説明

着色硬化性組成物、カラーフィルタおよびその製造方法、固体撮像素子、並びに液晶表示装置

【課題】ザラツキや色むらのない青色硬化性組成物を提供する。
【解決手段】結晶型がα型であり、400〜500nmにおける透過率の極大値が475nmより短波領域にある銅フタロシアニン顔料と、オキシム重合開始剤と、重合性化合物と、溶剤とを含む青色硬化性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色硬化性組成物、カラーフィルタおよびその製造方法、固体撮像素子、並びに液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD等)や固体撮像素子(CCD、CMOSなど)に用いられるカラーフィルタを作製する方法として、顔料分散法が広く知られている。
【0003】
顔料分散法は、顔料を種々の硬化性組成物に分散させた着色硬化性組成物を用いてフォトリソ法によってカラーフィルタを作製する方法である。これは、フォトリソ法によってパターニングするため、位置精度が高く、大画面、高精細のカラーフィルタを作製するのに好適な方法とされている。顔料分散法によりカラーフィルタを作製する場合、ガラス基板上に硬化性組成物をスピンコーターやロールコーターなどにより付与して塗膜を形成し、該塗膜をパターン露光・現像することによって着色画素が形成され、この操作を各色毎に繰り返し行なうことでカラーフィルタが得られる。
【0004】
着色硬化性組成物に使用する顔料としては、例えば、特許文献1に記載のフタロシアニン顔料が知られている。フタロシアニン系顔料として具体的には、α、β、γ、εなどの結晶型を有する銅フタロシアニンが挙げられる。銅フタロシアニンは、結晶型毎に耐熱性、耐水性、耐溶剤性、耐光性などの堅牢性、透過スペクトルや吸収スペクトルなどの光学特性、見た目の色身などが異なるため、用途により使い分けられてきた。
例えば、カラーフィルタ用としては、微細で均一な粒子を有するε型銅フタロシアニンが使用されている。しかし、ε型銅フタロシアニンの作製には、多くの工程や多大なエネルギーを要する工程を経なければならないという問題点がある。
一方、従来のα型銅フタロシアニンは、アシッドペースティング法などにより、比較的簡便に作製できることが知られている。しかし、この方法によって得られるα型銅フタロシアニンは、粗大粒子が含まれているため色むらを発生し、透明性や着色力が低くなるなどの問題が生じてしまう。
【0005】
顔料を用いたカラーフィルタを設けて液晶表示装置や固体撮像素子などの表示素子を作製する場合、コントラスト向上の点から、より微小な粒子サイズの顔料が求められるようになっている。特に、固体撮像素子用のカラーフィルタにおいては、近年、更なる高解像度化が望まれている。
【0006】
これらの問題に対して、新たな特性を有するα型銅フタロシアニンを作製するための提案がなされている(例えば、特許文献2および3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−33616号公報
【特許文献2】特許第4461304号明細書
【特許文献3】特開2008−274062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、顔料分散法に使用しうる着色硬化性組成物については、カラーフィルタの更なる高解像度化や、性能向上のために、より一層の改良が望まれているのが現状である。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、ザラツキや色むらのない青色硬化性組成物を提供することを目的とし、この目的の達成することを第1の課題とする。ここで、ザラツキとは、比較的粗大な顔料粒子や粒子の凝集、また組成物の相分離などにより生じる、着色硬化膜の光透過性の不均一に起因する輝度分布であると推定される。
また、ザラツキや色むらのない優れたカラーフィルタと該カラーフィルタの製造方法、および該カラーフィルタを備えた色再現性に優れた固体撮像素子及び液晶表示装置を提供することを目的とし、この目的を達成することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 結晶型がα型であり、400〜500nmにおける透過率の極大値が475nmより短波領域にある銅フタロシアニン顔料と、オキシム重合開始剤と、重合性化合物と、溶剤とを含む青色硬化性組成物。
<2> さらに、下記一般式(I)で表されるジピロメテン化合物と金属原子または金属化合物とから得られるジピロメテン金属錯体化合物またはその互変異性体を含む<1>に記載の青色硬化性組成物。
【化1】


一般式(I)中、RからRは各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。
<3> 前記ジピロメテン金属錯体化合物またはその互変異性体が、下記一般式(II)で表される化合物またはその互変異性体である<2>に記載の青色硬化性組成物。
【化2】


