説明

眼科用経皮吸収型製剤

眼瞼皮膚表面に投与することにより、眼瞼を透過して、眼局所、特に結膜、涙液、房水、角膜などの前眼部組織への眼科用薬物の移行量を増大させることができる、眼科用薬物および血管収縮剤を含有する眼科用経皮吸収型製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用薬物を眼瞼皮膚表面に投与した場合における、眼瞼を透過して眼局所への眼科用薬物の移行量を増大させる眼科用経皮吸収製剤、および眼瞼を透過して眼局所への眼科用薬物の移行量を増大させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼に局所的に適用される眼科用薬剤の形態としては、従来、点眼剤が最も一般的であるが、点眼剤は眼表面上涙液のターンオーバーの影響により、薬物の眼局所バイオアベイラビリティが低く、薬効を長時間持続させるためには頻回の点眼が必要となることがある。
近年、眼疾患治療用製剤の一つとして、支持体上に眼疾患治療薬を含有する膏体層が設けられた構造を有し、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、膏体層中の眼疾患治療薬を、実質的に全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に投与するための眼疾患治療用経皮吸収型製剤が提案されている(WO2004/064817、US2006/0036220A1)。
【0003】
一般に経皮投与された薬物は、表層部から表皮、真皮、皮下組織、筋肉等へ移行するが、投与された薬物のほとんどは真皮にある皮下血管網に取り込まれ全身循環系に運ばれるため、局所移行する薬物は非常に少ないとされている。このことから筋肉や皮下組織などへの移行性を改善するため、血管収縮剤を併用し、血流への取り込みを抑制する方法が報告されている(Int. J. Pharm. 288 (2005) 227-233; J. Pharm. Sci. 83(1994) 783-791)。
しかしながら、上記文献には、血管収縮剤を含有する眼科用経皮吸収製剤を眼瞼皮膚表面に投与することにより、眼科用薬物の眼局所、就中前眼部組織への移行量を増大させる方法、かかる眼科用経皮吸収製剤の記載はない。
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、眼科用薬物を含有する眼科用経皮吸収型製剤を眼瞼皮膚表面に投与することにより、眼瞼を透過して、眼局所、特に結膜、涙液、房水、角膜などの前眼部組織への眼科用薬物の移行量を増大させることができる眼科用経皮吸収型製剤を提供することである。また、本発明の目的は、眼科用薬物を含有する眼科用経皮吸収型製剤を眼瞼皮膚表面に投与することにより、眼瞼を透過して前眼部組織への眼科用薬物の移行量を増大させる方法を提供することである。
【0005】
本発明者らは、眼科用薬物と血管収縮剤とを併用することによって、例えば眼科用薬物を含有する眼科用経皮吸収型製剤に血管収縮剤を配合した製剤とすることによって、かかる製剤を眼瞼皮膚表面に投与した時に、眼瞼を透過して眼局所、特に前眼部組織(結膜、涙液、房水、角膜など)への眼科用薬物、特に抗アレルギー剤の移行量を増大させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)眼科用薬物および血管収縮剤を併用してなる眼科用経皮吸収型製剤、
(2)眼科用薬物および血管収縮剤を含有する眼科用経皮吸収型製剤、
(3)眼瞼皮膚表面に投与することを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の眼科用経皮吸収型製剤、
(4)眼科用薬物が前眼部組織の疾患の予防または治療剤である前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の眼科用経皮吸収型製剤、
(5)前眼部組織の疾患の予防または治療剤が抗アレルギー剤、ドライアイ治療剤、抗炎症剤、抗菌剤および抗緑内障剤から選択される少なくとも1つである前記(4)に記載の眼科用経皮吸収型製剤、
(6)前眼部組織の疾患の予防または治療剤が抗アレルギー剤である前記(5)に記載の眼科用経皮吸収型製剤、
(7)抗アレルギー剤がケトチフェン、オロパタジン、エピナスチンおよび製薬学的に許容されるそれらの塩から選択される少なくとも1つである前記(6)に記載の眼科用経皮吸収型製剤、
(8)抗アレルギー剤がフマル酸ケトチフェンまたは塩酸オロパタジンである前記(7)に記載の眼科用経皮吸収型製剤、
(9)血管収縮剤が塩酸フェニレフリンである前記(1)から(8)のいずれか1項に記載の眼科用経皮吸収型製剤、
(10)血管収縮剤が眼瞼皮膚表面から眼瞼内および/または結膜内に存在する条件下に、眼科用薬物を眼瞼皮膚表面に投与する工程を含む、眼瞼を透過して眼局所への眼科用薬物の移行量を増大させる方法、
(11)眼局所が前眼部組織である前記(10)記載の方法、
(12)眼科用薬物が前眼部組織の疾患の予防または治療剤である前記(10)記載の方法、
(13)前眼部組織の疾患の予防または治療剤が抗アレルギー剤、ドライアイ治療剤、抗炎症剤、抗菌剤および抗緑内障剤から選択される少なくとも1つである前記(12)記載の方法、
(14)前眼部組織の疾患の予防または治療剤が抗アレルギー剤である前記(13)記載の方法、
(15)抗アレルギー剤がケトチフェン、オロパタジン、エピナスチンおよび製薬学的に許容されるそれらの塩から選択される少なくとも1つである前記(14)記載の方法、
(16)抗アレルギー剤がフマル酸ケトチフェンまたは塩酸オロパタジンである前記(15)記載の方法、
(17)血管収縮剤が塩酸フェニレフリンである前記(10)から(16)のいずれか1項に記載の方法、
(18)眼疾患を治療する方法であって、該治療を必要とする投与対象に眼科用薬物および血管収縮剤の有効量を投与する工程を含む、方法、
