説明

監視センサ及びプログラム

【課題】浴室内に被監視者以外の動きがある場合であっても、浴室内に在室する被監視者の動きの有無を正確に判定することが可能な、監視センサ及びプログラムを提供する。
【解決手段】監視センサ1は、浴室70内における動きを検出し、その検出の結果を信号S1として出力するドップラセンサ10と、信号S1の値と浴室70が有する浴槽71の湯面の揺れに起因する外乱要因を除去するための閾値とを比較する比較部30と、信号S1に対して所定のフィルタ処理を施すことにより、信号S2を出力するLPF20と、信号S2の値と浴室70内のシャワー72からの放水に起因する外乱要因を除去するための閾値とを比較する比較部31と、比較部30及び比較部31による比較の結果に基づいて、浴室70内に在室している被監視者の動きの有無を判定する判定部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内に在室している被監視者を監視する監視センサ及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
急病などで人が倒れた場合、早期に救命処置を行うことが人命救助において重要である。しかし、家庭において一人で利用することが多い浴室では、急病人が発生しても発見が遅れてしまうことがある。また、浴室内は気温の変化など急病の原因となる要素が多く存在するため、家庭内でも急病人の発生が多い場所となっている。そこで、浴室の利用者の健康異常を検知する技術が求められている。
【0003】
下記特許文献1には、赤外線センサを用いた人体検知装置が開示されている。この人体検知装置は、赤外線センサを用いて被監視者の動きを検知し、被監視者の動きが一旦検知された後、予め設定された所定時間以上継続して動きが検知されない場合に、被監視者に異常事態が発生したと判定して監視者にその旨を報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−76272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された人体検知装置によると、人体検知に赤外線センサを用いるので、浴室内に設置した場合、浴室の湯気などの影響により誤検知を起こすことがある。また、浴室は、水道設備や浴槽の湯面などの温度や動きに変化のある設備を有しているので、赤外線センサなどのセンサでは浴室内設備の温度変化や動きの変化を検知してしまい、被監視者の動きの検知を適切に行えない場合があるという問題点があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、浴室内に被監視者以外の動きがある場合であっても、浴室内に在室する被監視者の動きの有無を正確に判定することが可能な、監視センサ及びプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る監視センサは、浴室内に在室している被監視者を監視する監視センサであって、前記浴室内における動きを検出し、その検出の結果を第1の信号として出力するドップラセンサと、前記第1の信号の値と、前記浴室が有する浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因を除去するための第1の閾値とを比較する第1の比較手段と、前記第1の信号に対して所定のフィルタ処理を施すことにより、第2の信号を出力するフィルタ手段と、前記第2の信号の値と、前記浴室内の水道設備からの放水に起因する外乱要因を除去するための第2の閾値とを比較する第2の比較手段と、前記第1の比較手段による比較の結果と、前記第2の比較手段による比較の結果とに基づいて、前記被監視者の動きの有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
なお、ここでいう水道設備とは、蛇口などの水供給設備だけでなく、シャワーなどの水を噴出する設備が含まれる。また、水には湯(つまり温水)も含まれる。
【0009】
第1の態様に係る監視センサによれば、ドップラセンサは、浴室内の動きを検出し、その検出結果を第1の信号として出力する。第1の比較手段は、第1の信号の値と浴室が有する浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因を除去する為の第1の閾値とを比較する。フィルタ手段は、第1の信号に対して所定のフィルタ処理を施し、第2の信号として出力する。第2の比較手段は、第2の信号と浴室内の水道設備からの放水に起因する外乱要因を除去するための第2の閾値とを比較する。判定手段は、第1の比較手段の比較結果と第2の比較手段の比較結果とに基づいて、被監視者の動きの有無を判定する。したがって、監視センサは、浴室が有する浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因と、水道設備からの放水に起因する外乱要因とを除去した判定が行えるため、湯面の揺れや水道設備からの放水がある状況であっても、浴室に在室する被監視者の動きの有無を判定手段によって正確に判定することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る監視センサは、第1の態様に係る監視センサにおいて特に、前記フィルタ手段は、前記第1の信号のうち、前記水道設備からの放水に関する周波数成分を減衰させるローパスフィルタであることを特徴としている。
【0011】
第2の態様に係る監視センサによれば、浴室が有する水道施設から放水される水(温水を含む)の動きをドップラセンサが検知した際、第1の信号に含まれる放水される水に関する周波数成分を減衰させるローパスフィルタをフィルタ手段に用いるので、第2の比較手段が行う比較において、水道施設からの放水に起因する外乱要因の除去を適切に行うことが可能となる。
【0012】
本発明の第3の態様に係る監視センサは、第1又は第2の態様に係る監視センサにおいて特に、前記判定手段は、前記第1の信号の値が前記第1の閾値以上であり、かつ、前記第2の信号の値が前記第2の閾値以上である場合に、前記被監視者の動きが有ると判定することを特徴としている。
【0013】
第3の態様に係る監視センサによれば、判定手段は、第1の信号の値が浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因を除去する為の第1の閾値以上であり、かつ、第2の信号の値が水道設備からの放水に起因する外乱要因を除去するための第2の閾値以上である場合に、浴室内に在室する被監視者の動きが有ると判定する。したがって、浴室が有する浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因を除去した比較結果と、浴室が有する水道設備からの放水に起因する外乱要因を除去した比較結果とが共に、浴室内に動体が存在するという結果を得ることで、浴室に在室する被監視者に動きが有ると判定することが可能となる。
