説明

眼疾患治療用経皮吸収型製剤、その使用、及び眼疾患治療薬の眼の局所組織への移行方法

支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有し、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に投与するための眼疾患治療用経皮吸収型製剤。該眼疾患治療用経皮吸収型製剤を、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に移行させる眼疾患治療用経皮吸収型製剤の使用、及び眼疾患治療薬の眼の局所組織への移行方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規な眼疾患治療用経皮吸収型製剤に関し、さらに詳しくは、支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有する眼疾患治療用経皮吸収型製剤に関する。また、本発明は、眼疾患治療用経皮吸収型製剤の使用に関する。さらに、本発明は、眼疾患治療用経皮吸収型製剤を用いた眼疾患治療薬を経皮的に眼の局所組織へ移行させる方法に関する。
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を経皮的に眼の局所組織に移行させることが可能なものであり、全身血流を介した全身薬に見られるような副作用もなく、しかも持続的に薬効を発揮することができる。
【背景技術】
眼疾患治療用製剤としては、例えば、点眼液、眼軟膏及び経口剤が知られている。眼疾患治療薬を含有する点眼液は、即効性に優れているものの、涙で流され易く、かつ薬効の持続性に乏しい。また、点眼液には、一般に、保存のために防腐剤が添加されているが、この防腐剤が刺激の原因となり易い。眼軟膏は、点眼液に比べて薬効の持続性が良好であるものの、眼疾患治療薬の投与量を正確に調整することが難しい。また、眼軟膏は、施用時に視力低下を引き起こすことがある。経口剤は、薬効の持続性に優れているものの、全身作用による患部以外での副作用が起こり易い。
眼疾患治療では、治療効果を高めるために、治療に有効量の眼疾患治療薬を持続的に結膜や角膜などの眼の局所組織に投与(局所投与)することができ、副作用の心配もない眼疾患治療用製剤が求められている。例えば、アレルギー性結膜炎や感染症の治療、白内障手術後の合併症防止などでは、比較的長時間にわたって薬効を持続させることが望まれている。しかし、従来、このような要求に十分に応えることができる眼疾患治療用製剤は提案されていなかった。
他方、消炎鎮痛貼付剤などのように、支持体上に薬物を含有する粘着剤層を設けた構造の経皮吸収型製剤が知られている(例えば、特開2000−256214号公報)。このような経皮吸収型製剤は、一般に、薬物を全身的に投与するための全身製剤であるか、あるいは肘、膝、腰、肩などの皮膚表面に貼付して使用されるものである。
従来、眼疾患治療用製剤の技術分野においても、経皮吸収型製剤が提案されている。例えば、支持層、感圧性接着性貯蔵層及び剥離可能な保護層を有し、該貯蔵層がポリマー材料とピロカルピン塩基またはその塩とを含有する経皮治療システムが提案されている(特表平8−509716号公報)。この経皮治療システムでは、薬物を局所的に施用するのではなく、活性物質であるピロカルピンを皮膚表面から全身的に放出することにより、眼内圧を低下させている。
また、水晶体、硝子体、脈絡膜及び網膜を含む後眼部の何れかの部位に対して到達させようとする薬物と経皮吸収促進剤とを基剤マトリックス中に含有してなる薬物含有層を有する眼科用経皮吸収貼付剤が提案されている(WO 01/26648)。この眼科用経皮吸収貼付剤は、他部位の皮膚を介して薬物を後眼部の疾患局所に到達させるためのものであって、全身製剤の一種である。
ドライアイ疾患治療薬を、点眼液、眼軟膏などとして局所投与する治療法に加えて、経皮的パッチまたはパッドの剤型により投与する治療法が提案されている(米国特許第6,277,855号明細書)。この経皮的パッチまたはパッドは、ドライアイ疾患治療薬を全身的に吸収かつ循環させることにより、涙液組織と接触させるためのものであって、全身製剤の一種である。
経皮吸収型製剤が全身製剤である場合には、薬物が貼付下の皮膚表面を透過して皮内毛細血管に吸収され、該毛細血管から全身血流に乗って薬効を発現する。すなわち、薬物が経皮的に全身血流を介して全身的に放出され、その一部が患部に到達する。このような経皮吸収型の全身製剤は、以下に説明するように、眼の局所組織の疾患である眼疾患の治療には必ずしも有効ではない。
第一に、従来の経皮吸収型の全身製剤は、眼疾患治療薬を経皮的に全身血流を介して全身的に放出させるため、薬物が眼の局所組織に到達するのに長時間を要し、しかも治療に有効量の薬物を眼の局所組織にまで到達させることが困難である。
第二に、従来の経皮吸収型の全身製剤は、治療に有効量の薬物を眼の局所組織に到達させるために、多量の薬物を全身的に放出させると、患部以外の箇所で副作用が発生するおそれが強くなる。
第三に、従来の経皮吸収型の全身製剤は、治療に有効量の薬物を、例えば、眼瞼の後面にある結膜、涙液組織、角膜などの外眼部組織に選択的に到達させることが困難である。すなわち、経皮吸収型の全身製剤は、点眼薬のように、外眼部組織に選択的に投与して、薬効を発揮させるのに適していない。
一方、経皮吸収型製剤が局所製剤の場合は、一般に、消炎鎮痛などを目的として、人体の肘、膝、腰、肩などの患部の皮膚表面に貼付して使用されるものであり、眼疾患の治療を目的とするものではない。
【発明の開示】
本発明の目的は、治療に有効量の眼疾患治療薬を持続的に眼の局所組織に投与することができ、副作用もなく持続的に薬効を発揮することができる新規な眼疾患治療用製剤を提供することにある。
より具体的に、本発明の目的は、治療に有効量の眼疾患治療薬を、経皮的に、眼瞼の後面にある結膜、涙液組織、角膜などの外眼部組織に比較的短時間で移行させ、かつ持続的に薬効を発揮することができる眼疾患治療用経皮吸収型製剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、眼疾患治療用経皮吸収型製剤を、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に移行させる眼疾患治療用経皮吸収型製剤の使用を提供することにある。
本発明の更なる他の目的は、眼疾患治療用経皮吸収型製剤を、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付することにより、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に移行させる眼疾患治療薬の眼の局所組織への移行方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層を設けた構造を有し、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付することができる形状を備えた眼疾患治療用経皮吸収型製剤に想到した。
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付することにより、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に投与することができる。より具体的に、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、眼疾患治療薬が貼付下の皮膚を透過し、結膜、涙液組織、角膜などの外眼部組織に到達し、薬効を発揮することができる。膏体の基剤としては、パップ剤(含水膏体)や粘着剤などが挙げられる。
本発明において、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に投与することとは、眼疾患治療用経皮吸収型製剤を貼付した皮膚表面から、眼疾患治療薬を、主として皮膚透過により、結膜、涙液組織、角膜などの外眼部組織に移行させ、該眼疾患治療薬の一部が全身血流を介して眼の局所組織に到達する前に薬効を発揮させるように投与することを意味する。したがって、眼疾患治療薬の一部が全身血流を介して眼の局所組織に到達することまで排除するものではない。
