説明

着色合わせガラス

【課題】フローマークの発生が抑制された、貫通孔を有する着色合わせガラスを提供する。
【解決手段】エチレン酢酸ビニル共重合体及び着色剤を含む着色樹脂層を含む中間膜10を介して2枚の透明基板11a、11bが接着一体化されてなり、貫通孔12を有する着色合わせガラスであって、
前記エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの含有量が、前記エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、20〜23質量部であることを特徴とする着色合わせガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤を含む中間膜を用いて着色された合わせガラスに関し、特に、加熱加圧時に圧力ムラが生じやすい形状であっても、フローマークの発生が抑制された優れた外観特性を有する着色された合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス板の間に中間膜として透明接着剤層を挟持させた構造を有する合わせガラスが知られている。合わせガラスでは、中間膜の存在により、耐貫通性等が向上している。したがって、合わせガラスは、盗難や侵入等を目的として破壊されても窓の開放を自由にすることができないため、防犯用ガラスとしても有用である。また外部からの衝撃に対し、破損したガラスの破片は中間膜に貼着したままとなるので、その飛散を防止している。
【0003】
このような合わせガラスは、航空機、自動車のフロントガラスやサイドガラス、あるいは、建築物の窓ガラスとして用いられている。したがって、合わせガラスは、耐貫通性や割れたガラスの飛散防止などの安全性を確保するとともに、高度な透明度が必要とされている。
【0004】
従来の合わせガラスにおける中間膜としては、ポリビニルブチラール樹脂(以下、「PVB」とも言う)及び可塑剤を含む組成物をシート状に成形したPVB樹脂膜が使用されている(特許文献1)。PVBは、耐衝撃性、耐貫通性などに優れる一方で、水分の影響を受けやすく耐湿性が十分ではない。そこで、PVBの代わりに耐湿性、遮音性に優れ、安価であるエチレン酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」とも言う)を含む樹脂膜が合わせガラス用中間膜として提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、近年では、合わせガラスを、外装材、内装材の壁や窓だけでなく、さらにスクリーン、照明器具、造形作品などの用途にも用いるようになっている。このように用途が多様化するにつれて、合わせガラスには、様々な色彩を付して意匠性を高めることにより利用価値の向上が図られている。例えば、特許文献3では、中間膜に着色剤を添加することによって着色された合わせガラスなどが開示されている。
【0006】
このような従来のEVAを用いた着色中間膜は、EVA、架橋剤及び着色剤などを含む組成物を、例えば、押出成形等により加熱圧延することにより成膜することで作製される。このようにして得られた着色中間膜を介して二枚の透明基板を積層し、得られた積層体を加熱加圧することにより、EVAを架橋硬化して、各層を接合一体化することによって合わせガラスが作製される。
【0007】
合わせガラスを自動車や建築物に窓ガラスとして取り付けるには、接着剤を用いて合わせガラスをそのまま窓枠に取り付ける手段などが知られている。この他にも、合わせガラスに貫通孔を形成し、この貫通孔を利用してボルトやナットなどの取付部材により合わせガラスを窓枠に取り付ける手段などが用いられている(特許文献4)。
【0008】
【特許文献1】特開2006−160562号公報
【特許文献2】特開昭57−196747号公報
【特許文献3】特開2005−127029号公報
【特許文献4】特開2005−127029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した着色剤を含む中間膜を用いて着色された合わせガラスでは、特に、加熱加圧時に合わせガラスに加わる圧力にムラがある場合、中間膜に含まれるEVA樹脂組成物が流動することによってフローマークが生じ、外観不良を招く場合があった。例えば、取付部材用などのために貫通孔が形成された合わせガラスでは、貫通孔周辺に圧力が集中して圧力ムラが生じ、貫通孔を中心として年輪状の縞が発生する場合がある。したがって、貫通孔を有する着色合わせガラスにおいて生じるフローマークを抑制することにより、外観特性を向上させることが必要とされている。
【0010】
そこで、本願発明の目的は、フローマークの発生が抑制された、貫通孔を有する着色合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、加熱加圧時に圧力ムラが生じやすい着色合わせガラスにおけるフローマークの発生は、中間膜に含まれるEVA樹脂組成物の溶融粘度が低く、流動性が高いため、このEVA樹脂組成物の流れに着色剤がついていけず、着色剤による色の濃淡が生じてフローマークが発生することが要因と考え、検討を重ねた。その結果、着色剤に適した溶融粘度を有する中間膜の検討が必要であることを見出し、本発明に至った。すなわち、比較的、流動し難い粘度を有するように所定の酢酸ビニル含有量を有するエチレン酢酸ビニル共重合体と着色剤とを含む樹脂層を中間膜に使用することにより、フローマークの発生を抑制できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、エチレン酢酸ビニル共重合体及び着色剤を含む着色樹脂層を含む中間膜を介して、2枚の透明基板が接着一体化されてなり、貫通孔を有する着色合わせガラスであって、
