体を洗うように泡を動かした。その後、腕に付いている泡の状態を、以下の基準で評価した。流れずに肌に留まる泡とは、泡が腕の上で安定して流動せず、重力で垂れず、消えずに残っている状態をいう。
5;泡が全く流れずに肌に留まっている。
4;泡が流れずに肌に留まっている。
3;どちらともいえない。
2;泡が流れて肌に留まっていない。
1;泡が全て流れて肌に留まっていない。
【0076】
(5)泡の伸ばしやすさ:
専門評価者1名が、水道水に浸したナイロンタオル(含水量約60g)を4つ折りにし、各皮膚洗浄剤6mLを取り、10回こすり・2回もみ込みを4回繰り返して泡立てた。ナイロンタオルは、(3)と同様のものを使用した。手のひらに載る分量の泡を取り、反対の腕の手首に置く。その泡に対し、軽く力をかけ、泡を動かしたとき、泡の広がり、伸びを、以下の基準で評価した。泡が途切れずに広がって、伸びるほど良い。
5;泡が非常に伸ばしやすい。
4;泡が伸ばしやすい。
3;どちらともいえない。
2;泡が伸ばしにくい。
1;泡が非常に伸ばしにくい。
【0077】
(6)すみずみ洗える(洗浄力):
専門評価者1名が、モデル表面皮脂20mgを肘屈曲部に塗布し、20分間放置した。水道水に浸したナイロンタオル(含水量約60g)を4つ折りにし、各皮膚洗浄剤6mLを取り、10回こすり・2回もみ込みを4回繰り返して泡立てた。ナイロンタオルは、(3)と同様のものを使用した。肘を曲げ、手のひらに載る分量の泡を、その上に載せ、軽くこする(マッサージ4回)。その後、水道水20mLを洗浄部位にかけ、自然乾燥させた後の汚れの残り具合を、以下の基準で評価した。
A;汚れがほとんど残っていない。
B;汚れが2割ほど残っている。
C;汚れが5割ほど残っている。
D;汚れが8割ほど残っている。
【0078】
(7)すすぎ直後の残留感のなさ:
専門評価者1名が、水道水に浸したナイロンタオル(含水量約60g)を4つ折りにし、各皮膚洗浄剤6mLを取り、10回こすり・2回もみ込みを4回繰り返して泡立てた。ナイロンタオルは、(3)と同様のものを使用した。泡立てた泡で腕を洗浄し、その後水道水で泡を洗い流す。洗い流した直後の肌に水滴が残った状態にある腕を手のひらで触り、その際の残留感を、以下の基準で評価した。
5;残留感なし。
4;残留感ほとんどなし。
3;どちらともいえない。
2;残留感わずかにあり。
1;残留感あり。
【0079】
(8)乾き際のべたつきのなさ:
専門評価者1名が、水道水に浸したナイロンタオル(含水量約60g)を4つ折りにし、各皮膚洗浄剤6mLを取り、10回こすり・2回もみ込みを4回繰り返して泡立てた。ナイロンタオルは、(3)と同様のものを使用した。泡立てた泡で腕を洗浄し、その後水道水で泡を洗い流す。その後、タオルで水滴をふき取り、自然乾燥させた。その際のべたつきのなさを、以下の基準で評価した。
5;べたつきなし。
4;べたつきほとんどなし。
3;どちらともいえない。
2;べたつきわずかにあり。
1;べたつきあり。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
実施例12〜17
以下に示す組成のボディシャンプーを、実施例1〜11と同様に製造した。
得られたボディシャンプーはいずれも、流れずに肌に留まり、伸ばしやすく、なめらかな泡で、くびれ等の洗いにくい部位まで、すみずみまで洗え、しかもすすぎ直後は残留感がなく、乾き際にはべたつかない素肌感が得られ、落屑も少ないものであった。
【0084】
実施例12(ボディシャンプー)
(成分) (質量%)
EC6 4.0
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 2.85
ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム 5.2
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸(97:3)共重合体(40%) 1.0
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド(50:50)共重合体(9%)1.0
ポリオキシエチレン(16)ラウリルエーテル 0.85ラウリン酸 0.3
2−エチルヘキシルグリセリルエーテル 0.5
アルキル(C8−14)グリコシド 0.3
プロピレングリコール 3.0
ジステアリン酸グリコール 0.5
水酸化ナトリウム(48%) 適量
イオン交換水 残部
合計 100
成分(A)の中和率:0.55
pH:5.8
【0085】
実施例13(ボディシャンプー)
(成分) (質量%)
EC1 2.0
EC6 2.0
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 2.85
ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム 5.2
塩化ジメチルジアリルアンモニウムのホモポリマー(40%) 1.0
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸・アクリルアミド
(17:45:38)共重合体(9%) 0.5
ポリオキシエチレン(16)ラウリルエーテル 0.85ラウリン酸 0.3
2−エチルヘキシルグリセリルエーテル 0.5
アルキル(C8−14)グリコシド 0.3
プロピレングリコール 3.0
ジステアリン酸グリコール 0.5
水酸化ナトリウム(48%) 適量
イオン交換水 残部
合計 100
成分(A)の中和率:0.55
pH:5.8
【0086】
実施例14(ボディシャンプー)
(成分) (質量%)
EC2 4.0
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 2.85
ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム 5.2
塩化ジメチルジアリルアンモニウムのホモポリマー(40%) 1.0
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸・アクリルアミド
(17:45:38)共重合体(9%) 0.5
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド(50:50)共重合体(9%)0.5
ポリオキシエチレン(16)ラウリルエーテル 0.85ラウリン酸 0.3
2−エチルヘキシルグリセリルエーテル 0.5
アルキル(C8−14)グリコシド 0.3
プロピレングリコール 3.0
ジステアリン酸グリコール 0.5
水酸化ナトリウム(48%) 適量
イオン交換水 残部
合計 100
成分(A)の中和率:0.55
pH:5.8
【0087】
実施例15(ボディシャンプー)
(成分) (質量%)
EC3 4.0
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 2.85
ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム 5.2
塩化ジメチルジアリルアンモニウムのホモポリマー(40%) 1.0
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸・アクリルアミド
(17:45:38)共重合体(9%) 0.5
