説明

直列共振型コンバータ回路

【課題】 直列共振型コンバータ回路の電力損失を低減すること。
【解決手段】直流入力端子の間に接続される1組の第1、第2のスイッチング素子を少なくとも有するインバータ回路と、このインバータ回路に接続される1次巻線と2次巻線を有するトランスと、そのトランスの前記1次巻線又は前記2次巻線と直列に接続されている共振インダクタンス手段と、前記第1又は第2のスイッチング素子を介して、前記共振インダクタンス手段に直列に接続される1次側共振コンデンサと、直流出力端子の間に互いに直列に接続される第1、第2の2次側共振コンデンサと、直流出力端子の間に互いに直列に接続される第1、第2の一方向性素子と、前記1次側共振コンデンサ、前記第1、第2の2次側共振コンデンサによる共振キャパシタンスと協働して直列共振する共振インダクタンス手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、共振インダクタンス手段と共振コンデンサとの直列共振作用を利用した直列共振型コンバータ回路、特にプラズマなどの放電負荷に適した直流スパッタ電源、負荷電圧が大きく変化するコンデンサ、蓄電池などの充電用直流電源に適する特性を有する直列共振型コンバータ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
放電エネルギーを利用する放電負荷として、各種のレーザ装置、放電灯点灯装置、ストロボ装置、放電加工装置、光ファイバの融着接続装置、放電によって金属薄膜を種々の物質の表面に形成する真空装置などがあり、非常に広い分野において放電負荷が使用されている。これら放電負荷は定電力を要求するものが多い。
【0003】
前述のような放電負荷用の電源装置の場合、出力電圧がプラズマ状態によってある範囲で変化するので、その範囲で定電力を保証しなければならない。例えば、出力が800Wの場合には、定格出力電圧が800V、そのとき供給可能な出力電流は1Aである。そして、出力電圧が400Vのときには、2Aの出力電流を放電負荷に供給することが要求される。しかし、通常の放電負荷用電源装置では、800V−1Aで電源を設計すると、回路方式にもよるが、400Vでの最大電流が高々1A強程度であり、いずれにせよ定格出力電圧800Vとそれよりも大幅に低い出力電圧400Vとの双方において800Wの出力電力を満足させることができない。
【0004】
このような電源装置においては、トランスの2次巻線に中間電圧タップを設け、その中間電圧タップに切り替えると低電圧大電流になり、400V−2Aの電力を出力できるようにしているものがある。しかし、タップ切替は、電源装置のハウジングを開けて切え替作業を行わなければならないので、手間がかかると同時に、切り替え時に必ず残留電荷の放電を確認して安全性を図らなければならないなど煩雑である。
【0005】
このようなことを避けるために、最大電流を供給できる大容量の電源を設計する必要があるが、例えば前記の例では、800V−2Aの電力容量、つまり1.6kWを出力できる容量の電源装置を製作しなければならない。その場合、トランスの大きさは、概略その最大電圧と最大電流との積に比例するので、1.6kWの電力容量をもつトランスが必要になり、これは伝達電力800Wの2倍程度となる。このことは、明らかにトランスを含む電源装置全体が大型化すると同時に、重量も増し、また、コストアップとなって不経済である。
【0006】
前記問題点を解決する発明も既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されている発明は、負荷電流の大小によって通常の全波整流回路と倍電圧整流回路との間で自動的に切替るよう動作して、ほぼ一定の電力を供給できる多機能の整流回路を実現している。この自動的な切替は、トランスの中間電圧タップの切替は勿論のこと、機械的スイッチ、半導体スイッチなど物理的な切替を一切必要とすることなく、電子的に行われる。しかも、例えば負荷が放電負荷の場合には、非常に簡単な回路構成で、かつインバータ回路の簡便な通常のパルス幅制御方法でもって、放電を発生させるのに必要な交流入力電圧のほぼ2倍の高い電圧を供給し、また、放電負荷が放電状態になって、低インピーダンスになるときには、前記初期の高い電圧よりも低い電圧であって、定常放電状態を維持するのに必要な直流定電力を供給できる。
【0007】
前掲の特許文献1に記載された直流電源は、電力変換効率を高めるために、共振インダクタンスと共振コンデンサとを並列共振させる並列型共振コンバータ回路である。共振コンバータ回路は正弦波状の共振電流波形を得ることができる。しかしながら、真空装置用の直流電源として共振コンバータ回路を用いた場合には次のような問題がある。真空装置に要求される負荷電力、つまり共振コンバータ回路に要求される直流出力電力は一般的に一定の電力が要求されるが、ガス条件やターゲット材料などの変更によって、前述したようにプラズマ電圧が大きく変化する。この場合にも、ほぼ一定の出力電力になるように共振コンバータ回路はパルス幅制御される。
【0008】
一般的に、共振コンバータ回路は定格電圧での動作時に合わせて設計されるので、定格電圧で動作しているときの共振コンバータは正弦波状の共振電流を出力するが、直流出力電圧が定格電圧から減少して行くのに伴い、共振電流の波形は正弦波状から離れて行く。例えば、出力電圧を定格電圧のほぼ1/2程度まで低くし、出力電流を定格電流のほぼ2倍まで増大なければならない場合、共振の原理から共振コンバータの共振電流は正弦波から離れた交流波形になるので、共振コンバータ回路の電力効率は低下し、ノイズも大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−191766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、負荷電圧及び負荷電流が大きく変化するときに、共振インダクタンス手段と共振コンデンサからなる直列共振回路における共振静電容量(共振キャパシタンス)の大きさが自動的に変更されて共振電流波形を正弦波状に、又は正弦波形に近づけるように改善し、広い負荷範囲にわたって直列共振コンバータの電力効率を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る直列共振型コンバータ回路は、一対の直流入力端子の間に接続される1組の第1、第2のスイッチング素子と第1、第2の1次側共振コンデンサをハーフブリッジ構成に接続してなるインバータ回路と、このインバータ回路に接続される1次巻線と2次巻線を有するトランスと、一対の直流出力端子の間に互いに直列に接続される第1の2次側共振コンデンサと第2の2次側共振コンデンサ及び直流出力端子の間に互いに直列に接続される第1の整流ダイオードと第2の整流ダイオードからなる多機能整流回路と、前記第1、第2の1次側共振コンデンサ及び前記第1、第2の2次側共振コンデンサによる共振キャパシタンスと協働して直列共振する共振インダクタンス手段とを備える。
【0012】