【0014】
本発明の第4の態様に係る監視センサは、第1又は第2の態様に係る監視センサにおいて特に、前記判定手段は、前記第1の信号の値が前記第1の閾値未満であり、又は、前記第2の信号の値が前記第2の閾値未満である場合に、前記被監視者の動きが無いと判定することを特徴としている。
【0015】
第4の態様に係る監視センサによれば、判定手段は、第1の信号の値が浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因を除去する為の第1の閾値未満であり、又は、第2の信号の値が水道設備からの放水に起因する外乱要因を除去するための第2の閾値未満である場合に、浴室内に在室する被監視者の動きが無いと判定する。したがって、浴室が有する浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因を除去した比較結果と、浴室が有する水道設備からの放水に起因する外乱要因を除去した比較結果とのいずれかが、浴室内に動体が存在しないという結果であれば、浴室に在室する被監視者に動きが無いと判定することが可能となる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る監視センサは、第1から第4の態様に係る監視センサにおいて特に、第1の比較手段に、前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第1の信号の入力があった場合に、第1の初期値からのカウント動作を開始する第1のカウンタと、第2の比較手段に、前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第2の信号の入力があった場合に、第2の初期値からのカウント動作を開始する第2のカウンタと、をさらに備え、前記第1のカウンタがカウント動作を開始した後、前記第1のカウンタのカウンタ値が第1の所定値に達する前に、前記第1の比較手段に前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第1の信号の入力が再びあった場合には、前記第1のカウンタは、前記第1のカウンタのカウンタ値を前記第1の初期値に設定してカウント動作を再び開始し、前記第1のカウンタがカウント動作を開始した後、前記第1のカウンタのカウンタ値が第1の所定値に達するまでは、前記第1の比較手段は、前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を連続して出力し、前記第1のカウンタのカウンタ値が前記第1の所定値に達し、かつ、第1の比較手段に、前記判定手段が前記被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第1の信号の入力があった場合に、前記第1の比較手段は、前記判定手段が前記被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力し、前記第2のカウンタがカウント動作を開始した後、前記第2のカウンタのカウンタ値が第2の所定値に達する前に、前記第2の比較手段に前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第2の信号の入力が再びあった場合には、前記第2のカウンタは、前記第2のカウンタのカウンタ値を前記第2の初期値に設定してカウント動作を再び開始し、前記第2のカウンタがカウント動作を開始した後、前記第2のカウンタのカウンタ値が第2の所定値に達するまでは、前記第2の比較手段は、前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を連続して出力し、前記第2のカウンタのカウンタ値が前記第2の所定値に達し、かつ、第2の比較手段に、前記判定手段が前記被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第2の信号の入力があった場合に、前記第2の比較手段は、前記判定手段が前記被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力することを特徴としている。
【0017】
第5の態様に係る監視センサによれば、第1の比較手段は、一度、判定手段が被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力させる第1の信号の入力があった場合、第1のカウンタがカウントを終了するまでの間、判定手段が被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力し続ける。そして、第1のカウンタのカウンタ値が第1の所定値に達し、かつ、第1の比較手段に、判定手段が被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力させる第1の信号の入力があった場合、第1の比較手段は、判定手段が被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力する。また、第2の比較手段は、一度、判定手段が被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力させる第2の信号の入力があった場合、第2のカウンタがカウントを終了するまでの間、判定手段が被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力し続ける。そして、第2のカウンタのカウンタ値が第2の所定値に達し、かつ、第2の比較手段に、判定手段が被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力させる第2の信号の入力があった場合、第2の比較手段は、判定手段が被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力する。したがって、第1の比較手段及び第2の比較手段は、判定手段が被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力させる信号の入力が、第1のカウンタ及び第2のカウンタのカウントが終了するまで続かなければ、判定手段が被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果が出力されないので、ドップラセンサが検出した信号の急激な変動によって、浴室内の被監視者に動きが無いにも関わらず偶然に第1の信号の値が第1の閾値以上となる又は第2の信号の値が第2の閾値以上となるなどの比較結果によって起こる誤った判定が行われるのを防ぐことが可能となる。
【0018】
