説明

眼精疲労改善組成物

【課題】眼精疲労の予防または回復のために用いられる眼精疲労改善組成物を提供すること。
【解決手段】式
【化1】


で表されるクロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩とビタミン類、アントシアニン類、カロテノイド類(クロセチン、ビタミンAを除く)、イチョウ葉エキス、n−3系多価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも一種類を含有することを特徴とする眼精疲労改善組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩を含む眼精疲労改善組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
眼精疲労とは、目が疲れる、目が痛い、物が見えにくい、めまいがする、頭が痛いなどの種々の自覚症状が、休息によっても解消しない状態を指している。眼精疲労を起こす原因として、読書、注視作業、観察作業などによる目の酷使や精神的緊張が挙げられるが、近年VDT(Visual Display Terminal)作業に伴うものが非常に多くなっている。眼精疲労の発生機序については未だ不明な点が多いが、多くは調節異常などに起因する調節性眼精疲労であり、長時間の注視作業などにより毛様体筋が過度の緊張状態に陥り、目の調節機能が低下することが要因となって起こることが指摘されている。
【0003】
従来、このような眼精疲労に対しては、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12などを含有した点眼剤が汎用されている。また、日常手軽に摂取でき、目の疲れに効果的な機能性飲食品としては、例えば桑実より抽出したアントシアニンを有効成分とする眼精疲労回復剤(特許文献1参照)、野菊花に含まれる新規化合物、それを含む野菊花抽出エキスを含む眼精疲労改善機能性食品(特許文献2参照)、カシスアントシアニンを含有する機能性飲食品(特許文献3参照)、アスタキサンチン及び/又はそのエステルからなる眼の調節機能障害に対する改善作用を有する飲食品(特許文献4参照)などが提案されている。
【0004】
一方、クロセチンについては、ウサギの網膜の血流を増加させ、網膜の機能回復を手助けすること(非特許文献1参照)やPGE2により誘発されたウサギの目の炎症を濃度依存的に抑制すること(非特許文献2参照)などが報告されている。しかし、クロセチンの眼精疲労改善効果については明らかとなっていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−178408号公報、請求項3
【特許文献2】特開平11−246455号公報、請求項7および9
【特許文献3】国際公開第01/001798号明細書
【特許文献4】国際公開第02/094253号明細書
【非特許文献1】Xuan B,外4名,「Effects of crocin analogs on ocular blood flow and retinal function」,Journal of Ocular Phamacology and Therapeutics,1999,vol.15,p.143−152
【非特許文献2】Nagaki Y,外5名,「Effects of oral administration of Gardeniae Fructus extract and intravenous injection of Crocetin on lipopolysaccharide and prostaglandin E2−induced elevation of aqueous flare in pigmented rabbits」,The American Journal of Chinese Medicine,2003,vol.31,p.729−738
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、眼精疲労の予防または回復のために用いられる眼精疲労改善組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、カロテノイド色素の一種であるクロセチンとビタミン類、アントシアニン類、カロテノイド類(クロセチン、ビタミンAを除く)、イチョウ葉エキス、n−3系多価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも一種類とを組み合わせることにより、優れた眼精疲労改善効果を有する組成物が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、