また、本発明において、眼瞼の前表面を含む皮膚表面とは、上下眼瞼の前表面の皮膚表面、及び上下眼瞼の前表面とその近傍の皮膚表面を意味する。眼瞼の前表面は皮膚によって覆われており、後面は、結膜によって覆われている。
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、膏体層中に含有させる眼疾患治療薬の種類や量、経皮吸収性などを調整することにより、治療に有効量の眼疾患治療薬を比較的短時間で外眼部組織に移行させ、かつ持続的に薬効を発揮することができる。本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、単位時間当りの眼疾患治療薬の投与量を制御することが可能である。
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、皮膚透過性が低い薬物であっても、眼瞼の前表面を含む皮膚表面から投与する局所製剤とすることにより、薬効を発現するのに十分な量の薬物を供給することができる。また、刺激性の強い薬物であっても、経皮吸収性や皮膚透過量を調節することにより、薬効と皮膚刺激性の抑制とを両立させることができる。
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、膏体の基剤として粘着剤を使用すると、必ずしも防腐剤を使用する必要がない。また、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、睡眠時の投与なども可能である。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
本発明によれば、支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有し、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に投与するための眼疾患治療用経皮吸収型製剤が提供される。
また、本発明によれば、支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有する眼疾患治療用経皮吸収型製剤を、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に移行させる眼疾患治療用経皮吸収型製剤の使用が提供される。
さらに、本発明によれば、支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有する眼疾患治療用経皮吸収型製剤を、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付することにより、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に移行させる眼疾患治療薬の眼の局所組織への移行方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有するものであれば、その具体的な構成は特に限定されない。本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤の代表例としては、パップ剤及び粘着テープ製剤が挙げられる。
1.パップ剤
パップ剤は、膏体の基剤として、水、水溶性高分子、湿潤剤(保湿剤)などを含有する製剤である。基剤中に含まれる水の量は、通常20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%程度である。
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン、寒天、アルギン酸、マンナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、メチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキプロピルセルロースナトリウムなどが挙げられる。これらの水溶性高分子は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。基剤中に含まれる水溶性高分子の量は、通常0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜15重量%程度である。
湿潤剤としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マルチトール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、還元麦芽糖水飴などの多価アルコールが挙げられる。基剤中に含まれる湿潤剤の量は、通常10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%程度である。
パップ剤の基剤には、必要に応じて、界面活性剤、架橋剤、充填剤、防腐剤、pH調整剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、吸収促進剤、安定化剤などを製剤処方が可能な範囲内で添加することができる。
パップ剤を製造するには、基剤に薬物を含有させた含水膏体を支持体または剥離ライナー上に塗布する。すなわち、基剤中に眼疾患治療薬を均一に分散または溶解させて含水膏体を調製し、この含水膏体を支持体上に展延するか、あるいは剥離ライナー上に展延し、支持体上に圧着転写する方法により、パップ剤タイプの経皮吸収型製剤を調製することができる。膏体層の表面は、剥離ライナーによって被覆する。
2.粘着テープ製剤
粘着テープ製剤は、支持体上に眼疾患治療薬を含有する粘着剤層を設けた構造の経皮吸収型製剤である。粘着テープ製剤は、粘着剤層の粘着力により眼瞼を含む皮膚表面に直接貼付することができるので、パップ剤よりも取り扱いや適用が容易である。本発明で用いられる粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。これらの中では、アクリル系粘着剤及びゴム系粘着剤が好ましい。ゴム系粘着剤は、粘着付与剤やその他の添加剤の種類を自由にコントロールすることができるため好ましい。
ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリイソプレンなどのゴム状弾性体を粘着剤基剤とするものを挙げることができる。
ゴム系粘着剤は、粘着剤基剤であるゴム状弾性体に、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂などの粘着付与剤を添加した組成物である。粘着剤基剤には、必要に応じて、例えば、液状ポリブテン、液状ポリイソブチレン、鉱油などの軟化剤;酸化チタン、酸化亜鉛などの充填剤;ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピルなどの酸化防止剤(安定化剤);などの各種添加剤を添加することができる。
粘着付与剤は、ゴム状弾性体100重量部に対して、通常10〜400重量部、好ましくは50〜300重量部、より好ましくは70〜200重量部の割合で使用する。軟化剤を使用する場合には、ゴム状弾性体100重量部に対して、通常1〜90重量部、好ましくは5〜50重量部の割合で使用する。
ゴム系粘着剤を用いた粘着テープ製剤(「貼付剤」ともいう)の製造には、一般に、粘着剤溶液の塗工法、ホットメルト法、カレンダー法などが用いられる。粘着剤溶液の塗工法では、眼疾患治療薬と粘着剤成分とを含有する有機溶剤溶液を剥離ライナーまたは支持体上に塗工し、乾燥させる方法により、貼付剤を製造する。有機溶剤としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、ヘキサンなどが挙げられる。
ホットメルト法では、例えば、眼疾患治療薬以外の粘着剤成分を、窒素置換下で加熱攪拌して溶融した後、温度を下げてから薬物成分を添加して均一に混合する。次いで、薬物成分を含有する粘着剤組成物をホットメルトコーターにより剥離ライナー上に展延し、その上に支持体を積層する方法により、貼付剤を製造する。
