説明

真空発生器

【課題】 真空の立ち上がり、立ち下がりが速い、高速応答特性のすぐれた真空発生器を提供する。
【解決手段】 真空発生用供給ポート10と、真空ポート50と、真空ポートに破壊エアを供給する真空破壊用供給ポート14と、排気ポート40とを備えた真空発生器において、エジェクタ機構として、ディフューザスプール30と前記真空発生用供給ポート10から供給された圧縮空気をディフューザスプール30に向けて噴射するノズル32とを備え、前記ディフューザスプール30とノズル32が、前記真空発生用供給ポート10に圧縮空気が送入された際には、前記真空破壊用供給ポート14と前記真空ポート50との連通を遮断する閉止位置に移動し、前記真空発生用供給ポート10への圧縮空気の送入が停止すると、前記真空破壊用供給ポート14と前記真空ポート50とを連通させる開放位置に移動することにより、前記真空ポート50と前記真空破壊用供給ポート14間の連通を制御する遮断弁として形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部品等のワークを真空吸着して搬送する搬送装置等に利用される真空発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
部品等のワークを真空吸着して搬送する搬送装置には、圧縮空気をエア源として真空を発生する真空発生器が広く用いられている。真空発生器のもっとも単純な構造からなるものは、本体内にノズルとディフューザを設け、供給ポートから圧縮空気を本体内に送入し、エジェクタ作用によって真空ポートに負圧を発生させるように構成したものである。しかしながら、このような構成の真空発生器においては、真空ポートに吸着されたワークの離脱は、供給ポートへの圧縮空気の供給を停止し、排気ポートから真空ポート側へ大気が連通することによってなされるから、ワーク離脱時の応答性が低いという問題がある。
【0003】
真空ポートにおけるワーク離脱時の応答性を改善する方法としては、真空ポートを真空破壊する際に、真空ポートに強制的に破壊エアを送入する方法がある。この方法による真空発生器としては、パイロットバルブを用いて真空発生時と真空破壊時のエア流路を切り替え、真空破壊時に圧縮空気が真空ポート側に供給されるように構成した装置がある(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2002−224984号公報
【特許文献2】特開2003−42134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パイロットバルブを用いてエア流路を切り替えて、真空破壊時に真空ポート側に破壊エアを供給するように構成した真空発生器は、装置の構成が複雑になるという問題と、流路を切り替える構成とするために、供給ポートから真空ポートへ破壊エアが通流する流路が長くなり、真空破壊時の応答性が低下するという問題と、真空発生時においても連絡流路が長くなるために応答性が低下するという問題がある。
【0005】
このような問題を解消する真空発生器として、図7に示すようなシャトル弁5とタンク6とを備えた真空発生器がある。この真空発生器では、圧縮空気の供給ポートPに圧縮空気を供給すると、シャトル弁5を経由してタンク6に圧縮空気が供給され、同時にエジェクタ7に圧縮空気が供給されて真空ポート(V)が負圧となり、供給ポート(P)への圧縮空気の供給が停止されると、シャトル弁5がタンク6と真空ポート(V)とを連通する位置に移動し、タンク6から真空ポート(V)にエアが供給され、真空ポート(V)に破壊エアが供給されるようにして真空破壊される。
【0006】
このように、この真空発生器の場合は、タンク6から真空ポート(V)に破壊エアが供給されることにより、単純な形式の真空発生器とくらべて真空破壊時おける高速応答性は良好になる。しかしながら、この真空発生器では、エジェクタ7の他にシャトル弁5とタンク6とを備えるために、装置をコンパクトに形成することが阻害され、またシャトル弁5と真空ポート(V)との間の流路が短縮できないと、真空破壊時の応答性が不十分になるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、真空発生装置の構成を簡素化し、装置をコンパクトに形成することができ、真空発生時、真空破壊時の高速応答性にすぐれた真空発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、圧縮空気が供給される真空発生用供給ポートと、本体に内蔵されたエジェクタ機構により真空圧力が発生される真空ポートと、真空ポートに破壊エアを供給する真空破壊用供給ポートと、排気ポートとを