一般式(II)中、R〜RおよびRは各々独立に、水素原子または1価の置換基を表し、R10およびR11は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アニリノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。但し、R〜R、R10、R11のいずれかの置換基が2価の連結基となって−L−または−L−と結合しているか、R〜R、R10、R11のいずれかの置換基が単結合となって、−L−または−L−が直接ジピロメテン骨格に置換している。Maは、金属または金属化合物を表す。Xは、Maの電荷の中和に必要な基を表し、rは0、1または2を表す。X、Xは各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、YおよびYは各々独立に、NR(Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)、または酸素原子を表し、R10とYは、互いに結合して、5員、6員または7員の環を形成していてもよく、R11とYとが互いに結合して5員、6員または7員の環を形成していてもよい。Mは、水素原子、−COの電荷を中和するのに必要な有機塩基若しくは金属原子を表す。ただし、電荷の中和が不要である場合は、Mは存在しない。Lは、単結合または(m+1)価の連結基を表す。mは1、2または3を表し、pは1または2を表す。Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは酸素原子またはNR(Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)を表す。Lは単結合または(n+1)価の連結基を表し、nは1、2または3を表し、qは1または2を表す。pが2のとき、複数の{(L)−(CO}は同一でも異なっていてもよい。qが2のとき、複数の{(L)−(Q−COC(R)=CH}は同一でも異なっていてもよい。mが2または3のとき、複数の(COM)は同一でも異なっていてもよい。nが2または3のとき、複数の(Q−COC(R)=CH)は同一でも異なっていてもよい。
<4> さらに、ジオキサジン顔料Pigment Violet 23を含む<1>から<3>のいずれかに記載の青色硬化性組成物。
<5> 前記銅フタロシアニン顔料の微粒子の形状が球状である<1>に記載の青色硬化性組成物。
<6> 前記銅フタロシアニン顔料が、該顔料の良溶媒に溶解させた溶解液と、該顔料の貧溶媒とを混合することにより得られる粒子状顔料である<1>または<5>のいずれかに記載の青色硬化性組成物。
<7> 前記良溶媒が、酸または酸にその他の溶媒を含有する溶媒である<6>に記載の青色硬化性組成物。
<8> 前記貧溶媒が、純水である<6>に記載の青色硬化性組成物。
<9> 支持体上に、<1>から<8>のいずれかに記載の青色硬化性組成物を付与して青色硬化性組成物層を形成する工程(A)と、該工程(A)にて形成された青色硬化性組成物層を、マスクを介して露光した後、現像して着色パターンを形成する工程(B)とを有するカラーフィルタの製造方法。
<10> <9>に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されたカラーフィルタ。
<11> <9>に記載のカラーフィルタを備えた固体撮像素子。
<12> <9>に記載のカラーフィルタを備えた液晶表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ザラツキがなく、色むらのない青色硬化性組成物を提供することができる。
さらに、本発明によれば、ザラツキがなく、色むらのないカラーフィルタおよびその製造方法、および該カラーフィルタを備えた色再現性の高い固体撮像素子及び液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪青色硬化性組成物≫
まず、本発明の青色硬化性組成物について説明する。
本発明の青色硬化性組成物は、結晶型がα型であり、400〜500nmにおける透過率の極大値が475nmより短波領域にある銅フタロシアニン顔料と、オキシム重合開始剤と、重合性化合物と、溶剤とを含む。
青色硬化性組成物としては、銅フタロシアニン顔料を使用することが効果的である。しかしながら、従来の結晶型がα型の銅フタロシアニン顔料は粗大粒子を含むため、ザラツキや色むらなどが生じ、青色硬化性組成物として劣る傾向がある。
そこで、本発明者らは鋭意検討の結果、青色硬化性組成物中における着色剤として、結晶型がα型であり、400〜500nmにおける透過率の極大値が475nmより短波領域にある銅フタロシアニン顔料およびオキシム重合開始剤を用いることにより、ザラツキや色むらといった問題点を解消できるとの知見を得、この知見に基づき本発明を完成した。
従って本発明に従えばザラツキおよび色むらの少ない青色硬化性組成物を得ることができる。
以下、本発明の青色硬化性組成物の各成分について説明する。
【0013】
<銅フタロシアニン顔料>
本発明の青色硬化性組成物は、結晶型がα型であり、400〜500nmにおける透過率の極大値が475nmより短波領域にある銅フタロシアニン顔料(以下、適宜「銅フタロシアニン顔料」と称する)を含む。
本発明に用いる銅フタロシアニン顔料は、下記の物理化学的性質のいずれかで特徴付けられる。
(1)粉末X線回折パターンにおいて、6.8±0.1°に回折ピーク(2θ)を有する;
(2)示差走査熱量測定において、約510℃付近に吸熱ピークを有する;および/または、
(3)赤外吸収スペクトルにおいて、1117±2.0、1089±2.0、1066±2.0、941±2.0、863±2.0または717±2.0cm−1に吸収ピークを有する。
粉末X線回折測定にはPANalytical社製の全自動多目的X線回折装置(X‘Pert PRO MPD)を用いた。測定条件は、Cu対陰極、管電圧45 kV、管電流40 mA、走査速度1.6 °/minである。示差熱重量同時測定(TG/DTA)には、TG/DTA6300(セイコーインスツル(株)製)を用いた。測定条件は、アルミナ粉末をリファレンスに用いて、昇温速度20℃/minである。赤外吸収スペクトル(FT-IR)の測定は、FT/IR-4100 type A(日本分光(株)製)を用いた。測定条件は、ATR法を用い、分解能4.0 cm-1、積算回数16回である。
本発明に用いる銅フタロシアニン顔料は、その平均粒子径が、長径で100nm以下であり、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは30nm以下である。
本発明に用いる銅フタロシアニン顔料は、その微粒子の形状が球状であり、真球状である必要はなく、長径と短径の比が0.75から1.5、好ましくは0.8から1.3である。
【0014】
本発明に用いる銅フタロシアニン顔料は、銅フタロシアニン顔料の良溶媒に溶解させた溶解液と、銅フタロシアニン顔料の貧溶媒とを混合することなどにより得られる粒子状顔料である。具体的には銅フタロシアニン顔料を良溶媒に溶解させた溶液(銅フタロシアニン顔料溶液)と貧溶媒(第2溶媒)とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、銅フタロシアニン顔料溶液を第2溶媒に噴流して混合することが好ましく、その際に第2溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。さらに供給管を介してポンプで液中に連続供給することが好ましい。供給管の内径は0.1〜200mmが好ましく0.2〜100mmがより好ましい。供給管から液中に供給される速度としては1〜10000ml/minが好ましく、5〜5000ml/minがより好ましい。
【0015】
また、銅フタロシアニン顔料の良溶媒に溶解させた溶解液と、銅フタロシアニン顔料の貧溶媒とを、それぞれ異なる枝流路から幹流路内に導入して混合し、粒子を析出させて粒子状の銅フタロシアニン顔料を得る方法が好ましい。
【0016】
銅フタロシアニン顔料溶液と第2溶媒との混合に当り、レイノルズ数を調節することにより、析出生成させる銅フタロシアニン顔料ナノ粒子の粒子径を制御することができる。ここでレイノルズ数は流体の流れの状態を表す無次元数であり次式で表される。
Re=ρUL/μ ・・・ 数式(1)
数式(1)中、Reはレイノルズ数を表し、ρは銅フタロシアニン顔料溶液の密度[kg/m]を表し、Uは銅フタロシアニン顔料溶液と第2溶媒とが出会う時の相対速度[m/s]を表し、Lは銅フタロシアニン顔料溶液と第2溶媒とが出会う部分の流路もしくは供給口の等価直径[m]を表し、μは銅フタロシアニン顔料溶液の粘性係数[Pa・s]を表す。
等価直径Lとは、任意断面形状の配管の開口径や流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径をいう。等価直径Lは、配管の断面積をA、配管のぬれぶち長さ(周長)または流路の外周をpとすると下記数式(2)で表される。
L=4A/p ・・・ 数式(2)
【0017】
配管を通じて銅フタロシアニン顔料溶液を第2溶媒中に注入して粒子を形成することが好ましく、配管に円管を用いた場合には等価直径は円管の直径と一致する。例えば、液体供給口の開口径を変化させて等価直径を調節することができる。等価直径Lの値は特に限定されないが、例えば、上述した供給口の好ましい内径と同義である。
銅フタロシアニン顔料溶液と第2溶媒とが出会う時の相対速度Uは、両者が出会う部分の面に対して垂直方向の相対速度で定義される。すなわち、例えば静止している第2溶媒中に銅フタロシアニン顔料溶液を注入して混合する場合は、供給口から注入する速度が相対速度Uに等しくなる。相対速度Uの値は特に限定されないが、例えば、0.5〜100m/sとすることが好ましく、1.0〜50m/sとすることがより好ましい。
銅フタロシアニン顔料溶液の密度ρは、選択される材料の種類により定められる値であるが、例えば、0.8〜2.0kg/mであることが実際的である。また、銅フタロシアニン顔料溶液の粘性係数μについても用いられる材料や環境温度等により定められる値であるが、その好ましい範囲は、上述した銅フタロシアニン顔料溶液の好ましい粘度と同義である。
【0018】
レイノルズ数(Re)の値は、小さいほど層流を形成しやすく、大きいほど乱流を形成しやすい。例えば、レイノルズ数を60以上で調節して銅フタロシアニン顔料ナノ粒子の粒子径を制御して得ることができ、100以上とすることが好ましく、150以上とすることがより好ましい。レイノズル数に特に上限はないが、例えば、100000以下の範囲で調節して制御することで良好な銅フタロシアニン顔料ナノ粒子を制御して得ることができ好ましい。あるいは、得られるナノ粒子の平均粒径が60nm以下となるようにレイノルズ数を高めた条件としてもよい。このとき、上記の範囲内においては、通常レイノルズ数を高めることで、より粒径の小さな銅フタロシアニン顔料ナノ粒子を制御して得ることができる。
【0019】
銅フタロシアニン顔料溶液と第2溶媒との混合比は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。銅フタロシアニン顔料微粒子を析出させた場合の液中の粒子濃度は特に制限されないが、溶媒1000mlに対して銅フタロシアニン顔料微粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。また、銅フタロシアニン顔料微粒子を生成させる際の調製スケールは、特に限定されないが、第2溶媒の混合量が10〜2000Lの調製スケールであることが好ましく、50〜1000Lの調製スケールであることがより好ましい。
【0020】
銅フタロシアニン顔料微粒子ないしは微細色素物質の粒径に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、質量平均、体積平均等)などがあり、本発明においては、特に断りのない限り、平均粒径とは体積加重平均によるものをいう。
本発明において銅フタロシアニン顔料微粒子(一次粒子)の平均粒径は体積加重平均で1nm〜1μmであることが好ましく、1〜200nmであることがより好ましく、2〜100nmであることがさらに好ましく、5〜80nmであることが特に好ましい。なお形成される粒子は結晶質粒子でも非晶質粒子でもよく、またはこれらの混合物でもよい。
また、粒子の単分散性を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いる。本発明において銅フタロシアニン顔料微粒子(一次粒子)の単分散性、つまりMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
【0021】
銅フタロシアニン顔料微粒子の粒径の測定方法としては、顕微鏡法、質量法、光散乱法、光遮断法、電気抵抗法、音響法、動的光散乱法が挙げられ、顕微鏡法、動的光散乱法が特に好ましい。顕微鏡法に用いられる顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などが挙げられる。動的光散乱法による粒子測定装置として、例えば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−7000シリーズなどが挙げられる。
【0022】
銅フタロシアニン顔料微粒子を析出させ分散液を調製するに当り、銅フタロシアニン顔料溶液及び第2溶媒の少なくとも一方に、少なくとも第2溶媒が良溶媒(第2溶媒に対する溶解度が4.0質量%以上)となるような化合物(以下、粒径調整剤と称することがある)を含有させてもよい。
高分子粒径調整剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩/ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアリルアミン系モノマー/SO共重合体、ジアリルアミン塩酸塩/マレイン酸共重合体、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体、縮合ナフタレンスルホン酸塩、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩/ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアリルアミン系モノマー/SO共重合体などが好ましい。これら粒径調整剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。質量平均分子量が1,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることが特に好ましい。
【0023】
アニオン性の粒径調整剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号公報に記載されているものが好ましい。これらアニオン性の粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
カチオン性の粒径調整剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンのカチオン性物質の塩が挙げられる。これらカチオン性粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
両イオン性の粒径調整剤は、前記アニオン性の粒径調整剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性の粒径調整剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する粒径調整剤である。
【0025】
ノニオン性の粒径調整剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性の粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
粒径調整剤の含有量は、銅フタロシアニン顔料微粒子の粒径制御をより一層向上させるために、銅フタロシアニン顔料に対して0.1〜100質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜50質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜20質量%の範囲である。また粒径調整剤は、単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
微細色素物質における銅フタロシアニン顔料微粒子は、良溶媒に溶解した銅フタロシアニン顔料溶液と貧溶媒との接触により析出させて得られたビルドアップ銅フタロシアニン顔料微粒子であることが好ましく、バルク顔料を粉砕等して得られるブレイクダウン銅フタロシアニン顔料粒子よりも好ましい。
【0027】
微細色素物質は、銅フタロシアニン顔料微粒子と上記一般式(I)で表わされる化合物を含有するものであれば特に限定されないが、上記の銅フタロシアニン顔料微粒子を析出させた混合液から溶媒分(良溶媒(第1溶媒)及び貧溶媒(第2溶媒))の一部または全部を除去したものであることが好ましい。本発明において銅フタロシアニン顔料微粒子に対する一般式(I)で表される化合物の存在状態は特に制限はなく、銅フタロシアニン顔料微粒子の表面に吸着した状態、一部又は全てが銅フタロシアニン顔料微粒子に取り込まれた状態、あるいは銅フタロシアニン顔料微粒子と固溶体を形成した状態、いずれも好ましい。しかしながらより高い効果を発現するためには一般式(I)で表される化合物の少なくとも一部が銅フタロシアニン顔料粒子表面に存在することが望ましく、銅フタロシアニン顔料微粒子の表面に吸着した状態、あるいは部分的に銅フタロシアニン顔料微粒子に取り込まれた状態が好ましい。
【0028】
銅フタロシアニン顔料微粒子析出後の混合液からの溶媒分の除去工程としては、特に限定されないが、例えば、フィルタなどによりろ過する方法、遠心分離によって銅フタロシアニン顔料微粒子を沈降させて濃縮する方法などが挙げられる。
フィルタろ過の装置は、例えば、減圧あるいは加圧ろ過のような装置を用いることができる。好ましいフィルタとしては、ろ紙、ナノフィルタ、ウルトラフィルタなどを挙げることができる。
【0029】
遠心分離機は銅フタロシアニン顔料微粒子を沈降させることができればどのような装置を用いてもよい。例えば、汎用の装置の他にもスキミング機能(回転中に上澄み層を吸引し、系外に排出する機能)付きのものや、連続的に固形物を排出する連続遠心分離機などが挙げられる。遠心分離条件は、遠心力(重力加速度の何倍の遠心加速度がかかるかを表す値)で50〜10000が好ましく、100〜8000がより好ましく、150〜6000が特に好ましい。遠心分離時の温度は、分散液の溶剤種によるが、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましく、0〜60℃が特に好ましい。
また、溶媒分の除去工程として、真空凍結乾燥により溶媒を昇華させて濃縮する方法、加熱ないし減圧による溶媒を乾燥させて濃縮する方法、それらを組合せた方法などを用いることもできる。
【0030】
上記微細色素物質は、第1溶媒と異なる組成の分散溶媒(第3溶媒)を用いて色素物質分散物(以下、単に色素分散物ということがある。)とすることができる。
第3溶媒の種類は特に限定されないが、有機溶媒であることが好ましく、例えば、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒が好ましい。該第3溶媒は上記溶媒による純溶媒であっても、複数の溶媒による混合溶媒であってもよい。
【0031】
なお、本発明においては、上記の第3溶媒に限らず後述する第4溶媒を含め、分散物の媒体とされる、前記良溶媒(第1溶媒)及び前記貧溶媒(第2溶媒)のいずれとも異なる溶媒を総称して「第3溶媒」という。
【0032】
エーテル系溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、2−(1−メトキシ)プロピルアセテート、酢酸エチル、乳酸エチルなどが挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えばメチルエーテルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0033】
なかでも、乳酸エチル、酢酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートが好ましく、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートがより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。なお第3溶媒が第1溶媒もしくは第2溶媒と同じものであることはない。
第3溶媒の添加量は特に限定されないが、銅フタロシアニン顔料微粒子100質量部に対して、100〜300000質量部であることが好ましく、500〜10000質量部であることがより好ましい。
【0034】
銅フタロシアニン顔料微粒子は例えばビヒクル中で分散させた状態で用いることができる。前記ビヒクルとは、塗料でいえば、液体状態にあるときに銅フタロシアニン顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を固める部分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。なお本発明においては、銅フタロシアニン顔料微粒子形成時に用いる高分子化合物および/または再分散化に用いる銅フタロシアニン顔料分散剤を総称してバインダーと称する。再分散化後の銅フタロシアニン顔料微粒子の分散物の銅フタロシアニン顔料微粒子濃度は目的に応じて適宜定められるが、好ましくは分散物全量に対して銅フタロシアニン顔料微粒子が2〜30質量%であることが好ましく、4〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。上記のようなビヒクル中に分散させる場合に、バインダーおよび溶解希釈成分の量は銅フタロシアニン顔料の種類などにより適宜定められるが、分散物全量に対して、バインダーは1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。溶解希釈成分は5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。
【0035】
色素分散物における銅フタロシアニン顔料微粒子の含有量は特に限定されないが、1.0〜35.0質量%であることが好ましく、5.0〜25.0質量%であることがより好ましい。
色素物質を第3の溶媒に再分散させるとき、別の分散剤等を添加しなくても、第3の溶媒中で銅フタロシアニン顔料微粒子の凝集状態が自発的に解かれ媒体中に分散する性質を有し、この性質があることを「自己分散しうる」ないし「自己分散性を有する」という。ただし、本発明において再分散性を一層向上させるために、色素物質の再分散時に銅フタロシアニン顔料分散剤等を添加してもよい。
【0036】
このような凝集状態にある微細色素物質を再分散する方法として、例えば超音波による分散方法や物理的なエネルギーを加える方法を用いることができる。用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、ナノ粒子の熱凝集が起こるため、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御、などによって行うことができる。
【0037】
物理的なエネルギーを加えて色素物質を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の分散機が挙げられる。また、高圧分散法や、微小粒子ビーズの使用による分散方法も好適なものとして挙げられる。
色素分散物には、銅フタロシアニン顔料の分散性をより向上させる目的で、従来から公知の銅フタロシアニン顔料分散剤や界面活性剤等の分散剤などを本発明の効果を損なわない限りにおいて加えることもできる。
【0038】
銅フタロシアニン顔料分散剤としては、高分子分散剤(例えば、直鎖状高分子、ブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等)、銅フタロシアニン顔料誘導体等を挙げることができる。分散剤は、銅フタロシアニン顔料の表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用する。そのため、銅フタロシアニン顔料表面へのアンカー部位を有するブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子が好ましい構造として挙げることができる。一方で、銅フタロシアニン顔料誘導体は銅フタロシアニン顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
高分子化合物の例として、ブロック型高分子としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−2000、2001」、EFKA社製「EFKA4330、4340」(いずれも商品名)等を挙げることができる。グラフト型高分子の例としては、ルーブリゾール社製「ソルスパース24000、28000、32000、38500、39000、55000」、BYK Chemie社製「Disperbyk−161、171、174」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0039】
末端変性型高分子の例としては、ルーブリゾール社製「ソルスパース3000、17000、27000」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
【0040】
本発明において、良溶媒とは銅フタロシアニン化合物を溶解しうる良溶媒と定義し、0.1質量%以上溶解することが好ましく、0.5質量%以上溶解することがより好ましく、1%質量以上溶解することが特に好ましい。
銅フタロシアニン化合物を溶解する酸または酸にその他の溶媒を含有する溶媒は、銅フタロシアニン化合物を溶解することができれば特に限定されないが、硫酸などの無機酸や有機酸が好ましく、アルキルスルホン酸、アルキルカルボン酸、ハロゲン化アルキルスルホン酸、ハロゲン化アルキルカルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族カルボン酸、またはこれら2種以上の混合溶媒が、より好ましく、アルキルスルホン酸または芳香族スルホン酸がさらに好ましく、メタンスルホン酸が特に好ましい。
【0041】
酸と組み合わせる溶媒としては、例えば、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、エステル化合物溶媒などが好ましい。酸溶媒には、不可避的なものを除き水を含有しないことが好ましい。
スルホキシド化合物溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0042】
また、酸溶媒に対する銅フタロシアニン化合物の濃度としては、0.1〜50質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
銅フタロシアニン化合物溶液の調製条件に特に制限はないが、常圧での温度は5〜150℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。また、圧力は常圧下で行うのが一般的であるが、例えば100kPa〜3000kPa(1atm〜30atm)の範囲の圧力下で調製を行うこともできる。
【0043】
本発明において貧溶媒とは銅フタロシアニン化合物が溶解しにくい溶媒と定義し、その溶解度が0.01質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以下であることが特に好ましい。
【0044】
本発明において貧溶媒としては、純水や以下に示すような有機溶媒が好ましく、特に純水が好ましい。
本発明において貧溶媒として用いられる前記の有機溶媒は(以下、有機貧溶媒ということもある。)、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、二硫化炭素、脂肪族系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、イオン性溶液またはこれら2種以上の混合溶媒から選択されることが好ましい。
【0045】
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。
【0046】
ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
脂肪族系溶媒としては、例えば、アルキレンカーボネートが挙げられる。
芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。
ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。
【0047】
スルホキシド化合物溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。
エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。
イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPF6−との塩などが挙げられる。
【0048】
有機貧溶媒は、誘電率20以上の溶媒であることが好ましく、例えば、アルコール化合物、アルキレンカーボネート化合物、ニトリル化合物、スルホキシド化合物等が挙げられる。さらに好ましくはアルキレンカーボネート(例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート)である
【0049】
本発明における銅フタロシアニン顔料の青色硬化性組成物中における含有量は、カラーフィルタの色相調整容易性の観点より、青色硬化性組成物の全固形分成分に対して、5質量%〜60質量%が好ましく、10質量%〜60質量%がより好ましく、35質量%〜50質量%が最も好ましい。
【0050】
本発明においては、結晶型がα型であり、400〜500nmにおける透過率の極大値が475nmより短波領域にある銅フタロシアニン顔料を使用する。該銅フタロシアニン顔料は、球状であり、粒子が細かいため、400〜500nmにおける透過率が向上し、後述の特定のジピロメテン金属錯体化合物もしくはその互変異性体、または、特定のジオキサン顔料と組み合わせることにより、ザラツキや色むらのない青色硬化性組成物を提供することが可能となる。なお、結晶型がα型であり、400〜500nmにおける透過率の極大値が475nmより長波領域にある銅フタロシアニン顔料なども存在するが、これらには、粗大粒子が含まれていると思われるため色むらを発生し、透明性や着色力が低くなるなどの問題を生じてしまうため、好ましくない。
【0051】
<重合開始剤>
本発明の青色硬化性組成物は重合開始剤としてオキシム重合開始剤を含有する。
オキシム重合開始剤としては、特に限定はなく、例えば、特開2000−80068号公報(段落番号0004〜0296)、WO02/100903A1、特開2001−233842号公報、特開2006−342166号公報(段落番号0004〜0264)などに記載のオキシム化合物が挙げられる。
具体的な例としては、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ペンタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘキサンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘプタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(エチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(ブチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−メチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−プロプル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−ブチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンなどが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0052】
これらのうち、より少ない露光量で形状(特に、固体撮像素子の場合はパターンの矩形性)の良好なパターンが得られる点で、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンなどのオキシム−o−アシル化合物が特に好ましく、具体的には、例えば、CGI−124、CGI−242(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0053】
また、前記重合開始剤としては、特開2007−269779号公報(段落番号0016〜0082)に記載されている、下記一般式(OX−1)で表されるオキシム重合開始剤も好ましい。
【0054】
【化3】

