説明

相転移の口臭除去剤

使用環境によって相転移が起る口臭除去剤を提供する。W/Oエマルジョンタイプの口臭除去剤は、モノグリセリド(monoglycerides)を主基剤とし、ポリマー、口臭除去有効成分及び溶剤を包含する。また液状の口臭除去剤は、モノグリセリドを主基剤とし、ポリオール、ポリマー、口臭除去有効成分及び溶剤を含んでなる。口臭除去剤は、口腔内に噴霧される場合、噴霧可能な流動性を持っており、使いやすい。更に、口臭除去剤は、口腔内噴霧された後、唾液などの水分によってキュービック相(cubic phase)に変化して、口臭除去剤の粘度及び付着性を増加させる。従って、口臭除去有効成分が、口臭除去剤から徐放的に放出され、持続的な口臭除去効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用環境によって相転移が起る口臭除去剤に関連し、そして口腔内に適用された後、口腔内の水分、例えば唾液によって製剤がキュービック相(cubic phase)に変化して、口腔内に付着し、固定でき、そして相転移によって付着性を維持する間に薬物が口腔内へゆっくり放出されて、口臭除去効果を発揮する剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
人体における口腔の3大機能としては、咀嚼機能、発声機能及び審美機能が挙げられ、口腔の健康とは、このような3大機能が適宜に発揮されて身体の健康のみならず、社会活動と精神的な機能に障害にならない口腔組織の状態であると定義できる。このような口腔の健康は、主に虫歯及び歯周病のような口腔の疾患によって破壊されたり、着色のような種々の要素で、口腔の美容機能が失われ審美的な機能が低下する場合もある。また、その他の口腔の疾患及び胃腸疾患によって口臭が発生し、それが、対外的な活動に障害要因となる場合もある。
【0003】
最近の社会発展に伴い、対人関係及び社会活動の範囲が広がり、個人的な衛生概念の発達を促している。このような状況下、益々口臭に対する認識が高まり、よって口臭を積極的に管理しようとする傾向が強くなりつつある。このような変化に合わせて、口臭除去に対する効果的な治療、及び歯磨き剤、うがい液、カプセル、付着剤などへの薬効剤の配合など、多様な国内外の研究が行われてきた。
【0004】
従来の多くの口臭除去剤に関する技術では、主に口臭を誘発する細菌に対する抗菌剤、及び口臭原因物質をマスキングする成分を包含する、歯磨き剤及びうがい液に対する研究が行われた(アメリカ特許第6、251、372号及びアメリカ特許第6、197、288号)。しかし、これら製剤は、口臭除去効果を発揮し、維持するのに使用上の制約がある。例えば、歯磨き剤の場合、歯を磨いた後には効能成分を維持できない短所がある。
【0005】
このような短所を補うため、アメリカ特許第5、466、437号及びアメリカ特許第6、682、722号では、ポリマーを適用して薬物の送達効果を増大しようとする試みが行われてきた。しかし、従来の歯磨き剤のような軟膏状の剤形の使用では、歯ブラシを用いて歯を磨くべきであり、また水で口をすすがなければならないので、場所に制約があるとの短所が相変わらず残っている。
【0006】
すなわち、従来の口臭除去製品の形態としては、歯磨き剤、うがい液、チューイングガム、マウススプレイ、ブレスフィルムなどがあるが、歯磨き剤とうがい液の場合、使用空間に対する制約があり、マウススプレイやブレスフィルムの場合、効能の持続時間が短くて効能体感に限界がある。また、ブレスフィルムの場合は温度、湿度などによって製造されたフィルムの収縮、凝集などの現象があって流通上の問題点も加わっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の口臭除去剤が有する上記問題点を改善するために案出されたもので、その目的は持ち運び易く、そして使い易く、そして口腔内に噴霧された後、唾液などの水分によってキュービック相(cubic phase)に変化して、口臭除去薬効剤をゆっくり持続的に放出して、長時間の口臭除去の効能を維持できるようにした、新規な形態のスプレイタイプの口臭除去剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明の一態様では、モノグリセリド(monoglycerides)を主基剤とし、ポリマー、口臭除去有効成分及び溶剤を含むことを特徴とする、W/Oエマルジョンタイプの口臭除去剤を提供する。
本発明の別な態様では、モノグリセリドを主基剤とし、ポリオール、ポリマー、口臭除去有効成分及び溶剤を含むことを特徴とする、液状の口臭除去剤を提供する。
【0009】
