説明

直流安定化電源回路

【課題】変換効率を向上させることができる直流安定化電源回路を提供すること。
【解決手段】一あるいは複数の絶縁型直流/直流変換回路を含んで直流安定化電源回路が構成されている。絶縁型直流/直流変換回路は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ200と、トランス300を介してインバータ200と接続されてトランス300から入力される交流電圧を直流電圧に変換する整流器400とを備える。インバータ200は、共通整流器100から延びる正負2種類の電源ラインの間に直列に挿入されて交互にオン/オフされる第1および第2の主スイッチと、これらの主スイッチをオンするときにその両端電圧が0Vであって流れる電流が0Aとなるように制御するソフトスイッチング部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統電源から供給される交流電圧を整流し、さらに直流/直流変換を行う直流安定化電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、系統電源から供給される交流電圧を整流した後、トランスを含む絶縁部によって直流/直流変換を行うことにより、バッテリに対して充電可能な直流電圧を生成する双方向DC/ACインバータが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この双方向DC/ACインバータの絶縁部では、第1のブリッジ回路19と第2のブリッジ回路20との間を、トランス18を介して接続することにより絶縁している。バッテリに対して直流電圧を印加する場合には、第2のブリッジ回路20で直流電圧が交流電圧に変換され、第1のブリッジ回路19で交流電圧が直流電圧に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−33800号公報(第5−11頁、図1−5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された回路構成では、単純に4つのトランジスタを用いて第2のブリッジ回路20が構成されており、直流電圧を交流電圧に変換する際に無駄が多く変換効率が悪いという問題があった。また、各トランジスタをオンからオフに切り替える際にサージ電圧が発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、変換効率を向上させることができる直流安定化電源回路を提供することにある。また、本発明の他の目的は、サージ電圧の発生を低減することができる直流安定化電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の直流安定化電源回路は絶縁型直流/直流変換回路を備える。絶縁型直流/直流変換回路は、印加される直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、第1のトランスを介してインバータと接続されてトランスから入力される交流電圧を直流電圧に変換する整流器とを含んで構成されている。インバータは、正負2種類の電源ラインの間に直列に挿入されて交互にオン/オフされる第1および第2の主スイッチと、第1および第2の主スイッチをオンするときにこのオンする主スイッチの両端電圧が0Vであってこの主スイッチを通して流れる電流が0Aとなるように制御するソフトスイッチング部とを有する。両端電圧が0Vで電流が0Aのときに主スイッチをオンすることにより、主スイッチをオンする際に生じる損失を低減することができ、変換効率を向上させることが可能となる。
【0007】
また、上述した第1の主スイッチに並列に接続された第1のコンデンサと、第2の主スイッチに並列に接続された第2のコンデンサとをさらに備えることが望ましい。主スイッチにコンデンサを並列接続することにより、一方の主スイッチをオフした際に発生するリカバリ電流でコンデンサを充電して両端電圧を所定の傾きで速やかに上昇させることができるため、両端電圧が0Vで電流が0Aのときに他方の主スイッチをオフすることができ、その際に生じる損失を低減して変換効率を向上させることが可能となる。
【0008】
また、上述したソフトスイッチング部は、第1および第2の主スイッチの接続点に一方端が接続された共振リアクトルと、共振リアクトルの他方端に二次巻線の中間タップが接続され、この二次巻線の両端のそれぞれが正負2種類の電源ラインのそれぞれと第1あるいは第2のスイッチを介して接続され、一次巻線の両端のそれぞれが正負2種類の電源ラインのそれぞれとダイオードを介して接続された第2のトランスとを備えることが望ましい。主スイッチと並列接続されたコンデンサと共振リアクトルとによる共振によって、主スイッチがオフされているときにこのコンデンサの両端電圧を0Vまで低下させることができ、これにより主スイッチをオンする際のソフトスイッチングが可能となる。
【0009】
また、上述した正負2種類の電源ラインの間には第3および第4のコンデンサが直列に挿入されており、第2のトランスの一次巻線は中間タップを有し、この中間タップが第3および第4のコンデンサの接続点に接続され、一次巻線の両端のそれぞれがインバータ内の正負2種類の電源ラインのそれぞれと別々にダイオードを介して接続されていることが望ましい。あるいは、上述した第2のトランスの一次巻線の両端のそれぞれは、インバータ内の正負2種類の電源ラインの両方と別々にダイオードを介して接続されていることが望ましい。第2のトランスの一次巻線側にダイオードを介した電流の経路を形成することにより、第1あるいは第2のスイッチをオフする際に第2のトランスの二次巻線に流れる電流を消滅させることができ、第2のトランスが飽和することを防止することができる。
【0010】
また、上述した第1および第2の主スイッチのオン/オフタイミングを制御する出力制御手段と、第1および第2のスイッチのオン/オフタイミングとを制御するソフトスイッチング制御手段とを有する制御回路をさらに備えることが望ましい。具体的には、上述した出力制御手段は、鋸波波形を有する信号を発生する鋸波発生回路と、整流器に流れる負荷電流に対応した基準電圧を発生する基準電圧発生回路と、鋸波波形の電圧と基準電圧とを比較する第1の電圧比較器と、第1の電圧比較器の出力に基づいて第1および第2の主スイッチを交互にオンする主スイッチ駆動手段とを備えることが望ましい。これにより、負荷電流に応じて周期的に主スイッチをオン/オフする制御を簡単な構成で実現することができる。
【0011】
