説明

監視盤における主制御装置のバックアップ装置およびトンネル防災設備

【課題】 バックアップに際して主制御装置とサブ主制御装置との並列運転という煩雑な処理を実行する必要がなく、また、主制御装置が壊れた場合に新しい主制御装置に交換するという防災受信盤または中継盤の監視・制御が一時的に中断することがなく、さらに、主制御装置を容易にバックアップすることができる監視盤における主制御装置のバックアップ装置およびトンネル防災設備を提供することを目的とするものである。

【解決手段】 防災受信盤、中継盤の主制御装置がダウンした場合、バックアップ装置が上記主制御装置の代わりにシステムを継続して監視・制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主制御装置と、上記主制御装置によって制御される複数の盤内モジュールと、上記主制御装置がダウンしたときに上記主制御装置に代わって上記盤内モジュールを制御するバックアップ装置とを具備する監視盤に関し、特にトンネル防災設備に関する防災受信盤等に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の防災受信盤200を示すブロック図である。
【0003】
従来の防災受信盤200(または中継盤)において、主制御装置10とサブ主制御装置30とを並列運転し、主制御装置10がダウンしたときには、各モジュールM1、M2、……、Mnがデータを送信する宛先を、サブ主制御装置30としている。または、常時各モジュールM1、M2、……、Mnから、主制御装置10とサブ主制御装置30とに、データを送信する。
【0004】
各モジュールM1、M2、……、Mnは、主制御装置10のダウンを検出し、データの送信先をサブ主制御装置30に切り替えるか、常に主制御装置10とサブ主制御装置30とにデータを送る。
【0005】
図4は、図3とは異なる従来の受信盤300を示すブロック図である。
【0006】
従来の受信盤300において、主制御装置10が壊れた場合に、この壊れた主制御装置10を、新しい主制御装置40と交換する(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
従来の受信盤300において、各盤内モジュールM1、M2、…、Mnは、区画管理基板に相当し、主制御装置10は、バスに接続されたMPUを中心とする部位に相当する。
【特許文献1】特開平6−280500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5は、従来の防災盤200の動作説明図である。
【0009】
従来の防災盤200において、主制御装置10、サブ主制御装置30のアドレスが、それぞれ、ID255、ID254に設定されているとする。そして、主制御装置10とサブ主制御装置30とを並列運転している場合、各モジュールM1、M2、……、Mnが、主制御装置10のダウンを検出し、この検出後に、各モジュールM1、M2、……、Mnが所定データを送る送り先IDを、ID254のみに変更し、この変更後は、ID254のみに所定データを送る。
【0010】
したがって、従来の防災盤200においては、常時、主制御装置10とサブ主制御装置30とにデータを送信する必要があるので、各モジュールM1、M2、……、Mnの処理負荷が増え、また、通信ライン内のトラフィックが増加する。この結果、データの情報量が制約されるという問題がある。
【0011】
一方、従来の防災盤300において、主制御装置10が壊れた場合、新しい主制御装置40に交換するので、交換作業中に、防災受信盤300(または中継盤)を、一時的にオフする必要があるので、連続的にトンネルの環境を監視・制御しているトンネル防災設備の性格として、好ましくないという問題がある。
【0012】
本発明は、バックアップに際して主制御装置とサブ主制御装置との並列運転という煩雑な処理を実行する必要がなく、また、主制御装置が壊れた場合に新しい主制御装置に交換するという防災受信盤または中継盤の監視・制御が一時的に中断することがなく、さらに、主制御装置を容易にバックアップすることができるトンネル防災設備における主制御装置のバックアップ装置およびトンネル防災設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、主制御装置と、盤内モジュールと、バックアップ装置とを具備し、上記主制御装置が上記複数の盤内モジュールを制御し、上記主制御装置がダウンしたときに上記主制御装置に代わって、上記バックアップ装置が上記盤内モジュールを制御する監視盤において、上記主制御装置がダウンしたことを検出するダウン検出手段と、上記ダウン検出手段が上記主制御装置のダウンを検出すると、バックアップ装置のノードIDを、主制御装置ノードIDに変更するノード変更手段とを有することを特徴とする監視盤における主制御装置のバックアップ装置である。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1において、上記ノード変更手段は、バーストを発生させ、その間に、上記バックアップ装置のノードIDを、上記主制御装置のノードIDに変更する手段であることを特徴とする監視盤における主制御装置のバックアップ装置である。