(19)眼科用薬物および血管収縮剤を含有する眼科用経皮吸収型製剤を製造するための眼科用薬物および血管収縮剤の使用;などに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の眼科用経皮吸収製剤は、眼科用薬物と血管収縮剤とを併用する製剤であり、投与時に眼科用薬物と血管収縮剤とを組み合わせることができるものであればよい(以下本発明の製剤ともいう)。従って、本発明の製剤は、投与時に眼科用薬物と血管収縮剤とを組み合わせることができるものであれば、眼科用薬物と血管収縮剤とを同時に製剤化して得られる単一の製剤であっても、眼科用薬物と血管収縮剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤を組み合わせたものであってもよい。好ましい本発明の製剤は、眼科用薬物と血管収縮剤を含有する製剤、すなわち眼科用薬物と血管収縮剤とを同時に製剤化して得られる単一の製剤である。
【0008】
投与形態は、血管収縮剤が眼瞼皮膚表面から眼瞼内および/または結膜内に存在する条件下に、眼科用薬物を眼瞼皮膚表面に投与する形態であれば特に限定されず、例えば、(1)眼科用薬物と血管収縮剤とを含有する組成物、即ち、単一の製剤としての投与、(2)眼科用薬物と血管収縮剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同時投与、(3)眼科用薬物と血管収縮剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤を同じ投与ルートで時間差をおいての投与(例えば血管収縮剤、眼科用薬物の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)、(4)眼科用薬物と血管収縮剤とを別々に製剤化して得られる2種の異なる種類の製剤の同時投与(例えばゲル剤と貼付剤など)、(5)眼科用薬物と血管収縮剤とを別々に製剤化して得られる2種の異なる種類の製剤を異なるルートで時間差をおいての投与(例えばゲル剤の血管収縮剤、貼付剤の眼科用薬物の順序での投与など)等が挙げられる。例えば、眼科用薬物の吸収が速く、血管収縮剤の吸収が遅い場合は、予め血管収縮剤を投与することで眼科用薬物の効果が高まる。
【0009】
本発明の製剤において、眼科用薬物と血管収縮剤との組合せの割合は、両者が単一製剤とされる場合、別個の製剤とされる場合のいずれにおいても、重量比率として、通常1:0.001〜10の範囲であり、1:0.005〜5の範囲が好ましく、1:0.01〜5の範囲がより好ましい。
例えば眼科用薬物として抗アレルギー剤を使用する場合は、抗アレルギー剤と血管収縮剤との組合せの割合は、重量比率として、通常1:0.001〜10の範囲であり、1:0.005〜5の範囲が好ましく、1:0.01〜5の範囲がより好ましい。また抗アレルギー剤を貼付剤として用いる場合には、抗アレルギー剤と血管収縮剤との組合せの割合は、重量比率として、通常1:0.001〜10の範囲であり、1:0.005〜5の範囲が好ましく、1:0.01〜5の範囲がより好ましい。軟膏剤またはゲル剤として用いる場合には、抗アレルギー剤と血管収縮剤との組合せの割合は、重量比率として、通常1:0.001〜10の範囲であり、1:0.005〜5の範囲が好ましく、1:0.01〜5の範囲がより好ましい。
【0010】
本発明における眼科用薬物とは、眼疾患予防・治療に使用される全ての薬剤を指し、手術用剤、検査薬剤などを含む。好ましくは、前眼部組織の疾患の予防または治療剤である。前眼部組織の疾患としては、アレルギー性結膜炎、春季カタル、接触性眼瞼結膜炎、フリクテン性角結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、アトピー性角結膜炎、花粉症、涙のう炎、ドライアイ、シェーグレン症候群、スティーブンス‐ジョンソン症候群、マイボーム腺炎、涙液減少症、麦粒腫、眼瞼炎、角膜炎、角膜潰瘍、眼感染症、緑内障などが挙げられる。これら前眼部組織の疾患の予防または治療剤としては、抗アレルギー剤、ドライアイ治療剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗緑内障剤などが挙げられる。好ましいのは、抗アレルギー剤である。抗アレルギー剤の対象疾患としては、アレルギー性結膜炎、春季カタル、接触性眼瞼結膜炎、フリクテン性角結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、アトピー性角結膜炎、花粉症などが挙げられる。
【0011】
本発明における抗アレルギー剤は、抗アレルギー作用を有するものであればよく、ケトチフェン、オロパタジン、エピナスチン、アゼラスチン、ジフェンヒドラミン、レボカバスチン、トラニラスト、アンレキサノクス、ペミロラストカリウム、イブジラスト、アシタザノラスト、フェキソフェナジン、セチリジン、ロラタジン、シプロヘプタジン、プロメタジンまたは製薬学的に許容できるそれらの塩、シクロスポリン、クロモグリク酸ナトリウム、マレイン酸クロルフェニラミンなどが挙げられる。好ましくはケトチフェン、オロパタジン、エピナスチンまたは製薬学的に許容されるそれらの塩であり、さらに好ましくはフマル酸ケトチフェン、塩酸オロパタジンである。
【0012】
ドライアイ治療剤としては、ピロカルピン、セビメリン、カルバコール、シクロスポリン、レバミピド、リメキソロン、ピメクロリムスまたは製薬学的に許容できるそれらの塩などが挙げられる。
【0013】
抗炎症剤としては、ブロムフェナク、プラノプロフェン、ジクロフェナク、ケトロラック、アンフェナク、ネパフェナク、インドメタシン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、フルオロメトロン、ロテプレドノール、ジフルプレドナート、プレドニゾロンまたは製薬学的に許容できるそれらの塩などが挙げられる。
【0014】
抗菌剤としては、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、トスフロキサシン、フレロキサシン、シノキサシン、レボフロキサシン、スパルフロキサシン、モキシフロキサシン、トロバフロキサシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、セフジニル、セフポドキシムプロキセチル、セフカペンピボキシル、アモキシシリン、テモシリンまたは製薬学的に許容できるそれらの塩などが挙げられる。