【0055】
[式(OX−1)中、R1’は、芳香環またはヘテロ芳香環を含む置換基を表す。Rlaは、下記(A)群から選択される少なくとも1つの置換基を有するアルキル基である。R2aは、アルカノイル基、アルケノイル基、アリーロイル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基、ヘテロ環チオカルボニル基、ヘテロアリールチオカルボニル基、−CO−CO−Rd(Rdは置換基を有しても良い芳香環またはヘテロ芳香環を表す。)を表す。nは1〜6の整数を示す。]
【0056】
<(A)群>
シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、−NArAr’、−SAr、−COOH、−CONRaRb、−NRa−CO−Rb、−O−CO−NRaRb、−NRa−CO−ORb、−NRa−CO−NRaRb、−SO−Rc、−SO−Rc、−O−SO−Rc、−SO−NRaRb、−NRa−SO−Ra、−CO−NRa−CORb、−CO−NRa−SO−Rb、−SO−NRa−CO−Rb、−SO−NRa−SO−Rc、−Si(Ra)(ORb)、およびヘテロ環基。ここで、Ar、Ar’は独立に、置換基を有しても良い芳香環またはヘテロ芳香環を示し、Ra、Rbは独立に水素原子、置換基を有しても良い、アルキル基、芳香環、またはヘテロ芳香環を示し、Rcは置換基を有しても良い、アルキル基、芳香環、またはヘテロ芳香環を示し、l、mはそれぞれ0〜3の整数を示し、l+m=3を満たす。
【0057】
また、本発明においては、感度、経時安定性、後加熱時の着色の観点から、オキシム化合物として、下記一般式(OX−2)で表される化合物がより好ましい。
【0058】
【化4】

【0059】
上記一般式(OX−2)中、RおよびXは、各々独立に、1価の置換基を表し、Aは、2価の有機基を表し、Arは、アリール基を表す。nは、1〜5の整数である。
【0060】
Rとしては、高感度化の点から、アシル基が好ましく、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トルイル基が好ましい。
【0061】
Aとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、無置換のアルキレン基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基)で置換されたアルキレン基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)で置換されたアルキレン基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、スチリル基)で置換されたアルキレン基が好ましい。
【0062】
Arとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、置換または無置換のフェニル基が好ましい。置換フェニル基の場合、その置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン基が好ましい。
【0063】
Xとしては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基が好ましい。
また、一般式(OX−2)におけるnは1〜2の整数が好ましい。
【0064】
以下、一般式(OX−2)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
【化5】

【0066】
また、本発明の青色硬化性組成物には、上記のオキシム重合開始剤に加えて、特開2004−295116号公報の段落〔0070〕から〔0077〕、〔0079〕などに記載の他の公知の光重合開始剤をさらに使用してもよい。
【0067】
光重合開始剤は、1種単独で或いは2種以上を組み合わせて含有することができる。
青色硬化性組成物の全固形分中における光重合開始剤の含有量(2種以上の場合は総含有量)は、本発明の効果をより効果的に得る観点から、3質量%〜20質量%が好ましく、4質量%〜19質量%がより好ましく、5質量%〜18質量%が特に好ましい。
【0068】
<染料>
本発明の青色硬化性組成物は染料を含む。
染料としては特に限定はなく、従来カラーフィルタ用として公知の染料を使用できる。例えば特開昭64−90403号公報、特開昭64−91102号公報、特開平1−94301号公報、特開平6−11614号公報、特登2592207号、米国特許4808501号明細書、米国特許5667920号明細書、米国特許505950号明細書、米国特許5667920号明細書、特開平5−333207号公報、特開平6−35183号公報、特開平6−51115号公報、特開平6−194828号公報などに開示されている色素を使用できる。化学構造としては、ピラゾールアゾ、アニリノアゾ、トリフェニルメタン、アントラキノン、ベンジリデン、オキソノール、ピラゾロトリアゾールアゾ、ピリドンアゾ、シアニン、フェノチアジン、ピロロピラゾールアゾメチンなどの染料を使用できる。
【0069】
中でも、吸収波長がジオキサジン顔料に近いという観点から、下記一般式(I)で表される化合物と金属原子または金属化合物とから得られるジピロメテン金属錯体化合物またはその互換異性体を含む錯体(以下、適宜、「特定錯体」と称する)が好ましい。
【0070】
(ジピロメテン化合物)
まず、特定錯体を構成する一般式(I)で表される化合物(ジピロメテン化合物)について説明する。
【0071】
【化6】

【0072】
上記一般式(I)中、一般式(I)中、RからRは各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。
【0073】
一般式(I)においてR〜Rで表される置換基は、以下に示されるような1価の基(以下、列記した一価の基の群を「置換基R」と総称する場合がある。)が挙げられる。
即ち、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ノルボルニル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ヘキシルジメチルシリル基)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ドデシルオキシ基、また、シクロアルキルオキシ基であれば、例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、また、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基であれば、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、よりこの好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N−ブチルカルバモイルオキシ基、N−フェニルカルバモイルオキシ基、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ基)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ基、N−プロピルスルファモイルオキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ基、ヘキサデシルスルホニルオキシ基、シクロヘキシルスルホニルオキシ基)、
【0074】
アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、テトラデカノイル基、シクロヘキサノイル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−エチル−N−オクチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−メチルN−フェニルカルバモイル基、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、テトラデシルアミノ基、2−エチルへキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ基)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基、テトラデカンアミド基、ピバロイルアミド基、シクロヘキサンアミド基)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N−フェニルウレイド基)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ヘキサデカンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N−ジプロピルスルファモイルアミノ基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ基)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ基、3−ピラゾリルアゾ基)、
【0075】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、オクチルチオ基、シクロヘキシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−フェニルテトラゾリルチオ基)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ヘキサデシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N−シクロヘキシルスルファモイル基)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル基)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ基、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ基)である。
【0076】
上述した1価の基が更に置換可能な基である場合には、上述した各基のいずれかによって更に置換されていてもよい。なお、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0077】
一般式(I)において、RとR、RとR、RとR、およびRとRは、各々独立に、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。なお、形成される環としては、飽和環、または不飽和環がある。この5員、6員、または7員の飽和環、または不飽和環としては、例えば、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環が挙げられ、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環が挙げられる。
なお、形成される5員、6員、および7員の環が、更に置換可能な基である場合には、前記置換基Rのいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
一般式(I)において、前記RおよびRとしては、上記の中でも、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基が好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基がより好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基が更に好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基が特に好ましい。
一般式(I)において、前記RおよびRとしては、上記の中でも、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基が好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基がより好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基が更に好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基が特に好ましい。
一般式(I)において、前記RおよびRとしては、上記の中でも、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基が好ましく、更に好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基である。
【0079】
一般式(I)において、RおよびRがアルキル基を表す場合の、該アルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状の置換または無置換のアルキル基であり、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、および、ベンジル基が挙げられ、より好ましくは炭素数1〜12の分岐鎖、または環状の置換または無置換のアルキル基であり、より具体的には、例えば、イソプロピル基、シクロプロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、更に好ましくは、炭素数1〜12の2級または3級の置換または無置換のアルキル基であり、より具体的には、例えば、イソプロピル基、シクロプロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0080】
一般式(I)において、RおよびRがアリール基を表す場合の、該アリール基としては、好ましくは、置換または無置換のフェニル基、置換または無置換のナフチル基が挙げられ、より好ましくは置換または無置換のフェニル基である。
およびRがヘテロ環基を表す場合の、該ヘテロ環基としては、好ましくは、置換または無置換の2−チエニル基、置換または無置換の4−ピリジル基、置換または無置換の3−ピリジル基、置換または無置換の2−ピリジル基、置換または無置換の2−フリル基、置換または無置換の2−ピリミジニル基、置換または無置換の2−ベンゾチアゾリル基、置換または無置換の1−イミダゾリル基、置換または無置換の1−ピラゾリル基、置換または無置換のベンゾトリアゾール−1−イル基が挙げられ、より好ましくは置換または無置換の2−チエニル基、置換または無置換の4−ピリジル基、置換または無置換の2−フリル基、置換または無置換の2−ピリミジニル基、置換または無置換の1−ピリジル基が挙げられる。
【0081】
−金属原子または金属化合物−
次に、特定錯体を構成する金属原子または金属化合物について説明する。
ここで用いられる金属または金属化合物としては、錯体を形成可能な金属原子または金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、または2価の金属塩化物が含まれる。例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Feなどの他に、AlCl、InCl、FeCl、TiCl、SnCl、SiCl、GeClなどの金属塩化物、TiO、VOなどの金属酸化物、Si(OH)などの金属水酸化物も含まれる。
これらの中でも、錯体の安定性、分光特性、耐熱、耐光性、および製造適性などの観点から、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、またはVOが好ましく、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、またはVOが更に好ましく、Fe、Zn、Cu、Co、またはVO(V=O)が最も好ましい。
【0082】
一般式(I)で表される化合物と金属原子または金属化合物とを含む錯体において好ましい態様の一例を以下に示す。
即ち、一般式(I)中、RおよびRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはホスフィノイルアミノ基で表され、RおよびRが、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基で表され、RおよびRが、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、またはホスフィノイルアミノ基で表され、Rが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で表され、金属原子または金属化合物が、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、またはVOで表される態様が挙げられる。
【0083】
一般式(I)で表される化合物と金属原子または金属化合物とを含む錯体においてより好ましい態様を以下に示す。
即ち、一般式(I)中、RおよびRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはホスフィノイルアミノ基で表され、RおよびRが、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基で表され、RおよびRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基で表され、Rが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で表され、金属原子または金属化合物が、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、またはVOで表される態様が挙げられる。
【0084】
一般式(I)で表される化合物と金属原子または金属化合物とを含む錯体において特に好ましい態様を以下に示す。
即ち、一般式(I)中、RおよびRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはホスフィノイルアミノ基で表され、RおよびRが、各々独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基で表され、RおよびRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で表され、Rが、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で表され、金属原子または金属化合物が、Zn、Cu、Co、またはVOで表される態様が挙げられる。
【0085】
特に、一般式(I)において、RおよびRがそれぞれフェニル基であることが、堅牢性に優れる点から、好ましい。この理由としては、(1)RおよびRがそれぞれフェニル基であることで、この化合物の分光が長波長化し、併用するフタロシアニン系顔料との分光と重なり(550nm付近)が大きくなり、エネルギー移動がし易くなるため、(2)立体的に嵩高い置換基の存在によりこの化合物自身の堅牢性が高まるため、と考えられる。
また、一般式(I)において、Rおよび/またはRが、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基であることが、溶剤溶解性に優れる点から、好ましい。
【0086】
(一般式(II−1)で表される化合物)
本発明における特定錯体としては、下記一般式(II−1)で表される化合物であることが好ましい例の1つである。
【0087】
【化7】

【0088】
上記一般式(II−1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、または置換基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子、または金属化合物を表し、Xは、Maの電荷を中和するために必要な基を表し、Xは、Maに結合可能な基を表す。なお、XとXとは互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。
【0089】
一般式(II−1)中のR〜Rは、一般式(I)中のR〜Rと同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(II−1)中のMaは、金属原子または金属化合物を表し、前述した特定錯体を構成する金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
一般式(II−1)中のRは、一般式(I)中のRと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0090】
一般式(II−1)におけるXは、Maに結合可能な基であればいずれであってもよく、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)など、更に「金属キレート」[1]坂口武一・上野景平著(1995年 南江堂)、同[2](1996年)、同[3](1997年)など、に記載の化合物に由来する基が挙げられる。中でも、製造の点で、水、カルボン酸化合物、アルコール類が好ましく、水、カルボン酸化合物がより好ましい。
【0091】
一般式(II−1)に置けるXは、Maの電荷を中和するために必要な基を表し、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、製造の点で、ハロゲン原子、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基が好ましく、水酸基、カルボン酸基がより好ましい。
【0092】
一般式(II−1)におけるXとXとは互いに結合してMaと共に5員、6員、または7員の環を形成してもよい。形成される5員、6員、および7員の環は、飽和環であっても不飽和環であってもよい。また、5員、6員、および7員の環は、炭素原子および水素原子のみで構成されていてもよいし、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子から選ばれる原子を少なくとも1個有するヘテロ環であってもよい。
【0093】
(一般式(II−2)で表される化合物)
本発明における特定錯体としては、下記一般式(II−2)で表される化合物であることが好ましい例の1つである。
【0094】
【化8】

