説明

皮膚洗浄料

【課題】メーキャップ化粧料に対するなじみがよく、高い洗浄力を有し、かつ水洗時の洗い流し易さに優れる皮膚洗浄料を提供する。
【解決手段】(a)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル 1〜30質量%と、(b)ジイソステアリン酸ポリエチレングリコールのようなポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル 1〜10質量%とを配合し、好ましくは、さらに(d)カルボキシビニルポリマー 0.02〜2.0質量%を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚洗浄料に関し、さらに詳しくは、ファンデーション、マスカラ、アイライナーあるいはサンスクリーン等の化粧料の除去効果に優れ、水洗時にはすばやく洗い落とせる皮膚洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カルボキシビニルポリマーとヒドロキシエチルセルロースと非イオン性界面活性剤を配合する皮膚洗浄料が開発されている(特許文献1)。しかしながらこれらの成分を含む皮膚洗浄料では、メークとのなじみが十分とは言えず、高分子に由来するぬるつきによる水洗時の不快感が残るという問題点があった。
さらに、抗菌性多価アルコールとアルキル変性カルボキシビニルポリマーとポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルを含有するクレンジング化粧料が知られている(特許文献2)。しかしながらこのクレンジング化粧料は、十分な洗浄力を有しているとは言いがたいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−255787号公報
【特許文献2】特開2005−239587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上述べたような従来の皮膚洗浄料の問題点を解決して、メークとのなじみが良好で高い洗浄力を有し、水洗時にはそれらを素早く落とすことのできる皮膚洗浄料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリルと、それ以外の特定の非イオン性界面活性剤を含有する皮膚洗浄料が、ファンデーション、マスカラ、アイライナーあるいはサンスクリーン等の化粧料とのなじみを向上させることができて洗浄力が高く、さらに水洗時には簡単に洗い流すことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、次の(a)および(b)を含むことを特徴とする皮膚洗浄料である。
(a)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル 1〜30質量%
(b)ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル 1〜10質量%
【発明の効果】
【0007】
本発明の皮膚洗浄料は、メーキャップ化粧料に対するなじみがよく、高い洗浄力を有し、かつ水洗時の洗い流し易さに優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
((a)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル)
本発明で用いられる(a)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリルは、ポリオキシエチレンの付加モル数が5〜9であるものが好ましく、特に好ましいのは、ヤシ油脂肪酸ポリエチレングリコール(PEG)−7グリセリルである。
成分(a)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリルの市販品としては、PEG−7ヤシ油脂肪酸グリセリルであるセチオールHE(コグニスジャパン社製)、グリセロックスHE(CRODA社製)、ハイバーオイルHE(交洋ファインケミカル社製)等が挙げられる。
【0009】
成分(a)の配合量は、本発明の皮膚洗浄料全量中に1〜30質量%が好ましく、より好ましくは3〜20質量%である。1質量%未満では、洗浄効果が十分出ない場合があり、30質量%を超えて配合しても本発明の効果がさらに増強されるものではなく、安定性に影響が出る場合がある。
【0010】
((b)ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル)
本発明で用いられる成分(b)ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステルとしては、例えば、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
本発明においては、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステルの中でも、HLB5〜8であるものが好ましく、ポリエチレングリコールの付加モル数としては、6〜14程度である。
ジイソステアリン酸ポリエチレングリコールとしては、ジイソステアリン酸PEG−6、ジイソステアリン酸PEG−8、ジイソステアリン酸PEG−12が挙げられ、ジオレイン酸ポリエチレングリコールとしては、ジオレイン酸PEG−6、ジオレイン酸PEG−8、ジオレイン酸PEG−12が挙げられる。これらの中でも、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコールがメーキャップ化粧料の洗浄効果の点から好ましい。
【0011】