前記第1、第2の1次側共振コンデンサは、前記第1、第2の2次側共振コンデンサをトランスの1次側に換算したキャパシタンスとほぼ同じキャパシタンスを有し、このキャパシタンスは一般的に、直流出力側に備えられる平滑用コンデンサのキャパシタンスに比べてかなり小さい。定電力出力の場合、直流出力電圧が高くかつ直流出力電流が小さい負荷インピーダンス条件(以下、高負荷条件という。)のときには、前記共振インダクタンス手段は前記第1、第2の1次側共振コンデンサ及び前記第1、第2の2次側共振コンデンサによる共振キャパシタンスと直列共振を行う。しかし、直流出力電圧が低くかつ直流出力電流が大きい負荷インピーダンス条件(以下、低負荷条件という。)のときには、前記トランスの2次巻線を流れる電流の大部分は、前記第1、第2の2次側共振コンデンサに並列接続された2次側ダイオードと第1、第2の整流ダイオードとからなる全波整流回路を流れて整流されるので、前記第1、第2の2次側共振コンデンサは共振作用にほとんど寄与せず、前記共振インダクタンス手段は主として前記第1、第2の1次側共振コンデンサによる共振キャパシタンスと直列共振を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、定電力負荷の場合、負荷電圧及び負荷電流が大きく変化するときに、共振インダクタンス手段と共振コンデンサからなる直列共振回路における共振キャパシタンスが自動的に変化して共振電流波形を正弦波状に、又は正弦波形に近づけるので、共振キャパシタンスの切替機構などを用いることなく直列共振コンバータの電力損失やノイズを低減することができる。更に、高負荷インピーダンス状態になると、互いに直列接続された2次側共振コンデンサと互いに直列接続された整流ダイオードとが倍電圧整流回路を構成するので、スイッチング素子と並列の帰還用ダイオードに起因するリカバリー電流が流れないので、リカバリー損失、ノイズなどが生じない。
【0014】
また、請求項2〜請求項5の発明にあっては、前記効果の他に、共振回路から直流電源に帰還する電流、つまり進み電流が流れない回路構成にし、1次側共振コンデンサの電圧が直流電源電圧を越えないようにしたので、低負荷条件においても帰還用ダイオードにリカバリー電流が流れることは無い。したがって、より一層、電力損失を低減できると共に、ノイズを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1に係る直列共振型コンバータ回路を示す。
【図2】この直列共振型コンバータの高負荷条件時の第1の等価回路を示す。
【図3】この直列共振型コンバータの高負荷条件時の第2の等価回路を示す。
【図4】この直列共振型コンバータの低負荷条件時の第1の等価回路を示す。
【図5】この直列共振型コンバータの低負荷条件時の第2の等価回路を示す。
【図6】実施形態1にかかる直列共振型コンバータを説明するための電圧波形、電流波形を示す。
【図7】本発明の実施形態2に係る直列共振型コンバータ回路を示す。
【図8】実施形態2にかかる直列共振型コンバータを説明するための低負荷条件時における電圧波形、電流波形を示す。
【図9】本発明の実施形態3に係る直列共振型コンバータ回路を示す。
【図10】本発明の実施形態4に係る直列共振型コンバータ回路を示す。
【図11】本発明の実施形態5に係る直列共振型コンバータ回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明では、負荷が高インピーダンスになるときには実効的な共振キャパシタンスが減少し、負荷が低インピーダンスに変化するときには実効的な共振キャパシタンスが増大する。このように負荷インピーダンス条件で実効的な共振キャパシタンスが自動的に変化することによって、広範囲の負荷インピーダンスの領域で、共振電流の波形を正弦波状に改善することができる。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0017】
[実施形態1]
本発明に係る実施形態1の直列共振型コンバータ回路について、図1〜図6によって説明する。図1において、直流電源1は、正極の直流入力端子2と負極の直流入力端子3との間に接続される。直流電源1は、例えば、単相又は3相交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路とその直流電力を平滑化するフィルタ回路とからなる一般的なものである。蓄電池又は発電機などのエネルギー源を直流電源1としてもよい。また、直流電源1はPFC(力率改善回路)を含んだ整流器でもよい。その場合、PFCの後段に接続される本発明の直列共振型コンバータの入力電圧が安定化されるから動作態様が負荷変動だけを考えればいいので、発明の理解に好都合であり、以下の説明でも、直流入力端子2と3との間の直流電源電圧Eは一定値として説明する。
【0018】
インバータ回路4は、互いに直列に接続された第1、第2のスイッチング素子4Aと4Bと、互いに直列に接続された第1、第2の1次側共振コンデンサ4Cと4Dとをハーフブリッジ構成に接続した回路からなる。スイッチング素子4A、4Bには第1、第2の帰還用ダイオード4E、4Fがスイッチング素子4A、4Bの極性とは逆にそれぞれ並列に接続される。スイッチング素子4Aのアノード側及び1次側共振コンデンサ4Cの一端は直流入力端子2に接続され、スイッチング素子4Bのカソード側及び1次側共振コンデンサ4Dの一端は直流入力端子3に接続される。スイッチング素子4A、4Bとしては、FET又はIGBTなどの半導体素子を用いる。
【0019】
帰還用ダイオード4E、4Fは、外部に並列に接続されたダイオードやスイッチング素子4A、4Bのそれぞれの内部に形成されたものでもよい。スイッチング素子4A、4BがFETの場合には、FETが有する内部ダイオードを帰還用ダイオード4E、4Fとして利用することができる。なお、通常のFETやIGBTなどの半導体素子のほとんどが内部ダイオードを内蔵している。これらの帰還用ダイオード4E、4Fは、スイッチング素子4A又は4Bがオフしたときに、後で説明するトランスの励磁電流を直流電源1に帰還することにより、スイッチング素子4A又は4Bのターンオフ電圧を直流電源電圧Eに制限する機能もある。
【0020】
1次側共振コンデンサ4Cと4Dはそれぞれほぼ等しいキャパシタンスCpを有し、等価的に1次側共振コンデンサ4Cと4Dを並列接続したキャパシタンスに等しい並列合成キャパシタンス2Cpで、後に述べる直列共振に寄与する。さらに、共振インダクタンス手段5が1次側共振コンデンサ4Cと4Dとを接続する導線4yに接続される共に、トランス6の1次巻線6Aの一端に接続される。そして、トランス5の1次巻線6Aの他端がスイッチング素子4Aと4Bとを接続する導線4xに接続される。ここで、トランス6は1次巻線6Aに対する2次巻線6Bの巻数比nを有するものとする。1次巻線6A、2次巻線6Bに付された黒点は、巻線の極性を示す。共振インダクタンス手段5は導線4y側でなく、トランス5の1次巻線6Aの前記他端と導線4xとの間に接続されてもよい。
【0021】
トランス6の2次巻線6Bには、2次巻線6Bの交流電圧を整流する多機能整流回路7が接続される。多機能整流回路7は、互いに直列接続された整流用ダイオード7Aと7Bと、互いに直列接続された第1の2次側共振コンデンサ7Cと第2の2次側共振コンデンサ7Dと、2次側共振コンデンサ7C、7Dにそれぞれ並列に接続されてそれらの逆充電を防止する2次側ダイオード7Eと7Fとからなる。これら整流用ダイオード7Aと7B、2次側共振コンデンサ7Cと7D、2次側ダイオード7Eと7Fはいずれも直流出力端子8、9間に接続される。整流用ダイオード7Aと7Bとを接続する導線7xはトランス6の2次巻線6Bの一端に接続される。2次側共振コンデンサ7Cと2次側共振コンデンサ7Dとを接続する導線7yは、トランス6の2次巻線6Bの他端に接続される。また、直流出力端子8と9との間には、平滑用コンデンサ10、及び負荷インピーダンス範囲の広いDCプラズマ放電チャンバのような負荷11が接続される。この種の負荷は図1に示すようにプラス極を接地することができる。