カレンダー法では、例えば、ゴム状弾性体を素練りした後、温度を下げてから粘着付与剤を加えて混練りを行う。次に、温度を更に下げてから、軟化剤を加えて混練りを行い、最後に、薬物成分を加えて混練りを行い、粘着剤組成物を調製する。この粘着剤組成物を剥離ライナー上に展延して、その上に支持体を積層する方法により貼付剤を製造する。温度条件や混練時間などは、ゴム状弾性体の種類や粘着剤組成物の配合処方などにより、適宜変更することができる。また、通常は、粘着剤組成物を剥離ライナー上に塗工するが、所望により、支持体上に塗工してから、剥離ライナーを被覆材として積層してもよい。
ゴム系粘着剤の中でも、安定性、薬物の経皮吸収性と皮膚透過性、粘着特性などの観点から、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」と略記することがある)を主な粘着剤基剤とし、粘着付与剤とともに、必要に応じて、他のゴム状弾性体などをブレンドしたものが好ましい。
アクリル系粘着剤としては、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれと共重合可能な官能性モノマー及び/またはビニルエステルモノマーとの共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、通常50〜100重量%、好ましくは60〜97重量%の割合で用いられる。官能性モノマーは、通常0〜30重量%、好ましくは2〜10重量%の割合で用いられる。ビニルエステルモノマーは、通常0〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の割合で用いられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基部分の炭素数は、4〜10の範囲内であることが好ましい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニルなどが挙げられる。官能性モノマーとしては、例えば、官能基を有する(メタ)アクリル酸類が挙げられ、その具体例として、アクリル酸、メタアクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリル酸などが挙げられる。ビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどが挙げられる。
アクリル系粘着剤は、一般に、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合により合成される。眼疾患治療薬をアクリル系粘着剤の溶液もしくはエマルジョンに分散または溶解させ、得られた溶液もしくは分散液を剥離ライナーまたは支持体上に塗工し、乾燥することにより、貼付剤を製造することができる。このアクリル系粘着剤は、少量の架橋剤を加えて架橋することが好ましい。
シリコーン系粘着剤としては、2官能または3官能のポリシロキサンなどを主成分とするものが挙げられる。眼疾患治療薬をシリコーン系粘着剤またはその溶液に分散または溶解させ、剥離ライナーまたは支持体上に塗工もしくは展延することにより、貼付剤を製造することができる。
3.支持体
支持体としては、起伏のある眼瞼の前表面を含む皮膚表面に密着させることができる程度に柔軟性を備えたものであることが好ましい。支持体としては、薬物が吸着されず、かつ支持体側から薬物が放出されないものがより好ましい。支持体の具体例としては、不織布、織布、フィルム(シートを含む)、多孔質体、発泡体、紙、不織布もしくは織布にフィルムをラミネートした複合体を挙げることができるが、これらに限定されない。
支持体として用いる不織布の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;レーヨン、ポリアミド、ポリエステルエーテル、ポリウレタン、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体などが挙げられる。織布の材質としては、コットン、レーヨン、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコールを挙げることができるが、これらに限定されない。
支持体として用いるフィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレートなどのポリアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;セロハン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリスルホンが挙げられるが、これらに限定されない。
紙としては、例えば、含浸紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、和紙、グラシン紙、合成紙が挙げられる。複合体としては、前記不織布もしくは織布に、前記フィルムをラミネートした複合体を挙げることができる。
4.眼疾患治療薬
本発明では、薬物として眼疾患治療薬を使用する。眼疾患治療薬としては、従来より、点眼液や眼軟膏などで用いられている各種薬物が用いられる。このような眼疾患治療薬の具体例(薬効分類)について、必要に応じて適応症例と共に示すと、抗ウイルス剤(単純ヘルペスに起因する角膜炎)、抗菌剤(感染症:結膜炎、眼瞼炎、角膜腫瘍、涙のう炎)、抗真菌剤、抗アレルギー剤(アレルギー性結膜炎、花粉症、春季カタル)、消炎剤(結膜炎、表層角膜炎、眼瞼縁炎、強膜炎)、非ステロイド消炎剤(アレルギー性結膜炎)、消炎鎮痛剤、消炎酵素剤(慢性結膜炎)、抗生物質(感染症:トラコーマ、結膜炎、眼瞼炎、眼瞼縁炎、角膜炎、麦粒腫、角膜潰瘍、瞼板腺炎、涙のう炎)、サルファ剤(トラコーマ、結膜炎、眼瞼炎、眼瞼縁炎、角膜潰瘍、角膜炎)、合成ペニシリン(感染症)、緑内障治療剤、白内障治療剤、縮瞳剤、散瞳剤、局所収斂剤、血管収縮剤、眼圧上昇防止剤、高眼圧症治療剤、表面麻酔剤、α1−遮断剤(緑内症、高眼圧症)、β−遮断剤(緑内障、高眼圧症)、β1−遮断剤(緑内症、高眼圧症)、炭酸脱水素酵素阻害剤、局所用選択H1−ブロッカー(アレルギー性結膜炎)、副腎皮質ホルモン(外眼部、前眼部の炎症性疾患の対症療法)、ビタミンB12(眼精疲労)、補酵素型ビタミンB2(角膜炎、眼瞼炎)、抗コリンエストラーゼ剤(緑内障、調節性内斜視、重症筋無力症)、有機ヨウ素製剤(中心性網膜炎など)が挙げられる。
これらの眼疾患治療薬中でも、抗菌剤、抗アレルギー剤、非ステロイド系消炎剤(抗炎症薬)が特に好ましい。また、対象疾患としては、眼感染症アレルギー性結膜炎、花粉症、春季カタルが好ましい。本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、術後炎症、術後感染の予防・治療にも好ましく用いることができる。
点眼液や眼軟膏などに使用されている具体的な薬物名としては、例えば、アシクロビル、アシタザノラスト水和物、アズレン、アントラニル酸・アスコルビン酸、アンレキサノクス、イソプロピルウノプロストン、イドクスウリジン、イブジラスト、インドメタシン、エピネフリン、エリスロマイシン、塩化リゾチーム、塩酸アプラクロニジン、塩酸オキシブプロカイン、塩酸カルテオロール、塩酸シクロペントラート、塩酸ジピベフリン、塩酸セフメノキシム、塩酸ドルゾラミド、塩酸ピロカルピン、塩酸フェニレフリン、塩酸ブナゾシン、塩酸ベタキソロール、塩酸ベフノロール、塩酸レボカバスチン、塩酸レボブノロール、塩酸ロメフロキサシン、オフロキサシン、カルバコール、グリチルリチン酸二カリウム、グルタチオン、クロモグリク酸ナトリウム、クロラムフェニコール、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、シアノコバラミン、ジクロフェナクナトリウム、臭化ジスチグミン、臭化水素酸ホマトロピン、硝酸銀、硝酸ナファゾリン、ジヨードステアリン酸カルシウム、スルフイソキサゾール、スルベニシンナトリウム、デキサメタゾン、トブラマイシン、トラニラスト、トロピカミド、ニプラジロール、ノルフロキサシン、ピマリシン、ピレノキシン、フマル酸ケトチフェン、プラノプロフェン、フラビンアデニンジヌクレオチド、フルオロメトロン、プレドニゾロン、ブロムフェナクナトリウム水和物、ペミロラストカリウム、ヘレニエン、マレイン酸チモロール、ミオピン、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム、ヨウ化エコチオパート、ラタノプロスト、リドカイン、−[塩酸]、硫酸アトロピン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸シソマイシン、硫酸ジベカシン、硫酸ミクロノマイシン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、リン酸ベタメタゾンナトリウム、レボフロキサシンなどを挙げることができる。
