説明

直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム及びその製造方法

【課題】
優れた直線カット性を有すると共に、高熱水収縮性や良好な厚み精度、さらに優れたガスバリア性を有し、例えば食品、薬品、工業製品等の包装袋の基材フィルムとして好適に使用できる、直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム及びその製造方法を得る。
【解決手段】
脂肪族ポリアミド重合体(A)を55〜79質量%と、芳香族ポリアミド重合体(B)を21〜45質量%とを含む(a)層と、ガスバリア樹脂(C)を90〜100質量%含む(b)層とをそれぞれ少なくとも一層有する積層フィルムであり、直線カット性(MDに直線を引き、200mm裂いたときの直線からのズレ量の絶対値)が5.0mm以下、95℃×5分における熱水収縮率がフィルムの流れ方向(MD)、フィルムの幅方向(TD)ともに15%以上、フィルムの幅方向(TD)の厚み変動率が平均厚みの10%以下であり、さらに25℃×50%RHの条件下における酸素透過率が30fmol/(m2・sec・Pa)以下であることを特徴とする直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた直線カット性を有すると共に、低熱水収縮性や良好な厚み精度、さらに優れたガスバリア性を有し、例えば食品、薬品、工業製品等の包装袋の基材フィルムとして好適に使用できる、直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン6等のポリアミド重合体を主体とするフィルムや、ポリアミド重合体を層構成とする積層フィルムは引張強度、衝撃強度に優れていることから、これらのポリアミド系フィルムを食品、薬品等を包装するための包装袋に二次加工して、様々な形態で製造・販売されている。
【0003】
近年、消費者の利便性、バリア(障害)フリーやユニバーサルデザインといった考え方から、包装形態として容易に開封可能な易開封性包装が注目されている。開封性の向上手段としては、ヒートシール部にノッチを入れる方法や、マジックカット(登録商標)と呼ばれる、ヒートシール部に微細な傷を付ける方法などが挙げられる。しかし、これらの方法は引き裂くきっかけにすぎず、このノッチから引き裂いたときに真っ直ぐに引き裂けない場合や、引き裂くのに大きな力が必要な場合がある。
【0004】
そこでナイロン等の機能性樹脂フィルムとシーラント等からなる複合フィルムを袋状にした容器で、フィルムを引き裂いたときに真っ直ぐに引き裂け、引き裂くのに大きな力が不要な易開封性を付与した包装材が求められている。このような包装材に用いられる機能性樹脂フィルムに要求される特性としては、強度やガスバリア性等の基本特性に加え、真っ直ぐに切れる直線カット性、小さな力でも容易に開封可能な易開封性等が挙げられる。
上記の直線カット性や易開封性が劣るフィルムを用いた包装袋を開封する場合、引き裂くのに大きな力を要したり、直線的に引き裂けないというトラブルがしばしば発生する。このような場合には内容物を取り出すことができなくなったり、開封と同時に内容物が飛散して無駄になるばかりでなく、特に内容物が液状、半流動性あるいは粉状の場合には、衣服などを汚したりする事故が起きやすい。
【0005】
また、ゼリーや豆腐のように液体状態で充填し、製袋したあとに固化する内容物を充填する場合、通常の充填方法では内容物を包装袋内に充満させることが難しく、包装袋の形が変形しやすいため、充填後に内容物を固化させたとき、包装袋の形に固化してしまい外観が悪くなるという問題があった。さらに、従来のチューブ状に成形したフィルム内に内容物を充填し、両端の開口部をアルミ等の金属バンドで止めるケーシング包装では、金属を使用するために金属探知器による異物の検知ができないという問題があった。
そこで、充填する包装袋に使用するフィルムに熱水収縮性を付与し、充填後に収縮をさせることにより包装袋の形を整える方法が用いられている。この方法によれば、縦ピロー包装や三方シール包装等の従来の液体用充填機にて、容易に充填製袋ができ、金属を使用する必要がないため、金属探知器による異物の検査が可能である。
しかし、熱収縮性を付与した包装袋の場合、内容物が袋内に充満しているため、開封時、引裂方向が曲がり反対側のシール部分まで十分に開けることができないなど内容物の取り出しが難しく、また、取り出すことができても内容物を破損してしまうなどの問題点があり、このような熱収縮性を付与した包装においても易開封性、特に直線カット性が求められている。
【0006】
例えば特許文献1では、ナイロン6/ポリメタキシリレンアジパミド(以下、「MXD6」という)=40〜85/60〜15(質量比)からなる混合ポリアミド組成物を溶融押出し、チューブラー式同時二軸延伸法を用いて、MD、TD共に2.8倍以上に延伸したのち、120〜195℃の温度で熱処理することにより熱収縮率を有する易引裂性フィルムが提案されている。
しかし、チューブラー式同時二軸延伸法で作製したフィルムは幅方向の厚み変動率が大きく、この厚み変動により、シワが発生したり、タルミが発生して印刷見当がずれたり、フィルムパスが蛇行して印刷ピッチがずれる等の問題となり印刷やラミネート時でのトラブルが発生しやすい。
厚み精度の良いフィルムの製膜方法のひとつとして、逐次二軸延伸法が知られているが、上記のポリアミド系フィルムを逐次二軸延伸法で、MD、TDともに2.8倍以上の延伸倍率で延伸を行うと、ボーイング現象が主な原因で、得られたフィルムの端部での直線カット性が低下するという問題があった。