また、上述したソフトスイッチング制御手段は、第1および第2の主スイッチをオンするタイミングを含む所定期間、第1および第2のスイッチをオンすることにより、第1および第2の主スイッチをオンする際にこのオンする主スイッチの両端電圧が0Vであってこの主スイッチを通して流れる電流が0Aとなるように制御することが望ましい。具体的には、上述したソフトスイッチング制御手段は、鋸波波形を有する信号を発生する鋸波発生回路と、整流器に流れる負荷電流に対応した第1の比較電圧を発生する第1の比較電圧設定回路と、整流器に流れる負荷電流に対応した第2の比較電圧を発生する第2の比較電圧設定回路と、鋸波波形の電圧と第1の比較電圧とを比較する第2の電圧比較器と、鋸波波形の電圧と第2の比較電圧とを比較する第3の電圧比較器と、第1あるいは第2の主スイッチをオンする前に第1あるいは第2のスイッチをオンする期間を第2の電圧比較器の出力に基づいて設定するとともに、第1あるいは第2の主スイッチをオンした後に第1あるいは第2のスイッチをオンする期間を第3の電圧比較器の出力に基づいて設定するオン期間設定回路と、オン期間設定回路の出力に基づいて第1および第2のスイッチを交互にオンするスイッチ駆動手段とを備えることが望ましい。これにより、負荷電流に応じて主スイッチをオンする前後のタイミングでスイッチをオン/オフする制御を簡単な構成で実現することができる。
【0012】
また、上述した第2のトランスの一次巻線の少なくとも一方端に接続され、この一方端に電圧サージが生じたときにこの一方端の電圧を所定値に固定するクランプ回路を備えることが望ましい。具体的には、上述したクランプ回路は、第2のトランスの一次巻線の端部と正負2種類の電源ラインの一方との間に接続されたダイオードと並列に接続されたコンデンサとダイオードからなる直列回路と、この直列回路を構成するコンデンサとダイオードの接続点と正負2種類の電源ラインの他方との間に接続された抵抗とを含んで構成されていることが望ましい。これにより、第2のトランスの一次巻線側に接続されたダイオードがターンオフした際に電圧サージが発生してもその電圧をクランプすることができる。
【0013】
また、上述した第2のトランスの二次巻線の少なくとも一方端に接続され、この一方端に電圧サージが生じたときにこの一方端の電圧を所定値に固定するクランプ回路を備えることが望ましい。具体的には、上述したクランプ回路は、第2のトランスの一次巻線の端部と正負2種類の電源ラインの一方との間に接続された第1あるいは第2のスイッチと並列に接続されたコンデンサとダイオードからなる直列回路と、この直列回路を構成するコンデンサとダイオードの接続点と正負2種類の電源ラインの他方との間に接続された抵抗とを含んで構成されていることが望ましい。これにより、第2のトランスの二次巻線側に接続されたスイッチがオフした際に電圧サージが発生してもその電圧をクランプすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態の直流安定化電源回路の全体構成を示す図である。
【図2】共通整流器の詳細構成を示す図である。
【図3】インバータおよび整流器の詳細構成を示す図である。
【図4】インバータおよび整流器の各部の電流/電圧波形を示す図である。
【図5】図4にAで示す範囲の電圧波形の拡大図である。
【図6】図4にBで示す範囲の電圧波形の拡大図である。
【図7】モード0の動作状態を示す図である。
【図8】モード1の動作状態を示す図である。
【図9】モード2の動作状態を示す図である。
【図10】モード3の動作状態を示す図である。
【図11】モード4、5の動作状態を示す図である。
【図12】制御回路の構成を示す図である。
【図13】制御回路の動作タイミング図である。
【図14】クランプ回路を追加したインバータの変形例を示す図である。
【図15】励磁トランスを変更したインバータの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態の直流安定化電源回路について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、一実施形態の直流安定化電源回路の全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の直流安定化電源回路1は、共通整流器100、インバータ200、トランス300、整流器400を含んで構成されている。インバータ200、トランス300、整流器400によって絶縁型直流/直流変換回路が構成されている。なお、図1に示す構成では、インバータ200、トランス300、整流器400からなる絶縁型直流/直流変換回路が2組備わっているが、1組あるいは3組以上が備わるようにしてもよい。
【0017】
共通整流器100は、系統電源から供給される三相交流電圧を整流して直流電圧を生成する。インバータ200は、共通整流器100から出力される直流電圧を交流電圧に変換する。この交流電圧はトランス300の一次巻線に印加される。整流器400は、トランス300の二次巻線に現れる交流電圧を整流して直流電圧を生成する。
【0018】
上述した直流安定化電源回路1は、例えば電気自動車に搭載された電池を充電するために用いられる。この場合には、電気自動車に設けられた充電用端子に整流器400の出力端子が接続され、整流器400から電気自動車に搭載された電池に対して充電用の電流(負荷電流)が供給される。
【0019】
図2は、共通整流器100の詳細構成を示す図である。図2に示すように、共通整流器100は、インダクタ102、104、106、主スイッチ110、112、114、116、コンデンサ120、122、124、126、インダクタ140、142、スイッチ144、146、コンデンサ130、132を備えている。なお、図2において、主スイッチ110、112、114、116に含まれるダイオードは寄生ダイオードである。
【0020】
インダクタ102、104、106のそれぞれは、系統電源の各相の電源ラインに挿入されている。4つの主スイッチ110、112、114、116によってHブリッジ回路が構成されており、インダクタ102、106を介して入力される交流電圧がこのHブリッジ回路によるスイッチングにより整流される。なお、主スイッチ110にはコンデンサ120が、主スイッチ112にはコンデンサ122が、主スイッチ114にはコンデンサ124が、主スイッチ116にはコンデンサ126が、それぞれ並列接続されている。
【0021】
