説明

真空チャンバー

【課題】プロセス室内を所望の真空圧に維持した状態で、基板の搬入及び搬出が可能な真空チャンバーを提供する。
【解決手段】真空チャンバー10は、プロセス室P内を基板Wが通過するように所定の方向に基板Wを搬送可能な基板搬送機構40と、基板Wが通過するプロセス室Pの入口側開口と出口側開口で互いに対向して配置され、該開口を通過する基板W、及び基板Wと対向するシール面22,23との間の隙間をそれぞれ密封する一対の差動排気シール20,21と、を備える。また、真空チャンバー10は、搬送時に隣り合う基板Wの所定の方向における対向側面間に配置されるダミー基板60によって真空維持機構を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触シールをなす差動排気シールを備えた真空チャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空や特殊ガス雰囲気に維持したプロセス室内で、基板をステージに載置して移動させ、基板を加工処理することが行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の装置では、基板を載置するテーブルの移動軸を筐体に対して相対移動させる構成において、移動軸の両面と筐体との間に一対の差動排気シールを設け、シール面と移動軸の移動量との関係を設定して、シール性の向上を図っている。
【特許文献1】特許4016418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載の装置では、基板をテーブルに載置する具体的な手法について記載されていない。一般に、従来の真空チャンバーでは、基板をプロセス室内に搬入する際、プロセス室内に大気中の空気が導入されるため、その度にポンプを作動して所望の真空圧に設定する必要があった。このため、スループットを向上させるためには、素早くプロセス室内を所望の真空圧にすべく、高性能なポンプが必要とされていた。
【0004】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、プロセス室内を所望の真空圧に維持した状態で、基板の搬入及び搬出が可能な真空チャンバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) プロセス室内を基板が通過するように所定の方向に基板を搬送可能な基板搬送機構と、
前記基板が通過するプロセス室の入口側開口と出口側開口にそれぞれ設けられており、互いに対向して配置されて、該開口を通過する前記基板、及び該基板と対向するシール面との間の隙間をそれぞれ密封する一対の差動排気シールと、
前記基板が前記一対の差動排気シールによって形成される前記開口を通過する際に、前記プロセス室内を所定の真空圧に維持する真空圧維持機構と、
を備えることを特徴とする真空チャンバー。
(2) 前記真空圧維持機構は、搬送時に隣り合う基板の所定の方向における対向側面間に配置されるダミー基板であることを特徴とする(1)に記載の真空チャンバー。
(3) 前記差動排気シールのシール面には、互いに異なるポンプによってエアを吸引する複数の溝部を備え、
前記差動排気シールは、前記ダミー基板と前記基板との境界部分が前記いずれかの溝部と対向している時、前記プロセス室内を所定の真空圧に維持するように、残りの溝部を介してエアを吸引することを特徴とする(2)に記載の真空チャンバー。
(4) 前記プロセス室の開口は、互いの対向面を前記一対の差動排気シールのシール面とする上側側壁と下側側壁によって形成され、
前記上側側壁と下側側壁の少なくとも一方は、それぞれ上下方向に移動可能に前記所定の方向に並んで配置され、前記シール面に少なくとも一つの溝部をそれぞれ備える複数の可動ブロックを有し、
前記真空圧維持機構は、前記複数の可動ブロックによって構成されることを特徴とする(1)に記載の真空チャンバー。
(5) 前記真空圧維持機構は、前記開口の上流側及び下流側にそれぞれ配置され、前記開口を開閉自在なシャッターによって構成されることを特徴とする(1)に記載の真空チャンバー。
【発明の効果】
【0006】
本発明の真空チャンバーによれば、基板が一対の差動排気シールによって形成される入口側開口または出口側開口を通過する際に、プロセス室内を所定の真空圧に維持する真空圧維持機構を備える。これにより、基板の搬入及び搬出の度に大気中の空気が大幅に導入されることが防止され、プロセス室内を所望の真空圧に維持したままプロセス室内への基板の搬入及び搬出を行なうことができ、スループットを向上することができる。