さらに、特許文献1では、各層のMXD6の含有量が少ないため、十分なガスバリア性が得られず、内容物の保存性、シェルライフの向上の観点より高度なガスバリア性が必要な用途には使用できないフィルムとなる。
【0007】
【特許文献1】特許第3227413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、優れた直線カット性を有すると共に、高い熱水収縮性とガスバリア性を備えた厚み変動率の小さい、直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、このような現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、従来の問題点を解消できるポリアミド系フィルムを見出した。
即ち、本発明は、以下の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム及びその製造方法を提供するものである。
1.脂肪族ポリアミド重合体(A)を55〜79質量%と、芳香族ポリアミド重合体(B)を21〜45質量%とを含む(a)層と、バリア樹脂(C)を90〜100質量%含む(b)層とをそれぞれ少なくとも一層有する積層フィルムであり、直線カット性(MDに直線を引き、200mm裂いたときの直線からのズレ量の絶対値)が5.0mm以下、95℃×5分における熱水収縮率がフィルムの流れ方向(MD)、フィルムの幅方向(TD)ともに15%以上、フィルムの幅方向(TD)の厚み変動率が平均厚みの10%以下であり、さらに25℃×50%RHの条件下における酸素透過率が30fmol/(m2・sec・Pa)以下であることを特徴とする直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム。
2.脂肪族ポリアミド重合体(A)がナイロン6、芳香族ポリアミド重合体(B)がポリメタキシリレンアジパミド、ガスバリア樹脂(C)がエチレン含有量20〜50モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物からなることを特徴とする上記1記載の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム。
3.(b)層の厚みが、1〜7μmであることを特徴とする上記1又は2のいずれかに記載の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム。
4.フラットダイから押出された未延伸フィルムをMDに2.8倍未満、TDに2.8倍以上の延伸倍率でテンター式逐次二軸延伸法により延伸した後、100℃以上、且つ上記脂肪族ポリアミド重合体(A)の補外融解開始温度(JIS K 7121に準拠して測定)より35℃低い温度以下で熱固定を行う事を特徴とする上記1乃至3のいずれかに記載の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムの製造方法。
5.上記4記載のMDの延伸倍率が2.4倍以上であることを特徴とする直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムの製造方法。
6.上記1乃至3のいずれかに記載の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムが、積層体の構成成分であることを特徴とするラミネートフィルム。
7.請求項1乃至3のいずれかに記載の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムの両面に、同一材料からなるシーラントが積層されたことを特徴とするラミネートフィルム。
8.上記6又は7のいずれかに上記6記載のラミネートフィルムからなる袋体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、そこで、本発明は、優れた直線カット性を有すると共に、高い熱水収縮性とガスバリア性を備えた厚み変動率の小さい、直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム及びその製造方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明するが、本発明の範囲は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
まず、本発明の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムは、(a)層と(b)層とをそれぞれ少なくとも一層有する積層フィルムであり、(a)層は、脂肪族ポリアミド重合体(A)と、芳香族ポリアミド重合体(B)とを特定比率で含み、(b)層はバリア樹脂(C)を特定比率で含んでいる。
ここで、層構成としては、特に制限はないが、(a)/(b)の2層構成、(a)/(b)/(a)、(b)/(a)/(b)の3層構成、さらに、後述する接着層である(c)層を有する(a)/(c)/(b)/(c)/(a)、(b)/(c)/(a)/(c)/(b)等の5層構成などが挙げられるが、積層フィルムの生産性や袋体へのラミネートなどの二次加工性の点等から(a)/(b)/(a)の3層構成が好適に用いられる。
【0012】