これらの眼疾患治療薬の中でも、経皮吸収性と皮膚透過性の観点から、分子量1000以下の化合物からなる薬物が好ましい。また、これらの眼疾患治療薬の中でも、分子量1000以下の抗菌剤、抗アレルギー剤及び非ステロイド系消炎剤がより好ましい。これらの眼疾患治療薬の分子量は、より好ましくは800以下、特に好ましくは600または500以下である。
さらに、前記の眼疾患治療薬の中でも、フマル酸ケトチフェン(抗アレルギー剤、抗ヒスタミン薬;分子量425.5)及びジクロフェナクナトリウム(非ステロイド系消炎剤;分子量318.13)が、経皮吸収性、皮膚透過性、薬効などの観点から特に好ましい。
5.溶解補助剤
本発明では、眼疾患治療薬を粘着剤やパップ剤基剤(含水膏体)に溶解させ易くする必要がある場合には、各成分を含有する塗工液や塗工用組成物を調製する際に、溶解補助剤を使用することができる。溶解補助剤としては、例えば、クロタミトン、エタノール、尿素、水溶性有機アミン、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、1−メントール、ハッカ油などが挙げられる。溶解補助剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
6.経皮吸収促進剤(皮膚透過促進剤)
本発明では、眼疾患治療薬の経皮吸収を促進するために、経皮吸収促進剤を使用することができる。本発明では、経皮吸収促進剤は、薬物を単に経皮吸収させるだけではなく、皮膚透過もさせるため、皮膚透過促進剤と呼ぶことがある。
経皮吸収促進剤としては、例えば、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、アルコールアミン、多価アルコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリド(すなわち、グリセリンの脂肪酸エステル)、多価アルコール中鎖脂肪酸エステル、乳酸アルキルエステル、二塩基酸アルキルエステル、アシル化アミノ酸、ピロリドン類が挙げられるが、これらに限定されない。これらの経皮吸収促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
脂肪族アルコールとしては、例えば、オレイルアルコール、ラウリルアルコールなどの炭素数12〜22の飽和または不飽和の高級アルコールが好ましい。脂肪酸としては、例えば、リノール酸、オレイン酸、リノレン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸が挙げられる。
アルコールアミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、塩酸トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンが挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピルが挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテルとしては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビタン、ソルビトール、イソソバイド、メチルグルコシド、オリゴ糖、還元オリゴ糖などの多価アルコールのアルキルエーテルが挙げられる。多価アルコールアルキルエーテルのアルキル基部分の炭素数は、6〜20であるのが好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、アルキル基部分の炭素数が6〜20で、かつ、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位(−O−CHCH−)の数が1〜9個のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルが挙げられる。
グリセリドとしては、炭素数が6〜18の脂肪酸のグリセリンエステルが好ましい。グリセリドは、結合している脂肪酸の数により、モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドに区別されるが、いずれも使用することができる。また、これらの混合物(例えば、モノ−及びジ−グリセリドの混合物)であってもよい。グリセリドを形成する好ましい脂肪酸成分としては、例えば、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(すなわち、ステアリン酸)、オレイン酸が挙げられる。
この他、乳酸、酒石酸、1,2,6−ヘキサントリオール、ベンジルアルコール、ラノリン、水酸化カリウム(KOH)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどの各種経皮吸収促進剤を適宜使用することができる。
これらの経皮吸収促進剤(皮膚透過促進剤)の中でも、ラウリルアルコールなどの脂肪族高級アルコール;イソステアリン酸などの脂肪酸;ジイソプロパノールアミンなどのアルコールアミン;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;KOH、トリス(ヒドロキシメチル)アミンメタンなどのその他の化合物;これらの2種以上の混合物が好ましい。
7.各成分の使用割合
眼疾患治療薬は、粘着剤などの膏体基剤100重量部に対して、通常0.1〜60重量部、好ましくは0.3〜20重量部の割合で用いられる。眼疾患治療薬の含有割合が小さすぎると、持続的に十分な薬効を得ることが難しくなり、大きすぎると、結晶が析出し、粘着力が低下する場合がある。
溶解補助剤は、粘着剤100重量部に対して、通常0〜60重量部、好ましくは0〜20重量部の割合で用いられる。経皮吸収促進剤(皮膚透過促進剤)は、粘着剤などの膏体基剤100重量部に対して、通常1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部の割合で用いられる。粘着剤層などの膏体層には、眼疾患治療薬の薬効や粘着剤の粘着性を阻害しない限り、必要に応じて、この技術分野で公知の各種添加剤などを含有させることができる。
8.経皮吸収型製剤の製造方法
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、既に述べた方法により製造することができるが、ここでは、その好ましい製造例についてより具体的に説明する。本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有している。粘着剤層などの膏体層の上には、通常、剥離ライナーが設けられている。剥離ライナーは、膏体層の保護を目的として使用され、例えば、ポリエチレンコート上質紙、ポリオレフィンコートグラシン紙、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)フィルム、ポリプロピレンフィルムなどの片面をシリコーン処理したものなどが挙げられる。