【0022】
本発明では、2次側共振コンデンサ7Cと7Dは、相対的に小さな値のキャパシタンスCsを有するコンデンサが使用され、直流に対しては等価的に直列なのでキャパシタンスが1/2となるためにエネルギーバンクとしてのフィルタコンデンサの機能はほとんど有しない。このため、低リプルが要求される直列共振型コンバータの場合には、平滑用コンデンサ10を設ける。この平滑用コンデンサ10は2次側共振コンデンサ7Cと7Dの数十倍から100倍以上のキャパシタンスを有することが好ましい。多機能整流回路7については後述するが、高負荷条件(負荷11が高インピーダンス状態にある。)のときには倍電圧整流回路として働き、2次側共振コンデンサ7Cと7Dは直列共振に寄与する。しかし、低負荷条件(負荷11が低インピーダンス状態にある。)のときには、多機能整流回路7は大部分の整流電流に対して、通常の全波整流回路として働き、2次側共振コンデンサ7Cと7Dはほとんど直列共振に寄与しない。
【0023】
負荷11に供給される直流出力電圧Voは抵抗などの電圧検出器12を通して直流検出電圧vとして検出され、また、直流出力電流IoはホールCTなどの電流検出器13を通して電流信号iとして検出される。これら直流検出電圧vと検出電流信号iは乗算回路14に供給され、乗算回路14はv×iの演算を行って、負荷電力信号pを出力信号として誤差増幅器15に与える。誤差増幅器15は基準源16の電力設定信号sと負荷電力信号pとを比較して、誤差増幅信号eをパルス周波数発生回路17に与える。パルス周波数発生回路17は誤差増幅信号eに応じて、制御された周波数で、位相差180度の駆動パルス信号QとRをスイッチング素子4Aと4Bに与える。
【0024】
例えば、インバータ回路4の変換周波数を50kHzとし、オン時間は上下に位置するスイッチング素子4Aと4Bの同時導通を防止するためのデットタイム(休止時間)として1μsの時間をとって、半周期10μsの90%に等しい9μsの固定パルス幅とする。変換周波数は50kHzを上限周波数として、周波数を高くすることで出力電力を増加し、下げることで出力電力を低下するパルス周波数変調(PFM)制御方法を用いている。したがって、定格の最大出力の場合には、インバータ回路4の変換周波数は50kHzに近く、軽負荷時には、周波数が可聴周波数に近い周波数まで低下する制御方式とすることができる。
【0025】
なお、実際の直列共振型コンバータ回路では、信号系における直流電源1の電位と負荷11の電位の絶縁が必要であり、電圧検出器12、電流検出器13、乗算器14、誤差増幅器15.パルス周波数発生回路17、及びスイッチング素子4Aと4Bのゲート端子のいずれかの信号経路のどこかにフォトカプラ、パルストランスなどの信号絶縁素子が必要であるが、本発明の動作説明には不要なので省略した。
【0026】
また、図1、さらには後述するすべての実施形態において、共振インダクタンス手段5をトランス6と別個な部品として示しているが、トランス6のリーケージインダクタンスを利用して、共振インダクタンス手段5を不要とすること、もしくは共振インダクタンス手段5のインダクタンス値をリーケージインダクタンス分だけ小さくすることができる。さらに、共振インダクタンス手段5を個別部品とする場合には、トランス6の1次巻線6Aと直列に接続せずに、2次巻線6Bと直列に接続することもできる。したがって、所望の直列共振を行なうために必要なインダクタンスを呈する共振インダクタンス手段は、主として共振インダクタンス手段5からなる場合、又はトランス6の所望の大きさのリーケージインダクタンスを利用して個別のインダクタを用いない場合、あるいは共振インダクタンス手段5とトランス6のリーケージインダクタンスとを組み合わせた場合がある。ここでは、いずれの場合も共振インダクタンスLと言う。
【0027】
次に、DCプラズマ電源などの定電力負荷に対応するための本発明の特徴である1次側共振コンデンサ4C、4DのキャパシタンスCpと2次側共振コンデンサ7C、7DのキャパシタンスCsについて説明する。DCプラズマ電源などの定電力負荷にあっては、前述したように、2つの負荷状態、負荷11が高インピーダンス状態にある条件(高負荷条件)と、負荷11が低インピーダンス状態にある条件(低負荷条件)を有する場合が多い。本発明の直列共振型コンバータ回路では、以下に述べるように高負荷条件と低負荷条件とで共振状態が異なる。例えば、800Wの定電力負荷とすれば、高負荷条件は、高負荷電圧Vohが800V、小電流1Aの負荷条件となり、低負荷条件は、低負荷電圧Vollが400V、大電流2Aの条件となる。なお、これはあくまで一例であり、本発明はこれらの負荷電力、高負荷条件、低負荷条件の値に制限されるものではない。
【0028】
本発明では、高負荷条件の直流出力電力Poは、すべて2次側共振コンデンサ7Cと7Dの充放電サイクルで供給されるように、2次側共振コンデンサ7Cと7DのキャパシタンスCsを選定することが望ましい。2次側共振コンデンサ7Cと7DそれぞれのキャパシタンスCsは、直流出力電力Po、高負荷電圧Voh、変換周波数fsによる式、Cs=Po/(2×fs×Voh)とすることが望ましい。具体的な一例では、直流出力電力Poが800W,高負荷電圧Vohが800V、変換周波数fsが50kHzであるものとすると、2次側共振コンデンサ7Cと7DのキャパシタンスCsは、前記式から12.5nFとなる。この値は800W程度の直列共振型コンバータにおける一般的な平滑用コンデンサ10のキャパシタンスに比べて十分に小さい。
【0029】
また、本発明では、負荷インピーダンスの高低にかかわらず、直流出力電力Poは、1次側共振コンデンサ4C、4Dの充放電サイクルで供給されるように1次側共振コンデンサ4C、4DのキャパシタンスCpを選定する望ましい。したがって1次側共振コンデンサ4C、4DのキャパシタンスCpは、直流出力電力Po、直流電源電圧E、変換周波数fsによる式、Cp=Po/(2×fs×E)とすること望ましい。具体的な一例では、直流出力電力が800W、直流電源電圧Eが400V、変換周波数fsが50kHzの場合、1次側共振コンデンサ4C、4DのキャパシタンスCpは、前記式から50nFとなる。
【0030】
したがって、本発明の望ましい1次側共振コンデンサ4C、4DのキャパシタンスCpと望ましい2次側共振コンデンサ7Cと7DのキャパシタンスCsは、どちらも同一値の負荷電力を通過させるので、2次側共振コンデンサ7Cと7DのキャパシタンスCsをトランス6の1次側に換算した値はほぼ同値にならなければならない。前述したように、トランス6は1次巻線6Aに対する2次巻線6Bの巻数比がnであるものとすると、Cp=nCsとなる。したがって、本発明では結果的にCp=nCsを満足するような1次側共振コンデンサ4C、4DのキャパシタンスCpと2次側共振コンデンサ7Cと7DのキャパシタンスCsが決められる。
【0031】
次に、高負荷条件における図2に示す等価回路と、図2の等価回路をさらに単純化した図3に示す交流等価回路と、低負荷条件における図4に示す等価回路と、図4の等価回路をさらに単純化した図5に示す交流等価回路と、図6に示す電流波形図、電圧波形図を参照して、図1に示した本発明の第1の実施形態に係る直列共振型コンバータの動作を説明する。
【0032】
図2に示す等価回路では、説明を簡単にするために図1におけるトランス6を省略し、2次側回路の部材を1次側に等価変換している。等価変換によって、直流出力電圧VoはVo/nに変換される。上述したように、2次側共振コンデンサ7Cと7DのキャパシタンスCsをCp/nに選定すれば、2次側共振コンデンサ7Cと7DのキャパシタンスCsも1次側共振コンデンサ4C、4DのキャパシタンスCpと等しくなり、すべての共振コンデンサがキャパシタンスCpであると考えることができる。
