説明

着磁建材及びその製造方法

【課題】セラミックス板状体と着磁された硬質磁性体(永久磁石)とが強固に一体化された着磁建材を提供する。
【解決手段】着磁建材1は、セラミックス板状体2の裏面の全面に、着磁された硬質磁性体(永久磁石)3が設けられたものである。この着磁建材1は、乾式プレス又は押し出し法等により、坏土成形体と硬質磁性粉末成形体とを一体成形してなる複合成形体を、焼成し、次いで着磁加工を施すことにより製造される。坏土成形体の裏面に硬質磁性粉末成形体が配置された状態で焼成して着磁建材としているため、セラミックス板状体と着磁された硬質磁性体(永久磁石)とが強固に一体化されたものとなり、着磁された硬質磁性体(永久磁石)がセラミックス板状体から剥離し難いものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス板状体の裏面に、着磁された硬質磁性体が設けられてなる着磁建材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁面に鉄板などの強磁性体よりなる板状体を貼り付けた壁構造に対して、タイルの裏面に着磁された硬質磁性体を配置してなる着磁タイルを配列することが行われている。
【0003】
例えば、特開平11−117497号には、着磁タイルとして、陶磁器製のタイル本体の裏面に対してマグネットシートを接着したものが用いられている。このマグネットシートは、合成樹脂材に硬質磁性粉を混合してシート状に成形した後、該硬質磁性粉を着磁させたものである。
【特許文献1】特開平11−117497号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開平11−117497号のようにタイル本体の裏面にマグネットシートを接着剤で接着する場合、接着剤の接着強度の劣化により、マグネットシートがタイル本体から剥離し易いという問題がある。
【0005】
本発明は、セラミックス板状体と硬質磁性体とが強固に一体化された着磁建材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)の着磁建材は、セラミックス板状体の裏面に、着磁された硬質磁性体(即ち、硬質磁性体を着磁してなる永久磁石)が設けられてなる、磁力を有する着磁建材において、坏土成形体の裏面に硬質磁性粉末成形体が配置されてなる複合成形体を焼成した後、着磁したものであることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の着磁建材は、請求項1において、前記セラミックス板状体の裏面に、前記着磁された硬質磁性体(永久磁石)が間隔をおいて複数個配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の着磁建材は、請求項2において、前記着磁された硬質磁性体は裏面側に向って拡径していることを特徴とする。
【0009】
本発明(請求項4)の着磁建材の製造方法は、セラミックス板状体の裏面に、着磁された硬質磁性体が設けられてなる、磁力を有する着磁建材を製造する方法において、坏土成形体の裏面に硬質磁性粉末成形体が配置されてなる複合成形体を焼成した後、着磁することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって提供される着磁建材は、セラミックス板状体の裏面に、着磁された硬質磁性体(永久磁石)が設けられてなる、磁力を有する着磁建材において、坏土成形体の裏面に硬質磁性粉末成形体が配置されてなる複合成形体を焼成した後、着磁加工を施したものである。このように、坏土成形体の裏面に硬質磁性粉末成形体が配置された状態で焼成して着磁建材としているため、セラミックス板状体と硬質磁性体とが強固に一体化されたものとなり、硬質磁性体がセラミックス板状体から剥離し難いものとなる。
【0011】
本発明において、セラミックス板状体の裏面に、前記着磁された硬質磁性体が間隔をおいて複数個配置されていることが好ましい。この場合、セラミックス板状体の裏面全面に着磁された硬質磁性体を設けた着磁建材と比べて、焼成時に反りが生じ難いものとなる。
【0012】