なお、本発明の真空圧とは、大気圧(約10Pa)より低い圧力を意図しており、例えば、フォトリソグラフィー工程のレジスト乾燥に使用される場合には、好ましくは、レジストの中の溶剤の蒸発速度が速まる圧力以下であればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係る真空チャンバーの各実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の真空チャンバー10は、筐体11、入口側上側及び下側側壁12,13、出口側上側及び下側側壁14,15によってプロセス室Pを画成する。筐体11は、所定の方向の入口側及び出口側で断面矩形状に開口した角筒形状を有する。入口側上側側壁12及び入口側下側側壁13は、該筐体11の入口側側面に沿って上下方向にそれぞれ移動可能で、これらの間に基板Wが搬入される入口側開口を形成する。また、出口側上側側壁14及び出口側下側側壁15は、該筐体11の出口側側面に沿って上下方向にそれぞれ移動可能で、これらの間に基板Wが搬出される出口側開口を形成する。プロセス室Pは、簡略化して示す配管を介してポンプP1によりエアが吸引されることで、所望の真空圧を与えることができる。
【0009】
また、筐体11の周囲と入口側上側及び下側側壁12,13、出口側上側及び下側側壁14,15の周囲には、それぞれ蛇腹部材16,17が取り付けられており、プロセス室P内の真空圧が維持される。
【0010】
入口側上側及び下側側壁12,13、出口側上側及び下側側壁14,15には、それぞれ互いに対向する対向面に一対の差動排気シール20,21が形成されている。図3及び図4に示すように、差動排気シール20,21は、これら対向面が4本の溝部22a〜22d,23a〜23dを備えたシール面22,23を形成し、溝部22a〜22d,23a〜23dと外部の真空ポンプP2a〜P2d、P3a〜P3dとを個々に連通する排気通路24,25を有している。従って、差動排気シール20,21はポンプP2a〜P2d,P3a〜P3dによって排気通路24,25を介して大気中の空気を吸引して、プロセス室P内と外部とを密封している。溝部22a〜22d,23a〜23dは、直線状の細溝によって形成されており、排気速度のばらつきを抑え、プロセス室P内での乱気流の発生を防止することができる。また、各溝部22a〜22d,23a〜23dの排気通路24,25の途中には、圧力センサ26、27がそれぞれ取り付けられており、各溝部22a〜22d,23a〜23dでの圧力を監視している。
【0011】
各上側側壁12,14と各下側側壁13,15は、ボールねじ機構からなる側壁駆動機構30,31と、ガイドレールのような案内機構32とによって上下方向に駆動される。なお、側壁駆動機構30,31としては、本実施形態のようなボールねじ機構による駆動の代わりに、くさび機構を用いて駆動してもよいし、リニアモータによって駆動してもよい。
【0012】
また、真空チャンバー10は、このプロセス室P内を基板Wが通過するように所定の方向にガラス基板Wを搬送可能な基板搬送機構40と、入口側開口及び出口側開口の一対の差動排気シール20,21に対して所定の方向の上流側に配置され、基板Wの上面及び下面との距離をそれぞれ検出可能なギャップセンサ41,42と、入口側開口に配置された一対の差動排気シール20,21の上流側に配置され、基板Wの上面に付着した異物を検知可能な異物検知センサ43と、を備える。
【0013】
基板搬送機構40は、入口側開口の上流側と出口側開口の下流側で、基板Wの下面を支持して搬送するローラによって基板Wを搬送している。なお、基板搬送機構40は、基板Wがプロセス室P内を貫通して搬送されるものであれば公知の構成が適用可能であり、例えば、一定方向のエアを上方に向けて吐出することでエアにより基板を搬送してもよい。
【0014】
また、本実施形態では、図1に示すように、搬送時に隣り合う基板Wの所定の方向における対向側面間にダミー基板60が配置されており、基板搬送機構40は、搬送速度を一定速度として基板Wを連続的に搬送している。
【0015】
また、一対の差動排気シール20,21は、入口側開口或いは出口側開口を通過する基板W、及び基板Wと対向するシール面22,23との間の隙間をそれぞれ密封する。ここで、差動排気シール20,21の溝部(差圧室)22a〜22d,23a〜23dは、溝部22a〜22d,23a〜23dを基板Wが通過している状態では、プロセス室Pに近い側から順に低圧、中圧、高圧、大気圧に設定されており、プロセス室Pから遠いシール溝22d、23dの真空ポンプP2d,P3dは作動していない。即ち、プロセス室Pに近い3つの上下のシール溝22a〜22c、23a〜23cを使ってプロセス室P内を所望の真空圧に維持している。なお、ここでの高圧とは、プロセス室P内の真空圧と比較して高いが、大気圧よりも十分低い圧力である。