【0033】
インバータ回路4は前述したようにハーフブリッジ構成であり、ハーフブリッジ型インバータ回路の原理的な出力電圧はE/2である。したがって、インバータ回路4の出力電圧はE/2であるものとする。一般に、多機能整流回路7が倍電圧整流回路として働く場合には、入力電圧であるインバータ回路4の出力電圧(E/2)の2倍の整流電圧Eを発生する。その整流電圧Eは等価的に直流出力電圧Voの1/nである。即ち、E=Vo/nとなる。したがって、巻き数比nは、n=Vo/Eとなり、実施形態1ではn=2にしている。図1の多機能整流回路7の両端には平滑用コンデンサ10が接続されているので、直流出力電圧Voは一定電圧とみなすことができる。1次側に等価変換した等価回路では直流出力電圧Voは電圧Eの等価蓄電池18に変換される。
【0034】
シミュレーションでは1次等価回路で行っているのでトランスを省略している。したがって、後述する実施形態における直流出力電圧Voが800Vで直流出力電流が1Aの場合は、シミュレーションの等価直流出力電圧Eが400Vで、等価直流出力電流が2Aに相当する。したがって、低負荷条件における実出力(400V×2A)はシミュレーションの等価出力(200V×4A)に相当する。1次側共振コンデンサ4C、4DのキャパシタンスCp、2次側共振コンデンサ7Cと7DのキャパシタンスCsは前述の値とした。
【0035】
本発明の直列共振型コンバータ回路では、定電力負荷のインピーダンスの高低、つまり高負荷条件と低負荷条件により直列共振動作の態様が変化する。したがって、以下では図2〜図5の1次等価回路を使用して高負荷条件の場合と低負荷条件の場合に分けて説明する。
【0036】
具体的に動作説明を行う前に、図6について説明する、図6(1)〜(3)は高負荷条件時の波形を示し、図6(1)は共振インダクタンス手段5を流れる共振電流Irの波形であり、正の部分の波形4aは半導体スイッチ4Aの電流波形、負の部分の波形4bは半導体スイッチ4Bの電流波形とほぼ同一であるので、半導体スイッチ4A、4Bの電流波形は省略した。図6(2)は第1の1次側共振コンデンサ4Cの電圧波形4cと第2の1次側共振コンデンサ4Dの電圧波形4d、図6(3)は第1の2次側共振コンデンサ7Cの電圧波形7cと第2の2次側共振コンデンサ7Dの電圧波形7dをそれぞれ示す。
【0037】
図6(4)〜(6)は低負荷条件時の波形を示し、図6(4)は共振インダクタンス手段5を流れる共振電流Irの波形であり、図6(1)と同様に正の部分の波形4aは半導体スイッチ4Aの電流波形、負の部分の波形4bは半導体スイッチ4Bの電流波形とほぼ同一であるので、半導体スイッチ4A、4Bの電流波形は省略した。図6(5)は第1の1次側共振コンデンサ4Cの電圧波形4cと第2の1次側共振コンデンサ4Dの電圧波形4d、図6(6)は第1の2次側共振コンデンサ7Cの1次側に等価変換した電圧波形7cと第2の2次側共振コンデンサ7Dの1次側に等価変換した電圧波形7dをそれぞれ示す。
【0038】
図6(7)は、第1の1次側共振コンデンサ4Cと第2の1次側共振コンデンサ4Dのキャパシタンスを共振動作に関与しない程度の大きな容量とした場合、すなわち、従来のハーフブリッジ型インバータ回路の単なる分圧用コンデンサとした場合における共振電流Irの波形を示す。
【0039】
先ず、高負荷条件の場合について説明する。高負荷条件の場合、前述したように直流出力電力Poは、すべて2次側共振コンデンサ7Cと7Dの充放電サイクルで供給されるように2次側共振コンデンサ7Cと7DのキャパシタンスCsを選定しているので、2次側共振コンデンサ7C、7Dはゼロ電圧まで放電しても、負極性までは充電されない。したがって、2次側共振コンデンサ7Cと7Dに並列接続された2次側ダイオード7Eと7Fは常に2次側共振コンデンサ7C、7Dの電圧が逆電圧としてかかるので導通しない。したがって、図1の2次側ダイオード7E、7Fは無いものとすることができるので、高負荷条件の場合の多機能整流回路7の等価回路は図2に示す倍電圧整流回路で表すことができる。
【0040】
前述したように直流出力電力Poがすべて1次側共振コンデンサ4C、4Dの充放電サイクルで供給されるように、1次側共振コンデンサ4C、4DのキャパシタンスCpを選定している。したがって、高負荷条件の場合、1次側共振コンデンサ4C、4Dはゼロ電圧まで放電しても、負極性までは充電されない。スイッチング素子4A、4Dは、共振電流の半周期中でオンさせるので、電流を遮断させないこと、また、単純化するためにトランス6の励磁電流を考えないので、励磁電流を遮断したときのバイパス回路となるスイッチング素子4A、4Dのそれぞれに並列の帰還用ダイオード4E、4Fは導通しない。したがって、図1の帰還用ダイオード4E、4Fは無いものとして説明することができる。
【0041】
図6における時刻t0以前では、図2に示すように、1次側共振コンデンサ4Dは図示極性で直流電源電圧E(「1」で示す。)に充電され、1次側共振コンデンサ4Cの充電電圧はゼロ(「0」で示す。)とする。また、2次側共振コンデンサ7Cは図示極性で直流出力電圧Vo、即ち、直流電源電圧E(「1」で示す。)に充電され、2次側共振コンデンサ7Dの充電電圧はゼロ(「0」で示す。)とする。
【0042】
時刻t0において、スイッチング素子4Aはオフ状態で、スイッチング素子4Bがオフからオンする。図2に示すように、正極の直流入力端子2から1次側共振コンデンサ4Cを通して流れる電流i1と、1次側共振コンデンサ4Dの放電による電流i2とが合流し、共振インダクタンス手段5を通して2次側に流れる。2次側では、共振インダクタンス手段5を流れる電流が2次側共振コンデンサ7C、C7Dに分流して流れる。分流した一方の電流i3は2次側共振コンデンサ7Cの放電電流として等価蓄電池18に流れ、分流した他方の電流i4は2次側共振コンデンサ7Dを充電して整流用ダイオード7Bのアノード側で電流i3と合流する。そして、合流した電流はダイオード7Bのカソード、スイッチング素子4Bを通ってから、電流i1が負極の直流入力端子3に戻り、他の電流i2がコンデンサ4Dの負極に戻る。
【0043】
この動作で、図6(2)に示すように、1次側共振コンデンサ4Cはゼロから直流電源電圧Eに向かって充電され、1次側共振コンデンサ4Dは全部の電荷を放電して充電電圧がゼロとなる。2次側共振コンデンサ7Dは、図6(3)に示すようにゼロから等価蓄電池18の電圧Voに向かって充電され、2次側共振コンデンサ7Cは全ての電荷を放電して充電電圧がゼロとなる。この結果、1次側共振コンデンサ4C、4D及び2次側共振コンデンサ7C、7Dの電圧は、スイッチング素子4Bがオンする前の初期条件と逆転する。以上の動作は、共振インダクタンス手段5と1次側共振コンデンサ4C、4Dの並列回路と、2次側共振コンデンサ7C、7Dの並列回路との直列共振動作となり、図6(1)に示すように、スイッチング素子4Bの電流は負の正弦半波4bとなる。時刻t1までスイッチング素子4Aはオフ状態を継続するが、スイッチング素子4Bは半周期が終わるまでオンさせる必要がなく、負の正弦半波の電流4bがゼロになったときにオフさせることもできる。
【0044】