このように、セラミックス板状体の裏面に複数個の着磁された硬質磁性体が配置されている場合にあっては、着磁された硬質磁性体は裏面側(セラミックス板状体の裏面側)に向って拡径していてもよい。この場合、鉄板などに対面する着磁された硬質磁性体(永久磁石)の面積を大きくすることができると共に、着磁された硬質磁性体の体積もある程度大きくすることができるので、着磁建材の鉄板等との吸着力を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の着磁建材の実施の形態について説明する。
【0014】
第1図は第1の実施の形態に係る着磁建材1の断面図である。
【0015】
この着磁建材1は、セラミックス板状体2の裏面の全面に、着磁された硬質磁性体(永久磁石)3が設けられたものである。この着磁建材1は、乾式プレス又は押し出し法等により、坏土成形体と硬質磁性粉末成形体とを一体成形してなる複合成形体を、焼成し、次いで着磁することにより製造されたものである。
【0016】
第2図(a)〜(e)は、この複合成形体の成形工程の一例を説明する断面図である。
【0017】
まず、第2図(a)の上型21、枠22a及び下型22よりなる成形型と、2種類の原料、即ち、硬質磁性粉末11及び坏土粉末12を準備する。
【0018】
下型22の上面が枠22aの上面よりも所定距離だけ下方に位置するようにし、キャビティ内に硬質磁性粉末11を充填する。(第2図(b))。次いで、下型22を硬質磁性粉末11と共に下方に所定距離だけ移動させ(第2図(c))、坏土粉末12をキャビティ内に充填する(第2図(d))。上型21を挿入して加圧した後、上型21を取り外し、下型22を上方に移動させる。このようにして、坏土成形体14の裏面に硬質磁性粉末成形体13が一体に成形されてなる複合成形体10が製造される。
【0019】
このようにして得られた複合成形体10を、通常の方法に従い、ローラーハースキルン、トンネルキルン、迅速焼成炉等の焼成炉に入れて、例えば1200〜1300℃程度で焼成する。その後、キュリー温度以下、好ましくは室温まで放冷された焼結体に着磁ヨークから400〜700kA/m程度のパルス磁界を印加して硬質磁性体を着磁する。このようにして、セラミックス板状体2と着磁された硬質磁性体(永久磁石)3とが強固に一体化されてなる着磁建材1が製造される。
【0020】
このセラミックス板状体2及び着磁された硬質磁性体3の厚みには特に制限はないが、例えば、セラミックス板状体2の厚みは3〜20mm程度、着磁された硬質磁性体3の厚みは0.5〜5mm程度であることが好ましい。
【0021】
この坏土成形体の坏土としては、長石、陶石、珪砂、タルク、蝋石、石灰、ドロマイト、ワラストナイトの単一物及び混合物などが用いられる。
【0022】
この硬質磁性粉末成形体の硬質磁性粉末としては、Baフェライト、Srフェライト、Coフェライト等の硬質フェライト等が用いられる。
【0023】
次に、第2の実施の形態に係る着磁建材について、第3図及び第4図を参照して説明する。
【0024】
第3図(a)は第2の実施の形態に係る着磁建材1Aの斜視図、第3図(b)は第3図(a)のB−B線に沿う断面図、第4図は第3図の着磁建材1Aの製造工程の一例を説明する断面図である。
【0025】
この着磁建材1Aは、セラミックス板状体2Aの裏面(第3図における上面)に、着磁された硬質磁性体(永久磁石)3Aが間隔をおいて複数個(本実施の形態では4個)配置されてなるものである。この着磁された硬質磁性体3Aは、セラミックス板状体2Aの裏面(第3図における上面)側に向って拡径した略円錐形状となっており、該着磁された硬質磁性体3Aの裏面とセラミックス板状体2Aの裏面とは面一となっている。
【0026】
この着磁建材1Aは、例えば以下のようにして製造される。まず、略円錐形状に成形してなる硬質磁性粉末成形体3A’を、その底面が金型20Aの底面に当接するようにして金型20A内に配置する(第4図)。次いで、金型20A内に坏土粉末を入れて加圧成形し、複合成形体を得る。この複合成形体を、焼成し、その後、着磁する。これにより、着磁建材1Aが製造される。原料、焼成条件、着磁条件等は上記と同様であることが好ましい。
【0027】
この着磁建材1Aは、セラミックス板状体の裏面全面に着磁された硬質磁性体(永久磁石)を設けてなる上記の着磁建材1と比べて、焼成時に反りが生じ難い。即ち、坏土の焼結体と硬質磁性体の焼結体とでは、熱膨張率が異なることが多く、焼成後の冷却過程で板状焼結体に反りが生じ易い。第3図の着磁建材1Aは、着磁された硬質磁性体3Aがスポット状に裏面に配置されているので、収縮応力が小さく、反りが防止ないし抑制される。