本発明の第6の態様に係る監視センサは、浴室内に在室している被監視者を監視する監視センサであって、前記浴室内における動きを検出し、その検出の結果を第1の信号として出力する検出手段と、前記第1の信号の値と、前記被監視者の動作よりも遅い動きに起因する外乱要因を除去するための第1の閾値とを比較する第1の比較手段と、前記第1の信号に対して所定のフィルタ処理を施すことにより、第2の信号を出力するフィルタ手段と、前記第2の信号の値と、前記被監視者の動作よりも速い動きに起因する外乱要因を除去するための第2の閾値とを比較する第2の比較手段と、前記第1の比較手段による比較の結果と、前記第2の比較手段による比較の結果とに基づいて、前記被監視者の動きの有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴としている。
【0019】
第6の態様に係る監視センサによれば、検出手段は、浴室内の動きを検出し、その検出結果を第1の信号として出力する。第1の比較手段は、第1の信号の値と被監視者の動作よりも遅い動きに起因する外乱要因を除去する為の第1の閾値とを比較する。フィルタ手段は、第1の信号に対して所定のフィルタ処理を施し、第2の信号として出力する。第2の比較手段は、第2の信号と被監視者の動作よりも速い動きに起因する外乱要因を除去するための第2の閾値とを比較する。判定手段は、第1の比較手段の比較結果と第2の比較手段の比較結果とに基づいて、被監視者の動きの有無を判定する。したがって、監視センサは、被監視者の動作よりも遅い動きに起因する外乱要因と、被監視者の動作よりも速い動きに起因する外乱要因とを除去した判定が行えるため、浴室内に被監視者の動作よりも遅い動体又は被監視者の動作よりも速い動体が存在していても、浴室に在室する被監視者の動きの有無を判定手段によって正確に判定することが可能となる。
【0020】
本発明の第7の態様に係る監視センサは、浴室内に在室している被監視者を監視する監視センサであって、前記浴室内における動きを検出し、その検出の結果を第1の信号として出力するドップラセンサと、前記第1の信号に対して、異なる外乱要因を除去するための異なるフィルタ処理をそれぞれ施すことにより、第2の信号をそれぞれ出力する複数のフィルタ手段と、前記複数のフィルタ手段から出力された複数の前記第2の信号に基づいて、前記被監視者の動きの有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴としている。
【0021】
第7の態様に係る監視センサによれば、ドップラセンサは、浴室内の動きを検出して、その検出結果を第1の信号として出力する。複数のフィルタ手段は、第1の信号に対して、異なる外乱要因を除去するための異なるフィルタ処理をそれぞれ施すことにより、第2の信号をそれぞれ出力する。判定手段は、第1の処理手段が処理した処理結果と、第2の処理手段が処理した処理結果とに基づいて、被監視者の動きの有無を判定する。したがって、監視センサは、外乱要因がある状況であっても、浴室に在室する被監視者の動きの有無を判定手段によって正確に判定することが可能となる。
【0022】
本発明の第8の態様に係るプログラムは、ドップラセンサから出力される第1の信号に基づいて、浴室内に在室している被監視者を監視する監視センサに搭載されるコンピュータを、前記第1の信号の値と、前記浴室が有する浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因を除去するための第1の閾値とを比較する第1の比較手段と、前記第1の信号に対して所定のフィルタ処理を施すことにより、第2の信号を出力するフィルタ手段と、前記第2の信号の値と、前記浴室内の水道設備からの放水に起因する外乱要因を除去するための第2の閾値とを比較する第2の比較手段と、前記第1の比較手段による比較の結果と、前記第2の比較手段による比較の結果とに基づいて、前記被監視者の動きの有無を判定する判定手段と、として機能させることを特徴としている。
【0023】
なお、ここでいう水道設備とは、蛇口などの水供給設備だけでなく、シャワーなどの水を噴出する設備が含まれる。また、水には湯(つまり温水)も含まれる。
【0024】
第8の態様に係るプログラムによれば、浴室内に在室している被監視者を監視する監視センサに搭載されるコンピュータを、ドップラセンサから出力される第1の信号の値と、浴室が有する浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因を除去するための第1の閾値とを比較する第1の比較手段と、第1の信号に対して所定のフィルタ処理を施した第2の信号の値と、浴室が有する水道設備からの放水に起因する外乱要因を除去するための第2の閾値とを比較手段と、第1の比較手段による比較結果と第2の比較手段による比較結果とに基づいて、被監視者の動きの有無を判定する判定手段と、として機能させることができる。したがって、第8の態様に係るプログラムを用いたコンピュータに、第1の信号と第2の信号とを入力することで、浴室が有する浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因と、水道設備からの放水に起因する外乱要因とを除去した判定が行えるため、湯面の揺れや水道設備からの放水がある状況であっても、浴室に在室する被監視者の動きの有無を判定手段によって正確に判定することができる監視センサの提供が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、浴室内に被監視者以外の動きがある場合であっても、浴室内に在室する被監視者の動きの有無を正確に判定することが可能な、監視センサ及びプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る監視センサの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】監視センサが行う監視の処理を示すフローチャートである。
【図3】監視センサが設置された浴室を模式的に示した図である。
【図4】比較部が行う比較処理の動作を示したフローチャートである。
【図5】比較部の比較結果とカウンタのカウンタ値との関係を示すタイムチャートの一例である。
【図6】浴室に在室する被監視者が浴槽に張られたお湯に入った場合の信号の一例である。
【図7】浴室が有するシャワーを使用した場合のドップラセンサの出力信号の一例である。
【図8】浴室が有するシャワーを使用した場合のフィルタの出力信号の一例である。
【図9】コンピュータを用いた監視センサの構成を概略的に示したブロック図である。
【図10】本発明の変形例に係る監視センサの構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0028】