【0015】
抗緑内障剤としては、カルテオロール、チモロール、ラタノプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、ウノプロストン、ベタキソロール、ベフノロール、レボブノロール、ニプラジロール、ジピベフリン、エピネフリン、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミドまたは製薬学的に許容できるそれらの塩などが挙げられる。
【0016】
本発明における血管収縮剤は、血管を収縮させる作用を有するもの、特に経皮投与によって当該作用を有するものであればよく、フェニレフリン、ナファゾリン、エフェドリン、メチルエフェドリン、テトラヒドロゾリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、プソイドエフェドリン、エチレフリン、ドパミンまたは製薬学的に許容できるそれらの塩などが挙げられる。好ましくは、塩酸フェニレフリン、塩酸ナファゾリン、塩酸エフェドリン、エピネフリン、塩酸テトラヒドロゾリンであり、さらに好ましくは塩酸フェニレフリンである。
【0017】
眼科用薬物および血管収縮剤を含有する本発明の製剤は、眼瞼皮膚表面に投与することにより、眼瞼皮膚を透過して、眼局所、特に前眼部組織への眼科用薬物、例えば、抗アレルギー剤の移行量を増大させることができる形態の製剤であればよい。例えば、貼付剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤等の外用剤が挙げられる。好ましくは貼付剤、ゲル剤である。また、本発明において、貼付剤とは、パップ剤、パッチ剤、テープ剤、プラスター剤などの皮膚に貼り付けられる製剤を意味する。眼科用薬物と血管収縮剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の場合は、同じ形態の製剤であっても、異なる形態の製剤であってもよい。
【0018】
本発明において、「眼瞼皮膚表面」とは、上眼瞼および下眼瞼ならびにその近傍の皮膚表面を意味する。
本発明において、「眼局所」とは、前眼部組織を含む眼組織をいう。
本発明において、「前眼部組織」とは、結膜、涙液、房水、角膜をいう。
【0019】
本発明の製剤は、その製剤中に含有させる眼科用薬物および血管収縮剤の種類や量等を調整することで、前眼部組織への眼科用薬物の移行量を増大させることができる。
【0020】
本発明の製剤には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品の製造に通常用いられる任意の成分を添加剤として適宜添加することもできる。例えばゲル基剤、貼付剤のマトリックス型製剤の基剤、軟膏基剤、溶媒、油剤、界面活性剤、粘剤、樹脂、吸収促進剤、湿潤剤、緩衝剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0021】
ゲル基剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、アラビアゴム、トラガントガム、グァーガム、キサンタンガム、寒天、カラギーナン、キトサン等の増粘高分子類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸プロピレングリコール等の脂肪酸エステル類;乳酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸類;ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族アルコール類;スクワレン、スクワラン等の炭化水素類等が挙げられる。
【0022】
貼付剤のマトリックス型製剤の基剤としては、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられ、これらから適宜選択して使用すればよい。また貼付剤のマトリックス型製剤は、テープ製剤、パッチ剤、パップ剤、プラスター剤等の皮膚に貼り付けられる製剤に通常用いられている支持体や、その他本発明の使用に不都合のない材質の支持体の片面に保持させて用いてよい。
【0023】
アクリル系粘着剤としては、例えばアクリル酸−アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エステル−酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル−ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸−アクリル酸ブチルコポリマー等が挙げられる。
【0024】
シリコーン系粘着剤としては、例えばポリメチルフェニルシロキサン共重合体、アクリル酸・ジメチルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0025】
ゴム系粘着剤としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリブデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等に、必要に応じて粘着付与樹脂、軟化剤等を添加してなるもの等が挙げられる。
【0026】
軟膏基剤としては、例えばワセリン、パラフィン、プラスチベース、シリコーン、植物油、豚油、ろう類、単軟膏等の油脂性基剤;親水軟膏(バニシングクリーム)、親水ワセリン、精製ラノリン、吸水軟膏、加水ラノリン、親水プラスチベース(コールドクリーム)等の乳剤性基剤等が挙げられる。
【0027】
溶媒としては、例えば精製水、エタノール、低級アルコール、エーテル類、ピロリドン類、酢酸エチル等が挙げられる。
【0028】