【0028】
また、着磁された硬質磁性体3Aは裏面側(セラミックス板状体の裏面側)に向って拡径しているため、鉄板などに対面する着磁された硬質磁性体の面積を大きくすることができると共に、着磁された硬質磁性体の体積もある程度大きくすることができるので、着磁建材の鉄板等との吸着力を高めることができる。
【0029】
このセラミックス板状体2Aの厚みには特に制限はないが、例えば、セラミックス板状体2Aの厚みは、3〜20mm程度であることが好ましい。略円錐形の着磁された硬質磁性体3Aの直径は5〜30mm、高さは直径の3〜50%程度が好ましい。着磁された硬質磁性体3Aが着磁建材1Aの裏面で占める面積割合は、30〜70%程度が好ましい。
【0030】
本実施の形態では、着磁された硬質磁性体3Aは略円錐形状となっているが、これに限定されるものではない。例えば、三角錐や四角錐以上の角錐形状であってもよい。また、これら円錐や角錐の上半側が切り取られた形状となっていてもよい。さらに、円柱形や角柱形のように、裏面側に向って拡径していないものであってもよいが、上記の理由により、裏面側に向って拡径したものであることが好ましい。
【0031】
着磁された硬質磁性体3Aの厚み(セラミックス板状体2の厚み方向の長さ)は、例えば2mm程度であることが好ましい。
【0032】
第5図(a)は第3の実施の形態に係る着磁建材1Bの断面図、第5図(b)はこの着磁建材1Bの製造方法を説明する斜視図である。
【0033】
第5図(b)に示す通り、坏土成形体14Aの裏面に複数個(本実施の形態では4個)の凹部14aが設けられている。この坏土成形体14Aは、例えば以下のようにして製造される。即ち、これら凹部14aに倣う形状の突部が底面に設けられた金型を用い、この金型内に坏土を入れて、成形する。このようにして、坏土成形体の裏面に凹部14aが設けられる。
【0034】
このようにして製造された坏土成形体14Aの凹部14aの内面に水ガラスやガラス粉等(図示略)を塗布した後、該凹部14aに倣う形状の硬質磁性体粉末成形体13Aを該凹部14aに挿入し、焼成する。その後、着磁することにより、着磁建材1Bが製造される。原料や焼成条件、着磁条件は前記と同様であることが好ましい。水ガラスの付着量は、固形分量として、0.5〜3mg/cm程度が好ましい。
【0035】
なお、硬質磁性粉末成形体13Aは、凹部14aよりもごく僅かに小さい、ほぼ同一形状のものである。この実施の形態では、硬質磁性粉末成形体13Aは略円錐台形状であるが、これに限定されない。
【0036】
この着磁建材1Bは、それぞれ焼結体よりなる着磁された硬質磁性体3Bとセラミックス板状体2Bとが、水ガラス等の珪酸ナトリウムを含んだ結合層(例えば珪酸ナトリウム系ガラス層)を介して焼結されているため、着磁された硬質磁性体3Bとセラミックス板状体2Bとが強固に一体化される。
【0037】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、硬質磁性体を着磁するに際しては、片面多極着磁等の多極着磁を行ってもよく、厚み方向に着磁(上下NS着磁)してもよい。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、原料として、以下のものを用いた。
【0039】
硬質磁性粉末:ニチレイマグネット株式会社製Ba−フェライト(品番M002)
(平均粒径1.10μm)
坏土粉末:長石40質量%、タルク50質量%及び粘土10質量%を混合してなる
乾燥粉体
水ガラス:三号水ガラス
【0040】
実施例1
第1の実施の形態(第1図〜第2図)の通りにして着磁建材を製造した。
【0041】
金型内に、硬質磁性粉末(Ba−フェライト)10gを供給し、その後下型下降後、坏土粉末20gを供給し、65MPaで加圧して2層よりなる複合成形体を得た。
【0042】
この複合成形体を、1230℃で1時間保持の3時間昇温焼成して、焼結体を得た。放冷後、この焼結体を着磁装置内に配置し、7mmピッチ多極着磁ヨークより560kA/mのパルス磁界(0.2秒間)を印加して、硬質磁性体を着磁した。このようにして、セラミックス板状体(縦50mm×横50mm×厚み3.5mm)の裏面全面に、着磁された硬質磁性体(縦50mm×横50mm×厚み1.5mm)が設けられてなる着磁建材を製造した。
【0043】
この着磁建材を鉄板に配列したところ、着磁建材が鉄板に強固に磁着した。
【0044】