本発明では、既存の口臭除去製品の長所は維持しつつ効果を増大するために、口腔内に容易に噴霧できる適切な物性を有する口臭除去剤の剤形を開発し、効果発揮時間を延ばそうとした。具体的には、本発明者らは、口腔内に噴霧された後、口腔内の唾液のような水分によってキュービック相に変化して、口臭除去有効成分をゆっくり持続的に放出し、それにより長時間の口臭除去効能を維持できるようにした、新規な形態の口臭除去システムを開発しようとしてきた。
【0010】
本発明の第一の態様によるW/Oエマルジョンタイプの口臭除去剤組成物は、モノグリセリドを主基剤にし、ポリマー、口臭除去有効成分及び溶剤を包含する。W/Oエマルジョンタイプの口臭除去剤組成物が、口腔内に噴霧された後、キュービック相に変化して、口臭除去有効成分をゆっくり放出するので、持続的な口臭除去又は口臭マスキングが可能である。
【0011】
本発明の第二の態様による液状の口臭除去剤組成物は、モノグリセリドを主基剤にし、溶媒(モノグリセリドを完全に溶解するための、例えば、水又はエタノール)、界面活性剤、ポリマー、口臭除去有効成分を包含する。特に、界面活性剤としてのヒドロキシル(−OH)基を有するポリオール類の含量を変えることによってモノグリセリドのゲル化時間を調節でき、その結果、口腔及び咽喉などに経時的に有効成分の選択的な送達を可能にする。更に、主基剤であるモノグリセリドを完全に可溶化することにより、口臭除去剤の相安定性が優れたものになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明をさらに詳しく以下で説明する。
本発明の口臭除去剤では、モノグリセリド、好ましくは、グリセリルモノオレエート(glyceryl monooleate)を主基剤として使う。グリセリルモノオレエートの場合、公知のように、温度と水分の含量によって相転移する特徴を有するので、相変化によって構造的な形態及び物性が変化する特性を有する。グリセリルモノオレエートの相転移過程を見ると、ラメラ相(lamellar)、逆ミセル相(reverse micell)、キュービック相、逆ヘキサゴナル相(reverse hexagonal)への相転移が起ると、流動性を失い、付着性を有する固体構造になる。このような物質の特性によって、口腔内に噴霧された場合、温度変化や水分含量が高くなることによって構造がキュービック相に変化して、固形化して流動性が無くなる。
【0013】
本発明の口臭除去剤組成物は、このように環境の温度、水分及びpHなどによってグリセリルモノオレエートの相が変わる特徴を用いて剤形に発展させたものである。また、本発明の剤形では、剤形が口腔内に噴霧されて相転移を起こして、口臭除去薬効成分が舌からゆっくり放出されるようにした。
【0014】
すなわち、本発明の口臭除去剤は、モノグリセリド、好ましくはグリセリルモノオレエートを主基剤として使用して適切な流動性を有し、口腔内への噴霧が容易になる。更に、本発明の口臭除去剤は、唾液の流入によって粘度が迅速に上昇して、舌に皮膜を形成し、容易に付着するようになる。結果として、本発明の口臭除去剤は、口腔内の条件下で容易に稀釈されたり、消失することはない。 一方、本発明の口臭除去剤は、グリセリルモノオレエートと唾液による口臭除去剤の粘度増加を調整するために、グリセリルトリオレエートを更に包含していてもよい。
【0015】
本発明の口臭除去剤に用いられるモノグリセリドは、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノリノレエート(glyceryl monolinoleate)、グリセリルモノアラキドネート(glyceryl monoarachidonate)、グリセリルモノステアレート又はこれらの混合物であってもよい。モノグリセリド、好ましくはグリセリルモノオレエートは、組成物全体重量をベースに3〜95重量%の量で添加でき、剤形の形態を備えるためには、好ましくは25〜70重量%の量で添加される。グリセリルモノオレエートの量が、3重量%より少ない場合、相転移の効果が微小で追求する機能を効率よく発揮することが難しく、95重量%より多い場合、製造及び流通中に相転移が起って使用し難くなる。
【0016】
本発明の第一態様によるW/Oエマルジョンタイプの口臭除去剤の場合、口腔内へ口臭除去剤を噴霧する前後の物性、特に口臭除去剤の粘度を効率よく変化させるために、適切な含量の溶剤が必要である。すなわち、主基剤において水又はアルコールのような溶剤の含量を変えることにより、口臭除去剤の粘度の上昇が調節できる。特に、一部水溶性の薬効成分などを口臭除去剤に適用しようとする場合、溶剤の含量を調節すると、口臭除去剤を容易に剤形化することが可能である。このような剤形に適した溶剤としては、精製水、エタノール、グリセリン、トリグリセリド、プロピレングリコール、トリアセチン(triacetine)又はこれらの混合物が挙げられる。これら溶剤の含量は、組成物全体の約1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%の範囲である。
