説明

盗難防止用暗号化装置

【課題】メモリを最小限に留めることができ、セキュリティ性を高めることができる。
【解決手段】第1の所定データを車両側の制御ユニット2からキー1へ送信し、トランスポンダ10が内蔵されたキー1は、この送信された第1の所定データをもとに、所定の演算(所定演算1)により、異なるバイト数の第2の所定データを生成し、制御ユニット2へ当該第2の所定データを送信する。制御ユニット2は、内部で同一の所定の演算(所定演算1)を行い、得られた演算結果とキー1から受信した第2の所定データとが一致しているか否かを照合して、エンジンの始動を許可する。また、制御ユニット2は、受信した第2の所定データを記憶しておき、所定の演算(所定演算2)を行って、次回の第1の所定データとして使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は盗難防止用暗号化装置に関し、特に、キーレスエントリーシステムを用いた自動車等の盗難を防止するための盗難防止用暗号化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車等の盗難防止制御装置において、ユーザが携帯するキー側のキーユニットと車両側の制御ユニットとで送受信を行い、データを照合しているシステムが一般的である。このような装置は、送信データ、受信データともに乱数を用いた暗号方式となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−274258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来システムにおいては、送信データ、受信データともに暗号化したデータとするために一般的に乱数を用いているが、乱数をメモリに保存して使用すると大容量のメモリが必要となり、小型化が図れないとともに、コストもかかるという問題点があった。
【0005】
また、周知の演算方式(線形合同法やM系列の原始多項式など)をもとにした乱数をそのまま使用するとセキュリティ性が低下してしまうという問題点があった。
【0006】
この発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、小容量のメモリを用いて高いセキュリティ性を確保する盗難防止用暗号化装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ユーザ側のキーと車両側に取り付けられた制御ユニットとで構成された盗難防止用暗号化装置であって、前記キーは、前記制御ユニットから送信されてくる第1の所定データを受信するデータ受信部と、受信した前記第1の所定データに対して第1の所定演算を行って、第2の所定データを生成する演算部と、生成した第2の所定データを前記制御ユニットに送信するデータ送信部とを備え、前記制御ユニットは、前記第1の所定データを前記キーに送信する送信部と、送信した前記第1の所定データと同一のデータに対して、前記第1の所定演算と同一の演算を行って、第3の所定データを生成する第1の演算部と、前記キーから前記第2の所定データを受信する受信部と、前記第1の演算部で生成した前記第3の所定データと前記受信部により受信した前記第2の所定データとを照合して、それらが一致した場合に、車両に設けられたエンジンの始動を許可する照合部と、前記受信部により受信した前記第2の所定データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記第2の所定データに対して、第2の所定演算を行って、次回の照合のために前記キーに送信するための第1の所定データを生成する第2の演算部とを備え、前記第2の所定データのバイト数は、前記第3の所定データのバイト数と同じで、前記第1の所定データのバイト数とは異なることを特徴とする盗難防止用暗号化装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、ユーザ側のキーと車両側に取り付けられた制御ユニットとで構成された盗難防止用暗号化装置であって、前記キーは、前記制御ユニットから送信されてくる第1の所定データを受信するデータ受信部と、受信した前記第1の所定データに対して第1の所定演算を行って、第2の所定データを生成する演算部と、生成した第2の所定データを前記制御ユニットに送信するデータ送信部とを備え、前記制御ユニットは、前記第1の所定データを前記キーに送信する送信部と、送信した前記第1の所定データと同一のデータに対して、前記第1の所定演算と同一の演算を行って、第3の所定データを生成する第1の演算部と、前記キーから前記第2の所定データを受信する受信部と、前記第1の演算部で生成した前記第3の所定データと前記受信部により受信した前記第2の所定データとを照合して、それらが一致した場合に、車両に設けられたエンジンの始動を許可する照合部と、前記受信部により受信した前記第2の所定データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記第2の所定データに対して、第2の所定演算を行って、次回の照合のために前記キーに送信するための第1の所定データを生成する第2の演算部とを備え、前記第2の所定データのバイト数は、前記第3の所定データのバイト数と同じで、前記第1の所定データのバイト数とは異なることを特徴とする盗難防止用暗号化装置であるので、小容量のメモリを用いて高いセキュリティ性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係る盗難防止用暗号化装置を図1に基づいて説明する。