本発明の実施の形態に係る監視センサ1は、浴室70内に設置され、被監視者である浴室70の利用者の動きの有無を監視する監視センサである。図1は、本発明の実施の形態に係る監視センサ1の構成を概略的に示すブロック図である。図1に示すように監視センサ1は、検出手段であるドップラセンサ10、フィルタ手段であるLPF(Low Pass Filter:ローパスフィルタ)20、第1の比較手段である比較部30、第2の比較手段である比較部31、カウンタ40、カウンタ41、及び判定手段である判定部50を備える。また、ドップラセンサ10の出力は、LPF20の入力と比較部30の入力とに接続されている。LPF20の出力は、比較部31の入力に接続されている。比較部30の出力は、カウンタ40の入力と判定部50の入力とに接続されている。比較部31の出力は、カウンタ41の入力と判定部50の入力とに接続されている。カウンタ40の出力は、比較部30の入力に接続されている。カウンタ41の出力は、比較部31の入力に接続されている。そして、判定部50には制御信号S10が入力されており、判定部50の出力である出力信号S9は、監視センサ1の出力となる。
【0029】
図2は、監視センサ1が行う監視の処理を示すフローチャートである。監視センサ1の動作の説明を、図2を用いて行う。まず、ステップSP100において、ドップラセンサ10は、監視センサ1が設置された浴室70内に向け電磁波を放出する。そして、ドップラセンサ10は、当該電磁波の反射波を受信して、動く物体にあたった当該反射波の周波数のずれを検出し、そのずれの変化量を第1の信号である信号S1として出力する。このドップラセンサ10が行う反射波の周波数の変化量を検出する機能は、一般的なドップラセンサが持つ検出機能でよく、浴室70内に放出された電磁波が動体で反射することにより起こるドップラ効果を用いて動体の検出を行うものである。なお、本発明の実施の形態に用いるドップラセンサ10は、自身が電磁波を放出するアクティブ型でも、ドップラセンサ10とは別の装置が電磁波を放出するパッシブ型でもよい(ドップラセンサ10がパッシブ型の場合、図1に示した構成に加え、監視センサ1は電磁波放出装置を備えることになる)。本発明の実施の形態では、ドップラセンサ10はアクティブ型であるものとして説明を行う。
【0030】
図3は、監視センサ1が設置された浴室70を模式的に示した図である。浴室70は、監視センサ1と浴槽71とシャワー72とを有している。浴室70内は、閉鎖的で広さが限定的な空間であり、浴室70内に電磁波(R1〜R3)を放出すると、電磁波(R1〜R3)は、壁や天井、床面などに反射し、浴室70内に広がる。よって、ドップラセンサ10は、少ない個数もしくは一つあれば浴室70内全体に電磁波が行き渡るので、浴室70内全体の動体を検出することができる。
【0031】
次に、ステップSP110において、信号S1が入力されたLPF20は、所定のフィルタ処理として、信号S1に含まれる所定の周波数(たとえば、10Hz)以上の周波数成分を低減させた、第2の信号である信号S2として出力する。ドップラセンサ10は、浴室70内に人間の動きよりも速い動体が存在した場合、人間の動きに対応した周波数成分より高周波の成分を含んだ信号S1を出力する。浴室70が有するシャワー72から放水した場合、その放水は人間の動きよりも速く、信号S1は人間の動きに対応した周波数成分より高周波の成分を含んでしまうが、LPF20によりフィルタ処理を行うことにより、LPF20の出力である信号S2は、シャワー72の放水に関する周波数成分を低減させた信号となる。
【0032】
次に、ステップSP120において、比較部30及び比較部31は、それぞれ信号S1及び信号S2の入力により比較処理を行い、それぞれ比較結果を出力する。図4は、比較部30が行う比較処理の動作を示したフローチャートである。図4を用いて、比較部30が行う比較処理の動作について説明する。
【0033】
ステップSP200において、比較部30は、信号S3によりカウンタ40にカウンタ40のカウンタ値の問い合わせを行い、信号S4にてカウンタ値の情報を受け取る。そして、比較部30は、カウンタ40がカウント動作をしておらず、カウンタ値が第1の所定値である「0」(秒。以下同様)であるか否かを判定する。カウンタ値が「0」であった場合(つまりステップSP200における判定結果が「YES」である場合)、比較部30は、後述のステップSP210の動作を行う。一方、カウンタ40がカウント動作をしており、カウンタ値が「0」でなかった場合(つまりステップSP200における判定結果が「NO」である場合)、比較部30は、後述のステップSP260の動作を行う。なお、本実施の形態では、カウンタ40の初期値(第1の初期値)は「5」、カウンタ40がカウントを終了する所定値(第1の所定値)は「0」であり、カウンタ41の初期値(第2の初期値)は「5」、カウンタ41がカウントを終了する所定値(第2の所定値)は「0」であるものとして説明する。
【0034】
ステップSP200における判定結果が「YES」であり、比較部30が問い合わせを行ったカウンタ40のカウンタ値が「0」であった場合、ステップSP210において、比較部30は、入力された信号S1の値と所定の上限閾値(閾値A)とを比較し、信号S1の値が閾値A以上であるか否かを判定する。信号S1の値が所定の閾値A以上である場合(つまりステップSP210における判定が「YES」である場合)、比較部30は、後述のステップSP240の動作を行う。一方、信号S1の値が所定の閾値Aよりも小さい場合(つまりステップSP210における判定が「NO」である場合)、比較部30は、後述のステップSP220の動作を行う。
【0035】
ステップSP210における判定結果が「NO」であり、信号S1の値が所定の上限閾値よりも小さい場合、ステップSP220において、比較部30は、入力された信号S1の値と所定の下限閾値(閾値B)とを比較し、信号S1の値が閾値B以下であるか否かを判定する。信号S1の値が所定の閾値B以下である場合(つまりステップSP220における判定が「YES」である場合)、比較部30は、後述のステップSP240の動作を行う。一方、信号S1の値が所定の閾値Bよりも大きい場合(つまりステップSP220における判定が「NO」である場合)、比較部30は、後述のステップSP230の動作を行う。
【0036】
ステップSP220における判定結果が「NO」であり、信号S1の値が所定の下限閾値よりも大きい場合、ステップSP230において、比較部30は、信号S1と所定の閾値とを比較した結果、判定部50が被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を信号S5として出力し、比較処理を終了する(なお、本発明の実施の形態では、判定部50が被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を「OFF」という判定結果と称し、一方、判定部50が被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を「ON」という判定結果と称するものとする)。
【0037】
