説明

眼科用組成物及びその使用

本発明は,紫外線吸収剤及び紫光線吸収剤を有し、青色光線スペクトルで高い透光性を達成する眼科用組成物,及び該眼科用組成物で製造されたアイインプラント,特に眼内レンズである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,眼科用組成物並びにその使用、特にアイインプラント(眼内レンズ)としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
目の網膜が,紫外線領域(200nm〜400nm)及び可視光線の紫色領域(400nm〜440nm)における放射線の光毒性作用から分子吸収剤を用いて保護できることは既知である。かかる吸収剤は,光学分野において眼内レンズ(IOL)への使用のために提供できる。市販の眼内レンズは,特に紫光線領域をただ部分的に吸収する。吸収の程度に関しては,波長430nmの光毒性光線の25%〜35%が従来のレンズ材料を透過する。
【0003】
複数の研究から,紫光線部分が加齢黄斑変性症(AMD)の進展に重大な役割を果たすことが分かる。いわゆる集晶,すなわち代謝最終生成物(リポフスチン)の沈着に始まり,進展期において網膜色素上皮の局所細胞死(地図状萎縮)へと転換されうる。
【0004】
他方,光受容,特に減光条件での視力(暗所視),すなわち薄明視及び暗所視に関して,青色光線スペクトル(約450nm〜500nm)でのレンズ材料の透光性が極めて重要である。この青色波長領域において,薄明視及び暗所視の障害を除くために,吸収される光は,可能な限り少ないほうがいい。しかしながら、市販のIOLは,この波長領域(例えば,475nmで)においてわずか約70%〜75%の透光性しか有さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって,本発明の目的は,最大の光受容と高度の光防護を同時に確保する最初に述べたタイプの眼科用組成物を提供することにある。すなわち,かかる組成物は,全紫外線スペクトル領域及び可視スペクトルの紫光線部分を実質的に吸収すると同時に,青色光線、特に450nmと500nmとの間の波長領域を完全に透過し得る必要がある。本発明によれば,かかる目的が請求項1の特徴事項により解決される。
【0006】
本発明の眼科用組成物は,約200nm〜400nmの波長領域の放射線を定量的に吸収する紫外線吸収剤を含む。さらに,該眼科用組成物は,約400nm〜430nmの波長の紫光線を吸収する紫光線吸収剤を含む。紫光線吸収剤の適切な発色団基本構造は,N−アルコキシアクリレート化又はN−アルコキシメタクリレート化,若しくは更にN,N−ジアルコキシアクリレート化又はN,N−ジアルコキシメタクリレート化されたニトロアニリンである。
【0007】
紫外線吸収剤として,眼科用組成物は生体親和性の紫外線防護剤を含み,そのためアルキルスペーサーを介して一つ以上のアクリル又はメタクリル官能基と任意に結合するクマリン誘導体が使用される。
【0008】
前記組成物を全くアクリレート及び/又はメタクリレートのみに基づいて構成するのが好ましい。
【0009】
本発明の目的を請求項1〜27でより詳細に説明する。
【0010】
紫外線吸収剤
本発明に係る眼科用組成物の適切な紫外線吸収剤は,下記構造の化合物である。
【化1】

式中のnは0〜2,
mは0又は1,ただしn+m≧1,
XはO,NH,NR6
YはO,NH,NR6
1は下記のアクリル又はメタクリルラジカル,
【化2】

2はC,H,Si,O,N,P,S,Cl,Br,Fから選択された30原子までを有する有機アルキル又はアリールスペーサー基(又は両者の組合せ),
3,R5,R6はH若しくはC,H,Si,O,N,P,S,Cl,Br,Fから選択された30原子までを有する有機アルキル又はアリール基(又は両者の組合せ),
4はn=0又は1の場合だけH若しくはC,H,Si,O,N,P,S,Cl,Br,Fから選択された30原子までを有する有機アルキル又はアリール基(又は両者の
組合せ)である。
【0011】
該当する構造(全ての立体異性体又はラセミ混合物が含まれる)の例は下記である。
【化3】