また、インダクタ140、142、スイッチ144、146は、ソフトスイッチングを行うためのものである。インダクタ140、142は共振リアクトルである。インダクタ140とスイッチ144の直列回路の一方端がインダクタ102が挿入された電源ラインに接続され、他方端がインダクタ104が挿入された電源ラインに接続されている。また、インダクタ142とスイッチ146の直列回路の一方端がインダクタ106が挿入された電源ラインに接続され、他方端がインダクタ104が挿入された電源ラインに接続されている。さらに、インダクタ104が挿入された電源ラインと上述したHブリッジ回路の2つの出力端のそれぞれの間にはコンデンサ130、132が接続されている。
【0022】
本実施形態の共通整流器100は、Hブリッジ回路によるスイッチングとスイッチ144、146によるソフトスイッチングとを併用したARCP(アクティブ補助共振ブリッジリンク)方式の整流器であり、系統電源から供給された三相交流電圧を整流して、例えば800Vの直流電圧を生成する。
【0023】
なお、ソフトスイッチングの詳細動作については従来の各種手法を適用することができる。また、上述した説明では、ハードスイッチングとソフトスイッチングを併用した共通整流器100について説明したが、ハードスイッチングのみを用いて整流を行うようにしてもよい。
【0024】
図3は、インバータ200および整流器400の詳細構成を示す図である。図3に示すように、インバータ200は、主スイッチ210、212、コンデンサ214、216、インダクタ220、スイッチ222、224、ダイオード226、228、トランス230を備えている。なお、図3において、主スイッチ210、212、スイッチ222、224に含まれるダイオードは寄生ダイオードである。
【0025】
このインバータ200は、共通整流器100に接続される3つの入力端子a、b、cを有している。入力端子aは、共通整流器100内のコンデンサ130に一方端から延びる正極側電源ラインに接続されている。入力端子bは、共通整流器100内のコンデンサ132の一方端から延びる負極側電源ラインに接続されている。入力端子cは、共通整流器100内の2つのコンデンサ130、132のそれぞれの他方端であってこれらの接続点から延びる電源ラインに接続されている。また、インバータ200は、トランス300に接続される2つの出力端子d、eを有している。これら2つの出力端子d、eは、トランス300の一次巻線の両端に接続される。
【0026】
一方の主スイッチ210は、入力端子aと出力端子dとの間に接続されている。この主スイッチ210にはコンデンサ214が並列接続されている。また、他方の主スイッチ212は、入力端子bと出力端子dとの間に接続されている。この主スイッチ212にはコンデンサ216が並列接続されている。これら2つの主スイッチ210、212によってハードスイッチングが行われる。
【0027】
トランス230は、一次巻線および二次巻線のそれぞれに中間タップを有する。一次巻線側の中間タップは、入力端子cおよび出力端子eに接続されている。二次巻線側の中間タップは、共振リアクトルとしてのインダクタ220を介して出力端子dに接続されている。トランス230の一次巻線の一方端はダイオード226を介して入力端子aに接続され、一次巻線の他方端はダイオード228を介して入力端子bに接続されている。また、トランス230の二次巻線の一方端はスイッチ222を介して入力端子aに接続され、二次巻線の他方端はスイッチ224を介して入力端子bに接続されている。
【0028】
上述したコンデンサ214、216、インダクタ220、スイッチ222、224、ダイオード226、228、トランス230を用いてソフトスイッチングが行われる。
【0029】
また、図3に示すように、整流器400は、ダイオード410、412、414、416、インダクタ420、コンデンサ422を備えている。この整流器400は、2つの入力端子f、gと2つの出力端子h、iを有している。2つの入力端子f、gは、トランス300の二次巻線の両端に接続されている。また、2つの出力端子h、iは、直流安定化電源回路1の出力端子であり、例えば電気自動車の充電用端子に接続される。
【0030】
ダイオード410、412の接続点が一方の入力端子fに接続されており、ダイオード414、416の接続点が他方の入力端子gに接続されている。これら4つのダイオード410、412、414、416によってHブリッジ回路が構成されており、トランス300の二次巻線から入力される交流電圧が整流される。この整流出力は、インダクタ420およびコンデンサ422によって構成される回路によって平滑されて出力端子h、iから出力される。
【0031】
上述したトランス300が第1のトランスにそれぞれ対応する。主スイッチ210が第1の主スイッチに、主スイッチ212が第2の主スイッチにそれぞれ対応する。コンデンサ214、216、スイッチ222、224、ダイオード226、228、トランス230がソフトスイッチング部に対応する。コンデンサ214が第1のコンデンサに、コンデンサ216が第2のコンデンサに、コンデンサ130が第3のコンデンサに、コンデンサ132が第4のコンデンサにそれぞれ対応する。スイッチ222が第1のスイッチに、スイッチ224が第2のスイッチに、トランス230が第2のトランスにそれぞれに対応する。
【0032】
本実施形態の直流安定化電源回路1はこのような構成を有しており、次に、インバータ200、トランス300、整流器400による直流/直流変換動作を説明する。
【0033】
図4は、インバータ200および整流器400の各部の電流/電圧波形を示す図であり、スイッチングの2周期分の波形が示されている。図4(A)において点線で示された「VQ2」はインバータ200内の主スイッチ212の両端電圧を、実線で示された「IQ2」は主スイッチ212に流れる電流をそれぞれ示している。図4(B)において「iLr」はインバータ200内のインダクタ220(共振リアクトル)に流れる電流を示している。図4(C)において「IO 」は整流器400内のインダクタ420に流れる負荷電流(出力電流)を示している。図5は、図4にAで示す範囲の電圧波形の拡大図である。また、図6は図4にBで示す範囲の電圧波形の拡大図である。なお、図5および図6に示す電圧波形は動作状態に応じてモード(MODE)0〜5に6分割されている。
【0034】
以下、モード0〜5の各動作状態について説明する。図5の各モードにおける主スイッチ210等の状態を以下に示す。なお、ソフトスイッチングを行わず、ハードスイッチングのみを行う従来手法では、モード0→モード1→モード5の順番で動作状態が遷移する。
【0035】
モード 0 1 2 3 4 5
主スイッチ210 ON OFF OFF OFF OFF OFF
主スイッチ212 OFF OFF OFF OFF ON ON
スイッチ222 OFF OFF OFF OFF OFF OFF
スイッチ224 OFF OFF ON ON ON ON