【0016】
但し、連続搬送されるダミー基板60と基板Wとの境界部分においては板厚方向に貫通する隙間が生じてしまう可能性があるため、この境界部分がいずれかの溝部22a〜22d、23a〜23dと対向している時には、残りの溝部22a〜22d、23a〜23dを介してエアを吸引することで、プロセス室P内を所定の真空圧に維持するようにしている。例えば、図4に示すように、ダミー基板60と基板Wとの境界部分が高圧に設定された溝部22c,23cと対向する位置にあるときには、溝部22d、23dの真空ポンプP2d,P3dを作動して溝部22d,23dが高圧となるように設定する。
従って、この境界部分の移動に応じて、溝部22a〜22d、23a〜23dのうち3つが低圧、中圧、高圧となるように真空ポンプP2a〜P2d、P3a〜P3dを切り替えることで、プロセス室P内が所定の真空圧に維持される。このため、所定の方向におけるダミー基板60の長さは、上流側と下流側の基板Wとの2つの境界部分の両方が溝部22a〜22d、23a〜23dと対向しないように設定されることが好ましい。
【0017】
加えて、基板Wと上側及び下側側壁12,13,14,15の各シール面22,23との間の隙間は、シール面22,23の溝部の数、大きさ、間隔等に応じて、プロセス室Pが所望の真空圧となるように所定の微小隙間Δ1、Δ2に厳密に管理・設定されている。
【0018】
例えば、入口側において、ギャップセンサ41によって基板Wのうねりや、平坦度や板厚の変化が検出された場合には、該隙間を所定の微小隙間Δ1、Δ2に維持するように、上側側壁12,14と下側側壁13,15を上下方向に移動する。但し、プロセス室P内の所望の真空圧が基板Wの板厚のバラツキを許容するような低真空の場合には、ギャップセンサ41に応じた隙間調整を行なわなくてもよい。なお、一対の差動排気シール20,21間に基板Wが配置されていない状態では、対向するシール面22,23間の隙間を所定の微小隙間Δ1(Δ2)としてもよいし、互いに当接させて密閉状態としてもよい。
【0019】
異物検知センサ43が搬送されてきた基板Wの上面の異物を検知した場合には、基板搬送機構40を停止したり、上側側壁12,14を上方に退避させたり、図示しないエア吐出機構によって異物を除去してもよい。また、下面に異物が付着するおそれがある場合には、異物検知センサ43を基板Wの下方にも配置して、基板Wの下面の異物を検知するようにしてもよい。
【0020】
さらに、図3に示すように、入口側及び出口側それぞれの一対の差動排気シール20,21に対してプロセス室Pと反対側には、一対の密封ローラ機構50,51が配置されている。各密封ローラ機構50,51では、各ローラ53の軸53aがばね54によって付勢されることで、ローラ53が側方に弾性的に変位可能であり、基板Wの幅方向両側面を案内する。また、各ローラ53の上下面には、案内カバー52が取り付けられており、ローラ53の上下面を密封している。これにより、入口側開口から搬入或いは出口側開口から搬出される基板Wは、その側面を一対の密封ローラ機構50、51によって支持されるとともに、基板Wの側方から大気圧が導入されるのが防止される。また、側方にある一対の密封ローラ機構50,51の間隔が基板Wより大きい場合には、基板Wの側方にダミーガラス61を取り付けて基板Wと共に搬送するようにすれば、基板Wの幅が小さくても大気中の空気の導入を防止することができる。
【0021】
以上説明したように、本実施形態の真空チャンバー10によれば、プロセス室P内を基板Wが通過するように所定の方向に基板Wを搬送可能な基板搬送機構40と、基板Wが通過するプロセス室Pの入口側開口と出口側開口に互いに対向して配置され、該開口を通過する基板W、及び該基板Wと対向するシール面22,23との間の隙間をそれぞれ密封する一対の差動排気シール20,21と、を備えるとともに、搬送時に隣り合う基板Wの所定の方向における対向側面間に配置されるダミー基板60によって真空維持機構を構成する。これにより、基板Wの搬入及び搬出の度に大気中の空気が大幅に導入されることが防止され、プロセス室P内の真空圧を維持したままプロセス室P内への基板Wの搬入及び搬出を行なうことができ、スループットを向上することができる。
【0022】
また、差動排気シール20,21のシール面22,23には、互いに異なるポンプP2a〜P2d,P3a〜P3dによってエアを吸引する複数の溝部22a〜22d、23a〜23dを備え、差動排気シール20,21は、ダミー基板60と基板Wとの境界部分がいずれかの溝部と対向している時、残りの溝部を介してエアを吸引するので、ダミー基板60を用いた基板Wの連続搬送において、より確実にプロセス室P内を所定の真空圧に維持することができる。