(1)式
【化1】

で表されるクロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩とビタミン類、アントシアニン類、カロテノイド類(クロセチン、ビタミンAを除く)、イチョウ葉エキス、n−3系多価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも一種類を含有することを特徴とする眼精疲労改善組成物、
(2)飲食品である前記1に記載の眼精疲労改善組成物、
(3)眼精疲労の予防または回復を目的とする健康食品または特定保健用食品である、前記2に記載の眼精疲労改善組成物、
からなっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の眼精疲労改善組成物は眼精疲労の諸症状の軽減に優れた効果がある。この効果はクロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩とビタミン類、アントシアニン類、カロテノイド類(クロセチン、ビタミンAを除く)、イチョウ葉エキス、n−3系多価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも一種類とを組み合わせることにより得られるものである。
本発明の飲食品を、眼精疲労を誘発する原因となる作業の前、作業中または作業後に摂取することにより、眼精疲労を予防しまたは回復することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるクロセチンは、式
【化2】

で表される化合物である。このクロセチンは、通常、カロテノイド系の黄色色素であるクロシン(クロセチンのジゲンチオビオースエステル)を加水分解することにより得られる。クロシンは、アカネ科クチナシ(Gardenia augusta MERRIL var. grandiflora HORT.,Gardenia jasminoides ELLIS)の果実、サフランの柱頭の乾燥物などに含まれるが、クロシンを得るための工業的原料としてはクチナシの果実が好ましく用いられる。
【0010】
本発明において、上記植物基原からクロシンを抽出する方法に制限はなく、例えば、粉砕されたクチナシの乾燥果実から水またはアルコール(例えば、メタノール、エタノールなど) 、あるいはそれらの混合液を用いて抽出するなどの公知の方法が用いられる。抽出条件は、例えば水・アルコール混合液を用いた場合、室温(約0〜30℃)〜50℃で約1〜18時間が好ましく、約30〜40℃で約2〜4時間がより好ましい。抽出操作は通常複数回繰り返される。
【0011】
クロシンの加水分解は、定法に従って行われてよく、通常、酸、アルカリまたは適当な加水分解酵素の作用で行われる。ここで酸としては、例えば塩酸、硫酸およびリン酸などが挙げられ、アルカリとしては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムなどが挙げられる。また加水分解酵素としては、β−グルコシダーゼなどが挙げられる。
【0012】
工業的には、クロシンの加水分解がアルカリによる加水分解であるのが好ましい。
また、上記加水分解は、攪拌および/または加熱下で行われてもよい。好ましくは攪拌下、約20〜70℃、好ましくは約40〜60℃に加熱し、約1〜24時間、好ましくは約3〜5時間行われる。このようにして、加水分解することにより、その分解が促進され得る。
【0013】
クロシンの加水分解がアルカリによる加水分解である場合、通常、加水分解終了後、反応液に塩酸、硫酸またはリン酸などの無機酸、もしくはクエン酸などの有機酸の水溶液を適量加え、液性をpH約4.0以下、好ましくはpH約1.0〜3.0にするか、または反応液を塩酸、硫酸またはリン酸などの無機酸、もしくはクエン酸などの有機酸の水溶液に加え、液性をpH約4.0以下、好ましくはpH約1.0〜3.0にすることで、クロセチンを析出させる。その後、クロセチンを析出させた混合液を、遠心分離するかあるいはろ紙もしくはろ布に通してろ過することにより、クロセチンをペースト状の固形物として回収できる。
【0014】
また、クロシンの加水分解が酸による加水分解である場合、通常、加水分解と同時にクロセチンが析出するため、反応液は懸濁液として得られる。反応終了後、得られた懸濁液を、遠心分離するかあるいはろ紙もしくはろ布に通してろ過することにより、クロセチンをペースト状の固形物として回収できる。