【0017】
本発明の第二の態様による液状の口臭除去剤では、物性、特に口腔内へ口臭除去剤を噴霧する前後の物性、特に口臭除去剤の付着力を調節するためには、適切なポリオールが必要である。モノグリセリドのゲル化時間は、ヒドロシキル(−OH)基を有するポリオール類の含量を変えることにより調節でき、これによって口腔及び咽喉などに経時的に有効成分の選択的な送達を可能にする。ポリオールは、グリセリルモノオレエートがキュービック相に変わることを妨害して、スポンジ(網状)構造の立方体を形成する。すなわち、主基剤であるグリセリルモノオレエート中のポリオールの含量を増加させると、口臭除去剤の接着力が減少するが、口臭除去薬効成分の放出速度が速くなる。一方、ポリオールの含量を減らすと口臭除去剤の接着力が増加し、口臭除去薬効成分の放出速度は減少する。
【0018】
本発明で用いられるポリオールの例として、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビタンモノエステル、植物油(例えば、ヒマシ油、菜種油など)が挙げられる。ポリオールの含量は、組成物総重量に対して0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは1〜15重量%の範囲である。
【0019】
本発明の第二の様態による液状の口臭除去剤では、モノグリセリド、好ましくはグリセリルモノオレエートを可溶化するために、水又はエタノールが使用可能である。グリセリルモノオレエートは、エタノールに自由に溶けるので、エタノールを基本溶媒とし、一部水溶性の薬効成分などを口臭除去剤に適用しようとする場合は、水/エタノール混合溶媒を使用することができるが、水の含量は、エタノール重量に対して50%を越えないように限定されている。本発明の口臭除去剤でエタノールが単独に使用される場合、エタノールの使用量は、約1〜80重量%、好ましくは1〜70重量%の範囲にある。また、エタノール/水混合溶媒を使用する場合は、水の添加によってグリセリルモノオレエートの溶解度が減少するので、使用する混合溶媒の量は、約5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%の範囲である。
【0020】
本発明の口臭除去剤は、主基剤(つまり、グリセリルモノオレエート)の物性を調節するために高分子化合物、すなわちポリマーを包含することができる。例えば、相転移が可能であり付着力に優れたポリマー、又は温度の変化による異なる挙動を示すポリマーを添加することによって、剤形の物性を変化させることができる。剤形の物性は、少量の高分子化合物を使っても変化させることができる。更に、流動性の変化や固形化に必要な水分含量が、添加される高分子化合物の量によって異なってくるので、ポリマーの選択が重要となる。
【0021】
本発明のW/Oエマルジョンタイプの口臭除去剤において、ポリマーは、0.01〜30重量%、モノグリセリドが可溶化された液状の口臭除去剤では0.01〜20重量%の範囲で使用することができる。スプレイ可能な粘度を有して剤形を保つ口臭除去剤の製造のために、ポリマーは、好ましくは、0.1〜10重量%の範囲で使用する。
【0022】
本発明の口臭除去剤に使用できる、適したポリマーの例は、次の通りである:非イオン性ポリマー系としては、キトサン、ポリビニルアルコール、ポロキサマー(Poloxamer)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ポリオックス(Polyox)とその塩よりなるポリマーなどで、陰イオン性ポリマーとしては、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロースとその塩よりなるポリマー、キサンタン・ガム、カラギーナン・ガム、アルギネートガムなどで、その他ポリマー類としては、カラヤガム、アカシアガム(アラビアゴム)とその塩誘導体、ゼラチンなどで、合成ポリマーとしては、ポリアクリル酸、カルボポール(carbopol)、ポリクオタニウム−11、ポリクオタニウム−39、ポリアルキルビニルエーテル−マレイン酸(PVM/MA)共重合体(Gantrez AN 119, AN 139, S-97)などで、そしてこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