前記エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの含有量が、前記エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、20〜23質量部であることを特徴とする着色合わせガラスにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0013】
酢酸ビニルの含有量が20〜23質量部であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含む樹脂層は、溶融粘度が適度に高く、加熱加圧時の流動性が低いことから、着色剤の流動を抑制することができる。したがって、着色された中間膜として、酢酸ビニルの含有量が20〜23質量部であるエチレン酢酸ビニル共重合体及び着色剤を含む着色樹脂層を少なくとも含むものを合わせガラスに用いることにより、取付部材用などに使用される貫通孔が形成されても、加熱加圧時の圧力ムラによるフローマークの発生を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の着色合わせガラスの貫通孔が形成された部分の断面図を図1に示す。本発明の着色合わせガラスは、図1に示すように、中間膜10を介して2枚の透明基板11a及び11bが接着一体化された構成を有する。また、前記着色合わせガラスは、任意の場所にボルト等の取付部材を挿入するためなどに用いられる貫通孔12を有する。
【0015】
(中間膜)
前記着色合わせガラスは、エチレン酢酸ビニル共重合体及び着色剤を含む着色樹脂層を含み、前記着色樹脂層に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの含有量が、前記エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、20〜23質量部、好ましくは20〜21.3質量部であるエチレン酢酸ビニル共重合体及び着色剤を含む着色樹脂層を含む中間膜を用いる。これにより、加熱加圧時の圧力ムラによるフローマークの発生が抑制され、外観特性に優れる着色合わせガラスが得られる。酢酸ビニル含有量が20質量部未満では、溶融粘度が低すぎて製膜性が低い恐れがある。また、酢酸ビニルの含有量が上記範囲内であるエチレン酢酸ビニル共重合体は加熱加圧時の流動性が低いことから、合わせガラスの端部や貫通孔内部へ中間膜が流動してはみ出るのも抑制することが可能となる。
【0016】
前記着色樹脂層に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.8〜2.4g/10分、特に0.8〜2.0g/10分であるのが好ましい。これにより、加熱加圧時の圧力ムラによるフローマークの発生が抑制され、外観特性に優れる着色合わせガラスが得られる。なお、本発明において、エチレン酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートは、JIS K 7210(1976年)で定められた値とする。
【0017】
着色樹脂層は、上述したエチレン酢酸ビニル共重合体に加えて、着色剤を含む。前記着色剤は、顔料、染料など、従来公知のものを使用することができる。
【0018】
前記顔料として、具体的には、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸石灰粉、炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、石膏、アスベスト、クレー、シリカ粉、微粉ケイ酸、珪藻土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、亜鉛華、鉛白、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトポン、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、ミネラルブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、珪酸亜鉛、硫化亜鉛カドミウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、鉛粉、亜鉛末、アントラキノンレッド、イソインドリノンレッド、ディス・アゾ・レッド、ジアニシジンレッド、RKアンタンスロンレッド、ピランスロンオレンジ、GRペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、フラバンスロンイエロー、アントラピリミジンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カドミウムスルフォセレナイド、カドミウムマーキュリー、アイアンオキサイド、ウルトラマリンレッド、クロム錫、ウルトラマリンピンク、ウルトラマリンバイオレット、マンガニーズバイオレット、カドミウムサルファイド、クロムイエロー、モリブデートオレンジ、チタニウムピグメント、セラミックイエロー、コバルトアルミネート、クロム・コバルト・アルミニウム、ウルトラマリンブルー、ウルトラマリングリーン、クロムグリーン、クロミウムオキサイド、セラミックブラックを挙げることができる。
【0019】
また、染料としては、アクリジン染料、アゾ染料、アリザリン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、キサンテン染料、キノリン染料、キノンイミン染料、ジフェニルメタン染料、スチルベン染料、チアゾール染料、トリフェニルメタン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ピラゾロン染料、メチン染料、硫化染料などが挙げられる。上記着色剤は、上述した顔料や染料を、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
