説明

皮膜形成用樹脂組成物

【課題】従来のポリベンゾオキサゾール樹脂に比べ低温でも充分硬化できるとともに、空気雰囲気下で硬化でき、かつ、引張強度および伸びなどの優れた機械的特性、吸水率および誘電率などの絶縁特性、ならびに超耐熱性を有する硬化膜が得られる皮膜形成用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】皮膜形成用樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される化合物(a1)から導かれる構成単位と下記式(2)で表される化合物(a2)から導かれる構成単位とを含むポリマー前駆体(A)と、溶媒(B)とを含むことを特徴とする。


(式中、Xは、2価の有機基、−O−、−S−および−SO2−からなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の連結基、または単結合を表し、Rは、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、mおよびnは、それぞれ独立に0または1〜3の整数を表し、Rが複数存在するときは、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。)OHC−CHO (2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜形成用樹脂組成物に関する。より詳しくは、本発明は、低温でも充分硬化できる皮膜形成用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、プリント基板などの保護膜および絶縁膜を形成するために、ポリシロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂などの耐熱性樹脂が用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリシロキサン樹脂を用いた皮膜は、耐熱性および絶縁性に優れる一方で、機械的強度に劣る、膜厚が制限される、応力によりクラックが発生する、保存安定性が悪いなどの問題があった。
【0004】
また、ポリイミド樹脂を用いた皮膜は、耐熱性および機械的強度に優れ、非常に強靭である一方で、吸湿性によって電気特性が低下する、パターンニングにおける解像度が低いといった問題とともに、イミド化するためには窒素雰囲気下で高い加工温度が必要であるという問題を有していた。
【0005】
また、ポリベンゾオキサゾール樹脂を用いた皮膜は、耐熱性および絶縁性に優れており、この皮膜を得るための組成物として、たとえば、ビス−o−アミノフェノール化合物と芳香族ジアルデヒドとから得られるポリベンゾオキサゾール前駆体を含む組成物(特許文献1参照)、ビス−o−アミノフェノール化合物と芳香族ジアルデヒドとから得られるポリベンゾオキサゾール前駆体、感光剤および分散性化合物を含む組成物(特許文献2参照)などが開示されている。
【特許文献1】特開2003−221444号公報
【特許文献2】特開2003−156844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの組成物から皮膜を得るためには、ポリイミド樹脂と同様に、窒素雰囲気下でかつ300℃〜400℃の高い加工温度が必要であった。さらに、低誘電率の皮膜を得るために添加されている分散性化合物を含む組成物では、最終的に分散性化合物を除去するために、圧力制御下での抽出工程が必要であった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、従来のポリベンゾオキサゾール樹脂に比べ低温でも充分硬化できるとともに、N2雰囲気に限らず空気雰囲気下でも硬化することができ、かつ、引張
強度および伸びなどの優れた機械的特性、吸水率および誘電率などの絶縁特性、ならびに超耐熱性を有する硬化膜が得られる皮膜形成用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究した結果、特定のジアルデヒド化合物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る皮膜形成用樹脂組成物は、
下記一般式(1)で表される化合物(a1)から導かれる構成単位と下記式(2)で表される化合物(a2)から導かれる構成単位とを含むポリマー前駆体(A)と、溶媒(B)とを含むことを特徴とする。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Xは、2価の有機基、−O−、−S−および−SO2−からなる群より選ばれる
少なくとも1種の2価の連結基、または単結合を表し、Rは、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、mおよびnは、それぞれ独立に0または1〜3の整数を表し、Rが複数存在するときは、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。)
OHC−CHO (2)
上記ポリマー前駆体(A)は、下記一般式(3)で表される、上記化合物(a1)以外の化合物(a3)および/または下記一般式(4)で表される化合物(a4)から導かれる構成単位をさらに含むことが好ましい。
2N−Z−NH2 (3)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、ZおよびZ’は、それぞれ独立に2価の有機基、−O−、−SO2−および−O
−Si(R12)−からなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の連結基を表し、R1
およびR2は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。)
本発明に係る皮膜形成用樹脂組成物において、上記Xは、−CH2−、−C(CF32
―、―S−、−SO2−、−O−および単結合からなる群から選ばれることが好ましい。
【0013】
本発明に係るポリマー前駆体(A)は、下記一般式(5)で表される構成単位を含むことを特徴とする。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Xは、2価の有機基、−O−、−S−および−SO2−からなる群より選ばれる
少なくとも1種の2価の連結基、または単結合を表し、Rは、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、mおよびnは、それぞれ独立に0または1〜3の整数を表し、Rが複数存在するときは、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。)
上記ポリマー前駆体(A)は、下記一般式(6)および/または下記一般式(7)で表される構成単位をさらに含むことが好ましい。
【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
(式中、Xは、2価の有機基、−O−、−S−および−SO2−からなる群より選ばれる
少なくとも1種の2価の連結基、または単結合を表し、Rは、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、mおよびnは、それぞれ独立に0または1〜3の整数を表し、Rが複数存在するときは、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。ZおよびZ’は、それぞれ独立に2価の有機基、−O−、−SO2−および−O−Si(R12)−からなる群より選ば
れる少なくとも1種の2価の連結基を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。)
本発明に係るポリマー前駆体(A)において、上記Xは、−CH2−、−C(CF32
―、―S−、−SO2−、−O−および単結合からなる群から選ばれることが好ましい。
【0019】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される化合物(a1)から導かれる構成単位と下記一般式(2)で表される化合物(a2)から導かれる構成単位とを含むポリマー前駆体(A)と、感光剤(C)と、溶剤(B)とを含むことを特徴とする。
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、Xは、2価の有機基、−O−、−S−および−SO2−からなる群より選ばれる
少なくとも1種の2価の連結基、または単結合を表し、Rは、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、mおよびnは、それぞれ独立に0または1〜3の整数を表し、Rが複数存在するときは、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。)
OHC−CHO (2)
上記ポリマー前駆体(A)は、下記一般式(3)で表される、前記化合物(a1)以外の化合物(a3)および/または下記一般式(4)で表される化合物(a4)から導かれる構成単位をさらに含むことが好ましい。
2N−Z−NH2 (3)
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、ZおよびZ’は、それぞれ独立に2価の有機基、−O−、−SO2−および−O
−Si(R12)−からなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の連結基を表し、R1
およびR2は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。)
本発明の硬化膜は、上記皮膜形成用樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の皮膜形成用樹脂組成物は、従来のポリベンゾオキサゾール樹脂に比べ低温でも充分硬化できるとともに、空気雰囲気下で硬化できる。また、本発明の皮膜形成用樹脂組成物によれば、引張強度および伸びなどの優れた機械的特性、吸水率および誘電率などの絶縁特性、ならびに超耐熱性を有する硬化膜が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について具体的に説明する。
<化合物(a1)>
本発明に用いられる化合物(a1)は、下記一般式(1)で表される。
【0026】
【化8】