次に、1次側共振コンデンサ4C、4D及び2次側共振コンデンサ7C、7Dの電圧がスイッチング素子4Bのオン前の初期条件と逆転した時刻t1の条件において、スイッチング素子4Bはオフ状態を継続し、スイッチング素子4Aがオフからオンに移行するものとする。この場合には、上記説明と正負極性の対照な動作が行われ、共振インダクタンス手段5の共振インダクタンスLと、1次側共振コンデンサ4C、4Dの並列回路と2次側共振コンデンサ7C、7Dの並列回路との合成共振キャパシタンスとの直列共振となり、図6(1)に示すように、スイッチング素子4Aの電流は正の正弦半波4aとなり、時刻t2で再び各共振コンデンサの初期条件が時刻t0に戻る。
【0045】
1次側共振コンデンサ4C、4D及び2次側共振コンデンサ7C、7Dの電圧がゼロからEまでの充放電動作をスイッチング周波数で繰り返すことにより、1次側共振コンデンサ4C、4Dの充放電エネルギーは電力として負荷11に転送されるので、直流出力電力Poは、Po=2×Cp×fs×E=2×Cs×fs×Eとなる。
【0046】
図2に示した等価回路を簡単な交流回路で表示すると、図3に示す回路となる。即ち、1次側共振コンデンサ4C、4Dの並列キャパシタンス2Cpと2次側共振コンデンサ7C、7Dの並列キャパシタンス2Csは直列となり、かつ前述からキャパシタンスCpとキャパシタンスCsとは等しいから、交流等価的に直列共振キャパシタンスはCpとなる。したがって、高負荷条件では、共振インダクタンス手段5、スイッチング素子4A、4Bを流れる共振電流の周波数frは、共振インダクタンス手段5の共振インダクタンスLと共振キャパシタンスCpとによる直列共振周波数となる。なお、Acは交流源、Zは負荷のインピーダンスを示す。
【0047】
1次側に等価変換した2次側共振コンデンサ7C、7DのキャパシタンスCsが1次側共振コンデンサ4C、4DのキャパシタンスCpとほぼ等しく、かつこれらキャパシタンスが平滑用コンデンサ10のキャパシタンスに比べて小さいという条件、並びに前述した回路構成を満足した上で、共振キャパシタンスCpと共振インダクタンス手段5の共振インダクタンスLとによる直列共振周波数frがインバータ回路4の変換周波数fs以上になるように、共振キャパシタンスCpと共振インダクタンスLとを選定すれば、スイッチング素子4A又は4Bがオンするとき、共振電流はゼロからスタートして、インバータ回路4の出力電流である共振電流Irは、図6(1)に示すように、休止期間のある正弦波となる。
【0048】
したがって、スイッチング素子4A又は4Bを前記直列共振周波数frよりも低い周波数でスイッチングさせれば、スイッチング素子4A、4Bのゼロ電流スイッチング(ZCS)を実現することができる。また、2次側共振コンデンサ7C、7Dの電圧は、等価的に直流電源電圧E以上とならないこと、又は2次側共振コンデンサ7C、7Dの電荷を直流入力端子2、3に放電する経路が整流用ダイオード7A、7Bによって阻止されていることから、高負荷条件では、帰還用ダイオード4Eと4F(図1)には電流が流れず、リカバリー現象は発生しない。以上のことから、インバータ回路4の電力損失を低減することができる。
【0049】
次に、等価直流出力電圧Eが約1/2となり、等価直流出力電流が2倍となる低インピーダンス負荷、つまり低負荷条件の場合の動作を説明する。高負荷条件では、2次側共振コンデンサ7C、7Dの充電電圧はEとなり、2次側共振コンデンサ7C、7Dの充電電荷QhはCs×Eである。しかし低負荷条件では、2次側共振コンデンサ7C、7Dの充電電圧はE/2となり、2次側共振コンデンサ7C、7Dの充電電荷QhはCs×E/2と高負荷条件時の半分になる。同時に、負荷電流が高負荷条件よりも約2倍と大きいので、高負荷条件で選定された2次側共振コンデンサ7C、7Dの小さなキャパシタンスCsでは高負荷条件の1/4の期間しか電流を供給できない。したがって、2次側共振コンデンサ7C、7Dの充電電圧はほぼゼロまで低下し、それ以降は2次側共振コンデンサ7C、7Dに並列接続された2次側ダイオード7E、7F(図1)が導通する。2次側共振コンデンサ7C、7Dからの放電電流期間が高負荷条件の1/4であることから、ほとんどの電流が2次側ダイオード7E、7Fを通して供給される。したがって、2次側共振コンデンサ7C、7Dの寄与分を無視し、すべての負荷電流が2次側ダイオード7E、7Fを通して流れると考えた場合、1次側換算等価回路は図4に示すようになる。
【0050】
即ち、多機能整流回路7は倍電圧整流回路でなく、整流用ダイオード7A、7Bと2次側ダイオード7E、7Fとからなる通常の全波整流回路となり、倍電圧機能は無くなる。つまり、低負荷条件では2次側共振コンデンサ7C、7Dが直列共振に寄与しない。したがって、図4に示す1次側換算等価回路は交流的には図5に示す交流回路で表すことができる。この交流回路から分かるように、低負荷条件における共振キャパシタンスは、高負荷条件の共振キャパシタンスのほぼ2倍の2Cpとなる。
【0051】
図1の実施形態では、1次側共振コンデンサ4C、4Dには、後述する実施形態のようにダイオードが並列接続されていない。このため、低負荷条件の場合、インバータ回路4を高負荷条件と同じ周波数で動作させると、図4に示すように1次側共振コンデンサ4C、4Dは直流電源電圧E以上に、又は負極性に充電される。このため、ハーフブリッジ構成のインバータ回路4の出力電圧はE/2以上となり、多機能整流回路7の整流電圧もE/2以上となる。直流出力電圧をE/2に制限するために、シミュレーションでは変換周波数を45kHzに下げている。また、1次側共振コンデンサ4Dは直流電源電圧E以上に充電されることから、直流電源1への帰還電流が帰還用ダイオード4E、4Fを通して流れる。
【0052】
図6(4)に示す共振電流Irの正の正弦半波4aと負の正弦半波4bとの間の期間、つまりスイッチング素子4Aと4Bの双方がオフの期間に帰還用ダイオード4E、4Fを通して帰還電流が流れる。このような前提で、低負荷条件の場合の動作を説明する。図6における時刻t0直前において、1次側共振コンデンサ4Dは直流電源電圧E以上に充電され、1次側共振コンデンサ4Cの充電電圧は負極性であるものとする。時刻t0において、スイッチング素子4Bがオンする。直流電源1の正極から1次側共振コンデンサ4Cを通して流れる電流i1と1次側共振コンデンサ4Dの放電電流i2とが合流して電流ioとなり、図6(4)に示すように、この電流ioが共振インダクタンス手段5を流れる。電流ioはさらに2次側ダイオード7Eを通して負荷11に流れ、整流用ダイオード7Bを通してからインバータ回路4のスイッチング素子4Bを流れ、スイッチング素子4Bの負極で電流i1と電流i2とに分流し、電流i1は直流入力端子3、つまり直流電源1の負極に、電流i2は1次側共振コンデンサ4Dの負極に戻る。
【0053】
以上の動作の結果、1次側、2次側の各共振コンデンサの電圧はスイッチング素子4Bがオンする前の初期条件と逆転する。以上の動作は、共振インダクタンス手段5の共振インダクタンスLと1次側共振コンデンサ4C、4Dの並列回路の共振キャパシタンス2Cpとの直列共振となり、図6(4)に示すように、スイッチング素子4Bの電流は負の正弦半波4bとなる。このとき1次側共振コンデンサ4Cは、図6(5)に示すように、直流電源電圧E以上に充電されているので、スイッチング素子4Bがオフになると、その直流電源電圧E以上の電荷は帰還電流として直流電源1及び帰還用ダイオード4Fを通して時刻t1まで流れる。
【0054】
次に、時刻t1でスイッチング素子4Aがオンすると、1次側共振コンデンサ4C、4Dの電圧はスイッチング素子4Bがオンする前の初期条件と逆転した条件で、図6(5)に示すように、上記説明と極性が対照な動作となり、スイッチング素子4Aは正の正弦半波の電流4aを流す。このとき、スイッチング素子4Aがオフになると、前述したのと同様に、その直流電源電圧E以上の電荷は帰還電流として直流電源1及び帰還用ダイオード4Eを通して時刻t2まで流れる。時刻t2で、再び1次側共振コンデンサ4C、4Dの初期条件が時刻t0と同じ状態に戻る。