【0095】
上記一般式(II−2)中、R〜RおよびR〜R13は、各々独立に、水素原子、または置換基を表す。RおよびR14は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。
【0096】
一般式(II−2)中のR〜Rは、一般式(I)中のR〜Rと同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(II−2)中のR〜R13で表される置換基は、一般式(I)で表される化合物のR〜Rで表される置換基と同義であり、その好ましい態様も同様である。一般式(II−2)で表される化合物のR〜R13で表される置換基が更に置換可能な基である場合には、前述した置換基Rのいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0097】
一般式(II−2)中のRは、一般式(I)中のRと同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(II−2)中のR14は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R14の好ましい範囲は、前記Rの好ましい範囲と同様である。R14が更に置換可能な基である場合には、前述した置換基Rのいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0098】
一般式(II−2)中のMaは、金属または金属化合物を表し、前述した特定錯体を構成する金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0099】
一般式(II−2)中のRとR、RとR10、R11とR12、R12とR13は、各々独立に、互いに結合して5員、6員、または7員の飽和環、或いは不飽和環を形成していてもよい。形成される飽和環、または不飽和環としては、RとR、RとR、RとR、およびRとRで形成される飽和環、または不飽和環と同義であり、好ましい例も同様である。
【0100】
(一般式(III)で表される化合物)
本発明における特定錯体としては、下記一般式(III)で表される化合物であることが好ましい例の1つである。
【0101】
【化9】

【0102】
上記一般式(III)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、または置換基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子、または金属化合物を表し、Xは、NR(Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、Xは、NRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、または硫黄原子を表し、Yは、NRc(Rcは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、または炭素原子を表し、Yは、窒素原子、または炭素原子を表し、RおよびRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。RとYとは互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよく、RとYとは互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。XはMaと結合可能な基を表し、aは0、1、または2を表す。ここで、aが2を表すときは、Xは同一または異なる基であってもよい。
【0103】
一般式(III)中のR〜RおよびRは、一般式(I)中のR〜RおよびRと同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(III)中のMaは、金属または金属化合物を表し、前述した特定錯体を構成する金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0104】
一般式(III)中、RおよびRは、各々独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜18のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは1〜18のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜18のアルキルアミノ基で、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、t−ブチルアミノ基、t−オクチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリールアミノ基で、例えば、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基)、またはヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、2−アミノピロール基、3−アミノピラゾール基、2−アミノピリジン基、3−アミノピリジン基)を表す。
【0105】
一般式(III)中、RおよびRで表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基が、更に置換可能な基である場合には、前記置換基Rのいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0106】
一般式(III)中、Xは、NR、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、Xは、NRa、酸素原子、または硫黄原子を表し、RとRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは2〜18のアシル基で、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−エチルヘキシル基、ベンゾイル基、シクロヘキサノイル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜18のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基)を表す。
前記RとRaのアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基は、更に、前記置換基Rのいずれかで置換されていてもよく、複数の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0107】
一般式(III)中、Yは、NRc、窒素原子、または炭素原子を表し、Yは、窒素原子、または炭素原子を表し、Rcは、前記XにおけるRと同義である。
【0108】
一般式(III)中、RとYとが互いに結合して、R、Y、および炭素原子と共に5員環(例えば、シクロペンタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン)、6員環(例えば、シクロヘキサン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ペンタメチレンスルフィド、ジチアン、ベンゼン、ピペリジン、ピペラジン、ピリダジン、キノリン、キナゾリン)、または7員環(例えば、シクロヘプタン、ヘキサメチレンイミン)を形成してもよい。
【0109】
一般式(III)中、RとYとが互いに結合して、R、Y、および炭素原子と共に5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。形成される5員、6員、および7員の環は、前記のRとYおよび炭素原子で形成される環中の1個の結合が二重結合に変化した環が挙げられる。
【0110】
一般式(III)中、RとYおよびRとYが結合して形成される5員、6員、および7員の環が、更に置換可能な環である場合には、前記置換基Rのいずれかで説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0111】
一般式(III)中、XはMaと結合可能な基を表し、前記一般式(II−1)におけるXと同様な基が挙げられる。
aは0、1、または2を表す。
ここで、aが2を表すときは、Xは同一または異なる基であってもよい。
【0112】
一般式(III)で表される化合物の好ましい態様を以下に示す。
即ち、R〜R、RおよびMaは、それぞれ、一般式(I)で表される化合物と金属原子または金属化合物とを含む錯体の好ましい態様であり、XはNR(Rは水素原子、アルキル基)、窒素原子、または酸素原子であり、XはNRa(Raは水素原子、アルキル基、ヘテロ環基)、または酸素原子であり、YはNRc(Rcは水素原子、またはアルキル基)、窒素原子、または炭素原子であり、Yは窒素原子、または炭素原子であり、Xは酸素原子を介して結合する基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、またはアルキルアミノ基を表すか、RとYとが互いに結合して5員または6員環を形成し、RとYとが互いに結合して5員、6員環を形成する、aは0または1で表される態様である。
【0113】
一般式(III)で表される化合物のより好ましい態様を以下に示す。
即ち、R〜R、R、Maはそれぞれ、一般式(I)で表される化合物と金属原子または金属化合物とを含む錯体の好ましい態様であり、XおよびXは、酸素原子であり、YはNHであり、Yは窒素原子であり、Xは酸素原子を介して結合する基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、またはアルキルアミノ基を表すか、RとYとが互いに結合して5員または6員環を形成し、RとYとが互いに結合して5員、6員環を形成する、aは0または1で表される態様である。
【0114】
以下に、本発明における特定錯体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
【化10】

【0116】
本発明における特定錯体のモル吸光係数は、膜厚の観点から、できるだけ高いほうが好ましい。また、最大吸収波長λmaxは、色純度向上の観点から、520nm〜580nmが好ましく、530nm〜570nmが更に好ましい。なお、最大吸収波長、およびモル吸光係数は、分光光度計UV−2400PC(島津製作所社製)により測定されるものである。
本発明における特定錯体の融点は、溶解性の観点から、高すぎない方がよい。
【0117】
本発明における特定錯体は、米国特許第4,774,339号、同−5,433,896号、特開2001−240761号公報、特開2002−155052号公報、特許第3614586号、Aust.J.Chem,1965,11,1835−1845、J.H.Boger et al,Heteroatom Chemistry,Vol.1,No.5,389(1990)などに記載の方法で合成することができる。
本発明における特定錯体の合成方法について、具体的には、特開2008−292970号公報の段落〔0131〕〜〔0157〕に記載の方法を適用することができる。
【0118】
本発明における特定錯体は、その骨格に少なくともカルボン酸エステルまたはカルボン酸金属塩を有することが好ましい。以下、このような化合物について説明する。
【0119】
また、本発明における特定錯体としては、前記一般式(I)で表される化合物におけるR〜Rが、少なくとも下記置換基aで置換された錯体Aであることが好ましく、より好ましくは下記置換基aおよび下記置換基bで置換された錯体Aであることが好ましい。
置換基aは、末端にエチレン性不飽和結合を有する基を示す。より好ましくは、末端にアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有する基を有する基である。
置換基bは、末端に−COM基を有する基を示す。ここで、Mは、水素原子、−COの電荷を中和するのに必要な有機塩基若しくは金属原子を表す。ただし、電荷の中和が不要である場合は、Mは存在しない。
【0120】
また、本発明における特定錯体としては、前記一般式(III)で表される化合物におけるR〜R、R、Rが、少なくとも上記置換基a(好ましくは上記置換基aおよび上記置換基b)で置換された錯体Bであることも好ましい。
【0121】
また、本発明における染料としては、上記錯体Aまたは上記錯体Bを重合させて得られた色素多量体であってもよい。また、上記錯体Aまたは上記錯体Bと、他のモノマー成分(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、など)と、を共重合させて得られた色素多量体であってもよい。
【0122】
前記錯体Bとしては、下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。
【0123】
(一般式(II)で表される化合物)
【0124】
【化11】

【0125】
一般式(II)中、R〜Rは各々独立に、水素原子または置換基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R10およびR11は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アニリノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。但し、R〜R、R10、R11のいずれかの置換基が2価の連結基となって−L−または−L−と結合しているか、R〜R、R10、R11のいずれかの置換基が単結合となって、−L−または−L−が直接ジピロメテン骨格に置換している。Maは、金属または金属化合物を表す。Xは、Maの電荷の中和に必要な基を表し、rは0、1または2を表す。X、Xは各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、YおよびYは各々独立に、NR(Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)、または酸素原子を表し、R10とYは、互いに結合して、5員、6員または7員の環を形成していてもよく、R11とYとが互いに結合して5員、6員または7員の環を形成していてもよい。Mは、水素原子、−COの電荷を中和するのに必要な有機塩基若しくは金属原子を表す。ただし、電荷の中和が不要である場合は、Mは存在しない。Lは、単結合または(m+1)価の連結基を表す。mは1、2または3を表し、pは1または2を表す。Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは酸素原子またはNR(Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)を表す。Lは単結合または(n+1)価の連結基を表し、nは1、2または3を表し、qは1または2を表す。pが2のとき、複数の{(L)−(COM)}は同一でも異なっていてもよい。qが2のとき、複数の{(L)−(Q−COC(R)=CH}は同一でも異なっていてもよい。mが2または3のとき、複数の(COM)は同一でも異なっていてもよい。nが2または3のとき、複数の(Q−COC(R)=CH)は同一でも異なっていてもよい。
【0126】
一般式(II)で表される化合物は、重合性基とカルボキシル基が同一分子内に導入された構造となっている。
一般式(II)で表される化合物は、重合性基を有することにより着色硬化膜としたときの色移りが抑制され、カルボキシル基を有することによりパターン形成性が向上する。
なお、一般式(II)で表される化合物は互変異性体であってもよい。
【0127】
一般式(II)中、R〜Rは、一般式(I)におけるR〜Rとそれぞれ同義であり、好適な範囲も同様である。
【0128】
一般式(II)中、Rは、一般式(I)におけるRと同義であり、好適な範囲も同様である。
【0129】
一般式(II)中、R10およびR11は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アニリノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。
これらのなかでも前記R10およびR11としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、またはヘテロ環アミノ基が好ましく、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基がより好ましい。
【0130】
但し、一般式(II)中、R〜R、R10、R11のいずれかの置換基が2価の連結基となって−L−または−L−と結合しているか、R〜R、R10、R11のいずれかの置換基が単結合となって、−L−または−L−が直接ジピロメテン骨格に置換している。
一般式(II)において、−L−が結合する部位は、合成適合性の観点で、R、R、R10およびR11の少なくとも1つであることがより好ましく、R10およびR11の少なくとも1つであることが更に好ましい。
一般式(II)において、−L−が結合する部位は、合成適合性の観点で、R、R、R10およびR11の少なくとも1つであることがより好ましく、R10およびR11の少なくとも1つであることが更に好ましい。
【0131】
一般式(II)中、Ma、X、rは、それぞれ一般式(III)におけるMa、X、aと同義であり、好適な範囲も同様である。
【0132】
前記一般式(II)中、Mは、水素原子、−COの電荷を中和するのに必要な有機塩基若しくは金属原子を表す。ただし、電荷の中和が不要である場合は、Mは存在しない。
これらの中でも、Mとしては、水素原子または単なるアニオン(即ちCOMはCOを表す)であることがより好適である。
【0133】
前記一般式(II)中、Lは、単結合または(m+1)価の連結基を表す。
で表される(m+1)価の連結基としては、炭素数1〜10のアルキル基(以下、Lの基の例示では、当該基から水素原子が1個〜m個外れた基を意味する。例えば、アルキル基と例示した場合には、2価のアルキレン基(m=1)、3価のアルカントリイル基(m=2)、4価のアルカンテトライル基(m=3)を含むものとする。)、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜10のアルキルチオエーテル基、炭素数6〜12のアリールチオエーテル基、炭素数1〜10のアルキルエーテル基、炭素数6〜12のアリールエーテル基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数6〜12のアリールアミノ基、炭素数1〜10のアルキルアミド基、炭素数6〜12のアリールアミド基、炭素数1〜10のアルキルカルバモイル基、炭素数6〜12のアリールカルバモイル基、炭素数1〜10のアルキルスルホンアミド基、炭素数6〜12のアリールスルホンアミド基、炭素数1〜10のアルキルスルファモイル基、炭素数6〜12のアリールスルファモイル基であり、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0134】
【化12】

