説明

直線運動リンク機構とこれを用いた布物のたぐり展開装置

【課題】小さな形状で布辺を把持し、2つのグリッパーで持った布辺部をたぐりだし両端を把持して展開して排出するロボットハンドおよび行程長よりも本体サイズが小さな直線運動機構を提供する。
【解決手段】菱形リンク機構と、その対角線上の両支点を両端で挟むように連結した2つの同じ長さの挟持リンク機構と、挟持リンク機構どうしを連結する支点と菱形リンク機構の他の一つの支点を両端で連結した2つの同じ長さの駆動リンク機構からなる直線運動リンク機構。および前記直線運動リンク機構と2連の平行四辺形4節リンクを結合するリンク機構。2連の平行四辺形4節リンク機構を連結するリンクは支点を共有しない選択肢を持つリンク機構およびこれをもちいた布物のたぐり展開装置。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
リネンサプライ業では洗濯工場で大量のシーツやタオルを洗濯し、顧客にレンタルし使用後回収するサイクルでビジネスを行っている。現在、洗濯工程や仕上げ工程など多くの工程が大規模な洗濯機や展開仕上機、ロールアイロナー、折りたたみ仕上機などで行われている。
しかし洗濯ライン、仕上げラインの工程で最初に洗濯物を機械に投入する工程は布物をハンドリングする技術が確立されておらず人手で行われている。そのため洗濯工場での作業環境は感染の危倹や高温等で過酷なため作業の自動化が望まれていた。
そこでこの部分を自動化するため、洗濯ラインに投入するワークを種別に分類して投入する試みや、仕上げラインにタオルやシーツを自動投入する取り組みがなされたが、実用化された例は少ない。その原因は布の変形パターンが無限にあり、設定した処理方法だけで対応できないことにある。
たとえば定型タオルを山積みの状態から拡げようとする場合、図2のように人は一つの布の端部を識別してそこから一辺をたぐり出す操作をして短辺の両端を持って全体を広げ、折りたたみをする仕上げ機に投入している。概略端の識別には、一枚を取り出してその裾の部分を取り出す操作を行い、そこからの展開には端部周辺の辺を保持してその辺を展開する操作を行い一辺を拡げて吊り下げることで全面を拡げられる。
【0002】
これらの操作をおこなうために特許文献1では、発明者が属する出願人によりワークをハンドリングするための移動可能な保持ハンドやコンベアなどと光電センサのような通過確認センサとの組み合わせ、端部らしいところを出現させてタオルなどの布地を拡げる操作手段が開示されている。
他の手法として、過去に発明者らは、特許文献2に記載した手段により、空間領域にあるワークの特徴部を視覚認識を用いてハンドリングする部位を識別しその部位の形状に対応してタオルを保持、展開操作している。
これらの手段は布の形状を計測し形状認識し、形状に合わせたハンドリング操作を行い展開し、仕上機に投入することで、仕上げライン全体を自動化するものである。
しかし、前述同様に、画像認識するワークが想定以上の不規則変化していると成功しないときがあり、画像認識の対応可能な形状変化対応範囲の拡大が望まれていた。
特許文献3ではタオルの一辺を台上で把持し、つまみすべりすることで展開する残留変形性薄物把持装置およびこれを視覚認識付きのロボットに搭載した展開装置が提案されている。
【0003】
特許文献4では多関節ロボット先端にとりつけた対称移動する二つのリンクの先端にハンドを取り付けハンドの間隔を拡げることでタオル展開している。あるいは把持した布の端部と、端部周辺の長辺の一部をロボットハンドで把持し、その間隔を滑らせながら少し拡げた後、コンベアの先端部に沿って移動し一辺を出して展開することが開示されている
この他に直線運動するリンク機構として、特許文献5では直線運動するリンクをもつボートのブレード直線運動装置、および特許文献6では工作機械の研削盤に使われる直線運動機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2010−222725号公報
【特許文献2】 特開2009−279700号公報
【特許文献3】 特開2010−560号公報
