説明

看板装置

【課題】看板装置において、表示内容の書き換えが可能で、かつ、自由な浮遊移動を可能にする装置を提供する。
【解決手段】電気的に表示内容を書き換え可能としたプラスチックディスプレイ2を風船1の表面に取り付け、もしくは風船の付随物として風船から連ねて取り付けたことを特徴とする看板装置である。反射型の可撓性プラスチックディスプレイの他に電源装置と制御装置も取り付け、電源装置としては太陽電池を利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広告目的などで利用する風船を使用した看板装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前より看板は宣伝・広告用として広く用いられているが、特に建物の高い位置など目立つところに看板を取り付けることにより、交差点で信号待ちをする人々などの視線を集めることができる。最近では表示内容を変更できるように電子ディスプレイを用いた看板を利用して、多くの情報を提供できるようにしている。
【0003】
特殊な広告看板としては風船を用いた広告看板、つまりアドバルーンというものがあるが、アドバルーンは遠方からでも見ることができるため、多くの人に訴えることができる。新規店舗オープン時や販売促進キャンペーンのときなどは宣伝文章を記した垂れ幕を垂らした係留気球を利用したり、気球や飛行船などの風船の乗り物に企業名を記し、移動しながら宣伝したりと利用範囲は大変広い。ここで、風船とは周囲の空気より軽い気体を内包することにより、空中に浮かぶことのできるものの総称であって、熱気球のように暖められた軽い空気を利用するものもある。
【0004】
しかしアドバルーンでの広告は基本的に風船もしくは風船への付随物に印刷したものを用いるため表示内容を変えることはできず、多くの情報を伝えることは困難であり、なおかつ、見る人にインパクトを与えづらい。
【0005】
そこで、建物に取り付ける看板の様にディスプレイを搭載しようとすると、遠方からも見えるようにするためには大変大きなディスプレイが必要となり、従来のガラス基板を用いたディスプレイでは重量が重くなる。水素やヘリウムガス等と周囲の空気との密度差を利用して浮力を得る風船の内、大型の気球や飛行船のように人が乗ることを初めから想定したものは別としても、看板装置として大型で重いディスプレイを搭載して風船を浮かせることは困難であった。
【0006】
特許文献1によれば、係留気球の垂れ幕に軽量の有機分散型EL発光シートを利用した発光アドバルーンを開発している。しかしながら、この発明ではEL発光シートをディスプレイとして利用し、表示内容を変更可能にすることは目的として含まれておらず、あくまで発光サインとしての利用を目的としている。
【特許文献1】特開2000−105562号公報 また前記発明では、EL発光シートは地上に設置した電源から導線を引くことにより点灯させているため、アドバルーンの上下の浮遊移動は可能であるものの、移動に大きな制限が生じる。そのため、気球や飛行船などの風船の乗り物は言うまでもなく、浮遊移動の制限をできるだけ回避したい場合はこの構造を用いることはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が課題とするところは、看板装置において、表示内容の書き換えが可能で、かつ、自由な浮遊移動を可能にする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において上記課題を達成する為に、まず請求項1の発明は、電気的に表示内容を書き換え可能としたプラスチックディスプレイを風船の表面に取り付け、もしくは風船の付随物として風船から連ねて取り付けたことを特徴とする看板装置である。
【0009】
また請求項2の発明は、請求項1記載の看板装置において、前記プラスチックディスプレイが表示内容を書き換える際のみに電気的な制御を必要とするメモリ性のプラスチックディスプレイであることを特徴とする看板装置である。
【0010】
また請求項3の発明は、請求項1または2記載の看板装置において、前記プラスチックディスプレイが可撓性を有することを特徴とする看板装置である。
【0011】
また請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の看板装置において、前記プラスチックディスプレイが反射型ディスプレイであることを特徴とする看板装置である。
【0012】
また請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の看板装置において、前記プラスチックディスプレイが少なくともプラスチック基板上に形成されたTFT(薄膜トランジスタ)を含むことを特徴とする看板装置である。
【0013】
また請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の看板装置において、前記プラスチックディスプレイが少なくともプラスチック基板上に形成されたカラーフィルタを含むことを特徴とする看板装置である。
【0014】