本発明の口臭除去剤に用いる口臭除去有効成分としては、例えば、殺菌剤、非発酵性糖アルコール、天然抽出物、無機化合物、酵素、酵素阻害剤などが使用できる。本発明の口臭除去剤の口臭除去有効成分として用いられる殺菌剤としては、トリクロサン、塩化セチルビリジウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゾトニウム、塩化ベンザルコニウムなどがある。適した非発酵性糖アルコールの例としては、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、パラチニトール(palatinitol)、パラチノース、オリゴ糖などで、適した天然抽出物の例としては、緑茶抽出物、パンシル(柿葉)抽出物、サンギナリア抽出物、牧丹皮抽出物などがある。また、適した無機化合物の例としては、塩化亜鉛、グルコン酸銅、ピロリン酸ナトリウム(TSPP)、酸性ピロリン酸ナトリウム(SAPP)、ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)、トリポリリン酸ナトリウム(STP)、トリポリリン酸ナトリウムカリウム(SKTP)、ピロリン酸カリウム(TKPP)、酸性メタポリリン酸ナトリウム、酸性ポリリン酸ナトリウムなどが使用可能である。適した酵素の例としては、デキストラナーゼ、ブドウ糖酸化酵素、グルコースペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、グルカナーゼ、プロテアーゼ、リゾチームなどが含まれる。適した酵素阻害剤の例としては、ペプチド阻害剤及びコラゲナーゼ阻害剤が含まれ、これらは、口腔内の口臭発生に関与する。
【0024】
より優れた効果を得るために、これら口臭除去有効成分は、単独又はそれらの混合物として用いることができる。本発明の第一の態様によるW/Oエマルジョンタイプの口臭除去剤においては、組成物全体の0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜30重量%の濃度で添加できる。本発明の第二の態様による液状の口臭除去剤においては、モノグリセリドが可溶化される場合、組成物全体の0.001〜30重量%、好ましくは0.01〜10重量%の濃度で添加することができる。口臭除去有効成分が固体又は粉末の場合、水に予め溶解又は分散させて、調剤すればさらに均一な最終の口臭除去剤にすることができる。
【0025】
本発明の口臭除去剤は、歯磨き剤、うがい液のような従来の口臭除去剤に比べて、口臭除去有効成分の安定化に有利であるだけでなく、流通、保管時の効能低下の防止などにおいてさらに好ましい。更に、本発明の口臭除去剤は、口臭除去有効成分がpHによってその効能に違いがあり得るので、口臭除去有効成分のpH調節機能のあるpH調整剤を安定化剤として添加することができる。これら安定化剤は、保存時pH変化を抑え、口腔に刺激を与えないようにpHを維持できるpH調節機能のある物質であって、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、ギ酸、乳酸などのような有機酸及びこれら塩、更にこれらの混合物を使用することができる。これら安定化剤の使用量は、用いる口臭除去有効成分の種類及び含量によって変化させることができる。
【0026】
前述の成分に加えて、本発明の口臭除去剤は、使用感をさらに良くし、好みを与えるために、香味剤と甘味剤から選ばれる少なくとも1つの添加剤を使用することができる。代表的な香味剤としては、ペパーミント、スペアミント、メントール、シトラス、ハ−ブなどがあり、甘味剤としては、ステビア(stevia)、 アミノ酸類、アスパルテーム、サッカリンナトリウムなどが使用可能である。
【0027】
以上の成分を包含することによって使用感が改善され効能が向上した、新規なタイプの口臭除去剤の送達システムが完成される。
【0028】
本発明による口臭除去剤の特徴は次のように要約される。
第一に、口臭除去有効成分を口腔に送達するために本発明の口臭除去剤を口腔内に噴霧した場合、舌及び歯などに付着し、固定される。特に、口腔唾液などの水分の流入により口臭除去剤の粘度が増加して、口腔内に口臭除去剤が付着及び固定される。本発明の口臭除去剤は、噴霧時に適切な流動性を持ち、使用に便利である。本発明の口臭除去剤は、口腔内に噴霧された後、唾液によってキュービック相に変化し、唾液などによって容易に稀釈されたり、消失することはない。
【0029】
第二に、口臭除去有効成分が、長時間にわたってゆっくり放出されることにより、効能発揮時間を延ばすことができる。特に、唾液などの水分の流入により粘度が上昇して舌などに付着した後は、口臭除去剤内の口臭除去有効成分がゆっくり放出され、これにより口臭除去有効成分と口臭源が接触する時間を延ばすことが可能である。