これらの中でも、適度な溶融粘度を有する着色樹脂層が得られることから、炭酸カルシウム及び酸化チタンなどの顔料が好ましく挙げられる。
【0021】
前記着色剤の平均粒子径は、0.01〜10μm、特に0.1〜5μm、とするのが好ましい。着色剤の平均粒子径が10μmを超えると、加熱加圧時の中間膜の流動に着色剤がついていくのが困難となり、フローマークが発生し易くなる恐れがある。また、着色剤の平均粒子径が0.01μm未満であると、着色剤が凝集し易く、同様にフローマークが発生し易くなる恐れがある。
【0022】
なお、本発明において、着色剤の平均粒子径は、中間膜の断面を透過型電子顕微鏡により倍率100万倍程度で観測し、少なくとも100個の着色剤の面積円相当径を求めた数平均値とする。
【0023】
前記着色剤の含有量は、着色樹脂層に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.1〜5質量部であるのが好ましい。これにより、フローマークの発生を高く抑制することができる。
【0024】
前記着色樹脂層は、上述したエチレン酢酸ビニル共重合体及び着色剤の他に、さらに架橋剤として有機過酸化物を含むのが好ましい。これにより、エチレン酢酸ビニル共重合体の架橋密度を向上させることができ、優れた接着力を有する中間膜が得られる。
【0025】
前記有機化酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生する有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐火炎熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
【0026】
前記有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から例えば、ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサネート、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンtert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシド、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、等が挙げられる。
【0027】
また、前記ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。また、架橋剤は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
前記着色樹脂層における有機過酸化物の含有量は、エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、好ましくは0.05〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。
【0029】
さらに、前記着色樹脂層は、架橋助剤を必要に応じて含んでいてもよい。前記架橋助剤は、エチレン酢酸ビニル共重合体のゲル分率を向上させ、中間膜の機械的強度を向上させることができる。この目的に供される架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、公知のものとしてトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等も挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの架橋助剤は、エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部で使用される。
【0030】
さらに、前記着色樹脂層は、膜の種々の物性(機械的強度、接着性、透明度等の光学的特性、耐火炎熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整、特に機械的強度の改良のため、必要に応じて、可塑剤、接着向上剤などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0031】
前記可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
【0032】
前記接着向上剤は、シランカップリング剤を用いることができる。前記シランカップリング剤の例として、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。また前記接着向上剤の含有量は、EVA100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。
【0033】
さらに、前記着色樹脂層には、紫外線吸収剤、光安定剤および老化防止剤を含んでいてもよい。
【0034】
前記紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。なお、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0035】
前記光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA−63p、LA−67、LA−68(いずれも株式会社ADEKA製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0036】
前記老化防止剤としては、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
【0037】
前記着色樹脂層の厚さは、2μm〜2mm、特に0.1〜2mmとするのが好ましい。これにより十分な接着性を発揮することができる。
