説明

皮膚隠蔽力に優れる外用組成物

【課題】皮膚隠蔽効果に優れる、新規かつ有用な外用組成物を提供すること。
【解決手段】下記の成分(1)〜(7)を含有する水中油型乳化の外用組成物が、非常に優れた皮膚隠蔽効果を有することを見出し、上記の課題を解決した。
(1)アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群のモノマーの1種又は2種以上を重合させてなるアクリル酸系ポリマーを、組成物の15〜35質量%
(2)固形油分を、組成物の5〜30質量%
(3)流動油分を、組成物の2〜20質量%
(4)12−ヒドロキシステアリン酸を、組成物の0.2〜5質量%
(5)12−ヒドロキシステアリン酸以外の固形脂肪酸を、組成物の0.5〜4質量%
(6)界面活性剤を、組成物の1〜10質量%
(7)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚隠蔽力に優れる水中油型乳化の外用組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
化粧料の分野において、ポリマー型被膜形成剤は、化粧持ちや耐水性の向上を主要な目的として用いられている。また、油分は、皮膚からの水分の蒸散抑制や使用感触の向上を目的として用いられており、その中で固形油分や固形脂肪酸は固形製剤の固化や光沢の付与に適している。さらに、界面活性剤は、乳化剤として用いられている。
【特許文献1】特開2000−16919号公報
【特許文献2】特開2004−18462号公報
【特許文献3】特開2002−179530号公報
【特許文献4】特開平10−175845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、新規かつ有用な外用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この度、本発明者は、驚くべきことに、下記の成分(1)〜(7)を含有する水中油型乳化の外用組成物(以下、本発明の組成物ともいう)が、非常に優れた皮膚隠蔽効果を有することを見出し、本発明を完成した。
(1)アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群のモノマーの1種又は2種以上を重合させてなるアクリル酸系ポリマーを、組成物の15〜35質量%
(2)固形油分を、組成物の5〜30質量%
(3)流動油分を、組成物の2〜20質量%
(4)12−ヒドロキシステアリン酸を、組成物の0.2〜5質量%
(5)12−ヒドロキシステアリン酸以外の固形脂肪酸を、組成物の0.5〜4質量%
(6)界面活性剤を、組成物の1〜10質量%
(7)水
【0005】
本発明の組成物の外相には、アクリル酸系ポリマー(1)が、分散状態にて含有されることが好適である。この分散状態は、微粒子の直接的な分散のみならず、エマルションとしての分散状態を含むものである。本発明の組成物を製造する際には、当該アクリル酸系ポリマーを当該ポリマーの水分散物として配合することが好適である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、皮膚隠蔽力に優れる水中油型の乳化外用組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[本発明の組成物の配合成分]
(1)アクリル酸系ポリマー(被膜形成剤)
本発明の組成物には、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群のモノマーの1種若しくは2種以上を重合させてなるアクリル酸系ポリマー(以下、アクリル酸系ポリマーともいう)が配合されることが必要である。
【0008】
項目(a)のアクリル酸系ポリマーは、好適には、上記のアクリル酸系モノマー(アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマー)同士を、公知の知見に基づいて重合反応することにより製造することができる。選択される重合反応としては、例えば、ラジカル重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、グラフト重合等により得られる。本発明の組成物において好適に配合されるアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンは、機械的乳化法、上記の乳化重合法等により得ることができる。乳化重合法では、粒径のコントロールが容易で、粒度分布のシャープなものが得られるので好ましい。また、アクリル酸系ポリマーのガラス転移温度は20℃以下であることが好適である。このようなアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンの市販品としては、例えば、COVACRYL MS11(LCW社製)が挙げられる。
【0009】
本発明の組成物におけるポリマー型の被膜形成剤の配合量は、組成物に対してポリマーの質量として15〜35質量%、好適には20〜30質量%である。