【0015】
上記のようにして得られたクロセチン(ペースト状の固形物)には、通常、酸、中和塩および原料由来の不純物が固形物表面に付着しているため、該不純物を除去する目的で、洗浄処理が行われる。該処理は、例えば、上記ペースト状の固形物を十分量の水を用いて水洗するなど、公知の方法を用いて行ってよい。次に、例えば棚式の通風乾燥機または真空乾燥機などを用いて、好ましくは窒素ガスの雰囲気下約50℃を越えない温度で、例えば水洗した固形物を乾燥し、固形物に残留する水を除去する。
【0016】
しかしながら、このようにして得られたクロセチンでさえも、クロセチン以外の物質、例えば脂質およびその分解物、クロロゲン酸などのポリフェノール類、および加水分解により生成し、洗浄で完全に除去されなかったグルコース、ゲンチオビオースなどの糖類を含んでいることがあるため、該クロセチンを更に精製するのが好ましい。ここで、該クロセチンを精製する方法に制限は無く、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶などの公知の方法が用いられる。
【0017】
本発明で用いられるクロセチンは、純度約70質量%以上のクロセチンであるのが好ましく、純度約90質量%以上のクロセチンであるのがより好ましく、純度約95質量%以上のものであるのが最も好ましい。尚、ここでクロセチンの純度は、純品のクロセチンの色価を基準として算出される。色価は、後記実施例に記載の[色価測定方法]で測定される値である。
【0018】
本発明において、クロセチンの薬理学的に許容しうる塩としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、ピリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミンなどの医薬的に許容される有機アミノ化合物の塩などが挙げられる。
【0019】
本発明の組成物および飲食品100質量%中に配合されるクロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩の量は、純度100質量%のクロセチンに換算して、通常約0.0001〜50質量%、好ましくは約0.001〜20質量%、より好ましくは約0.01〜10質量%であり、クロセチンの1日当たりの摂取量などを考慮して適宜決定されるのが好ましい。クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩の成人1日当たりの摂取量は、純度100質量%のクロセチンに換算して、約0.1〜500mg、好ましくは約1〜200mg、さらに好ましくは約2〜50mgの範囲である。
【0020】
本発明で用いられるビタミン類としては、例えば動植物から抽出、精製して得られたもの、発酵法あるいは合成法で得られたものなどが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。本発明で用いられるビタミン類の具体例としては、例えばビタミンA、ビタミンB1類(塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、ベンフォチアミンなど)、ビタミンB2類(リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビンなど)、ビタミンB6類(塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサールなど)、ビタミンB12類(シアノコバラミンなど)、ナイアシン、パントテン酸類(パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウムなど)、ビオチン、葉酸、ニコチン酸アミド、ビタミンC類(L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カルシウムなど)、ビタミンE類(トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウムなど)などが挙げられる。上記ビタミン類は、一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
本発明の組成物または飲食品100質量%中に配合されるビタミン類の量は、通常0.0001〜60質量%、好ましくは0.001〜30質量%の範囲である。また、ビタミン類の成人1日当たりの摂取量はそれぞれ許容上限摂取量が定められており、ビタミンの種類によって異なるが、少なくても約0.8μg、多くても約800mgの範囲である。
