説明

目標追跡装置及び目標追跡方法

【課題】安定した目標追跡を継続し得る目標追跡装置を提供する。
【解決手段】指示される画像サイズ及び画像位置に基づいて、任意の画像サイズで任意の位置に存在する移動目標の画像データを取得する撮像部11と、この撮像部11の出力画像から1フレームにおける移動目標の画素を特定する画素アドレスを算出する画素アドレス算出部13と、この画素アドレス算出部13で得られる出力画像の目標画素アドレスのフレーム間におけるずれ量を算出し、この算出結果に基づいて撮像部11に指示する画像サイズ及び画像位置を含む追跡信号を生成する信号処理部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、撮像装置を用いて移動目標を撮影し、その撮像情報から移動目標を追跡する目標追跡装置及び目標追跡方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、目標追跡システムにあっては、撮像装置を搭載して、その撮像画像を解析することで移動目標の検出・追跡を行うものがある。
【0003】
ところで、目標は益々高速化されつつあり、これに伴って目標追跡システム側もより高速化に対応させる必要がある。この場合、撮像装置も、目標の高速化に対応させることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−128228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記目標追跡システムでは、撮像装置の検知器で撮像する範囲は一定であり、さらに検知器から出力される画像において、追跡目標位置付近以外の画素についてもデータ読み出し、転送及び画像処理を行う必要があり、追跡信号となる誤差信号を検知器が撮像してから数フレーム後に出力している。このため、追跡目標との相対角速度が大きいと、追跡目標を見失う可能性を助長するために、目標追跡システムとしては致命的である。
【0006】
本発明の目的は、安定した目標追跡を継続し得る目標追跡装置及び目標追跡方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、指示される画像サイズ及び画像位置に基づいて、任意の画像サイズで任意の位置に存在する移動目標の画像データを取得する撮像部と、この撮像部の出力画像から1フレームにおける前記移動目標の画素を特定する画素アドレスを算出する画素アドレス算出部と、この画素アドレス算出部で得られる出力画像の目標画素アドレスのフレーム間におけるずれ量を算出し、この算出結果に基づいて前記撮像部に指示する画像サイズ及び画像位置を含む追跡信号を生成する信号処理部とを備えた目標追跡装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態の目標追跡装置の構成を示すブロック図。
【図2】上記図1に示した撮像エリア切替処理部の具体的構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態において、512×512画素の検知器の画素全体に対し、追跡目標の動きに応じて任意の位置とサイズで撮像エリアを移動させる様子を示す図。
【図4】同実施形態における撮像エリア切替処理部の制御処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る目標追跡装置の構成を示すブロック図である。
【0011】
目標追跡装置は、撮像部としての検知器11と、A/D(アナログ/デジタル)変換処理部12と、画像処理部13と、撮像エリア切替処理部14とに大別される。検知器11は、撮像エリア切替処理部14から出力される撮像対象アドレスに従い撮像範囲を自動設定し撮像する。この検知器11により撮像された画像信号は、A/D変換処理部12によりA/D変換処理が施された後、画像処理部13にて追跡目標の画素アドレスが算出されて撮像エリア切替処理部14に送られる。
【0012】
撮像エリア切替処理部14は、一画面相当のフレームと次フレームとの間における追跡目標の画素アドレスのズレ量から撮像エリア中心位置と撮像エリアサイズを求め、その撮像エリア中心位置及び撮像エリアサイズから撮像対象アドレスを含む追跡信号を生成する。この追跡信号は、検知器11の視野を目標中心に位置させ、さらに撮像エリアサイズを切り替える撮像制御に供される。
【0013】
図2は、上記撮像エリア切替処理部14の具体的構成を示すブロック図である。
【0014】
撮像エリア切替処理部14は、ズレ量算出処理部141と、撮像エリア中心算出部142と、撮像エリアサイズ算出部143と、撮像エリア算出部144とを備えている。ズレ量算出処理部141は、画像処理部13から出力される追跡目標の画素アドレスと1フレーム前における撮像エリア中心画素から、ズレ量を算出し、このズレ量を撮像エリア中心算出部142及び撮像エリアサイズ算出部143に出力する。
【0015】
撮像エリア中心算出部142は、撮像エリア中心画素とズレ量算出処理部141から出力されるズレ量から次フレームにおける撮像エリアの中心画素を算出する。この算出された撮像エリア中心画素のデータは、上記ズレ量算出処理部141及び撮像エリア中心算出部142にそれぞれフィードバックされる。
【0016】
撮像エリアサイズ算出部143は、ズレ量算出処理部141から出力されるズレ量に応じて撮像エリアの一辺のサイズを算出する。撮像エリア算出部144は、次フレームにおける撮像エリア中心画素とサイズに基づき、撮像エリア(エリア左上頂点及び右下頂点)を算出する。そして、この算出結果から撮像対象アドレスを含む追跡信号を検知器11に出力する。
【0017】
上記構成において、以下にその動作を説明する。
以前に考えられた目標追跡装置では、撮像装置の検知器で撮像する範囲は一定であり、さらに検知器から出力される画像において、追跡目標位置付近以外の画素についてもデータ読み出し、転送及び画像処理を行う必要があり、追跡信号となる誤差信号を検知器が撮像してから数フレーム後に出力している。このため、追跡目標との相対角速度が大きいと、追跡目標を見失う可能性を助長するために、目標追跡システムとしては致命的である。
【0018】
そこで、本実施形態では、追跡目標の動き(方向、速度)に応じて任意の位置とサイズで撮像エリアを移動させるようにした。図3は、512×512画素の検知器11の画素全体に対し、追跡目標の動きに応じて任意の位置とサイズで撮像エリアを移動させる様子を示している。図3中黒色部分は、目標が存在する検知器11の撮像エリアを示している。