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1において、上記ダウン検出手段は、伝送配線とは別の伝送路を介して、上記主制御装置による情報の送信停止を、上記バックアップ装置が検出すると、上記主制御装置がダウンしたと認識する手段であることを特徴とする監視盤における主制御装置のバックアップ装置である。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1において、上記ダウン検出手段は、上記主制御装置が伝送配線に送信する信号を監視し、上記主制御装置からの信号が停止すると、上記主制御装置がダウンしたと認識する手段であることを特徴とする監視盤における主制御装置のバックアップ装置である。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1において、上記主制御装置側に接続される一方の伝送配線と、上記モジュールに接続される他方の伝送配線とを常時は接続し、上記主制御装置がダウンしたことを判別すると、上記一方の伝送配線を切り離す遮断手段を有することを特徴とする監視盤における主制御装置のバックアップ装置である。
【0018】
請求項6記載の発明は、主制御装置と、盤内モジュールと、バックアップ装置とを具備し、上記主制御装置が上記複数の盤内モジュールを制御し、上記主制御装置がダウンしたときに上記主制御装置に代わって、上記バックアップ装置が上記盤内モジュールを制御するトンネル防災設備において、上記主制御装置がダウンしたことを検出するダウン検出手段と、上記ダウン検出手段が上記主制御装置のダウンを検出すると、バックアップ装置のノードIDを、主制御装置ノードIDに変更するノード変更手段とを有するバックアップ装置が設けられていることを特徴とするトンネル防災設備である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、監視盤における主制御装置のバックアップ装置を設けるので、バックアップに際して主制御装置とサブ主制御装置との並列運転という煩雑な処理を実行する必要がなく、また、主制御装置が壊れた場合に新しい主制御装置に交換するときにおける防災受信盤または中継盤の監視・制御に関する一時的な中断が生じることがなく、さらに、主制御装置を容易にバックアップすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1であるトンネル防災設備の防災受信盤100を示すブロック図である。
【0022】
防災受信盤100は、いわゆる監視盤の一種であって、主制御装置10と、バックアップ装置20と、モジュールM1、M2、……、Mnとを有する。
【0023】
主制御装置10は、主制御部11と、盤内通信I/F12と、ノードID設定部13とを有する。
【0024】
バックアップ装置20は、主制御部21と、盤内通信I/F22と、ノードID設定部23と、遮断回路24とを有する。
【0025】
遮断回路24は、主制御装置10の盤内通信I/F12と、バックアップ装置20の盤内通信I/F22との間に接続されている。また、盤内モジュールM1、M2、……、Mnと、バックアップ装置20の盤内通信I/F22とが接続されている。
【0026】
つまり、主制御装置10の盤内通信I/F12と、各モジュールM1、M2、……、Mnとは、遮断回路24を介して、接続されている。
【0027】
また、主制御装置10の主制御部11と、バックアップ装置20の主制御部21とが接続され、バックアップ装置20の主制御部21が、主制御装置10の主制御部11のダウンを監視している。つまり、主制御装置10を、ホストとし、各モジュールM1、M2、……、Mnを、スレーブとし、平常時は、スレーブとして動作するバックアップ装置20が、主制御装置10のダウンを監視している。
【0028】
次に、トンネル防災設備の防災受信盤100の動作について説明する。
【0029】
図2は、トンネル防災設備の防災受信盤100の動作説明図である。
【0030】
防災受信盤100の平常時には、つまり、主制御装置10が正常である場合、バックアップ装置20は、図2(1)に示すように、各モジュールと同様に、スレーブとして動作している。
【0031】
そして、バックアップ装置20が、主制御装置10のダウンを検出すると、図2(2)に示すように、遮断回路24をオフし、また、図2(2)に示すように、主制御装置10の通信線を遮断し、図2(3)に示すように、バックアップ装置20のノードID254を、主制御装置10のノードID255に変更する。
【0032】
この際、バックアップ装置がアークネットの特徴であるバーストを発生させて、リコンフィグレーションによる再構築を利用する。リコンフィグレーションによって再構築されると、図2(1)に示すバックアップ前のホスト(主制御装置10)とスレーブ(盤内モジュールM1、M2、……、Mn)との関係と同じ関係が、バックアップ装置20と盤内モジュールM1、M2、……、Mnとの間で成り立ち、通信が成立し、主制御装置10が行っていた機能を、バックアップ装置20が完全に維持する。