【0055】
図4に示す1次側換算等価回路の交流的な等価回路は図5に示す回路となる。即ち、直列共振に関与するのは1次側共振コンデンサ4C、4Dのみとなるので、等価的な共振キャパシタンスは2Cpとなる。共振インダクタンス手段5、スイッチング素子4A、4Bを流れる共振電流の共振周波数fr2は、共振インダクタンス手段5の共振インダクタンスLと共振キャパシタンス2Cpとによる直列共振周波数となる。低負荷時の共振キャパシタンスは高負荷時の共振キャパシタンスに比べてほぼ2倍になるので、共振周波数fr2は高負荷条件時の共振周波数fr1よりも低い周波数(fr2<fr1)となる。
【0056】
したがって、インバータ回路4の変換周波数fsを、高負荷条件時の第1の共振周波数fr1ではなく、第2の共振周波数fr2に近い周波数となるように、スイッチング素子4A、4Bのスイッチングを制御する。この具体的な一例では、インバータ回路4の変換周波数fsはほぼ50kHzであり、低負荷時の第2の共振周波数fr2が高負荷条件時の共振周波数fr1よりも低い周波数である50kHzである。
【0057】
ここで、共振インダクタンス手段5の共振インダクタンスLの選定について説明する。以上述べたように、低負荷条件時では、高負荷条件の場合に比べて共振キャパシタンスがほぼ2倍の大きさになるので、当然、低負荷条件時における第2の共振周波数fr2は高負荷条件時の第1の共振周波数fr1よりも低くなり、共振インダクタンスLの選定は低負荷条件だけで考えればよい。即ち、共振インダクタンス手段5の共振インダクタンスLは、低負荷条件で1次側共振コンデンサの等価容量2Cpと直列共振して、かつ共振波形の半サイクルが変換周波数の半サイクルより短い時間になる値とすれば、スイッチング素子4A、4Bを流れる電流はゼロからスタートし、ゼロで終わることができ、ゼロ電流スイッチングを維持できる。シミュレーションの一例では、等価容量2Cpは100nFであり、直列共振周波数を変換周波数と同じ50kHzにして計算すると、共振インダクタンスLの値は101μHとなる。シミュレーションで確認すると、実施例と同じ100μHの値で、共振電流波形の半サイクルが、変換周波数の半サイクル10μs以内に収まっている。
【0058】
したがって、図6(7)に示す従来のハーフブリッジ型インバータ回路の共振電流に比べて、本発明の低負荷条件の場合における共振電流を正弦波形に改善することができ、電力損失を低減することができる。なお、従来のハーフブリッジ型インバータ回路の場合には、コンデンサ4C、4Dに対応するコンデンサとして5μFのキャパシタンスのコンデンサとし、共振インダクタンスを100μHとした。他はほとんど同じ条件で、シミュレーションを行った。この場合、5μFという大きなキャパシタンスのコンデンサは、ほぼ直流電源電圧Eの1/2の電圧に維持され、直列共振に寄与しない。したがって、高負荷条件の場合には、2次側共振コンデンサ7C、7Dに相当するコンデンサのキャパシタンスと共振インダクタンスLとの共振となる。低負荷条件では、前述から2次側共振コンデンサ7C、7Dに相当するコンデンサが無いもの見られるから、共振を行わないと見做すことができる。
【0059】
[実施形態2]
次に、図7及び図8によって本発明に係る第2の実施形態について説明する。図7に示す直列共振型インバータ回路が図1に示した回路と異なる点は、低負荷条件における前述した帰還電流を減少又はゼロにするために、1次側共振コンデンサ4C、4Dそれぞれに逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4G、4Hを接続したことである。したがって、以下にはこの異なる箇所に関連して説明を行う。図8は、逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4G、4Hを備えた以外は実施形態1と同一条件で低負荷条件におけるシミュレーションを行ったときの波形を示す。図8(1)は共振インダクタンス手段5を流れる共振電流Irの波形であり、図6と同様にスイッチ素子4Aの正の正弦波電流4aとスイッチ素子4Bの負の正弦波電流4bを合成した電流を示す。図8(2)は1次側共振コンデンサ4Cの電圧波形4cと1次側共振コンデンサ4Dの電圧波形4d、図8(3)は2次側共振コンデンサ7Cの電圧波形7cと2次側共振コンデンサ7Dの電圧波形7d、図8(4)は逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4Gを流れる電流の波形4gと逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4Hを流れる電流の波形4hをそれぞれ示す。
【0060】
先ず、2個の1次側共振コンデンサ4C、4Dそれぞれに接続されている逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4Gと4Hについて説明する。実施形態1で述べたように、高負荷条件の場合には、2次側共振コンデンサ7Cと7Dに並列接続された2次側ダイオード7Eと7Fは常に2次側共振コンデンサ7C、7Dの電圧が逆電圧としてかかるので導通しない。同様に逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4Gと4Hにも2次側共振コンデンサ7C、7Dの電圧が逆電圧としてかかるので導通しない。したがって、実施形態2の高負荷条件における等価回路は図2、図3と同様であり、動作は実施形態1と同様になるので、説明を省略する。
【0061】
しかし、低負荷条件の場合には、前述したように多機能整流回路7は通常の全波整流回路であって、倍電圧機能が無いので、1次側共振コンデンサ4Dの充電電圧が直流電源電圧Eを超えれば、1次側共振コンデンサ4Dに直列接続された逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4Gが導通し、他方、1次側共振コンデンサ4Dが負極性に充電されようとすれば、1次側共振コンデンサ4Dに並列接続された逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4Hが導通して図9(4)に示す電流4g、4hを流す。この点についてもう少し詳しく述べると、前述したようにして1次側共振コンデンサ4Dが充電され、その充電電圧が直流電源電圧Eを超えれば、その充電電圧と直流電源電圧Eとの差の電圧によって逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4Gが順バイアスされて導通する。1次側共振コンデンサ4Cについても同様であるので、説明を省略する。なお、図8(1)に示す共振電流Irの波形のスケールは図6(1)の共振電流Irの波形のスケールよりも大きく示した。
【0062】
また、1次側共振コンデンサ4Dが負極性に充電されれば、同様に逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4Hが順バイアスされて導通する。逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4H、4Gを流れる電流は直入力端子2、3に流れ直流電源1に帰還される。このとき、帰還用ダイオード4E、4Fは導通せず、帰還電流を流すことは無い。したがって、スイッチング素子4A、4Bがオフするときに、帰還用ダイオード4E、4Fを逆方向にリカバリー電流が流れることは無く、リカバリー損失が発生しない。1次側共振コンデンサ4C、4Dの充電電圧は図8(3)に示すようにほぼ直流電源電圧Eに制限される。