本発明の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムに用いられる脂肪族ポリアミド重合体(A)としては、特に制限はないが、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられる。具体的には、ナイロン6と称されるε−カプロラクタムの単独重合体、あるいはナイロン66と称されるポリヘキサメチレンアジパミド等が安価に入手でき、かつ、延伸操作を円滑に遂行し得る点から好ましい。
【0013】
また、芳香族ポリアミド重合体(B)としては、特に制限はないが、キシリレンジアミンと炭素数が6〜12のα,ω脂肪族ジカルボン酸とからなるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上含有している樹脂等が使用できる。
具体的には、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンデカナミドなどの単独重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセパカミド共重合体などの共重合体が挙げられるが、ポリメタキシリレンアジパミド(以下、「MXD6」という)が強度やガスバリア性等の基本特性に優れ、工業的にも比較的入手しやすい点から好ましい。
【0014】
上記以外のポリアミド構成成分としては、ジアミン類とジカルボン酸類とのナイロン塩およびε−カプロラクタムなどのラクタム類、ε−アミノカルボン酸などのω−アミノカルボン酸類等が挙げられる。
ナイロン塩の成分であるジアミン類には、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、ピペラジンビスプロピルアミン、ネオペンチルグリコールビスプロピルアミンなどの異節環または異原子含有ジアミン等があり、また、ジカルボン酸類には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジガルボン酸などの環状脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0015】
前記(a)層における脂肪族ポリアミド重合体(A)と、芳香族ポリアミド重合体(B)との含有割合は、脂肪族ポリアミド重合体(A)を55〜79質量%、芳香族ポリアミド重合体(B)を21〜45質量%とすることが重要である。芳香族ポリアミド重合体(B)がこの範囲内であれば、得られるフィルムの直線カット性が良好であり、また、衝撃強度の大幅な低下を抑えることができる。芳香族ポリアミド重合体(B)の含有割合が45質量%を超えると、直線カット性が低下するばかりではなく、衝撃強度が大幅に低下するという問題がある。
ここで、脂肪族ポリアミド重合体(A)と芳香族ポリアミド重合体(B)の混合物は、原料重合体(ペレットなど)同士を混合したものや、これらに本発明のポリアミド系フィルムを製造する際に発生する規格外フィルムや切断端材(耳トリム)を混合したものであってもよい。
【0016】
また、前記(b)層のバリア樹脂(C)の含有割合は、90〜100質量%であることが重要である。バリア樹脂(C)が90質量%以上であればフィルムに十分なガスバリア性を付与することができる。ここで、(b)層には少量(10質量%程度以下)の耐屈曲ピンホール性改良材が含まれていてもよい。
このような積層フィルムのガスバリア層の材料としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物(以下、「EVOH」という。)やポリグリコール酸やポリアクリロニトリル等が挙げられるが、中でもEVOHが好適である。この層の素材として使用するEVOHは特に限定されず、従来公知の方法によって製造されるものであればよい。
これらのEVOHの中では特にエチレン含有量20〜50モル%の範囲、好ましくは24〜35モル%の範囲であり、鹸化度が95モル%以上、好ましくは98モル%以上のものが適している。エチレン含有率が20モル%未満のものは溶融押出し時の溶融押出し性が劣り、また着色し易く好ましくない。エチレン含有率が50モル%を超えるものでは、酸素ガスバリア性が低下する傾向があり好ましくない。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化度が98モル%未満のものは、酸素ガスバリア性や耐湿性に劣り、95モル%未満ではその傾向が顕著となるので好ましくない。さらに上記EVOHは、エチレンと酢酸ビニル二元共重合体の鹸化物の他に、共重合成分として少量のプロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセンなどのα−オレフィン;不飽和カルボン酸、またはその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニトリル、アミド、無水物;不飽和スルホン酸、その塩などを含むものであってもよく、またEVOHには、上記のものに少量のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂を混合したものであっても良い。
【0017】
本発明においては、前記(a)層と(b)層との間に層間密着性等の点から、接着層(c)層を設けることもできる。接着層を構成する成分としては特に制限はないが、上記脂肪族ポリアミド重合体(A)と上記芳香族ポリアミド重合体(B)との混合物や、ポリオレフィン系やポリエステル系の接着樹脂類等を用いることができる。
【0018】
本発明の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムには、耐屈曲ピンホール性改良材を添加することができ、これにより耐屈曲ピンホール性を向上させることができる。耐屈曲ピンホール性改良材としては、ポリオレフィン類、ポリアミドエラストマー類、ポリエステルエラストマー類などが挙げられる。