また請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の看板装置において、前記プラスチックディスプレイがガスバリア性を有することを特徴とする看板装置である。
【0015】
また請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の看板装置において、前記プラスチックディスプレイの前面に紫外線カットフィルタが積層されていることを特徴とする看板装置である。
【0016】
また請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の看板装置において、前記プラスチックディスプレイの表示内容の書き換えを行うために、電源装置と制御装置を取り付けたことを特徴とする看板装置である。
【0017】
また請求項10の発明は、請求項9記載の看板装置において、前記電源装置が太陽電池を利用していることを特徴とする看板装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、電気的に表示内容を書き換え可能としたディスプレイを用い、多くの情報量を扱えるようにした。また、自由な浮遊移動の手段として風船を用い、それに取り付けるディスプレイとして、ガラス基板を用いたディスプレイでなくプラスチックディスプレイを用いることにより、風船の浮力に関わる積載重量の問題を解消した。風船のように主に屋外で用いるディスプレイは、遠方からでも表示内容が視認できるよう大型のものが必要となるが、プラスチックディスプレイであれば、ガラス基板を用いたディスプレイのように重くなることはない。
【0019】
さらにこのプラスチックディスプレイが可撓性を有すれば、曲面形状の風船の表面に貼り付けたり、風船の付随物として風船から連ねて取り付けるにあたって、制約の少ない方法を選ぶことが可能となる。
【0020】
本発明で用いるプラスチックディスプレイが反射型である場合は、屋外の明るい環境では透過型より視認性が良い上、透過光による照明を必要とせず、外部光を利用できる。
【0021】
また、本発明で用いるディスプレイに、表示内容を変更するときのみ電力を必要とするメモリ型を用いれば、少ない電力で駆動できる。反射型ディスプレイ使用の場合に透過光による照明が不要であることと同様に、小容量の供給電源で賄えるので、看板装置全体の設計上、好都合である。
【0022】
電源装置として、小容量の乾電池や太陽電池でも十分表示可能な例では、看板装置の外部から導線をつないで電力を供給する必要は無い。また、ディスプレイを駆動するための制御装置も看板装置内に設置することができる。そのため看板装置は外部と隔絶されて機能することが可能となり、アドバルーンのように必ずしも移動範囲が制限されることもない。また、制御装置は地上からの遠隔操作も可能であり、看板装置の活用形態が広がる。
【0023】
本発明で用いるプラスチックディスプレイはTFT(薄膜トランジスタ)を有していれば、動画の表示も可能であり、カラーフィルタを含むことによってカラー表示も可能となるなど、高レベルの画像も期待できる。
【0024】
また、本発明で用いるプラスチックディスプレイは、屋外の過酷な環境にさらされるため、ガスの透過・流入や紫外線の透過・吸収等により、ディスプレイとしての表示品質の劣化が特に懸念されるが、それらの外部環境からのガスや紫外線に対する防御の面でも、ガスバリア性と紫外線カットフィルタとを付与することにより、高い性能を長期間保持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に係る看板装置に関して最良の形態を示す。
【0026】
まず、本発明で用いる風船は水素やヘリウムガスによって浮遊するものであるが、その構造や形状に関しては特に限定されることはない。商業用で一般的に用いられるアドバルーンや、乗り物の気球や飛行船といったような形状のものでも、プラスチックディスプレイを貼り付けられさえすれば、どのような形状でも問題はない。
【0027】
プラスチックディスプレイを貼り付ける場所は風船の本体、もしくは風船への付随物などどこでも良い。例えば、商業用アドバルーンの垂れ幕などにプラスチックディスプレイを貼り付けることも可能である。
【0028】
このとき用いるプラスチックディスプレイは風船が浮遊状態を保つことができるくらい軽量なものであり、尚且つ可撓性を有する方が取り付けの制約が小さくなる。
【0029】
プラスチックディスプレイは一般的な液晶ディスプレイや有機ELなどを用いることができるが、電気的な制御により表示内容の書き換え可能なメモリ性のものの方が望ましい。メモリ性を有したディスプレイの表示材料としては、一般的には液晶や電気泳動型マイクロカプセル、電子粉流体などを用いたものが考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
また、風船に貼り付けるプラスチックディスプレイは主に屋外で用いることが多いため、反射型ディスプレイを用いることが適している。反射型ディスプレイでは外部の照明を利用するので、透過光照明として専用の光源を特別に備える必要は無い。
【0031】