【0038】
本発明の着色合わせガラスにおいて、中間膜は、上述した着色樹脂層のみからなってもよいが、前記着色樹脂層と、エチレン酢酸ビニル共重合体を含み且つ着色剤を含まない少なくとも1層の未着色樹脂層とからなる積層体であるのが好ましい。中間膜には優れた接着性を有することが必要とされ、このためには中間膜が所定の厚さを有する必要がある。上記構成を有する積層体からなる中間膜であれば、少量の着色剤であっても十分に着色でき、これによりフローマークの発生をより高く抑制でき、さらに全体として所定の厚さを有することにより優れた接着性を有する合わせガラスを得ることができる。さらに、着色剤の使用量を低減できることから、合わせガラスの製造コストの低減も可能となる。
【0039】
前記未着色樹脂層に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量が、前記着色樹脂層に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの含有量よりも高いのが好ましい。これにより、前記着色樹脂層と前記未着色樹脂層との溶融粘度の差を小さくすることができ、フローマークの発生を高く抑制することができる。
【0040】
前記未着色樹脂層に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は、具体的には、前記エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、24〜28質量部、特に24〜26質量部とするのが好ましい。
【0041】
前記未着色樹脂層は、エチレン酢酸ビニル共重合体を含むが、この他にも、架橋剤として有機過酸化物、架橋助剤、可塑剤、接着向上剤、紫外線吸収剤、光安定剤、及び老化防止剤のうちの少なくとも1種を必要に応じて含んでいてもよい。これらについての具体的な説明は、着色樹脂層において上述したのと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0042】
中間膜として前記着色樹脂層と前記未着色樹脂層との積層体を用いる場合、前記積層体に含まれる着色樹脂層の厚さは、0.1〜1mm、特に0.1〜0.5mmとするのが好ましい。また、前記未着色樹脂層の厚さは、0.5〜2mm、特に1〜2mmとするのが好ましい。これにより、着色剤の含有量を少なくすることができ、フローマークの発生が高く抑制され、且つ十分に着色された合わせガラスが得られる。さらに、未着色樹脂層が所定の厚さを有することにより、優れた接着性を確保することができる。
【0043】
前記積層体において、前記未着色樹脂層の厚さが0.5〜2mm、特に1〜2mmの範囲内であれば、前記未着色樹脂層は薄い未着色樹脂層を複数積層させたものからなってもよい。例えば、着色樹脂層上に、厚さが0.1〜0.5mmである薄い未着色樹脂層を2〜5個積層させたものであってもよい。
【0044】
上述した着色樹脂層及び未着色樹脂層を作製するには、EVAの他、上述した各主成分を必要に応じて加温しながらロールミルにて混練し、これにより得られた混合物を押出成形、カレンダー成形、Tダイ成形等の成膜方法にてシート状に成形する方法が用いられる。あるいは前記混合物を適当な溶剤によって溶かして溶液状にし、この溶液をロールコーター、あるいはナイフコーター、ドクターブレードのような塗布機を用いて適当な支持体上に塗布し、乾燥させてシート状に成形する方法を用いることができる。尚、製膜時の加熱温度は、40〜90℃、特に50〜80℃とするのが好ましい。
【0045】
(透明基板)
本発明の合わせガラスに用いられる2枚の透明基板は、同一の透明基板を用いてもよく、異なる透明基板を組み合わせて用いてもよい。透明基板の強度と合わせガラスの用途とを考慮して、透明基板の組み合わせを決定するのが好ましい。
【0046】
なお、本発明において、合わせガラスにおける「ガラス」とは透明基板全般を意味するものであり、したがって「合わせガラス」とは透明基板に少なくとも中間膜を挟着してなるものを意味する。
【0047】
前記透明基板としては、特に限定されないが、例えば珪酸塩ガラス、無機ガラス板、無着色透明ガラス板などのガラス板の他、プラスチックフィルムを用いてもよい。前記プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンアフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンブチレートフィルムを挙げることができ、PETフィルムが好ましい。透明基板の厚さは、1〜20mm程度が一般的である。
【0048】
本発明の着色合わせガラスは、貫通孔を有する。前記貫通孔としては、取付部材用貫通孔などが挙げられる。例えば、この貫通孔にボルト及びナットなどの取付部材を挿通して、乗物や建築物の窓枠などの躯体と着色合わせガラスとを締め付けて、着色合わせガラスを躯体に取り付ける方法などが用いられる。また、取付部材用貫通孔に取付部材を挿通して合わせガラス同士を接合することもできる。取付部材としてはボルト及びナット以外にも、従来公知のものを使用することができ、例えば、皿ボルト、ケーブル、ロッドなどが挙げられる。
【0049】
前記貫通孔は、取付部材や着色合わせガラスを取り付ける対象物に合わせて、着色合わせガラスの任意の部位に設けられていればよい。例えば、四角形状の着色合わせガラスの四隅に貫通孔が設けられていてもよい。
【0050】
二枚の透明基板において貫通孔の直径は、同一であるのが好ましい。また、図1に示すように、二枚の透明基板のうちの一方において、取付部材の形状等に合わせて、内側から外側に向かって順次径が大きくなるように、貫通孔12が形成されていてもよい。
【0051】