ポリオレフィン類としては、主鎖中にポリエチレン単位及び/又はポリプロピレン単位を50質量%以上含むものが挙げられ、無水マレイン酸等でグラフト変性していてもよい。ポリエチレン単位、ポリプロピレン単位以外の構成単位としては、酢酸ビニルあるいはその部分けん化物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、あるいはこれらの部分金属中和物(アイオノマー類)、ブテン等の1−アルケン類、アルカジエン類、スチレンなどが挙げられる。ポリオレフィン類としては、これらの構成単位を複数含むものでもよい。
【0019】
ポリアミドエラストマー類としては、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド等のポリアミド系ブロック共重合体などが挙げられ、アミド成分としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等が例示され、エーテル成分としては、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシ−1、2−プロピレングリコール等が例示されるが、好ましくはポリテトラメチレングリコールとポリラウリルラクタム(ナイロン12)を主成分とする共重合体である。また、任意成分としてドデカンジカルボン酸、アジピン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸を少量併用したものであってもよい。
また、ポリエステルエラストマー類としては、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールを組み合わせたポリエーテル・エステルエラストマーや、ポリブチレンテレフタレートとポリカプロラクトンを組み合わせたポリエステル・エステルエラストマーなどがあげられる。
これらの耐屈曲ピンホール性改良材は単独でも2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本発明においては、耐屈曲ピンホール性の改良効果と、フィルムとした際の透明性低下とのバランスの点から、耐屈曲ピンホール性改良材の添加量は、0.1〜10質量%程度である。ここで、耐屈曲ピンホール性改良材を含有する脂肪族ポリアミド重合体(A)や芳香族ポリアミド重合体(B)としては、これらを所定の割合でドライブレンドしたもの、ドライブレンド物をあらかじめ押出機で溶融混合した後、ペレット化したもののいずれであってもよい。
【0021】
なお、上述した原料ポリアミド重合体、ポリアミド混合組成物には、本発明の主旨を超えない範囲内で適宜必要に応じて、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、安定剤、染料、顔料、無機質微粒子等の各種添加剤を添加することができる。具体例としては、衝撃改良剤(エラストマー等)、アンチブロッキング剤(無機フィラー等)、撥水剤(エチレンビスステアリン酸エステル等)、滑剤(エチレンビスステアリン酸アミド等)を挙げることができる。
【0022】
本発明の直線カット性ポリアミド系フィルムを包装袋として使用する際には、内容物の品質保持や腐敗防止の観点から、さらにガスバリア性樹脂層を積層すること、アルミニウム等の金属や、二酸化珪素、アルミナ等の金属酸化物を蒸着加工すること、ガスバリア性コート剤を塗布すること等により、ガスバリア性や防湿性をさらに向上させることができる。
【0023】
本発明の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムには、本発明の主旨を超えない範囲内で適宜必要に応じて、本発明の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムを製造する際に発生する規格外フィルムや切断端材(耳トリム)を上記(a)層、(b)層、(c)層の各層、あるいは、複数の層に添加することができる。
【0024】
本発明の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムの層構成において、(b)層の厚みは1〜7μmであることが好ましく、より好ましくは1.5〜6μmである。ここで、(b)層が積層フィルム中に2層以上構成される場合には、その合計厚みが上記範囲内にあることが好ましい。
ここで、(b)層の厚みが1μm以上であれば、25℃×50%RHの条件下における酸素透過率が30fmol/(m2・sec・Pa)以下が達成されやすく、また7μm以下であれば直線カット性の低下が少なく、機械強度も良好であるため好ましい。
【0025】
次に、本発明の直線カット性ポリアミド系フィルムは、下記の(1)〜(4)の特徴を有することが重要あり、これらは、主に各層の上記した脂肪族ポリアミド重合体(A)と、芳香族ポリアミド重合体(B)との含有比率や後述するフィルムの製造条件(延伸倍率、熱固定温度など)により制御することができる。
(1)直線カット性(MDに直線を引き、200mm裂いたときの直線からのズレ量の絶対値)が5.0mm以下であることが必要である。ここで、直線カット性が5.0mm以下であれば、包装袋などの開封時に直線的に引き裂くことができ、内容物を取り出せなくなったり、開封と同時に内容物が飛散することも抑えることができる。