【0012】
基本構造が構造2,3及び4に基づく紫外線吸収剤は,複数の重合性末端基の存在のためレンズ材料へ定量的に組み込みうるという利点を有し,更には架橋特性を有する。すなわち,レンズ製造に際し、付加的な架橋剤の添加を理想的に省くことができる。
【0013】
本発明に係る眼科用組成物の好適な紫外線吸収剤は,下記構造を有するクマリン−7−プロポキシメタクリレートである。
【化4】

【0014】
当該化合物の製造は,市販の7−ヒドロキシクマリンを用いて二段階で達成される。
【化5】

【0015】
紫外線吸収剤の更なる実施形態は,クマリン基体を種々のスペーサーを介して一つ以上のアクリル又はメタクリルラジカルに連結する化合物である。これらは以下の構造を有する。
【化6】

式中
・R1がアクリル又はメタクリルラジカルであり,
・R2がC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)であり,
・R3,R4及びR5がH若しくはC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)であり,
・X及びYがO,S,NH,NR(RがC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)である)であり,
・nが0〜2,mが0又は1であって,n+mが常に1以上である。
【0016】
紫外線吸収剤の実施形態
例1
一般式Iにおけるn=2,m=0,X=O,R2=C36,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R3=H,R4=H,R5=H
本発明に係る眼科用組成物に関する紫外線吸収剤の更なる実施形態は,クマリン−6,7−ジプロポキシメタクリレートである。これもまた,クマリン−7−プロポキシメタクリレートに類似した2段階反応での単純な合成法で表すことができる。また,この反応に必要な6,7−ジヒドロキシクマリンも市場から入手可能である。このようにして,付加的メタクリレートアンカー基を導入した化合物を製造できる。アルコキシスペーサーを介した第二アンカー基の連結は吸収剤の分光特性にほとんど影響を与えず,レンズ材料の製造における架橋剤としても利用できる。
【化7】

【0017】
例2
一般式Iにおけるn=1,m=0,X=O,R2=−CH2−CH(OR1)CH2−,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R3=H,R4=H,R5=H
二つのアンカー基を有する紫外線吸収剤を製造する更なる可能性は,分岐したジヒドロキシハライドの使用に由来する。7−ヒドロキシクマリンを第一段階で市販の3−ブロモ−1,2−プロパンジオールと,引き続きアクリレート又はメタクリレートと反応させてアルコキシジオールを得る場合,更なる二官能性紫外線吸収剤が得られる。
【化8】

【0018】
例3
一般式Iにおけるn=1,m=0,X=O,R2=−CH2−CH(OR1)CH2−,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R3=H,R4=H,R5=H
7−ヒドロキシクマリンをアクリル酸又はメタクリル酸の塩化物ではなく,市販のグリシジルメタクリレートと反応させた場合,単一の反応段階でクマリン基体を脂肪鎖によってメタクリレートラジカルから分離した更なる紫外線フィルターが得られる。その後のメタクリロイルクロリドでのエステル化により,更なるメタクリレート官能を二級アルコール基に導入できる。
【化9】

【0019】
例4
一般式Iにおけるn=1,m=0,X=O,R2=C36,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R3=H,R4=H,R5=C37
ここで,R5は弱い誘導作用(+I効果)を有するプロピル基である。前述した好適な紫外線吸収剤への付加的なプロピル基の導入は,問題なく合成的に管理することができ,発色団の分光特性をわずかな程度で変性する。合成に7−ヒドロキシクマリンを使用せず,市販の7−ヒドロキシ−4−プロピルクマリンを使用する場合,メタクリレート化後に好適な紫外線吸収剤とは一つのプロピル側鎖のみが異なるだけのクマリン誘導体が得られる。
【化10】

【0020】
例5
一般式Iにおけるn=2,m=1,X=O,R2=C36,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R3=H,R4=H,R5=H
また三官能性紫外線吸収剤を単純な合成法で製造できる。4,5,7−トリヒドロキシクマリンから出発し,3−ブロモ−1−プロパノールでのアルコキシル化及びその後のアクリル化又はメタクリル化後に,三つのアンカー基を有する紫外線吸収剤が得られる。
【化11】