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤がパップ剤である場合には、基剤に薬物を含有させた含水膏体を支持体または剥離ライナー上に塗布することにより製造することができる。本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤が貼付剤(粘着テープ製剤)である場合には、一般的な貼付剤の製造法である溶剤塗工法、ホットメルト法、カレンダー法などにより製造することができる。
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、ゴム系粘着剤を用いた粘着テープ型製剤であることが好ましい。溶剤塗工法では、例えば、ガラスライニングした金属製の釜に、n−ヘキサン、トルエン、酢酸エチル等の有機溶剤を入れ、これに種々のゴム状弾性体、粘着付与剤、酸化防止剤などを加えて、均一に溶解するまで2〜10時間、好ましくは3〜7時間程攪拌する。次に、この粘着剤溶液に、所定量の眼疾患治療薬と、必要に応じて、溶解補助剤、経皮吸収促進剤などを加えて、10〜120分間程度攪拌し続ける。このようにして得られた塗工液を、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター等の塗工機を用いて、支持体上にその所定量を均一に塗布する。塗布後、40〜120℃の一定温度雰囲気下に1〜10分間程度置き、有機溶剤を揮散させる。有機溶剤の種類及び塗布層の厚みにより、適切な乾燥条件を設定する。粘着剤層の表面に、シリコン処理したポリエステルフィルムやポリエチレンコート上質紙等の剥離ライナーを貼り合わせ、所定のサイズに裁断して貼付剤とする。剥離ライナーの片面に塗工液を塗工し、乾燥後、粘着剤層の表面に支持体を積層してもよい。
ホットメルト可能な粘着剤の場合は、ホットメルト塗工をすることができる。ホットメルト法では、薬物成分以外の粘着剤成分を、窒素置換下、温度100〜150℃で加熱攪拌して溶解した後、温度を100〜120℃に下げてから薬物成分を添加して均一に混合する。次いで、薬物成分を含有する粘着剤組成物をホットメルトコーターにより剥離シート上に展延し、その上に支持体を積層することにより、貼付剤を製造する。温度条件などは、粘着剤基剤の種類などに応じて最適な範囲を設定することが好ましい。
カレンダー法の場合は、例えば、ゴム状弾性体を130℃で5〜20分間程度素練り後、温度を100〜120℃程度に下げ、粘着付与剤を加えて、5〜10分間程度混練りを行う。次に、温度を70〜90℃程度にまで下げてから、軟化剤を加えて、5〜10分間程度混練りを行い、最後に、眼疾患治療薬、溶解補助剤、経皮吸収促進剤などを加えて5〜10分間程度混練りを行い、薬物含有膏体を得る。これをシリコーン処理したポリエステルフィルム上に0.1mmの厚みに展延し、次いで、粘着剤層の上に支持体をラミネートすることにより、貼付剤を製造することができる。温度や混練時間などは、使用する粘着剤基剤の種類などに応じて、適宜、好ましい範囲を設定する。
また、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、アクリル系粘着剤を用いた粘着テープ型製剤であることが好ましい。前記したとおり、眼疾患治療薬をアクリル系粘着剤の溶液もしくはエマルジョンに分散または溶解させ、得られた溶液もしくは分散液を剥離ライナーまたは支持体上に塗工し、乾燥することにより、貼付剤を製造することができる。
膏体層の厚みは、パップ剤の場合、通常0.3〜2.0mmであり、粘着テープ型製剤の場合には、通常10〜300μmである。
9.眼疾患治療用経皮吸収型製剤
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を経皮的に眼の局所組織に投与するために使用する。眼瞼の前表面を含む皮膚表面は、上眼瞼、下眼瞼または両眼瞼の前表面(皮膚表面)、またはこれらの眼瞼の皮膚表面とその周辺の皮膚表面である。
そのため、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、上眼瞼、下眼瞼または両眼瞼の皮膚表面に沿って貼付し得る形状を有するものであることが好ましい。そのような形状の具体例としては、眼瞼の前表面の形状に沿うような四角形、楕円形、三日月型、円形、馬蹄形、リング状などの形状が挙げられる。
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤を構成する「眼疾患治療薬を含有する膏体層」の好ましい実施態様としては、以下の成分を含有する粘着剤層を挙げることができる。
(1)ゴム系粘着剤層
i)SIS: 100重量部、
ii)粘着付与剤: 10〜400重量部、
iii)経皮吸収促進剤: 1〜50重量部、
iv)眼疾患治療薬: 0.1〜60重量部。
(2)アクリル系粘着剤層
i)アクリル系(共)重合体: 100重量部、
ii)経皮吸収促進剤: 1〜50重量部、
iii)眼疾患治療薬: 0.1〜60重量部。
これらの粘着剤層に含有させる眼疾患治療薬としては、前述の分子量1000以下の化合物からなる薬物が好ましく、分子量1000以下の抗菌剤、抗アレルギー剤及び非ステロイド系消炎剤がより好ましい。これらの眼疾患治療薬の中でも、フマル酸ケトチフェン及びジクロフェナクナトリウムが、経皮吸収性、皮膚透過性、薬効などの観点から特に好ましい。
経皮吸収促進剤としては、前述のラウリルアルコールなどの脂肪族高級アルコール;イソステアリン酸などの脂肪酸;ジイソプロパノールアミンなどのアルコールアミン;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;KOH、トリス(ヒドロキシメチル)アミンメタンなどのその他の化合物;これらの2種以上の混合物が好ましい。
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に投与することができる。
前記したとおり、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤において、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に投与することとは、眼疾患治療用経皮吸収型製剤を貼付した皮膚表面から、眼疾患治療薬を、主として皮膚透過により、結膜、涙液組織、角膜などの外眼部組織に移行させ、該眼疾患治療薬の一部が全身血流を介して眼の局所組織に到達する前に薬効を発揮させるように投与することを意味する。
より具体的には、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤を眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付したとき、貼付後8時間以内での貼付下の外眼部組織への薬物の移行量(単位:μg/g・tissue)が、全身血流を介した薬物の外眼部組織への移行量の通常2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは7倍以上、特に好ましくは8倍以上となる。
本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤を眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付したとき、該眼疾患治療用経皮吸収型製剤を背部などの眼の周囲の皮膚面から遠い箇所の皮膚面に貼付した場合と比べて、貼付後8時間以内での貼付下の外眼部組織への薬物の移行量(単位:μg/g・tissue)は、全身血流を介した薬物の外眼部組織への移行量の50倍以上、さらには100倍にもなる。
また、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤を一方の眼の眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付したとき、貼付後8時間以内での貼付下の外眼部組織への薬物の移行量(単位:μg/g・tissue)は、他方の眼の結膜などの外眼部組織への移行量の10倍以上になる。