【特許文献4】 特開2010−273732号公報
【特許文献5】 特開平5−104383号公報
【特許文献6】 特開平5−345592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者が属する出願人により提案された特許文献1による布の展開方法は、布の変形が不規則性により所望の展開に至る変形をしないとき展開が成功しないときがあり、作業者による効率をコンスタントに上回ることが困難だった。
発明者による特許文献2による布の展開手段では、前記と同様に、画像認識するワーク特徴部の出現位置が想定外の位置で出現した場合、あるいは想定以上の不規則な形状変化していると成功しないため、画像認識の対応可能な形状変化対応範囲の拡大が望まれていた。また2台のロボットで展開するためコンパクトでなかったため作業場への設置ができなかった。
特許文献3では多関節ロボット先端にとりつけた対称移動する二つのリンクの先端にハンドを取り付けハンドの間隔を拡げることでタオル展開している。タオルの一辺を直線状に展開するときその把持ハンドはレールを滑動する等を用いることが開示されているが、展開に必要なタオルの一辺の長さ以上のストロークをもつ必要であり把持装置の大きさ、重量が大きくなるため、把持装置を搭載するロボットあるいは自動展開装置が大きくなりコンパクトでなかった。
【0006】
発明者による特許文献4では、タオルの一辺の長さ以上のストロークをもつためにはリンクの長さを長するとたとえば吊り下げた布の形状変化に対応して把持するためにロボットの手首の位置変化が大きく、可操作性が著しく減少するため、特許文献3と同様に可動領域の大きなロボットを要した。または、端部と辺部の一部を把持して補助展開する場合においては補助展開装置が必要でコンパクトでなかった。
特許文献5では、研削盤で用いられるスライド機構として従来の摺動面を形成する手段に変えてポースリエ厳正直線運動機構を採用した。移動物の姿勢を保つため2つのポースリエ機構を並列に搭載しているが、ストローク以上の本体サイズを有するためリニアガイド等の既存の直動機構に比較してコンパクトでなかった
特許文献6では手こぎボートの推進効率を高めるためポースリエ機構にブレードの向きを固定するために2連の平行四節リンクを組み合わせた機構が提案されている。しかし直線運動できるストロークがリンクの基部からストロークする直線までの距離が長く比率としてコンパクトでなかった。
【0007】
そこで、本発明は以下の課題を解決するものである。
[1]直線運動機構において、長いストロークをもちながら取り付け面から移動面までの距離を最小に押さえ、ストロークと高さの比率を高くすることと、移動面の移動範囲のなかでは、常に機構のサイズがストロークよりも小さくすることで軽量、コンパクトなリンク機構による直動機構を提供する。
[2]特に、布の展開装置として前記機構の本体基部取り付け面をロボットあるいは展開装置に取り付け、複数のグリッパーを前記機構の移動面に取り付け、把持した辺を、前記機構を直動移動させることで、辺をたぐり出して一片を出すためのコンパクトなリンク機構を提供しロボットや展開装置をも小型化する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本体長さが有効ストローク長よりも小さいので、移動部がストローク端周辺に移動したとき、反対側はレールが無く自由な空間ができるため、レール等を用いた既存のスライダ機構よりもコンパクトな直線運動機構ができる。
本発明のリンク機構では、基部取付面からエンドエフェクタ取付面までの距離を小さくできることによりロボットのハンド取付面から制御点までの距離を小さくできるので従来の装置よりもロボットの可操作性の低下が少なく可動範囲が広がる。ロボットに搭載したとき把持するときはコンパクトな形状で行い、展開するときは広げる動作を、従来より小さな可搬重量や稼働領域をもつロボットや展開装置で行えるため全体としてもこれらの設備をコンパクトにできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術思想は、