図1において、1はユーザが携帯するキーで、トランスポンダ10が内蔵されているメカキーから構成されている。2は車両側に設けられた制御ユニットである。キー1内には、制御ユニットから送信されてくる給電用のデータおよび第1の所定データを受信するための増幅器(以下、AMPとする。)(図示省略)を有するデータ受信部11と、データ受信部11が受信した第1の所定データに所定の演算(所定演算1)を行って第2の所定データを生成する演算部13と、演算部13によって生成された第2の所定データを制御ユニットに送信するためのAMPを有するデータ送信部12とが設けられている。
【0010】
制御ユニット2内には、第1の所定データおよび給電用のデータをキー1に送信する送信部21と、キー1から送信されてくる第2の所定データを受信する受信部22と、キー1に送信した第1の所定データと同一のデータに対して、キー1の演算部13で行われる所定の演算(所定演算1)と同じ所定の演算を行って第2の所定データと同じバイト数の第3の所定データを生成する第1の演算部24と、キー1から送信されてくる第2のデータと第1の演算部24で生成した第3のデータとの照合を行う照合部26と、受信部22で受信したキー1からの第2の所定データを記憶する記憶装置27と、記憶装置27に記憶された第2の所定データに対して所定の演算(所定演算2)を行って次回の照合に用いるための第1の所定データを生成する第2の演算部25とが設けられている。なお、所定演算1と所定演算2とは異なる演算であるとする。また、本実施の形態においては、初回の第1の所定データは、製造工程において乱数により生成した予め用意された初期値を用いることとする。
【0011】
次に、動作について説明する。まず、キー1に対して、キー1に内蔵されたトランスポンダ10を起動させるために、制御ユニット2の送信部21から給電用のデータを出力する(送信31)。キー1のデータ受信部11は、当該給電用のデータを受けて、それに対してAMPにより変換処理を行い、トランスポンダ10へ出力する。トランスポンダ10が当該給電用のデータにより起動してから、制御ユニット2は、第1の所定データを、キー1のデータ受信部11のAMPを介して、トランスポンダ10へ送信する(送信31)。トランスポンダ10は、送信された第1の所定データに演算部13により所定の演算(所定演算1)を行い、第1の所定データのバイト数とは異なるバイト数を有する第2の所定データを生成する。生成された第2の所定データは、送信部12のAMPを介して、制御ユニット2へ送信される(送信32)。
【0012】
制御ユニット2は、第2の所定データを受信するとともに、トランスポンダ10へ送信した第1の所定データと同一のデータに対して、キー1側で第1の所定データに対して行った所定の演算(所定演算1)と同じ演算を行い、第1の所定データとは異なるバイト数で第2の所定データと同じバイト数の第3の所定データを生成する。そして、キー1より送信されてきた第2の所定データと生成した第3の所定データとを照合部26で照合し、一致していれば、エンジンの始動を許可し、不一致の場合はエンジンの始動を許可しないことで盗難防止を行う。
【0013】
この時、照合結果が一致/不一致に関係なく、受信部22で受信した第2の所定データは、次回の照合で用いるための第1の所定データ生成に必要となるため、記憶装置27に記憶しておく。次の照合時には、記憶していた第2の所定データをもとに所定の演算(所定演算2)を行い、第2の所定データとは異なるバイト数の第1の所定データを生成する。例えば、第2の所定データに所定の演算(所定演算2)として四則演算を実施し、異なるバイト数の第1の所定データを生成する。そうして生成した第1の所定データをキー1側のトランスポンダ10へ送信する。これにより、照合に用いる第1の所定データを生成するためのメモリ容量も最小限でよく、記憶装置27に記憶された第2の所定データに所定の演算を行うことで、簡単に、毎回異なる第1の所定データを生成できる。
【0014】
以上のように、本実施の形態では、第1の所定データを車両側の制御ユニット2から送信し、トランスポンダ10が内蔵されたキー1はこの送信された第1の所定データをもとに所定の演算(所定演算1)により第2の所定データを生成し、制御ユニット2へデータを送信する。制御ユニット2は、内部で演算した結果とこの第2の所定データとが一致しているか否かを照合して、エンジンの始動を許可する。また、制御ユニット2は、第2の所定データを記憶しておき、所定の演算(所定演算2)を行うことで、次回の第1の所定データとして使用する。これにより、メモリを最小限に留めることができる。さらに、第1の所定データと第2の所定データは異なるバイト数とすることでセキュリティ性を高めることができる。このように、本実施の形態では、小さい容量のメモリを用いて高いセキュリティ性を確保することができる。また、メモリの容量が小さいので、小型化が図れ、また、コストも抑えることができる。