【0030】
第三に、モノグリセリドを完全に可溶化した液状の口臭除去剤では、相安定性が増加し、低温でも安定性が良好である。また、この液状の口臭除去剤では、ポリオールを用いて相転移時間を調節できるので、咽喉及び口腔などに経時的な口臭除去有効成分の選択的な送達が可能である。
【0031】
以下、本発明の好ましい実施例を参照して本発明をさらに具体的に説明する。但し、これら実施例は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明の範囲をこれに限定するものではない。
【0032】
実施例1〜5及び比較例1
表1に示される処方によって、グリセリルモノオレエートとグリセリルモノリノレエートを、約50℃で加熱しながら液化させた後、脂溶性成分を混合して均質な溶液を作る。水溶性成分を精製水及びエタノールに混合して均質化した後、二つの溶液を混合してW/Oエマルジョンタイプの口臭除去剤を製造した。次の表1の数値は、重量%(100g基準のw/w比)で示す。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例6、7及び比較例2
表2に示される処方によって、グリセリルモノオレエートを約50℃で加熱しながら液化させた後、脂溶性成分を混合して均質な溶液を作る。水溶性成分を精製水及びエタノールに混合して均質化した後、二つの溶液を混合してW/Oエマルジョンタイプの口臭除去剤を製造した。
【0035】
実施例8〜11
表2に示される処方によって、グリセリルモノオレエートを常温でエタノールに完全に溶解させた後、ポリオール及び脂溶性成分を精製水及び水溶性成分に混合して、液状の口臭除去剤を製造した。次の表2の数値は、重量%(100g基準のw/w比)で示す。
【0036】
【表2】

【0037】
効果試験例
(1)粘度変化の測定
実施例1〜11及び比較例1〜2で製造した製剤について、唾液流入前と後の粘度変化をブルックフィールド粘度計(Brookfield Viscometer)を用いてRVT方式で測定した。その結果を、次の表3及び表4に示す。この場合、唾液は人工唾液を使用した。唾液は、各製剤重量に対して、100重量%の量を加えた。
【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
前記表3及び4に示したように、本発明によるグリセリルモノオレエートを含有する口臭除去剤は、剤形に関係なく、水分の流入によって粘度が上昇し、硬化されたことが確認できる。
【0041】
(2) 口臭除去剤の溶解速度及び残存量の評価
口腔内への噴霧後、相転移された製剤の維持時間を評価するため、人工唾液を1ml/分の速度で流して、剤形が完全に溶解されるのに要する時間を測定した。その結果を次の表5に示す。
【0042】
【表5】

【0043】
前記表5の結果は、本発明による実施例1〜5の製剤が、比較例1の製剤と比較する場合、完全溶解時間が著しく短いことを示す。
【0044】
(3)相安定性の評価
実施例6〜11及び比較例2で製造した口臭除去剤を、それぞれ常温、40℃、50℃、60℃、0℃、及び−10℃の恒温槽に入れた後、3ヶ月間の製剤の相安定性を評価した。その結果を次の表6に示す。表6において、◎印:良好、×印:相分離発生、を示す。
【0045】
【表6】

【0046】
前記表6の結果から示されるように、W/Oエマルジョンタイプの剤形は、低温安定性に劣るが、グリセリルモノオレエートを可溶化して製造した製剤は、低温安定性が良好であることが分かる。
【0047】
(4)相転移に要する時間の評価
実施例9〜11で製造した口臭除去剤を、スライドガラス上に0.2g滴下した後、カバーガラスでカバーをして、偏光顕微鏡上に置いた。次いで、カバーガラスの一端面に人工唾液1gをスポイトで滴下した後、口臭除去剤の結晶状の変化を1秒当り8連写のデジタルカメラで撮影して観察し、相転移に要する時間を測定した。次の表7は、これら製剤の相転移に要した時間を示す。
【0048】
【表7】

【0049】
前記表7の結果から、ポリオールの含量が増加するほど、相転移に要する時間が延びることが分かる。
【0050】
(5)口臭除去効果の評価
20〜40代の健康な成人男女60名を対象に、初期口臭程度を評価して、口臭の水準が類似している6集団(各集団に10人ずつ)に分けた。口臭の評価方法は、専門パネルテスト(4名のパネル)によって10点スケールで評価した。10点スケールでは、1点は全く口臭のない状態であり、5点は口臭があるものの不快ではない水準であり、9点はどうにも我慢できないほどの不快な口臭の強度と設定した。口臭評価は、製剤をそれぞれ2回噴霧した後、2分及び30分経過した後に実施した。評価対象者には、テスト中には食べ物の摂取を制限したが、対話は可能にした。その結果を次の表8に示す。