【0027】
式(1)中、Xは、2価の有機基、−O−、−S−および−SO2−からなる群より選
ばれる少なくとも1種の2価の連結基、または単結合を表す。
上記2価の有機基としては、たとえば、メチレン基、炭素数2〜8のアルキレン基などが挙げられ、該メチレン基、アルキレン基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0028】
これらのうちで、Xとしては、樹脂溶液の溶解性や、得られた膜の機械的強度、紫外線透過性および誘電特性の点で、−CH2−、−C(CF3)2−、−S−、−SO2−、−O−および単結合からなる群より選ばれることが好ましい。
【0029】
Rは、ハロゲン原子または1価の有機基を表す。
上記1価の有機基としては、たとえば、炭素数1〜8のアルキル基などが挙げられ、該アルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0030】
mおよびnは、それぞれ独立に0または1〜3の整数を表し、好ましくは0または1、より好ましくは0である。たとえば、m=0のときは、ベンゼン環を形成する6個の炭素原子のうち3個にはそれぞれ水素が結合していることになる。また、Rが複数存在するときは、Rは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0031】
化合物(a1)としては、具体的には、下記式(a1−1)〜(a1−6)で表される化合物が好適に用いられる。
【0032】
【化9】

【0033】
本発明において、化合物(a1)は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<化合物(a2)>
本発明に用いられる化合物(a2)は下記式(2)で表されるグリオキサールである。OHC−CHO (2)
化合物(a2)は、化合物(a1)との反応性に優れる。また、本発明に用いられるポリマー前駆体(A)は、化合物(a1)とともに、化合物(a2)を用いて合成されるため、低温で充分硬化でき、また、空気雰囲気下でも硬化できる。さらに、得られた硬化膜は、引張強度および伸びなどの優れた機械的特性、吸水率および誘電率などの絶縁特性、ならびに超耐熱性を有する。
【0034】
<化合物(a3)および化合物(a4)>
化合物(a3)は、下記一般式(3)で表される、化合物(a1)以外の化合物であり
、化合物(a4)は、下記一般式(4)で表される化合物である。化合物(a1)および(a2)とともに、化合物(a3)および/または化合物(a4)を組み合わせて用いて得られるポリマー前駆体(A)から硬化膜を製造すれば、伸びのある硬化膜が得られ、耐クラック性に優れた構造体を得ることができる。また、化合物(a3)および/または化合物(a4)を用いて得られるポリマー前駆体(A)からパターンを形成する場合は、樹脂の溶解性や解像性が向上する。さらに、耐熱性の観点からは化合物(a3)がより好ましく、機械的特性の観点からは化合物(a4)がより好ましく用いられる。
2N−Z−NH2 (3)
【0035】
【化10】

【0036】
式(3)および(4)中、ZおよびZ’は、それぞれ独立に2価の有機基、−O−、−SO2−および−O−Si(R12)−からなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の
連結基を表す。
【0037】
上記2価の有機基としては、たとえば、メチレン基、炭素数2〜8のアルキレン基、およびフェニレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の連結基などが挙げられ、これらの基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0038】
−O−Si(R12)−において、R1およびR2は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。
上記1価の有機基としては、たとえば、メチレン基、炭素数2〜8のアルキレン基、アリール基などが挙げられ、これらの基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0039】
これらのうちで、Zとしては、耐熱性の観点から、−SO2−が好ましく、Z’として
は、伸びの観点から、−O−Si(R12)が好ましい。
化合物(a3)としては、具体的には、たとえば、
p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4.4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2
,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン;
ジアミノテトラフェニルチオフェンなどのヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;
1、1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレ
ンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族および脂環式ジアミン;
ジアミノヘキサメチルジシロキサンなどのジアミノオルガノシロキサン、ビスアミノプロピルポリジメチルシロキサン(詳細には、BY16−871、BY16−853C(東レダウコーニングシリコーン社製)、LP7100(信越化学社製)、FM3311、FM3321、FM3325(チッソ社製)等)が挙げられる。
【0040】
また、特定疎水基を有するジアミン化合物としては、例えば、1−ドデシルオキシ2,4−ジアミノベンゼン、1−テトラデシルオキシ2,4−ジアミノベンゼン、1−ペンタデシルオキシ2,4−ジアミノベンゼン、1−ヘキサデシルオキシ2,4−ジアミノベンゼン、1−オクタデシルオキシ2,4−ジアミノベンゼン、1−コレステリルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、テトラデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、ペンタデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、ヘキサデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、オクタデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、コレステリルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、コレスタニルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、(2,4−ジアミノフェノキシ)パルミテート、(2,4−ジアミノフェノキシ)ステアリレート、(2,4−ジアミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゾエート、下記式(19)および(20)で表される化合物などを挙げることができる。
【0041】
【化11】

【0042】
これらのうち、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフ
ェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル、1−ヘキサデシルオキシ2,4−ジアミノベンゼン、1−オクタデシルオキシ2,4−ジアミノベンゼン、1−コレステリルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、オクタデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、コレステリルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、およびコレスタニルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、上記式(19)および(20)で表される化合物および、ビスアミノプロピルポリジメチルシロキサン(詳細には、BY16−871、BY16−853C、FM3311、LP7100)が好ましい。
【0043】
化合物(a4)としては、具体的には、たとえば
ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、水添ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、スピロ環型、ビスフェノールアルカン類型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、臭素化クレゾールノボラック型、トリスヒドロキシメタン型、テトラフェニロールエタン型、脂環型、アルコール型、脂肪酸変性、トルイジン型、アニリン型、アミノフェノール型、ヒンダトイン型、ジフェニルエーテル型、ジシクロペンタジエン型、ウレタン変性型、NBR変性型、CTBN変性型、ラクトン変性型、ポリジメチルシロキサン型からなるジグリシジルエーテル、ジグリシジルエステル、ジグリシジルアミン化合物;
ブチルジグリシジルエーテル、フェニルジグリシジルエーテル、クレジルジグリシジルエーテル、ノニルジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
詳細にはリカレジンHBE−100、DME―100、W−100、DPO−20E、DPO−60E(新日本理化株式会社製)、BS−DGE、GAN、GOT、AK−601(日本化薬株式会社製)、エポメートYD−8125、YD−7017、YD−900、YDF−8170、YDB−360、YDC−1312(東都化成株式会社製)、プラクセル、セロキサイド2021、2080(ダイセル化学工業社製)、デナコールEX−201、EX−211、EX−212、EX−252、EX−313、EX−711、EX−721、EX−810、EX−811、EX−850、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−861、EX−941、EX−920、EX−931(ナガセケムテックス株式会社製)、サイラプレーンFM5511(チッソ株式会社製)、KF−105、X−22−163A、X−22−163A、X−22−163C(信越化学社製)、BY16−855D(東レダウコーニングシリコーン社製)などが好適に用いられる。
【0045】
これらのうちで、ポリジメチルシロキサン型ジグリシジルエーテル(たとえば、サイラプレーンFM5511、KF−105、X−22−163A、X−22−163A、X−22−163C、BY16−855D)が好ましい。
【0046】
本発明において、化合物(a3)は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、化合物(a4)は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<ポリマー前駆体(A)>
本発明に用いられるポリマー前駆体(A)は、上記式(1)で表される化合物(a1)から導かれる構成単位と上記式(2)で表される化合物(a2)から導かれる構成単位とを含む。本明細書において、化合物(a1)から導かれる構成単位を構成単位(a1)、化合物(a2)から導かれる構成単位を構成単位(a2)ともいう。
【0047】
このようなポリマー前駆体(A)は、化合物(a1)および化合物(a2)を反応させることにより得られ、該前駆体は下記一般式(5)で表される構成単位(構成単位(a1)および構成単位(a2)がつながった構成単位)を含む。
【0048】
【化12】