(モード0)
図7は、モード0の動作状態を示す図である。なお、図7〜図11までの各図においては、共通整流器100、インバータ200、トランス300のそれぞれの等価回路が示されている。例えば、トランス300やインバータ200内のトランス230は、理想トランスと励磁インダクタンスとの組合せとして表現されている。また、共通整流器100では、コンデンサ130、132の前段部分が800Vの直流電源で表現されている。また、Routは負荷抵抗を示しており、例えば充電対象となる電池に相当する。
【0036】
モード0では、主スイッチ210がオンされ、他の主スイッチ212、スイッチ222、224が全てオフされている。このとき、主スイッチ212の両端電圧VQ2は、直流電源の電圧と同じ800Vとなるとともに、主スイッチ212はオフされているため主スイッチ212に流れる電流IQ2は0Aとなる(図5:モード0)。この状態では、トランス300の一次巻線側では、図7に矢印C0で示すように、直流電源→主スイッチ210→トランス300の一次巻線→コンデンサ132→直流電源の経路で電流が流れる。また、トランス300の二次巻線側では、図7に矢印C1で示すように、ダイオード416、410を介した経路で電流が流れる。
【0037】
(モード1)
図8は、モード1の動作状態を示す図である。モード1では、主スイッチ210がオンからオフに切り替えられる。主スイッチ210にはコンデンサ214が並列接続されているため、主スイッチ210をオフするとコンデンサ214に電流が転流する。このため、モード0からモード1に切り替わる際に、主スイッチ210の両端電圧は、瞬時ではなく所定の傾きで速やかに上昇する。これに伴って、主スイッチ212の両端電圧VQ2は、800Vから所定の傾きで速やかに減少し、その後800Vの半分の400Vで維持される。この状態では、トランス300の一次巻線の一方端に主スイッチ212の両端電圧VQ2(=400V)が印加されるが、この一次巻線の他方端にもコンデンサ130、132の接続点から同じ400Vの電圧が印加されるため、一次巻線の両端電圧が0Vになり、トランス300の二次巻線の両端電圧も0Vとなる。トランス300の二次巻線側では、4つのダイオード410、412、414、416を介して電流が流れる。
【0038】
(モード2)
図9は、モード2の動作状態を示す図である。モード2では、スイッチ224がオンされる。これにより、図9に矢印C2で示すように、トランス300の一次巻線、インダクタ220、トランス230の二次巻線の一部、スイッチ224を介した経路で電流が流れる。また、トランス230の二次巻線の一部に電流が流れると、一次巻線の一部にも電流が流れ、図9に矢印C3で示す経路で電流が流れる。なお、トランス230の一次巻線の他の部分および二次巻線の他の部分には、ダイオード226やオフ状態のスイッチ222およびこの寄生ダイオードが直列に接続されているため、これらには電流は流れない。一方、トランス300の一次巻線に電流が流れることで、二次巻線にも電流が流れる。この二次巻線に流れる電流は、図9では矢印C4で示されている。
【0039】
ところで、トランス230の一次巻線に流れる電流はインダクタ220を経由して流れる。このとき、インダクタ220の両端の電位差は200Vであり、インダクタ230に200Vが印加されて電流iLrが直線的に増加する(図5:モード2)。電流iLrが負荷電流IO に相当する値(具体的には、トランス300の一次巻線と二次巻線の巻数比をn:1とすると、負荷電流IO に(1/n)を乗じた値)に達すると、モード2が終了する。
【0040】
(モード3)
図10は、モード3の動作状態を示す図である。インダクタ220に流れる電流iLrが負荷電流IO に相当する値に達してモード3の状態に移行すると、トランス300の二次巻線側では、ダイオード410、416がターンオフし、C5で示す経路で電流が流れる。トランス300の一次巻線側では、主スイッチ212に並列に接続されたコンデンサ216とインダクタ220との共振によりC6で示す経路で電流が流れ、インダクタ220に流れる電流iLrが増加した後減少する。このとき、主スイッチ212の両端電圧(コンデンサ216の両端電圧)は、400Vからなだらかに減少し、ほぼ0Vに到達すると、モード3が終了する。
【0041】
(モード4、5)
図11は、モード4、5の動作状態を示す図である。主スイッチ212の両端電圧がほぼ0Vに到達すると主スイッチ212がオンされ、モード4の状態に移行する。主スイッチ212がオンされると、主スイッチ212に流れる電流IQ2が徐々に増加するとともにインダクタ220に流れる電流iLrが徐々に減少する。インダクタ220に流れる電流iLrがほぼ0Aに達すると、モード4が終了する。その後、モード5に移行し、トランス230の励磁電流が0Aになると、モード5が終了する。
【0042】
上述した説明では、主スイッチ210がオンされた状態から主スイッチ212がオンされた状態に移行する場合について説明したが、反対に、主スイッチ212がオンされた状態から主スイッチ210がオンされた状態に移行する場合も、基本的に同様の手順でモードが遷移する。但し、この場合には、スイッチ224の代わりにスイッチ222が使用される。図6のモード0〜5は、主スイッチ212がオンされた状態から主スイッチ210がオンされた状態に移行する場合のモード変化を示している。図6の各モードにおける主スイッチ210等の状態を以下に示す。
【0043】
モード 0 1 2 3 4 5
主スイッチ210 OFF OFF OFF OFF ON ON
主スイッチ212 ON OFF OFF OFF OFF OFF
スイッチ222 OFF OFF ON ON ON ON
スイッチ224 OFF OFF OFF OFF OFF OFF
次に、インバータ200の動作タイミングを制御する制御回路について説明する。上述したインバータ200には、主スイッチ210、212およびスイッチ222、224ののオン/オフのタイミングを制御する制御回路500が接続されている。図12は、制御回路500の構成を示す図である。
【0044】
図12に示すように、制御回路500は、鋸波発生回路510、基準電圧発生回路512、アナログ乗算器(あるいは乗数値nに相当するゲインが設定された増幅器)514、電圧比較器516、524、526、Vta設定回路520、Vtb設定回路522、排他的論理和回路528、反転回路530、トグル信号発生回路540、遅延回路542、論理積回路544、546、548、550を備えている。
【0045】