【0021】
アントシアニンはポリフェノールの一種で、アントシアニジンをアグリコンとする配糖体であり、植物の花、果実、種子、葉、茎、根などに含まれ、赤〜紫〜青色を呈する色素として植物界に広く存在する。本発明で用いられるアントシアニン類の具体例としては、例えば赤キャベツ、赤米、アカダイコン、アズキ、黒大豆種皮、シソ、ハイビスカス、ブラックキャロット、ムラサキイモ、ムラサキトウモロコシ、ムラサキヤマイモなどを基原とする抽出物、エルダーベリー、イチゴ、イチジク、カウベリー、カシス、グースベリー、クランベリー、サーモンベリー、スィムブルーベリー、ストロベリー、ダークスィートチェリー、チェリー、ハルクベリー、ビルベリー、ブドウ、ブラックカーラント、ブラックベリー、ブルーベリー、プラム、ホワートルベリー、ボイセンベリー、マルベリー、ラズベリー、レッドカーラント、ローガンベリーなどを基原とする濃縮果汁または抽出物などが挙げられる。本発明で用いられるアントシアニン類としては、上記植物由来のアントシアニンを含む粗製品、精製品、またこれらを含有する製剤などが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
本発明の組成物または飲食品100質量%中に配合されるアントシアニン類の量は、通常0.001〜60質量%、好ましくは0.1〜40質量%の範囲である。また、アントシアニン類の成人1日当たりの摂取量は、通常1〜500mg、好ましくは10〜300mgの範囲である。
【0022】
本発明で用いられるカロテノイド類としては、例えば動植物から抽出、精製して得られたもの、発酵法あるいは合成法で得られたものなどが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。本発明で用いられるカロテノイド類の具体例としては、例えばβ−カロテン、α−カロテン、γ−カロテン、β−アポ−8′−カロテナール、β−アポ−10′−カロテナール、β−アポ−8′−カロテン酸、シトラナキサンチン、リコピン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、エキネノン、3−ヒドロキシ−β−カロテン、フコキサンチン、ルテイン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、ビキシン、並びにこれらの群の水酸基またはカルボキシル基含有化合物のエステル類などが挙げられる。また天然カロテノイドとしては、例えばアナトー色素、イモカロテン、クチナシ黄色素、エビ色素、オキアミ色素、オレンジ色素、カニ色素、デュナリエラカロテン、トウガラシ色素(別名:パプリカ色素)、トウモロコシ色素、トマト色素、ニンジンカロテン、パーム油カロテン、ファフィア色素、ベニノキ末色素、ヘマトコッカス藻色素、マリーゴールド色素などを挙げることができる。但し、クロセチン、ビタミンAは除かれる。上記カロテノイド類は、一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
本発明の組成物または飲食品100質量%中に配合されるカロテノイド類の量は、通常0.0001〜50質量%、好ましくは0.001〜20質量%の範囲である。また、カロテノイド類の成人1日当たりの摂取量は、通常0.1〜100mg、好ましくは1〜50mgの範囲である。
【0023】
イチョウ葉エキスは、中国を原産地とするイチョウ科の植物であるイチョウ(Ginkgo biloba)の葉の抽出物であり、その主要成分はケルセチンなどのフラボノイドである。本発明で用いられるイチョウ葉エキスとしては、上記成分を含む粗製品、精製品、またこれらを含有する製剤などが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。本発明で用いられるイチョウ葉エキスの好ましい態様としては、例えば上記植物の葉の乾燥粉末の水および/またはアルコール抽出液、該抽出液の濃縮液および濃縮乾固物、該濃縮液または濃縮乾固物を賦形剤(例えば、澱粉分解物、乳糖、アラビアガムなど)と共に水溶液とし、該水溶液を常法により噴霧乾燥して得られる粉末などが挙げられる。
本発明の組成物または飲食品100質量%中に配合されるイチョウ葉エキスの量は、通常0.01〜60質量%、好ましくは0.1〜30質量%の範囲である。また、イチョウ葉エキスの1日当たりの摂取量は、通常0.1〜500mg、好ましくは1〜300mgの範囲である。
【0024】