備えた真空発生器において、前記エジェクタ機構として、ディフューザスプールと前記真空発生用供給ポートから供給された圧縮空気をディフューザスプールに向けて噴射するノズルとを備え、前記ディフューザスプールとノズルが、前記真空発生用供給ポートに圧縮空気が送入された際には、前記真空破壊用供給ポートと前記真空ポートとの連通を遮断する閉止位置に移動し、前記真空発生用供給ポートへの圧縮空気の送入が停止すると、前記真空破壊用供給ポートと前記真空ポートとを連通させる開放位置に移動することにより、前記真空ポートと前記真空破壊用供給ポート間の連通を制御する遮断弁として形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記ディフューザスプールとノズルは、前記真空発生用供給ポートと前記排気ポートとを連通する装着孔内に、軸線方向に進退動可能に装着され、前記ディフューザスプールの外周面と前記装着孔の内周面との間に、前記真空破壊用供給ポートに連通する第1の流路と、前記真空ポートに連通する第2の流路とを連絡する連絡流路が設けられ、前記ディフューザスプールの外周面と前記装着孔の内周面とに、前記ディフューザスプールの進退動にともなって、前記連絡流路を開閉するバルブ部が設けられていることを特徴とする。
また、前記ディフューザスプールとノズルは、前記装着孔に嵌入して装着されたスリーブに内挿され、前記ディフューザスプールの外周面と前記スリーブの内周面との間に前記バルブ部が設けられていることを特徴とする。
また、前記スリーブには、前記ディフューザスプールに設けられた導入口に連通する開口が設けられ、前記バルブ部は、前記開口よりも前側に設けられ、前記ディフューザスプールが前進位置に移動した際に前記連絡流路が閉止され、前記ディフューザスプールが後退位置に移動した際に前記連絡流路が開放されることを特徴とする。
【0010】
また、前記ディフューザスプールには、該ディフューザスプールを常時、閉止位置に移動させる向きの付勢手段が装着されていることにより、ディフューザスプールとノズルが元位置に復帰して所要の遮断弁として作用する。
また、前記真空破壊用供給ポートに連通する第2の流路に連通して流量絞り弁が設けられていることにより、真空破壊時の破壊エアの流量を調節して的確に真空破壊することができる。
【0011】
また、前記真空発生用供給ポートに、圧縮空気の供給源側に接続される供給管が接続され、該供給管から分岐して、真空発生器の本体へ向かう一方向へのエアの通流のみを許容するチェック弁を介して、支管が接続されていることにより、支管に供給された圧縮空気による残圧を真空破壊時の破壊エアとして利用することができ、支管の長さ等を適宜調節することによって破壊エアの流量を変化させることなく破壊エアの吐出時間を簡単に調節することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る真空発生器によれば、エジェクタ機構を構成するディフューザスプールとノズルとを、真空破壊用供給ポートと真空ポート間の連通を制御する遮断弁として作用するように設けたことにより、装置の構成を簡素化して装置をコンパクトに形成することが可能となり、真空発生器の本体内の流路長を短縮することができて、真空発生器の真空の立ち上がり、立ち下がりが速い、高速応答性のすぐれた真空発生器として提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る真空発生器の好適な実施の形態について、添付図面にしたがって詳細に説明する。
図1は本発明に係る真空発生器の一実施形態の全体構成を示す。本実施形態の真空発生器は、真空発生器の本体60と、本体60に設けられた真空発生用供給ポート10に接続され、真空発生用供給ポート10に圧縮空気を供給する供給管12と、本体60に設けられた真空破壊用供給ポート14に接続され、真空破壊用供給ポート14に真空破壊用のエアを供給する支管16a、16bとを有する。
【0014】
供給管12は一端が真空発生用供給ポート10に接続され、他端が分岐用管継手22の一方の分岐部22aに接続される。
支管16a、16bは本体60側へ向かう一方向へのエアの通流のみを許容するチェック弁18を介して一本の管体状に形成され、支管16aの一端が真空破壊用供給ポート14に接続され、支管16bの他端が分岐用管継手22の他方の分岐部22bに接続される。チェック弁18は係止爪と開放リングとを備えた継手構造に形成されている。
分岐用管継手22の基端部22cには、圧縮空気の供給源側に接続される管体20が接続される。圧縮空気の供給源側には管体20への圧縮空気の供給タイミングを制御するためのバルブ(不図示)が設けられ、分岐用管継手22を介して供給管12と支管16b、16aへの圧縮空気の供給が制御される。図1において、中心線の下半部が管体20から圧縮空気を供給している状態、上半部が管体20からの圧縮空気の供給を停止した状態を示す。