【0023】
以上説明した真空チャンバー10は、フォトリソグラフィー等により所望のパターンをガラス基板に形成する時に、塗布されたレジストを乾燥する際の真空乾燥装置として使用することができる。
例えば、図5に示すように、一般的なフォトリソグラフィー工程では、ガラス基板を洗浄し(ステップS1)、ガラス基板を乾燥させた後(ステップS2)、ガラス基板にレジスト液を薄く均一に塗布する(ステップS3)。そして、塗布されたレジストを本発明の真空チャンバー10が適用された真空乾燥装置によって乾燥させ(ステップS4)、さらに、低い温度で加熱してプリベーク(ステップS5)を行なう。また、露光工程(ステップS6)において、レジストに光を照射して、レジストの光化学反応が進んだ後、アルカリ溶液で現像して不要部分を除去し(ステップS7)、さらに、ガラス基板を乾燥させてパターンを形成する(ステップS8)。
【0024】
特に、本実施形態の真空チャンバー10を上記フォトリソグラフィー工程に適用することで、真空乾燥工程S4で基板を連続的に搬送することが可能となり、前工程のレジスト塗布工程S3や後工程のプリベーク工程S5や露光工程S6との間でガラス基板の受け渡しがスムーズに行なわれる。
【0025】
また、大型のフラットパネルディスプレイ用パネルを真空乾燥する際に、プロセス室Pの入口側開口及び出口側開口を閉じて密封させる必要がないので、プロセス室Pをパネルに合わせて大型化する必要がなく、真空チャンバー10を小型化することができる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る真空チャンバー10aについて、図6〜図8を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同等部分については、同一符号を付して説明を省略或いは簡略化する。
【0027】
本実施形態の真空チャンバー10aは、差動排気シール及び差動排気シールが設けられる上側及び下側側壁の構成において、第1実施形態のものと異なる。なお、入口側開口と出口側開口の差動排気シールと上側及び下側側壁の構成は略同一であるため、以下入口側開口の差動排気シールと上側及び下側側壁について説明する。
【0028】
即ち、本実施形態の上側側壁12及び下側側壁13は、差動排気シール20,21の各3本の上側及び下側溝部22a〜22c、23a〜23c毎に3つの第1〜第3の上側側壁12a,12b,12cと3つの第1〜第3の下側側壁13a,13b,13cに分割されている。また、本実施形態の側壁駆動機構30,31も、各側壁12a〜12c,13a〜13c毎に設けられており(図6(b)は、下側側壁13a〜13c毎に設けられた側壁駆動機構31a〜31cのみ示す。)、各第1〜第3の上側及び下側側壁12a〜12c,13a〜13cは、独立して上下に移動可能な可動ブロックを構成する。
【0029】
また、差動排気シール20,21は、溝部22a〜22c,23a〜23cが形成される各第1〜第3の上側及び下側シール面28a〜28c、29a〜29cが所定の微小隙間Δ1で互いに対向する場合、或いは、各溝部22a〜22c,23a〜23cが形成される各シール面28a〜28c、29a〜29cと基板Wとが所定の微小隙間Δ1、Δ2で対向している場合において、溝部22a,23aは、真空ポンプP2a,P3aによって低圧に、溝部22b,23bは、真空ポンプP2b,P3bによって中圧に、溝部22c,23cは、真空ポンプP2c,P3cによって高圧に設定されることで、プロセス室P内を所望の真空圧に維持する。
なお、3つの第1〜第3の上側側壁12a,12b,12cと3つの第1〜第3の下側側壁13a,13b,13cの各側壁間はエアが漏れないように密封されている。
【0030】
ここで、プロセス室P内を所望の真空圧に維持したまま基板Wを搬送する際の各側壁12a〜12c,13a〜13c及び差動排気シール20,21の動作について説明する。
【0031】
まず、図7(a)に示すように、基板Wが搬送されてくる前の段階では、第3の下側シール面29cが第3の上側シール面28cと接触するように、下側側壁13cを真空密閉位置まで上昇させる。また、第1及び第2の下側側壁13a,13bは、これらのシール面29a,29bが第1及び第2の上側シール面28a、28bと所定の微小隙間Δ1を保つ位置に配置される。また、プロセス室Pを真空圧とすべく、真空ポンプP1が作動される一方、各側壁12a〜12c、13a〜13cの真空ポンプP2a〜P2c,P3a〜P3cは停止している。
【0032】