ステップSP210における判定結果が「YES」又はステップSP220における判定結果が「YES」である場合、ステップSP240において、比較部30は、カウントダウン動作を開始する旨の信号S3をカウンタ40に向けて出力する。カウントダウン動作を開始する旨の信号S3が入力されたカウンタ40は、カウンタをリセットし、カウンタ値を第1の初期値である「5」に設定する。そして、ステップSP245において、カウンタ40はカウントダウン動作を開始する。
【0038】
次に、ステップSP250において、比較部30は、信号S1と所定の閾値とを比較した結果、「ON」という比較結果を信号S5として出力し、比較処理を終了する。
【0039】
ステップSP200における判定結果が「NO」であり、比較部30が問い合わせを行ったカウンタ40のカウンタ値が「0」でなかった場合、ステップSP260において、比較部30は、入力された信号S1の値と所定の上限閾値(閾値A)とを比較し、信号S1の値が閾値A以上であるか否かを判定する。信号S1の値が所定の閾値A以上である場合(つまりステップSP260における判定が「YES」である場合)、比較部30は、後述のステップSP300の動作を行う。一方、信号S1の値が所定の閾値Aよりも小さい場合(つまりステップSP260における判定が「NO」である場合)、比較部30は、後述のステップSP270の動作を行う。
【0040】
ステップSP260における判定結果が「NO」であり、信号S1の値が所定の上限閾値よりも小さい場合、ステップSP270において、比較部30は、入力された信号S1の値と所定の下限閾値(閾値B)とを比較し、信号S1の値が閾値B以下であるか否かを判定する。信号S1の値が所定の閾値B以下である場合(つまりステップSP270における判定が「YES」である場合)、比較部30は、後述のステップSP300の動作を行う。一方、信号S1の値が所定の閾値Bよりも大きい場合(つまりステップSP270における判定が「NO」である場合)、比較部30は、後述のステップSP280の動作を行う。
【0041】
ステップSP270における判定結果が「NO」であり、信号S1の値が所定の下限閾値よりも大きい場合、ステップSP280において、比較部30は「ON」という比較結果を信号S5として出力する。
【0042】
次に、ステップSP290において、カウンタ40は、カウントダウンを行い、現在のカウンタ値を1減らして、比較処理を終了する。
【0043】
ステップSP260における判定結果が「YES」又はステップSP270における判定結果が「YES」である場合、ステップSP300において、比較部30は、カウンタ40に向けて、カウントをリセットする旨の信号S3を出力する。カウントをリセットする旨の信号S3が入力されたカウンタ40は、カウントをリセットし、カウンタ値を第1の初期値である所定の初期値に戻す。ここで、第1の初期値は「5」であるので、カウンタ40はカウンタ値を「5」に再設定する。そして、ステップSP305において、カウンタ40はカウントダウン動作を再開する。
【0044】
次に、ステップSP310において、比較部30は「ON」という比較結果を信号S5として出力し、比較処理を終了する。以上のように、ステップSP200からステップSP310の動作を行うことで、比較部30は比較処理を行う。
【0045】
また、比較部31が行う比較処理は、上述したステップSP200からステップSP310の比較処理と同様のものであり、LPF20から出力された信号S2が入力された比較部31は、カウンタ41のカウンタ値を問い合わせつつ、信号S2と、上限閾値(閾値C)及び下限閾値(閾値D)とを比較して、その比較結果(「ON」又は「OFF」という比較結果)を信号S8として出力する。信号S1及び信号S2と各閾値との詳しい関係は、後述にて説明をする。
【0046】
以上のような比較処理がステップSP120にて行われ、比較部30と比較部31とが比較結果として信号S5及び信号S8を出力すると、ステップSP130において、判定部50は、浴室70内に在室する被監視者に動きが有るか否かを判定する動体判定を行う。具体的には、比較部30が出力した比較結果である信号S5と比較部31が出力した比較結果である信号S8とが共に「ON」であった場合、判定部50は、浴室70内に在室する被監視者に動きが有る旨の動体判定を行う。一方、比較部30が出力した比較結果である信号S5と比較部31が出力した比較結果である信号S8とのいずれか(又は双方)が「OFF」であった場合、判定部50は、浴室70内に在室する被監視者に動きが無い旨の動体判定を行う。
【0047】
次に、ステップSP140において、判定部50は、監視センサ1の監視状態を解除する旨の制御信号S10が入力されたか否かを判定する。監視センサ1の電源が切られる操作が行われたり、監視センサ1の外部から監視状態を解除する旨の信号が監視センサ1に対して入力されたりすることにより、監視センサ1の監視状態を解除する旨の制御信号S10が判定部50に対して入力された場合(つまりステップSP140における判定結果が「YES」である場合)、監視センサ1は監視処理を終了する。一方、監視センサ1の監視状態を解除する旨の制御信号S10が入力されなかった場合(つまりステップSP140における判定結果が「NO」である場合)、判定部50は後述のステップSP150の動作を行う。
【0048】
ステップSP140における判定結果が「NO」であり、監視センサ1の監視状態を解除する旨の制御信号S10が判定部50に対して入力されなかった場合、判定部50は、ステップSP130にて行った動体判定の結果が、浴室70内に在室する被監視者に動きが有る旨の結果だったか否かを判定する。動体判定の結果が、浴室70内に在室する被監視者に動きが有る旨の結果だった場合、(つまりステップSP150における判定結果が「YES」である場合)、監視センサ1が行う監視処理はステップSP100に戻り、監視センサ1は監視処理を続ける。一方、動体判定の結果が、浴室70内に在室する被監視者に動きが無い旨の結果だった場合、(つまりステップSP150における判定結果が「NO」である場合)、判定部50は後述のステップSP160の動作を行う。
【0049】
ステップSP150における判定結果が「NO」であり、動体判定の結果が、浴室70内に在室する被監視者に動きが無い旨の結果だった場合、ステップSP160において、判定部50は、被監視者に動きが無い旨の出力信号S9を出力する。この出力信号S9は、監視センサ1から出力され、被監視者への警告や、監視者への異常の報知などに用いられる。そして、監視センサ1が行う監視処理はステップSP100に戻り、監視センサ1は監視処理を続ける。
【0050】
以上のように、ステップSP100からステップSP160に示す監視処理を繰り返すことで、監視センサ1は、浴室70に在室する被監視者の動きの有無を監視する。この監視処理の繰り返しによって、カウンタ40とカウンタ41とが行うカウントダウンが動作する。本発明の実施の形態では、監視センサ1は、1秒毎に監視処理を行う場合を例示している。よって、カウンタ40とカウンタ41とが行うカウントダウン動作は一秒毎にカウントダウンされる。図5は、比較部30の比較結果とカウンタ40のカウンタ値との関係を示すタイムチャートの一例である。図5では、時刻T1〜T12において、比較部30による信号S1と所定の閾値(閾値A及び閾値B)との比較が行われている。