【0015】
図2に、真空発生器の本体60の構成を示す。
本体60の一端側には前記真空発生用供給ポート10と真空破壊用供給ポート14とが並列配置に設けられ、本体60の他端側には排気ポート40と真空ポート50とが並列して配置される。
本体60にはエジェクタ機構を内蔵するための装着孔60aが本体60を貫通して設けられており、真空発生用供給ポート10は装着孔60aの一端側に設けられ、排気ポート40は装着孔60aの他端側に設けられる。
真空発生用供給ポート10は係止爪10aと開放リング10bを備えた継手構造に形成される。
排気ポート40は、本体60から円筒状に延出して形成された円筒部60bの端部を蓋42により気密に閉止し、円筒部60bの側面にスリット状に排気孔44を開口して設け、円筒部60bの内面に排気孔44を塞ぐ配置にサイレンサーエレメント46を取り付けて形成される。
【0016】
真空破壊用供給ポート14は、真空発生用供給ポート10と同様に、係止爪14aと開放リング14bとを備えた継手構造に形成される。
また、真空ポート50は、同様な継手構造に形成されたアタッチポート51に接続された接続管51aの端部に係止爪50aと開放リング50bとを備えた継手構造に形成されている。真空ポート50の内側には、真空ポート50からエア吸引した際に、本体60内にエアとともに塵埃が侵入しないように保護するフィルター51bが装着されている。
【0017】
装着孔60aに取り付けられるエジェクタ機構は、装着孔60aの軸線方向に可動にディフューザスプール30とノズル32とを配置し、ディフューザスプール30に設けられた貫通孔30aと真空ポート50とを第1の流路52を介して連通することによって構成される。
本実施形態では、装着孔60aに第1のスリーブ34を嵌入し、第1のスリーブ34にディフューザスプール30とノズル32とを軸線方向に可動に装着した。ディフューザスプール30は外周面に装着したパッキン30bにより、第1のスリーブ34の内周面とエアシールした状態で軸線方向に可動に設けられ、ノズル32は基端側の外周面に装着したシール部材32aにより、第1のスリーブ34の内周面とエアシールした状態で軸線方向に可動に設けられる。
【0018】
ディフューザスプール30の前端部はやや縮径して形成され、縮径部に付勢手段としてのスプリング31が外挿される。スプリング31は、この縮径部の基端部に形成された係止段差と、円筒部60bに取り付けられた蓋42との間を弾発するように装着される。これによって、ディフューザスプール30、およびディフューザスプール30の後端面に当接して配置されるノズル32は、常時、後方(真空発生用供給ポート10側)へ付勢された状態になる。ディフューザスプール30とノズル32の後方への移動位置(後退位置)は、第1のスリーブ34に嵌入して装着される第2のスリーブ35の前端面にノズル32の後端面が当接することによって規制される。
【0019】
図3に、ディフューザスプール30とノズル32とを組み合わせた部分の近傍の構造を拡大して示す。
真空ポート50に連通して本体60に設けられる第1の流路52は、真空ポート50から第1のスリーブ34に向けて屈曲して設けられ、第1のスリーブ34に設けられた開口34a内で端部が開口する。ディフューザスプール30にはノズル32の噴出端の側方で開口する導入口30cが設けられ、開口34aと導入口30cとは近接配置される。
【0020】
ディフューザスプール30の導入口30cよりも前側には段差突起30dが設けられ、段差突起30dが設けられた部位に、ディフューザスプール30の外面を一周するようにOリング等のシール部材36が嵌装される。第1のスリーブ34には、この段差突起30dに嵌装されたシール部材36に対向する配置に、シール部材36が当接してエア流路を開閉する作用をなす弁座34bが設けられる。
ディフューザスプール30の段差突起30dが形成された部位とパッキン30bとで挟まれた部位は、第1のスリーブ34の内周面との間が連絡流路となるように外周面がやや縮径する縮径部30eに形成される。第1のスリーブ34には、この縮径部30eが形成された部位に連通する連通孔34cが形成される。
【0021】
連通孔34cは、本体60内に形成された第2の流路54を介して真空破壊用供給ポート14に連絡する。第2の流路54は第1の流路52とは本体60内において交差しない配置に設けられ、図2に示すように、ニードルバルブ56を経由して真空破壊用供給ポート14に連通する。ニードルバルブ56は真空破壊エアの流量調節用に設けられたもので、軸線方向に進退動することによって真空破壊用のエアの流量を調節することが可能に設けられる。