油剤としては、通常皮膚外用剤に用いられる揮発性および不揮発性の油剤、溶剤、樹脂等が挙げられ、常温で液体、ペースト、固体のいずれも用いることができる。例えばセチルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール;イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸;グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、モノステアリン酸グリセリン等のエステル類等が挙げられる。
【0029】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルキルスルホカルボン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えばアミン塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0030】
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン、ジメチルアルキルグリシン、レシチン等が挙げられる。
【0031】
粘剤、樹脂としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸カルシウム、カルボキシビニルポリマー、エチレン−アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール−ビニルピロリドン共重合体、窒素置換アクリルアミド系ポリマー、ポリアクリルアミド、カチオン化ガーガム等のカチオン系ポリマー、ジメチルアクリルアンモニウム系ポリマー、アクリル酸メタクリル酸アクリル共重合体などのアクリル系共重合体、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリビニルアルコール、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、キトサン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、グァーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン、セルロース、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコール、カチオン化シリコーン重合体、合成ラテックス、アクリルシリコン、トリメチルシロキシケイ酸、フッ素化シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0032】
吸収促進剤としては、例えば1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、ピロチオデカン、オレイルアルコール、ラウリン酸、オレイン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、d−リモネン、l−メントール、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、N−ラウロイルサルコシン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、グリチルリチン酸、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ラウリン酸ジエタノールアミド、多価アルコール類、グリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくは、ミリスチン酸イソプロピルである。
【0033】
湿潤剤としては、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、還元麦芽糖水飴等が挙げられる。
【0034】
緩衝剤としては、例えばリン酸またはその塩(リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム等)、ホウ酸またはその塩(ホウ砂等)、酢酸またはその塩(酢酸ナトリウム等)、クエン酸またはその塩(クエン酸ナトリウム等)、グルタミン酸やイプシロンアミノカプロン酸のアミノ酸、炭酸緩衝剤、トリス緩衝剤等、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
pH調整剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、塩酸、リン酸、酢酸、クエン酸等が挙げられる。
【0036】
本発明の製剤は、常法により製造することができる。例えばゲル剤の場合、ゲル基剤に溶媒を加えてpH調整剤で中性とし、必要に応じて溶媒、油剤、界面活性剤、粘剤、樹脂、吸収促進剤、湿潤剤、緩衝剤等を加えて混和し、これに眼科用薬物、血管収縮剤を加えてよく練合することにより製造することができる。
貼付剤(パップ剤、パッチ剤、テープ剤、プラスター剤)の場合、眼科用薬物、血管収縮剤にマトリックス型製剤の基剤および/または粘剤、ならびに必要に応じて溶媒、油剤、界面活性剤、樹脂、吸収促進剤、湿潤剤等を加えてよく混合し、この膏体を不織布、織布、プラスチックフィルム(シートを含む)またはそれらを複合したフィルム等の支持体上に展延し、剥離ライナーで被覆するか、もしくは剥離ライナー上に展延し、前記支持体上に圧着転写することにより製造することができる。前記支持体は、眼瞼皮膚表面に貼付することができる柔軟性を持つことが好ましく、厚さについては、剤型により適宜選択されるが、製剤の強度、貼付時の違和感および密着性を考慮して、10〜3000μmの範囲で設定するのが好ましい。
軟膏剤の場合、眼科用薬物および血管収縮剤、および軟膏基剤ならびに必要に応じて溶媒、油剤、界面活性剤、粘剤、樹脂、吸収促進剤、湿潤剤等を加え、よく混合することにより製造することができる。