ポリオキシエチレン(16)ラウリルエーテル 0.85ラウリン酸 0.3
2−エチルヘキシルグリセリルエーテル 0.5
アルキル(C8−14)グリコシド 0.3
プロピレングリコール 3.0
ジステアリン酸グリコール 0.5
水酸化ナトリウム(48%) 適量
イオン交換水 残部
合計 100
成分(A)の中和率:0.55
pH:5.8
【0088】
実施例16(ボディシャンプー)
(成分) (質量%)
EC4 4.0
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 2.85
ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム 5.2
塩化ジメチルジアリルアンモニウムのホモポリマー(40%) 1.0
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸・アクリルアミド
(17:45:38)共重合体(9%) 0.5
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド(50:50)共重合体(9%)0.5
ポリオキシエチレン(16)ラウリルエーテル 0.85ラウリン酸 0.3
2−エチルヘキシルグリセリルエーテル 0.5
アルキル(C8−14)グリコシド 0.3
プロピレングリコール 3.0
ジステアリン酸グリコール 0.5
水酸化ナトリウム(48%) 適量
イオン交換水 残部
合計 100
成分(A)の中和率:0.55
pH:5.8
【0089】
実施例17(ボディシャンプー)
(成分) (質量%)
EC5 4.0
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 2.85
ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム 5.2
塩化ジメチルジアリルアンモニウムのホモポリマー(40%) 1.0
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸・アクリルアミド
(17:45:38)共重合体(9%) 0.5
ポリオキシエチレン(16)ラウリルエーテル 0.85ラウリン酸 0.3
2−エチルヘキシルグリセリルエーテル 0.5
アルキル(C8−14)グリコシド 0.3
プロピレングリコール 3.0
ジステアリン酸グリコール 0.5
水酸化ナトリウム(48%) 適量
イオン交換水 残部
合計 100
成分(A)の中和率:0.55
pH:5.8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数4〜22のアルキル基を示し、nは0〜20の数を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す)
で表されるアルキルエーテルカルボン酸又はその塩であって、R1の平均炭素数が10.8〜12.8であり、n=0の成分を9.6質量%を超え27質量%以下、n=1の成分とn=2の成分を合計で21質量%以上40質量%未満含むアルキルエーテルカルボン酸又はその塩 0.5〜15質量%、
(B)両性界面活性剤 0.25〜10質量%、
(C)水
を含有する皮膚洗浄剤組成物。
【請求項2】
成分(A)の中和度が0.45〜0.9である請求項1記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分(A)において、一般式(1)中、nの平均値が1.5〜10である請求項1又は2記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項4】
成分(A)において、一般式(1)中、R1が炭素数6〜20のアルキル基であり、nの平均値が2.5〜3.7であり、n=0の成分を9.9〜27質量%含む請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項5】
成分(A)において、一般式(1)中、R1が炭素数8〜18のアルキル基であり、nの平均値が2.5〜3.4である請求項1〜4のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項6】
成分(A)において、一般式(1)中、R1が炭素数8〜16のアルキル基であり、平均アルキルが10.8から12.5であり、nの平均値が2.8〜3.4であり、n=0の成分を9.9〜16質量%、n=1の成分とn=2の成分を合計で27〜36.5質量%含む請求項1〜5のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項7】
成分(A)において、一般式(1)中、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:0.99〜3.50:0.89〜3.00:0.76〜3.00:0.63〜1.52となる請求項1〜6のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項8】
成分(A)において、一般式(1)中、R1が2種以上のアルキル基を含み、一番含有量の多いアルキル鎖長を有する成分が55質量%以上97質量%未満である請求項1〜7のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項9】
成分(A)において、一般式(1)中、n=0の成分を9.9質量%以上12質量%未満含み、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:1.53〜1.87:1.59〜2.25:1.33〜2.16:1.14〜1.52となるか、又は、n=0の成分を12質量%以上17質量%以下含み、(n=0成分の質量):(n=1成分の質量):(n=2成分の質量):(n=3成分の質量):(n=4成分の質量)=1:0.99〜1.34:0.89〜1.40:0.76〜1.23:0.63〜0.99となる請求項1〜8のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項10】
成分(A)及び(B)の質量割合が、(A):(B)=3:7〜9:1である請求項1〜9のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項11】
さらに、(D)アルキル硫酸塩又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を含有する請求項1〜10のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項12】
さらに、(E)カチオン基含有ポリマーを含有する請求項1〜11のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物を、身体皮膚部に適用して洗浄した後、すすぐ皮膚洗浄方法。

【公開番号】特開2013−87110(P2013−87110A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231738(P2011−231738)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】