鋸波発生回路510は、主スイッチ210、212やスイッチ222、224のスイッチング周波数の2倍の周波数を有する鋸波波形の信号を発生する。基準電圧発生回路512は、整流器400の負荷電流IO に対応した基準電圧Vsuv を発生する。なお、インバータ200と整流器400は巻線比がn:1のトランス300を介して接続されているため、負荷電流IO をアナログ乗算器でn倍した電流値が基準電圧発生回路512に入力されており、基準電圧発生回路512はこのn倍した電流値に対応する基準電圧Vsuv を発生する。また、負荷電流IO は、整流器400内のインダクタ420と直列に挿入された電流センサ(図示せず)によって検出される。
【0046】
電圧比較器516は、マイナス入力端子に鋸波発生回路510から出力される鋸波信号が入力され、プラス入力端子に基準電圧発生回路512から出力される基準電圧Vsuv が入力されている。電圧比較器516は、基準電圧Vsuv の方が鋸波信号の電圧よりも高いときにハイレベルの信号を出力し、基準電圧Vsuv の方が鋸波信号の電圧よりも低いときにローレベルの信号を出力する。この電圧比較器516の出力は、論理積回路544、546のそれぞれの一方の入力端に入力される。
【0047】
Vta設定回路520は、鋸波信号の電圧と比較される比較電圧Vtaを発生する。この比較電圧Vtaは、電圧センサによって検出された共通整流器100の直流電源の電圧Vin(インバータ200の入力端子a−b間の電圧)に応じて設定され、電源電圧の変動があったときにこの変動分が反映される。Vtb設定回路522は、鋸波信号の電圧と比較される比較電圧Vtbを発生する。上述した比較電圧Vta、Vtbの具体例については後述する。
【0048】
電圧比較器524は、マイナス入力端子に鋸波発生回路510から出力される鋸波信号が入力され、プラス入力端子にVta設定回路520から出力される比較電圧Vtaが入力されている。電圧比較器524は、比較電圧Vtaの方が鋸波信号の電圧よりも高いときにハイレベルの信号を出力し、比較電圧Vtaの方が鋸波信号の電圧よりも低いときにローレベルの信号を出力する。
【0049】
電圧比較器526は、プラス入力端子に鋸波発生回路510から出力される鋸波信号が入力され、マイナス入力端子にVtb設定回路522から出力される比較電圧Vtbが入力されている。電圧比較器526は、比較電圧Vtbの方が鋸波信号の電圧よりも高いときにローレベルの信号を出力し、比較電圧Vtbの方が鋸波信号の電圧よりも低いときにハイレベルの信号を出力する。
【0050】
排他的論理和回路528は、2つの電圧比較器524、526の出力の排他的論理和を出力する。反転回路530は、排他的論理和回路528の出力信号の論理を反転する。この反転回路530の出力は、論理積回路548、550のそれぞれの一方の入力端に入力される。
【0051】
トグル信号発生回路540は、主スイッチ210等をオンにするタイミングを切り替えるトグル信号Vtgl を発生する。このトグル信号Vtgl は、論理積回路544の他方の入力端に直接入力されるとともに、論理積回路546の他方の入力端に反転入力される。
【0052】
遅延回路542は、トグル信号発生回路540から出力されるトグル信号Vtgl を所定時間遅延させる。例えば、トグル信号Vtgl の1/4周期分の遅延時間が設定されている。遅延回路542を通すことにより1/4周期分遅延させたトグル信号は、論理積回路548の他方の入力端に直接入力されるとともに、論理積回路550の他方の入力端に反転入力される。なお、この遅延されたトグル信号は、反転回路530から出力される信号がハイレベルになる順番(奇数番目と偶数番目)を振り分けることができればよいため、遅延量は必ずしも1/4周期分以外であってもよい。
【0053】
上述した鋸波発生回路510、基準電圧発生回路512、アナログ乗算器514、電圧比較器516、トグル信号発生回路540、論理積回路544、546が出力制御手段に対応する。鋸波発生回路510、Vta設定回路520、Vtb設定回路522、電圧比較器524、526、排他的論理和回路528、反転回路530、トグル信号発生回路540、遅延回路542、論理積回路548、550がソフトスイッチング制御手段に対応する。電圧比較器516が第1の電圧比較器に、電圧比較器524が第2の電圧比較器に、電圧比較器526が第3の電圧比較器にそれぞれ対応する。排他的論理和回路528、反転回路530がオン期間設定回路に、トグル信号発生回路540、論理積回路544、546が主スイッチ駆動手段に、トグル信号発生回路540、遅延回路542、論理積回路548、550がスイッチ駆動手段に、Vta設定回路520が第1の比較電圧設定回路に、Vtb設定回路522が第2の比較電圧設定回路にそれぞれ対応する。
【0054】
制御回路500はこのような構成を有しており、次に、制御回路500の動作を説明する。図13は、制御回路500の動作タイミング図である。図13において、Aは図4に示した範囲Aに、Bは図4に示した範囲Bに対応しており、これらの範囲A、Bに含まれるモード0〜5は、図5あるいは図6に含まれるモード0〜5に対応している。また、図13に示すQ1等は以下の内容の信号である。
【0055】
Q1:論理積回路544から出力されて主スイッチ210のベースに入力される信号、
Q2:論理積回路546から出力されて主スイッチ212のベースに入力される信号、
Qsn1:論理積回路548から出力されてスイッチ222のベースに入力される信号、
Qsn2:論理積回路550から出力されてスイッチ224のベースに入力される信号、
鋸波:鋸波発生回路510から出力される信号、
比較器出力(516):電圧比較器516から出力される信号、
トグル信号:トグル信号発生回路540から出力される信号、
比較器出力(524):電圧比較器524から出力される信号、
比較器出力(526):電圧比較器526から出力される信号、
反転出力(530):排他的論理和回路528から出力された信号を反転回路530で反転した信号、
トグル信号(遅延):トグル信号発生回路540から出力された信号を遅延回路542を介して所定時間遅延させた信号。
【0056】