【0051】
【表8】

【0052】
前記表8の結果から示されるように、比較例1の口臭除去剤と実施例1〜5の口臭除去剤との間には明らかな効能の差があることが分かる。口臭除去剤の噴霧の2分後は、比較例1の製剤が、かえって実施例1及び2の製剤より良好な結果を示したが、30分後には実施例1及び2の製剤で遥かに優れた結果を示した。この結果は、実施例1〜5の製剤が口腔内噴霧された後、相転移により口臭除去有効成分を比較例の製剤に比べて長時間ゆっくり放出したことを示す。
比較例1と実施例1〜5で製造された口臭除去剤は、有意差検定の結果全て有意な水準であった(p<0.05)。
【0053】
(6)使用便利性の評価
20〜40代の健康な成人30名を対象に、実施例1と比較例1の口臭除去剤サンプルを配布し、従来のマウススプレイのような方法でサンプルを使用した場合、サンプルの味と使いやすさを5点スケールで採点するようにした。その結果を次の表9に示す。
【0054】
【表9】

【0055】
前記表9の結果から、実施例1の口臭除去剤が、使用感において比較例1の口臭除去剤に比べて優れることが分かる(p<0.05)。
【産業上の利用可能性】
【0056】
上記から明らかなように、本発明の口臭除去剤によれば、モノグリセリド、好ましくはグリセリルモノオレエートを主基剤として用い、高分子化合物を形状及び口腔内付着の目的で使用する。本発明の口臭除去剤は、口腔内への噴霧時に十分流動性がよいので、使用し易い。更に、本発明の口臭除去剤は、口腔内に噴霧された後、唾液のような水分でキュービック相に相転移して、口臭除去剤の粘度及び付着性を増加させる。従って、口臭除去有効成分が、口臭除去剤からゆっくり放出され、結果として持続性の口臭除去効果が得られる。
【0057】
本発明の好ましい態様を、説明のために開示してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に開示したような本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、種々の修正、追加及び置き換えが可能であることは、認識されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノグリセリドを主基剤とし、ポリマー、口臭除去有効成分及び溶剤を含むことを特徴とする、W/Oエマルジョンタイプの口臭除去剤。
【請求項2】
モノグリセリドを主基剤とし、ポリオール、ポリマー、口臭除去有効成分及び溶剤を含むことを特徴とする、液状の口臭除去剤。
【請求項3】
モノグリセリドが、グリセリルモノオレエート(glyceryl monooleate)、グリセリルモノリノレエート(glyceryl monolinoleate)、グリセリルモノアラキドネート(glyceryl monoarachidonate)、グリセリルモノステアレート(glyceryl monostearate)又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の口臭除去剤。
【請求項4】
モノグリセリドの量が、組成物全体の3〜95重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の口臭除去剤。
【請求項5】
ポリオールが、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビタンモノエステル、植物油又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項2に記載の口臭除去剤。
【請求項6】
モノグリセリドのゲル化時間が、ポリオールの量によって調節されることを特徴とする、請求項2に記載の口臭除去剤。
【請求項7】
ポリオールの量が、組成物全体の0.01〜20重量%であることを特徴とする、請求項2に記載の口臭除去剤。
【請求項8】
ポリオールの量が、組成物全体の1〜15重量%であることを特徴とする、請求項7に記載の口臭除去剤。
【請求項9】
ポリマーが、キトサン、ポリビニルアルコール、ポロキサマー(Poloxamer)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ポリオックス(Polyox)とその塩、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、キサンタン・ガム、カラギーナン・ガム、アルギネートガム、カラヤガム、アカシアガム(アラビアゴム)とその塩誘導体、ゼラチン、ポリアクリル酸、カルボポール(carbopol)、ポリクオタニウム−11、ポリクオタニウム−39、ポリアルキルビニルエーテル−マレイン酸共重合体又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の口臭除去剤。