プラスチックディスプレイにおいて、プラスチック基板上にTFTを形成する場合には、通常は可撓性を有し成膜温度を高くできないという制約条件を考慮に入れると、活性層には曲げに追随でき、低温で成膜可能な有機半導体や酸化物半導体を用いることが適している。
【0032】
プラスチックディスプレイがプラスチック基板上にカラーフィルタを形成する場合には、反射型ディスプレイであれば、カラーフィルタも反射型の構成になる。反射型カラーフィルタとしては、RGBタイプとCMYタイプのものがいづれも考えられるが、カラーフィルタの構成としては特に限定されるものではない。
【0033】
プラスチックディスプレイは上記TFT、カラーフィルタ以外にもプラスチックフィルム上に形成された様々な部材が構成されて成り立っている電気的画像表示装置であって、液晶の場合は、液晶層、配向膜、偏光板などの積層により成り立っており、電子ペーパーの場合は、マイクロカプセルや電子粉流体などの表示層や透明電極層の積層により成り立っている。
【0034】
これらのプラスチックディスプレイを構成する全ての部材は一般的に可撓性を有するプラスチックフィルム上に形成されている。それらのプラスチックフィルムは透明性と機械的強度を有し、各部材の形成工程における焼成温度に耐えられるものでなければならない。
【0035】
さらに、前記プラスチックディスプレイはガスバリア性を有することにより、風船をどのような環境で用いることになっても、ディスプレイ品質を劣化させずに使用することができる。ガスバリア性はSiOxに代表される無機酸化物やセラミックスを蒸着やゾルゲル法などの方法による薄膜としてプラスチックフィルムの基板表面に付与することが可能であるが、ガスバリア膜によって光の透過率が低下しないような条件でなくてはならない。また、プラスチックディスプレイの前面がガスバリア性を有していることが望ましい。
【0036】
前記プラスチックディスプレイの前面には太陽光による劣化を防ぐために紫外線カットフィルタを積層させることができる。紫外線カットフィルタは一般的なものなら問題なく使用できるが、薄いものの方が望ましい。
【0037】
プラスチックディスプレイは電源装置、及び制御装置を使って表示内容を変更することができるが、その電源装置には一般的な電池や太陽電池を利用する。
【0038】
一般的な電池としては、ボタン型やコイン型など軽量の乾電池を使用することができる。
【0039】
太陽電池を用いる際は、光電変換素子層の材料として単結晶、多結晶、微結晶などの結晶シリコン、もしくはアモルファスシリコンや、GaAsなどの化合物を用いることができる。太陽電池は、光電変換素子層と裏面電極層、表面電極層とを合わせて数十ミクロンの厚さで構成され、プラスチックディスプレイと同様に可撓性を持つことにより、風船の本体もしくは風船への付随物に貼り付け可能である。
【0040】
また、これらのプラスチックディスプレイ、電源装置、制御装置などを風船に取り付けた場合の総重量は、風船の大きさによる浮力の違いによって、風船が浮遊状態を保てるように設定することができる。以下、本発明の看板装置の形態の概要を図面に従って説明する。
【0041】
図1は本発明の看板装置の一形態で、風船の表面にプラスチックディスプレイ、電源装置、制御装置を取り付け、それらを電気配線により適宜接続した形態の概要を説明する外観模式図である。図中1は風船であり、内部にはヘリウムガス等の軽量ガスを満たし、周囲の空気密度の装置容積分に相当する浮力を受けて、看板装置の全重量を浮かせる。プラスチックディスプレイ2、電源装置3、制御装置4、が風船1の表面に貼り付けられ、そ
れらの相互の電気配線53,54により接続される。プラスチックディスプレイ2は風船1の下部半球面を中心に、電源装置3は風船1の上部半球面を中心に設置する方が実用上有利である。制御装置4が内部電源を持たない場合は電源装置3からの給電も可能である。プラスチックディスプレイ2の表示内容を電気的に書き換えるために、制御装置4には表示画像に対応した信号を発生するためのプログラムをあらかじめ含めるか、または地上からの遠隔操作を受けて、実行するための受信および信号発生機能を有する。本形態では風船からの付随物をつなげる吊着手段6により重り7を吊り下げているが、これは風船の向きを揃える場合の手段である。また、重りは風船の内部の特定位置に取り付けることもできる。
【0042】
図2は本発明の看板装置の一形態で、風船の表面に電源装置のみを取り付け、プラスチックディスプレイおよび制御装置を風船の付随物として風船から連ねて取り付け、それらを電気配線により適宜接続した形態の概要を説明する外観模式図である。図示していないが、風船の表面に取り付けるものは、各種選択できることが容易に考えられる。
【0043】
図3は本発明の看板装置の一形態で、プラスチックディスプレイ、電源装置、制御装置を風船の付随物として風船から連ねて取り付け、それらを電気配線により適宜接続した形態の概要を説明する外観模式図である。本形態では、風船の表面には直接に各種装置を取り付けることが無いので、本発明の看板装置の各部を独立に製作し、最後にそれらを集約するという製造工程を採用でき、製造上は最も容易である。