n−3系多価不飽和脂肪酸は、炭素原子間の結合に二重結合を2つ以上含む脂肪酸であって、末端メチル基の炭素原子をn、2番目の炭素原子をn−1とするとき、最初の二重結合がn−2とn−3の炭素原子間に存在する脂肪酸である。本発明で用いられるn−3系多価不飽和脂肪酸としては、例えばα−リノレン酸、(エ)イコサペンタエン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸などが挙げられる。本発明で用いられるn−3系多価不飽和脂肪酸の好ましい態様としては、n−3系多価不飽和脂肪酸そのまま、n−3系多価不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセライド(例えばシソ油、魚油など)、または該トリグリセライドを賦形剤(例えば、澱粉分解物、乳糖、アラビアガムなど)を含む水溶液中に加えて乳化し、該乳化液を常法により噴霧乾燥して得られる粉末油脂などが挙げられる。
本発明の組成物または飲食品100質量%中に配合されるn−3系多価不飽和脂肪酸の量は、通常1〜90質量%、好ましくは10〜90質量%の範囲である。また、n−3系多価不飽和脂肪酸の1日当たりの摂取量は、通常1〜1000mg、好ましくは10〜500mgの範囲である。
【0025】
本発明の眼精疲労改善組成物および飲食品において、ビタミン類、アントシアニン類、カロテノイド類(クロセチン、ビタミンAを除く)、イチョウ葉エキス、n−3系多価不飽和脂肪酸は一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0026】
本発明の眼精疲労改善組成物の剤形としては、例えば散剤、顆粒剤、錠剤、ソフトカプセル、ハードカプセルなどが挙げられる。また、飲食品としては、固形食品、クリーム状またはジャム状の半流動食品、ゲル状食品、飲料などあらゆる食品形態にすることが可能であり、例えば、清涼飲料、コーヒー、紅茶、乳飲料、乳酸菌飲料、ドロップ、キャンディー、チューインガム、チョコレート、グミ、ヨーグルト、アイスクリーム、プリン、水羊羹、ゼリー菓子、クッキーなどとすることができる。これら各種組成物および飲食品は、眼精疲労の蓄積および付随して発生する諸症状を予防しまたは回復することを目的とする健康食品または特定保健用食品として有用である。
【0027】
また、上記組成物および飲食品には、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、賦形剤(乳糖、デキストリン、コーンスターチ、結晶セルロースなど)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなど)、崩壊剤(カルボキシメチルセルロースカルシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウムなど)、結合剤(デンプン糊液、ヒドロキシプロピルセルロース液、アラビアガム液など)、溶解補助剤(アラビアガム、ポリソルベート80など)、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなど)、酸化防止剤(BHT、BHA、アスコルビン酸、トコフェロールなど)、保存料(ソルビン酸、パラオキシ安息香酸メチル、亜硫酸ナトリウムなど)、増粘安定剤(アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなど)、甘味料(砂糖、果糖、ブドウ糖液糖、ハチミツ、アスパルテームなど)、酸味料(クエン酸、乳糖、DL−リンゴ酸など)、調味料(DL−アラニン、5´−イノシン酸ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウムなど)、着色料(β−カロテン、食用タール色素、リボフラビンなど)、香料(ハッカ、ストロベリー香料など)、ミネラル類、アミノ酸類などを使用することができる。
【0028】
本発明の組成物または飲食品を経口的に摂取する場合、クロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩およびこれと組み合わされる各成分のそれぞれの一日あたりの摂取量の範囲内で、1回または数回に分けて摂取すると良い。但し、実際の用量は、目的や摂取者の状況(性別、年齢、体重、BMI等)を考慮して決められるべきである。
【実施例】
【0029】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
[製造例1]