【0033】
この場合、各モジュールM1、M2、……、Mnから、主制御装置10への送信データと、主制御装置10から各モジュールM1、M2、……、Mnへの送信データとを、バックアップ装置20が盗聴することによって、バックアップ時の情報の継続性を維持することができる。また、バックアップ装置20が盗聴する代わりに、伝送配線とは別の伝送路を予め設け、この別の伝送路を介して、主制御装置10の情報を、バックアップ装置20が定期的に受信するようにしてもよく、これによって、バックアップ時の情報の継続性を維持することができる。
【0034】
実施例1において、主制御装置10は、制御情報をスレーブ(各モジュールM1、M2、……、Mn、バックアップ装置20)に送信し、スレーブは、最新の状態を示す情報を、主制御装置10に送信する手順を繰り返す。
【0035】
トンネル内情報(図示しない検知器の火災信号)が、盤内モジュールM1、M2、……、Mnに入力されると、盤内モジュールM1、M2、……、Mnは、主制御装置10へ火災情報を通知する。火災情報を受信した主制御装置10は、規定された処理を実行し、その一環として、盤内モジュールM1、M2、……、Mnを介して、上記検知器の火災灯点灯を制御する。
【0036】
バックアップ装置20は、主制御装置10と盤内モジュールM1、M2、……、Mnとの間における通信を盗聴するか、または、主制御装置10とバックアップ装置20とを接続する別の伝送路を介して、主制御装置10から、火災情報、火災制御情報を受信し、現状の状態を常に更新する。
【0037】
次に、実施例1において、主制御装置10が故障した場合の動作について説明する。
【0038】
主制御装置10が故障すると、主制御装置10からスレーブに対する制御情報の送信が停止され、または別の伝送路による主制御装置10からバックアップ装置20に対する情報の送信が停止されるので、バックアップ装置20は、この送信停止を検出することによって、主制御装置10の故障を認識する。
【0039】
主制御装置10の故障を認識したバックアップ装置20は、遮断回路24をオフすることによって、主制御装置10とスレーブ(盤内モジュールM1、M2、……、Mn)とを接続している通信線を切断し、バックアップ装置20を除くスレーブ(盤内モジュールM1、M2、……、Mn)に、バースト信号を送信し、通信の再構築を行うとともに、バックアップ装置20の自ノードID254を、主制御装置10と同じ255に設定する。
【0040】
バックアップ装置20をホストとし、盤内モジュールM1、M2、……、Mnをスレーブとして通信が確立し、また、先の検知器による火災や、検知器による火災灯点灯制御という情報も、継続して、監視・制御が可能になる。
【0041】
なお、遮断回路24のオフによる通信線の切断によって、故障の主制御装置10が再構築後の通信に何らかの影響を与えることを防止できる。
【0042】
次に、バースト信号について説明する。
【0043】
バースト信号とは、111111110(9ビット)の信号が、2.7mSの間、アークネットの回線を流れる信号である。このバースト信号によって、送信中のデータやトークンを破棄する。この通信停止状態において、バックアップ装置20がIDを変更しても、通信異常は起こらない。
【0044】
実施例1における盤内伝送として、トークンパッシング方式を使用している。トークンパッシング方式では、トークン(送信権)を機器で順番に回し、送信データがなければ、次の機器へトークンを渡し、送信データがあれば、トークンを受けた場合にだけ送信することができる。基本的に、ノードIDが小さいものから大きいものへ順に、トークンを渡す。
【0045】
次に、再構築について説明する。
【0046】
トークンパッシングを実現するために、各機器は、自分のIDと次にトークンを送る先のIDとを持っている。再構築という動作の主な役割は、次に送る送り先のIDを取得することである。
【0047】
ネットワークに、機器が追加された場合と、ネットワークから、機器が離脱した場合とに、再構築が必要になる。なお、上記の場合以外でも、ノイズ等でトークンが消失した場合にも、再構築される。
【0048】
次に、再構築の具体的な手順について、説明する。
【0049】
まず、バースト信号を送信し、ネットワーク上のトークンを持っているノードからの送信を妨害し、どこにもトークンが存在しない状態にする。
【0050】
次に、各ノードは、86μS間のアイドル状態を検出した後に(255−自ID値)×147μSの間のタイマをスタートさせる。たとえば、ID1、ID50、ID100、ID200のノードがあった場合、各ノードのタイマは以下のようになる。
【0051】
ID1………(255−1)×147μS=37.33mS
ID50……(255−50)×147μS=30.14mS
ID100…(255−100)×147μS=22.79mS
ID200…(255−200)×147μS=8.09mS