【0010】
(2)固形油分
固形油分は、融点が60℃以上の油分であり、化粧料の分野で用いられるものを選択して用いることができる。具体的には、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、ラノリン等の固形ロウ;パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の固形炭化水素油;セチルアルコール、ステアリルアルコール等の固形高級アルコール等が例示され、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウなどのエステルを含有するロウが好適である。さらにその中でも、カルナバロウが特に好適である。
【0011】
本発明の組成物における固形油分の配合量は、組成物に対して5〜30質量%、好適には10〜20質量%である。
【0012】
(3)流動油分
流動油分は、融点が25℃未満の油分であり、化粧料の分野で用いられるものを選択して用いることができる。具体的には、オリーブ油、椿油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油等の液体油脂;ホホバ油等の液体ロウ;流動パラフィン、スクワラン等の液体炭化水素油;ラウリン酸、イソステアリン酸等の液状ないし半固形状の高級脂肪酸;イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール等の液状高級アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチル等の液状エステル油;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が例示される。
【0013】
本発明の組成物における流動油分の配合量は、組成物に対して2〜20質量%、好適には5〜15質量%、最も好適には5〜10質量%である。
【0014】
(4)12−ヒドロキシステアリン酸
本発明の組成物には、12−ヒドロキシステアリン酸を配合することが必要である。
【0015】
本発明の組成物における12−ヒドロキシステアリン酸の配合量は、組成物に対して0.5〜4質量%、好適には1〜3質量%である。
【0016】
(5)12−ヒドロキシステアリン酸以外の固形脂肪酸
本発明の組成物には、上記の12−ヒドロキシステアリン酸と共に、それ以外の固形脂肪酸を配合する必要がある。当該固形脂肪酸としては、化粧料の分野において用いられている固形脂肪酸、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等が例示されるが、特にステアリン酸を選択することが好適である。当該固形脂肪酸の配合量は、組成物の0.5〜2質量%、好適には1〜1.5質量%である。
【0017】
(6)界面活性剤
界面活性剤は、化粧料の分野で用いられるものを選択して用いることができる。陰イオン性界面活性剤の具体的な例としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシルイセチオン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられる。
【0018】
陽イオン性界面活性剤の具体的な例としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POEアルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0019】
非イオン界面活性剤の具体的な例としては、例えば、アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、テトラポリオキシアルキレンエチレンジアミン縮合物類、ポリオキシアルキレンエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油誘導体、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油誘導体、アルキルポリグルコシド等が挙げられる。
【0020】
両性界面活性剤の具体的な例としては、例えば、アルキルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルアミノカルボン酸、アルキルスルホベタイン、アルキルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、アルキルベタイン等が挙げられる。
【0021】
上記の界面活性剤の中でも、非イオン界面活性剤を選択することが好適である。また、本発明の組成物における界面活性剤の配合量は、例えば、界面活性剤の種類に応じて選択されるべきであり、特に限定されるものではないが、概ね、組成物に対して1〜10質量%が好適である。
【0022】
(7)水
水は、通常は、イオン交換水、精製水、又は、水道水である。本発明の組成物における水の配合量は、他の配合成分の残量を配合することができる。また、本発明の組成物に、アクリル酸系ポリマーの水分散物を配合する場合には、当該水分散物中の水のみを、本発明の組成物に配合する水とすることも可能である。