本発明の製剤は、上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、安定化剤、抗酸化剤、防腐剤、架橋剤、pH調整剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0037】
本発明の製剤における眼科用薬物の含有量は、通常0.01〜40重量%、好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%である。例えば眼科用薬物として抗アレルギー剤を使用する場合、抗アレルギー剤の含有量は、通常0.01〜40重量%、好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%である。
本発明の製剤を貼付剤として用いる場合には、例えば抗アレルギー剤の含有量は、0.01〜40重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%である。軟膏剤またはゲル剤として用いる場合には、例えば抗アレルギー剤の含有量は、0.01〜40重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%である。
【0038】
本発明の製剤における血管収縮剤の含有量は、通常、0.001〜30重量%、好ましくは0.01〜20重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。
本発明の製剤を貼付剤として用いる場合には、血管収縮剤の含有量は、0.001〜30重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.01〜20重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。軟膏剤またはゲル剤として用いる場合には、血管収縮剤の含有量は、0.001〜30重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.01〜20重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。
【0039】
また、本発明の製剤には、本発明の目的に反しない限り、抗アレルギー剤以外の医薬成分、例えばステロイド性または非ステロイド性抗炎症剤、抗ウイルス剤、散瞳剤、抗コリンエステラーゼ薬、縮瞳薬、抗生物質、サルファ剤、表面麻痺剤、ビタミン類等を配合して製剤してもよい。
【0040】
本発明の製剤において、眼科用薬物の投与量は患者の病態、年齢、投与形態などによって異なるが、例えば抗アレルギー剤の場合、成人の1日量として通常0.01mg〜500mg/日程度、好ましくは0.05mg〜50mg/日程度、より好ましくは0.1mg〜10mg/日程度とし、これを必要に応じて1〜5回に分割して投与する。また本発明の製剤は睡眠時にも投与可能である。
【0041】
本発明の製剤において、血管収縮剤の投与量は患者の病態、年齢、投与形態などによって異なるが、成人の1日量として通常0.001mg〜200mg/日程度、好ましくは0.01mg〜50mg/日程度、より好ましくは1mg〜10mg/日程度とし、これを必要に応じて1〜5回に分割して投与する。
【0042】
本発明の製剤を眼瞼皮膚表面に投与することにより、眼瞼皮膚を透過して、眼局所、特に前眼部組織への眼科用薬物の移行量を増大させることができるため、前眼部組織の疾患の予防または治療剤として有用である。
【0043】
本発明の製剤は、持続的に抗アレルギー効果を発揮させることができ、アレルギー性疾患の予防・治療剤として有用である。アレルギー性疾患としては、アレルギー性結膜炎、春季カタル、接触性眼瞼結膜炎、フリクテン性角結膜炎、巨大乳頭性結膜炎などが挙げられる。
【0044】
本発明の製剤の投与対象は特に限定されず、ヒトをはじめサル、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ブタ、イヌ、ウマ、ウシ等種々の哺乳動物が挙げられる。本発明の製剤は前記動物におけるアレルギー疾患などに有用である。
【0045】
本発明は、血管収縮剤が眼瞼皮膚表面から眼瞼内および/または結膜内に存在する条件下に、眼科用薬物を眼瞼皮膚表面に投与する工程を含む、眼瞼を透過して眼局所への眼科用薬物の移行量を増大させる方法を提供する。
当該方法の採用に当たっては、前述の併用において説明したのと同様の手法をとることができる。
【0046】
また本発明は、眼疾患を治療する方法であって、該治療を必要とする投与対象に眼科用薬物および血管収縮剤の有効量を投与する工程を含む、方法を提供する。眼疾患としては、アレルギー性疾患などが挙げられる。
【0047】
本発明は、眼科用薬物および血管収縮剤を含有する眼科用経皮吸収型製剤を製造するための眼科用薬物および血管収縮剤の使用も提供する。
さらに本発明は、眼科用経皮吸収型製剤を製造するための眼科用薬物および血管収縮剤の使用を提供する。
【0048】
本発明は、抗アレルギー剤を眼科用薬物として含有する本発明の眼科用経皮吸収型製剤、並びに当該製剤をアレルギー疾患の予防・治療に使用することができる、又は使用すべきであることを記載した記載物を含む商業パッケージを提供する。
前記記載物としては、用途・効能や投与方法などに関する説明事項を記載したいわゆる能書などが挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下に、試験例、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0050】
試験方法および結果
<実験材料1>
フマル酸ケトチフェン(シグマ)、塩酸フェニレフリン(生化学用、和光純薬工業)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Metolose 60SH−4000、信越化学工業)、リン酸二水素ナトリウム・二水和物(一級、和光純薬工業)、水酸化ナトリウム(日局、ナカライテスク)
【0051】
<試験製剤1>
比較例1:20%フマル酸ケトチフェン含有ゲル剤
実施例1:20%フマル酸ケトチフェン・2%塩酸フェニレフリン含有ゲル剤