【0049】
式(5)中、X、R、mおよびnは、それぞれ上記式(1)におけるX、R、mおよびnと同義であり、好ましい範囲も同じである。上述したように、ポリマー前駆体(A)は、化合物(a2)から導かれる構成単位を有しているため、低温で充分硬化でき、また、空気雰囲気下で硬化できる。
【0050】
ポリマー前駆体(A)において、化合物(a1)から導かれる構成単位と化合物(a2)から導かれる構成単位とのモル比が、好ましくは1:0.8〜1:1.2、より好ましくは1:0.9〜1:1.1であることが望ましい。
【0051】
また、本発明に用いられるポリマー前駆体(A)は、上記式(1)で表される化合物(a1)から導かれる構成単位と上記式(2)で表される化合物(a2)から導かれる構成単位とともに、上記式(3)で表される化合物(a3)から導かれる構成単位および/または上記式(4)で表される化合物(a4)から導かれる構成単位をさらに含むことが好ましい。本明細書において、化合物(a3)から導かれる構成単位を構成単位(a3)、化合物(a4)から導かれる構成単位を構成単位(a4)ともいう。
【0052】
このようなポリマー前駆体(A)は、化合物(a1)および化合物(a2)とともに、化合物(a3)および/または化合物(a4)を反応させて得られ、該前駆体は上記式(5)で表される構成単位とともに、下記一般式(6)で表される構成単位(構成単位(a2)および構成単位(a3)がつながった構成単位)および/または下記一般式(7)で表される構成単位(構成単位(a1)および構成単位(a4)がつながった構成単位)を含む。すなわち、化合物(a1)〜(a3)を反応させると、得られたポリマー前駆体(A)は、上記式(5)および下記一般式(6)で表される構成単位を有し、化合物(a1)、(a2)および(a4)を反応させると、得られたポリマー前駆体(A)は、上記式(5)および下記一般式(7)で表される構成単位を有し、化合物(a1)〜(a4)を反応させると、得られたポリマー前駆体(A)は、上記式(5)、下記一般式(6)および(7)で表される構成単位を有する。
【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
式(6)および(7)中、Z、Z’、X、R、mおよびnは、それぞれ上記式(1)、(3)および(4)におけるZ、Z’、X、R、mおよびnと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0056】
化合物(a1)、(a2)、(a3)を用いる場合、ポリマー前駆体(A)において、構成単位(a1)と構成単位(a3)とのモル比は、好ましくは20:80〜100:0、より好ましくは30:70〜100:0、さらに好ましくは30:70〜99:1であることが望ましい。このとき、構成単位(a1)および構成単位(a3)の合計と、構成単位(a2)とのモル比は、好ましくは1:0.8〜1:1.2、より好ましくは1:0.9〜1:1.1であることが望ましい。
【0057】
化合物(a1)、(a2)、(a4)を用いる場合、ポリマー前駆体(A)において、構成単位(a2)と構成単位(a4)とのモル比は、好ましくは20:80〜100:0、より好ましくは30:70〜100:0、さらに好ましくは30:70〜99:1であることが望ましい。このとき、構成単位(a1)と、構成単位(a2)および構成単位(a4)の合計とのモル比は、好ましくは1:0.8〜1:1.2、より好ましくは1:0.9〜1:1.1であることが望ましい。
【0058】
化合物(a1)〜(a4)を用いる場合、構成単位(a1)と構成単位(a3)とのモル比は、好ましくは20:80〜100:0、より好ましくは30:70〜100:0、さらに好ましくは30:70〜99:1であることが望ましく、構成単位(a2)と構成単位(a4)とのモル比は、好ましくは20:80〜100:0、より好ましくは30:70〜100:0、さらに好ましくは30:70〜99:1であることが望ましい。構成単位(a1)および構成単位(a3)の合計と構成単位(a2)および構成単位(a4)の合計とのモル比は好ましくは1:0.8〜1:1.2、より好ましくは1:0.9〜1:1.1であることが好ましい。
【0059】
構成単位(a3)、構成単位(a4)が上記範囲にあると得られる硬化膜に耐熱性や機械的強度を付与することができるため好ましい。
ポリマー前駆体(A)の製造方法としては、公知の方法が好適に用いられる。たとえば、化合物(a1)、化合物(a2)、ならびに必要に応じて用いられる化合物(a3)および化合物(a4)を、N,N−ジメチルホルムアミドなどの不活性溶媒中で、通常、常温〜200℃で、好ましくは常温〜160℃で、2〜72時間反応させる。
【0060】
ポリマー前駆体(A)の製造において、化合物(a1)、(a2)、(a3)を用いる
場合、化合物(a1)と化合物(a3)とのモル比は、好ましくは20:80〜100:0、より好ましくは30:70〜100:0、さらに好ましくは30:70〜99:1であることが望ましい。このとき、化合物(a1)および化合物(a3)の合計と、化合物(a2)とのモル比は、好ましくは1:0.8〜1:1.2、より好ましくは1:0.9〜1:1.1であることが望ましい。
【0061】
化合物(a1)、(a2)、(a4)を用いる場合、化合物(a2)と化合物(a4)とのモル比は、好ましくは20:80〜100:0、より好ましくは30:70〜100:0、さらに好ましくは30:70〜99:1であることが望ましい。このとき、化合物(a1)と、化合物(a2)および化合物(a4)の合計とのモル比は、好ましくは1:0.8〜1:1.2、より好ましくは1:0.9〜1:1.1であることが望ましい。
【0062】
化合物(a1)〜(a4)を用いる場合、化合物(a1)と化合物(a3)とのモル比は、好ましくは20:80〜100:0、より好ましくは30:70〜100:0、さらに好ましくは30:70〜99:1であることが望ましく、化合物(a2)と化合物(a4)とのモル比は、好ましくは20:80〜100:0、より好ましくは30:70〜100:0、さらに好ましくは30:70〜99:1であることが望ましい。化合物(a1)および化合物(a3)の合計と化合物(a2)および化合物(a4)の合計とのモル比は好ましくは1:0.8〜1:1.2、より好ましくは1:0.9〜1:1.1であることが好ましい。
【0063】
なお、皮膜形成用樹脂組成物の保存安定性を高めるために、ポリマー前駆体(A)の製造中または製造後に、単官能成分として、以下のようなアミン化合物(a5)および/またはアルデヒド化合物(a6)を添加してもよい。
【0064】
アミン化合物(a5)としては、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘキシルメチルアミン、エチルヘキシルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、1−メチルヘプチルアミン、ヒドロキシエチルジメチルアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、アセチルジメチルアミン、アミノ蟻酸メチル、アミノサリチル酸、アミノ酢酸、アミノこはく酸、アミノカプリル酸、アミノカプロン酸、アミノオクタン酸、4−アミノー3−ヒドロキシ酪酸、アミノグルタミン酸、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、アセチルベンジルアミン、メトキシベンジルルアミン、2−フェニルエチルアミン、2−フェニルプロピルアミン、メトキシフェネチルアミン、メトキシフェミルエチルアミン、2,(4−メトキシフェノキシ)エチルアミン、アミノ安息香酸エチル、4−アミノー2,3,5,6テトラフルオロ安息香酸、4―アミノインドール、アミノシクロヘキサノール、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのうちで、ベンジルアミンが好適に用いられる。
【0065】
アルデヒド化合物(a6)としては、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、トリルプロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、エトキシベンズアルデヒド、プロポキシベンズアルデヒド、ブトキシベンズアルデヒド、アセトキシベンズアルデヒド、アセトキシメトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキシメチルベンズアルデヒド、ヒドロキシメトキシベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、ジメトキシベンズアルデヒド、フルオロベンズアルデヒド、フルオロメチルベンズアルデヒド、フルオロメチルベンズアルデヒド、フルオロメトキシベンズアルデヒド、ビス(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、フルオロ(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、フルオロジメトキシベンズアルデヒ
ド、フルオロベンジルオキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、メチルサリチルアルデヒド、フェニルアセトトアルデヒド、フェニルプロピオンアルデヒド、ベンジルオキシベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、メチルシンナムアルデヒド、エチルシンナルアルデヒド、ブチルシンナムアルデヒド、ヘキシルシンナムアルデヒド、アミルシンナムアルデヒド、ジヒドロシンナムアルデヒド、メトキシシンナムアルデヒド、メトキシメチルシンナムアルデヒド、メトキシシンナミックアルデヒド、プロトカクテアルデヒド、メチルフェニルブチルアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、トルアルデヒド、フルアルデヒド、メチルフルアルデヒド、ニトロフルアルデヒドなどが挙げられる。これらのうちで、ベンズアルデヒドが好適に用いられる。
【0066】
これら単官能成分を添加する場合は、化合物(a1)〜(a4)および単官能成分の総重量に対し、通常0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜7重量%の量で用いることが望ましい。
【0067】
このようにして、ポリマー前駆体(A)は、通常、上記溶媒中の溶液の形態で得られる。皮膜形成用樹脂組成物などとしてそのまま用いてもよく、また、沈殿後、ろ別収集などの後処理を行ってから用いてもよい。任意の濃度までエバポレーターで濃縮した溶液、もしくは適当な溶媒を用いて再沈し、真空乾燥の後、任意の溶媒に再溶解した溶液を用いることで、水分などの低沸点成分を除去した溶液としても用いることができる。
【0068】
得られたポリマー前駆体(A)の重量平均分子量は、通常5000〜200000、好ましくは、10000〜100000である。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したときのポリスチレン換算の値である。
【0069】
本発明において、ポリマー前駆体(A)は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<皮膜形成用樹脂組成物>
本発明の皮膜形成用樹脂組成物は、上述したポリマー前駆体(A)と溶媒(B)とを含む。
【0070】
溶媒(B)は、樹脂組成物の粘度、保存安定性、コーティング特性などを調節するために添加される。溶媒(B)としては、有機溶媒のみからなる溶媒を用いてもよいが、有機溶媒以外に、溶媒全量に対して、水を0.1〜30重量%含むことが好ましい。水を用いると、皮膜形成用樹脂組成物が低粘度化し、該組成物の取り扱いが容易となる。
【0071】
上記有機溶媒としては、特に限定されないが、たとえば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、ブチルカルビトール等のカル
ビトール類;
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類;
酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;
N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;
γ−ブチルラクトン等のラクトン類などが挙げられる。
【0072】
これらのうちで、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチルラクトンが好適に用いられる。
上記有機溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0073】
溶媒(B)の量は特に限定されないが、ポリマー前駆体(A)100重量部に対して、好ましくは65〜1900重量部の量で用いられることが望ましい。
本発明の皮膜形成用樹脂組成物は、ポリマー前駆体(A)と溶媒(B)とを適宜混合することによって得られる。
【0074】
なお、上記皮膜形成用樹脂組成物には、必要に応じて界面活性剤などの添加剤を含ませてもよい。
上記界面活性剤としては、特に限定されないが、シリコーン系のレベリング剤としては、例えば、東レダウコーニングのSH−28Aなどが好適に用いられる。
【0075】
この場合、添加剤は、ポリマー前駆体(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部の量で用いられることが望ましい。
<皮膜形成用樹脂組成物による硬化膜の形成>
上記皮膜形成用樹脂組成物を用いて硬化膜が形成される。この硬化膜に含まれる構成単位としては、下記一般式(8)で表される構成単位が挙げられる。
【0076】
【化15】

