説明

目地切り装置及びこれを使用した目地施工方法

【課題】目地溝の崩れやダレなどを防止して目地材挿入をしやすくした目地切り装置を提案する。
【解決手段】本発明の目地切り装置は、先端縁1aを切り込み刃とする板状の刃部材1を二枚有し、該二枚の刃部材1を、その両側端1dに設けたヒンジ部材2により先端側を軸としてV字状に開閉可能にヒンジ接続すると共に、当該刃部材1の後端側に開閉操作用の操作部材3を設けてある。そして、その刃部材1をV字状に開いた状態で該刃部材1の先端縁1a間に目地材を通せる隙間dを生じるようになっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやアスファルト等の舗装においてひび割れなどを防ぐために入れられる目地を所定の位置に形成するための目地切り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート舗装では、その膨張又は収縮を吸収してひび割れを防止する緩衝要素として、所定の間隔で目地が施される。この目地は、コンクリート打設中に未硬化の状態で、非特許文献1に示すような振動目地切り機などを使用して施工される。振動目地切り機は、鉄板の切り込みナイフを上下動させコンクリートの施工面に圧入することで切れ目を形成していく機械である。
【0003】
【非特許文献1】「舗装施工便覧」,平成13年12月4日初版第1刷発行,編集/発行所:社団法人日本道路協会,279頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬化前のコンクリート舗装の目地切り作業は、コンクリートのスランプや気温等の状況に応じて施工のタイミングを計るのが難しいが、特に、振動目地切り機の場合、切り込みナイフを差し込んでから引き出した後に、切り込んだ目地溝の縁がコンクリートの軟らかさのために崩れたりダレが生じたりして目地が部分的に塞がるなどし、目地材(スレート板等)の挿入作業をやり難くなる現象がある。これによって、コテによる手直しが多くなるなど、作業効率、平坦性や見栄えに影響する結果となっている。
【0005】
本発明はこのような課題に着目し、目地溝の崩れやダレなどを防止して目地材挿入をしやすくした目地切り装置とこれを使用した目地施工方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目地切り装置は、先端縁を切り込み刃とする板状の刃部材を二枚有し、該二枚の刃部材を、その両側端に設けたヒンジ部材により先端側を軸としてV字状に開閉可能にヒンジ接続すると共に、当該刃部材の後端側に開閉操作用の操作部材を設けてなり、その刃部材をV字状に開いた状態で該刃部材の先端縁間に目地材を通せる隙間を生じるようになっていることを特徴とする。
【0007】
そして、このような目地切り装置を使用した本発明に係るコンクリート舗装の目地施工方法は、未硬化コンクリート舗装の施工面に、閉じた状態の刃部材を先端縁から圧入して目地を切る工程と、該圧入した刃部材を操作部材により開き、当該開いた刃部材間に目地材を挿入する工程と、該挿入した目地材を、先端縁間の隙間を通すことで目地内に残したまま刃部材を施工面から引き抜く工程と、を実施することを特徴とする。
【0008】
この目地切り装置及び目地施工方法によれば、圧入した刃部材の側面で目地溝の壁面を押さえつけながら、その間に目地材を挿入することができるので、溝の縁の崩れやダレを防止して目地材を目地に挿入することができる。また、V字状に開いた刃部材の間を通して目地材を挿入することができるので、目地材の挿入作業も格段に楽である。さらに、操作部材を手に持って圧入・開閉を行う手動式作業を可能とし、コスト削減にも役立つ。
【0009】
このような特徴を持つ本発明の目地切り装置においては、場合に応じて圧入作業をより楽にすることを考え、刃部材に振動をかけるバイブレータを保持する筒部材を、刃部材の後端に設けておくこともできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、V字状に開閉可能とした刃部材により目地溝の壁面を押さえつつ、その間に目地材を挿入するようにしたので、従来の上下動式切り込みナイフのように摺動で目地溝の不具合を生じることがなく、溝の縁の崩れやダレを防止して目地材を目地に挿入しやすくなる。また、V字状に開いた刃部材の間を通して目地材を挿入することで、目地材の挿入作業も格段に楽で、作業性が大きく向上する。したがって、コンクリートの硬さ、つまり施工のタイミングに従来ほど神経質になる必要がなく、品質の高い目地を効率良く施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図5に本発明の好適な実施形態を示し説明する。図1〜図3に目地切り装置の全体を示し、図4及び図5に、コンクリート舗装中に圧入した状態の刃部材を拡大して、施工過程の概略を示している。
【0012】
本実施形態の目地切り装置は、二枚の長尺板状とした刃部材1と、該刃部材1をV字状に開閉可能にヒンジ接続するヒンジ部材2と、刃部材1を開閉操作するためのハンドルとなる操作部材3と、を備えている。