1、固定部と並進直線移動する移動体とをもつ連結リンク機構であって、常に本体長さが、その工程長よりも小さな機構とすることである。
2、リンク機構の固定部取付面と直線移動部のエンドエフェクタ取り付け面間の距離と移動体の直進ストローク長の比率を小さくすることである。
3、簡単な構成で並進直線運動することである。
4、アクチュエータにより駆動することである
5、前記アクチュエータの制御可能にして所望の距離の直線移動を行うことである。
6、リンク機構の移動体にとりつけた保持装置間の間隔を広げることで保持した布の展開をする展開装置である
7,前記展開装置をポーズ変化可能にする展開システムである。
【0010】
以上の技術思想に基づく課題を解決するための手段を下記に記載する。
[1]第1の発明は、図1(a)あるいは図4に示すリンクを用いた直線運動機構であって、菱形リンク機構(1)と挟持リンク機構(2)と駆動リンク機構(3)からなり、
それぞれのリンク機構を構成するリンクは、二つの平行な第1と第2の支点軸をもつことと、前記支点軸間の距離が同じであること、
前記菱形リンク機構(1)は4つのリンクからなり、そのいずれもが交差しないように、支点軸を同軸で回動可能に連結されること(以下は、支点軸どうしを同軸で回動可能に連結することを、簡便のため連結という)と、
前記駆動リンク機構(3)は、二つのリンクからなり、一方が固定リンク(4)として本体ベース部に固定され、固定された支点軸の一つが相手方のリンク(5)(回動リンク)の第一支点軸と連結(6)されることと、
前記挟持リンク機構(2)は、二つのリンクが一つの支点軸(15)で連結され、支点軸(15)が前記駆動リンク機構の固定リンク(4)の第2支点軸(7)と連結されることと、
前記菱形リンク機構の一方の対角の二つの支点軸である両端支点軸(11,13)は、挟持リンクの両端の支点軸(10,12)と連結されることと、
前記菱形リンクの相手方の対角の支点軸の一方の円軌道支点軸(9)は駆動リンク機構の回動リンク(5)の円軌道支点軸(8)と連結されることと、
により菱形リンク機構の支点軸(14)の直線運動する方向において、支点軸が移動可能ないずれの場所にあっても、その移動可能な行程長40よりもリンク機構全体の全長41が小さいことを特徴とする8リンクからなる直線運動リンク機構である。
[2]第2の発明は、第1の発明において、前記菱形リンク機構の直線移動支点軸(8)が直線移動可能な長さ(28)と、前記支点軸の直線軌道と2つの挟持リンクを同軸で回動する支点軸との最短距離(27)との比が[数1]に記載された範囲であることを特徴とする直線運動リンク機構である。
【数1】

【0010】
[3]第3の発明は、図1(a)に記載する第1および第2の発明において、
菱形リンク機構の直線移動支点軸をもつリンク(16)を含み、平行四辺形の形状を保つ第1の4節リンク機構(18)と、
前記(18)のうち(16)と連結するリンクの一つが並進直線移動体(19)であることと、
前記挟持リンク機構(2)のうち(16)と連結するリンク(20)を含み、平行四辺形の形状を保つ第2の4節リンク機構(22)と、
前記リンク機構(22)のうち挟持リンクの支点軸(15)と連結するリンク(23)が固定リンク(4)と固定された、または一体となった三個の支点軸を持つリンク(24)であることと、
前記挟持リンクの菱形リンクと連結する支点軸(12)が連結する第1の(平行四辺形)四節リンク機構(18)のリンク(25)が、第2の四節リンク機構のリンク(26)と固定されまたは一体(27)となり2個または3個の支点軸をもつリンク(27)であることを特徴とする12個のリンクで構成される並進直線運動リンク機構である。
[4]第4の発明は、第1ないし第3の発明において図1に記載したように駆動リンク機構(3)の固定リンク(4または24)が機構の本体ベース部であり、本体ベースにとりつけた回動可能なアクチュエータ30の回動部中心と駆動リンク機構の回動リンク(5)の円軌道中心点軸を同軸で結合したことを特徴とする直線運動機構である。