これらの眼疾患治療薬の移行量の測定方法と結果は、以下の実施例で詳細に説明する。
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。
【実施例1】
ゴム弾性体としてスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(ジェイエスアール社製、商品名「SIS5000」)40.5g、粘着付与剤としてテルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSレジン1150N」)40.5g、酸化防止剤としてブチルヒドロキシトルエン1g、眼疾患治療用の抗アレルギー薬であるフマル酸ケトチフェン10g、吸収促進剤としてラウリルアルコール3g及びジイソプロパノールアミン5gをトルエン150gに溶解させ、固形分40重量%の粘着剤溶液(塗工液)を得た。この塗工液を、剥離紙上に乾燥後の厚みが40μmとなるように塗工し、乾燥後、支持体(厚さ12μmのポリエステルフィルム)を貼り合わせて貼付剤とした。
【実施例2】
ゴム弾性体としてスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(ジェイエスアール社製、商品名「カリフレックスTR−1107」)400g、粘着付与剤としてテルペン樹脂(YSレジン1150N)400g、軟化剤として流動パラフィン125g、眼疾患治療用の非ステロイド系抗炎症薬であるジクロフェナクナトリウム5g、及び吸収促進剤としてイソステアリン酸60gを、加熱式混練機を用いて均一になるまで練合した。練合後、混合物を、カレンダーを用いて片面シリコーン処理した剥離ライナーのシリコーン面に厚さ200μmになるよう展延し、次いで、支持体(厚さ12μmのポリエステルフィルム)を貼り合わせて貼付剤とした。
[比較例1]
市販の0.05%フマル酸ケトチフェン点眼液(ザジテン点眼液0.05%、三共−ノバルディス社製)を用いた。
[比較例2]
市販の0.1%ジクロフェナクナトリウム点眼液(ジクロード点眼液0.1%、わかもと社製)を用いた。
<結膜への移行性試験>
ウサギ下眼瞼の剃毛部分に、1×4cmの四角形に打ち抜いた試験製剤を貼付した。1時間後と12時間後に試験製剤を剥離し、麻酔下、眼瞼部分の皮膚を剥離して、結膜を採取した。結膜中に含まれる薬物の量を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により定量した。点眼液についても、ウサギの眼に1滴滴下後、同様の操作を行った。結膜移行性試験の結果を表1及び2に示す。


表1に示すように、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤(実施例1)は、長時間にわたってフマル酸ケトチフェンの高い結膜移行性が認められた。一方、点眼液(比較例1)は、涙ですみやかに流され、投与1時間後には低値の薬物しか残存せず、長時間にわたる有効性が期待できないことが示されている。
また、表2に示すように、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤(実施例2)は、結膜へのジクロフェナクナトリウムの高い移行性が認められ、各種の炎症眼疾患に対して有効性を発揮することが分かる。
以上のことから、一般に薬物の皮膚透過性が低い経皮吸収型製剤でも、眼瞼の皮膚表面に貼付することにより、治療に有効量の薬物を経皮的に投与することができ、かつ薬効を長時間にわたって持続させ得ることが分かる。したがって、本発明の経皮吸収型製剤は、眼疾患の治療に適用することができる。また、眼疾患治療薬を経皮吸収型製剤として投与することにより、点眼薬にはない薬効の持続性や就寝中の適用といった従来の製剤にはない新しい投与形態を提供することができる。
【実施例3】
下記表3に示す配合処方に従って、アクリル系粘着剤〔日本カーバイド工業製、商品名「ニッセツPE−300」;(メタ)アクリル酸アルキルエステル−酢酸ビニル共重合体;固形分40重量%の粘着剤溶液(酢酸エチル/トルエン混合溶媒)〕3.713g(固形分1.485g)に、架橋剤(日本カーバイド工業製、商品名「ニッセツCK−401」;金属キレート剤)0.0015g、フマル酸ケトチフェン0.3g、経皮吸収促進剤としてポリオキシエチレンオレイルエーテル0.6g及びミリスチン酸イソプロピル0.6gを添加して、濃度57.3重量%の塗工液を調製した。この塗工液を、剥離紙上に乾燥後の厚みが80μmとなるように塗工し、乾燥後、支持体(厚み12μmのポリエステルフィルム)を貼り合わせて貼付剤とした。

上記で得られた貼付剤(眼疾患治療用経皮吸収型製剤)を用いて、下記の方法により薬物のフマル酸ケトチフェンの結膜への移行性試験を行った。
<結膜への移行性試験>
1.試験方法:
1)動物
動物は、体重約2kgの日本白色雄性ウサギを福崎養兎組合より購入し、それぞれコンベンショナル区域の飼育室にて温度23±3℃、湿度55±10%の条件下で飼育した。
2)動物の前処置
経皮吸収型製剤の貼付のため、予め除毛処理したウサギを使用した。除毛処理は、ケタミン/キシラジン併用麻酔下、ウサギ眼周辺部または背部をバリカンとシェーバーを用いて、皮膚を傷つけないように行った。
3)投与
ケトチフェン経皮吸収型製剤を除毛処理したウサギ上下眼瞼皮膚及び背部皮膚へ4cm貼付した。
上下眼瞼皮膚の場合:1cm×2cm=2cmの大きさに裁断した経皮吸収型製剤を一方の眼の眼瞼の上下に2cmずつ貼付した。
背部皮膚の場合:2cm×2cm=4cmの大きさに裁断した経皮吸収型製剤を背部皮膚に貼付した。
4)眼組織採取
予め定めた下記時点ごとにキャピラリーで涙液を採取した後、過剰量のペントバルビタールナトリウム溶液でウサギを安楽死させた。前眼部を生理食塩水で洗浄後、結膜をつけた状態で眼球を摘出した後、結膜を採取した。
採取時点:4、8、24時間。
5)眼組織サンプルの前処理
結膜:リン酸二水素ナトリウム緩衝液1mLを加えて結膜を細切した。アセトニトリルを4mL加え300rpmで10分間振盪後、3000rpmで10分間遠心した。次に、上清4mLを別の試験管に分取し減圧乾固した後、HPLC移動相で再溶解した。その溶液をメンブランフィルター(0.22μm)で濾過し、濾液をHPLC測定サンプルとした。
涙液:HPLC移動相を150μL加えて攪拌後、HPLC測定サンプルとした。
6)濃度測定
高速液体クロマトグラフィを使用して、下記HPLC条件でフマル酸ケトチフェン濃度を測定した。
検出器 :紫外吸光光度計(測定波長300nm)
カラム :Capcell pak C18MGS5μm、4.5×250mm、資生堂製ガードカラム(TOSOH、80Ts)
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相 :0.1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH9):アセトニトリル=30:70
流速 :1.0mL/min
注入量 :50μL
実施例3で調製した眼疾患治療用経皮吸収型製剤を用いたフマル酸ケトチフェンの結膜への移行性試験の結果を表4に示す。

表4の結果から明らかなように、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤を被験動物の背部の皮膚に貼付した場合、薬物(フマル酸ケトチフェン)が貼付下の皮膚表面を透過して皮内毛細血管に吸収され、そして、該毛細血管から全身血流に乗って両眼の結膜に到達する量が、貼付から4時間、8時間及び24時間経過しても、0.01〜0.02μg/g程度の水準であること、すなわち、薬物が全身血流を介して眼の局所組織(外眼組織の結膜)に移行する量が極めて少量であることが分かる。
これに対して、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤を上下眼瞼の皮膚面に貼付すると、貼付下の結膜に、貼付から4時間後には4.44μg/gと高濃度の薬物が移行し、そして、この移行量は、8時間後には2.95μg/g、24時間後には0.13μg/gと高水準を維持していることが分かる。