【0022】
続いて、上述した真空発生器の作用について説明する。
図1は、上記本体60に供給管12と支管16a、16bを装着した状態である。供給管12と支管16a、16bは真空発生用供給ポート10と真空破壊用供給ポート14の継手構造により、ポートに管体を挿入するだけで簡単に装着することができる。管体をポートから外す際には、開放リング10b、14bを内方に押して係止爪10a、14aによるロックを外して管体を引き抜くようにすればよい。
分岐用管継手22に圧縮空気の供給源を接続することによって真空発生器の使用状態となる。
【0023】
まず、圧縮空気の供給源から管体20を経由して圧縮空気が供給されると、圧縮空気は分岐用管継手22で分岐され、供給管12と支管16b、16aとに供給される。
供給管12に供給された圧縮空気は、図2に示すように、真空発生用供給ポート10に送入され、真空ポート50に真空圧力を発生させる。
すなわち、真空発生用供給ポート10に送入された圧縮空気の圧力によりノズル32が前進し、ディフューザスプール30の段差突起30dに嵌装したシール部材36が第1のスリーブ34に設けた弁座34bに当接する。これによって、図3に示すように、連通孔34cと開口34aとの間に形成された連絡流路53が閉止され、第2の流路54と第1の流路52との連通が阻止され、第1の流路52が開口34a、導入口30cを介してディフューザスプール30と連通する。すなわち、真空ポート50がエジェクタ機構に連通し、真空破壊用供給ポート14と真空ポート50とが遮断された状態になる。
【0024】
ディフューザスプール30とノズル32とが前進し、ディフューザスプール30の段差突起30dに嵌装したシール部材36が第1のスリーブ34に設けた弁座34bに当接した位置が、ディフューザスプール30とノズル32が前進位置(閉止位置)に移動した状態である。シール部材36と弁座34bは、第1の流路52と第2の流路54とを連絡する連絡流路53を開閉させる作用をなすもので、連絡流路53を開閉するバルブ部として設けられている。バルブ部の機能は、ディフューザスプール30に弁座を設け、第1のスリーブ34にOリング等のシール部を設けることによっても達成される。
【0025】
ノズル32からディフューザスプール30に噴射される圧縮空気は、エジェクタ作用により真空ポート50を真空圧力とし、排気ポート40からサイレンサーエレメント46を通って外部に排出される(真空発生動作)。図2、3の矢印は、圧縮空気によるエジェクタ作用を示す。
このエジェクタ作用は真空発生用供給ポート10に圧縮空気が送入されることによってなされるもので、圧縮空気の送入圧力により、スプリング31による弾発作用に抗して、ディフューザスプール30とノズル32が前進し、真空破壊用供給ポート14と真空ポート50とを遮断し、真空発生用供給ポート10からのみ圧縮空気を本体60内に供給して真空発生させるものである。
【0026】
真空発生状態は、圧縮空気の供給源からの圧縮空気の供給を停止することによって解除される。図4は、圧縮空気の供給を停止した直後の状態を示す。
圧縮空気の供給を停止すると、ディフューザスプール30とノズル32は、スプリング31の弾発作用により、第2のスリーブ35の端面にノズル32の後端面が当接する後退位置(開放位置)に移動する。
ディフューザスプール30が後退位置に移動すると、弁座34bとシール部材36とが離間し、第2の流路54が連通孔34c、開口34aを介して第1の流路52と連通する。すなわち、真空破壊用供給ポート14と真空ポート50とが連通する。
【0027】
真空破壊用供給ポート14と真空ポート50とが連通すると、図1に示す支管16a内に残留する圧縮空気が、第2の流路54および第1の流路52を経由して真空ポート50に供給される。この支管16aに残留する圧縮空気が真空ポート50に供給される作用は、チェック弁18により支管16aに残留する圧縮空気が支管16b側に逆流することが阻止され、支管16a内の残圧によってエアが供給されるものである。
すなわち、真空発生用供給ポート10への圧縮空気の供給が停止されると、ディフューザスプール30とノズル32は、真空ポート50と真空破壊用供給ポート14とを連通する位置(真空破壊回路を開く位置)に移動し、支管16aに残留する圧縮空気が真空破壊用供給ポート14から真空ポート50に破壊エアとして供給されて真空破壊される。図4に、破壊エアの流れを破線によって示す。
【0028】
図5は、本実施形態の真空発生器の回路図を示している。圧縮空気の供給源側に真空発生用バルブ8が設けられ、真空破壊用供給ポート14はチェック弁18を介して圧縮空気の供給源側に接続されることを示す。