そして、一番早くタイムアウトしたノード(上記例ではID200)は、自ノード(ID200)に、トークンを発信する。これによって、他のノードは、ネットワーク上のどこかのノードが、トークンを持ったことを認識する。
【0052】
さらに、ノードを1ずつインクリメントし、トークンを送出する。つまり、ID201、ID202、ID203、……、ID255、ID1のように、ノードをインクリメントし、トークンを送出する。
【0053】
トークンがID1に渡ると、ID1は、自分が送信権を得たと認識し、今度は、ノードID1が、自ノード(ID1)から順次、ノードをインクリメントし、トークンを送出する。つまり、ID1、ID2、ID3、ID4、……のように、ノードをインクリメントし、トークンを送出する。
【0054】
ID200は、ID1からトークンを送信し始めるので、ID1がトークンを渡す先であることを認識する。
【0055】
上記手順を順次行い、IDが1周することによって、全ノードは、トークンの渡し先を認識する。以上の処理によって、再構築が完了する。
【0056】
再構築の要因が発生したことを他の機器に知らせるために、バーストを発生させる。また、上記のように機器の追加や離脱に対応して、新しい送り先を決める動作を行う必要があるので、上記再構築を実行する。
【0057】
上記実施例のIDの設定は一例であり、主制御装置10等に異なるIDを設定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1であるトンネル防災設備の防災受信盤100のブロック図である。
【図2】防災受信盤100の動作説明図である。
【図3】従来の防災受信盤200を示すブロック図である。
【図4】従来の受信盤300を示すブロック図である。
【図5】従来の防災盤200の動作説明図である。
【符号の説明】
【0059】
100…防災受信盤、
10…主制御装置、
11、21…主制御部、
12、22…ノードID設定部、
13、23…盤内通信I/F、
20…バックアップ装置、
24…遮断回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主制御装置と、盤内モジュールと、バックアップ装置とを具備し、上記主制御装置が上記複数の盤内モジュールを制御し、上記主制御装置がダウンしたときに上記主制御装置に代わって、上記バックアップ装置が上記盤内モジュールを制御する監視盤において、
上記主制御装置がダウンしたことを検出するダウン検出手段と;
上記ダウン検出手段が上記主制御装置のダウンを検出すると、バックアップ装置のノードIDを、主制御装置ノードIDに変更するノード変更手段と;
を有することを特徴とする監視盤における主制御装置のバックアップ装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記ノード変更手段は、バーストを発生させ、その間に、上記バックアップ装置のノードIDを、上記主制御装置のノードIDに変更する手段であることを特徴とする監視盤における主制御装置のバックアップ装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記ダウン検出手段は、伝送配線とは別の伝送路を介して、上記主制御装置による情報の送信停止を、上記バックアップ装置が検出すると、上記主制御装置がダウンしたと認識する手段であることを特徴とする監視盤における主制御装置のバックアップ装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記ダウン検出手段は、上記主制御装置が伝送配線に送信する信号を監視し、上記主制御装置からの信号が停止すると、上記主制御装置がダウンしたと認識する手段であることを特徴とする監視盤における主制御装置のバックアップ装置。
【請求項5】
請求項1において、
上記主制御装置側に接続される一方の伝送配線と、上記モジュールに接続される他方の伝送配線とを常時は接続し、上記主制御装置がダウンしたことを判別すると、上記一方の伝送配線を切り離す遮断手段を有することを特徴とする監視盤における主制御装置のバックアップ装置。
【請求項6】
主制御装置と、盤内モジュールと、バックアップ装置とを具備し、上記主制御装置が上記複数の盤内モジュールを制御し、上記主制御装置がダウンしたときに上記主制御装置に代わって、上記バックアップ装置が上記盤内モジュールを制御するトンネル防災設備において、
上記主制御装置がダウンしたことを検出するダウン検出手段と、上記ダウン検出手段が上記主制御装置のダウンを検出すると、バックアップ装置のノードIDを、主制御装置ノードIDに変更するノード変更手段とを有するバックアップ装置が設けられていることを特徴とするトンネル防災設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−106833(P2006−106833A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288555(P2004−288555)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】