【0023】
(8)中和剤
中和剤は、本発明の組成物において好適成分として配合され、化粧料の分野で用いられるものを選択して用いることができる。具体的には、トリエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を挙げることができる。中和剤の配合量は、適切に組成物全体が中和されるべき量であり特に限定されるものではないが、例えば、固形脂肪酸としてステアリン酸及び12−ヒドロキシステアリン酸を選択する場合には、トリエタノールアミンとしてステアリン酸の配合質量の1/3〜1/6程度として例示される。
【0024】
[本発明の具体的な態様]
本発明の組成物は、皮膚における隠蔽性能に優れており、このような性質を積極的に活用可能な、例えば、化粧下地用途、凹凸補正用途等に用いることが可能である。
【0025】
化粧下地用途に用いる場合、すなわち、本発明の組成物が化粧下地用組成物又は化粧下地剤(ここで、剤は用途を強く表す組成物の意味であり、以下同様である。)の場合は、化粧下地として本発明の組成物を肌上に塗布して肌表面を平滑化した後に、ファンデーションを塗布することで、肌欠点を巧みに隠蔽することが可能である。
【0026】
また、凹凸補正用途に用いる場合、すなわち、本発明の組成物が凹凸補正用組成物又は凹凸補正用剤として用いる場合には、肌上の顕著な凹凸、例えば、重度のニキビ跡、傷跡、火傷跡等の上に、凹凸補正用組成物又は剤として本発明の組成物を塗布して、上記の皮膚凹凸を隠蔽することが可能である。なお、上記の化粧下地と同様に、上面にファンデーションを塗布することも可能である。
【0027】
本発明の組成物は、上記の必須配合成分以外に、必要に応じて他の化粧料における一般的な配合成分を配合することができる。例えば、本発明の組成物に粉末成分を配合することも可能である。具体的には、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、二酸化ケイ素、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、窒化ホウ素等の無機成分を基にした粉末成分;
【0028】
ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、メタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸との共重合体樹脂粉末、ベンゾクアナミン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、シリコーンゴム粉末、シリコーン樹脂被覆ゴム粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末、セルロース粉末等の有機粉末成分等を例示することができる。
【0029】
また、これらの粉末成分を、シリコーン化合物、フッ素変性シリコーン化合物、フッ素化合物、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、金属石鹸、アミノ酸又はアルキルホスフェート等で表面処理を施した粉末成分を必要に応じて配合することができる。
【0030】
さらに、本発明の組成物に対して積極的に着色を行うことも可能である。かかる場合には、色剤や顔料を、本発明の組成物に配合することができる。
【0031】
この色剤や顔料としては、通常公知のものを用いることが可能であり、例えば二酸化チタン,酸化亜鉛等の無機白色顔料;酸化鉄(ベンガラ),チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄,黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄,カーボンブラック,低次酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット,コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム,水酸化クロム,チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青,紺青等の無機青色系顔料;酸化チタンコーティッドマイカ,酸化チタンコーティッドオキシ塩化ビスマス,酸化チタンコーティッドタルク,着色酸化チタンコーティッドマイカ,オキシ塩化ビスマス,魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー,カッパーパウダー等の金属粉末成分顔料;赤色201号,赤色202号,赤色204号,赤色205号,赤色220号,赤色226号,赤色228号,赤色405号,橙色203号,橙色204号,黄色205号,黄色401号,青色404号等の有機顔料;赤色3号.赤色104号,赤色106号,赤色227号,赤色230号,赤色401号,赤色505号,橙色205号,黄色4号,黄色5号,黄色202号,黄色203号,緑色3号,青色1号等のジルコニウム,バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料等を挙げることができる。