【0051】
図5に示したタイムチャートをさらに詳しく説明する。時刻T1において、カウンタ40のカウンタ値が「0」の状態で、信号S1は閾値A以上となっている。したがって、前述したステップSP240、ステップSP245、及びステップSP250の動作が行われ、カウンタ40はカウントダウン動作を開始し、比較部30は「ON」という比較結果を出力する。時刻T2〜T4及びT6〜T10において、カウンタ40のカウント値が「0」ではない状態で、信号S1は閾値A未満かつ閾値Bより大きい。したがって、前述したステップSP280及びステップSP290の動作が行われ、比較部30は「ON」という比較結果を出力し、カウンタ40はカウンタ値を1減らす。時刻T5において、カウンタ40のカウンタ値が「0」でない状態で、信号S1は閾値A以上となっている。したがって、前述したステップSP300、ステップSP305、及びステップSP310の動作が行われ、カウンタ40はカウント値をリセットし所定の初期値である「5」に戻し、比較部30は「ON」という比較結果を出力する。時刻T11及び時刻T12において、カウンタ40のカウンタ値が「0」の状態で、信号S1は閾値A未満かつ閾値Bより大きい。したがって、前述したステップSP230の動作が行われ、比較部30は「OFF」という比較結果を出力する。
【0052】
以上のように、比較部30の比較処理において、一度「ON」という比較結果が得られると、信号S1が閾値A未満かつ閾値Bより大きい状態がカウント「0」となるまで維持されなければ、比較結果を「OFF」に変更しないことになる。また、比較部31もカウンタ41を用いて、信号S2と閾値C及び閾値Dとの比較において同様の処理を行い、一度「ON」という比較結果が得られると、信号S2が閾値C未満かつ閾値Dより大きい状態がカウント「0」となるまで維持されなければ、比較結果を「OFF」に変更しない。このように、カウンタのカウントダウン動作により比較結果を一定期間保持することで、ドップラセンサ10が検出した信号S1の急激な変動により、比較部30及び比較部31の比較結果が瞬時に切り替わることを防ぐ。したがって、判定部50が、比較部30及び比較部31の不安定な比較結果により、誤った判定を行うことを防ぐことが可能となる。
【0053】
次に、比較部30及び比較部31が行う比較処理における、信号S1及び信号S2と、各閾値との関係を説明する。図6は、浴室70に在室する被監視者が浴槽71に張られたお湯に入った場合の信号S1の一例である。期間P1は、浴室70内に被監視者は在室しておらず、浴室70内に動体はない期間である。よって、期間P1の信号S1には、始めから含まれる比較的小さな周期的な変動(浴室70が有する電灯のノイズや、監視センサ1の電源ノイズを含む)だけがある。期間P2は、浴室70内に被監視者が入室し浴槽71に張られたお湯に入るなどの動作を行っている期間である。よって、期間P2の信号S1は、ドップラセンサ10が被監視者の動きを検出して大きな変動となっている。期間P3は、被監視者が浴室70内で倒れ動かなくなった期間である。期間P3では、被監視者は動かないが、期間P2において揺れ始めた浴槽71の湯面の動きが検出されている。
【0054】
一般的に、浴槽に張られた湯面の揺れは、人間の動きよりも動きが遅く、湯面の揺れ幅も大きなものではない。よって、浴槽71に張られた湯面の揺れによって起こる信号S1の変動は、始めから含まれる比較的小さな周期的な変動に埋もれてしまう。対して、人間の動きを検出した場合の信号S1の変動幅は比較的に大きいものになる。したがって、適切に設定された閾値A及び閾値Bと信号S1とを比較部30により比較することで、監視センサ1は浴槽71に張られた湯面に揺れがあっても被監視者の動きを検出することができる。
【0055】
図7は、浴室70が有するシャワー72を使用した場合の信号S1の一例である。期間P4は、図6の期間P1と同じく浴室70内に被監視者は在室しておらず、浴室70内に動体はない期間である。期間P5は、浴室70内に被監視者が入室しシャワー72を使用するなどの動作を行っている期間である。よって、期間P5の信号S1は、ドップラセンサ10が被監視者の動きとシャワー72からの放水とを検出し大きな変動となっている。期間P6は、被監視者がシャワー72を使用中に倒れ動かなくなった期間である。期間P6では、被監視者は動かないが、シャワー72からの放水は続いている。
【0056】
図7の期間P6では、浴室70内の被監視者は動かないが、シャワー72からの放水の動きをドップラセンサ10が検出してしまう。信号S1と閾値A及び閾値Bとを比較しても、ドップラセンサ10が検出した動きが、人間の動きかシャワー72からの放水かを見分けることができない。しかし、一般的にシャワーからの放水は人間の動きよりも速い動きであるので、信号S1に対し、LPF20によるフィルタ処理を行うことで、信号S1が含むシャワー72からの放水に関する周波数成分を減衰させた信号S2を得ることができる。
【0057】
図8は、浴室70が有するシャワー72を使用した場合の信号S2の一例である。信号S2は、信号S1と比べると、LPF20のフィルタ処理によって、シャワー72からの放水に関する周波数成分が減衰している。シャワー72からの放水しか動体のない期間P6では、信号S2の出力は比較的大きく減衰している。対してシャワー72からの放水よりも動きの遅い被監視者が在室している期間P5では、信号S2はLPF20のフィルタ処理によって減衰しない被監視者の動きに起因する信号を含むので、減衰は比較的小さい。したがって、適切に設定された閾値C及び閾値Dと信号S2とを用いて比較部31により比較することで、監視センサ1はシャワー72からの放水があっても被監視者の動きを検出することができる。
【0058】
以上のように、監視センサ1は、ドップラセンサ10が浴室70内の動体の動きを検出した信号S1と、信号S1をLPF20によりフィルタ処理した信号S2とを、比較部30及び比較部31を用いて、適切に設定された閾値と比較する。そして、その比較結果を用いて判定部50が動体判定を行うことで、浴室70が有する浴槽71の湯面の揺れ及び浴室70が有するシャワー72からの放水があったとしても、浴室70に在室する被監視者の動きの有無を正確に判定することが可能である。
【0059】