実施例2:20%フマル酸ケトチフェン・4%塩酸フェニレフリン含有ゲル剤
これらの製剤を表1の処方に従って、後述の調製方法で調製した。
【0052】
【表1】

【0053】
<調製方法1>
比較例1製剤
精製水に、リン酸二水素ナトリウム・二水和物を加えて攪拌し、完全に溶解した。この液を、70℃付近に加温した水浴中で加温し、攪拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロースを少量ずつ加えて溶解した。これを10分間室温で放置後、1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH6に調整し、ゲル基剤とした。ガラスシャーレ上で、フマル酸ケトチフェン及びゲル基剤を量り、スパーテルで十分に攪拌し、比較例1製剤(20%フマル酸ケトチフェン含有ゲル剤)とした。
【0054】
実施例1製剤および実施例2製剤
精製水に、リン酸二水素ナトリウム・二水和物及び塩酸フェニレフリンを加えて攪拌し、完全に溶解した。この液を、70℃付近に加温した水浴中で加温し、攪拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロースを少量ずつ加えて溶解した。これを10分間室温で放置後、1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH6に調整し、塩酸フェニレフリン含有ゲル基剤とした。ガラスシャーレ上で、フマル酸ケトチフェン及び塩酸フェニレフリン含有ゲル基剤を量り、スパーテルで十分に攪拌し、実施例1製剤(2%塩酸フェニレフリン含有・20%フマル酸ケトチフェン含有ゲル剤)および実施例2製剤(4%塩酸フェニレフリン含有・20%フマル酸ケトチフェン含有ゲル剤)とした。
【0055】
<使用動物1>
日本白色種雄性ウサギ(北山ラベスより購入、体重2.2〜2.5kg)を用いた。
【0056】
<試験方法1>
1)動物の前処置
試験製剤投与のため、ウサギの眼周辺部を予め除毛処理した。除毛処理は、試験前日ケタミン/キシラジン併用麻酔下で、バリカンおよびシェーバーを用いて皮膚を傷つけないように行った。下眼瞼皮膚に、粘着テープ(TC−18、ニチバン)の貼付及び剥離を20回繰り返すことで角質層を取り除いた。
【0057】
2)試験製剤投与
ラップ(サランラップ(登録商標)、旭化成)上で2cm×1cm×0.108cm(横×縦×厚み、0.216cm)となるように成形した試験製剤を下眼瞼皮膚に投与した。試験製剤の乾燥を防ぐため、適用した試験製剤はラップで覆った。
【0058】
3)眼組織採取
投与2時間後に試験製剤を除去し、キャピラリーで涙液を採取した。過剰量のペントバルビタールナトリウム溶液でウサギを安楽死させ、前眼部を生理食塩水で洗浄し、房水を採取後、結膜をつけた状態で眼球を摘出した。その後、ガラスシャーレ上で摘出眼から結膜を採取した。さらに、眼瞼皮膚を摘出した。非投与眼も同様に眼組織を採取した。
【0059】
4)前処理
結膜:採取した結膜に10mMリン酸二水素ナトリウム・二水和物緩衝液(pH7)1mLを加えて細切した。アセトニトリル4mLを加え300rpmで10分間上下振とう後、3000rpmで10分間遠心した。次に上清4mLを別の試験管に入れ、加温しながら減圧して乾固し、HPLC移動相(下記5)に記載された組成を有する)300μLで溶解した。さらに、14000rpmで5分間遠心後、上清をHPLC測定サンプルとした。
涙液:採取した涙液にHPLC移動相を200μL加えて攪拌後、14000rpmで5分間遠心した。その上清をHPLC測定サンプルとした。
房水:採取した房水を14000rpmで5分間遠心後、上清をHPLC測定サンプルとした。
眼瞼皮膚:(非投与眼)採取した眼瞼皮膚に10mMリン酸二水素ナトリウム・二水和物緩衝液(pH7)1mLを加えて細切した。アセトニトリル4mLを加え300rpmで10分間上下振とう後、3000rpmで10分間遠心した。次に上清4mLを別の試験管に入れ、加温しながら減圧して乾固し、HPLC移動相300μLで溶解した。さらに、14000rpmで5分間遠心後、上清をHPLC測定サンプルとした。
(投与眼)採取した眼瞼皮膚に10mMリン酸二水素ナトリウム・二水和物緩衝液(pH7)1mLを加えて細切した。アセトニトリル4mLを加え300rpmで10分間上下振とう後、3000rpmで10分間遠心した。上清をHPLC移動相で10倍希釈して、HPLC測定サンプルとした。
※HPLC移動相:0.1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH9):アセトニトリル=30:70(v/v%)
【0060】
5)濃度測定
高速液体クロマトグラフを使用して下記HPLC条件でケトチフェン濃度を測定した。
<HPLC条件>
検出器 :紫外吸光光度計(測定波長 300nm)
カラム :Capcell pak C18 MG S5 μm、4.5×250mm、資生堂製
ガードカラム(TOSOH, ODS−80Ts)
カラム温度 :40℃付近の一定温度
移動相 :0.1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH9):アセトニトリル=30:70(v/v%)
流速 :1.0mL/min
注入量 :50μL
【0061】
<試験結果1>
【表2】

【0062】
表2から明らかなように、塩酸フェニレフリンを配合した実施例1および実施例2投与群では、塩酸フェニレフリン非添加の比較例投与群と比較して、結膜、涙液、房水へのケトチフェンの移行量が増大した。
【0063】
<実験材料2>
フマル酸ケトチフェンが塩酸オロパタジンに変わった以外は、実験材料1と同じものを使用した。塩酸オロパタジンは、自社抽出品を使用した。
【0064】
<試験製剤2>
比較例2:20%塩酸オロパタジン含有ゲル剤
実施例3:20%塩酸オロパタジン・4%塩酸フェニレフリン含有ゲル剤
これらの製剤を表3の処方に従って、後述の調製方法で調製した。
【0065】
【表3】

【0066】
<塩酸オロパタジンの抽出・精製方法>