(1)粉砕したクチナシの乾燥果実300gにメタノール・水混合液(1:1)600mLを加え、室温で3時間攪拌した後吸引ろ過した。ろ過後、抽出残にメタノール・水混合液(1:1)600mLを加え、室温で30分間攪拌した後吸引ろ過する操作を2回繰り返し、ろ液として計約1800mLの抽出液を得た。この抽出液を、ロータリーエバポレーターを用いて約60℃、約4kPaの条件で濃縮し、クロシンを含む濃縮物(色価=約573)約100gを得た。
(2)得られた濃縮物と40質量%水酸化ナトリウム水溶液34gとを混合し、撹拌下50℃で約3.5時間加水分解反応を行った。反応終了後、反応液を4質量%リン酸水溶液840mLに加えて酸性とした後、そのまま約3時間室温で放置した。
(3)析出した沈殿を遠心分離(10,000×g、10分間)により回収し、更に水200mLで洗浄し、遠心分離する操作を2回繰り返し、得られたペースト状の固形物を50℃で約8時間真空乾燥した。
(4)上記(1)〜(3)を5回繰り返して実施し、得られた結晶を集めて一つとし、粗クロセチン約12gを得た。このものの色価は約12,500であった。
(5)(4)で得られた粗クロセチン約10gにジメチルホルムアミド180mLを加え、80℃で溶解した。不溶物を定量ろ紙(No.5C,アドバンテック東洋社)でろ過し、ろ液を10℃で3日間放置した。次に生成したクロセチンの結晶を含む母液をガラスろ過器No.3でろ過し、メタノール200mLで洗浄後、結晶を50℃で真空乾燥し、クロセチン精製物(以下、精製クロセチンという。)を約1.6g得た。このものの色価は34,200であった。
【0031】
[精製クロセチンの純度測定]
上記精製クロセチン約0.5gを更にジメチルホルムアミドで再結晶を行い、得られたクロセチンの結晶(色価35,700)を、「純品のクロセチン」とし、以下の式にて、精製クロセチンの純度を算出した。
【数1】

算出された精製クロセチンの純度は95.8%であった。
【0032】
尚、色価(E10%1cm)は『化学的合成品以外の食品添加物 自主規格(第二版)』、日本食品添加物協会編、「クチナシ黄色素」を参考にして、以下の方法で測定した。
[色価測定方法]
測定する吸光度が0.3〜0.7の範囲になるように、試料を精密に量り、Kolthoff氏緩衝液(50mM Na2CO3−50mM Na247,pH10.0)に溶かして正確に500mlとする。溶解しにくい場合は、超音波処理により溶解する。その10mlを正確に量り、Kolthoff氏緩衝液(50mM Na2CO3−50mM Na247,pH10.0)を加えて50mlとし、試験溶液とする。Kolthoff氏緩衝液(50mM Na2CO3−50mM Na247,pH10.0)を対照とし、液層の長さ1cmで420nm付近の極大吸収部における吸光度Aを測定し、次式により色価を求める。
【数2】

【0033】
[製造例2]
精製クロセチン1質量部、ビタミンB1(DSM社製)1質量部、微結晶セルロース(商品名:アビセルPH−101;旭化成ケミカルズ社製)58質量部、コーンスターチ(商品名:日食コーンスターチ;日本食品化工社製)14質量部、乳糖(商品名:フローラック;サンフコ社製)25質量部、ショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルS−370F;三菱化学フーズ社製)1質量部を均一に混合し、試料とした。該試料を回転式小型打錠機(型式:AP−SS;畑鐵工所社製)を用い、1錠250mg、10mmφ、打錠圧100MPaで打錠し、1錠当たりクロセチン約2.4mg、ビタミンB1約2.5mg含む錠剤(実施品1)を得た。
【0034】
[製造例3]
製造例2に記載されているビタミンB11質量部に替えて、ビタミンB12(DSM社製)1質量部を使用する以外は製造例2と同様に実施し、1錠当たりクロセチン約2.4mg、ビタミンB12約2.5mg含む錠剤(実施品2)を得た。
【0035】
[製造例4]
精製クロセチン1質量部、ビタミンE(商品名:理研Eオイル805;理研ビタミン社製,α−トコフェロール約41%含有)24.4質量部、MCT(商品名:アクターM−1;理研ビタミン社製)74.6質量部を混合し、TKホモミキサー(型式:MARKII;特殊機化工業社製)を用い、10000rpmで15分間均質化し、充填液を得た。該充填液250mgを常法によりソフトカプセルに充填し、1カプセル当たりクロセチン約2.4mg、α−トコフェロール約25mg含むソフトカプセル(実施品3)を得た。
【0036】
[製造例5]
製造例2に記載されているビタミンB11質量部、微結晶セルロース58質量部に替えて、ブルーベリーエキス(商品名:ブルーベリーエキス末;タマ生化学社製,アントシアニジンとして約25%含有)20質量部、微結晶セルロース(商品名:アビセルPH−101;旭化成ケミカルズ社製)39質量部を使用する以外は製造例2と同様に実施し、1錠当たりクロセチン約2.4mg、アントシアニジンとして約12.5mg含む錠剤(実施品4)を得た。