他方、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤を貼付していない眼(反対眼)の結膜への薬物の移行量は、4時間後には0.39μg/gと比較的高い水準を示したものの、貼付下の結膜への移行量4.44μg/gの約10重量%程度の水準でしかない。しかも、薬物の移行量は、8時間後には0.03μg/g、24時間後には0.01μg/gと著しく低下しており、薬効の持続性に劣っていることが分かる。
上記の実験結果は、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤が、粘着剤層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に投与することができるものであることを明瞭に示している。より具体的に、上記実験結果は、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤を眼瞼貼付した場合と背部貼付した場合とで薬物の結膜濃度に著しい差異があることを示しており、この実験結果は、本発明の製剤を眼瞼に貼付することにより、薬物が持続的に高濃度で移行することを示している。
さらに、眼瞼貼付の反対眼結膜での薬物濃度が貼付眼のそれよりも明らかに低いこと、及び血漿中濃度が検出限界値以下(<0.005μg/mL)であったことから、本発明の製剤を眼瞼部位に貼付すると、薬物は全身血流を介しての結膜移行よりも、貼付眼瞼部位から経皮的に結膜へ移行することが明らかである。
【実施例4】
粘着剤として、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS;日本ゼオン社製、商品名「クインタック3520」)100重量部に、粘着付与剤としてロジン系樹脂(荒川化学社製、商品名「パインクリスタル KE311」)を100重量部の割合で配合したSIS系粘着剤を用いて、表5に示す配合処方に従って、該SIS系粘着剤、フマル酸ケトチフェン、経皮吸収促進剤(皮膚透過促進剤)としてKOHとパルミチン酸イソプロピル、酸化防止剤としてブチルヒドロキシトルエンを、トルエンに溶解させ、固形分50重量%塗工液を得た。この塗工液を、剥離紙上に乾燥後の厚みが40μmとなるように塗工し、乾燥後、支持体(厚み12μmのポリエステルフィルム)を貼り合わせて貼付剤とした。

上記で得られた眼疾患治療用経皮吸収型製剤を1cm×2cm=2cmの大きさに裁断し、被験動物の一方の眼の下眼瞼に貼付した。薬物(フマル酸ケトチフェン)の結膜及び涙液への移行量について、実施例3に示した移行性試験法により測定した。結果を表6に示す。

表6に示した貼付下の眼の結膜及び涙液への薬物の移行量と、貼付していない反対眼の結膜及び涙液への薬物の移行量との対比結果から明らかなように、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤を眼瞼の皮膚表面に貼付すると、薬物が高濃度かつ持続的に結膜及び涙液に移行することが分かる。反対眼では、4時間経過後の薬物の血漿中濃度が検出限界値以下(<0.005μg/mL)であったことから、本発明の製剤の眼瞼の皮膚表面への貼付により、薬物が経皮的に貼付眼の結膜及び涙液へ持続的に移行することが明らかである。
表6に示す実験結果からも、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤からの前眼部(結膜や涙液組織など)への薬物移行は、全身血流からの移行よりも、貼付部位からの経皮的移行により行われていることが明らかである。
【実施例5】
実施例4で得られたフマル酸ケトチフェンを含有する眼疾患治療用経皮吸収型製剤を用いて、以下の試験方法により、モルモットヒスタミン誘発結膜浮腫モデルを用いた薬効評価を行った。結果を表7に示す。
<モルモットヒスタミン誘発結膜浮腫モデルによる評価試験>
1.試験方法:
1)動物
動物は、4週齢の雄性Slc:Hartleyモルモットを日本SLCより購入、それぞれSPF飼育室にて温度23±2℃、湿度55±10%の条件下で飼育した。
2)群分け及び投与スケジュール(各群:n=5〜6)
・生理食塩液群(Control群)
・ザジテン(R)点眼2hr群
・ザジテン(R)点眼4hr群
・ザジテン(R)点眼8hr群
・実施例4製剤貼付0.5hr群
・実施例4製剤製剤貼付4hr群
・実施例4製剤製剤貼付8hr群
・実施例4製剤製剤貼付10hr(2hr剥離)群
3)ヒスタミン溶液の調製
ヒスタミン溶液は、ヒスタミン二塩酸塩(Lot No.TCN1070、和光純薬)を濃度が0.2重量%となるように生理食塩液に溶解して調製した。調製したヒスタミン溶液は、不純物を取り除くために、孔径0.22μmフィルター〔MILLEX(R)−GV〕で濾過した。
4)色素(エバンスブルー)溶液の調製
色素溶液は、エバンスブルー(Lot No.K25612469、Merk)を2重量%となるように生理食塩液に溶解して調製した。調製した色素溶液は、不純物を取り除くために、孔径0.22μmフィルター〔MILLEX(R)−GV〕で濾過した。
5)ヒスタミン結膜浮腫誘発と被験物質投与
50mg/mLのケタミン注射液〔動物用ケタラール(R)50、三共製薬製〕と20mg/mLキシラジン注射液〔セラクタール(R)2%注射液、バイエル社製〕の等量混合液を後肢大腿筋肉内に0.5mL/body投与(1mL注射筒、25G注射針)して麻酔した。麻酔下、モルモット耳静脈より2重量%エバンスブルー溶液を1mL/kg(20mg/kg)注入(1mL注射筒、30G注射針)した。直後に0.2重量%ヒスタミン水溶液を左から右の順番で両眼の下眼瞼結膜内に50μL注入(1/5皮下用注射針付きガラス製注射筒)し、結膜炎を誘発した。結膜炎誘発30分後に、モルモットを断首法により安楽死させた。次いで、電気バリカンで頭部を刈毛し、眼瞼結膜の炎症に伴なう血管透過性亢進により青染された眼瞼及び結膜部位を摘出した。
被験物質の投与については、以下に示した。
・生理食塩液:結膜炎誘発の0.5時間前に10μL点眼投与した。
・ザジテン点眼液:結膜炎誘発の0.5、4、8時間前に10μL点眼投与した。
・実施例4製剤貼付:結膜炎誘発の0.5、4、8時間前と10時間前(2時間後に剥離した)に、モルモット左眼下眼瞼皮膚(除毛処理済み)へ0.5cm(0.5cm×1cm)貼付した。
6)結膜浮腫部位の摘出及び漏出色素量の定量
結膜浮腫部位を摘出後0.8mLの1N(mol/L)水酸化カリウム溶液に浸漬し、37℃で一晩以上保温(COincubator MCO−345、SANYO)して結膜組織を溶解させた。これに0.6Nリン酸とアセトンの5:13(V:V)混合液を7.2mL添加・攪拌混合することにより中和と色素抽出を行った。これを遠心分離(3,000rpm、15min)した後、上清を分光光度計〔GLP機器No.93:U−3000、(株)日立製作所〕を用いて、620nmの吸光度を測定した。同時にエバンスブルー標準溶液の吸光度を測定し、これをもとに各サンプルの漏出色素量を換算した。
7)評価方法
結膜浮腫に対する抑制効果は、各群の漏出色素量並びに下式より算出する抑制率により評価した。
抑制率(%)={1−(X/N)}×100
X:各群の漏出色素量平均値
N:生理食塩液(Control)群の漏出色素量平均値

表7の結果から明らかなように、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、点眼薬の投与に比べて、長時間にわたって薬効が持続することが分かる。また、本発明の眼疾患治療用経皮吸収型製剤は、眼瞼の皮膚表面に貼付してから2時間後に剥離したところ、剥離後8時間を経過しても、薬効が持続しており、製剤剥離後も長時間薬効が持続することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、治療に有効量の眼疾患治療薬を持続的に眼の局所組織に投与することができ、全身血流を介した全身薬に見られるような副作用もなく持続的に薬効を発揮することができる新規な眼疾患治療用製剤が提供される。