[4]第5の発明は、第1ないし第4の発明において図4に記載するように
直線移動支点軸(8)の直線軌道と回動リンク5が前記法線に近い位置で、5の二つの支点軸を結ぶ直線が鉛直になる回転角度を原点角度にするとき
原点からの揺動軸の回転角度と、原点角度における移動体の原点位置からの直線移動距離が下記の数式で表される直線運動機構である。
【数2】

[5]第6の発明は、
二つのグリッパーと、前記グリッパーの少なくとも一つは、並進直線移動するための第1ないし第5の発明に記載の一つまたは二つの直線運動機構の移動体にグリッパーを取り付けたことを特徴とする布物のたぐり展開装置である。
[6]第7の発明は、
第6の発明に記載のたぐり展開装置と、前記たぐり展開装置のポーズを制御するロボットまたは展開装置とを接続したことを特徴とする布物のたぐり展開システムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により可搬領域をレール等の付属物が占有しないコンパクトな直動機構ができる。
運動学および逆運動学の計算式により所望の移動に対する駆動部の移動量がわかる
布物のたぐり展開装置への搭載により軽量なたぐり展開ができる
その他これまでスライダで行っていた直動運動をより少ないエネルギーで行うことが出来る
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
過去のスライダ装置ではなめらかなレールを設け、図3(a)のようにレールに対して転動、あるいは摺動して移動可能にした移動体が直線運動できるようにしている。レールは移動体の軌道を決める。
移動体の位置を制御するには移動体42にベルトを取り付け、ベルトを別途伝導装置で所望の移動量駆動したり、あるいは移動体に雌雄いずれかの台形ネジやボールネジを組合せ、相手方のネジを所望の移動量に応じた回転を与えることで制御ができる。また近年はリニアモーターにより直接位置を制御する製品が、実用化している。
しかしスライダ機構では行程長の全長で移動体を並進運動可能にするように保持する長さが必要なこと、前記ベルトや駆動ネジの配置スペースを必要とすることから、レールよりも小さな本体サイズにはならない。そのため移動体がストロークの端部付近にあるときでも相手方の端部にはレールが存在するため干渉が発生しやすい。
これに対して図示しないリンクアームを用いた機構(たとえばスカラロボットのような機構)では複数のリンクアームを直列に配置しそれぞれのアーム間の角度を制御することで連結したエンドエフェクタの取り付け面の直線運動ができる。この場合は、前記レールは存在しないので有効な本体サイズは小さくできる。しかし単純な直線運動のみを必要とする場合、スライダに比較して制御軸が多数存在するため制御が複雑であり高価であるから応用可能な範囲は狭い。
【0013】
特許文献4では多関節ロボット先端にとりつけた対称移動する二つのリンクの先端にハンドを取り付けハンドの間隔を拡げることでタオル展開するさいの、直動運動でないリンク機構でたぐり展開した。また特許文献3ではスライダ機構をロボットあるいは展開装置に接続しているが、前記発明が解決する課題に記載したように展開装置を取り付けるロボットや展開装置のサイズが大きくなっていた。
発明者は、課題に対して小型のロボットに搭載可能なたぐり展開装置に用いる機構として、直線運動するリンク機構と、移動面のストローク軌道線と取り付けベース面の間の距離とストローク長の比率に関する検討を行い、その比率が過去に実用化されたスライダ機構に匹敵し、その本体サイズが行程サイズよりも小さな直動リンク機構を発明した。
【0014】
リンクを用いた直線運動機構は過去に公知のものがある。たとえばワットの機構、スコットラッセルの機構、チェビシェフの機構、ポースリエの機構などであり、これらは蒸気機関の往復運動等に用いられ公知である。しかし過去に公開された技術ではその直線運動の性質を利用したものが多く、工業上の応用のためストロークと高さの比率に着目した例はなかった。
そこで発明者はこれらの機構から特にポースリエの機構およびポースリエの反転器に注目し、リンクの長さの組合せにより課題の解決を行おうとする検討を行ない最良の比率を得た。