【0021】
紫光線吸収剤
本発明に係る眼科用組成物の適正な紫光線吸収剤は,以下の構造の化合物である。
【化12】

式中のXがO,S,NH,NR(RがC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)である)であり,
1が下記のアクリル又はメタクリルラジカルであり,
【化13】

2がC,H,Si,O,N,P,S,Cl,Br,Fから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリールスペーサー基(又は両者の組み合わせ)であり,
3がC,H,Si,O,N,P,S,Cl,Br,Fから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)であり,
4がH若しくはC,H,Si,O,N,P,S,Cl,Br,Fから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)、又は更にニトロ基,アルコキシ基又はニトリル基である。
【0022】
該当する構造(全ての立体異性体又はラセミ混合物が含まれる)の例は下記である。
【化14】

【0023】
さらに,適当な紫光線吸収剤は,以下の構造の化合物の立体異性体又はラセミ混合物である。
【化15】

式中のXがO,S,NH,NR(RがC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)である)であり,
YがO,S,NH,NR(RがC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)である)であり,
1が下記のアクリル又はメタクリルラジカルであり,
【化16】

2がC,H,Si,O,N,P,S,Cl,Br,Fから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリールスペーサー基(又は両者の組み合わせ)であり,
3がC,H,Si,O,N,P,S,Cl,Br,Fから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐したアルキル又はアリールスペーサー置換基(又は両者の組み合わせ)であり,
4がC,H,Si,O,N,P,S,Cl,Br,Fから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐したアルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)であり,
5がH若しくはC,H,Si,O,N,P,S,Cl,Br,Fから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)、又は更にニトロ基,アルコキシ基又はニトリル基である。
【0024】
該当する構造(全ての立体異性体又はラセミ混合物が含まれる)の例は下記である。
【化17】

【0025】
本発明に係る眼科用組成物の紫光線吸収剤に好適な色素は,下記構造を有するN,N−ジ−2’−エチルメタクリレート−4−ニトロアニリンである。
【化18】

【0026】
当該化合物の製造は,両遊離体,すなわち市販の4−フルオロニトロベンゼン及びジエタノールアミンを用いて二段階で達成される(未審査の欧州特許第0321891号A2による)。
【化19】

【0027】
メタクリルラジカルは,キャリア材料,特にアクリレートに基づくレンズ材料において紫光線フィルターの共有結合に役立つ。二官能性のため,組み込みが定量的に,従って市販の単官能性の紫光線フィルターよりも著しく効果的に進行する。また,紫光線吸収剤の更なる実施形態は,ニトロアニリン基体を種々のスペーサーを介して一つ以上のアクリル又はメタクリルラジカルと連結する化合物である。
【0028】
紫光線吸収剤の実施形態
例1
一般式IIにおけるR2及びR3=−CH2−CH(CH3)−,X=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R4=H
黄色発色団/紫光線フィルターの更なる実施形態は,N,N−ジ−2’−イソプロピルメタクリレート−4−ニトロアニリンである。これもまた,ジエチルメタクリレート−4−ニトロアニリンに類似した2段階反応での単純な合成法で製造することができる。また,この反応に必要なジイソプロパノールアミンも市場から入手可能である。このようにして,側鎖中CH3基一つだけが好適なフィルターと各々相違する化合物を製造できる。メチル基の正の誘導作用によって,この発色団は,わずかに長波長側にシフトして吸収する。
【化20】

【0029】
例2
一般式IIにおけるR2及びR3=C24,X=NR,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R4=H
本例においては,N,N−ジヒドロキシエチル−4−ニトロアニリンを単純な合成方法でジアミン誘導体に反応させる。かかるジアミンは,アクリル酸クロリドとの反応によりジアミドへ転換できる。発色団の構造は変わらないで残り,アクリルアミドから二つのメチレン単位によって分離される。
【化21】