【0077】
式(8)中、X、R、mおよびnは、それぞれ上記式(1)におけるX、R、mおよびnと同義である。
このような構成単位を含む硬化膜は、上記皮膜形成用樹脂組成物を加熱して得られるが、好ましくは200℃以上で、より好ましくは200〜260℃で、さらに好ましくは200〜250℃で加熱して得られる。すなわち、皮膜形成用樹脂組成物を上記温度範囲で加熱すると、閉環反応が起こり、上記式(5)で表される構成単位が上記式(8)で表される構成単位になる。また、このとき雰囲気は制限されないが、空気雰囲気下で加熱しても閉環反応が起こり、硬化膜が得られる。また、上記硬化膜は、上記温度で加熱すること
により、TG/DTA測定で、重量減少が5%になるときの温度が280℃を超える膜となる。このように、本発明に用いられるポリマー前駆体(A)では、化合物(a1)から導かれる構成単位と化合物(a2)から導かれる構成単位との反応性が高いため、素子などにダメージを与えない半田耐熱以下でも閉環反応が起こり、最終的な硬化膜を得られる利点がある。さらに、本発明の硬化膜は、上記式(8)で表される構成単位を有しているため、引張強度および伸びなどの優れた機械的特性、吸水率および誘電率などの絶縁特性、ならびに超耐熱性に優れる。
【0078】
上記硬化膜は、具体的には、たとえば、樹脂付き銅箔、銅張り積層板、メタルスパッタシリコンウェハなどの基板に塗布し、乾燥し、溶媒などを揮発させて塗膜を形成した後、加熱して製造される。
【0079】
上記塗布は、ディッピング、スプレー、バーコート、ロールコート、アプリケーターまたはスピンコートなどの方法で行われる。塗布膜厚、塗布方法については、組成物溶液の固形分濃度、粘度などを調節して適宜制御される。形成された塗膜は、上記温度範囲で10〜120分間加熱することにより、上記式(8)で表される構成単位を含む硬化膜となる。
【0080】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、上述したポリマー前駆体(A)と、感光剤(C)と、溶媒(B)とを含む。この感光性樹脂組成物によりパターンを形成することができる。
【0081】
また、感光剤(C)としては、ポジ型感光性樹脂組成物の場合は、たとえば以下の化合物(c1)用いられ、ネガ型感光性樹脂組成物の場合は、たとえば以下の化合物(c2)または化合物(c3)が用いられる。
【0082】
[化合物(c1)]
化合物(c1)とは、キノンジアジド基を有する化合物であり、すなわち、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸または1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル化合物である。これを用いれば、ポジ型のパターンが形成される。
【0083】
上記フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物としては特に限定されないが、具体的には、下記一般式(c1−1)〜(c1−5)で表される化合物が好ましい。
【0084】
【化16】

【0085】
(式中、X1〜X10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数
1〜4のアルコキシ基または水酸基である。ただし、X1〜X5の組み合わせにおいて少なくとも1つは水酸基である。また、Aは、単結合、O、S、CH2、C(CH32、C(
CF32、C=OまたはSO2である。)
【0086】
【化17】

【0087】
(式中、X11〜X24は、それぞれ独立に、上記式(c1−1)中のX1と同義である。た
だし、X11〜X15の組み合わせにおいて少なくとも1つは水酸基である。また、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0088】
【化18】

【0089】
(式中、X25〜X39は、それぞれ独立に、上記式(c1−1)中のX1と同義である。た
だし、X25〜X29およびX30〜X34のそれぞれの組み合わせにおいて少なくとも1つは水酸基である。また、R5は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0090】
【化19】