鋸波発生回路510から鋸波信号が出力され、基準電圧発生回路512から基準電圧Vsuv が出力されると、電圧比較器516からはこれら2つの信号の電圧の高低に応じた信号が出力される(図13:鋸波、比較器出力(516))。トグル信号発生回路540から出力されるトグル信号Vtgl は、電圧比較器516の出力信号を1周期毎交互に主スイッチ210と主スイッチ212に入力するためのものである。トグル信号Vtgl がハイレベルのときに、電圧比較器516の出力信号が論理積回路544を通して主スイッチ210に入力され、この入力された信号がハイレベルの期間に対応して主スイッチ210がオンされる(図13:トグル信号、Q1)。反対に、トグル信号Vtgl がローレベルのときに、電圧比較器516の出力信号が論理積回路546を通して主スイッチ212に入力され、この入力された信号がハイレベルの期間に対応して主スイッチ212がオンされる(図13:トグル信号、Q2)。負荷電流IO が多くなるとこの電流値に対応して設定される基準電圧Vsuv が高くなり、電圧比較器516の出力がハイレベルになる期間も長くなる。これにより、主スイッチ210、212のオンデューティが増加し、インバータ200からトランス300を介して整流器400に供給される電流(電力)が増すようになっている。
【0057】
また、鋸波発生回路510から鋸波信号が出力され、Vta設定回路520から比較電圧Vtaが出力されると、電圧比較器524からはこれら2つの信号の電圧の高低に応じた信号が出力される(図13:鋸波、比較器出力(524))。この電圧比較器524の出力信号がハイレベルとなる期間は、モード2とモード3をあわせた時間に対応している。
【0058】
また、鋸波発生回路510から鋸波信号が出力され、Vtb設定回路522から比較電圧Vtbが出力されると、電圧比較器526からはこれら2つの信号の電圧の高低に応じた信号が出力される(図13:鋸波、比較器出力(526))。この電圧比較器526の出力信号がローレベルとなる期間は、モード4とモード5をあわせた時間に対応している。
【0059】
ところで、図6に示すように、モード2(モード4も同じ)の期間の長さをTl 、モード3の期間の長さをTr とすると、これらは以下の式で表すことができる。
【0060】
Tl =2n・Lr・IO/Vin
Tr =π√(Lr・2Cr)
ここで、nはトランス300の巻数比、Lr はインダクタ220のインダクタンス、IO は負荷電流値、Vinは直流電源の電圧、Crはコンデンサ214、216の静電容量である。
【0061】
このように、モード2の長さはIO とVinとに基づいて決まる値であり、Vta設定回路520は、検出した負荷電流IO と直流電源の電圧Vinとに基づいて、モード2とモード3の各期間を合計した時間で電圧比較器524の出力がハイレベルになるように比較電圧Vtaを設定する。同様に、Vtb設定回路522は、検出した負荷電流IO と直流電源の電圧Vinとに基づいて、モード4とモード5の各期間を合計した時間で電圧比較器526の出力がハイレベルになるように比較電圧Vtbを設定する。例えばモード5の期間が固定長である場合には、この固定長の時間に上述した時間Tl を合計した時間で電圧比較器526の出力がハイレベルになるように比較電圧Vtbが設定される。
【0062】
排他的論理和回路528は、電圧比較器524、526のそれぞれの出力の論理が同じのときにローレベルの信号を出力し、この信号が反転回路530で反転される。したがって、反転回路530の出力は、モード2〜5の期間に対応してハイレベルになり、それ以外の期間ではローレベルになる(図13:反転出力(530))。
【0063】
遅延回路542の出力信号(遅延後のトグル信号Vtgl )は、反転回路530の出力信号を1周期毎交互にスイッチ222とスイッチ224に入力するためのものである。遅延後のトグル信号Vtgl がハイレベルのときに、反転回路530の出力信号が論理積回路548を通してスイッチ222に入力され、この入力された信号がハイレベルの期間に対応してスイッチ222がオンされる(図13:トグル信号(遅延)、Qsn1)。反対に、遅延されたトグル信号Vtgl がローレベルのときに、反転回路530の出力信号が論理積回路550を通してスイッチ224に入力され、この入力された信号がハイレベルの期間に対応してスイッチ224がオンされる(図13:トグル信号(遅延)、Qsn2)。
【0064】
このように、本実施形態の直流安定化電源回路1では、両端電圧が0Vで電流が0Aのときに主スイッチ210、212をオンすることにより、主スイッチ210、212をオンする際に生じる損失を低減することができ、変換効率を向上させることが可能となる。
【0065】
また、主スイッチ210、212にコンデンサ214、216を並列接続することにより、一方の主スイッチ210(あるいは主スイッチ212)をオフした際に発生するリカバリ電流でコンデンサ214(あるいはコンデンサ216)を充電して両端電圧を所定の傾きで速やかに上昇させることができるため、両端電圧が0Vで電流が0Aのときに他方の主スイッチ212(あるいは主スイッチ210)をオフすることができ、その際に生じる損失を低減して変換効率を向上させることが可能となる。
【0066】
また、主スイッチ210、212と並列接続されたコンデンサ214、216と共振リアクトルとしてのインダクタ220とによる共振によって、主スイッチ210、212がオフされているときにコンデンサ214、216の両端電圧を0Vまで低下させることができ、これにより主スイッチ210、212をオンする際のソフトスイッチングが可能となる。
【0067】
また、トランス230の一次巻線側にダイオードを介した電流の経路を形成することにより、スイッチ222あるいは224をオフする際にトランス230の二次巻線に流れる電流を消滅させることができ、トランス230が飽和することを防止することができる。
【0068】
また、制御回路500を用いて主スイッチ210、212やスイッチ222、224を制御している。これにより、負荷電流IO に応じて周期的に主スイッチ210、212をオン/オフする制御を簡単な構成で実現することができる。また、負荷電流IO に応じて主スイッチ210、212をオンする前後のタイミングでスイッチ222、224をオン/オフする制御を簡単な構成で実現することができる。
【0069】
また、トランス230の一次巻線あるいは二次巻線にクランプ回路が設けられている。これにより、トランス230の一次巻線側に接続されたダイオード226、228がターンオフした際に電圧サージが発生してもその電圧をクランプすることができる。また、トランス230の二次巻線側に接続されたスイッチ222、224がオフした際に電圧サージが発生してもその電圧をクランプすることができる。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。
【0071】
図14は、クランプ回路を追加したインバータの変形例を示す図である。図14に示すインバータ200Aは、インバータ200(図3)に対して、ダイオード240、250、260、270、コンデンサ242、252、262、272、抵抗244、254、264、274を追加した点が異なっている。
【0072】