【0019】
図4は、上記撮像エリア切替処理部14の制御処理手順を示すフローチャートである。
【0020】
制御処理を開始すると、撮像エリア切替処理部14は画像処理部13から出力される追跡目標の画素アドレスと1フレーム前における撮像エリア中心画素から、ズレ量を算出し(ステップST4a)、このズレ量n(nは整数)がi(iは整数)以上でi×(2)1/2以下であるか否かの判断を行う(ステップST4b)。なお、iは図3中黒色のマスの1辺の長さである。
【0021】
ここで、図3中1番目のフレームから2番目のフレームに移行するように、ズレ量nが上記範囲内であれば(Yes)、撮像エリア切替処理部14は撮像エリアサイズを現状維持したまま2番目のフレームの撮像エリア中心を算出し(ステップST4c)、これら算出結果を追跡信号として検知器11に出力する(ステップST4d)。
【0022】
一方、ズレ量nが上記範囲外であれば(No)、撮像エリア切替処理部14はズレ量nがiより小さいか否かの判断を行う(ステップST4e)。ここで、図3中2番目のフレームから3番目のフレームに移行するように、ズレ量nがi×(2)1/2より大きいならば(Yes)、撮像エリア切替処理部14は撮像エリアサイズを水平方向にi、垂直方向にi増加させた3i×3iの撮像エリアサイズに切り替え、3番目のフレームの撮像エリア中心を算出し(ステップST4f)、これら算出結果を追跡信号として検知器11に出力する。
【0023】
一方、図3中3番目のフレームから4番目のフレームに移行するように、ズレ量がiより小さいならば(No)、撮像エリア切替処理部14は撮像エリアサイズを水平方向にi、垂直方向にi減少させた2i×2iの撮像エリアサイズに切り替え、4番目のフレームの撮像エリア中心を算出し(ステップST4g)、これら算出結果を追跡信号として検知器11に出力する。
【0024】
また、図3中8番目のフレームから9番目のフレームに移行するように、ズレ量がiより小さいならば、撮像エリア切替処理部14は撮像エリアサイズを水平方向にi、垂直方向にi減少させたi×iの撮像エリアサイズに切り替え、9番目のフレームの撮像エリア中心を算出し、これら算出結果を追跡信号として検知器11に出力する。
【0025】
これにより、検知器11からA/D変換処理部12に転送される撮像エリアサイズのデータは、図3中1番目から2番目、4番目から8番目まで2i×2iのデータとなり、3番目で3i×3iのデータとなり、9番目でi×iのデータとなり、データの読み出し時間、転送時間及び画像処理時間が短縮される。従って、検知器11で撮像してから目標の画像上の位置を含む追跡信号を出力するまでに要する時間を短くできる。
【0026】
以上のように上記実施形態では、検知器11の出力画像内における移動目標の位置に基づき、次フレームで検知器11の撮像視野、つまり撮像エリア中心及び撮像エリアサイズを切り替えることで、検知器11から出力される不要な画像データ量の削減に伴い、データの読み出し時間、転送時間及び画像処理時間が短縮されることになる。
【0027】
従って、検知器11で撮像してから撮像エリア切替処理部14で追跡信号を出力するまでに要する時間を短くできる。これにより、既存の目標追跡装置では目標を見失う場合(相対角速度が目標追跡装置の性能を上回る場合)においても、安定した目標の追跡の継続が見込める。
【0028】
なお、応用例として、目標追跡のほかに、急速に動く対象の計測に使用できる。その他、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0029】
11…検知器、12…A/D変換処理部、13…画像処理部、14…撮像エリア切替処理部、141…ずれ量算出処理部、142…撮像エリア中心算出部、143…撮像エリアサイズ算出部、144…撮像エリア算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示される画像サイズ及び画像位置に基づいて、任意の画像サイズで任意の位置に存在する移動目標の画像データを取得する撮像部と、
この撮像部の出力画像から1フレームにおける前記移動目標の画素を特定する画素アドレスを算出する画素アドレス算出部と、
この画素アドレス算出部で得られる出力画像の目標画素アドレスのフレーム間におけるずれ量を算出し、この算出結果に基づいて前記撮像部に指示する画像サイズ及び画像位置を含む追跡信号を生成する信号処理部とを具備することを特徴とする目標追跡装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、
前記画素アドレス算出部で得られる出力画像の目標画素アドレスと1フレーム前の追跡目標の撮像視野の中心画素アドレスとを比較することで、ずれ量を算出するずれ量算出手段と、
前記追跡目標の撮像視野の中心画素アドレスと前記ずれ量算出手段で算出されるずれ量とから前記ずれ量算出手段に与える撮像視野の中心画素アドレスを算出する中心画素算出手段と、
前記ずれ量算出手段で算出されるずれ量に基づいて、撮像視野領域の1辺の画像サイズを算出するサイズ算出手段と、
このサイズ算出手段による算出結果及び前記中心画素算出手段による算出結果に基づいて、前記撮像部に指示する画像サイズ及び画像位置を含む追跡信号を生成する追跡信号生成手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の目標追跡装置。
【請求項3】
指示される画像サイズ及び画像位置に基づいて、任意の画像サイズで任意の位置に存在する移動目標の画像データを取得する撮像部を用いて移動目標を追跡する目標追跡方法において、
前記撮像部の出力画像から1フレームにおける前記移動目標の画素を特定する画素アドレスを算出し、
前記出力画像の目標画素アドレスのフレーム間におけるずれ量を算出し、この算出結果に基づいて前記撮像部に指示する画像サイズ及び画像位置を含む追跡信号を生成するようにしたことを特徴とする目標追跡方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−253381(P2011−253381A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127166(P2010−127166)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】