【0091】
(式中、X40〜X58は、それぞれ独立に、上記式(c1−1)中のX1と同義である。た
だし、X40〜X44、X45〜X49およびX50〜X54のそれぞれの組み合わせにおいて少なくとも1つは水酸基である。また、R6〜R8は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0092】
【化20】

【0093】
(式中、X59〜X72は、それぞれ独立に、上記式(c1−1)中のX1と同義である。た
だし、X59〜X62およびX63〜X67のそれぞれの組み合わせにおいて少なくとも1つは水酸基である。)
上記一般式(c1−1)〜(c1−5)で表わされる化合物のうち、一般式(c1−4)で表わされる1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エタンが好ましい。
【0094】
化合物(c1)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
化合物(c1)は、ポリマー前駆体(A)100重量部に対して、通常0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜35重量部、より好ましくは1〜30重量部の量で用いることが望ましい。上記範囲を超える場合は、パターン形状が劣化したり、硬化時に発泡する傾向にある。
【0095】
[化合物(c2)]
化合物(c2)とは、光反応性酸発生剤、すなわち、放射線などの照射により酸を発生する化合物である。この酸の触媒作用により、後述する架橋剤とポリマー前駆体(A)とが反応できる。化合物(c2)を用いれば、ネガ型のパターンが形成される。
【0096】
化合物(c2)としては、放射線などの照射により酸を発生する化合物であれば特に限定されないが、たとえば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物などが挙げられる。
【0097】
上記オニウム塩化合物としては、たとえば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩などが挙げられる。上記オニウム塩としては、具体的には、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモ
ネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフリオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサ
フルオロアンチモネート、4-t-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-t-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフリオロメタンスルホネートなどが好適に用いられる。
【0098】
上記ハロゲン含有化合物としては、たとえば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物などが挙げられる。上記ハロゲン含有化合物としては、具体的には、1,10-ジブロモ-n-デカン、1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-メトキシフェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、スチリル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリ
アジン、ナフチル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2−(2−(5−メチルフラン−2−イル)メチニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのs-トリアジン誘導体などが好適に用いられる。
【0099】
上記ジアゾケトン化合物としては、たとえば、1,3-ジケト-2-ジアゾ化合物、ジアゾベ
ンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物などが挙げられる。上記ジアゾケトン化合物としては、具体的には、フェノール類の1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物などが好適に用いられる。
【0100】
上記スルホン化合物としては、たとえば、β-ケトスルホン化合物、β-スルホニルスルホン化合物およびこれらの化合物のα-ジアゾ化合物などが挙げられる。上記スルホン化
合物としては、具体的には、4-トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホ
ン、ビス(フェナシルスルホニル)メタンなどが好適に用いられる。
【0101】
上記スルホン酸化合物としては、たとえば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類などが挙げられる。上記スルホン酸化合物としては、具体的には、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルp-トルエンスルホネートなどが好適に用いられる。
【0102】
上記スルホンイミド化合物の具体例としては、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフ
ルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミドなどが挙げられる。
【0103】
上記ジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどが挙げられる。
【0104】
化合物(c2)は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
化合物(c2)は、ポリマー前駆体(A)100重量部に対して、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜7重量部の量で用いることが望ましい。上記範囲を超える場合は、パターン形状が劣化する傾向にある。
【0105】
[化合物(c3)]
化合物(c3)とは、光反応ラジカル発生剤、すなわち、放射線などの照射によりラジカルを発生する化合物である。ラジカルの触媒作用により、後述する架橋剤とポリマー前駆体(A)とが反応できる。化合物(c3)を用いれば、ネガ型のパターンが形成される。
【0106】
本発明の組成物に用いられるラジカル重合開始剤(c3)としては、たとえば、ベンジル、ジアセチルなどのα−ジケトン類;ベンゾインなどのアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのアシロインエーテル類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−
4−スルホン酸などのチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;アセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−アセトキシベンゾフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、α,α−ジメトキシ−α−モルホリノ−メチルチオフェニルアセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などのアセトフェノン類;アントラキノン、1,4−ナフトキノンなどのキノン類;フェナシルクロライド、トリブロモメチルフェニルスルホン、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのハロゲン化合物;2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾールなどのビスイミダゾール類;ジ−tert−ブチルパ−オキサイドなどの過酸化物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド類などが挙げられる。
【0107】
市販品としては、チバスペシャルティケミカルズ(株)製「イルガキュア184、651、500、907、CGI369、CG24−61」、BASF(株)製「ルシリンLR8728、ルシリンTPO」、チバスペシャルティケミカルズ(株)製「ダロキュア1116、1173」、UCB(株)製「ユベクリルP36」などが挙げられる。
【0108】
なお、必要に応じてメルカプトベンゾチオアゾール、メルカプトベンゾオキサゾールのような水素供与性を有する化合物を、上記光ラジカル重合開始剤と併用してもよい。また、上記ラジカル重合開始剤と放射線増感剤とを併用してもよい。
【0109】
上記ラジカル重合開始剤(c3)は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、ポリマー前駆体(A)100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは1〜30重量部、特に好ましくは2〜20重量部の範囲で用いられる。ラジカル重合開始剤(c3)の使用量が、上記範囲未満であると、酸素によるラジカルの失活の影響(感度の低下)を受けやすく、また上記範囲を越えると、相溶性が悪くなったり、保存安定性が低下する傾向にある。
【0110】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる溶媒(B)としては、皮膜形成用樹脂組成物に用いられる溶媒と同様である。有機溶媒としては、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチルラクトンが好適に用いられる。
【0111】
上記有機溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
溶媒(B)の量は特に限定されないが、ポリマー前駆体(A)100重量部に対して、好ましくは65〜1900重量部の量で用いられることが望ましい。
【0112】
本発明の感光性樹脂組成物は、その他の化合物(D)として、以下のような化合物(d1)〜(d5)などをさらに含んでいてもよい。本発明の感光性樹脂組成物において、ポジ型感光性樹脂組成物の場合は、得られるパターンの機械的特性の観点から、上述したポリマー前駆体(A)、感光剤(C)、架橋剤(d2)、および溶媒(B)を含むことが好ましい。ネガ型感光性樹脂組成物の場合は、上述したポリマー前駆体(A)、感光剤(C)、架橋剤(d2)、および溶媒(B)を含むことが好ましい。
【0113】
[フェノール樹脂(d1)]
フェノール樹脂(d1)は、解像性の向上を目的に使用される。
フェノール樹脂(d1)としては、特に限定されないが、フェノール性水酸基を有する化合物またはノボラック樹脂が好ましい。このようなフェノール性水酸基を有する化合物
としては1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−{1−(4−ヒドロキシフ
ェニル)−1−メチルエチル}フェニル]エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメ
タン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、4,6−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられ、また、ノボラック樹脂としてはフェノール類とアルデヒド類とを触媒の存在下で縮合させて得られる樹脂が挙げられる。
【0114】
上記フェノール類としては、たとえば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシ
レノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、α-ナフトール、β-ナフトールなどが挙げられる。
【0115】
上記アルデヒド類としては、たとえば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
このようなノボラック樹脂としては、具体的には、フェノール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、フェノール-ナフ
トール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂などが挙げられる。
【0116】
また、ノボラック樹脂以外の樹脂としては、ポリヒドロキシスチレンおよびその共重合体、フェノール-キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール-キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン縮合樹脂などが挙げられる。
【0117】
フェノール樹脂(d1)は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール樹脂(d1)は、ポリマー前駆体(A)100重量部に対し、通常0〜150重量部、好ましくは1〜150重量部、更に好ましくは10〜120重量部の量で用いられることが望ましい。上記範囲を超える場合は、樹脂の耐熱性が低下する傾向にある。
【0118】
[架橋剤(d2)]
架橋剤(d2)は、ポリマー前駆体(A)などと反応して硬化させる成分である。
架橋剤(d2)としては、たとえば、(ポリ)メチロールメラミン、(ポリ)メチロールグリコールウリル、(ポリ)メチロールベンゾグアナミン、(ポリ)メチロールウレア等の活性メチロール基の全部または一部をアルキルエーテル化した含窒素化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、またはこれらを混合したものが挙げられ、一部自己縮合してなるオリゴマー成分を含有していてもよい。
【0119】
含窒素化合物の具体的例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリルなどが好適に用いられる。
【0120】
また多官能(メタ)アクリレート化合物としては、たとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)
アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシエチルエーテル、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシエチルエーテル、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシロキシメチルエチルエーテル、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0121】