ダイオード240、コンデンサ242、抵抗244によって第1のクランプ回路が形成されている。ダイオード240のカソードがダイオード226のアノードに接続されており、ダイオード240のアノードがコンデンサ242を介してダイオード226のカソードに接続されている。また、ダイオード240とコンデンサ242との接続点が抵抗244を介して入力端子bに接続された負極側電源ラインに接続されている。
【0073】
ダイオード250、コンデンサ252、抵抗254によって第2のクランプ回路が形成されている。ダイオード250のアノードがダイオード228のカソードに接続されており、ダイオード250のカソードがコンデンサ252を介してダイオード228のアノードに接続されている。また、ダイオード250とコンデンサ252との接続点が抵抗254を介して入力端子aに接続された正極側電源ラインに接続されている。
【0074】
上述した第1のクランプ回路と第2のクランプ回路は極性が反転している点を除いて基本的に同じ動作をするので、第2のクランプ回路の動作について説明する。図5に示すモード5からモード0に移行する際にダイオード228がターンオフし、このときダイオード228にリカバリ電流が流れるため、ダイオード228のカソードに電圧サージが現れる。この時点では、第2のクランプ回路に含まれるコンデンサ252は、抵抗254を介して充電されており、その端子電圧が直流電源と同じ800Vになっている。したがって、800Vを超える電圧サージが生じても、ダイオード228のカソードの電位は800Vにクランプされる。
【0075】
また、ダイオード260、コンデンサ262、抵抗264によって第3のクランプ回路が形成されている。ダイオード260のカソードがスイッチ222のエミッタに接続されており、ダイオード260のアノードがコンデンサ262を介してスイッチ222のコレクタに接続されている。また、ダイオード260とコンデンサ262との接続点が抵抗264を介して入力端子bに接続された負極側電源ラインに接続されている。
【0076】
ダイオード270、コンデンサ272、抵抗274によって第4のクランプ回路が形成されている。ダイオード270のアノードがスイッチ224のコレクタに接続されており、ダイオード270のカソードがコンデンサ272を介してスイッチ224のエミッタに接続されている。また、ダイオード270とコンデンサ272との接続点が抵抗274を介して入力端子aに接続された正極側電源ラインに接続されている。
【0077】
上述した第3のクランプ回路と第4のクランプ回路は極性が反転している点を除いて基本的に同じ動作をするので、第4のクランプ回路の動作について説明する。図5に示すモード5からモード0に移行する際にスイッチ224がオフし、このときトランス230の二次巻線の一部に微小な電流が流れている状態でこの電流が瞬断されるため電圧サージが現れる。この時点では、第4のクランプ回路に含まれるコンデンサ272は、抵抗274を介して充電されており、その端子電圧が直流電源と同じ800Vになっている。したがって、800Vを超える電圧サージが生じても、スイッチ224とトランス230との接続点の電位は800Vにクランプされる。
【0078】
なお、上述した各クランプ回路の動作では正常動作時に生じる電圧サージについて説明したが、異常発生時に主スイッチ210、212やスイッチ222、224をオフする場合に発生する電圧サージに対する対策としても、上述した各クランプ回路は有効である。また、上述した変形例の構成では4つのクランプ回路が設けられているが、その中の一部のみを備えるようにしてもよい。
【0079】
図15は、トランスを変更したインバータの変形例を示す図である。図15に示すインバータ200Bは、インバータ200(図3)に対して、ダイオード226、228、トランス230をダイオード282、284、286、288、トランス280に置き換えた点が異なっている。このトランス280は、一次巻線に中間タップが設けられておらず、一次巻線の一方端がダイオード282を介して入力端子aに接続されるとともにダイオード284を介して入力端子bに接続され、一次巻線の他方端がダイオード286を介して入力端子aに接続されるとともにダイオード288を介して入力端子bに接続されている。このインバータ200Bは、トランス280の二次巻線側の構成および結線や主スイッチ210等のオン/オフタイミングはインバータ200と同じである。また、図15に示したインバータ200Bの構成に、図14に示したインバータ200Aに含まれる4つのクランプ回路(あるいはその一部)を追加するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、両端電圧が0Vで電流が0Aのときに主スイッチをオンすることにより、主スイッチをオンする際に生じる損失を低減することができ、変換効率を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 直流安定化電源回路
100 共通整流器
102、104、106 インダクタ
110、112、114、116 主スイッチ
120、122、124、126 コンデンサ
140、142 インダクタ
144、146 スイッチ
200 インバータ
210、212 主スイッチ
214、216 コンデンサ
220 インダクタ
226、228 ダイオード
230 トランス
300 トランス
400 整流器
410、412、414、416 ダイオード
420 インダクタ
422 コンデンサ
500 制御回路
510 鋸波発生回路
512 基準電圧発生回路
514 アナログ乗算器
516、524、526 電圧比較器
520 Vta設定回路
522 Vtb設定回路
528 排他的論理和回路
530 反転回路
540 トグル信号発生回路
542 遅延回路
544、546、548、550 論理積回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、第1のトランスを介して前記インバータと接続されて前記トランスから入力される交流電圧を直流電圧に変換する整流器とからなる絶縁型直流/直流変換回路を備え、
前記インバータは、正負2種類の電源ラインの間に直列に挿入されて交互にオン/オフされる第1および第2の主スイッチと、前記第1および第2の主スイッチをオンするときにこのオンする主スイッチの両端電圧が0Vであってこの主スイッチを通して流れる電流が0Aとなるように制御するソフトスイッチング部とを有することを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の主スイッチに並列に接続された第1のコンデンサと、前記第2の主スイッチに並列に接続された第2のコンデンサとをさらに備えることを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項3】