本発明の着色合わせガラスは、中間膜が二枚の透明基板の間に挟持され、接着一体化された構成を有する。このような合わせガラスを作製するには、上述した透明基板、中間膜、及び透明基板をこれらの順に積層した後、積層体を脱気し、加熱下に押圧することにより、中間膜に含まれるEVAを架橋硬化して、各層を接着一体化することにより得られる。
【0052】
貫通孔の形成順序は特に制限されない。例えば、前記積層体を形成する前に各部材に貫通孔を形成し、これらの位置を合わせて各部材を積層することにより貫通孔を有する積層体を作製してもよい。また、各部材を積層して積層体を得た後に、この積層体に貫通孔を形成してもよい。貫通孔を形成するには、ドリルなどの穿孔工具を用いて行えばよい。
【0053】
前記積層体の接着一体化は、前記積層体を、一般に100〜150℃、特に140℃付近で、10分〜120分、好ましくは10分〜60分、加熱処理することにより行われる。前記架橋は、例えば80〜120℃の温度で予備圧着した後に行われてもよい。前記加熱処理は、例えば140℃で10〜30分間(雰囲気温度)が特に好ましい。また、前記加熱処理は0〜800KPaのプレス圧力を積層体に加えながら行うのが好ましい。架橋後の積層体は一般に室温で行われるが、特に、冷却は速いほど好ましい。
【0054】
上述した本発明の第一の合わせガラスは、フローマークの発生が抑制されることにより外観特性に優れ、貫通孔を有することから、以下のような用途に好適に使用することができる。すなわち、自動車の嵌め込みガラス、サイドガラス及びリヤガラス、鉄道車両、例えば普通車両、急行車両、特急車両及び寝台車両等の乗客出入り用開閉ドアの扉ガラス、窓ガラス及び室内ドアガラス、ビル等の建物における窓ガラス及び室内ドアガラス等、室内展示用ショーケース及びショーウィンドウ、水槽などである。しかしながら、用途がこれらに限定されるわけでなない。
【0055】
本発明の着色合わせガラスに用いられる中間膜は、上述した通り、加熱加圧時に合わせガラスに加わる圧力にムラが生じやすい合わせガラスに用いられることで、フローマークの発生が抑制された効果を発揮することができる。したがって、前記中間膜の用途としては、貫通孔が形成された着色合わせガラスの他にも、加熱加圧時に圧力ムラが生じやすい形状を有する着色合わせガラスにも好適に使用できる。
【0056】
このような着色合わせガラスとして具体的には、上述した第一の着色合わせガラスと同様に、エチレン酢酸ビニル共重合体及び着色剤を含む着色樹脂層を含む中間膜を介して2枚の透明基板が接着一体化されてなり、着色合わせガラスの外周輪郭が、三角形又は五角形以上の多角形状(例えば三角形、五角形、六角形、七角形、八角形)、円形状、楕円形状、半円形状、扇形状、数字形状、文字形状(例えば、平仮名、カタカナ、アルファベット、漢字)、花形状、星形状、三日月形状、雲形状、植物形状(例えば、野菜、果物)、動物形状(例えば、犬、猫、イルカ、昆虫)、人形状、建築物形状(例えば、城)、乗物形状(例えば、自動車、電車、飛行機、船、オートバイ)、ハート形状、スペード形状、又はクローバー形状を有する構成を有するものである。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により説明する。本発明は、以下の実施例により制限されるものではない。
【0058】
(実施例1A)
1.中間膜(着色樹脂層のみ)の作製
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA100質量部に対する酢酸ビニル含有量20質量部、メルトフローレート2.0g/10分)と、着色剤(CaCO3、平均粒子径2.0μm)とを、質量比85:5で、ヘンシェルミキサーに入れ、3分間撹拌混合した。得られた混合物を、2軸押し出し機を使用して85℃で混練押し出してペレット化することにより、樹脂ペレットを得た。
【0059】
下記に示す配合で各材料をロールミルに供給して80℃で混練し、得られた組成物をカレンダロール温度80℃、加工速度5m/分で、カレンダ成形し、放冷することにより、着色樹脂層(厚さ0.4mm)からなる中間膜を作製した。
【0060】
配合;
樹脂ペレット100質量部、
架橋剤(ベンゾイルパーオキサイド)2.2質量部、
架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート)2質量部、
シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)1質量部、
紫外線吸収剤(2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)0.1質量部。
【0061】
2.合わせガラスの作製
予め貫通孔(直径36mm)が開けられた2枚のガラス板(厚さ3mm)の間に上記で作製した中間膜を挟み、ガラス板が有する貫通孔に挿入体を挿入することにより、ガラス板の貫通孔に合わせて中間膜にも貫通孔を形成した。これにより得られた積層体をオートクレーブに入れ、予備圧着(90℃、真空度760mmHgで60分間)をした後、仮接着(110℃、真空度760mmHgで30分間)及び本圧着(135℃、常圧で30分間)を行うことにより、合わせガラスを得た。
【0062】
(実施例2A、3A、及び比較例1A〜3A)
中間膜(着色樹脂層)に使用するEVAとして表1に示す酢酸ビニル含有量(EVA100質量部に対する酢酸ビニル含有量)を有するものを使用した以外は、実施例1Aと同様にして合わせガラスを作製した。
【0063】
(実施例1B)
1.中間膜(着色樹脂層及び未着色樹脂層の積層体)の作製
下記に示す配合で各材料をロールミルに供給して80℃で混練し、得られた組成物をカレンダロール温度80℃、加工速度5m/分で、カレンダ成形し、放冷することにより、未着色樹脂層(厚さ0.4mm)を作製した。
【0064】
配合;
EVA(EVA100質量部に対する酢酸ビニル含有量25質量部、メルトフローレート2.4g/10分)100質量部、
架橋剤(ベンゾイルパーオキサイド)2.5質量部、