上記化合物は、市販されている化合物をそのまま用いることもできる。市販されている化合物としては、たとえば、東亞合成(株)製「アロニックスM−210、同M−309、同M−310、同M−320、同M−400、同M−402、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同M−8100、同M−9050、同M−240、同M−245、同M−6100、同M−6200、同M−6250、同M−6300、同M−6400、同M−6500」、日本化薬(株)製「KAYARAD R−551、同R−712、同TMPTA、同HDDA、同TPGDA、同PEG400DA、同MANDA、同HX−220、同HX−620、同R−604、同DPCA−20、DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120」、大阪有機化学工業(株)製「ビスコート#295、同300、同260、同312、同335HP、同360、同GPT、同3PA、同400」などが挙げられる。
【0122】
架橋剤(d2)は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋剤(d2)は、ポリマー前駆体(A)100重量部に対し、通常0〜150重量部、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは10〜120重量部の量で用いられることが望ましい。上記範囲を超える場合は、樹脂が脆くなり、クラックの発生、応力緩和の低下が生じやすい傾向にある。
【0123】
[架橋微粒子(d3)]
架橋微粒子(d3)は、架橋微粒子を構成する重合体のTgが0℃以下であれば特に限定されないが、不飽和重合性基を2個以上有する架橋性モノマーと、架橋微粒子(d3)のTgが0℃以下となるように選択される少なくとも1種のその他のモノマーとを共重合したものが好適に用いられる。さらに、その他のモノマーとして、架橋微粒子(d3)のTgが0℃以下となるようなものであって、重合性基以外の官能基、たとえば、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基などの官能基を有するモノマーを用いてもよい。
【0124】
上記架橋性モノマーとしては、たとえば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和基を複数有する化合物が挙げられる。これらのうちで、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0125】
上記その他のモノマーとしては、たとえば、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジ
エン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン等のジエン化合物;(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-クロロメチルアクリロニトリル、α-メトキシアクリロ
ニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、クロトン酸ニトリル、ケイ皮酸ニトリル、イ
タコン酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル、フマル酸ジニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;(メタ)アクリルアミド、N,N'-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'-エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'-ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミ
ド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、ケイ皮酸アミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン、o-メトキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、
p-イソプロペニルフェノール等の芳香族ビニル化合物;ビスフェノールAのジグリシジ
ルエーテル、グリコールのジグリシジルエーテル等と(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等との反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレートおよび、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアナートとの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸-β-(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸-β-(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸-β-(メタ)アクリロキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸-β-(メタ)アクリロキシエチル等の不飽和酸化合物;ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物などが挙げられる。これらのうちで、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、スチレン、p-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類などが好ましく用いられる。
【0126】
架橋微粒子(d3)は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋微粒子(d3)は、ポリマー前駆体(A)100重量部に対し、通常0.1〜40重量部の量で用いられることが望ましい。上記範囲を超える場合は、樹脂の耐熱性および解像度が低下する傾向にある。
【0127】
[その他の耐熱性樹脂(d4)]
その他の耐熱性樹脂(d4)を耐熱性向上のために併用してもよい。
その他の耐熱性樹脂(d4)としては、たとえば、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリヒダントイン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリトリアゾール、ポリオキサジアゾール、ポリチアジアゾール、ポリベンゾキサジノン、ポリキナゾリンジオン、ポリイミドイソインドロキナゾリンジオン、ポリキナゾロン、ポリキナクリドン、ポリアントラゾリン、ポリインドフェナジン、ポリノルボルネンなどが挙げられる。
【0128】
その他の耐熱性樹脂(d4)は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他の耐熱性樹脂(d4)は、ポリマー前駆体(A)100重量部に対し、通常0.1〜40重量部の量で用いられることが望ましい。
【0129】
[界面活性剤(d5)]
さらに、界面活性剤(d5)などを用いてもよい。
界面活性剤(d5)としては、具体的には、フッ素系のレベリング剤(商品名、以下同様)としては、例えば、ネオス株式会社のFTX−218;ビーエムヘミー(BM−CHEMIE)社のBM1000、BM1100;エフカケミカルズ社のエフカ772、エフカ777;共栄社化学(株)製のフローレンシリーズ;住友スリーエム(株)のFCシリーズ;東邦化学(株)のフルオナールTFシリーズなどを挙げることができ、シリコーン系のレベリング剤としては、例えば、東レダウコーニングのSH−28A、ビックケミー社のBYKシリーズ;シュメグマン(Sshmegmann)社のSshmegoシリーズ;エフカケミカルズ社のエフカ30、エフカ31、エフカ34、エフカ35、エフカ36、エフカ39、エフカ83、エフカ86、エフカ88などを挙げることができ、エーテル系またはエステル系のレベリング剤としては、例えば、日信化学工業(株)のサーフィノール;花王(株)のエマルゲン、ホモゲノールなどが挙げられる。
【0130】
界面活性剤(d5)は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤(d5)は、ポリマー前駆体(A)100重量部に対し、通常0.1〜40重量部の量で用いられることが望ましい。
【0131】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリマー前駆体(A)、感光剤(C)および溶媒(B)のほか、必要に応じて上記のようなその他の化合物(D)を適宜混合することによって得られる。
【0132】
<感光性樹脂組成物によるパターンの形成>
本発明の感光性樹脂組成物を用いれば、たとえば、以下のような方法で、パターンが形成された硬化膜が得られる。上述したような基板に上記感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥し、溶剤などを揮発させて塗膜を形成する。その後、マスクパターンなどを介して露光、必要に応じて加熱(PEB)、現像処理を行う。次いで、さらに加熱処理を行い、パターンが形成された硬化膜が得られる。
【0133】
また、この硬化膜が含む構成単位としては、上記式(8)で表される構成単位が挙げられる。このような構成単位を有する硬化膜は、上記感光性樹脂組成物を加熱して得られるが、好ましくは200℃以上で、より好ましくは200〜260℃で、さらに好ましくは200〜250℃で加熱して得られる。また、このとき雰囲気は制限されないが、空気雰囲気下で加熱しても閉環反応が起こり、パターンが形成された硬化膜が得られる。また、本発明の硬化膜は、上記温度で加熱することにより、TG/DTA測定で、重量減少が5%になるときの温度が280℃を超える膜となる。このように、本発明に用いられるポリマー前駆体(A)では、化合物(a1)から導かれる構成単位と化合物(a2)から導かれる構成単位との反応性が高いため、素子などにダメージを与えない半田耐熱以下でも閉環反応が起こり、最終的にパターンが形成された硬化膜が高い解像度で得られる利点がある。さらに、上記のパターンが形成された硬化膜は、上記式(8)で表される構成単位を有しているため、引張強度および伸びなどの優れた機械的特性、吸水率および誘電率などの絶縁特性、ならびに超耐熱性に優れる。
【0134】
塗布の方法としては、具体的には、上記皮膜形成用樹脂組成物を用いた硬化膜の形成の場合と同様な方法が挙げられる。塗布膜厚、塗布方法についても、組成物溶液の固形分濃度、粘度などを調節して適宜制御される。
【0135】
露光に用いられる放射線としては、たとえば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線ステッパー、i線ステッパ−等の紫外線、電子線、レーザーなどが挙げられる。露光量は、使用する光源、膜厚などによって適宜選定される。たとえば、高圧水銀
灯からの紫外線照射の場合、樹脂膜厚5〜20μmでは、500〜10000J/m2
度である。
【0136】
露光後は、必要に応じて反応促進のためPEB処理を行う。その条件は、樹脂組成物の配合量、使用膜厚などによって異なるが、通常70〜150℃、好ましくは80〜130℃で1〜30分間程度である。
【0137】
その後、アルカリ現像液により現像して所望のパターンを形成する。現像方法としてはシャワー現像、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像などが挙げられる。現像条件としては、20〜40℃で1〜15分間程度である。アルカリ現像液としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ性水溶液で、濃度が1〜10重量%程度になるように水に溶解させた水溶液が挙げられる。具体的には、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好適に用いられる。これらアルカリ水溶液には、たとえば、メタノール、エタノールなどの水溶性の有機溶剤、界面活性剤などを適宜添加してもよい。現像後は、水で洗浄し、風乾する。
【0138】
露光、現像の有無に関わらず、永久膜としての特性を充分発揮させるために、最終的に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理条件は特に限定されないが、最終的には上記温度範囲で10〜120分間加熱することが好ましい。段階的に温度を変化させてもよい。このような硬化条件であれば、加熱設備として、たとえば、一般的なオーブン、ホットプレート、遠赤外線炉などが使用できる。
【0139】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例における「部」は、特に断りのない限り「重量部」を意味する。
【0140】
[実施例1−1]ポリマー前駆体(A)の合成
攪拌機付きガラス製反応器に、2,2’-ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル
)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン7.5g、BY16−855D(東レダウコーニングシリコーン社製)2.0g、および乳酸エチル20.0gとを加えてよく攪拌した(表1)。次いで120℃に加温し、2時間攪拌した後冷却した。次いで室温下、攪拌しながら40重量%グリオキサール水溶液2.0gを加えた。次いで、60℃に加温し、4時間攪拌した後、冷却して、固形分濃度30重量%のポリマー前駆体(P1)を含む溶液を得た。表1に、ポリマー前駆体(P1)の重量平均分子量を示す。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(装置;東ソー株式会社製GPC−8020、カラム;TSK−GEL α−M、α―2500)によって、N,N−ジメチルホルムアミドを溶出溶媒としてカラム温度25℃、流量1.2ミリリットル/分の分析条件で測定したときの単分散ポリスチレンを標準として算出した値である。
【0141】
[実施例1−2〜1−8]ポリマー前駆体(A)の合成
表1に示す配合に変更した以外は、ポリマー前駆体(P1)と同様にして、ポリマー前駆体(P2)〜(P8)を含む溶液を製造した。
【0142】
【表1】

