説明

真空チャンバ用のクランプ

【課題】真空チャンバの空気漏れを防ぐことができるクランプの提供。
【解決手段】クランプ16が真空チャンバ1におけるチャンバ部2の開口11を蓋部3で密閉するときに使用されるクランプ16は、チャンバ部2に取り付けられる受金部21と蓋部3に取り付けられるハンドル部22とを有する。受金部21は、チャンバ部2の外側から内側へ向かう方向へばね付勢されている作用部位28を有する。ハンドル部22は、レバーハンドル23と、掛金部31と、これら両者23,31の間に介在するリンク部材32とを含む。レバーハンドル23は、第1旋回軸38を中心に旋回してねじりコイルばね39の作用下に蓋部3の外面3aに対しての離間と接近とを反復する。掛金部材31は第2旋回軸46を中心に旋回可能であり、レバーハンドル23が旋回するとリンク部材32を介して旋回して、作用部位28に対しての離間と圧接とを反復する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空チャンバの蓋や扉を開閉するために使用するのに好適なクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
蓋や扉を開閉することができる真空チャンバは従来周知である。例えば、この種の真空チャンバである実開平2−11153号公報(特許文献1)に開示の真空熱処理炉は、円筒状本体容器の開口を蓋体によって閉じることができる。本体容器と蓋体とは締結具に取り付けられたボルトを締めることによって密閉状態になる。
【特許文献1】実開平2−11153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記真空熱処理炉では、内部の真空度が高まると、本体容器と蓋体との密着の度合いが高まるものの、ボルトによる締め付けが弱くなって空気漏れの原因になることがある。また、そのことを避けようとすれば、ボルトを再度締め付ける作業が必要になる。
【0004】
そこで、この発明では、真空チャンバの真空度が高くなるように変化しても真空チャンバには空気漏れが生じないようにすることが可能な真空チャンバ用のクランプの提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためのこの発明が対象とするのは、真空源に接続可能であって物品を出し入れするための開口が形成されたチャンバ部と、前記開口を開閉可能な蓋部とを含む真空チャンバの前記開口を前記蓋部で密閉するために使用するクランプである。
【0006】
かかるクランプにおいて、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。前記クランプは、前記チャンバ部に取り付けられている受金部と、前記蓋部に取り付けられているハンドル部とを有する。前記受金部は、前記ハンドル部における掛金部材が前記チャンバ部の内側から外側へ向かう方向において圧接可能であって、前記外側から前記内側に向かう方向へばね付勢されている作用部位を有する。前記ハンドル部は、レバーハンドルと、前記掛金部材と、これら両者の間に介在するリンク部材とを含む。前記レバーハンドルは、前記蓋部の外面に対して固定された状態の第1旋回軸を中心に旋回してねじりコイルばねの作用下に前記外面に対しての離間と接近とを反復するものであり、前記掛金部材は、前記外面に対して固定された状態の第2旋回軸を中心に旋回可能であり、前記レバーハンドルが前記離間と接近とを反復するように旋回すると前記リンク部材を介して旋回して、前記作用部位に対しての離間と前記付勢に抗しての圧接とを反復するものである。
【0007】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記ねじりコイルばねは、それを形成している線材の一端部が前記レバーハンドルに対して固定され、もう一方の端部が前記蓋部に対して固定されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る真空チャンバ用のクランプは、蓋部がチャンバ部の開口を閉じたときに、レバーハンドルをそれが蓋部の外面に接近する方向へ旋回させると、リンク部材を介してレバーハンドルにつながる掛金部材が、チャンバ部の内側から外側へ向かう方向においてチャンバ部に取り付けられている受金部の作用部位に圧接する。その作用部位は、チャンバ部の外側から内側に向かう方向へばね付勢されているので、チャンバ部の真空度が高くなって蓋部がチャンバ部に接近するように動くと、その動きに受金部の作用部位が追随して、掛金部材は受金部に対する圧接状態を維持することができる。その結果として、真空チャンバには空気漏れが生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