【0063】
この点、逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4G、4Hが無い実施形態1では、図6(5)に示したように、1次側共振コンデンサ4C、4Dは直流電源電圧Eを越える。したがって、実施形態1の低負荷条件では、スイッチング素子4A又は4Bを流れる正極性又は負極性の共振電流の次に、前述したようにスイッチング素子4B又は4Aと逆極性に並列接続された帰還用ダイオード4F又は4Eを通して直流電源1へ帰還電流が流れる。この帰還電流が帰還用ダイオード4F又は4Eを通して流れているときに、スイッチング素子4A又は4Bがオンすると、逆阻止特性が回復していない帰還用ダイオード4F又は4Eを逆方向に電流が流れるので、リカバリー損失、つまり電力損失が生じると共に、サージ電圧、ノイズ発生などの問題を引き起こす。
【0064】
しかし、実施形態2では逆充電防止兼電圧制限用ダイオード4G、4Hが1次側共振コンデンサ4C、4Dの電圧をほぼ直流電源電圧Eに制限し、スイッチング素子4A又は4Bと並列の帰還用ダイオード4E又は4Fが導通して直流電源1へ帰還電流を流すことが無いので、帰還用ダイオード4E又は4Fに起因するサージ電圧、ノイズを発生することはない。したがって、実施形態2では、原理的には帰還用ダイオード4E又は4Fは必要ない。なお、低負荷条件の場合、図7の交流的な等価回路は図5と同じになるものと考えられる。
【0065】
[実施形態3]
図9は、2次側の多機能整流回路7に同期整流を適用した第3の実施形態に係る直列共振型コンバータ回路を示す。前記実施形態における2次側の多機能整流回路7の整流用ダイオード7Aと7Bを整流用FET7Gと7Hに置き換えている。7I、7Jは整流用FET7G、FET7Hがそれぞれ有する内部ダイオードを示している。制御回路17からのゲート信号q、ゲート信号rで整流用FET7Gと7Hを交互に駆動する。1次側のインバータ回路4のスイッチング素子4A、4BとしてFETを用いたとき、インバータ回路4のFET4Aと多機能整流回路7の整流用FET7Gとが同一のゲート信号Qとゲート信号qで駆動され、インバータ回路4のFET4Bと多機能整流回路7の整流用FET7Hが同一のゲート信号Rとゲート信号rで駆動される。
【0066】
この直列共振型コンバータ回路では、1次側のインバータ回路4のスイッチ素子がオンするときに電流が流れる2次側の多機能整流回路7のダイオードを整流用FETの内部ダイオードに置き換えて、そのオン抵抗の小さいことによる電力損失を減少したものである。2次側の多機能整流回路7の整流用FET7G、7Hがダイオード動作をする以外は、図7の実施形態と同様であるので、説明を省略する。なお、ここでは多機能整流回路7の整流用ダイオード7A、7B及び整流用FET7G、7Hを一方向性素子という。
【0067】
[実施形態4]
図10は第4の実施形態に係る直列共振型コンバータ回路を示す。これは、図1に示した実施形態1におけるハーフブリッジ構成のインバータ回路4の2個の1次側共振コンデンサ4C、4Dを1個の1次側共振コンデンサ4Dにまとめた例である。他の回路構成は図1の回路構成とほぼ同じである。したがって、この実施形態の1次側共振コンデンサ4Dのキャパシタンスは図1の実施形態の1次側共振コンデンサのほぼ2個分のキャパシタンスを有する。800Wの前述の実施形態では、1次側共振コンデンサ4C、4DのキャパシタンスCpがそれぞれ50nFであったので、この1次側共振コンデンサ4Dのキャパシタンスはほぼ100nFとなる。
【0068】
この第4の実施形態に係る直列共振型コンバータ回路では、高負荷条件、低負荷条件とも図1と同様な波形となる。ただし、この実施形態4では実施形態2のように低負荷条件での帰還電流をなくすために、1次側共振コンデンサ4Dに並列に前述した逆充電防止兼電圧制限用のダイオードを接続することはできない。このダイオードを入れた場合、スイッチング素子4Bがオンしたときには、図10で1次側共振コンデンサ4Dの右側が正になる極性で1次側共振コンデンサ4Dが充電されるが、そのダイオードを通して短絡されるという不都合が生じる。しかし、この第4の実施形態に係る直列共振型コンバータ回路、第1の実施形態に係る直列共振型コンバータ回路に比べて、1次側共振コンデンサ4Dの個数を減らし、回路構成を簡単にできるという効果を奏すると共に、第1の実施形態に係る直列共振型コンバータ回路と同様な効果も得ることができる。
【0069】
[実施形態5]
図11に示す実施形態5の直列共振型コンバータ回路は、帰還電流の問題を解決すると共に、実施形態4と同様に一方の1次側共振コンデンサを削除できる。第5の実施形態の直列共振型コンバータ回路は図7に示した直列共振型コンバータ回路と比べると、1次側共振コンデンサ4Cを削除した回路構成になっている。他の回路構成は実質的に図7の回路構成と同じであるので、異なる箇所及び関連箇所について説明する。
【0070】
この実施形態5の直列共振型コンバータ回路では、スイッチ素子4Aがオンするとき、トランス6の1次巻線6A及び共振インダクタンス手段5を介して1次側共振コンデンサ4Dの図11の上側端子が正になる極性でこれを充電する。また、スイッチ素子4Bがオンするとき、トランス6の1次巻線6A及び共振インダクタンス手段5を介して1次側共振コンデンサ4Dの電荷を放電する。
【0071】
1次側共振コンデンサ4Dに並列のダイオード4Hは、1次側共振コンデンサ4Dが逆極性で充電、つまり、図11で、1次側共振コンデンサ4Dの上側端子の電圧が下側端子の電圧よりも低くなるように充電されると、ダイオード4Hが導通し、1次側共振コンデンサ4Dの逆極性充電を防止する。したがって、この実施形態5の直列共振型コンバータ回路は、簡素な回路構成で不都合を生ずることなく、前述したように、帰還用ダイオード4E又は4Fを通して帰還電流が流れないので、スイッチ素子4A、4Bのオン時に帰還用ダイオード4E又は4Fに起因するリカバリー損失やノイズを低減できるという効果を更に得ることができる。この実施形態5では、ダイオード4Gが1次側共振コンデンサ4Dの充電電圧の制限を行い、ダイオード4Hが1次側共振コンデンサ4Dの逆極性の充電を防止する働きを行う。
【0072】
以上述べたように本発明によれば、インバータ回路4の変換周波数をほぼ一定に保持して定電力出力を負荷に給電している状態で、負荷インピーダンスの変化によって直流出力電圧と直流出力電流が大きく変動しても、共振キャパシタンスが変化することにより共振周波数が変化する。したがって、この共振周波数の変化がインバータ回路4の変換周波数を含む範囲で行われるように、共振キャパシタンスと共振インダクタンスと変換周波数を選定することによって、変換周波数を変えずに定電力出力を維持した状態で、共振電流波形を正弦波に維持、あるいは正弦波に近づけることができるので、電力損失を軽減できる。また、帰還用ダイオード4E又は4Fに起因するサージ電圧、ノイズを発生しない。
【0073】