そして、基板Wが搬送されて第3の上下側壁12c、13cに近づくと、図7(b)に示すように、第3の下側側壁13cは、第3の下側シール面29cが第3の上側シール面28cと所定の微小隙間Δ1を保つように下降させる。また、各側壁の真空ポンプP2a〜P2c,P3a〜P3cが作動して、溝部22a,23aは低圧に、溝部22b,23bは中圧に、溝部22c,23cは高圧に設定される。
【0033】
そして、基板Wの搬送が進むと、図7(c)に示すように、まず、第3の下側側壁13cを下降させ、第3の上側シール面28cと基板W、及び第3の下側シール面29cと基板Wとを所定の微小隙間Δ1、Δ2で対向させる。次に、図7(d)に示すように、第2の下側側壁13bを下降させ、第2の上側シール面28bと基板W、及び第2の下側シール面29bと基板Wとを所定の微小隙間Δ1、Δ2で対向させる。さらに、図8(a)に示すように、第1の下側側壁13aを下降させ、第1の上側シール面28aと基板W、及び第1の下側シール面29aと基板Wとを所定の微小隙間Δ1、Δ2で対向させる。
【0034】
さらに、基板Wの搬送が進み、基板Wの下流側端部が第3の上側及び下側側壁12c,13c間を通過し終えると、図8(b)に示すように、第3の下側シール面29cが第3の上側シール面28cと接触するように、下側側壁13cを真空密閉位置まで上昇させる。この段階で、各側壁12a〜12c、13a〜13cの真空ポンプP2a〜P2c,P3a〜P3cは停止してもよい。
【0035】
また、図8(c)に示すように、基板Wが第1の上側及び下側側壁12a,13aを通過し終えた段階では、第1及び第2の下側側壁13a,13bは、これらのシール面29a,29bが第1及び第2の上側シール面28a、28bと所定の微小隙間Δ1を保つ位置に配置され、次の基板Wの搬入に備える。
【0036】
従って、第2実施形態の真空チャンバー10aによれば、上側側壁12と下側側壁13は、それぞれ上下方向に移動可能に所定の方向に並んで配置され、シール面28a〜28c、29a〜29cに溝部22a〜22c、23a〜23cをそれぞれ備える第1〜第3の上側及び下側側壁12a〜12c、13a〜13cを有することで真空圧維持機構を構成する。これにより、基板Wの搬入及び搬出に合わせて側壁12a〜12c,13a〜13cを上下駆動することで、基板Wの搬入及び搬出の度に大気中の空気が大幅に導入されることが防止され、プロセス室P内を所望の真空圧に維持したままプロセス室P内への基板Wの搬入及び搬出を行なうことができ、スループットを向上することができる。
【0037】
なお、本発明では、上側側壁12と下側側壁13の少なくとも一方が互いに独立して上下に移動可能な可動ブロックを構成すればよく、例えば、本実施形態のように、第1〜第3の下側側壁13a〜13cのみを作動する場合には、上側側壁12は、単一ブロックであってもよい。
また、各可動ブロック(第1〜第3の上側及び下側側壁12a〜12c、13a〜13c)にはそれぞれ一本の溝部が形成されているが、複数本の溝部が形成されてもよい。
【0038】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る真空チャンバー10bについて、図9を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同等部分については、同一符号を付して説明を省略或いは簡略化する。
【0039】
本実施形態の真空チャンバー10bにおいても、差動排気シール及び差動排気シールが設けられる上側及び下側側壁の構成において、第1実施形態のものと異なる。なお、入口側開口と出口側開口の差動排気シールと上側及び下側側壁の構成は略同一であるため、以下入口側開口の差動排気シールと上側及び下側側壁について説明する。
【0040】
本実施形態では、筐体11aには、入口側開口の上側側壁12d及び下側側壁13dが一体に形成されており、該開口の上流側と下流側には、該開口を開閉自在なシャッター70,71が取り付けられている。これらシャッター70,71は、上側側壁12dと下側側壁13dに取り付けられたボールねじなどの駆動機構73と、図示しない案内機構によって平板72をそれぞれ上下方向に移動して、該開口を開閉する。
【0041】
従って、上流側及び下流側のシャッター70,71が該開口を開閉し、各真空ポンプP1,P2,P3が作動した状態において、基板Wが搬送されてくると、上流側のシャッター70が下降して、各シール面20,21と基板Wとの間の隙間を所定の微小隙間Δ1、Δ2とした状態で、開いた該開口内を通過する。さらに、下流側のシャッター71が下降して、基板Wが搬送されていく。そして、基板Wの下流側端部が該開口する場合には、上流側シャッター70、下流側シャッター71の順に上昇して、該開口を開閉し、プロセス室P内を所望の真空圧に維持する。