【0143】
[実施例2−1]皮膜形成用樹脂組成物の製造
得られたポリマー前駆体(P1)を含む溶液100重量部に対し、界面活性剤(SH−
28PA(東レダウコーニングシリコーン社製))0.2部を添加した後ウェーブローターにて5時間以上攪拌し、皮膜形成用樹脂組成物(Q1)を得た。
【0144】
150μm厚のアプリケーターを用いて、離形処理PETフィルムに皮膜形成用樹脂組成物(Q1)を成膜した。熱風オーブンにて空気中120℃で10分間溶媒を除去した。その後、PETフィルムから膜を剥がし、PTFEフィルム上に貼り付け、空気中、220℃で1時間加熱して硬化膜(V1−1)を形成した。
【0145】
また、スピンコーター(1000rpm/20秒)を用いて、シリコンウェハ上に皮膜形成用樹脂組成物(Q1)からなる膜を作製した。120℃で10分間溶媒を除去した後、空気中、220℃で1時間加熱して硬化膜(V1−2)を形成した。なお、シリコンウェハはあらかじめ秤量しておいた。シリコンウェハの代わりにSUS基板を用いた他は硬化膜(V1−2)と同様にして硬化膜(V1−3)を作製した。
[実施例2−2〜2−8]皮膜形成用樹脂組成物の製造
ポリマー前駆体(P1)を含む溶液の代わりに、それぞれポリマー前駆体(P2)〜(P8)を含む溶液を用いた以外は、実施例2−1と同様にして、皮膜形成用樹脂組成物(Q2)〜(Q8)を得た。
【0146】
皮膜形成用樹脂組成物(Q2)〜(Q8)についても、皮膜形成用樹脂組成物(Q1)の場合と同様に、離形処理PETフィルム、シリコンウェハおよびSUS基板を用いてそれぞれ硬化膜(V2−1)〜(V8−1)、(V2−2)〜(V8−2)および(V2−3)〜(V8−3)を形成した。
【0147】
[特性評価]
上記硬化膜の各特性については下記のように評価した。この結果を表2に示す。
1.引張試験
硬化膜(V1−1)を5mm幅に打ち抜いた後、引っ張り試験機(ロードセル2kg、チャック間距離25mm)にて引張試験を行った。計算により引張強度、弾性率、伸びを求めた。硬化膜(V2−1)〜(V8−1)についても同様にして、引張強度、弾性率、伸びを求めた。
【0148】
2.誘電率
硬化膜(V1−3)上にアルミで蒸着を行い、HP4248型LCRメータを用いて誘電率測定を行った。硬化膜(V2−3)〜(V8−3)についても同様にして、比誘電率を求めた。
【0149】
3.吸水率
硬化膜(V1−2)を23℃の水中に24時間浸漬し、重量を測定して吸水率を算出した。なお、硬化膜(V1−2)の作成前に、シリコンウェハをあらかじめ秤量しておいた。硬化膜(V2−2)〜(V8−2)についても同様にして、吸水率を求めた。
【0150】
4.耐薬品性
硬化膜(V1−2)をイソプロピルアルコールに60℃で10分間浸漬して膜表面を観察した。硬化膜(V2−2)〜(V8−2)についても同様にして、膜表面を観察した。
【0151】
○:膜表面に異常が認められない
×:膜表面が白化または荒れが認められる
5.耐熱性
硬化膜(V1−1)の小片10mg用いて、セイコーインスツル株式会社TG/DTA300により、N2雰囲気下、10℃/分の昇温速度で重量減少を測定し、重量減少が5
%の時の温度を測定した。硬化膜(V2−1)〜(V8−1)についても同様にして、耐熱性を評価した。
【0152】
【表2】