なお、前記実施形態ではパルス周波数変調制御を用いた例を説明したが、これは軽負荷時や異常時など、あるいは要求される負荷電力の変更に対応するためであって、原理的には他の制御方法でもよい。例えば、ある定電力状態にあるときには前述したようにインバータ回路4の変換周波数を一定にしているので、通常の負荷変動や入力変動に対しては少しのパルス幅変調制御で十分に対応できる。したがって、本発明は特に制御方法によって制限されるものではない。また、前述した変換周波数やキャパシタンスなどの具体的な値は一例であり、それら値に制限するものではない。さらに、以上述べた実施形態では最良の実施例として、第1、第2の2次側共振コンデンサ7C、7Dをトランス6の1次側に等価変換したとき、第1、第2の2次側共振コンデンサ7C、7Dは1次側共振コンデンサ4C、4Dと実質的に等しいキャパシタンスを有するものとして説明したが、第1、第2の2次側共振コンデンサ7C、7Dをトランス6の1次側に等価変換したとき、1次側共振コンデンサ4C、4Dのキャパシタンスと等しくなくとも、本発明の前述した効果を得ることができる。
【0074】
本発明における共振電流の波形では、高負荷条件と低負荷条件とで電流維持時間、つまり電流が流れない休止期間を有する場合が多く、図6(1)、(4)及び図8(1)に示すように休止期間が異なってくる。この休止期間は、電力供給の面から見れば、インバータ回路4側から負荷11に電力を供給しない無駄な時間である。したがって、一方のスイッチング素子のオンにより流れている共振電流がゼロになる点を検出し、その時点で一方のスイッチング素子のオン信号を遮断すると同時に、他方のスイッチング素子にオン信号を与えて直ちにオンさせれば、休止期間を短くでき、大きな電力を負荷に効率よく給電できる。周波数変調制御を維持しながら、このような最小休止期間制御を行えば、休止期間がほとんどないので共振電流がより正弦波形に近い波形になり、大電力を引き出せるばかりでなく、ノイズの低減も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の直列共振型コンバータ回路は、真空装置や通信用電源などを含む一般的な設備装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・直流電源
2、3・・・直流入力端子
4・・・インバータ回路
4A、4B・・・スイッチング素子
4C、4D・・・1次側共振コンデンサ
4E、4F・・・帰還用ダイオード
4G、4H・・・ダイオード
4x、4y・・・導線
5・・・共振インダクタンス手段
6・・・トランス
6A・・・1次巻線
6B・・・2次巻線
7・・・多機能整流回路
7A、7B・・・整流用ダイオード(一方向性素子)
7C、7D・・・2次側共振コンデンサ
7E、7F・・・2次側ダイオード
7G、7H・・・整流用FET(一方向性素子)
7I、7J・・・ダイオード
7x、7y・・・導線
8、9・・・直流出力端子
10・・・平滑用コンデンサ
11・・・負荷
12・・・検出抵抗
13・・・電流検出器
14・・・乗算回路
15・・・誤差増幅器
16・・・基準源
17・・・パルス周波数発生回路
18・・・等価蓄電池
E・・・直流電源1の電圧(直流電源電圧)
Cp・・・1次側共振コンデンサ4C、4Dのキャパシタンス
Cs・・・2次側共振コンデンサ7C、7Dのキャパシタンス
L・・・共振インダクタンス
Ir・・・共振電流
Po・・・直流出力電力
fs・・・インバータ回路4の変換周波数
fr・・・直列共振周波数
n・・・トランス6は1次巻線6Aに対する2次巻線6Bの巻数比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流入力電圧が印加される一対の直流入力端子の間に接続され、交互にオンオフする第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子を少なくとも有するインバータ回路と、
前記インバータ回路に接続される1次巻線と2次巻線を有するトランスと、
該トランスの前記1次巻線又は前記2次巻線と直列に接続されている共振インダクタンス手段と、
前記第1のスイッチング素子又は前記第2のスイッチング素子がオンするとき、前記共振インダクタンス手段及び前記トランスの前記1次巻線に直列に接続される1次側共振コンデンサと、
一対の直流出力端子の間に互いに直列に接続される第1の2次側共振コンデンサと第2の2次側共振コンデンサと、前記直流出力端子の間に互いに直列に接続される第1の一方向性素子と第2の一方向性素子とからなる多機能整流回路と、
を備え、
前記第1の2次側共振コンデンサと前記第2の2次側共振コンデンサとの接続点は、前記トランスの前記2次巻線の一端へ接続され、
前記第1の一方向性素子と前記第2の一方向性素子との接続点は、前記トランスの前記2次巻線の他端へ接続され、
前記直流出力端子間に接続される負荷が高インピーダンスであるとき、前記多機能整流回路が倍電圧整流回路として働くと共に、前記共振インダクタンス手段は前記1次側共振コンデンサと前記第1、第2の2次側共振コンデンサと協働して直列共振し、
前記直流出力端子間に接続される負荷が低インピーダンスであるときには、前記多機能整流回路が主に全波整流回路として働くと共に、前記共振インダクタンス手段は主に前記1次側共振コンデンサと協働して直列共振し、
広範囲の負荷インピーダンスにおいて前記スイッチング素子を流れる電流を正弦波に近づけることを特徴とする直列共振型コンバータ回路。
【請求項2】
請求項1に記載の直列共振型コンバータ回路おいて、
前記第1、第2の2次側共振コンデンサは、前記トランスの1次側に等価変換したとき、前記1次側共振コンデンサと実質的に等しいキャパシタンスを有することを特徴とする直列共振型コンバータ回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の直列共振型コンバータ回路おいて、
前記1次側共振コンデンサには逆充電防止兼電圧制限用ダイオードが並列又は直列に接続され、
前記逆充電防止兼電圧制限用ダイオードは、前記1次側共振コンデンサの充電電圧を前記直流入力端子の間の直流電源電圧に制限すると共に、前記1次側共振コンデンサが逆極性で充電されるのを防止することを特徴とする直列共振型コンバータ回路。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の直列共振型コンバータ回路おいて、
前記インバータ回路は、前記第1のスイッチング素子にその極性と逆極性に並列に設けられる第1の帰還用ダイオード、及び前記第2のスイッチング素子にその極性と逆極性に並列に設けられる第2の帰還用ダイオードを備えることを特徴とする直列共振型コンバータ回路。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の直列共振型コンバータ回路において、
前記第1、第2の2次側共振コンデンサのキャパシタンスよりも十分に大きいキャパシタンスを有する平滑用コンデンサが、一対の前記直流出力端子の間に接続されることを特徴とする直列共振型コンバータ回路。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の直列共振型コンバータ回路において、
前記第1、第2のスイッチング素子は、前記共振インダクタンス手段と前記1次側共振コンデンサで定まる共振周波数よりも低い周波数で動作することを特徴とする直列共振型コンバータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−114978(P2011−114978A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270337(P2009−270337)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】