請求項2において、
前記ソフトスイッチング部は、
前記第1および第2の主スイッチの接続点に一方端が接続された共振リアクトルと、
前記共振リアクトルの他方端に二次巻線の中間タップが接続され、この二次巻線の両端のそれぞれが前記正負2種類の電源ラインのそれぞれと第1あるいは第2のスイッチを介して接続され、一次巻線の両端のそれぞれが前記正負2種類の電源ラインのそれぞれとダイオードを介して接続された第2のトランスと、
を備えることを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項4】
請求項3において、
前記正負2種類の電源ラインの間には第3および第4のコンデンサが直列に挿入されており、
前記第2のトランスの一次巻線は中間タップを有し、この中間タップが前記第3および第4のコンデンサの接続点に接続され、前記一次巻線の両端のそれぞれが前記インバータ内の前記正負2種類の電源ラインのそれぞれと別々に前記ダイオードを介して接続されていることを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項5】
請求項3において、
前記第2のトランスの一次巻線の両端のそれぞれは、前記インバータ内の前記正負2種類の電源ラインの両方と別々にダイオードを介して接続されていることを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項6】
請求項3において、
前記第1および第2の主スイッチのオン/オフタイミングを制御する出力制御手段と、前記第1および第2のスイッチのオン/オフタイミングとを制御するソフトスイッチング制御手段とを有する制御回路をさらに備えることを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項7】
請求項6において、
前記出力制御手段は、
鋸波波形を有する信号を発生する鋸波発生回路と、
前記整流器に流れる負荷電流に対応した基準電圧を発生する基準電圧発生回路と、
前記鋸波波形の電圧と前記基準電圧とを比較する第1の電圧比較器と、
前記第1の電圧比較器の出力に基づいて前記第1および第2の主スイッチを交互にオンする主スイッチ駆動手段と、
を備えることを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項8】
請求項6において、
前記ソフトスイッチング制御手段は、前記第1および第2の主スイッチをオンするタイミングを含む所定期間、前記第1および第2のスイッチをオンすることにより、前記第1および第2の主スイッチをオンする際にこのオンする主スイッチの両端電圧が0Vであってこの主スイッチを通して流れる電流が0Aとなるように制御することを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項9】
請求項8において、
前記ソフトスイッチング制御手段は、
鋸波波形を有する信号を発生する鋸波発生回路と、
前記整流器に流れる負荷電流に対応した第1の比較電圧を発生する第1の比較電圧設定回路と、
前記整流器に流れる負荷電流に対応した第2の比較電圧を発生する第2の比較電圧設定回路と、
前記鋸波波形の電圧と前記第1の比較電圧とを比較する第2の電圧比較器と、
前記鋸波波形の電圧と前記第2の比較電圧とを比較する第3の電圧比較器と、
前記第1あるいは第2の主スイッチをオンする前に前記第1あるいは第2のスイッチをオンする期間を前記第2の電圧比較器の出力に基づいて設定するとともに、前記第1あるいは第2の主スイッチをオンした後に前記第1あるいは第2のスイッチをオンする期間を前記第3の電圧比較器の出力に基づいて設定するオン期間設定回路と、
前記オン期間設定回路の出力に基づいて前記第1および第2のスイッチを交互にオンするスイッチ駆動手段と、
を備えることを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項10】
請求項3において、
前記第2のトランスの一次巻線の少なくとも一方端に接続され、この一方端に電圧サージが生じたときにこの一方端の電圧を所定値に固定するクランプ回路を備えることを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項11】
請求項10において、
前記クランプ回路は、前記第2のトランスの一次巻線の端部と前記正負2種類の電源ラインの一方との間に接続されたダイオードと並列に接続されたコンデンサとダイオードからなる直列回路と、この直列回路を構成するコンデンサとダイオードの接続点と前記正負2種類の電源ラインの他方との間に接続された抵抗とを含んで構成されていることを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項12】
請求項3において、
前記第2のトランスの二次巻線の少なくとも一方端に接続され、この一方端に電圧サージが生じたときにこの一方端の電圧を所定値に固定するクランプ回路を備えることを特徴とする直流安定化電源回路。
【請求項13】
請求項12において、
前記クランプ回路は、前記第2のトランスの一次巻線の端部と前記正負2種類の電源ラインの一方との間に接続された前記第1あるいは第2のスイッチと並列に接続されたコンデンサとダイオードからなる直列回路と、この直列回路を構成するコンデンサとダイオードの接続点と前記正負2種類の電源ラインの他方との間に接続された抵抗とを含んで構成されていることを特徴とする直流安定化電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−24346(P2011−24346A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167051(P2009−167051)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 半導体電力変換 産業電力電気応用合同研究会 主催者名 社団法人 電気学会 開催日 平成21年6月26日
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(599016431)学校法人 芝浦工業大学 (109)
【出願人】(307006516)ポニー電機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】