【0032】
本発明の組成物には必要に応じて、さらに、揮発性油分、エタノール等の低級アルコール、樹脂、曳糸剤、分散剤、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、清涼剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、消炎剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、防腐剤、香料等を補助成分として配合することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。特に断らない限り、配合量は配合対象に対する質量%である。
【0034】
[試験方法]
本実施例において行う各試験の試験方法と内容について説明する。
【0035】
(1)硬度の測定
本発明の組成物は、厚めに塗布することで優れた皮膚隠蔽力を発揮することが可能となるが、所望の厚めの塗布には適度な硬度を有する製剤であることが好適である。具体的には、当該硬度は。0.02〜1Nであることが好適であり、特に好適には0.2〜0.8Nである。硬度の測定は、レオメーター(不動工業株式会社)を用い、5.6mmφの針にて針進入深さ3mm、針進入速度2cm/分の条件の下、測定を行った際の最大応力を測定し、当該最大応力値を硬度値とした。試験品は、予め25℃の恒温槽に2時間静置した後、取り出し速やかに測定を行った。
【0036】
(2)皮膚凹凸のカバー機能に関する試験
本発明の組成物の皮膚凹凸のカバー機能についての試験を行い、試験品の評価を行った。具体的には、垂直に置いた疑似火傷跡肌サンプルに、試験品0.5gを指で塗布し、凹凸がどの程度隠れているかを目視で判定した。なお、上記の疑似火傷跡肌サンプルは、実際の火傷跡肌のポリウレタン製のレプリカであり、最大0.5mmの深さの凹凸を有している。
【0037】
具体的な評価は、20名の専門パネルにより、下記の基準で行った。
○:専門パネル20人中15人以上が、凹凸が隠れたと判定した。
△:専門パネル20人中5〜14人が、凹凸が隠れたと判定した。
×:専門パネル20人中4人以下のみが、凹凸が隠れたと判定した。
【0038】
(3)肌への密着感に関する試験
本発明の組成物を肌上にて用いた場合の密着感の評価を行った。具体的には、専門パネル20人の前腕部3×3cmに試験品0.5gを指で塗布後、塗膜の肌への密着性を、塗膜部分を動かす等して、密着しているか、あるいは剥がれやすいかを評価した。具体的な評価は、下記の基準で行った。
【0039】
○:専門パネル20人中15人以上が、密着性に優れると判定した。
△:専門パネル20人中5〜14人が、密着性に優れると判定した。
×:専門パネル20人中4人以下のみが、密着性に優れると判定した。
【0040】
[試験内容]
(1)固形油分の配合量の検討
下記表1において、固形油分(カルナバロウ)の配合量と、上記各試験の関係についての検討を行った。表中の数字は、配合量(質量%)である。各試験の結果も、同表1に開示した。
【0041】
【表1】

【0042】
COVACRYL MS11は、アクリル酸系の被膜剤(LCW(仏)社製)であり、ガラス転移温度(Tg)が0℃である。ポリマー質量分50質量%の水系エマルションであり、上記表中の配合量は、エマルション全体の質量である。特に断らない限り、上記の表1におけるトリエタノールアミンとCOVACRYL MS11の内容は、下記の具体的な実施例又は比較例において同様である。
【0043】
表1の実施例1〜4において、全ての例は、上記の好適な硬度範囲内であった。また、肌への密着感は、これらの実施例の全てにおいて良好であった。さらに、凹凸カバー度は、固形油分であるカルナバロウの配合量が5質量%の実施例2において、多少劣っていた。
【0044】
(2)被膜剤(アクリル酸系)の配合量の検討
下記表2において、アクリル酸系被膜剤(COVACRYL MS11)の配合量と、上記各試験の関係についての検討を行った。
【0045】
【表2】

【0046】
表2の実施例1、5、6、及び、比較例1,2において、全ての実施例は、アクリル酸系被膜剤(COVACRYL MS11)が、ポリマー換算として、本発明の規定範囲に入っており、全ての項目で、良好な結果が得られた。これに対して、当該アクリル酸系被膜剤が規定の配合量よりも少ない比較例1、2は、特に凹凸カバー度において劣っており、十分な硬度も認められなかった。
【0047】
(3)12−ヒドロキシステアリン酸の配合量の検討
下記表3において、12−ヒドロキシステアリン酸の配合量と、上記各試験の関係についての検討を行った。
【0048】
【表3】

【0049】
表3の実施例7は、12−ヒドロキシステアリン酸の配合量が好適範囲外であるので、若干、凹凸カバー度において見劣りがした。これに対して、当該配合量が本発明の規定の範囲外の比較例3は、凹凸カバー度と硬度において明らかに劣っていた。