なお、判定部50が出力する出力信号S9は、ホームセキュリティシステムに入力され、当該ホームセキュリティシステムによって、浴室70内の被監視者に動きが無く異常である旨の警告や報知を、光や音声、ディスプレイへの表示などによって行われることが想定されている。例えば、監視センサ1が、浴室70を利用中の被監視者に動きが無い旨の判定を行うと、まず浴室70が有する電灯を点滅させたり、電灯の照度を変えるなどして、被監視者に対して動きがないことを警告する。この警告によって被監視者が動作を起こした場合は、その動きを監視センサ1が検出し、ホームセキュリティシステムは、被監視者に異常はないものとする。一方、警告を行っても被監視者に動きがない場合、ホームセキュリティシステムは、監視者に対して浴室70内で異常があった旨を報知する。したがって、監視センサ1を用いることで、浴室70に入室した被監視者が、シャワー72からの放水を行ったまま急病で倒れるなどして動かなくなった場合や、被監視者が浴槽71を利用して浴槽71の湯面が揺れている状態で意識を失った場合などでも、異常を起こした被監視者の救助を迅速に行うことを可能とする。
【0060】
また、監視センサ1を浴室70に設置する場合、浴室70が有する電灯と共に設置(監視センサ1を電灯に内蔵したり、電灯のカバーに隠れるようする設置)することで、電灯が用いる電源を使用して監視センサ1を動作させることができ、さらに浴室70内の美観を損なうこともない。加えて、電灯と監視センサ1との電源スイッチを共通化すれば、利用者が浴室70を利用するために電灯を点灯させることで、浴室70の利用中は監視センサ1の電源が入り、浴室70の利用が終わり電灯が消灯されれば、監視センサ1の電源が切られ、監視センサ1の電源の消し忘れも防ぐことができる。
【0061】
また、比較部30と比較部31とが比較処理を行うに際して、カウンタ40とカウンタ41とを用いて、それぞれ初期値から所定値までのカウント動作を行うことで比較部30と比較部31とが出力する比較結果を、カウントが終了するまで維持し、比較結果が不安定になるのを防ぐので、ドップラセンサ10が検出した信号S1の急激な変動により起こる、誤った動体判定が行われるのを防止することが可能である。
【0062】
なお、本発明の実施の形態では、カウンタが初期値から1ずつカウントダウンし、所定値になった場合にカウントを終了する場合を例示したが、本発明のカウンタは初期値から所定値までカウントアップするものでもよく、また、カウント時に変化するカウント幅は「1」に限るものではない。
【0063】
また、本発明の実施の形態では、比較部31が比較処理にて、浴室70が有するシャワー72の放水に起因する外乱要因を除去する場合を例示したが、本発明において、比較部31が比較処理にて除去するのは、シャワー72に起因する外乱要因に限るものではなく、その他の水道設備の放水に起因する外乱要因であってもよい。さらに、本発明の実施の形態では、外乱要因に関する周波数成分を減衰させるフィルタとしてLPF20を使用したが、本発明において、使用するフィルタはLPFだけに限るものではなく、HPF(High Pass Filter)など、その他の外乱要因に関する周波数成分を減衰させるのに適切なフィルタであればよい。
【0064】
さらに、本発明の実施の形態に係る監視センサが備える比較部30、比較部31、カウンタ40、カウンタ41、及び判定部50は、汎用的なコンピュータシステムであってもよい。図9は、コンピュータを用いた監視センサ2の構成を概略的に示したブロック図である。監視センサ2は、ドップラセンサ10、LPF20、及びコンピュータ60を備える。コンピュータ60はCPU(Central Processing Unit)61とメモリ62とを有し、CPU61は、メモリ62が記憶するプログラム63を実行することにより、比較部30、比較部31、カウンタ40、カウンタ41、及び判定部50の機能を実現させる。
【0065】
<変形例>
本発明の変形例に係る監視センサ3は、浴室内に設置され、被監視者である浴室の利用者の動きの有無を監視する監視センサである。図10は、本発明の変形例に係る監視センサ3の構成を概略的に示すブロック図である。監視センサ3は、ドップラセンサ10、フィルタ25、フィルタ26、フィルタ27、比較部35、比較部36、比較部37、及び判定部55を備えている。監視センサ3が行う監視処理は、図2に示したフローチャートと同様のものであり、監視センサ1が比較部30と比較部31との二系統で行っていた比較処理を、監視センサ3は、比較部35と比較部36と比較部37との三系統で行っている(ただし、監視センサ3は、カウンタを備えていないため、ステップSP120で行われる比較処理においては、図4に示したステップSP210からステップSP230及びステップSP250のみが行われる)。
【0066】
比較部35は、ドップラセンサ10の出力信号S11をフィルタ25にてフィルタ処理した信号S12と所定の閾値Eとを比べ、信号S12が閾値E以上ならば「ON」という比較結果を出力し、信号S12が閾値E未満であれば「OFF」という比較結果を出力する。比較部36は、ドップラセンサ10の出力信号S11をフィルタ26にてフィルタ処理した信号S13と所定の閾値Fとを比べ、信号S13が閾値F以上ならば「ON」という比較結果を出力し、信号S13が閾値F未満であれば「OFF」という比較結果を出力する。比較部37は、ドップラセンサ10の出力信号S11をフィルタ27にてフィルタ処理した信号S14と所定の閾値Gとを比べ、信号S14が閾値G以上ならば「ON」という比較結果を出力し、信号S14が閾値G未満であれば「OFF」という比較結果を出力する。
【0067】
判定部55は、比較部35と比較部36と比較部37との比較結果がすべて「ON」であった場合、被監視者である浴室の利用者の動きが有った旨の出力信号S18を出力し、比較部35と比較部36と比較部37との比較結果のいずれか(又は全て)が「OFF」であった場合、被監視者である浴室の利用者の動きが無かった旨の出力信号S18を出力する。
【0068】
フィルタ25とフィルタ26とフィルタ27とが行うフィルタ処理において、信号S11から除去する外乱要因はそれぞれ別のものであり、監視センサ3は、フィルタ25とフィルタ26とフィルタ27とが除去する三つの外乱要因が存在する場合にでも、被監視者である浴室の利用者の動きの有無を正確に判定することが可能となる。
【0069】
なお、監視センサ3ではフィルタ及び比較部の数は三つの場合を例示したが、本発明において、フィルタ及び比較部の個数は三つに限るものではなく、複数のフィルタと複数の比較部とを用いることで複数の外乱要因の除去を行いつつ、被監視者である浴室の利用者の動きの有無を正確に判定することができる。さらに、比較部に入力される信号は、必ずしもフィルタ処理を行う必要はなく、ドップラセンサ10が検出した信号を、フィルタ処理を行うことなく、比較部に入力してもよい。
【0070】
また、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲にとって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1、2、3 監視センサ
10 ドップラセンサ
20 LPF
25、26、27 フィルタ
30、31、35、36、37 比較部
40、41 カウンタ
50、55 判定部
60 コンピュータ
61 CPU
62 メモリ
63 プログラム
70 浴室
71 浴槽