(2)95℃×5分における熱水収縮率がMD、TDともに15%以上、好ましくは20%以上であることが必要である。ここで、MDの熱水収縮率が15%以上であれば、熱収縮包装材としての収縮率が充分に大きく、種々の内容物に密着させる事ができる。一方、MD、TDの熱水収縮率の上限としては、通常40%以下のものが用いられる。該収縮率が40%を超えるようなフィルムは、ロール状フィルムのスリット工程などでフィルムが非常に裂け易くなってしまうという問題が発生しやすい。
(3)フィルムの幅方向(TD)の厚み変動率が平均厚みの10%以下であることが必要である。ここで、厚み変動率が平均厚みの10%以下であれば、厚みムラに起因するシワの発生や、タルミが発生して印刷見当がずれたり、フィルムパスが蛇行して印刷ピッチがずれる等のトラブルの発生を抑えることができる。
(4)25℃×50%RHの条件下における酸素透過率が30fmol/(m2・sec・Pa)以下であることが必要である。ここで、酸素透過率が30fmol/(m2・sec・Pa)以下であれば十分なガスバリア性が得られ、内容物の保存性、シェルライフの向上の観点等より高度なガスバリア性が必要な用途に使用できる。
【0026】
以下、本発明の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムを得るために好適な製造方法について説明する。
すなわち、ポリアミド系重合体、を原料として用いて、まず、実質的に無定形で配向していないフィルム(以下、「未延伸フィルム」という)を、通常、共押出法で製造する。この未延伸フィルムの製造は、例えば、上記原料を1〜7台の押出機(相分離構造の制御の点などから単軸押出機が好ましい)により溶融し、フラットダイから押出した後、急冷することによりフラット状の未延伸フィルムとする共押出法を採用することができる。押出機に供給する原料は、上記した脂肪族ポリアミド重合体(A)と芳香族ポリアミド重合体(B)の両樹脂のペレットを二軸混練機等であらかじめ溶融、混練して作製したペレットでも、両樹脂のペレットを単にブレンダでドライブレンドした混合ペレットでもよい。
【0027】
次に、上記の未延伸フィルムを、フィルムの流れ方向(MD)、およびその直交方向である幅方向(TD)で、延伸効果、フィルム強度等の点から、二軸方向に延伸する。
二軸延伸の方法としては、テンター式逐次二軸延伸方法にて延伸することが本発明において重要である。テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、未延伸フィルムを50〜110℃の温度範囲に加熱しロール式縦延伸機によって縦方向に2.8倍未満、好ましくは、2.4倍以上、2.8倍未満、より好ましくは、2.60倍以上、2.74倍以下に延伸することが重要である。
ここで、縦延伸倍率が2.4倍未満では、延伸ムラが発生し厚みが不均一になったり、配向不足のためにフィルムの強度が低下したり、直線カット性も低下する。さらに、延伸ムラが著しい場合は製膜できないこともある。一方、縦延伸倍率が2.8倍以上では、ボーイング現象が主な原因で、得られた二軸延伸フィルムの端部での直線カット性が低下するという問題が発生しやすい。
【0028】
上記方法により延伸された縦延伸フィルムは、続いて端部をテンタークリップで保持し、テンター式横延伸機によって60〜140℃の温度範囲内でTDに2.8倍以上、好ましくは、2.8倍以上、5.0倍以下、より好ましくは3.0倍以上、4.0倍以下で延伸することが重要である。
ここで、横延伸倍率が2.8倍未満では横延伸倍率が低すぎ、未延伸部分が残る等の延伸ムラが発生し、厚みが不均一になったり、配向不足のためにフィルムの強度が低下するという問題がある。
【0029】
上記方法により延伸された二軸延伸フィルムは、引き続き端部をテンタークリップで保持し、テンターオーブンにて100℃以上、180℃以下、好ましくは、130℃以上、170℃以下の温度範囲で、通常、数秒〜数分程度、好ましくは1〜30秒、より好ましくは3〜15秒の時間で熱処理を行うことにより希望の熱水収縮率を付与することができる。
ここで、熱処理温度が100℃以上であれば、自然収縮(常温よりやや高い温度、例えば夏場においてフィルムが本来の使用前に少し収縮してしまうこと)がある程度抑制されるため、得られるロール状フィルムが保管中の巻締まりでブロッキングしてしまうなどの問題も生じにくいため好ましい。また、ロール状フィルムのスリット工程でフィルムが頻繁に破断し、安定したスリットが出来なくなるなどのトラブルも生じにくいため好ましい。
一方、熱処理温度が上記脂肪族ポリアミド重合体(A)の補外融解開始温度(JIS K 7121に準拠して測定)より35℃低い温度以下であれば熱水収縮率をMD、TDともに15%以上のフィルムを得ることができる。
なお、上記した補外融解開始温度とは、JIS K 7121:1987に記載されている示差走査熱量測定(DSC)における融解ピークの低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、融解ピークの低温側の曲線に勾配が最大になる点で引いた接線の交点から求められる温度のことである。
【0030】