本実施形態の真空発生器において特徴的な構成は、エジェクタ機構を構成するディフューザスプール30とノズル32とが、真空ポート50と真空破壊用供給ポート14との間の連通を制御する遮断弁300としても作用する機能を備えていることである。
【0029】
図は、圧縮空気が真空発生用供給ポート10に供給されていない状態(真空破壊時)で、遮断弁300を介して真空破壊用供給ポート14と真空ポート50とが連通している状態を示す。圧縮空気が供給された際には、遮断弁300が真空破壊用供給ポート14と真空ポート50との間を遮断し、圧縮空気はエジェクタ30、32を通過して排気ポート40から排出され、真空ポート50に真空圧力が発生する。
【0030】
本実施形態の真空発生器によれば、エジェクタ機構を構成するディフューザスプール30とノズル32とに遮断弁300としての機能をもたせたことにより、遮断弁を別に設ける場合と比較して、真空発生器の構成を簡素化することができ、装置をコンパクトに形成することが可能になる。これによって、真空発生動作、真空破壊動作の応答特性(立ち上がり、立ち下がり)にもっとも大きく影響する、遮断弁300から真空ポート50までの真空破壊回路の容積を最小限にすることが可能となり、真空の立ち上がり、立ち下がりを高速で行うことが可能になる。
【0031】
また、本実施形態の真空発生器では、チェック弁18と真空破壊用供給ポート14とを接続する支管16a内に残留する圧縮空気を破壊用のエアとして利用するから、支管16aの長さおよび径を調節することによって、真空破壊用として供給される破壊エア量を調節することができる。すなわち、支管16aから破壊エアとして供給されるエア量は支管16aの内容積が大きくなると多くなり、支管16aの内容積が小さくなると少なくなるから、たとえば、支管16aの長さを長くすることによって、破壊エアのエア量を増やすことができ、破壊エアの吐出時間を長くすることができる。
したがって、本実施形態の真空発生器によれば、真空発生器を利用する搬送装置等での作業内容に応じて、支管16aの長さや径を変えることにより、破壊用のエア量を調節することができ、破壊エア量を調節して的確な作業を行うことができる。支管16a、16bを交換する作業は、きわめて容易である。
【0032】
真空ポート50への破壊エアの供給量については流量絞り弁(ニードルバルブ56)を使用して調節することもできる。流量絞り弁を絞ることにより、真空回路に流入するエア量が減少し、破壊エアの吐出時間が長くなる。このように、流量絞り弁を調節することにより、真空破壊時に真空ポート50に供給される破壊エアのエア量を調節し、適切な真空破壊を行うことができる。
【0033】
図6は、上記実施形態で説明した真空発生器の本体60を利用する真空発生器の他の構成例を示す回路図である。
上記実施形態では、チェック弁18を利用して圧縮空気の供給源から真空発生用供給ポート10と真空破壊用供給ポート14へ圧縮空気を分岐させて供給する構成とした。図6は、圧縮空気の供給源に真空発生用バルブ8と真空破壊用バルブ9を接続し、真空発生用供給ポート10への圧縮空気の供給と、真空破壊用供給ポート14への圧縮空気の供給を、真空発生用バルブ8と真空破壊用バルブ9のON-OFFを交互に切り替えて制御するように構成した例である。
【0034】
この実施形態の場合も、エジェクタ機構を構成するディフューザスプール30とノズル32とが遮断弁300として機能し、真空発生用供給ポート10に圧縮空気が送入された際には、真空破壊用供給ポート14と真空ポート50との間が遮断され、真空発生用供給ポート10への圧縮空気の供給が停止すると、真空破壊用供給ポート14と真空ポート50とが連通して真空ポート50に破壊エアが供給される。
破壊エアは圧縮空気の供給源から供給されるから、真空破壊用バルブ9の開閉タイミングを調節すること、流量絞り弁を調節することによって流量調整される。
【0035】
本実施形態の真空発生器もきわめてコンパクトに形成され、真空の立ち上がりおよび立ち下がりの高速応答性のすぐれた真空発生器として提供される。
また、本発明に係る真空発生器は真空発生機構と真空破壊機構を組み込んだ小型の真空発生器として提供されるから、真空配管の末端で使用する真空発生器として好適に利用することができる。真空配管の末端で使用することによって、真空ポートからワークまでの容積を最小限とすることができ、これによっても真空の立ち上がり、立ち下がりを速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】真空発生器の本体に供給管と支管とを接続した状態を示す説明図である。
【図2】真空発生器の本体の構成(真空動作時)を示す断面図である。