(1)「アレロック(登録商標)錠5」1500錠(約187g)をミルで細かく粉砕した。
(2)粉砕物はエタノール(500mL)/1N水酸化ナトリウム水溶液(20mL)混液に懸濁させ、室温で約1時間激しく攪拌した後、不溶物を濾取した。さらに、不溶物にエタノール(500mL)を加え、室温で約1時間激しく攪拌した後濾取し、再び不溶物を得た。この操作を2回繰り返した。
(3)得られた濾液、約2Lを約100mLになるまで濃縮した。この液に精製水(約900mL)を加え、約1Lの懸濁液を得た。これを濾過し、濾液を得た(pH5〜6)。
(4)濾液約1LをダイヤイオンHP−20(500mL)に通し、吸着させた。樹脂は精製水約1Lで洗浄し脱塩を行った。その後、この樹脂を20、40、60%(v/v)メタノール水溶液(500mL)で各2回洗浄を行った。さらに、メタノール(約2.3L)を用いて溶出を行い、単一スポットの見られたフラクション約2Lを濃縮し、オロパタジンフリー体混合物を得た(約7.8g)。
(5)得られたオロパタジンフリー体は2−プロパノール/精製水混液(3:1)(約100mL)を使って再結晶を行った(約5.9g)。
(6)フリー体の結晶を2−プロパノール/精製水混液(3:1)(約50mL)/メタノール(約10mL)混液に溶解後、数分間濃縮を行い、濾液中のメタノールを蒸発させた。この液に、4N HCl/Dioxane(4.25mL)(1eq)を加えた後、冷却または濃縮を行い、結晶を得た。
(7)得られた結晶は減圧濾過し、余分な溶媒を除去した後、室温下で約20時間減圧乾燥し、白色粉末の塩酸オロパタジンを得た(約4.1g:収率54.7%)。得られた塩酸オロパタジンの化学構造、物性、純度は、核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)、融点測定、水分測定、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)により確認した。
【0067】
<調製方法2>
調製方法は、フマル酸ケトチフェンが塩酸オロパタジンに変わった以外は調製方法1と同じである。
【0068】
<使用動物2>
日本白色種雄性ウサギ(北山ラベスより購入、体重2.4〜2.6kg)を用いた。
【0069】
<試験方法2>
1)動物の前処置
上記試験方法1と同じである。
【0070】
2)試験製剤投与
上記試験方法1と同じである。
【0071】
3)涙液・血液採取
投与2時間後に試験製剤を除去し、キャピラリーで涙液を採取した。その後、心臓より血液を採取した。
【0072】
4)前処理
涙液:採取した涙液にLC/MS/MS移動相を200μL加えて攪拌後、14000rpmで5分間遠心分離した。その上清を採取し、水・非水系フィルター(4P、0.45μm、ジーエルサイエンス)でろ過後、ろ液をLC/MS/MS測定サンプルとした。
血液:採取した血液を遠心分離(TOMY,HF−120)し、血漿を得た。この血漿1mLに、精製水1mLを加え、十分に攪拌した。前処理したカラム(前処理:1%ギ酸含有メタノール1mL×1回及び精製水1mL×2回を通した、カラム:BOND ELUT−C18,50MG,1ML)に、この溶液を通した。さらに、カラムを洗浄後(精製水1mL×2回を通した)、1%ギ酸含有メタノール1mL×2回を通して、薬物を溶出させた(溶離液)。回収した溶離液を窒素噴霧により濃縮後、LC/MS/MS移動相300μLで溶解した。フィルター(4P、0.45μm、ジーエルサイエンス)ろ過後、ろ液を移動相で10倍希釈して、LC/MS/MS測定サンプルとした。
※LC/MS/MS移動相:10mM酢酸溶液:メタノール=55:45(v/v%)
【0073】
5)濃度測定
LC/MS/MSシステムを使用して下記条件でオロパタジン濃度を測定した。
【0074】
LC/MS/MSシステム
MS/MS部: API-4000(Applied Biosystems)
窒素/ゼロエアー発生装置(KN-2-20016、カケンジェネックス)
真空ポンプ(HS-602、VARIAN)
オイルフリースクロースコンプレッサ(SLP-151CD-S1、アネスト岩田)
LC部:NANOSPACE SI-2 シリーズ((株)資生堂):
ポンプ1 (NANOSPACE SI-2 3001)
ポンプ2 (NANOSPACE SI-2 3001)
デガッサー (NANOSPACE SI-2 3009)
UV検出器 (NANOSPACE SI-2 3002)
カラムオーブン(NANOSPACE SI-2 3004)
オートインジェクター (NANOSPACE SI-2 3133)
【0075】
LC条件
カラム:Capcell pak C18 MGII S-5 μm、1.5×75mm、資生堂
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:ポンプ1:メタノール
ポンプ2:10mM酢酸溶液
流速:ポンプ1:45μL/min
ポンプ2:55μL/min
注入量:5μL
【0076】
MS/MS条件は表4の通りである。
【0077】
【表4】

【0078】
<試験結果2>
【表5】

【0079】
表5から明らかなように、塩酸フェニレフリンを配合した実施例3投与群では、塩酸フェニレフリン非添加の比較例2投与群と比較して、オロパタジンの血漿への移行量は減少したが、涙液への移行量は増大した。
【0080】
製剤実施例1
フマル酸ケトチフェン 0.3g
塩酸フェニレフリン 0.12g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
アクリル系共重合体 1.295g
ポリイソシアネート化合物 0.0015g
酢酸エチル 適量
全量 3g
【0081】