また、本発明によれば、該眼疾患治療用経皮吸収型製剤の使用が提供される。さらに、本発明によれば、該眼疾患治療用経皮吸収型製剤を用いた眼疾患治療薬を経皮的に眼の局所組織へ移行させる方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有し、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に投与するための眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項2】
眼疾患治療薬が、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗アレルギー剤、消炎剤、非ステロイド消炎剤、消炎鎮痛剤、消炎酵素剤、抗生物質、サルファ剤、合成ペニシリン、緑内障治療剤、白内障治療剤、縮瞳剤、散瞳剤、局所収斂剤、血管収縮剤、眼圧上昇防止剤、高眼圧症治療剤、表面麻酔剤、α1−遮断剤、β−遮断剤、β1−遮断剤、炭酸脱水素酵素阻害剤、局所用選択H1−ブロッカー、副腎皮質ホルモン、ビタミンB12、補酵素型ビタミンB2、抗コリンエステラーゼ剤または有機ヨウ素製剤である請求項1記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項3】
眼疾患治療薬が、抗菌剤、抗アレルギー剤または非ステロイド系消炎剤である請求項2記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項4】
眼疾患治療薬が、分子量1000以下の化合物である請求項2記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項5】
眼疾患治療薬が、分子量1000以下の抗菌剤、抗アレルギー剤または非ステロイド系消炎剤である請求項1記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項6】
眼疾患治療薬が、フマル酸ケトチフェンまたはジクロフェナクナトリウムである請求項5記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項7】
眼疾患治療薬を含有する膏体層が、眼疾患治療薬を含有する粘着剤層である請求項1記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項8】
粘着剤層が、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤からなる粘着剤層である請求項7記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項9】
ゴム系粘着剤が、粘着剤基剤として、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有するものである請求項8記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項10】
アクリル系粘着剤が、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体、または(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれと共重合可能な官能性モノマーもしくはビニルエステルモノマーもしくはこれら両者との共重合体である請求項8記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項11】
粘着剤層が、経皮吸収促進剤を含有するものである請求項8記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項12】
経皮吸収促進剤が、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、アルコールアミン、多価アルコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリド、多価アルコール中鎖脂肪酸エステル、乳酸アルキルエステル、二塩基酸アルキルエステル、アシル化アミノ酸、ピロリドン類、乳酸、酒石酸、1,2,6−ヘキサントリオール、ベンジルアルコール、ラノリン、水酸化カリウム(KOH)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、またはこれらの2種以上の混合物である請求項11記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項13】
経皮吸収促進剤が、脂肪族高級アルコール、脂肪酸、アルコールアミン、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、KOH、トリス(ヒドロキシメチル)アミンメタン、またはこれらの2種以上の混合物である請求項12記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項14】
粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体100重量部、粘着付与剤10〜400重量部、経皮吸収促進剤1〜50重量部、及び眼疾患治療薬0.1〜60重量部を含有するゴム系粘着剤層である請求項8記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項15】
粘着剤層が、アクリル系(共)重合体100重量部、経皮吸収促進剤1〜50重量部、及び眼疾患治療薬0.1〜60重量部を含有するアクリル系粘着剤層である請求項8記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項16】
上眼瞼、下眼瞼または両眼瞼の前表面を含む皮膚表面に沿って貼付し得る形状を有する請求項1記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項17】
膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により貼付下の外眼部組織に移行させることができる請求項1記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項18】
眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付したとき、貼付後8時間以内での貼付下の外眼部組織への薬物の移行量(単位:μg/g・tissue)が、全身血流を介した薬物の外眼部組織への移行量の2倍以上である請求項1記載の眼疾患治療用経皮吸収型製剤。
【請求項19】
支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有する眼疾患治療用経皮吸収型製剤を、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に移行させる眼疾患治療用経皮吸収型製剤の使用。
【請求項20】
支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有する眼疾患治療用経皮吸収型製剤を、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付することにより、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に移行させる眼疾患治療薬の眼の局所組織への移行方法。

【国際公開番号】WO2004/064817
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508112(P2005−508112)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000520
【国際出願日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【出願人】(000199175)千寿製薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】