【図3】真空発生器の本体の構成を拡大して示す断面図である。
【図4】真空発生器の本体の構成(真空破壊時)を示す断面図である。
【図5】真空発生器の回路図である。
【図6】真空発生器の他の実施形態の構成を示す回路図である。
【図7】従来の真空発生器の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0037】
10 真空発生用供給ポート
12 供給管
14 真空破壊用供給ポート
16a、16b 支管
18 チェック弁
22 分岐用管継手
30 ディフューザスプール
30c 導入口
30d 段差突起
31 スプリング
32 ノズル
34 第1のスリーブ
34a 開口
34b 弁座
34c 連通孔
36 シール部材
40 排気ポート
44 排気孔
46 サイレンサーエレメント
50 真空ポート
51 アタッチポート
51b フィルター
52 第1の流路
54 第2の流路
56 ニードルバルブ
60 本体
60a 装着孔
60b 円筒部
300 遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気が供給される真空発生用供給ポートと、本体に内蔵されたエジェクタ機構により真空圧力が発生される真空ポートと、真空ポートに破壊エアを供給する真空破壊用供給ポートと、排気ポートとを備えた真空発生器において、
前記エジェクタ機構として、ディフューザスプールと前記真空発生用供給ポートから供給された圧縮空気をディフューザスプールに向けて噴射するノズルとを備え、
前記ディフューザスプールとノズルが、
前記真空発生用供給ポートに圧縮空気が送入された際には、前記真空破壊用供給ポートと前記真空ポートとの連通を遮断する閉止位置に移動し、
前記真空発生用供給ポートへの圧縮空気の送入が停止すると、前記真空破壊用供給ポートと前記真空ポートとを連通させる開放位置に移動することにより、
前記真空ポートと前記真空破壊用供給ポート間の連通を制御する遮断弁として形成されていることを特徴とする真空発生器。
【請求項2】
前記ディフューザスプールとノズルは、前記真空発生用供給ポートと前記排気ポートとを連通する装着孔内に、軸線方向に進退動可能に装着され、
前記ディフューザスプールの外周面と前記装着孔の内周面との間に、前記真空破壊用供給ポートに連通する第1の流路と、前記真空ポートに連通する第2の流路とを連絡する連絡流路が設けられ、
前記ディフューザスプールの外周面と前記装着孔の内周面とに、前記ディフューザスプールの進退動にともなって、前記連絡流路を開閉するバルブ部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空発生器。
【請求項3】
前記ディフューザスプールとノズルは、前記装着孔に嵌入して装着されたスリーブに内挿され、前記ディフューザスプールの外周面と前記スリーブの内周面との間に前記バルブ部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の真空発生器。
【請求項4】
前記スリーブには、前記ディフューザスプールに設けられた導入口に連通する開口が設けられ、
前記バルブ部は、前記開口よりも前側に設けられ、前記ディフューザスプールが前進位置に移動した際に前記連絡流路が閉止され、前記ディフューザスプールが後退位置に移動した際に前記連絡流路が開放されることを特徴とする請求項3記載の真空発生器。
【請求項5】
前記ディフューザスプールには、該ディフューザスプールを常時、閉止位置に移動させる向きの付勢手段が装着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の真空発生器。
【請求項6】
前記真空破壊用供給ポートに連通する第2の流路に連通して流量絞り弁が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空発生器。
【請求項7】
前記真空発生用供給ポートに、圧縮空気の供給源側に接続される供給管が接続され、
該供給管から分岐して、真空発生器の本体へ向かう一方向へのエアの通流のみを許容するチェック弁を介して、支管が接続されていることを特徴とする請求項1記載の真空発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−56746(P2007−56746A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242340(P2005−242340)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000152996)株式会社日本ピスコ (9)
【Fターム(参考)】