ポースリエの機構は第一の発明に記載したリンク機構である。この機構が厳密な直線運動をする機構である。このことは過去に以下の二つのプロセスにより証明が公開されている。図9(a)においてOP・OQ=一定であることが
【数3】

で説明できる。そして
図4(b)において点Qが直線上を動くことが示されている。これは、点Qが、OCに垂直な定直線上にあることを意味している。
【数4】

またポースリエの反転器は[図5]のように、第1の発明の駆動リンク機構部を除外したものである。
反転とは円を違う円上または直線上に写像することであり、この円軌道どうしまたは円軌道と直線軌道は数学的な用語でいう全単射である。
このことはポースリエの反転器を使えば菱形リンクの(9)をカムで円弧でつなげると相手方のリンク(14)は直線または円弧で構成された軌道を通過することを示している。
点9(P)の円弧運動軌道の延長線が基部7(O)を通過しないときはここで点9(P)を円弧状に運動した場合相手方の点14(Q)も円弧状の運動を行う。
点9(P)の円運動軌道が基部を通過するときは相手方は直径が無限大の半径の円=直線を描く
ポースリエの機構はこのポースリエの反転器の性質の上になりたつ特性を利用している。
【0015】
直動機構を搭載するとき、スライダ機構と同様にエンドエフェクタを搭載できることが設計上有用である。好ましくは、移動体の移動によりリンクが移動、揺動しても取り付け面と移動面から、はみ出さなければ既存スライダど同様の設計手順で配置が行える。
そこで本発明の2に記した配置を採用する。ここで支点7と支点14が運動する直線との間の距離をH(図5(27))を1として考える。ここで菱形リンク機構のリンク長さをR、挟持リンク機能の長さをS、駆動リンク機構のリンク長さをDとすると
(b)のように
【数5】

のリンク長さの組合せにすると支点7より下、あるいは支点14より上にリンクの支点が超えない。このときの支点14が移動可能な長さL(図5(28)とHの比は[数1]に記載した値である。
第3発明ではさらにこれを拡大している。
本発明ではHと支点14の移動可能な距離Lとの比率を最大化することを課題とするためわかりやすくなる。図10で示す(a)はHに対して挟持リンクの長さSが小さくLは小さい。
【0016】
図10(d)のように直線移動軌道の高さを固定して比率を上げるにはロムリンクの長さを長くすると無限に上がるが、リンク機構の高さがベース取り付け面あるいは移動体取り付け面を大幅に超えるため応用の利点がない。また(c)ではDの長さが0であり実際には単なる4節リンクと同等であり直線運動として機能しない。
また菱形リンクがいったん一直線になると特異姿勢でありそこから移動するとき菱形でなくなる可能性は発生する問題がある。図11(b)(c)に記載のリンク長さ比の場合、この特異姿勢が出現する。このため(b)と(a)の間の状態になるよう2×Dの長さをHより小さくする。
図11(b)では、Hが1とすると
【数6】

に比率になる
このときL(28)/H(27)は
【数7】

となり3.58・・の比率が得られる。(図12参照)実際には一直線にならないようにDを少し短くすると良い。このとき第三発明を採用することにより、どのリンクも一直線にならずに高比率をもつ直動リンク機構が動作する。図1のリンク25を3つの支点軸をもつ構造にすることで可能になる。3つにすることで第一の四節リンクが一直線になることを予防できるためである。
【0017】
駆動部は、好ましくは駆動リンクに接続して回転運動を行う電動モーターあるいはエア、油圧等によるロータリーアクチュエータである。
さらに好ましくは移動体の位置制御、速度制御が駆動リンクの回転角度の制御によりできるサーボモータ、ステップモーターである。また遊星ギヤ等の市販の高い減速比をもつ減速機をモータとの間に配置するとトルク不足にならずに良好に動作する。
2点間の往復運動に用いる場合はエア機器で構成するとコンパクトにできる。
減速機をモーターと駆動リンクの間に配置して適正な速度とトルクが発生するようにする。