架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート)2質量部、
シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)0.5質量部、
紫外線吸収剤(2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)0.15質量部。
【0065】
次に、実施例1Aと同様にして作製した着色樹脂層上に、上記で作製した未着色樹脂層を3層積層させることにより、中間膜を作製した。
【0066】
2.合わせガラスの作製
予め貫通孔(直径36mm)が開けられた2枚のガラス板(厚さ3mm)の間に上記で作製した中間膜を挟み、ガラス板が有する貫通孔に挿入体を挿入することにより、ガラス板の貫通孔に合わせて中間膜にも貫通孔を形成した。これにより得られた積層体をオートクレーブに入れ、予備圧着(90℃、真空度760mmHgで60分間)をした後、仮接着(110℃、真空度760mmHgで30分間)及び本圧着(135℃、常圧で30分間)を行うことにより、合わせガラスを得た。
【0067】
(実施例2B、3B、及び比較例1B〜3B)
中間膜における着色樹脂層に使用するEVAとして表2に示す酢酸ビニル含有量(EVA100質量部に対する酢酸ビニル含有量)を有するものを使用した以外は、実施例1Bと同様にして合わせガラスを作製した。
【0068】
(評価)
1.フローレート発生の有無
上記で作製した各合わせガラスについて、フローレートの発生の有無を、目視により評価した。取付部材用貫通孔の周辺に年輪状の縞からなるフローレートの発生の有無を表1に示す。
【0069】
2.中間膜のはみ出しの有無
上記で作製した各合わせガラスについて、中間膜のはみ出しの有無を、目視により評価した。表1に結果を示す。表1において、中間膜のはみ出した部分が5mm以上あったものを「有り」とし、中間膜のはみ出した部分が5mm未満であったものを「無し」とした。
【0070】
3.中間膜の製膜性
上記で作製した各合わせガラスにおける中間膜の製膜性を、目視により評価した。合わせガラスにおける中間膜が、外観及び生産性に関して少なくとも一方でも劣悪と判断したものの製膜性を「×」とし、外観及び生産性の双方が良好であったものの製膜性を「〇」として、表1に結果を示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の着色合わせガラスの部分断面図を示す。
【符号の説明】
【0074】
10 中間膜、
11a、11b 透明基板、
12 貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン酢酸ビニル共重合体及び着色剤を含む着色樹脂層を含む中間膜を介して2枚の透明基板が接着一体化されてなり、貫通孔を有する着色合わせガラスであって、
前記エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの含有量が、前記エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、20〜23質量部であることを特徴とする着色合わせガラス。
【請求項2】
前記エチレン酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが、0.8〜2.4g/10分であることを特徴とする請求項1に記載の着色合わせガラス。
【請求項3】
前記着色剤が、炭酸カルシウム及び/又は酸化チタンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の着色合わせガラス。
【請求項4】
前記着色剤の平均粒子径が、0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の着色合わせガラス。
【請求項5】
前記着色剤の含有量が、前記エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の着色合わせガラス。
【請求項6】
前記中間膜が、前記着色樹脂層と、エチレン酢酸ビニル共重合体を含み且つ着色剤を含まない少なくとも1層の未着色樹脂層とからなる積層体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の着色合わせガラス。
【請求項7】
前記未着色樹脂層に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの含有量が、前記着色樹脂層に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの含有量よりも高いことを特徴とする請求項6に記載の着色合わせガラス。
【請求項8】
前記未着色樹脂層に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が、前記エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量100質量部に対して、24〜28質量部であることを特徴とする請求項6又は7に記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記貫通孔が、取付部材用貫通孔であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の合わせガラス。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−143779(P2009−143779A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324462(P2007−324462)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】