【0037】
[製造例6]
製造例4に記載されているビタミンE24.4質量部、MCT74.6質量部に替えて、ヘマトコッカス藻抽出物(商品名:アスタリールオイル50F;富士化学工業社製,アスタキサンチン約5%含有)20質量部、MCT(商品名:アクターM−1;理研ビタミン社製)79質量部を使用する以外は製造例2と同様に実施し、1カプセル当たりクロセチン約2.4mg、アスタキサンチン約2.5mg含むソフトカプセル(実施品5)を得た。
【0038】
[製造例7]
製造例4に記載されているビタミンE24.4質量部、MCT74.6質量部に替えて、マリーゴールド抽出物(商品名:ルテイン20;理研ビタミン社製,ルテインとして約20%含有)5質量部、MCT(商品名:アクターM−1;理研ビタミン社製)94質量部を使用する以外は製造例2と同様に実施し、1カプセル当たりクロセチン約2.4mg、ルテインとして約2.5mg含むソフトカプセル(実施品6)を得た。
【0039】
[製造例8]
製造例2に記載されているビタミンB11質量部、微結晶セルロース58質量部に替えて、イチョウ葉エキス(商品名:イチョウ葉エキスパウダーH;日本新薬社製,フラボノイド約24%含有)12質量部、微結晶セルロース(商品名:アビセルPH−101;旭化成ケミカルズ社製)47質量部を使用する以外は製造例2と同様に実施し、1錠当たりクロセチン約2.4mg、フラボノイド約7.2mg含む錠剤(実施品7)を得た。
【0040】
[製造例9]
製造例4に記載されているビタミンE24.4質量部、MCT74.6質量部に替えて、微細藻油(商品名:理研藻DHAオイル38;理研ビタミン社製,DHA約38%含有)79質量部、MCT(商品名:アクターM−1;理研ビタミン社製)20質量部を使用する以外は製造例2と同様に実施し、1カプセル当たりクロセチン約2.4mg、DHA約75mg含むソフトカプセル(実施品8)を得た。
【0041】
[製造例10]
精製クロセチン1質量部、微結晶セルロース(商品名:アビセルPH−101;旭化成ケミカルズ社製)59質量部、コーンスターチ(商品名:日食コーンスターチ;日本食品化工社製)14質量部、乳糖(商品名:フローラック;サンフコ社製)25質量部、ショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルS−370F;三菱化学フーズ社製)1質量部を均一に混合し、試料とした。該試料を回転式小型打錠機(型式:AP−SS;畑鐵工所社製)を用い、1錠250mg、10mmφ、打錠圧100MPaで打錠し、1錠当たりクロセチン約2.4mg含む錠剤(比較品1)を得た。
【0042】
[製造例11]
製造例10に記載されている精製クロセチン1質量部に替えて、ビタミンB1(DSM社製)1質量部を使用する以外は製造例10と同様に実施し、1錠当たりヒタミンB1約2.5mg含む錠剤(比較品2)を得た。
【0043】
[製造例12]
製造例10に記載されている精製クロセチン1質量部に替えて、ビタミンB12(DSM社製)1質量部を使用する以外は製造例10と同様に実施し、1錠当たりビタミンB12約2.5mg含む錠剤(比較品3)を得た。
【0044】
[製造例13]
ビタミンE(商品名:理研Eオイル805;理研ビタミン社製,α−トコフェロール約41%含有)24.4質量部、MCT(商品名:アクターM−1;理研ビタミン社製)75.6質量部を混合して均一に溶解し、充填液を得た。該充填液を常法によりソフトカプセルに250mg充填し、1カプセル当たりα−トコフェロール約25mg含むソフトカプセル(比較品4)を得た。
【0045】
[製造例14]
製造例10に記載されている精製クロセチン1質量部、微結晶セルロース59質量部に替えてブルーベリーエキス(商品名:ブルーベリーエキス末;タマ生化学社製,アントシアニジンとして約25%含有)20質量部、微結晶セルロース(商品名:アビセルPH−101;旭化成ケミカルズ社製)40質量部を使用する以外は製造例10と同様に実施し、1錠当たりアントシアニジンとして約12.5mg含む錠剤(比較品5)を得た。
【0046】
[製造例15]
製造例13に記載されているビタミンE24.4質量部、MCT75.6質量部に替えて、ヘマトコッカス藻抽出物(商品名:アスタリールオイル50F;富士化学工業社製,アスタキサンチン約5%含有)20質量部、MCT(商品名:アクターM−1;理研ビタミン社製)80質量部を使用する以外は製造例13と同様に実施し、1カプセル当たりアスタキサンチン約2.5mg含むソフトカプセル(比較品6)を得た。