短いストロークが所望のときはエアシリンダー等で適当なリンクを揺動させてもよい。
【0018】
本発明において駆動リンクの回転角度と移動体の移動量の関係は第5の発明に記載した計算式により回転アクチュエータの角度から運動学が計算できる。
また直線運動からの逆運動学も同様に計算できる。
複雑なリンク機構であっても簡単な数式で求められるので、モーションコントローラの搭載された関数機能で位置制御が容易であり、速度制御も可能である。
さらに、ドライブリンクの回転角度が小さい範囲で使用するときtanα≒αなので三角関数の計算せず誤差少なく近似できる。
【0019】
直動機構とするには移動点が並進運動するような拘束条件を検討した。
そこで特許文献5,6のようなリンク配置がある。
特許文献5ではポースリエ機構を2連並べて配置し移動体が並進して直線運動をする。しかしこの配置で上記比率を上げるには間隔をあけずに配置するため、一つのポースリエ機構の運動が他のポースリエ機構の運動と干渉しないようにずらして配置する必要があり、移動面の捻れが顕著になり剛性が下がる。またサイズが大きくなる。
文献6では補助リンクを配置しているが、前記3のような配置をするときは、
四節リンクが一直線になり特異点を形成することがあり常には姿勢を保持する並進運動ができなかった。
【0020】
軽量かつ高剛性をもつスライド機構とするリンク配置を行うため、リンク材質を強度、重量と製作の容易性からプレート状のリンクを間隔を開けて2連配置してラダー状に組み合わせた基本形状のリンクを揺動中に干渉なく移動するように設計した。図1では連接棒を用いたが板金等で一体物にしてもよい。
ラダー状にしたリンクの間隔を十分取り、内部にモータを配置してもよい。
【0021】
本発明に因れば移動面から金具を延長し別の取り付け面を設けられる
例えば支点軸の方向に対する鉛直面に平行な面を設けても良い。ベース面からさらに短い直動スライド機構となる。
また本機構を移動面の運動方向上に連続して配置するとき、図7のように二つのリンク機構を移動軸は平行にしつつ取り付け角度を設けて配置することで、それぞれのグリッパーの稼働領域内でも相手方のグリッパーが移動可能にすることができる。
またそれぞれのリンク機構を対向配置することで、互いのアクチュエータのはみ出しを相殺することができ、また重心が中心によることで装置のイナーシャが減少し、高速な動作が可能になる。
たとえばロボットに搭載するときこれにより、ロボットの特異点に動作点が入るときは双方のグリッパーの位置をずらすことで制御点を変更することにより特異点回避ができるようになる。
以下では本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例によって限定される物ではない。
【実施例1】
【0022】
第一実施例は図1(b)と図7に記載の直線運動リンク機構からなるたぐり展開装置である。把持グリッパーのうち一方は固定グリッパーであって図1(b)50のようなには布地を固定して把持する形状の先端部材となっている。
相手方51は把持しつつ滑りながらたぐる動作をおこなうため布地の折り返し部を保持する段差を設けている。
段差は布地を手前によせるように傾斜をつけている。また図1(b)のようにたぐり姿勢をとるまでの間にワークが滑らないよう隣接して固定グリッパーを設けても良い。
グリッパーは把持間隔を大きくするためのリンク機構を搭載した。これにより布が揺れても確実な把持ができた。
【実施例2】
【0023】
第二実施例は第一実施例を搭載した図8に記載の布物のたぐり展開システムである。
本実施例は発明者が所属する出願人による特許文献4の展開装置のロボットハンドとして搭載可能な物である。
【産業応用の可能性】
【0024】
本発明はコンパクトな布の展開手段を考える上でできたが、スライダ装置からよりコンパクトな機構に変更することでメリットがある場合、布のハンドリングのための形状計測技術あるいはロボットハンドリングに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の概要図である。(a)は直線運動リンク機構の投影図である。(b)は直線運動リンク機構を対向配置したたぐり展開装置の投影図である。