【0135】
【化13】

【0136】
【化14】

【0137】
【化15】

【0138】
【化16】

【0139】
としてより好適には、下記連結基のいずれか1つである。
【0140】
【化17】

【0141】
上記連結基中、*は−COOMとの連結位置を表し、**はR〜Rのいずれかの置換基を介してまたは直接にジピロメテン骨格と連結する位置を表す。
【0142】
前記一般式(II)中、mは1、2または3を表し、好適には1または2であり、より好適には2である。
【0143】
前記一般式(II)中、pは1または2を表し、好適には1である。
【0144】
前記一般式(II)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0145】
前記一般式(II)中、Qは酸素原子またはNR(Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)を表す。
【0146】
前記一般式(II)中、Lは単結合または(n+1)価の連結基を表す。
で表される(n+1)価の連結基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜10のアルキルチオエーテル基、炭素数6〜12のアリールチオエーテル基、炭素数1〜10のアルキルエーテル基、炭素数6〜12のアリールエーテル基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数6〜12のアリールアミノ基、炭素数1〜10のアルキルアミド基、炭素数6〜12のアリールアミド基、炭素数1〜10のアルキルカルバモイル基、炭素数6〜12のアリールカルバモイル基、炭素数1〜10のアルキルスルホンアミド基、炭素数6〜12のアリールスルホンアミド基、炭素数1〜10のアルキルスルファモイル基、炭素数6〜12のアリールスルファモイル基であり、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0147】
【化18】

【0148】
【化19】

【0149】
【化20】



【0150】
【化21】

【0151】
としてより好適には、下記連結基のいずれか1つである。
【0152】
【化22】

【0153】
【化23】

【0154】
上記連結基中、*は−Q−との連結位置を表し、**はR〜Rのいずれかの置換基を介してまたは直接にジピロメテン骨格と連結する位置を表す。
【0155】
前記一般式(II)中、nは1、2または3を表し、好適には、2または3であり、より好適には2である。
【0156】
前記一般式(II)中、qは1または2を表し、好適には1である。
【0157】
前記一般式(II)において、pが2のとき、複数の{(L)−(COM)}は同一でも異なっていてもよい。また、qが2のとき、複数の{(L)−(Q−COC(R)=CH}は同一でも異なっていてもよい。mが2または3のとき、複数の(COM)は同一でも異なっていてもよい。nが2または3のとき、複数の(Q−COC(R)=CH)は同一でも異なっていてもよい。
【0158】
前記一般式(II)において、−(L)−(COM)で表される基としては、好適には、下記置換基である。
【0159】
【化24】

【0160】
上記置換基中、**はR〜Rのいずれかの置換基を介してまたは直接にジピロメテン骨格と連結する位置を表す。
【0161】
前記一般式(II)において、−(L)−(Q−COC(R)=CHで表される基としては、好適には、下記置換基である。
【0162】
【化25】

【0163】
【化26】

【0164】
【化27】

【0165】
【化28】

【0166】
【化29】

【0167】
【化30】



【0168】
【化31】

【0169】
【化32】

【0170】
上記置換基中、**はR〜Rのいずれかの置換基を介してまたは直接にジピロメテン骨格と連結する位置を表す。
【0171】
一般式(II)中、XおよびXは各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表す。
これらのなかでも前記XおよびXとしては、NR(Rは水素原子、アルキル基、またはアルケニル基を表す)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子が好ましく、NR(Rは水素原子を表す)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子がより好ましい。
【0172】
一般式(II)中、YおよびYは各々独立に、NR(Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)、または酸素原子を表す。
これらのなかでも前記YおよびYとしては、NR(Rは水素原子、アルキル基、またはアルケニル基を表す)または酸素原子が好ましく、NR(Rは水素原子を表す)または酸素原子がより好ましい。
【0173】
一般式(II)中、R10とYは、互いに結合して、5員、6員または7員の環を形成していてもよく、R11とYとが互いに結合して5員、6員または7員の環を形成していてもよい。これらの5員、6員または7員の環としては、上記で説明した環が挙げられる。
【0174】
前記一般式(II)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、これらの置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0175】
以下に、前記一般式(II)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0176】
【化33】



【0177】
【化34】

【0178】
【化35】

【0179】
【化36】

【0180】
【化37】

【0181】
【化38】

【0182】
【化39】

【0183】
【化40】

【0184】
【化41】

【0185】
【化42】

【0186】
【化43】

【0187】
【化44】

【0188】
【化45】

【0189】
上記例示化合物の中でも、現像性の観点からは、例示化合物a−5〜a−8、a−13〜a−48、b−5〜b−8、b−13〜b−48、c−5〜c−8、c−13〜c−48が好ましく、b−5〜b−8、b−13〜b−48、c−5〜c−8、c−13〜c−48、d−1、d−2、d−3がより好ましい。
【0190】
これらの色素化合物は、特開2008−292970号公報などに記載の方法に準じて容易に合成することができる。また、後述の実施例における合成例を参照し、原料化合物を選択することにより、同様にして合成することができる。
【0191】
前記一般式(II)で表される化合物の青色硬化性組成物中における総濃度は、分子量およびモル吸光係数によって異なるが、該組成物の全固形成分に対して、0.5〜80質量%が好ましく、0.5〜70質量%がより好ましく、1〜70質量%が特に好ましい。
【0192】
以上、本発明における染料について特定錯体(例えば、一般式(II-1)、一般式(II-2)、一般式(III)、または一般式(II)で表される化合物)を中心に説明したが、本発明における染料としては、前記特定錯体に限定されるものではない。
【0193】
本発明における染料の青色硬化性組成物中における含有量は、色相の調整の観点より、青色硬化性組成物の全固形分成分に対して、5質量%〜40質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましく、15質量%〜25質量%が特に好ましい。
また、本発明の青色硬化性組成物中におけるフタロシアニン顔料と染料との質量比〔染料/フタロシアニン顔料〕は、0.1〜5.0が好ましく、0.5〜3.0がより好ましく、0.7〜1.5が特に好ましい。
質量比〔染料/フタロシアニン顔料〕が0.1以上であると、より効果的に、色相を調整できる。
質量比〔染料/フタロシアニン顔料〕が5.0以下であると、より効果的に、耐光性の向上を図ることができる。
【0194】
<ジオキサジン顔料>
本発明の青色硬化性組成物は、ジオキサジン顔料を含む。銅フタロシアニン顔料および染料に加えて、ジオキサジン顔料を加えることにより、青色硬化性膜とした時の耐光性を向上させることができる。
ジオキサジン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット37が挙げられ、中でも、C.I.ピグメントバイオレット23が好ましい。
【0195】
本発明におけるジオキサジン顔料の青色硬化性組成物中における含有量は、青色硬化性組成物の全固形分成分に対して、0.1質量%〜40質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.3質量%〜10質量%が特に好ましい。
前記含有量が0.1質量%以上であると、より効果的に、耐光性の向上を図ることができる。
前記含有量が40質量%以下であると、より効果的に、色相の調整を図ることができる。
【0196】
また、本発明の青色硬化性組成物中におけるジオキサジン顔料と上述した染料との質量比〔ジオキサジン顔料/染料〕は、0.01〜2.00が好ましく、0.05〜1.50がより好ましく、0.35〜0.80が特に好ましい。
質量比〔ジオキサジン顔料/染料〕が0.01以上であると、より効果的に、耐光性の向上を図ることができる。
質量比〔ジオキサジン顔料/染料〕が2.00以下であると、より効果的に、色相の調整を図ることができる。
【0197】
本発明の青色硬化性組成物においては、上述した銅フタロシアニン顔料と、ジオキサジン顔料と、染料と、他の構造の色素とを併用してもよい。他の構造の色素としては、特に制限はなく、従来カラーフィルタ用途として用いられている公知の色素を使用できる。例えば、特開2002-14220号公報、特開2002-14221号公報、特開2002-14222号公報、特開2002-14223号公報、米国特許第5,667,920号明細書、米国特許第5,059,500号明細書、などに記載の色素である。
化学構造としては、ピラゾールアゾ、アニリノアゾ、トリフェニルメタン、アントラキノン、アンスラピリドン、ベンジリデン、オキソノール、ピラゾロトリアゾールアゾ、ピリドンアゾ、シアニン、フェノチアジン、ピロロピラゾールアゾメチン、キサンテン、フタロシアニン、ペンゾピラン、インジゴなどの色素が使用できる。
【0198】
本発明の青色硬化性組成物において、全着色成分(顔料および染料を含む)中における銅フタロシアニン顔料と、ジオキサジン顔料と、染料との含有量合計は、80質量%〜100質量%が好ましく、90質量%〜100質量%がより好ましい。
【0199】
<重合性化合物>
本発明の青色硬化性組成物は重合性化合物を含有する。
重合性化合物としては、例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物を挙げることができる。具体的には、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物並びにそれらの(共)重合体などの化学的形態のいずれであってもよい。本発明における重合性化合物は一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0200】
モノマーおよびその(共)重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類、並びにこれらの(共)重合体が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、および不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類、並びにこれらの(共)重合体である。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基などの求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物なども好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基などの親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲン基やトシルオキシ基などの脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテルなどに置き換えた化合物群を使用することも可能である。
これらの具体的な化合物としては、特開2009−288705号公報の段落番号0095〜段落番号0108に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0201】
また、重合性化合物としては、重合性モノマーとして、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、などの単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタンなどの多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報、特開昭51−37193号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類などの多官能のアクリレートやメタアクリレートおよびこれらの混合物を挙げることができる。
【0202】
上記のほか、下記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される、ラジカル重合性モノマーも好適に用いることができる。なお、式中、Tがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がRに結合する。
【0203】
【化46】

【0204】
前記一般式において、nは0〜14であり、mは1〜8である。一分子内に複数ずつ存在するRおよびTは、各々同一であっても、異なっていてもよい。
上記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される、ラジカル重合性モノマーの具体例としては、特開2007−269779号公報の段落番号0248〜段落番号0251に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0205】
以上で説明した重合性化合物の青色硬化性組成物中における含有量は、組成物の固形分に対して、5〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がさらに好ましく、15〜50質量%が特に好ましい。該含有量が前記範囲内であると、充分な硬化度と未露光部の溶出性とを保持でき、露光部の硬化度を十分に維持することができ、未露光部の溶出性の著しい低下を防ぐことができる。
【0206】
<溶剤>
本発明の青色硬化性組成物は、溶剤を含有する。
溶剤は、並存する各成分の溶解性や青色硬化性組成物としたときの付与性を満足できるものであれば、基本的には特に制限はなく、特に、バインダーの溶解性、付与性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
【0207】
溶剤としては、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸アルキルエステル類(例:オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル(具体的には、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチルなどが挙げられる。))、3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなど(具体的には、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなどが挙げられる。))、2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピルなど(具体的には、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチルなどが挙げられる。))、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(具体的には、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチルなどが挙げられる。)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチルなどが挙げられる。
【0208】
また、エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどが挙げられる。
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノンなどが挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレンなどが好適に挙げられる。
【0209】
これらの溶剤は、前述の各成分の溶解性、およびアルカリ可溶性バインダーを含む場合はその溶解性、付与面状の改良などの観点から、2種以上を混合することも好ましい。この場合、特に好ましくは、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液である。
【0210】
溶剤の青色硬化性組成物中における含有量としては、組成物中の全固形分濃度が10質量%〜80質量%になる量が好ましく、15質量%〜60質量%になる量がより好ましい。
【0211】
<分散剤>
本発明の青色硬化性組成物は、分散剤を含有することが好ましい。
前記分散剤としては、公知の顔料分散剤や界面活性剤が用いられる。
前記分散剤としては、多くの種類の化合物が用いられるが、例えば、フタロシアニン誘導体(市販品EFKA−745(エフカ社製))、ソルスパース5000(日本ルーブリゾール(株)製);オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(以上、共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)などのカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(以上、裕商(株)製)などのアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(以上、森下産業(株)製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(以上、サンノプコ(株)製)などの高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(日本ルーブリゾール(株)製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123(以上、(株)ADEKA製)、およびイソネットS−20(三洋化成(株)製)が挙げられる。
【0212】
本発明の青色硬化性組成物が分散剤を含有する場合、該分散剤の青色硬化性組成物中における含有量は、顔料に対して、1質量%〜80質量%が好ましく、5質量%〜70質量%がより好ましく、10質量%〜60質量%が最も好ましい。
【0213】
<顔料誘導体>
本発明の青色硬化性組成物は、顔料誘導体を含有することができる。
本発明における顔料誘導体とは、後述するように、有機顔料の側鎖に酸性基、塩基性基、芳香族基を置換基として導入した化合物である。
本発明においては、前記分散剤と親和性のある部位を有する顔料誘導体を顔料の表面に吸着させ、これを前記分散剤の吸着点として用いることで、顔料を微細な粒子として着色組成物中に分散させることができ、また、その再凝集をも防止することができる。つまり、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、前記分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
【0214】
前記分散剤が酸基を有している場合には、顔料誘導体として塩基性基を有する塩基性顔料誘導体を用いることにより、さらに顔料の分散性が向上し、微細な顔料を効果的に分散することができる。そして、塩基性顔料誘導体を含有する着色組成物を用いることで、さらに色濃度ムラが小さく色特性に優れたカラーフィルタを形成することができる。
【0215】
本発明における顔料誘導体は、具体的には有機顔料を母体骨格とし、側鎖に酸性基や塩基性基、芳香族基を置換基として導入した化合物である。母体骨格となる有機顔料は、具体的には、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キノフタロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、キノリン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンゾイミダゾロン顔料などが挙げられる。また、母体骨格としては、一般に、色素と呼ばれていないナフタレン、アントラキノン、トリアジン、キノリンなどの淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。
【0216】
本発明における顔料誘導体としては、特開平11−49974号公報、同平11−189732号公報、同平10−245501号公報、同2006−265528号公報、同平8−295810号公報、同平11−199796号公報、同2005−234478号公報、同2003−240938号公報、同2001−356210号公報などに記載されているものを使用できる。
【0217】
本発明の着色組成物中に顔料誘導体を使用する場合、その使用量としては、顔料に対し1質量%〜80質量%の範囲にあることが好ましく、3質量%〜65質量%の範囲にあることがより好ましく、5質量%〜50質量%の範囲にあることが特に好ましい。含有量がこの範囲内であると、粘度を低く抑えながら、顔料の分散を良好に行えると共に、分散後の分散安定性を向上させることができる。そして、この着色組成物をカラーフィルタの製造に適用することで、透過率が高く、優れた色特性を有し、高いコントラストのカラーフィルタを得ることができる。
【0218】
<他の成分>
本発明の青色硬化性組成物は、上述の各成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、樹脂、架橋剤などの他の成分を含んでいてもよい。
【0219】
−樹脂−
樹脂としては、アルカリ可溶性バインダーを好適に用いることができる。
アルカリ可溶性バインダーは、アルカリ可溶性を有すること以外は特に限定はなく、好ましくは、耐熱性、現像性、入手性などの観点から選択することができる。
【0220】
アルカリ可溶性バインダーとしては、線状有機高分子重合体であり、且つ、有機溶剤に可溶で、弱アルカリ水溶液で現像できるものが好ましい。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマー、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体などが挙げられ、同様に側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体が有用である。また、メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸の共重合体なども有用である。
【0221】
上述したものの他、本発明におけるアルカリ可溶性バインダーとしては、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたものなどや、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、ポリ(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、なども有用である。また、線状有機高分子重合体は、親水性を有するモノマーを共重合したものであってもよい。この例としては、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2級若しくは3級のアルキルアクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルトリアゾール、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、分岐若しくは直鎖のプロピル(メタ)アクリレート、分岐若しくは直鎖のブチル(メタ)アクリレート、または、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。その他、親水性を有するモノマーとしては、テトラヒドロフルフリル基、燐酸基、燐酸エステル基、4級アンモニウム塩基、エチレンオキシ鎖、プロピレンオキシ鎖、スルホン酸基およびその塩由来の基、モルホリノエチル基などを含んでなるモノマーなども有用である。
【0222】
また、アルカリ可溶性バインダーは、架橋効率を向上させるために、重合性基を側鎖に有してもよく、例えば、アリル基、(メタ)アクリル基、アリルオキシアルキル基などを側鎖に含有するポリマーなども有用である。上述の重合性基を含有するポリマーの例としては、市販品のKSレジスト−106(大阪有機化学工業(株)製)、サイクロマーPシリーズ(ダイセル化学工業(株)製)などが挙げられる。また、硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロルヒドリンとのポリエーテルなども有用である。
【0223】
アルカリ可溶性バインダーとしては、下記一般式(E−1)で示される化合物(以下「エーテルダイマー」と称することもある。)を重合してなるポリマー(a)を用いることも好ましい。
【0224】
【化47】