本発明の実施形態として、上記直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムが、積層体の構成成分であるラミネートフィルムがある。ラミネートフィルムとしては上記直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムの少なくとも片側面にシーラントフィルム(層)を配したものが例示される。シーラントフィルムとしては、熱融着できる樹脂であればよく、一般にポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。具体的には、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン・α−オレフィン共重合体、アモルファスポリエステル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。シーラントフィルムの厚さは、15〜80μm程度が一般的に好適に使用できる。シーラントフィルムが薄い場合は接着強度が劣る傾向があり、一方厚すぎる場合は包装用途に適さなくなる傾向がある。
【0031】
さらに本発明の他の実施形態として、上記ラミネートフィルムからなる袋体がある。これは上記ラミネートフィルムを二次加工したものであり、シーラント層同士を内側にして、熱溶着させて製袋する。
製袋した袋体に内容物を充填し、その後熱融着により袋体を密閉し製袋する。この際、中に空気が入らないようにすることが、袋体の熱処理時の破袋を防ぐことが出来るために、好ましい。
内容物を充填し、密閉した袋体を、ボイル等の熱処理工程にて上記直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムを収縮させ、袋体に張りを持たせる。潰れやすい内容物でも外力から保護されるまた、豆腐やゼリー、ソーセージ等の充填後に固化する内容物でも、均一かつ、外観の良好な製品を得ることが出来る。
袋のシール部のカット部分には、切り込み(ノッチ)をいれて、裂け易くするのがよい。切り込みの形態は、Vノッチ、Uノッチ、マジックカット等、一般的に採用されている形であれば、特に制限はない。
また、袋体の内容物としては、酸素による変質を嫌う食品、医薬品、薬品、香料等を挙げることができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の内容および効果を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その主旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価および測定法は次の各方法によって行ったものである。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向をMD、その直交方向であるフィルムの幅方向をTDとする。
【0033】
(1)直線カット性
得られたフィルムの両端部、及び中央の三点から、MDに300mm×TDに180mmに、各2枚ずつ切り出し、MDと正確に平行な線を、30mm間隔でひく、次にこの線の上にフェザー刃を用いて端から50mmのところまで切れ目を入れ、短冊状にし、試験片を作製する。次に、試験片を測定者の正面に、MDが真っ直ぐ前を向く方法に、平らなすりガラスの上に置く。ここで、右手引きの場合は右手で試験片の右端の短冊部分を持ち、左手はその隣の短冊部分を押さえる。短冊部分を持った右手を、ゆっくり、真っ直ぐに手前に引く。この動作を右端から順に5回行う。左引きの場合は逆の動作を行う。
引裂はじめから200mmのところでの、予めMDに引いた線からずれた幅、すなわち、MDに直線を引き、200mm裂いたときの直線からのズレ量の絶対値をL(mm)とし、直線カット性の指標とした。
以上の試験を、右手引き、左手引きそれぞれについて試験を行い、平均値(平均値の少数第ニ位を四捨五入)を取り、両端部、及び中央の六点のうち、最も大きいものについて以下の評価を行った。
L(mm)が5.0mm以下のものは(○)、5.0mmを超えるものは(×)
【0034】
(2) 熱水収縮率
得られたフィルムの両端部、及び中央の三点から、MDに120mm×TDに120mmに切り出し、このサンプルのMDに約100mmの基準線を三本引く。このサンプルを23℃、50%RH雰囲気下に24時間放置し基準線を測長する。測長した熱処理前の長さをFとする。このサンプルを95℃に保持した熱水中に浸し、5分間加熱した後取り出す。さらに23℃、50%RH雰囲気下に30分放置した後、前記基準線を測長し、熱処理後の長さをGとする。
熱水収縮率を、下式で算出し、三本の平均値(平均値の少数第二位を四捨五入)をMDの熱水収縮率とし、両端部、及び中央の三点のうち、最大のものに関して、以下の評価を行った。
熱水収縮率=[(F―G)/F]×100(%)
MD、及びTDの熱水収縮率のいずれもが15%以上のものは(○)
MD、及びTDの熱水収縮率のいずれかが15%未満のものは(×)
【0035】
(3)厚み変動率(%)
打点式厚み計を用い、得られたフィルムの幅方向に20mm間隔で厚みを測定し、そのときの最大値をTmax、最小値をTmin、全測定点を合計し測定点数で割った平均値をTaveとした。
厚み変動率を下式で算出(少数第一位を四捨五入)し、以下の評価を行った。
厚み変動率=[(Tmax−Tmin)/Tave]×100(%)
厚み変動率が10%以下のものは(○)、10%を超えるものは(×)
【0036】
(4)酸素透過率(fmol/(m2・sec・Pa))
モダンコントロール社製の「OXY−TRAN100型酸素透過率測定装置」を使用し、温度25℃、50%RH(相対湿度50%)の条件下で測定(n=3)し、得られた平均値の少数第一位を四捨五入して以下の評価を行った。
酸素透過率が30fmol/(m2・sec・Pa)以下のものは(○)、
酸素透過率が30fmol/(m2・sec・Pa)を超えるものは(×)
【0037】
(実施例1)