【図2】作業者の布タオル展開方法の一例を示す図である。
【図3】本発明の課題を示す図である。(a)は既存スライダ機構の行程長と本体長さのイメージである。(b)は本発明による直線運動行程長と本体長さのイメージである。
【図4】回動リンクの原点位置からの回転角と直進運動する支点14の原点からの距離の関係を示す説明図である。
【図5】本発明のリンクの連結を示す説明図である。
【図6】第3の発明を説明する投影図である。
【図7】第6の発明のたぐり展開装置の図面である。(a)正面図 (b)左側面図 (c)平面図
【図8】第7の発明の布物のたぐり展開システムである。(a)システムの外観図 (b)システムの正面図 (c)たぐり展開のため、吊り下げたダオルを把持するときの説明図 (d)把持した一辺をたぐり出して拡げたのちの排出ポーズの説明図である。
【図9】ポースリエ機構が直線運動をすることを説明する図である。(a)数式3の説明図である。(b)数式4の説明図である。
【図10】リンク長さにおける説明図である。(a)公知のリンクの一例である (b)支点14が著線運動するとき支点14の通る直線より他のリンクが上にはみ出さないときの配置である(第2発明の説明) (c)(d)ストロークを増やそうとしたときの問題をしめす図である
【図11】本発明による投影装置の説明図である。(a)LEDを用いた投光装置である。(b)LEDを用いた投光装置の断面、斜視説明図である。(c)無電極プラズマ光源を用いた投光装置の断面、斜視説明図である。(d)メタルハライド光源を用いた投光装置の断面、斜視説明図である。
【図12】
【符号の説明】
【0026】
1 菱形リンク機構部
2 挟持リンク機構部
3 駆動リンク機構部
4 駆動リンク機構の固定リンク
5 駆動リンク機構の回動リンク
6 回動リンクの円軌道中心軸(固定リンクと連結)
7 固定リンクの第2支点軸(挟持リンク機構中心軸と連結)
8 回動リンクの円軌道支点軸
9 菱形リンクの円軌道支点軸(8と連結)
10 挟持リンクの両端(第1)支点軸(11と連結)
11 菱形リンクの両端(第1)支点軸(10と連結)
12 挟持リンクの両端(第2)支点軸(13と連結)
13 菱形リンクの両端(第2)支点軸(12と連結)
14 菱形リンクの直線移動支点軸
15 挟持リンク機構の連結軸(7と連結)
16 菱形リンク1:第1四節リンクのひとつ(直線移動支点軸をもつリンク)
17 菱形リンク2:16の相手方
18 16を含む平行四辺形四節リンク
19 並進直線移動体
20 挟持リンク1:
21 挟持リンク2
22 第2四節リンク
23 第2四節リンクの固定リンク
24 4と23が一体化した固定リンク
25 第1四節リンクの挟持リンクに連結するリンク
26 第2四節リンクの菱形リンクに連結する(23に平行な相手方)リンク
27 支点軸の直線軌道と2つの挟持リンクを同軸で回動する支点軸との最短距離
28 直線移動支点軸(14)が直線移動可能な長さ
30 アクチュエータ
40 直線運動する行程長
41 リンク機構の本体長さ
50 固定グリッパー
51 50の相手方グリッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンクを用いた直線運動機構であって、菱形リンク機構(1)と挟持リンク機構(2)と駆動リンク機構(3)からなり、それぞれのリンク機構を構成するリンクは、二つの平行な第1と第2の支点軸をもつことと、前記支点軸間の距離が同じであることと、
前記菱形リンク機構(1)は4つリンクからなり、そのいずれもが交差しないように、支点軸を同軸で回動可能に連結されること(以下は、支点軸どうしを同軸で回動可能に連結することを、簡便のため連結という)とと、前記駆動リンク機構(3)は、二つのリンクからなり、一方が固定リンク(4)として本体ベース部に固定され、固定された支点軸の一つが相手方のリンク(5)(回動リンク)の第一支点軸と連結(6)されることとと、前記挟持リンク機構(2)は、二つのリンクが一つの支点軸(15)で連結され、(15)が前記駆動リンク機構の固定リンク(4)の第2支点軸(7)と連結されることと、