【0030】
例3
一般式IIIにおけるR3及びR4=C24,X=O,R2=−CH2−CH(OH)CH2−,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R5=H
N,N−ジヒドロキシエチル−4−ニトロアニリンをアクリル酸又はメタクリル酸の塩化物ではなく,市販のグリシジルメタクリレートと反応させた場合,発色団をメタクリレートラジカルから脂肪鎖によって分離する更なる紫光線フィルターが単一の反応段階で得られる。
【化22】

【0031】
例4
一般式IIにおけるR2及びR3=C24,X=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R4=CH3
ここで,R4は,弱い誘導作用(+I効果)を有するメチル基である。前述の好適な紫光線フィルター中の付加的なメチル基の組み込みは,問題なく合成的に管理でき,発色団の分光特性をわずかな程度で変性する。ジエタノールアミンを4−フルオロニトロベンゼンではなく,市販の2−フルオロ−5−ニトロトルエンと反応させた場合,アニリン環でただ一つの追加のメチル基だけ好適な紫光線吸収剤と相違するニトロアニリンが製造される。アクリロイルクロリド又はメタクリロイルクロリドとのエステル化により,所望の分光特性を有する更なる発色団が得られる。
【化23】

【0032】
生体適合性キャリア材料として,特に水含有量1%〜30%を有するアクリレートが眼科用組成物に適する。共重合体、すなわち当該キャリア材料において,紫外線吸収剤及び紫光線吸収剤がそれぞれ共有結合する。好適には,紫外線吸収剤が0.5%〜1.0%の濃度範囲で含まれる。眼科用組成物をIOLに用いる場合,紫外線吸収剤の個別の濃度が個別のレンズのピーク屈折率(ジオプトリー)に依存する。また,紫光線吸収剤がアクリレートキャリア材料、すなわち共重合体中で共有結合する。これは0.03%〜0.16%の濃度範囲で存在できる。ここで,眼科用組成物のIOLへの使用において,紫光線吸収剤の濃度は,レンズのジオプトリーに直接依存する。
【0033】
キャリアマトリックスから吸収剤が溶出するリスクは存在しない。その理由は,二つの重合性末端基を有することにより本発明に係る紫外線吸収剤及び紫光線フィルターの両者を定量的にレンズ材料へ組み込むからである。
【0034】
紫外線吸収剤又は紫光線吸収剤に適する生体適合性キャリア材料は,例えば,ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA),メチルメタクリレート(MMA),エトキシエチルメタクリレート(EOEMA),エトキシエトキシエチルアクリレート(EEEA),テトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA),テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA),2−ヒドロキシプロピルメタクリレート (HPMA),2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA),2−ヒドロキシエチルアクリルアミド,2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド,メトキシエチルメタクリレート(MOEMA)及びメトキシエチルアクリレート(MOEA)である。上述の物質から,共重合体をおそらく架橋剤を用いて製造し,キャリア材料として使用できる。モノマーの組成物百分率は,広い範囲で変動できる。キャリア材料は,例えば1%〜30%の水含有量の親水性に又は疎水性に調整できる。疎水性の無水重合体における制限要因は,ガラス転移点である。これは0℃と11℃の間の範囲でありうる。さらに,親水性重合体は膨張後に十分な可撓性を有することが重要である。
【0035】
眼科用組成物の実施形態は,以下の質量%の定量的組成物である。
【0036】
キャリア材料の実施形態
例1(疎水性)
EOEMA(エトキシエチルメタクリレート) 85〜97質量%
MMA(メチルメタクリレート) 0〜15質量%
EEEA(エトキシエトキシエチルアクリレート) 0〜5質量%
EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート) 0〜0.7質量%
紫外線吸収剤 0.1〜1.0質量%
紫光線吸収剤 0.03〜0.16質量%
【0037】
例2(親水性)
HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート) 50〜85質量%
EOEMA(エトキシエチルメタクリレート) 30〜40質量%
THFMA(テトラヒドロフルフリルメタクリレート) 5〜20質量%
EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート) 0〜0.7質量%
紫外線吸収剤 0.1〜1.0質量%
紫光線吸収剤 0.03〜0.16質量%
【0038】
それぞれのレンズ材料の合成に関して,先ずモノマーを連続してビーカーに秤量し、均質な溶液になるまで撹拌する。その後,まず架橋剤を、引き続き紫光線吸収剤並びに紫外線吸収剤を添加する。わずかに加熱して,均質な溶液が得られるまで再び撹拌する。
【0039】
それぞれ生成した混合物を適当な開始剤と混合し,重合形状(例えば,カップ,棒及び平坦形状)へ転換する。重合を加熱(60℃で12〜16時間)により開始する。冷却後,重合物を除去し,仕切乾燥器中で任意に後硬化し,旋回及び微粉砕により所望のブランク寸法(例えば,3mm厚,直径12.7mm)にする。
【0040】
透光性測定により,本発明に係る眼科用組成物を用いると,紫外線部分(<400nm)だけでなく全紫光線部分(400nm〜430nm)が吸収されることが示された。市販の眼科用組成物は,紫光線領域において三分の一までの透過率を有する高い透光性を有する。本発明に係る組成物は,430nmで3%以下の透過率を示すだけである。
【0041】
例えば青光線領域において,本発明に係る組成物は460nmで70%以上の光透過率を有し,一方既知のレンズはわずか50〜60%の透過率しかない。
【0042】
眼科用組成物は,眼鏡,コンタクトレンズ及びアイインプラントのような視覚補助材に特に適している。特に,本発明に係る眼科用組成物は,眼内レンズに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレート及び/又はメタクリレートに基づいて構成され、一つ以上のアクリル酸又はメタクリル酸単位をアルキルスペーサーを介して置換又は非置換のクマリン基本構造に結合する紫外線吸収剤を有し、N−アルコキシアクリレート化又はN−アルコキシメタクリレート化、若しくはN,N−ジアルコキシアクリレート化又はN,N−ジアルコキシメタクリレート化された置換又は非置換のニトロアニリンに基づく紫光線吸収剤(黄色色素)を含む眼科用組成物。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤が下記構造
【化1】