【0042】
従って、第3実施形態の真空チャンバー10bによれば、入口側開口と出口側開口の上流側及び下流側にそれぞれ配置され、該開口を開閉自在なシャッター70,71によって真空圧維持機構を構成する。これにより、基板Wの搬入及び搬出に合わせてシャッター70,71を上下駆動することで、基板Wの搬入及び搬出の度に大気中の空気が大幅に導入されることが防止され、プロセス室P内を所望の真空圧に維持したままプロセス室P内への基板Wの搬入及び搬出を行なうことができ、スループットを向上することができる。
【0043】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態の真空チャンバーの正面断面図である。
【図2】図1の真空チャンバーを入口側開口から見た側面図である。
【図3】図1の真空チャンバーを入口側及び出口側開口部分に沿って切った位置でワークの上方から見た図である。
【図4】図1の差動排気シールを拡大して示す断面図である。
【図5】フォトリソグラフィーの工程を説明するためのフロー図である。
【図6】(a)は、本発明の第2実施形態に係る真空チャンバーの入口側開口近傍を示す断面図であり、(b)は、入口側開口の下側側壁近傍を上方から見た図である。
【図7】基板搬送時における各可動ブロックの位置を説明するための部分断面図である。
【図8】基板搬送時における各可動ブロックの位置を説明するための部分断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る真空チャンバーの入口側開口近傍を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 真空チャンバー
11 筐体
12,12a,12b,12c,12d,14 上側側壁
13,13a,13b,13c,13d,15 下側側壁
20,21 差動排気シール
22,23 シール面
22a〜22d、23a〜23d 溝部
30,31 側壁駆動機構
40 基板搬送機構
41,42 ギャップセンサ
43 異物検知センサ
60 ダミー基板
70,71 シャッター
P プロセス室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス室内を基板が通過するように所定の方向に基板を搬送可能な基板搬送機構と、
前記基板が通過するプロセス室の入口側開口と出口側開口にそれぞれ設けられており、互いに対向して配置されて、該開口を通過する前記基板、及び該基板と対向するシール面との間の隙間をそれぞれ密封する一対の差動排気シールと、
前記基板が前記一対の差動排気シールによって形成される前記開口を通過する際に、前記プロセス室内を所定の真空圧に維持する真空圧維持機構と、
を備えることを特徴とする真空チャンバー。
【請求項2】
前記真空圧維持機構は、搬送時に隣り合う基板の所定の方向における対向側面間に配置されるダミー基板であることを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバー。
【請求項3】
前記差動排気シールのシール面には、互いに異なるポンプによってエアを吸引する複数の溝部を備え、
前記差動排気シールは、前記ダミー基板と前記基板との境界部分が前記いずれかの溝部と対向している時、前記プロセス室内を所定の真空圧に維持するように、残りの溝部を介してエアを吸引することを特徴とする請求項2に記載の真空チャンバー。
【請求項4】
前記プロセス室の開口は、互いの対向面を前記一対の差動排気シールのシール面とする上側側壁と下側側壁によって形成され、
前記上側側壁と下側側壁の少なくとも一方は、それぞれ上下方向に移動可能に前記所定の方向に並んで配置され、前記シール面に少なくとも一つの溝部をそれぞれ備える複数の可動ブロックを有し、
前記真空圧維持機構は、前記複数の可動ブロックによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバー。
【請求項5】
前記真空圧維持機構は、前記開口の上流側及び下流側にそれぞれ配置され、前記開口を開閉自在なシャッターによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−40988(P2010−40988A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205506(P2008−205506)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】