【請求項10】
ポリマーの量が、組成物全体の0.01〜30重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の口臭除去剤。
【請求項11】
ポリマーの量が、組成物全体の0.01〜20重量%であることを特徴とする、請求項2に記載の口臭除去剤。
【請求項12】
溶剤が、精製水、エタノール、グリセリン、トリグリセリド、プロピレングリコール、トリアセチン又はこれらの混合物であり、そして組成物全体の1〜70重量%で存在することを特徴とする、請求項1に記載の口臭除去剤。
【請求項13】
溶剤が、エタノール単独又は水とエタノールの混合物であり、そして組成物全体の5〜90重量%で存在することを特徴とする、請求項2に記載の口臭除去剤。
【請求項14】
口臭除去有効成分が、殺菌剤、非発酵性糖アルコール、天然抽出物、無機化合物、酵素、酵素阻害剤又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の口臭除去剤。
【請求項15】
殺菌剤が、トリクロサン、塩化セチルピリジウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゾトニウム、塩化ベンザルコニウム又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項14に記載の口臭除去剤。
【請求項16】
非発酵性糖アルコールが、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、パラチニトール(palatinitol)、パラチノース、オリゴ糖又はこれらの混合物であることを特徴とする 請求項14に記載の口臭除去剤。
【請求項17】
天然抽出物が、緑茶抽出物、パンシル(柿葉)抽出物、サンギナリア抽出物、牧丹皮抽出物又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項14に記載の口臭除去剤。
【請求項18】
無機化合物が、塩化亜鉛、グルコン酸銅、ピロリン酸ナトリウム(TSPP)、酸性ピロリン酸ナトリウム(SAPP)、ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)、トリポリリン酸ナトリウム(STP)、トリポリリン酸ナトリウムカリウム(SKTP)、ピロリン酸カリウム(TKPP)、酸性メタポリリン酸ナトリウム、酸性ポリリン酸ナトリウム又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項14に記載の口臭除去剤。
【請求項19】
酵素が、デキストラナーゼ、ブドウ糖酸化酵素、グルコースペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、グルカナーゼ、プロテアーゼ、リゾチーム又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項14に記載の口臭除去剤。
【請求項20】
酵素阻害剤が、ペプチド阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項14に記載の口臭除去剤。
【請求項21】
口臭除去有効成分の量が、組成物全体の0.001〜50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の口臭除去剤。
【請求項22】
口臭除去有効成分の量が、組成物全体の0.001〜30重量%であることを特徴とする、請求項2に記載の口臭除去剤。

【公表番号】特表2009−500399(P2009−500399A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520185(P2008−520185)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002650
【国際公開番号】WO2007/007978
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(502178883)エル・ジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミティッド (6)
【Fターム(参考)】