添付の図面を参照して、この発明に係るクランプの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0010】
図1は、クランプ16が使用されている真空チャンバ1の部分破断斜視図である。真空チャンバ1は、チャンバ部2と蓋部3を有するもので、チャンバ部2は、第1、第2、第3周壁部6,7,8と、頂部9と、底部10とを有し、第1、第2周壁部6,7と頂部9と底部10とによって開口11が画成されている。第3周壁部8は、真空源(図示せず)に接続可能に形成されている。蓋部3は、物品を出し入れするための開口11に対して開閉する横開きのもので、開いた状態のものが仮想線で示されている。かような蓋部3は、第1周壁部6に対して一対の蝶番12を介して取り付けられていて、第2周壁部7に対してはクランプ16を介して閉じた状態にある。クランプ16は、第2周壁部7に取り付けられた受金部21と、蓋部3に取り付けられたハンドル部22とを含み、ハンドル部22におけるレバーハンドル23を矢印A方向へ旋回させるとハンドル部22が受金部21から離れて蓋部3を開けることができる。蓋部3は、扉と言い替えることができるものでもある。
【0011】
図2は、図1のII−II線断面図であって、クランプ16の内部構造の他に、第2周壁部7と蓋部3との一部分が示されている。クランプ16における受金部21は、第2周壁部7に取り付けられているキーパ26と、キーパ26の頂部26aにおける透孔26bをその長さ方向へ摺動可能に貫通するねじ27と、ねじ27におけるねじ部の先端部分に螺着していて後記するハンドル部22の掛金部材31との圧接部位として作用する部位28と、頂部26aとその作用部位28との間に位置していて蓄勢状態にあるコイルばね29とを有する。ハンドル部22は、扉3の外面3aから立ち上がるブラケット3bを介して蓋部3に取り付けられているもので、レバーハンドル23と、掛金部材31と、リンク部材32とを含んでいる。レバーハンドル23は、握持用端部36とリンク部材32につながる連結用端部37とを有し、これら両端部36,37の中間部分がブラケット3bに固定された第1旋回軸38を介してブラケット3bに取り付けられていて、握持用端部36は、第1旋回軸38を中心にして矢印A方向とその反対方向Bとに旋回可能である。レバーハンドル23とブラケット3bとの間にはねじりコイルばね39が介在しており、ねじりコイルばね39を形成している線材の一端部39aがブラケット3bに固定されたピン41に取り付けられ、もう一方の端部39bがレバーハンドル23に固定されたピン42に取り付けられている。換言すると、一端部39aがピン41を介して蓋部3に対して固定されており、もう一方の端部39bがピン42を介してレバーハンドル23に対して固定されている。図示の状態にあるそのピン42は、第1旋回軸38の中心とピン41の中心とを結ぶ線Lの下側、すなわち線Lよりもチャンバ部2寄りにあって、ねじりコイルばね39がレバーハンドル23の握持用端部36を矢印B方向へ付勢している。すなわち、レバーハンドル23が蓋部3の外面3aに接近するように付勢されている。
【0012】
掛金部材31は、取り付け端部43と作用端部44とを有する。取り付け端部43は、ブラケット3bに固定されている第2旋回軸46に回転可能に取り付けられていて、作用端部44が矢印C方向との反対方向Dとに旋回可能である。図示の状態にある掛金部材31は、矢印C方向へ旋回してチャンバ部2の内側から外側へ向かう方向において作用部位28に圧接し、コイルばね29を圧縮している。
【0013】
リンク部材32は、第1端部51と第2端部52とを有し、第1端部51がピン53を介してレバーハンドル23の連結端部37に回転可能に取り付けられている。また、第2端部52がピン54を介して掛金部材31に回転可能に取り付けられている。開口11(図1参照)を閉じている蓋部3は、その内面3cに形成された周縁溝部3dの内部にあるパッキング56が第2周壁部7に圧接しており、真空チャンバ1が気密状態にある。
【0014】
図3は、真空チャンバ1が真空源に接続されているときの図2と同様な図である。図2において真空チャンバ1が減圧状態になると、パッキング56が変形して蓋部3がチャンバ部2に接近する。すると、受金部21では、蓄勢状態にあるコイルばね29が伸長して、作用部位28が掛金部材31に圧接し続けるので、チャンバ部2と蓋部3とに対するクランプ16の作用はゆるむことがない。
【0015】