(a)/(b)/(a)の3層構成のフィルムを得るために、(a)層を構成する脂肪族ポリアミド重合体(A)として、ナイロン6「三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名ノバミッド 1022、補外融解開始温度:215℃」を、芳香族ポリアミド重合体(B)としてMXD6「三菱ガス化学(株)製、商品名MXナイロン S6007」を、ガスバリア樹脂(C)としてEVOH「クラレ(株式会社)製、商品名エバールF101(エチレン含有量32モル%、けん化度99%以上)」を用いた。
(a)層を構成するナイロン6を65質量%と、MXD6を35質量%とを、ドライブレンドにて混合し、これを65mmφ単軸押出機(L/D=28)に投入し、設定温度260℃にて溶融、混練した。また、(b)層を構成する上記EVOHを100質量%を、別の65mmφ単軸押出機(L/D=28)に投入し、設定温度220℃にて溶融、混練した。
さらに前記(a)層を構成する混合ポリアミドについてはそれぞれ分配ブロックでほぼ半々に分割し、設定温度250℃の共押出Tダイ内で積層させて3層構造の積層フィルムとして押出し、30℃のキャストロールに密着急冷し、(a)/(b)/(a)≒51μm/38μm/51μmの未延伸積層フィルムを得た。
得られた未延伸積層フィルムを60℃の条件下でロール式延伸機にて縦方向に2.7倍延伸し、次いで、この縦延伸フィルムの端部をテンタークリップで保持し、テンターオーブン内で100℃の条件下で横方向に3.4倍に延伸した後、140℃で6秒間の熱固定を行った。熱固定を行った後のフィルムは、クリップの把持部に相当する両端部分はトリミングし、トリミング後のフィルムをロール状に巻き取り、(a)/(b)/(a)≒5.5μm/4μm/5.5μmの3層構成で、全体の厚さが約15μmの積層二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムを用いて評価した結果を表1に示した。
【0038】
(実施例2)
実施例1で、(a)層のMXD6の比率を21質量%とした以外は同様の方法でフィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0039】
(実施例3)
実施例1で、(a)層のMXD6の比率を45質量%とした以外は同様の方法でフィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0040】
(実施例4)
実施例1で、縦方向の延伸倍率を2.4倍とした以外は同様の方法でフィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0041】
(実施例5)
実施例1で、延伸後の熱固定温度を100℃とした以外は同様の方法でフィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0042】
(実施例6)
実施例1で、延伸後の熱固定温度を180℃とした以外は同様の方法でフィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0043】
(実施例7)
実施例1で、延伸後の内層である(b)層の厚みが2μmとなるように押出量を変更した以外は同様の方法でフィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0044】
(比較例1)
実施例1で、(a)層のMXD6の比率を15質量%とした以外は同様の方法でフィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0045】
(比較例2)
実施例1で、(a)層のMXD6の比率を50質量%とした以外は同様の方法でフィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0046】
(比較例3)
実施例1で、縦方向の延伸倍率を2.3倍とした以外は同様の方法で検討を行ったが、テンター内でフィルムの破断が頻発し、連続して製膜することができなかった。その結果を表1に示した。
【0047】
(比較例4)
実施例1で、縦方向の延伸倍率を3.0倍とした以外は同様の方法でフィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0048】
(比較例5)
実施例1で、延伸後の熱固定温度を190℃とした以外は同様の方法で検討を行ったが、テンター内でフィルムの破断が頻発し、連続して製膜することができなかった。その結果を表1に示した。
【0049】
(比較例6)
実施例1で、延伸後の内層である(b)層の厚みが0.5μmとなるように押出量を変更した以外は同様の方法でフィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0050】
(比較例7)
実施例1で、延伸後の内層である(b)層の厚みが8μmとなるように押出量を変更した以外は同様の方法でフィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0051】
(比較例8)
(a)/(b)/(a)の3層構成のフィルムを得るために、(a)層を構成する脂肪族ポリアミド重合体(A)として、ナイロン6「三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名ノバミッド 1022、補外融解開始温度:215℃」を、芳香族ポリアミド重合体(B)としてMXD6「三菱ガス化学(株)製、商品名MXナイロン S6007」を、ガスバリア樹脂(C)としてEVOH「クラレ(株式会社)製、商品名エバールF101(エチレン含有量32モル%、けん化度99%以上)」を用いた。