成分(b)の市販品としては、ジイソステアリン酸PEG−8であるEMALEX 400di-ISEX(日本エマルジョン社製)、ジイソステアリン酸PEG−12であるEMALEX 600di-ISEX(日本エマルジョン社製)、ジオレイン酸PEG−8であるEMALEX 400di-O(日本エマルジョン社製)、ジオレイン酸PEG−12であるEMALEX 600di-O (日本エマルジョン社製)等が挙げられる。
【0012】
成分(b)の配合量は、本発明の皮膚洗浄料全量中に1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。1質量%未満では、洗浄効果が十分出ない場合があり、10質量%を超えて配合しても本発明の効果がさらに増強されるものではなく、安定性に影響が出る場合がある。
【0013】
上記(a)成分と(b)成分の配合割合(質量比)は、(a):(b)=30:1〜1:10であることが好ましく、より好ましくは、(a):(b)=20:1〜1:3である。
【0014】
((c)ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル)
本発明においては、(c)ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルをさらに含むことにより、洗浄力はより高くなる。
本発明に用いられる(c)ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルとしては、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルの中でも、HLB8〜15であるものが好ましく、ポリエチレングリコールの付加モル数としては、6〜20程度である。
【0015】
モノイソステアリン酸ポリエチレングリコールとしては、イソステアリン酸PEG−8、イソステアリン酸PEG−10、イソステアリン酸PEG−12が挙げられ、モノオレイン酸ポリエチレングリコールとしては、オレイン酸PEG−6、オレイン酸PEG−10等が挙げられる。中でも、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコールが、メーキャップ化粧料の洗浄効果の点から好ましい。
【0016】
成分(c)ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルの市販品としては、イソステアリン酸PEG−8であるEMALEX PEIS-8EX(日本エマルジョン社製)、イソステアリン酸PEG−10であるEMALEX PEIS-10EX(日本エマルジョン社製)、イソステアリン酸PEG−12であるEMALEX PEIS-12EX(日本エマルジョン社製)、イソステアリン酸PEG−20であるEMALEX PEIS-20EX(日本エマルジョン株式会社)等が挙げられる。
【0017】
成分(c)を配合する場合、その配合量は本発明の皮膚洗浄料全量中に1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。10質量%を超えて配合しても本発明の効果がさらに増強されるものではなく、安定性に影響が出る場合がある。
【0018】
((d)カルボキシビニルポリマー)
本発明の皮膚洗浄料には、さらに(d)カルボキシビニルポリマーを配合することが好ましい。本発明に用いられる成分(d)カルボキシビニルポリマーは主としてアクリル酸の重合したもので、種々のグレードのものが市販されている。例えば、ハイビスワコー103、同104、同105(和光純薬工業社製)、カーボポールシリーズ(BF Goodrich社製)、ジュンロンPWシリーズ(日本純薬社製)、シンタレンS、同K(SIGMA社製)等が挙げられる。
【0019】
成分(d)の配合量は、本発明の皮膚洗浄料全量中、0.02〜2.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0質量%である。カルボキシビニルポリマーの配合量が少なすぎるとジェル状あるいはクリーム状を呈するのが難しく、また多すぎると水に流れにくく、ぬめり感も増し、いずれの場合も使用性が悪くなる場合があるからである。
【0020】
本発明においては、上記各成分以外に、水および油分が配合される。
水の配合量は、本発明の皮膚洗浄料全量中に20〜60質量%が好ましい。
【0021】
油分としては、例えば、流動パラフィン、合成パラフィン、スクワラン、炭化水素油、エステル油(イソプロピルミリステート、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン等)、植物油(オリーブ油、ひまし油、ホホバ油等)、脂肪酸(ラウリン酸、イソステアリン酸等)、高級アルコール(ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等)、シリコーン油(ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン等)等を配合することもできる。また、前記油分は液状であっても、固体であってもかまわない。
油分の配合量は、本発明の皮膚洗浄料全量中、3〜20質量%が好ましく、より好ましくは3〜10質量%である。
【0022】
本発明の皮膚洗浄料には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記必須成分のほかに、通常化粧料に基剤として配合される顔料、上記以外の界面活性剤、保湿剤、低級アルコールや、化粧料を修飾する成分として防腐剤、香料、キレート剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を配合することができる。
【0023】
本発明の皮膚洗浄料の剤型としては、例えば、クリーム、ジェル状とすることができる。ファンデーション、マスカラ、アイライナー、あるいはサンスクリーン等の化粧料を除去する洗浄用製品として用いられる。これらの皮膚洗浄料は常法に従って製造することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。