[式中
・R1がアクリル又はメタクリルラジカルであり,
・R2がC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)であり,
・R3,R4及びR5がH若しくはC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)であり,
・X及びYがO,S,NH,NR(RがC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)である)であり,
・n=0〜2,m=0又は1,n+mが常に1以上である。]の立体異性体又はラセミ混合物である請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項3】
n=1,m=0,X=O,R2=C36,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R3=H,R4=H,R5=Hで,下記の構造
【化2】

を有することを特徴とする請求項2に記載の眼科用組成物。
【請求項4】
n=2,m=0,X=O,R2=C36,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R3=H,R4=H,R5=Hで、下記の構造
【化3】

を有することを特徴とする請求項2に記載の眼科用組成物。
【請求項5】
n=1,m=0,X=O,R2=−CH2−CH(OR1)CH2−,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R3=H,R4=H,R5=Hで、下記の構造
【化4】

を有することを特徴とする請求項2に記載の眼科用組成物。
【請求項6】
n=1,m=0,X=O,R2=−CH2−CH(OH)CH2−,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R3=H,R4=H,R5=Hで,下記の構造
【化5】

を有することを特徴とする請求項2に記載の眼科用組成物。
【請求項7】
n=1,m=0,X=O,R2=C36,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R3=H,R4=H,R5=C37で、下記の構造
【化6】

を有することを特徴とする請求項2に記載の眼科用組成物。
【請求項8】
n=2,m=1,X=O,R2=C36,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R3=H,R4=H,R5=Hで、下記の構造
【化7】

を有することを特徴とする請求項2に記載の眼科用組成物。
【請求項9】
前記紫光線吸収剤が下記構造
【化8】

[式中
・R1がアクリル又はメタクリルラジカルであり,
・R2がC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリールスペーサー基(又は両者の組み合わせ)であり,
・R3がC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)であり,
・R4がH若しくはC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)、又は更にニトロ基,アルコキシ基又はニトリル基であり,
・XがO,S,NH,NR(RがC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)である)である。]の色素の立体異性体又はラセミ混合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項10】
前記紫光線吸収剤が下記構造
【化9】