【0050】
(4)固形脂肪酸(ステアリン酸)の中和度と配合量の検討
下記表4において、固形脂肪酸(ステアリン酸)の配合量の検討と共に、中和剤(トリエタノールアミン)の配合の影響についても検討を行った。
【0051】
【表4】

【0052】
表4の実施例8、9のうち、実施例8は、ステアリン酸の配合量が規定範囲内であり、全ての項目において良好な結果が得られた。実施例9は、中和剤であるトリエタノールアミンを抜去したために、凹凸カバー度が多少劣っていた。実施例10は、ステアリン酸の配合量が好適範囲外であるために、凹凸カバー度が多少劣っていた。比較例4は、ステアリン酸と中和剤のトリエタノールアミンの両者を抜去したために、凹凸カバー度が明らかに劣り、十分な硬度も得られなかった。
【0053】
(5)被膜剤の種類の検討
下記表5においては、実施例1で用いているアクリル酸系被膜剤であるCOVACRYL MS11の他に、比較例5において、ウレタン系被膜剤であるヨドゾールPUD(日本エヌエヌシー社製)を用い、実施例11、12においてアクリル系被膜剤であるCOVACRYL SJ5(大東化成工業製)を用いた。COVACRYL SJ5のガラス転移温度(Tg)は−13℃である。なお、これらの被膜剤は、全て水系ポリマーエマルションであり、下記質量は、水系エマルションとしての質量であり、各エマルションともポリマー純分は、概ね50質量%である。
【0054】
【表5】

【0055】
表5における結果が示すように、アクリル系被膜剤では良好な製剤が得られている。
【0056】
[処方例] 下記の処方と製造方法による処方例を開示する。
配合成分 配合量(質量%)
流動パラフィン 2.5
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチル 2.5
イソステアリン酸 0.5
ワセリン 1.5
マイクロクリスタリンワックス 1.5
ミツロウ 2.5
カルナウバロウ 5.0
12−ヒドロキシステアリン酸 1.0
ステアリン酸 1.0
ステアリルアルコール 1.0
イソステアリン酸POE(60)グリセリル 2.0
ステアリン酸グリセリル 2.0
トリエタノールアミン 0.4
アクリル系樹脂(50質量%水分散物) 50.0
(商品名:COVACRYL MS11、LCW(仏)製造)
イオン交換水 残量
【0057】
<製造方法>
上記の流動パラフィン〜ステアリン酸グリセリルまでを90℃で加温溶解し、これを油相とする。別容器にて、上記のトリエタノールアミンからイオン交換水までを加温溶解させ(水相)、この水相を、油相に加えて乳化を行った後、容器に充填し、室温にて放冷して、本発明の組成物の試料を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(1)〜(7)を含有する水中油型乳化の外用組成物。
(1)アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群のモノマーの1種又は2種以上を重合させてなるアクリル酸系ポリマーを、組成物の15〜35質量%
(2)固形油分を、組成物の5〜30質量%
(3)流動油分を、組成物の2〜20質量%
(4)12−ヒドロキシステアリン酸を、組成物の0.2〜5質量%
(5)12−ヒドロキシステアリン酸以外の固形脂肪酸を、組成物の0.5〜4質量%
(6)界面活性剤を、組成物の1〜10質量%
(7)水
【請求項2】
上記水中油型乳化の外用組成物において、アクリル酸系ポリマーを、当該ポリマーの水分散物として配合することによりなる、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
上記水中油型乳化の外用組成物において、アクリル酸系ポリマーのガラス転移温度(Tg)が、20℃以下である、請求項1又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
上記水中油型乳化の外用組成物において、12−ヒドロキシステアリン酸以外の固形脂肪酸が、ステアリン酸である、請求項1〜3のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項5】
上記水中油型乳化の外用組成物において、さらに、中和剤を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項6】
上記水中油型乳化の外用組成物において、当該組成物が化粧下地用組成物である、請求項1〜5のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項7】
上記水中油型乳化の外用組成物において、当該組成物が凹凸補正用組成物である、請求項1〜5のいずれかに記載の外用組成物。

【公開番号】特開2010−138110(P2010−138110A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315980(P2008−315980)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】