実施例に先立ち、本発明で用いた評価方法及び評価基準を説明する。
【0025】
(1)洗浄力
人工皮革上に油中水型(W/O)リキッドファンデーションを一定量塗布し、十分乾燥させた。コットンに試験サンプルを一定量とり、一定圧をかけ、先に用意したファンデーションを塗布した人工皮革上を一定回数往復させた後、残ったファンデーション汚れの反射率を色差計を用いて計測した。元のファンデーション塗布部と比較し、以下の式から洗浄率を求めた。
【0026】
D(%)=(RW−RS)/(R0−RS)×100
D:洗浄率(%)
R0:未処理の人工皮革の反射率(%)
RS:メーキャップ化粧料を塗布した人工皮革の反射率(%)
RW:洗浄後の反射率(%)
【0027】
<評価基準>
◎:90%以上
○:87以上90%未満
△:80以上87%未満
×:80%未満
【0028】
実施例1〜5、比較例1〜14
下記表1、表2に示した各処方成分よりなる皮膚洗浄料を常法により調製した。得られた皮膚洗浄料について、上記の基準で、洗浄力を評価した。その結果を併せて表1、表2に示す。なお、いずれの実施例も水洗時の洗い流しやすさは良好であった。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
※1:シンタレンK(SIGMA社製)
※2:シリコーンKF−96A−6T(信越化学工業株式会社製)
※3:エチルヘキサン酸セチル(日光ケミカルズ社製)
※4:エマレックス PEIS-10(EX)(日本エマルジョン社製)
※5:エマレックス 600DI-IS EX(日本エマルジョン社製)
※6:エマレックス 400DI-IS EX(日本エマルジョン社製)
※7:エマレックス GWIS108(日本エマルジョン社製)
※8:エマレックス GWIS120(日本エマルジョン社製)
※9:エマレックス GWIS320(日本エマルジョン社製)
※10:セチオールHE(コグニスジャパン社製)
※11:SILWET 10P(日本ユニカー社製)
【0032】
以下に、本発明の皮膚洗浄料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0033】
処方例1(メーククレンジングジェル)
(1)カルボキシビニルポリマー 0.8質量%
(2)ヤシ油脂肪酸PEG−7グリセリル 10.0
(3)ジイソステアリン酸PEG−12 1.0
(4)エデト酸三ナトリウム 適量
(5)キサンタンガム 0.1
(6)ジメチルポリシロキサン 5.0
(7)エチルヘキサン酸セチル 2.0
(8)グリセリン 20.0
(9)1,3-ブチレングリコール 10.0
(10)水酸化カリウム 適量
(11)アルコール 4.0
(12)防腐剤 適量
(13)PEG−10メチルエーテルジメチコン 4.0
(14)香料 適量
(15)精製水 残余
【0034】
処方例2(メーククレンジングジェル)
(1)カルボキシビニルポリマー 0.3質量%
(2)ヤシ油脂肪酸PEG−7グリセリル 3.0
(3)ジイソステアリン酸PEG−12 2.0
(4)イソステアリン酸PEG−10 3.0
(5)エデト酸三ナトリウム 適量
(6)キサンタンガム 0.2
(7)ジメチルポリシロキサン 5.0
(8)エチルヘキサン酸セチル 2.0
(9)グリセリン 15.0
(10)1,3-ブチレングリコール 10.0
(11)水酸化カリウム 適量
(12)アルコール 4.0
(13)防腐剤 適量
(14)PEG−10メチルエーテルジメチコン 4.0
(15)香料 適量
(16)精製水 残余
【0035】
処方例3(メーククレンジングジェル)
(1)カルボキシビニルポリマー 0.3質量%
(2)ヤシ油脂肪酸ポリエチレングリコール(PEG)−7グリセリル 3.0
(3)ジイソステアリン酸PEG−12 2.0
(4)イソステアリン酸PEG−10 3.0
(5)エデト酸三ナトリウム 適量
(6)キサンタンガム 0.2
(7)シクロメチコン 5.0
(8)ミネラルオイル 2.0
(9)グリセリン 15.0
(10)1,3-ブチレングリコール 10.0
(11)水酸化カリウム 適量
(12)アルコール 4.0
(13)防腐剤 適量
(14)PEG−10メチルエーテルジメチコン 4.0
(15)ラベンダー油 適量
(16)精製水 残余

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)および(b)を含むことを特徴とする皮膚洗浄料。
(a)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル 1〜30質量%
(b)ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル 1〜10質量%
【請求項2】
成分(a)のポリオキシエチレンの付加モル数が5〜9である請求項1記載の皮膚洗浄料。
【請求項3】
成分(b)が、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコールから選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の皮膚洗浄料。
【請求項4】
成分(b)が、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコールである請求項3記載の皮膚洗浄料。
【請求項5】
さらに、(d)カルボキシビニルポリマーを0.02〜2.0質量%含む請求項1記載の皮膚洗浄料。

【公開番号】特開2010−248131(P2010−248131A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99710(P2009−99710)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】