[式中
・R1がアクリル又はメタクリルラジカルであり,
・R2がC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリールスペーサー基(又は両者の組み合わせ)であり,
・R3がC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリールスペーサー基(又は両者の組み合わせ)であり,
・R4がC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)であり,
・R5がH若しくはC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)、又は更にニトロ基,アルコキシ基又はニトリル基であり,
・X,YがO,S,NH,NR(RがC,H,Si,O,N,P,S,F,Cl,Brから選択された30原子までを有する有機の分岐又は非分岐アルキル又はアリール置換基(又は両者の組み合わせ)である)である。]の色素の立体異性体又はラセミ混合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項11】
2及びR3=C24,X=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R4=Hで,下記の構造
【化10】

を有することを特徴とする請求項9に記載の眼科用組成物。
【請求項12】
2及びR3=−CH2−CH(CH3)−,X=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R4=Hで、下記の構造
【化11】

を有することを特徴とする請求項9に記載の眼科用組成物。
【請求項13】
2及びR3=C24,X=NR,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R4=Hで、下記の構造
【化12】

を有することを特徴とする請求項9に記載の眼科用組成物。
【請求項14】
3及びR4=C24,X=O,R2=−CH2−CH(OH)CH2−,Y=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R5=Hで、下記の構造
【化13】

を有することを特徴とする請求項10に記載の眼科用組成物。
【請求項15】
2及びR3=C24,X=O,R1=アクリル又はメタクリルラジカル,R4=CH3で、下記の構造
【化14】

を有することを特徴とする請求項9に記載の眼科用組成物。
【請求項16】
前記紫外線吸収剤及び前記紫光線吸収剤を付与する生体適合性キャリア物質を特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項17】
前記キャリア物質が少なくとも一つのアクリレートからなることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項18】
前記紫外線吸収剤及び前記紫光線吸収剤がアクリレート材料で共有結合されることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項19】
少なくとも一つのアクリレートが1%〜30%の水含有量を有する親水性材料であることを特徴とする請求項17又は18に記載の眼科用組成物。
【請求項20】
少なくとも一つのアクリレートがHEMA及び/又はMMAであることを特徴とする請求項17〜19のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項21】
EOEMA(エトキシエチルメタクリレート) 85〜97質量%
MMA(メチルメタクリレート) 0〜15質量%
EEEA(エトキシエトキシエチルアクリレート) 0〜5質量%
EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート) 0〜0.7質量%
紫外線吸収剤 0.1〜1.0質量%
紫光線吸収剤 0.03〜0.16質量%
をキャリア材料として含む請求項1〜20のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項22】
HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート) 50〜85質量%
EOEMA(エトキシエチルメタクリレート) 30〜40質量%
THFMA(テトラヒドロフルフリルメタクリレート) 5〜20質量%
EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート) 0〜0.7質量%
紫外線吸収剤 0.1〜1.0質量%
紫光線吸収剤 0.03〜0.16質量%
をキャリア材料として含む請求項1〜20のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項23】
眼科用レンズ製造への請求項1〜22のいずれか一項に記載の眼科用組成物の使用。
【請求項24】
眼科用インプラント製造への請求項1〜22のいずれか一項に記載の眼科用組成物の使用。
【請求項25】
眼内レンズ製造への請求項1〜22のいずれか一項に記載の眼科用組成物の使用。
【請求項26】
インプラント材料が請求項1〜22のいずれか一項に記載の眼科用組成物であるアイインプラント。
【請求項27】
眼内レンズとして形成される請求項26に記載のアイインプラント。

【公表番号】特表2011−505932(P2011−505932A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537396(P2010−537396)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066905
【国際公開番号】WO2009/074521
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(501133085)*アクリテック ゲーエムベーハー (6)
【Fターム(参考)】