菱形リンク機構の一方の対角の二つの支点軸である両端支点軸(11,13)は、挟持リンクの両端の支点軸(10,12)と連結されることと、前記菱形リンクの相手方の対角の支点軸の一方の円軌道支点軸(9)は駆動リンク機構の回動リンク(5)の円軌道支点軸(8)と連結されることにより菱形リンク機構の支点軸(14)が直線運動する方向において、支点軸(14)が移動可能ないずれの場所にあってもその移動可能な行程長よりもリンク機構全体の全長が小さいことを特徴とする直線運動リンク機構。
【請求項2】
請求項1に記載の、菱形リンク機構の直線移動支点軸(8)が直線移動可能な長さ(28)と、前記支点軸の直線軌道と2つの鋏持リンクを同軸で回動する支点軸との最短距離(27)との比率が[数1]に記載された範囲であることを特徴とする直線運動リンク機構。
【数1】

【請求項3】
第1および第2の発明において、
菱形リンク機構の直線移動支点軸をもつリンク(16)を含み、平行四辺形の形状を保つ第1の4節リンク機構(18)と、前記(18)のうち(16)と連結するリンクの一つが並進直線移動体(19)であることと、前記挟持リンク機構(2)のうち(16)と連結するリンク(20)を含み、平行四辺形の形状を保つ第2の4節リンク機構(22)と、前記リンク機構(22)のうち挟持リンクの支点軸(15)と連結するリンク(23)が固定リンク(4)と固定され、または一体なった三個の支点軸を持つリンク(24)であることと、前記挟持リンクの菱形リンクと連結する支点軸(12)が連結する第1の(平行四辺形)四節リンク機構(18)のリンク(25)が、第2の四節リンク機構のリンク(26)と固定されまたは一体(27)となり2個または3個の支点軸をもつリンク(27)であることを特徴とする12個のリンクで構成される並進直線運動リンク機構。
【請求項4】
請求項1ないし3の駆 動リンク機構(3)の固定リンク(4または24)が機構の本体ベース部であり、本体ベースにとりつけた回動可能なアクチュエータの回動部中心と駆動リンク機構の回動リンク(5)の円軌道中心点軸を同軸で結合したことを特徴とする直線運動リンク機構。
【請求項5】
請求項1ないし4の発明に記載した直線移動支点軸(8)の直線軌道と回動リンク5が前記法線に近い位置で、5の二つの支点軸を結ぶ直線が鉛直になる回転角度を原点角度にするとき、原点からの揺動軸の回転角度αと、原点角度における移動体の原点位置からの直線移動距離Lが下記の数式で表される直線運動リンク機構。
【数2】

ただしHは請求項2に記載の菱形リンク機構の直線移動支点軸(8)が直線移動可能な長さ(28)と、前記支点軸の直線軌道と2つの鋏持リンクを同軸で回動する支点軸との最短距離(27)
【請求項6】
二つのグリッパーと、前記グリッパーの少なくとも一つは、並進直線移動するように、請求項1ないし5に記載の直線運動機構の移動体にグリッパーを取り付けたことを特徴とする一つまたは二つの直線運動リンク機構からなる布物のたぐり展開装置。
【請求項7】
請求項6に記載のたぐり展開装置と、前記たぐり展開装置のポーズを制御するロボットまたは展開装置とを接続したことを特徴とする布物のたぐり展開システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−176481(P2012−176481A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58513(P2011−58513)
【出願日】平成23年2月27日(2011.2.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18から22年度、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、戦略的先端ロボット要素技術開発 プロジェクト委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)
【Fターム(参考)】