【0225】
式(E−1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
【0226】
本発明の青色硬化性組成物が前記ポリマー(a)を含有することにより、該組成物を用いて形成された硬化塗膜の耐熱性および透明性がより向上する。
前記エーテルダイマーを示す前記一般式(E−1)中、RおよびRで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、ステアリル基、ラウリルv、2−エチルヘキシル基、などの直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基などのアリール基;シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、ジシクロペンタジエニル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、などの脂環式基;1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、などのアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル基などのアリール基で置換されたアルキル基;などが挙げられる。
これらの中でも特に、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基などのような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素を含む基が耐熱性の点で好ましい。
なお、RおよびRは、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0227】
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートなどが挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0228】
また、アルカリ可溶性バインダーとしては、エポキシ基を有するポリマーであることも好ましい。
アルカリ可溶性バインダーにエポキシ基を導入するには、例えば、エポキシ基を有するモノマー(以下「エポキシ基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合すればよい。前記エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらエポキシ基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。アルカリ可溶性バインダーを得る際の単量体成分が前記エポキシ基を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は、特に制限されないが、全単量体成分中5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%であるのがよい。
【0229】
アルカリ可溶性バインダーは、酸基を有するポリマーであることも好ましい。
前記酸基としては、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基などが挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。アルカリ可溶性バインダーに酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマーおよび/または重合後に酸基を付与しうるモノマー(以下「酸基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合するようにすればよい。
なお、重合後に酸基を付与しうるモノマーを単量体成分として酸基を導入する場合には、重合後に例えば後述するような酸基を付与するための処理が必要となる。
前記酸基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸などのカルボキシル基を有するモノマー、N−ヒドロキシフェニルマレイミドなどのフェノール性水酸基を有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸無水物基を有するモノマーなどが挙げられるが、これらの中でも特に、(メタ)アクリル酸が好ましい。
前記重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有するモノマー、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有するモノマー、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートなどのイソシアネート基を有するモノマーなどが挙げられる。これら酸基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
重合後に酸基を付与しうるモノマーを用いる場合において、重合後に酸基を付与するための処理としては、ポリマー側鎖の極性基の一部を、ポリマー反応により変性する処理が挙げられる。
【0230】
これら各種アルカリ可溶性バインダーの中でも、耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましく、現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。
【0231】
前記アクリル系樹脂としては、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドなどから選ばれるモノマーからなる共重合体や、市販品のKSレジスト−106(大阪有機化学工業(株)製)、サイクロマーPシリーズ(ダイセル化学工業(株)製)などが好ましい。
【0232】
アルカリ可溶性バインダーは、現像性、液粘度などの観点から、重量平均分子量(GPC法で測定されたポリスチレン換算値)が1000〜2×10の重合体が好ましく、2000〜1×10の重合体がより好ましく、5000〜5×10の重合体が特に好ましい。
また、アルカリ可溶性バインダーの酸価としては50〜300mgKOH/gが好ましく、75〜200mgKOH/gがより好ましく、80〜160mgKOH/gが特に好ましい。酸価がこの範囲にあるとパターン形成時に現像残渣がより残りにくく、且つ付与均一性がより良好となる。
【0233】
−架橋剤−
本発明の青色硬化性組成物に補足的に架橋剤を用い、青色硬化性組成物を硬化させてなる着色硬化膜の硬度をより高めることもできる。
架橋剤としては、架橋反応により膜硬化を行なえるものであれば、特に限定はなく、例えば、(a)エポキシ樹脂、(b)メチロール基、アルコキシメチル基、およびアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物またはウレア化合物、(c)メチロール基、アルコキシメチル基、およびアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、フェノール化合物、ナフトール化合物またはヒドロキシアントラセン化合物、が挙げられる。中でも、多官能エポキシ樹脂が好ましい。
架橋剤の具体例などの詳細については、特開2004−295116号公報の段落〔0134〕〜〔0147〕の記載を参照することができる。
【0234】
−重合禁止剤−
本発明の青色硬化性組成物においては、該青色硬化性組成物の製造中または保存中において、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の重合禁止剤を添加することが望ましい。
本発明に用いうる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩などが挙げられる。
重合禁止剤の添加量は、全組成物の質量に対して、約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
【0235】
−界面活性剤−
本発明の青色硬化性組成物には、付与性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0236】
特に、本発明の青色硬化性組成物は、フッ素系界面活性剤を含有することで、付与液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上することから、付与厚の均一性や省液性をより改善することができる。
即ち、フッ素系界面活性剤を含有する青色硬化性組成物を適用した付与液を用いて膜形成する場合においては、被付与面と付与液との界面張力を低下させることにより、被付与面への濡れ性が改善され、被付与面への付与性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0237】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%〜40質量%が好適であり、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、特に好ましくは7質量%〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、付与膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、青色硬化性組成物中における溶解性も良好である。
【0238】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。
【0239】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレートおよびプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレートなど)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1などが挙げられる。
【0240】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)などが挙げられる。
【0241】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)などが挙げられる。
【0242】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビックケミー社製「BYK307」、「BYK323」、「BYK330」などが挙げられる。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の添加量は、青色硬化性組成物の全質量に対して、0.001質量%〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜1.0質量%である。
【0243】
−有機カルボン酸−
また、非露光領域のアルカリ溶解性を促進し、青色硬化性組成物の現像性の更なる向上を図る場合には、該組成物に有機カルボン酸、好ましくは分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸の添加を行なうことが好ましい。
具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸などの脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸などの脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸などの芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸などの芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸などのその他のカルボン酸が挙げられる。
【0244】
−その他の添加物−
青色硬化性組成物には、必要に応じて、各種添加物、例えば、充填剤、上記以外の高分子化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などを配合することができる。これらの添加物としては、特開2004−295116号公報の段落〔0155〕〜〔0156〕に記載のものを挙げることができる。
本発明の青色硬化性組成物においては、特開2004−295116号公報の段落〔0078〕に記載の増感剤や光安定剤、同公報の段落〔0081〕に記載の熱重合防止剤を含有することができる。
【0245】
<着色熱硬化性組成物の調製方法>
本発明の着色熱硬化性組成物は、前述の必須成分と、必要に応じて、任意成分とを混合することで調製される。
なお、青色硬化性組成物の調製に際しては、青色硬化性組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解・分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。例えば、全成分を同時に溶剤に溶解・分散して組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜2つ以上の溶液・分散液としておいて、使用時(付与時)にこれらを混合して組成物として調製してもよい。
上記のようにして調製された青色硬化性組成物は、好ましくは、孔径0.01μm〜3.0μm、より好ましくは孔径0.05μm〜0.5μm程度のフィルタなどを用いて濾別した後、使用に供することができる。
【0246】
本発明の青色硬化性組成物は、ザラツキや色むらがないため、液晶表示装置(LCD)や固体撮像素子(例えば、CCD、CMOS等)に用いられるカラーフィルタなどの着色画素形成用として、また、印刷インキ、インクジェットインキ、および塗料などの作製用途として好適に用いることができる。特に、CCD、およびCMOSなどの固体撮像素子用の着色画素(カラーフィルタ)形成用として好適に用いることができる。
【0247】
≪カラーフィルタおよびその製造方法≫
次に、本発明の青色硬化性組成物を用いてカラーフィルタを製造する方法(本発明のカラーフィルタの製造方法)について説明する。
本発明のカラーフィルタの製造方法は、支持体上に、本発明の青色硬化性組成物を付与して青色硬化性組成物層を形成する工程(A)と、工程(A)にて形成された青色硬化性組成物層を、マスクを介して露光した後、現像して着色パターンを形成する工程(B)と、を有する。
また、本発明のカラーフィルタの製造方法では、特に、工程(B)で形成された着色パターンに対し紫外線を照射する工程(C)と、工程(C)で紫外線を照射された着色パターンに対し加熱処理を行う工程(D)と、を更に有することが好ましい。
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法について、より具体的に説明する。
【0248】
−工程(A)−
本発明のカラーフィルタの製造方法では、まず、支持体上に、既述の本発明の青色硬化性組成物を回転塗布、流延塗布、ロール塗布、インクジェット塗布などの付与方法により付与して、青色硬化性組成物層を形成し、その後、必要に応じて、予備硬化(プリベーク)を行い、該青色硬化性組成物層を乾燥させる。
【0249】
本発明のカラーフィルタの製造方法に用いられる支持体としては、例えば、液晶表示装置等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス(パイレックス(登録商標)ガラス)、石英ガラス、およびこれらに透明導電膜を付着させたものや、固体撮像素子などに用いられる光電変換素子基板(例えばCCD用、CMOS用のシリコン基板)などが挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。また、これらの支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止、或いは表面の平坦化のために、下塗り層を設けてもよい。
【0250】
支持体上への本発明のカラーフィルタ用重合性組成物の付与布方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法、インクジェット塗布などの各種の付与布方法を適用することができる。
【0251】
なお、青色硬化性組成物を支持体上に回転塗布する際には、液の滴下量を低減のため、青色硬化性組成物の滴下に先立ち、適当な有機溶剤を滴下、回転させることにより、青色硬化性組成物の支持体への馴染みをよくすることができる。
【0252】
上記プリベークの条件としては、ホットプレートやオーブンを用いて、70℃〜130℃で、0.5分間〜15分間程度加熱する条件が挙げられる。
また、青色硬化性組成物により形成される青色硬化性組成物層の厚みは、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、0.2μm〜5.0μmであることが好ましく、0.3μm〜2.5μmであることが更に好ましく、0.3μm〜1.5μm最も好ましい。なお、ここでいう青色硬化性組成物層の厚さは、プリベーク後の膜厚である。
【0253】
−工程(B)−
続いて、本発明のカラーフィルタの製造方法では、支持体上に形成された青色硬化性組成物層には、マスクを介した露光が行われる。
この露光に適用し得る光若しくは放射線としては、g線、h線、i線、KrF光、ArF光が好ましく、特にi線が好ましい。照射光にi線を用いる場合、100mJ/cm〜10000mJ/cmの露光量で照射することが好ましい。
【0254】
また、その他の露光光線としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、可視および紫外の各種レーザー光源、蛍光灯、タングステン灯、太陽光なども使用できる。
【0255】
<レーザー光源を用いた露光工程>
前記レーザー光源を用いた露光方式では、光源として紫外光レーザーを用いることができる。レーザーは英語のLight Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出により光の増幅)の頭文字である。反転分布をもった物質中でおきる誘導放出の現象を利用し、光波の増幅、発振によって干渉性と指向性が一層強い単色光を作り出す発振器および増幅器、励起媒体として結晶、ガラス、液体、色素、気体などがあり、これらの媒質から固体レーザー、液体レーザー、気体レーザー、半導体レーザーなどの公知の紫外光に発振波長を有するレーザーを用いることができる。その中でも、レーザーの出力および発振波長の観点から、固体レーザー、ガスレーザーが好ましい。
【0256】
前記レーザー光源を用いた露光方式に用いることのできるレーザーとしては、300nm〜380nmの範囲である波長の範囲の紫外光レーザーが好ましく、さらに好ましくは300nm〜360nmの範囲の波長である紫外光レーザーが、レジスト(青色硬化性組成物)の感光波長に合致しているという点で好ましい。
【0257】
具体的には、特に出力が大きく、比較的安価な固体レーザーのNd:YAGレーザーの第三高調波(355nm)や、エキシマレーザーのXeCl(308nm)、XeF(353nm)を好適に用いることができる。
被露光物(青色硬化性組成物)に対する露光量としては、1mJ/cm〜100mJ/cmの範囲であり、1mJ/cm〜50mJ/cmの範囲がより好ましい。露光量がこの範囲であると、パターン形成の生産性の点で好ましい。
【0258】
前記レーザー光源を用いた露光方式に使用可能な露光装置としては、特に制限はないが市販されているものとしては、Callisto(ブイテクノロジー株式会社製)やEGIS(ブイテクノロジー株式会社製)やDF2200G(大日本スクリーン株式会社製などが使用可能である。また上記以外の装置も好適に用いられる。
【0259】
また、発光ダイオード(LED)およびレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LEDおよび紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、340〜370mにピーク波長を有するUV−LEDである。
【0260】
紫外光レーザーは平行度が良好なので、露光の際にマスクを使用せずとも、パターン露光ができる。しかし、マスクを用いてパターンを露光した場合、さらにパターンの直線性が高くなるのでより好ましい。
【0261】
また、露光した青色硬化性組成物層は、次の現像処理前にホットプレートやオーブンを用いて、70℃〜180℃で、0.5分間〜15分間程度加熱することができる。
また、露光は、青色硬化性組成物層中の色材の酸化褪色を抑制するために、チャンバー内に窒素ガスを流しながら行なうことができる。
【0262】