実施例2
第2の実施の形態(第3図〜第4図)の通りにして着磁建材を製造した。
【0045】
成形用の金型を用いて円錐形の硬質磁性粉末成形体1g(底面の直径18mm、高さ1.8mm)を成形し、硬質磁性体4個を下型4箇所に充填した。
【0046】
その後、坏土粉末30gを入れ、65MPaで加圧して複合成形体を得た。
【0047】
この複合成形体を、1230℃で1時間保持の3時間焼成して、焼結体を得た。放冷後、この焼結体を実施例1と同様にして着磁した。このようにして、セラミックス板状体(縦50mm×横50mm×厚み5mm)の裏面に円錐形の着磁された硬質磁性体(底面の直径15mm、高さ1.5mm)が4個設けられてなる着磁建材を製造した。
【0048】
この着磁建材を鉄板に配列したところ、着磁建材が鉄板に強固に磁着した。
【0049】
実施例3
第3の実施の形態(第5図)の通りにして着磁建材を製造した。
【0050】
成形用金型を用い、底面の直径17.5mm、上面の直径11.5mm、厚さ1.75mmの円錐台形状の硬質磁性粉末成形体を成形した。成形圧は65MPaとした。
【0051】
また、底面に該硬質磁性粉末成形体に倣う突部が4個設けられた金型内に、坏土粉末28gを入れ、65MPaで加圧することにより、裏面に4個の凹部が設けられた坏土成形体を得た。
【0052】
この坏土成形体の凹部の内面に水ガラスを固形分として1mg/cmの割合で塗布した後、凹部内に上記硬質磁性粉末成形体を挿入配置し、1230℃で1時間保持の3時間昇温焼成して焼結体を得た。放冷後、この焼結体を実施例1と同様にして着磁した。このようにして、セラミックス板状体(縦50mm×横50mm×厚み5mm)の裏面に4個の着磁された硬質磁性体(底面の直径15mm、上面の直径10mm、高さ1.5mm)が設けられてなる着磁建材を製造した。
【0053】
この着磁建材を鉄板に配列したところ、着磁建材が鉄板に強固に磁着した。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施の形態に係る着磁建材1の断面図である。
【図2】図1の着磁建材1の製造方法を説明する断面図である。
【図3】(a)は第2の実施の形態に係る着磁建材1の斜視図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図4】図3の着磁建材1Aの製造方法を説明する断面図である。
【図5】(a)は第3の実施の形態に係る着磁建材1Bの断面図、(b)は(a)の着磁建材1Bの製造方法を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B 着磁建材
2,2A,2B セラミックス板状体
3,3A,3B 着磁された硬質磁性体(永久磁石)
3A’ 硬質磁性粉末成形体
10 複合成形体
11 硬質磁性粉末
12 坏土粉末
13,13A 硬質磁性粉末成形体
14,14A 坏土成形体
14a 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス板状体の裏面に、着磁された硬質磁性体が設けられてなる、磁力を有する着磁建材において、
坏土成形体の裏面に硬質磁性粉末成形体が配置されてなる複合成形体を焼成した後、着磁したものであることを特徴とする着磁建材。
【請求項2】
請求項1において、前記セラミックス板状体の裏面に、前記着磁された硬質磁性体が間隔をおいて複数個配置されていることを特徴とする着磁建材。
【請求項3】
請求項2において、前記着磁された硬質磁性体は裏面側に向って拡径していることを特徴とする着磁建材。
【請求項4】
セラミックス板状体の裏面に、着磁された硬質磁性体が設けられてなる、磁力を有する着磁建材を製造する方法において、
坏土成形体の裏面に硬質磁性粉末成形体が配置されてなる複合成形体を焼成した後、着磁することを特徴とする着磁建材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−96090(P2009−96090A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270352(P2007−270352)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【出願人】(000110893)ニチレイマグネット株式会社 (24)
【Fターム(参考)】