図3において蓋部3を開くには、レバーハンドル23を蓋部3の外面3aから離間するように矢印A方向へ旋回させる。すると、リンク部材32を介してレバーハンドル23につながる掛金部材31が矢印D方向へ旋回して受金部21から離脱するので、旋回させたレバーハンドル23をそのまま使用して蓋部3を開くことができる。そして、仮想線の状態になったレバーハンドル23(図2参照)では、ねじりコイルばね39の端部39bが取り付けられているピン42が第1旋回軸38を中心に旋回して線Lの上側に移動し、ねじりコイルばね39がレバーハンドル23の握持用端部36を矢印A方向へ、すなわち蓋部3の外面3aから離間する方向へ付勢する。
【0016】
図4は、図1の真空チャンバ1に使用されている蝶番12の部分破断側面図であるが、チャンバ部2と蓋部3とが仮想線で示されている。蝶番12は、ボルト78を使用してチャンバ部2に取り付けられた第1の羽根61と、ボルト79を使用して蓋部3に取り付けられた第2の羽根62とを有し、これらの羽根61,62が図の上下方向Eへ延びる軸64を介して互いに旋回可能に組み立てられている。その軸64が、第1の羽根61に対してはスリーブ66に形成されていて、図の横方向Fに長径を有する断面が長円形の挿通孔67に納まり、第2の羽根62に対してはスリーブ69に形成されていて、軸64よりも径が僅かに大きい挿通孔(図示せず)に納まっている。第1の羽根61と第2の羽根62との間にはまた、横方向Fへ延びる一対のコイルばね71が圧縮状態で介在している。ただし、そのコイルばね71とスリーブ69との間には、コイルばね71の端部をスリーブ69に圧接させるための中間部材72が介在している。かようなコイルばね71は、第1の羽根61と第2の羽根62とを横方向Fへ離間させるように作用しており、スリーブ66には横方向FのスペースPが形成され、第1の羽根61と中間部材72との間にはスペースQが形成されている。このような蝶番12では、真空チャンバ1が減圧状態になって蓋部3がチャンバ部2に接近する方向へ動こうとすると、蓋部3は第2の羽根62を介してコイルばね71を圧縮することによりスペースP,Qを縮め、第2の羽根62を第1の羽根61に接近させる。
【0017】
真空チャンバ1は、このような蝶番12をこの発明に係るクランプ16と組み合わせて使用することが好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】真空チャンバの斜視図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】真空チャンバが減圧状態にあるときの図2と同様な図。
【図4】蝶番の部分破断側面図。
【符号の説明】
【0019】
1 真空チャンバ
2 チャンバ部
3 蓋部
3a 外面
11 開口
16 クランプ
21 受金部
22 ハンドル部
23 レバーハンドル
28 作用部位
31 掛金部材
32 リンク部材
38 第1旋回軸
39 ねじりコイルばね
39a もう一方の端部
39b 一端部
46 第2旋回軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空源に接続可能であって物品を出し入れするための開口が形成されたチャンバ部と、前記開口を開閉可能な蓋部とを含む真空チャンバの前記開口を前記蓋部で密閉するために使用するクランプであって、
前記クランプが前記チャンバ部に取り付けられている受金部と、前記蓋部に取り付けられているハンドル部とを有し、
前記受金部は、前記ハンドル部における掛金部材が前記チャンバ部の内側から外側へ向かう方向において圧接可能であって、前記外側から前記内側に向かう方向へばね付勢されている作用部位を有し、
前記ハンドル部は、レバーハンドルと、前記掛金部材と、これら両者の間に介在するリンク部材とを含み、前記レバーハンドルは、前記蓋部の外面に対して固定された状態の第1旋回軸を中心に旋回してねじりコイルばねの作用下に前記外面に対しての離間と接近とを反復するものであり、前記掛金部材は、前記外面に対して固定された状態の第2旋回軸を中心に旋回可能であり、前記レバーハンドルが前記離間と接近とを反復するように旋回すると前記リンク部材を介して旋回して、前記作用部位に対しての離間と前記ばね付勢に抗しての圧接とを反復するものであることを特徴とする前記クランプ。
【請求項2】
前記ねじりコイルばねは、それを形成している線材の一端部が前記レバーハンドルに対して固定され、もう一方の端部が前記蓋部に対して固定されている請求項1記載のクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−47978(P2010−47978A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213166(P2008−213166)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000152169)株式会社栃木屋 (50)
【Fターム(参考)】