続いて、露光後の青色硬化性組成物層に対し、現像液にて現像を行う。これにより、着色パターンを形成することができる。
現像液は、青色硬化性組成物層の未硬化部(未露光部)を溶解し、硬化部(露光部)を溶解しないものであれば、種々の有機溶剤の組み合わせやアルカリ性水溶液を用いることができる。
【0263】
現像液に用いるアルカリとしては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5、4、0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物を濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が使用される。
なお、現像液には無機アルカリを用いてもよく、無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウムなどが好ましい。
このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)する。
【0264】
現像液がアルカリ性水溶液である場合、アルカリ濃度が好ましくはpH11〜13、更に好ましくはpH11.5〜12.5となるように調整するのがよい。特に、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドを、濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜5質量%となるように調整したアルカリ性水溶液を現像液として用いることができる。
現像時間は、30秒〜300秒が好ましく、更に好ましくは30秒〜120秒である。現像温度は、20℃〜40℃が好ましく、更に好ましくは23℃である。
現像は、パドル方式、シャワー方式、スプレー方式などで行うことができる。
【0265】
また、アルカリ性水溶液を用いて現像した後は、水で洗浄することが好ましい。洗浄方式も、目的に応じて適宜選択されるが、シリコンウエハ基板などの支持体を回転数10rpm〜500rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行うことができる。
【0266】
その後、本発明のカラーフィルタの製造方法では、必要に応じて、現像により形成された着色パターンに対し後加熱および/または後露光を行い、着色パターンの硬化を促進させることもできる。
【0267】
−工程(C)−
特に、本発明のカラーフィルタの製造方法では、本発明の青色硬化性組成物から形成された着色パターン(画素)に対して、紫外線照射による後露光を行うことで、隣接する画素や、積層された上下層への色移りを効果的に抑制することができる。この色移りは、本発明の青色硬化性組成物のように、色材として特定錯体のような染料を用いた場合に発生する特有の問題であり、この色移りは、以下のような紫外線照射による後露光により低減させることができる。
【0268】
(紫外線照射による後露光)
紫外線照射による後露光では、前述のようにして現像処理を行なった後の着色パターンに、現像前の露光処理における露光量[mJ/cm]の10倍以上の照射光量[mJ/cm]の紫外光(UV光)を照射することが好ましい。
なお、現像処理と後述の工程(D)による加熱処理との間に、現像後の着色パターンに紫外光(UV光)を所定時間、照射することにより、後に加熱された際に色移りするのを効果的に防止でき、耐光性が向上する。
【0269】
紫外光を照射する光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、DEEP UVランプなどを用いることができる。中でも、照射される紫外光中に275nm以下の波長光を含み、かつ、275nm以下の波長光の照射照度[mW/cm]が紫外光中の全波長光の積分照射照度に対して5%以上である光を照射できるものが好ましい。紫外光中の275nm以下の波長光の照射照度を5%以上とすることで、隣接する画素間や上下層への色移りの抑制効果および耐光性の向上効果をより高めることができる。
この点から、紫外線照射による後露光は、前述の工程(B)における露光に用いられるi線などの輝線などの光源と異なる光源、具体的には、高圧水銀灯、低圧水銀灯などを用いて行なうことが好ましい。中でも、前記同様の理由から、275nm以下の波長光の照射照度[mW/cm]は、紫外光中の全波長光の積分照射照度に対して7%以上が好ましい。また、275nm以下の波長光の照射照度の上限は、25%以下が望ましい。
【0270】
なお、積分照射照度とは、分光波長ごとの照度(単位面積を単位時間に通過する放射エネルギー;[mW/m])を縦軸とし、光の波長[nm]を横軸とした曲線を引いた場合に照射光に含まれる各波長光の照度の和(面積)をいう。
【0271】
紫外光の照射は、前述の工程(B)における露光時の露光量の10倍以上の照射光量[mJ/cm]として行なうことが好ましい。本工程(C)での照射光量が、前述の工程(B)における露光時の露光量の10倍未満であると、隣接する画素間や上下層間における色移りを防止できず、また、耐光性も悪化する場合がある。
中でも、紫外光の照射光量は、前述の工程(B)における露光時の露光量の12倍以上200倍以下が好ましく、15倍以上100倍以下がより好ましい。
【0272】
この場合、照射される紫外光における積分照射照度が200mW/cm以上であることが好ましい。積分照射照度が200mW/cm以上であると、隣接する画素間や上下層への色移りの抑制効果および耐光性の向上効果をより効果的に高めることができる。中でも、250mW/cm〜2000mW/cmが好ましく、300mW/cm〜1000mW/cmがより好ましい。
【0273】
−工程(D)−
前述のような、紫外線照射による後露光が行われた着色パターンに対しては、加熱処理を行うことが好ましい。形成された着色パターンを加熱(いわゆる、ポストベーク)することにより、着色パターンを更に硬化させることができる。
この加熱処理は、例えば、ホットプレート、各種ヒーター、オーブンなどにより行なうことができる。
加熱処理の際の温度としては、100℃〜300℃であることが好ましく、更に好ましくは、150℃〜250℃である。また、加熱時間は、30秒〜30000秒が好ましく、更に好ましくは、60秒〜1000秒である。
【0274】
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、前述の工程(C)のような紫外線照射による後露光の代わりに、g線、h線、i線、KrF、ArF、電子線、X線などによる後露光をおこなってもよい。
これらの手段による後露光の場合には、照射時間としては、10秒〜180秒、好ましくは20秒〜120秒、更に好ましくは30秒〜60秒である。
【0275】
また、本発明のカラーフィルタの製造方法においては、前述の工程(C)のような紫外線照射による後露光を行わず、前述の工程(D)のような後露光のみを行ってもよい。
更に、後露光と後加熱とは、どちらを先に行ってもよいが、後加熱に先立って、後露光を実施することが好ましい。後露光で硬化を促進させることにより、後加熱過程で見られる着色パターンの熱ダレ(矩形パターンの球形化)やすそ引き(パターン下層部のリフロー化)による形状の変形を抑止するためである。
【0276】
このようにして得られた、着色パターンがカラーフィルタにおける画素を構成することになる。
複数の色相の画素を有するカラーフィルタの作製においては、前述の工程(A)、工程(B)、更に、必要に応じて、工程(C)や工程(D)を所望の色数に合わせて繰り返せばよい。
なお、単色の青色硬化性組成物層の形成、露光、現像が終了する毎に(1色毎に)、前述の工程(C)および/または工程(D)を行なってもよいし、所望の色数の全ての青色硬化性組成物層の形成、露光、現像が終了した後に、一括して前述の工程(C)および/または工程(D)を行なってもよい。
【0277】
本発明のカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタ(本発明のカラーフィルタ)は、本発明の青色硬化性組成物を用いていることから、耐光性に優れたものとなる。
そのため、本発明のカラーフィルタは、液晶表示装置や、CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサーなどの固体撮像素子およびこれを用いたカメラシステムに用いることができ、中でも、着色パターンが微少サイズで薄膜に形成され、しかも良好な矩形の断面プロファイルが要求される固体撮像素子の用途、特に100万画素を超えるような高解像度のCCDやCMOSなどの用途に好適である。
【0278】
また、本発明に係る青色硬化性組成物が、例えば、付与装置吐出部のノズル、付与装置の配管部、付与装置内などに付着した場合でも、公知の洗浄液を用いて容易に洗浄除去することができる。この場合、より効率の良い洗浄除去を行うためには、前掲の本発明に係る青色硬化性組成物に含まれる溶剤を洗浄液として用いることが好ましい。
また、特開平7−128867号公報、特開平7−146562号公報、特開平8−278637号公報、特開2000−273370号公報、特開2006−85140号公報、特開2006−291191号公報、特開2007−2101号公報、特開2007−2102号公報、特開2007−281523号公報などに記載の洗浄液も本発明に係る青色硬化性組成物の洗浄除去用の洗浄液として好適に用いることができる。
上記のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートおよびアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
これら溶剤は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合する場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20である。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の混合溶剤で、その比率が60/40であることが特に好ましい。また、PGMEAとシクロヘキサノンの混合物や、PGMEAと2−ヘプタノンの混合物なども好ましい。
なお、青色硬化性組成物に対する洗浄液の浸透性を向上させるために、洗浄液には前掲の本組成物に関する界面活性剤を添加しても良い。
【0279】
≪固体撮像素子≫
本発明の固体撮像素子は、本発明のカラーフィルタを備えたものである。本発明のカラーフィルタは、ザラツキや色むらがなく、このカラーフィルタを備えた固体撮像素子は優れた色再現性を得ることが可能となる。
【0280】
固体撮像素子の構成としては、本発明のカラーフィルタを備え、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、次のような構成が挙げられる。
即ち、支持体上に、CCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサー(固体撮像素子)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコンなどからなる転送電極を有し、その上に、本発明のカラーフィルタを設け、次いで、マイクロレンズを積層する構成である。
【0281】
また、本発明のカラーフィルタを備えるカメラシステムは、色材の光褪色性の観点から、カメラレンズやIRカット膜が、ダイクロコートされたカバーガラス、マイクロレンズなどを備えており、その材料の光学特性は、400nm以下のUV光の一部または全部を吸収するものであることが望ましい。また、カメラシステムの構造としては、色材の酸化褪色を抑止するため、カラーフィルタへの酸素透過性が低減されるような構造になっていることが好ましく、例えば、カメラシステムの一部または全体が窒素ガスで封止されていることが好ましい。
【0282】
≪液晶表示装置≫
本発明のカラーフィルタは、耐光性に優れ、且つ、色相に優れた着色画素を有することから、液晶表示装置用のカラーフィルタとしても好適である。
このようなカラーフィルタを備えた液晶表示装置は、高品位の画像を表示することができる。
表示装置の定義や各表示装置の説明は、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0283】
本発明のカラーフィルタは、中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置に対して有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。更に、本発明はIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置や、STN、TN、VA、OCS、FFS、及びR−OCB等にも適用できる。
また、本発明のカラーフィルタは、明るく高精細なCOA(Color-filter On Array)方式にも供することが可能である。COA方式の液晶表示装置にあっては、カラーフィルタ層に対する要求特性としては、通常の要求特性に加え、層間絶縁膜に対する要求特性、即ち低誘電率及び剥離液耐性が必要である。本発明のカラーフィルタでは、紫外光レーザーによる露光方法に加え、着色画素の色相や膜厚を選択することによって、露光光である紫外光レーザーの透過性を高めることができるものと考えられる。これによって、着色画素の硬化性が向上し、欠けや剥がれ、ヨレのない画素を形成できるので、TFT基板上に直接または間接的に設けた着色層の特に剥離液耐性が向上し、COA方式の液晶表示装置に有用である。低誘電率の要求特性を満足するためには、カラーフィルタ層の上に樹脂被膜を設けてもよい。
さらにCOA方式により形成される着色層には、着色層上に配置されるITO電極と着色層の下方の駆動用基板の端子とを導通させるために、一辺の長さが1〜15μm程度の矩形のスルーホールあるいはコの字型の窪み等の導通路を形成する必要であり、導通路の寸法(即ち、一辺の長さ)を特に5μm以下にすることが好ましいが、本発明を用いることにより、5μm以下の導通路を形成することも可能である。
これらの画像表示方式については、例えば、「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページなどに記載されている。
【0284】
本発明の液晶表示装置は、本発明のカラーフィルタ以外に、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角保障フィルムなどさまざまな部材から構成される。本発明のカラーフィルタは、これらの公知の部材で構成される液晶表示装置に適用することができる。
これらの部材については、例えば、「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表 良吉(株)富士キメラ総研 2003年発行)」に記載されている。
【0285】
バックライトに関しては、SID meeting Digest 1380(2005)(A.Konno et.al)や、月刊ディスプレイ 2005年12月号の18〜24ページ(島 康裕)、同25〜30ページ(八木 隆明)などに記載されている。
【0286】
本発明のカラーフィルタを液晶表示装置に用いると、従来公知の冷陰極管の三波長管と組み合わせたときに高いコントラストを実現できるが、更に、赤、緑、青のLED光源(RGB−LED)をバックライトとすることによって輝度が高く、また、色純度の高い色再現性の良好な液晶表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0287】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は共に質量基準である。
【0288】
〔実施例1〕
<色素物質Aの合成>
98%濃硫酸220mlに、室温で、β型銅フタロシアニン(商品名:PV FAST BLUE BG、クラリアントジャパン社製)11gを添加、攪拌した。このようにして、良溶媒に顔料が溶解した銅フタロシアニン顔料溶液を調整した。
これとは別に貧溶媒として、純水2000mlを用意した。
ここで、5℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により500rpmで攪拌した上記貧溶媒中に、上記銅フタロシアニン顔料溶液をNP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名、日本精密化学社製)を用いて注入することにより銅フタロシアニン顔料溶液と貧溶媒を接触させ、銅フタロシアニン顔料微粒子を析出させた。この時、銅フタロシアニン顔料溶液の注入は、送液配管の流路径及び供給口径は0.5mmとし、その供給口を貧溶媒中に入れ、流速100ml/minにて2分間行った。
次に、直径9cmのヌッチェとろ紙(アドバンテック社製、No.2(商品名))を用いて、アスピレーターで減圧ろ過することにより、微粒子状の色素物質を含むペーストを得た。得られたペーストを再度蒸留水に分散し、再度ろ過するという手順を繰り返すことによりペーストの水洗を行い、良溶媒の除去を行った。ペーストの水洗は、顔料濃度5%となるようペーストを分散した際の伝導度が1μs以下になるまで繰り返した。
こうして得られた顔料を含む水ペーストを80℃で12時間乾燥させ、粉末状の色素物質Aを得た。
【0289】
<色素分散液Aの調製>
下記組成からなる色素物質A、分散剤および溶媒混合物をビーズミル分散することにより、α型フタロシアニンPGMEA分散液(色素分散液A)を調製した。
分散は、モーターミルM−50(商品名、アイガー・ジャパン社製)を用い、直径0.1mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで5時間行った。
色素物質 11.0質量部(顔料10質量部)
Disperbyk−200(ビッグケミー社製) 10.0質量部
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 79.0質量部
得られた色素分散液Aは、電子顕微鏡による観察の結果、体積加重平均直径20.0nm(同体積球換算)、変動係数15%からなる微細な顔料粒子を含むことを確認した。(表1中には、「分散液A」と記載した。)
【0290】
<C.I.Pigment Blue15:6分散液の調整>
C.I.Pigment Blue15:6を11.5質量部(平均粒子径55nm)、及び顔料分散剤BYK−161(BYK社製)を3.5質量部、PGMEA85質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、顔料分散液を得た。顔料分散液について、顔料の平均1次粒子径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社製))により測定したところ、25nmであった。
【0291】
なお、P.V.23分散液は、上述の<P.B.15:6分散液の調整>のうち、P.B.15:6をP.V.23に置き換えることにより、同等の方法に従い得ることができる。
また、P.B.15分散液は、上述の<P.B.15:6分散液の調整>のうち、P.B.15:6をP.B.15に置き換えることにより、同等の方法に従い得ることができる。
【0292】
<青色硬化性組成物の調整>
下記の各成分を混合して溶解し、青色硬化性組成物を得た。
シクロヘキサノン 1.95部
メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸の共重合体 20%シクロヘキサノン溶液(樹脂A)
(モル比=70:30、重量平均分子量30000) 0.1部
フッ素系界面活性剤(ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製))
1%シクロヘキサノン溶液 0.75部
光重合開始剤(開始剤1) 0.242部
重合性モノマー 0.76部
特定錯体(例示化合物Ia−5)10wt% PGMEA溶液 17.89部α型フタロシアニンPGMEA分散液(色素分散液A) 8.40部
(固形分濃度13.1%、顔料濃度9.86%)
【0293】
〔実施例2から11〕
次に、各成分の種類および量を下記表1に示すように変更し、実施例1の調製と同様にして青色硬化性組成物である実施例2から11を調製した。
なお、P.V.23は、C.I.ピグメントバイオレット23の略である。
【0294】
〔比較例1から3〕
次に、各成分の種類および量を下記表1に示すように変更し、実施例1の調製と同様にして青色硬化性組成物である比較例1から3を調製した。
なお、P.B.15:6およびP.B.15は、それぞれC.I.ピグメントブルー15:6およびC.I.ピグメントブルー15の略である。
【0295】
表1中の各成分のカッコ内の数値は、含有量(質量部)を示す。
【表1】