フマル酸ケトチフェンおよび塩酸フェニレフリンに酢酸エチル約2mLを加えて混合し、ディスポーザブルカップ中で約30秒間超音波処理してフマル酸ケトチフェンおよび塩酸フェニレフリンを溶解または分散させた後、ミリスチン酸イソプロピルを加え、十分に混合する。次いで、粘着剤基剤であるアクリル系共重合体アクリル系粘着剤、架橋剤であるポリイソシアネート化合物を順次加え、十分に混合する。混合物を脱気後、ドクターナイフまたはベーカー・アプリケーターを用い、剥離ライナー上に展延し、有機溶媒が揮発するまで静置する。続いて支持体を被せてローラーで圧着し、約40℃の恒温槽中で8〜12時間架橋させ、塩酸フェニレフリン・フマル酸ケトチフェン含有テープ剤とする。
【0082】
製剤実施例2
塩酸オロパタジン 0.3g
塩酸ナファゾリン 0.06g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
白色ワセリン 1.44g
全量 3g
【0083】
白色ワセリンおよびミリスチン酸イソプロピルをよく混合し、その混合した軟膏基剤に塩酸オロパタジンおよび塩酸ナファゾリンを加えてよく練合し、塩酸ナファゾリン・塩酸オロパタジン含有軟膏剤とする。
【0084】
製剤実施例3
塩酸エピナスチン 0.3g
塩酸エフェドリン 0.12g
ポリアクリル酸ナトリウム 0.45g
グリセリン 0.3g
ハッカ油 0.01g
精製水 適量
全量 3g
【0085】
ポリアクリル酸ナトリウムおよびグリセリンに精製水をよく混合し含水性膏体とする。さらに、ハッカ油および塩酸エピナスチンおよび塩酸エフェドリンを加えてよく練合する。その混合膏体を支持体(ポリエステル不織布等)に展延成型し、剥離ライナーを施し、塩酸エフェドリン・塩酸エピナスチン含有パップ剤とする。
【0086】
以上、本発明の具体的な態様のいくつかを詳細に説明したが、当業者であれば示された特定の態様には、本発明の教示と利点から実質的に逸脱しない範囲で様々な修正と変更をなすことは可能である。従って、そのような修正および変更も、すべて後記の請求の範囲で請求される本発明の精神と範囲内に含まれるものである。
【0087】
本出願は米国仮出願60/840,462を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用薬物および血管収縮剤を併用してなる眼科用経皮吸収型製剤。
【請求項2】
眼科用薬物および血管収縮剤を含有する眼科用経皮吸収型製剤。
【請求項3】
眼瞼皮膚表面に投与することを特徴とする、請求項1または2に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
【請求項4】
眼科用薬物が前眼部組織の疾患の予防または治療剤である請求項1から3のいずれか1項に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
【請求項5】
前眼部組織の疾患の予防または治療剤が抗アレルギー剤、ドライアイ治療剤、抗炎症剤、抗菌剤および抗緑内障剤から選択される少なくとも1つである請求項4に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
【請求項6】
前眼部組織の疾患の予防または治療剤が抗アレルギー剤である請求項5に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
【請求項7】
抗アレルギー剤がケトチフェン、オロパタジン、エピナスチンおよび製薬学的に許容されるそれらの塩から選択される少なくとも1つである請求項6に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
【請求項8】
抗アレルギー剤がフマル酸ケトチフェンまたは塩酸オロパタジンである請求項7に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
【請求項9】
血管収縮剤が塩酸フェニレフリンである請求項1から8のいずれか1項に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
【請求項10】
血管収縮剤が眼瞼皮膚表面から眼瞼内および/または結膜内に存在する条件下に、眼科用薬物を眼瞼皮膚表面に投与する工程を含む、眼瞼を透過して眼局所への眼科用薬物の移行量を増大させる方法。
【請求項11】
眼局所が前眼部組織である請求項10記載の方法。
【請求項12】
眼科用薬物が前眼部組織の疾患の予防または治療剤である請求項10記載の方法。
【請求項13】
前眼部組織の疾患の予防または治療剤が抗アレルギー剤、ドライアイ治療剤、抗炎症剤、抗菌剤および抗緑内障剤から選択される少なくとも1つである請求項12記載の方法。
【請求項14】
前眼部組織の疾患の予防または治療剤が抗アレルギー剤である請求項13記載の方法。
【請求項15】
抗アレルギー剤がケトチフェン、オロパタジン、エピナスチンおよび製薬学的に許容されるそれらの塩から選択される少なくとも1つである請求項14記載の方法。
【請求項16】
抗アレルギー剤がフマル酸ケトチフェンまたは塩酸オロパタジンである請求項15記載の方法。
【請求項17】
血管収縮剤が塩酸フェニレフリンである請求項10から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
眼疾患を治療する方法であって、該治療を必要とする投与対象に眼科用薬物および血管収縮剤の有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項19】
眼科用薬物および血管収縮剤を含有する眼科用経皮吸収型製剤を製造するための眼科用薬物および血管収縮剤の使用。

【公表番号】特表2010−502564(P2010−502564A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507259(P2009−507259)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/JP2007/067103
【国際公開番号】WO2008/026756
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000199175)千寿製薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】