(a)層を構成するナイロン6を65質量%と、MXD6を35質量%とを、ドライブレンドにて混合し、これを65mmφ単軸押出機(L/D=28)に投入し、設定温度260℃にて溶融、混練した。また、(b)層を構成する上記EVOHを100質量%を、別の65mmφ単軸押出機(L/D=28)に投入し、設定温度220℃にて溶融、混練した。
【0052】
さらに前記(a)層を構成する混合ポリアミドについてはそれぞれ分配ブロックでほぼ半々に分割し、設定温度250℃の共押出丸ダイ内で積層させて3層構造の積層フィルムとして押出し、水で急冷する事により、(a)/(b)/(a)≒55μm/40μm/55μmの円筒状の未延伸積層フィルムを得た。
得られた未延伸積層フィルムを一対のニップロール間に挿通した後、中にエアーを圧入しながらヒータで加熱すると共に、延伸開始点にエアーリングよりエアーを吹き付けてバブル状に膨張させ、下流側の一対のニップロールで引き取ることにより、チューブラー法によるMD方向及びTD方向の同時二軸延伸を行った。この延伸の際の倍率は、MD方向が3.0倍、TD方向が3.3倍であった。
次いで、この延伸フィルムの端部をテンタークリップで保持し、テンターオーブン内にて140℃で6秒間の熱固定を行った。熱固定を行った後のフィルムは、クリップの把持部に相当する両端部分はトリミングし、トリミング後のフィルムをロール状に巻き取り、(a)/(b)/(a)≒5.5μm/4μm/5.5μmの3層構成で、全体の厚さが約15μmの積層二軸延伸フィルムを得、同様の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1から、本発明フィルムである実施例1から実施例7については、すべての評価項目について良好な結果を示していることが分かる。
これに対して、MXD6の含有率が本件発明の範囲外である比較例1、比較例2についてはいずれも直線カット性に劣ることが分かる。
縦延伸倍率が低い比較例3は、延伸ムラが発生し、安定して製膜することが不可能であった。縦延伸倍率が高い比較例4については直線カット性に劣る。
熱固定温度が高い比較例5では熱水収縮率が低く、本件の用途には使用できない。ガスバリアー層である(b)層の厚みが薄い比較例6では、酸素透過度に劣り、一方、(b)層の厚みが厚い比較例7では直線カット性に劣ることが分かる。
チューブラー式同時二軸延伸法にて製膜した比較例8は、厚み変動率が大きいため、シワやタルミが発生して印刷見当がずれたり、フィルムパスが蛇行して印刷ピッチがずれる等の原因となり印刷やラミネート時でのトラブルが発生しやすいという問題がある。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド重合体(A)を55〜79質量%と、芳香族ポリアミド重合体(B)を21〜45質量%とを含む(a)層と、ガスバリア樹脂(C)を90〜100質量%含む(b)層とをそれぞれ少なくとも一層有する積層フィルムであり、直線カット性(MDに直線を引き、200mm裂いたときの直線からのズレ量の絶対値)が5.0mm以下、95℃×5分における熱水収縮率がフィルムの流れ方向(MD)、フィルムの幅方向(TD)ともに15%以上、フィルムの幅方向(TD)の厚み変動率が平均厚みの10%以下であり、さらに25℃×50%RHの条件下における酸素透過率が30fmol/(m2・sec・Pa)以下であることを特徴とする直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム。
【請求項2】
脂肪族ポリアミド重合体(A)がナイロン6、芳香族ポリアミド重合体(B)がポリメタキシリレンアジパミド、ガスバリア樹脂(C)がエチレン含有量20〜50モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物からなることを特徴とする請求項1記載の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム。
【請求項3】
(b)層の厚みが、1〜7μmであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルム。
【請求項4】
フラットダイから押出された未延伸フィルムをMDに2.8倍未満、TDに2.8倍以上の延伸倍率でテンター式逐次二軸延伸法により延伸した後、100℃以上、且つ上記脂肪族ポリアミド重合体(A)の補外融解開始温度(JIS K 7121に準拠して測定)より35℃低い温度以下で熱固定を行う事を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のMDの延伸倍率が2.4倍以上であることを特徴とする直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムが、積層体の構成成分であることを特徴とするラミネートフィルム。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載の直線カット性ポリアミド系熱収縮積層フィルムの両面に、同一材料からなるシーラントが積層されたことを特徴とするラミネートフィルム。
【請求項8】
請求項6又は7のいずれかに記載のラミネートフィルムからなる袋体。

【公開番号】特開2008−265012(P2008−265012A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107043(P2007−107043)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】