【0296】
【化48】

【0297】
【化49】

【0298】
〔比較例4〕
次に、実施例1のオキシム重合開始剤を2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;アセトフェノン系)に変更する以外は、実施例1と同様の組成で、実施例1と同様に調整し、青色硬化性組成物である比較例4を調製した。
【0299】
〔各銅フタロシアニン顔料のλmaxの確認試験〕
上記実施例1〜11および比較例1〜4で使用した各銅フタロシアニン顔料のλmax及び粉末X線回折におけるフラッグ角度(2θ)を下記表2に示す。
【0300】
(粉末X線回折)
X線回折測定にはPANalytical社製の全自動多目的X線回折装置(X‘Pert PRO MPD)を用いた。回折角2θ=5〜60°の範囲での回折強度を測定した。
【0301】
(透過スペクトル)
透過スペクトルは島津製作所製の紫外可視分光光度計(UV−2450)を用いて380nm〜780nmの透過スペクトルを測定した。
本発明における、銅フタロシアニンの波長400〜450nmにおける透過スペクトルの透過率が、前記400〜450nmの波長全体に亘って、従来用いられていたε型銅フタロシアニンのそれよりも大きいという特性は、380〜780nmにおける透過スペクトルの透過率が最大となる波長(λmax)での透過率(Tmax )に対する波長425nmにおける透過率(T425 )の比(T425 /Tmax )≧0.70であることを評価基準として確認した。
【0302】
【表2】

【0303】
表2に示すように、上記実施例1〜11および比較例4で使用した色素分散液Aに用いた銅フタロシアニン顔料(前記合成例で得た色素物質A)は、結晶型がα型であり、400〜500nmにおける透過率の極大値(λmax)が475nmより短波領域にある、本発明の請求項1に規定される銅フタロシアニン顔料であることが確認された。また、比較例1、2に用いた顔料PB15:6は結晶型がε型であり、比較例3に用いたPB15顔料は結晶型はα型ではあるが、λmaxがより長波長側にあり、いずれも本発明の範囲外である比較色素であることが確認された。
【0304】
[ザラツキの評価]
実施例1から11、比較例1から4を付与、この塗布膜の乾燥膜厚が0.8μmになるように、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使
用して、365nmの波長で1000mJ/cm2で膜の全面を露光した。
その後、露光後の塗布膜が形成されているシリコンウエハー基板をスピン・シャワー現
像機(DW−30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載せ、CD−2
000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒
間、パドル現像を行ない、200℃8minの加熱処理(ポストベーク)を行った。このガラス基板を光学顕微鏡の対物レンズと光源との間に設置して光を対物レンズに向けて照射したときの透過光の状態を、倍率1000倍のデジタルカメラが設置された光学顕微鏡によって観察した。
この光学顕微鏡に設置されたデジタルカメラには、128万画素のCCDが搭載されており、光が透過する膜表面を撮影した。撮影画像は、8ビットのビットマップ形式でデジタル変換したデータ(デジタル画像)として保存した。
なお、膜表面の撮影は、任意に選択した20の領域に対して行なった。
また、デジタル変換したデータは、撮影画像をRGBの3原色それぞれの輝度を0から255までの256階調の濃度分布として数値化して保存した。
次いで、保存されたデジタル画像について、1つの格子サイズが実基板上の2μm四方に相当するように格子状に区画し、1つの区画内での輝度を平均化した。
本実施例においては、128万画素のデジタルカメラで光学1000倍の画像を撮影したため、実基板上の2μmは撮影画像上の2mmとなり、ディスプレイ上における画像サイズが452mm×352mmであったことから、一つの領域における総区画数は39776個であった。
そして、各領域の全区画について、任意の1区画の平均輝度とそれに隣接する全ての隣接区画の平均輝度とを計測した。計測した任意の1区画の平均輝度と隣接区画の平均輝度との差が5以上の区画を有意差区画と認定し、全領域の有意差区画の平均総数と、全領域の有意差区画の平均総数が各領域の全区画数(39776個)に対して占める割合とを算出した.この全区画数に対する有意差区画の占める割合を、画像のザラツキ評価を行なうための指標とし、下記の評価基準にしたがって評価した。
評価結果を下記表3に示す。
<評価基準>
○ :全区画数に対する有意差区画の占める割合が6%未満である。
△ :全区画数に対する有意差区画の占める割合が6%以上8%未満である
× :全区画数に対する有意差区画の占める割合が8%以上である。
【0305】
なお、比較例4の青色硬化性組成物は、実施例1と同一の条件で現像したところ、膜が現像によって除去されて、画像が形成されなかったため、評価を行うことはできなかった。
【0306】
【表3】

【0307】
表3に示すように、α型銅フタロシアニン顔料を含む実施例1〜11を用いて作製されたカラーフィルタは、ザラツキが抑制されていた。一方、α型銅フタロシアニン顔料を含まない比較例1〜3を用いて作製されたカラーフィルタは、ザラツキが観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶型がα型であり、400〜500nmにおける透過率の極大値が475nmより短波領域にある銅フタロシアニン顔料と、オキシム重合開始剤と、重合性化合物と、溶剤とを含む青色硬化性組成物。
【請求項2】
さらに、下記一般式(I)で表されるジピロメテン化合物と金属原子または金属化合物とから得られるジピロメテン金属錯体化合物またはその互変異性体を含む請求項1に記載の青色硬化性組成物。
【化1】


一般式(I)中、RからRは各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。
【請求項3】
前記ジピロメテン金属錯体化合物またはその互変異性体が、下記一般式(II)で表される化合物またはその互変異性体である請求項2に記載の青色硬化性組成物。
【化2】


一般式(II)中、R〜RおよびRは各々独立に、水素原子または1価の置換基を表し、R10およびR11は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アニリノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。但し、R〜R、R10、R11のいずれかの置換基が2価の連結基となって−L−または−L−と結合しているか、R〜R、R10、R11のいずれかの置換基が単結合となって、−L−または−L−が直接ジピロメテン骨格に置換している。Maは、金属または金属化合物を表す。Xは、Maの電荷の中和に必要な基を表し、rは0、1または2を表す。X、Xは各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、YおよびYは各々独立に、NR(Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)、または酸素原子を表し、R10とYは、互いに結合して、5員、6員または7員の環を形成していてもよく、R11とYとが互いに結合して5員、6員または7員の環を形成していてもよい。Mは、水素原子、−COの電荷を中和するのに必要な有機塩基若しくは金属原子を表す。ただし、電荷の中和が不要である場合は、Mは存在しない。Lは、単結合または(m+1)価の連結基を表す。mは1、2または3を表し、pは1または2を表す。Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは酸素原子またはNR(Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す)を表す。Lは単結合または(n+1)価の連結基を表し、nは1、2または3を表し、qは1または2を表す。pが2のとき、複数の{(L)−(CO}は同一でも異なっていてもよい。qが2のとき、複数の{(L)−(Q−COC(R)=CH}は同一でも異なっていてもよい。mが2または3のとき、複数の(COM)は同一でも異なっていてもよい。nが2または3のとき、複数の(Q−COC(R)=CH)は同一でも異なっていてもよい。
【請求項4】
さらに、ジオキサジン顔料Pigment Violet 23を含む請求項1から請求項3のいずれかに記載の青色硬化性組成物。
【請求項5】
前記銅フタロシアニン顔料の微粒子の形状が球状である請求項1に記載の青色硬化性組成物。
【請求項6】
前記銅フタロシアニン顔料が、該顔料の良溶媒に溶解させた溶解液と、該顔料の貧溶媒とを混合することにより得られる粒子状顔料である請求項1または請求項5のいずれかに記載の青色硬化性組成物。
【請求項7】
前記良溶媒が、酸または酸にその他の溶媒を含有する溶媒である請求項6に記載の青色硬化性組成物。
【請求項8】
前記貧溶媒が、純水である請求項6に記載の青色硬化性組成物。
【請求項9】
支持体上に、請求項1から請求項8のいずれかに記載の青色硬化性組成物を付与して青色硬化性組成物層を形成する工程(A)と、該工程(A)にて形成された青色硬化性組成物層を、マスクを介して露光した後、現像して着色パターンを形成する工程(B)とを有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されたカラーフィルタ。
【請求項11】
請求項9に記載のカラーフィルタを備えた固体撮像素子。
【請求項12】
請求項9に記載のカラーフィルタを備えた液晶表示装置。

【公開番号】特開2012−42536(P2012−42536A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181388(P2010−181388)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】