72 シャワー




【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内に在室している被監視者を監視する監視センサであって、
前記浴室内における動きを検出し、その検出の結果を第1の信号として出力するドップラセンサと、
前記第1の信号の値と、前記浴室が有する浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因を除去するための第1の閾値とを比較する第1の比較手段と、
前記第1の信号に対して所定のフィルタ処理を施すことにより、第2の信号を出力するフィルタ手段と、
前記第2の信号の値と、前記浴室内の水道設備からの放水に起因する外乱要因を除去するための第2の閾値とを比較する第2の比較手段と、
前記第1の比較手段による比較の結果と、前記第2の比較手段による比較の結果とに基づいて、前記被監視者の動きの有無を判定する判定手段と、
を備える、監視センサ。
【請求項2】
前記フィルタ手段は、前記第1の信号のうち、前記水道設備からの放水に関する周波数成分を減衰させるローパスフィルタである、請求項1に記載の監視センサ。
【請求項3】
前記判定手段は、前記第1の信号の値が前記第1の閾値以上であり、かつ、前記第2の信号の値が前記第2の閾値以上である場合に、前記被監視者の動きが有ると判定する、請求項1又は2に記載の監視センサ。
【請求項4】
前記判定手段は、前記第1の信号の値が前記第1の閾値未満であり、又は、前記第2の信号の値が前記第2の閾値未満である場合に、前記被監視者の動きが無いと判定する、請求項1又は2に記載の監視センサ。
【請求項5】
第1の比較手段に、前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第1の信号の入力があった場合に、第1の初期値からのカウント動作を開始する第1のカウンタと、
第2の比較手段に、前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第2の信号の入力があった場合に、第2の初期値からのカウント動作を開始する第2のカウンタと、
をさらに備え、
前記第1のカウンタがカウント動作を開始した後、前記第1のカウンタのカウンタ値が第1の所定値に達する前に、前記第1の比較手段に前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第1の信号の入力が再びあった場合には、前記第1のカウンタは、前記第1のカウンタのカウンタ値を前記第1の初期値に設定してカウント動作を再び開始し、
前記第1のカウンタがカウント動作を開始した後、前記第1のカウンタのカウンタ値が第1の所定値に達するまでは、前記第1の比較手段は、前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を連続して出力し、
前記第1のカウンタのカウンタ値が前記第1の所定値に達し、かつ、第1の比較手段に、前記判定手段が前記被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第1の信号の入力があった場合に、前記第1の比較手段は、前記判定手段が前記被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力し、
前記第2のカウンタがカウント動作を開始した後、前記第2のカウンタのカウンタ値が第2の所定値に達する前に、前記第2の比較手段に前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第2の信号の入力が再びあった場合には、前記第2のカウンタは、前記第2のカウンタのカウンタ値を前記第2の初期値に設定してカウント動作を再び開始し、
前記第2のカウンタがカウント動作を開始した後、前記第2のカウンタのカウンタ値が第2の所定値に達するまでは、前記第2の比較手段は、前記判定手段が前記被監視者の動きが有ると判定するのに用いる比較結果を連続して出力し、
前記第2のカウンタのカウンタ値が前記第2の所定値に達し、かつ、第2の比較手段に、前記判定手段が前記被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力させる前記第2の信号の入力があった場合に、前記第2の比較手段は、前記判定手段が前記被監視者の動きが無いと判定するのに用いる比較結果を出力する、請求項1から4のいずれか一つに記載の監視センサ。
【請求項6】
浴室内に在室している被監視者を監視する監視センサであって、
前記浴室内における動きを検出し、その検出の結果を第1の信号として出力する検出手段と、
前記第1の信号の値と、前記被監視者の動作よりも遅い動きに起因する外乱要因を除去するための第1の閾値とを比較する第1の比較手段と、
前記第1の信号に対して所定のフィルタ処理を施すことにより、第2の信号を出力するフィルタ手段と、
前記第2の信号の値と、前記被監視者の動作よりも速い動きに起因する外乱要因を除去するための第2の閾値とを比較する第2の比較手段と、
前記第1の比較手段による比較の結果と、前記第2の比較手段による比較の結果とに基づいて、前記被監視者の動きの有無を判定する判定手段と、
を備える、監視センサ。
【請求項7】
浴室内に在室している被監視者を監視する監視センサであって、
前記浴室内における動きを検出し、その検出の結果を第1の信号として出力するドップラセンサと、
前記第1の信号に対して、異なる外乱要因を除去するための異なるフィルタ処理をそれぞれ施すことにより、第2の信号をそれぞれ出力する複数のフィルタ手段と、
前記複数のフィルタ手段から出力された複数の前記第2の信号に基づいて、前記被監視者の動きの有無を判定する判定手段と、
を備える、監視センサ。
【請求項8】
ドップラセンサから出力される第1の信号に基づいて、浴室内に在室している被監視者を監視する監視センサに搭載されるコンピュータを、
前記第1の信号の値と、前記浴室が有する浴槽の湯面の揺れに起因する外乱要因を除去するための第1の閾値とを比較する第1の比較手段と、
前記第1の信号に対して所定のフィルタ処理を施すことにより、第2の信号を出力するフィルタ手段と、
前記第2の信号の値と、前記浴室内の水道設備からの放水に起因する外乱要因を除去するための第2の閾値とを比較する第2の比較手段と、
前記第1の比較手段による比較の結果と、前記第2の比較手段による比較の結果とに基づいて、前記被監視者の動きの有無を判定する判定手段と、
として機能させる、プログラム。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−198192(P2011−198192A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65656(P2010−65656)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】