【0047】
[製造例16]
製造例13に記載されているビタミンE24.4質量部、MCT75.6質量部に替えて、マリーゴールド抽出物(商品名:ルテイン20;理研ビタミン社製,ルテインとして約20%含有)5質量部、MCT(商品名:アクターM−1;理研ビタミン社製)95質量部を使用する以外は製造例13と同様に実施し、1カプセル当たりルテインとして約2.5mg含むソフトカプセル(比較品7)を得た。
【0048】
[製造例17]
製造例10に記載されている精製クロセチン1質量部、微結晶セルロース59質量部に替えて、イチョウ葉エキス(商品名:イチョウ葉エキスパウダーH;日本新薬社製,フラボノイド約24%含有)12質量部、微結晶セルロース(商品名:アビセルPH−101;旭化成ケミカルズ社製)48質量部を使用する以外は製造例10と同様に実施し、1錠当たりフラボノイド約7.2mg含む錠剤(比較品8)を得た。
【0049】
[製造例18]
製造例13に記載されているビタミンE24.4質量部、MCT75.6質量部に替えて、微細藻油(商品名:理研藻DHAオイル38;理研ビタミン社製,DHA約38%含有)79質量部、MCT(商品名:アクターM−1;理研ビタミン社製)21質量部を使用する以外は製造例13と同様に実施し、1カプセル当たりDHA約75mg含むソフトカプセル(比較品9)を得た。
【0050】
[製造例19]
製造例10に記載されている精製クロセチン1質量部、微結晶セルロース59質量部に替えて、微結晶セルロース(商品名:アビセルPH−101;旭化成ケミカルズ社製)60質量部を使用する以外は製造例10と同様に実施し、有効成分を含まない錠剤(プラセボ)を得た。
【0051】
[試験例]
眼精疲労の改善に対するクロセチンと上記5種類の物質の併用効果を評価するため、クロセチンと上記5種類の物質のいずれかとを含む錠剤またはカプセル(実施品1〜8)、クロセチンまたは上記5種類の物質のいずれかを含む錠剤またはカプセル(比較品1〜9)、クロセチンおよび上記5種類の物質を含まない錠剤(プラセボ)を用いて、VDT作業に従事しており、作業中および作業後に目の疲れなどの眼精疲労症状を自覚する健常な成人男性(30〜40歳)を対象にして、二重盲検試験を行った。結果を表1に示した。
【0052】
<試験方法>
被験者110名を無作為に1群5名に群分けした。各群の被験者に3時間継続的にVDT作業させた後、被験者の眼精疲労に伴う自覚症状の程度を、1)眼が疲れている、2)眼が痛い、3)眼がかすむ、4)肩がこる、5)頭が痛い、の5項目について、ビジュアルアナログスケール法を用いて、0(感じない)から10(極度に感じる)までを意味する10cmの線分上に線で記入させた。
次に、被験者に被検薬あるいは対照薬(プラセボ)を4錠または4カプセル服用させ、服用から1時間後に、被験者の眼精疲労に伴う自覚症状の程度を再び記入させた。
各被験者毎に、作業終了時の5項目の評価点の平均値と服用から1時間後の5項目の評価点の平均値を算出し、以下の式に基づいて症状の改善度を求めた。
【数3】

【0053】
<結果>
【表1】

【0054】
表1から明らかなように、プラセボ、単独投与群と比較して、クロセチンとビタミン類、アントシアニン類、カロテノイド類(クロセチン、ビタミンAを除く)、イチョウ葉エキス、n−3系多価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも一種類とを組み合わせることにより、顕著な眼精疲労改善効果が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

で表されるクロセチンまたはその薬理学的に許容しうる塩とビタミン類、アントシアニン類、カロテノイド類(クロセチン、ビタミンAを除く)、イチョウ葉エキス、n−3系多価不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも一種類を含有することを特徴とする眼精疲労改善組成物。
【請求項2】
飲食品である請求項1に記載の眼精疲労改善組成物。
【請求項3】
眼精疲労の予防または回復を目的とする健康食品または特定保健用食品である、請求項2に記載の眼精疲労改善組成物。

【公開番号】特開2007−215465(P2007−215465A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38889(P2006−38889)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】