【0044】
図4は本発明の看板装置の一形態で、複数個の風船を利用した形態の概要を説明する外観模式図である。プラスチックディスプレイの横長の形状のものを支持する場合や、吊着物を含めた総重量が1個の風船による浮力で支えるには不足の場合は、随時風船の数を増やして対応することができる。また、看板装置全体の安定性や寿命を考慮して、大きな風船1個で支えるよりも小型の風船を複数個使用することを選択することもできる。なお、本形態においても、上述の各形態で説明したものと同様に、風船の表面に各装置の内の一部を選択的に取り付けることができることは言うまでも無い。
【実施例1】
【0045】
風船としては直径120cmの球状のものを用い、その表面にプラスチックディスプレイを貼り付けた。プラスチックディスプレイとしては、メモリ性を有した反射型ディスプレイである14インチのカラー電子ペーパーを使用し、電源装置としてはボタン型電池を用いた。この際、プラスチックディスプレイ及び電源装置などの総重量は約800gであったが、直径120cmの球状でヘリウムガスを満たした風船は約968gまで持ち上げることができるため、看板装置として浮かび上げることができた。
〈比較例1〉
以下は実施例1の比較例として記載する。
【0046】
実施例1と同様に直径120cmの球状の風船を用い、ガラス基板を用いて作製した14インチのカラー電子ペーパーを風船の下部に紐で繋いで固定した。しかし、プラスチックディスプレイ及び電源装置などの総重量が約1400gであったため、風船にヘリウムガスを満たしても浮遊させられず、風船を用いた看板装置として利用することはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の看板装置の一形態の概要を説明する外観模式図である。
【図2】本発明の看板装置の他の一形態の概要を説明する外観模式図である。
【図3】本発明の看板装置の他の一形態の概要を説明する外観模式図である。
【図4】本発明の看板装置の他の一形態の概要を説明する外観模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・・・風船
2・・・・・プラスチックディスプレイ
3・・・・・電源装置
4・・・・・制御装置
53・・・・電源装置とプラスチックディスプレイを接続する電気配線
54・・・・制御装置とプラスチックディスプレイを接続する電気配線
6・・・・・風船からの付随物をつなげる吊着手段
7・・・・・重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に表示内容を書き換え可能としたプラスチックディスプレイを風船の表面に取り付け、もしくは風船の付随物として風船から連ねて取り付けたことを特徴とする看板装置。
【請求項2】
前記プラスチックディスプレイが表示内容を書き換える際のみに電気的な制御を必要とするメモリ性のプラスチックディスプレイであることを特徴とする請求項1に記載の看板装置。
【請求項3】
前記プラスチックディスプレイが可撓性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の看板装置。
【請求項4】
前記プラスチックディスプレイが反射型ディスプレイであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の看板装置。
【請求項5】
前記プラスチックディスプレイが少なくともプラスチック基板上に形成されたTFT(薄膜トランジスタ)を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の看板装置。
【請求項6】
前記プラスチックディスプレイが少なくともプラスチック基板上に形成されたカラーフィルタを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の看板装置。
【請求項7】
前記プラスチックディスプレイがガスバリア性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の看板装置。
【請求項8】
前記プラスチックディスプレイの前面に紫外線カットフィルタが積層されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の看板装置。
【請求項9】
前記プラスチックディスプレイの表示内容の書き換えを行うために、電源装置と制御装置を取り付けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の看板装置。
【請求項10】
前記電源装置が太陽電池を利用していることを特徴とする請求項9に記載の看板装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−128576(P2009−128576A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302748(P2007−302748)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】