【0015】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2に係る盗難防止用暗号化装置を図2に基づいて説明する。図2において、28は、車両固有のIDコードを記憶したIDコード記憶部である。なお、他の構成については、図1と同じであるため、同一符号を付して示し、ここでは説明を省略する。
【0016】
この発明の盗難防止用暗号化装置を車両に取り付けられた初回は、第2の所定データが記憶装置27に記憶されていないので、第1の所定データを生成することができない。この問題を解消するため、固定値を使用すると、他の車両と同じデータとなってしまい、セキュリティ性が低いものとなる。そこで、実施の形態1においては、初回の第1の所定データは、乱数により生成した予め用意された初期値を用いる例について説明した。本実施の形態2においては、初回のみ、車両固有のIDコードをIDコード記憶部28から読み出して、それを第2の所定データとして用いて、第2の演算部2により所定の演算(所定演算2)を実施して、第1の所定データを生成する。これにより、他の車両と同じ第1の所定データを用いることを防止することができる。他の動作については、実施の形態1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0017】
以上のように、本実施の形態2においては、上述の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、初回の第2のデータとして、車両固有のIDコードを用いて、それに所定の演算(所定演算2)を行って、初回の照合に用いる第1の所定データを生成するようにしたので、第1の所定データが他の車両と同じ値になってしまうことを防止できるとともに、既存のIDコードを用いるため、初回のデータ生成を行う工程を不要とし、製造工程を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1に係る盗難防止用暗号化装置の構成を示したブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る盗難防止用暗号化装置の構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0019】
1 キー、2 制御ユニット、10 トランスポンダ、11 データ受信部、12 データ送信部、13 演算部、21 送信部、22 受信部、24 第1の演算部、25 第2の演算部、26 照合部、27 記憶装置、28 IDコード記憶部、31,32 送信。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ側のキーと車両側に取り付けられた制御ユニットとで構成された盗難防止用暗号化装置であって、
前記キーは、
前記制御ユニットから送信されてくる第1の所定データを受信するデータ受信部と、
受信した前記第1の所定データに対して第1の所定演算を行って、第2の所定データを生成する演算部と、
生成した第2の所定データを前記制御ユニットに送信するデータ送信部と
を備え、
前記制御ユニットは、
前記第1の所定データを前記キーに送信する送信部と、
送信した前記第1の所定データと同一のデータに対して、前記第1の所定演算と同一の演算を行って、第3の所定データを生成する第1の演算部と、
前記キーから前記第2の所定データを受信する受信部と、
前記第1の演算部で生成した前記第3の所定データと前記受信部により受信した前記第2の所定データとを照合して、それらが一致した場合に、車両に設けられたエンジンの始動を許可する照合部と、
前記受信部により受信した前記第2の所定データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第2の所定データに対して、第2の所定演算を行って、次回の照合のために前記キーに送信するための第1の所定データを生成する第2の演算部と
を備え、
前記第2の所定データのバイト数は、前記第3の所定データのバイト数と同じで、前記第1の所定データのバイト数とは異なる
ことを特徴とする盗難防止用暗号化装置。
【請求項2】
初回の照合時に用いる第1の所定データは、車両固有のIDコードを用いて前記第2の所定演算により生成されることを特徴とする請求項1に記載の盗難防止用暗号化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−290656(P2008−290656A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140362(P2007−140362)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】