【0013】
刃部材1はそれぞれ、長辺の先端縁1aを切り込み刃としてあり、本例の場合は圧入しやすいよう鋭利に形成されている。この先端縁1aと反対側の後端部は、“L”字状に曲折形成することでフランジ1bが形成されており、該フランジ1bに、棒材を“コ”字状に曲折形成した操作部材3がその両端を溶接して立設されている。また、いずれか一方の刃部材1におけるフランジ1bの中程には、コンクリートへ圧入しやすくなるように振動をかけるためのバイブレータ(図示略)を保持するための保持筒1cが溶接されている。
【0014】
ヒンジ部材2は、刃部材1の両側端1dの端面にそれぞれ溶接されている。本例のヒンジ部材2は、刃部材1の側端よりも長い板材2a,2bを先端部でヒンジ軸2cにより軸支してなり、V字状に開閉する。刃部材1は、板材2a,2bの後端寄りに接続されているので、ヒンジ軸2cは、刃部材1の先端縁1aよりも先に突出した位置に設定される。したがって、ヒンジ部材2に従いV字状に開閉する刃部材1が開いた状態で、先端縁1aの間には、隙間dが形成される。隙間dは、目地へ挿入する目地材M(スレート板等)を通すことができる程度のものに設定される。
【0015】
以上の目地切り装置を使用し、コンクリート舗装に目地切りを行う目地施工方法は、次のようなものとする。
【0016】
(1)本例の場合、施工幅員以上に刃部材1の長さを設定した目地切り装置を用意し、未硬化コンクリート舗装Cの施工面全幅員にわたって、刃部材1を閉じた状態にしておいて先端縁1aを突き立てる。そして、保持筒1cに保持したバイブレータで振動をかけつつ圧入していき、目地を切る。
【0017】
(2)両脇から操作部材3を持って操作し、圧入した刃部材1を“ふいご”のようにしてV字状に開き、刃部材1の側面により目地溝の壁面をV字状に押し広げる。そして、開いた刃部材1の間に目地材Mを挿入し、その先端部分を、先端縁1a間の隙間dを通してコンクリート舗装C内へ少しだけめり込ませ、目地材Mの天端がコンクリート舗装Cの上面とほぼ面一になるようにする。
【0018】
(3)挿入した目地材Mを隙間dに通しつつ刃部材1を目地内から引き抜き、目地材Mを目地内に残したまま目地切り装置を取り払う。そして、目地材Mを挿入した目地の縁をコテにて修正し仕上げる。
【0019】
この目地切り装置を使用した目地施工方法によれば、圧入した刃部材1の側面で目地溝の壁面を押さえつけながら、その間に目地材Mを挿入することができるので、溝の縁の崩れやダレを防止して目地材Mを容易に挿入することができる。また、V字状に開いた刃部材1が“漏斗”(あるいは案内板)のような役割を担い、その間を通して目地材Mを挿入すると挿入作業も格段に楽である。さらに、操作部材3を手に持って圧入・開閉を行う手動式作業が可能で、コスト削減にも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る目地切り装置の側面図。
【図2】図1の目地切り装置を側端から見た端面図。
【図3】V字状に開いて見た図2相当の端面図。
【図4】施工面に切り込ませた刃部材を拡大して側端から見た端面図。
【図5】刃部材をV字状に開き目地材を挿入して見た図4相当の端面図。
【符号の説明】
【0021】
1 刃部材
1a 先端縁
1b フランジ(後端部)
1c 保持筒
1d 側端
2 ヒンジ部材
2a,b 板材
2c ヒンジ軸
3 操作部材
M 目地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端縁を切り込み刃とする板状の刃部材を二枚有し、該二枚の刃部材を、その両側端に設けたヒンジ部材により先端側を軸としてV字状に開閉可能にヒンジ接続すると共に、当該刃部材の後端側に開閉操作用の操作部材を設けてなり、前記刃部材をV字状に開いた状態で該刃部材の先端縁間に目地材を通せる隙間を生じるようになっていることを特徴とする目地切り装置。
【請求項2】
前記刃部材に振動をかけるバイブレータを保持する筒部材を、前記刃部材の後端に設けたことを特徴とする請求項1記載の目地切り装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の目地切り装置を使用したコンクリート舗装の目地施工方法であって、
未硬化コンクリート舗装の施工面に、閉じた状態の前記刃部材を先端縁から圧入して目地を切る工程と、
該圧入した刃部材を前記操作部材により開き、当該開いた刃部材間に目地材を挿入する工程と、
該挿入した目地材を、前記先端縁間の隙間を通すことで目地内に残したまま前記刃部材を施工面から引き抜く工程と、を実施することを特徴とする目地施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−257693(P2006−257693A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74316(P2005−74316)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(590002482)株式会社NIPPOコーポレーション (130)
【Fターム(参考)】