【0153】
[実施例3−1]感光性樹脂組成物の製造
表3に示すように、実施例1−1で得られたポリマー前駆体(P1)を含む溶液と、感光剤などとを配合し、固形分濃度40重量%の感光性樹脂組成物(R1)を得た。
【0154】
スピンコーター(1000rpm/20秒)を用いて、シリコンウェハ上に上記組成物を塗布し、ホットプレートによって120℃で10分間加熱した。次いで、アライナーを用い、パターンマスクを介して高圧水銀灯からの紫外線が1000J/m2(350nm
波長)となるように露光した。2.38重量%テトラメシルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて、23℃で60秒間パドル現像を行った。次いで、空気中、220℃で1時間加熱乾燥を行った。このようにして、パターンの形成された硬化膜(W1)を得た。
[実施例3−2〜3−4]感光性樹脂組成物の製造
表3に示す配合に変更した以外は、実施例3−1と同様にして、感光性樹脂組成物(R2)〜(R4)を得た。
【0155】
感光性樹脂組成物(R2)、(R3)については、露光後、パドル現像を行う前に、120℃で3分間PEBを行った。これ以外は実施例3−1と同様にして、それぞれパターンの形成された硬化膜(W2)、(W3)を得た。
【0156】
感光性樹脂組成物(R4)については、実施例3−1と同様にして、パターンの形成された硬化膜(W4)を得た。
[特性評価]
上記パターンの形成された硬化膜の各特性については下記のように評価した。この結果を表3に示す。
【0157】
1.膜厚
KLA Tencor社製接触式膜厚計 P−10を用いて測定した。
2.解像度
得られたパターンの最小寸法を解像度とした。
【0158】
3.密着性
各基板に感光性樹脂組成物を塗布し、空気中、220℃で1時間加熱乾燥を行った後、得られた膜をプレッシャークッカー試験装置(エスペック株式会社製)で、温度121℃
、湿度100%、圧力2.1気圧の条件下で、100時間処理した。JIS K 5400に準拠して2mmクロスカット試験を行い、100枡のうち残存した升目を測定した。
【0159】
【表3】

【0160】
[比較例1−1]ポリマー前駆体(T1)の合成
攪拌機付きガラス製反応器に3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル43.2重量部およびN,N−ジメチルアセトアミド129.6重量部を加えてよく攪拌
した。これに、さらにピリジン39.6重量部を加えた後、イソフタル酸ジクロリド44.7重量部(0.22モル)をシクロヘキサン134.1重量部に溶解した溶液を、乾燥窒素気流下−15℃で30分かけて滴下した。終了後室温まで放置し5時間攪拌し、ポリマー前駆体(T1)を含む溶液を得た。得られたポリマーを多量の蒸留水で洗浄し、ろ過後、減圧乾燥してポリマー前駆体(T1)を得た。重量平均分子量は(10000)であった。
【0161】
[比較例1−2]皮膜形成用樹脂組成物の製造
N,N−ジメチルアセトアミド21.0gに、得られたポリマー前駆体(T1)10gを再溶解させ、界面活性剤(SH−28PA(東レダウコーニングシリコーン社製))を全固形分100部に対して0.2部添加させて、皮膜形成用樹脂組成物(U1)を得た。
【0162】
150μm厚のアプリケーターを用いて、離形処理PETフィルムに皮膜形成用樹脂組成物(U1)を成膜した。120℃で10分間溶媒を除去した後、PETフィルムから膜を剥がし、PTFEフィルム上に移動して、窒素中150℃30分、220℃60分の順で加熱して硬化膜(S1−1)を形成した。
【0163】
また、スピンコーター(1000rpm/20秒)を用いて、シリコンウェハ上に皮膜形成用樹脂組成物(U1)からなる膜を作製した。120℃で10分間溶媒を除去した後、窒素中、150℃で30分、220℃で60分の順で加熱して硬化膜(S1−2)を形成した。なお、シリコンウェハはあらかじめ秤量しておいた。シリコンウェハの代わりにSUS基板を用いた他は硬化膜(S1−2)と同様にして硬化膜(S1−3)を作製した。
【0164】
[特性評価]
上記硬化膜の各特性については実施例と同様に評価した。この結果を表4に示す。
【0165】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物(a1)から導かれる構成単位と下記式(2)で表される化合物(a2)から導かれる構成単位とを含むポリマー前駆体(A)と、溶媒(B)とを含むことを特徴とする皮膜形成用樹脂組成物。
【化1】

(式中、Xは、2価の有機基、−O−、−S−および−SO2−からなる群より選ばれる
少なくとも1種の2価の連結基、または単結合を表し、Rは、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、mおよびnは、それぞれ独立に0または1〜3の整数を表し、Rが複数存在するときは、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。)
OHC−CHO (2)
【請求項2】
前記ポリマー前駆体(A)が、下記一般式(3)で表される、前記化合物(a1)以外の化合物(a3)および/または下記一般式(4)で表される化合物(a4)から導かれる構成単位をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の皮膜形成用樹脂組成物。
2N−Z−NH2 (3)
【化2】

(式中、ZおよびZ’は、それぞれ独立に2価の有機基、−O−、−SO2−および−O
−Si(R12)−からなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の連結基を表し、R1
およびR2は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。)
【請求項3】
下記一般式(5)で表される構成単位を含むことを特徴とするポリマー前駆体(A)。
【化3】

(式中、Xは、2価の有機基、−O−、−S−および−SO2−からなる群より選ばれる
少なくとも1種の2価の連結基、または単結合を表し、Rは、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、mおよびnは、それぞれ独立に0または1〜3の整数を表し、Rが複数存在するときは、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記ポリマー前駆体(A)が、下記一般式(6)および/または下記一般式(7)で表される構成単位をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のポリマー前駆体(A)。
【化4】

【化5】

(式中、Xは、2価の有機基、−O−、−S−および−SO2−からなる群より選ばれる
少なくとも1種の2価の連結基、または単結合を表し、Rは、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、mおよびnは、それぞれ独立に0または1〜3の整数を表し、Rが複数存在するときは、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。ZおよびZ’は、それぞれ独立に2価の有機基、−O−、−SO2−および−O−Si(R12)−からなる群より選ば
れる少なくとも1種の2価の連結基を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。)
【請求項5】
前記Xが、−CH2−、−C(CF32―、―S−、−SO2−、−O−および単結合からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の皮膜形成用樹脂組成物。
【請求項6】
前記Xが、−CH2−、−C(CF32―、―S−、−SO2−、−O−および単結合からなる群から選ばれることを特徴とする請求項3または4に記載のポリマー前駆体(A)。
【請求項7】
下記一般式(1)で表される化合物(a1)から導かれる構成単位と下記一般式(2)で表される化合物(a2)から導かれる構成単位とを含むポリマー前駆体(A)と、感光剤(C)と、溶剤(B)とを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化6】

(式中、Xは、2価の有機基、−O−、−S−および−SO2−からなる群より選ばれる
少なくとも1種の2価の連結基、または単結合を表し、Rは、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、mおよびnは、それぞれ独立に0または1〜3の整数を表し、Rが複数存在するときは、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。)
OHC−CHO (2)
【請求項8】
前記ポリマー前駆体(A)が、下記一般式(3)で表される、前記化合物(a1)以外の化合物(a3)および/または下記一般式(4)で表される化合物(a4)から導かれる構成単位をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
2N−Z−NH2 (3)
【化7】

(式中、ZおよびZ’は、それぞれ独立に2価の有機基、−O−、−SO2−および−O
−Si(R12)−からなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の連結基を表し、R1
およびR2は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。)
【請求項9】
請求項1、2、5のいずれかに記載の皮膜形成用樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする硬化膜。

【公開番号】特開2008−81680(P2008−81680A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266033(P2006−266033)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】