説明

着色複合粉末及びこれを配合した化粧料

【課題】 特定の微粒子金属コロイドを被覆した複合粉末を、ファンデーション、アイシャドー、口紅、グロス、マスカラ、アイライナー、ネールエナメル、ネールエナメルベースコート、クリーム、乳液等の化粧料に配合して、安定性に優れかつ鮮やかな有色の外観を持つ化粧料を提供すること。
【解決手段】 板状の干渉顔料に粒子径1〜40nmの微粒子金属コロイドを被覆させ、場合により、さらに1種以上の金属酸化物または金属水酸化物を被覆したことを特徴とする着色複合干渉顔料及びこれを配合した化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鮮やかな有色の外観を持つ着色複合干渉顔料及びこれを配合した化粧料に関する。さらに詳しくは、干渉色を持つ板状粉末に特定の微粒子金属コロイドを被覆した複合粉末を、ファンデーション、アイシャドー、口紅、グロス、マスカラ、アイライナー、ネールエナメル、ネールエナメルベースコート、クリーム、乳液等の化粧料に配合して、安定性に優れかつ鮮やかな有色の外観を持つ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、特にファンデーション、口紅、ネールエナメル等のメーキャップ化粧料は、メーキャップ効果を付与するために、有機顔料、無機顔料、あるいは雲母チタン等のパール剤を配合するものが殆どである。
【0003】
しかし、これら顔料のうち、無機顔料は安定性に優れるものの彩度は低く、鮮やかな発色は得ることが非常に困難であり、また逆に、有機顔料は鮮やかな発色を得られるものの、化粧料に用いられるものは、光を照射することにより色調が大きく変化してしまい、安定性が非常に悪いものが多い。
【0004】
そこで、安定性が高く、彩度の高い色材として微粒子金属コロイドゾルに注目した研究がなされてきた。これらの微粒子金属コロイドはプラズモン発色と呼ばれる原理により、金であれば550nm付近に吸収を持つことから赤色を呈し、銀や水銀であれば450nm以下の低波長側に吸収を持つことから黄色を呈することが知られている。そして、この原理を用いた特許も多数出願されてきた。
【0005】
例えば、特許文献1には界面活性剤又は水溶性高分子を吸着せしめた金コロイドの水溶液を含有する方法が記載されている。特許文献2には金ヒドロゾルを含有することを特徴とする方法が記載されている。特許文献3には金属酸化物上に金水酸化物を析出し、金水酸化物を焼成することにより分解し金超微粒子を均一に析出固定した金超粒子固定化酸化物を配合する方法が記載されている。特許文献4には銀ヒドロゾルを含有する方法が記載されている。特許文献5には塩化金酸を還元した時に得られる微細な金のコロイド粒子をその生成と同時に担体表面に担体重量に対し金0.1重量%から5重量%をコーティングしたことを特徴とする紫色顔料を配合する方法が記載されている。特許文献6には絹フィブロイン水溶液に金ヒドロゾル水溶液を混合した染色絹フィブロインを配合する方法が記載されている。特許文献7には金ヒドロゾルを配合したことを特徴とする多層型化粧水が記載されている。特許文献8には金塩水溶液をクエン酸、アスコルビン酸またはそれらの塩で還元した後に、平均重合モル数10以上のポリオキシエチレン鎖を有し、かつHLBが12以上である非イオン性界面活性剤を添加することを特徴とする金コロイド溶液の製造方法が記載されている。特許文献9には金微粒子が水に溶解した溶液であって、最高粒径が0.5μm以下であることを特徴とする金微粒子の溶液を配合する方法が記載されている。特許文献10には酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を主成分とし、0.01〜30重量%の金微粒子を分散含有したフレーク状金属酸化物を配合する方法が記載されている。特許文献11には化粧品として許容される媒体中に懸濁させた、金属元素、半金属、金属合金、金属元素または半金属の炭化物もしくは窒化物の粒子を含む透明な髪用化粧品組成物を、髪に適用することを含む髪に光沢を与えるための髪用美容方法が収載されている。特許文献12には体温において疎水性となる転移温度を有する低温親水性-高温疎水性可逆変化型感温性樹脂又はその架橋体と成分に包摂された貴金属コロイド粒子及び溶剤からなるケラチンタンパク質を配合した着色用化粧料が収載されている。また、特許文献13〜16には貴金属コロイド0.001%〜50%を母材顔料に被覆し、焼成した処理顔料が収載されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭63-41508
【特許文献2】特開昭61-240976
【特許文献3】特開昭63-258205
【特許文献4】特開平2-92146
【特許文献5】特開昭63-41508
【特許文献6】特開平2-201776
【特許文献7】特開平3-204775
【特許文献8】特開平6-252800
【特許文献9】特開平6-150370
【特許文献10】特開平8-66137
【特許文献11】特開2000-190120
【特許文献12】特開2002-80421
【特許文献13】特開2004-238326
【特許文献14】特開2004-238327
【特許文献15】特開2004-238328
【特許文献16】特開2004-231539
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの特許に記載されているように、金属ゾルのまま化粧料に配合すると、鮮やかな発色は得られるものの、全てが同一色で覆われてしまう欠点がある。また、金属酸化物の中に固定化する場合はその欠点は克服されるものの、鮮やかさに欠ける場合が多く、金属コロイドの鮮やかさの魅力が失われてしまい、化粧品としての魅力を半減させてしまう傾向があった。
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の粒径を持つ金属コロイドゾルを、干渉色を有する板状粉末に固定化し、場合により1種以上の金属酸化物、金属水酸化物を被覆した複合干渉顔料を得て、これを化粧料に配合すると、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の目的は、特定の金属コロイド粒子を固定化した板状複合干渉顔料を提供し、これを化粧料に配合することにより、安定性を損なうことなく鮮やかな発色をする化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、干渉色を有する板状粉末に粒子径1〜40nmの微粒子金属コロイドを被覆させ、場合により、さらに1種以上の金属酸化物または金属水酸化物を被覆したことを特徴とする複合干渉顔料を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記微粒子金属コロイドが金、銀、白金であり、その被覆量が複合粉末全量に対して0.001〜20質量%であることを特徴とする上記の複合干渉顔料を提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、前記干渉色を有する板状粉末が、雲母チタン、酸化チタン被覆合成雲母、酸化チタン及び酸化ケイ素被覆雲母、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化チタン被覆シリカフレーク、酸化チタン被覆アルミナフレーク、シリカ被覆雲母、シリカ被覆合成雲母、シリカ被覆ガラスフレーク、酸化チタンフレーク、シリカ被覆アルミニウムのいずれかであることを特徴とする上記の着色複合干渉顔料を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、前記着色複合干渉顔料の外観色と干渉色の色相の差が、マンセル表色系における色相H(Hue)値で10以内の値を有することを特徴とする上記の着色複合干渉顔料を提供するものである。
すなわち、本発明では複合化した板状粉末干渉色と金属コロイドの色調が同系色のものが好ましい。具体的には複合化した着色板状干渉顔料を白下地上と黒下地上に塗布したものをそれぞれ測定した結果のマンセル表色系での色相H値が±5以内で示されるものである。
【0014】
さらに、本発明は、前記金属酸化物または金属水酸化物の金属が、チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛のいずれかであり、金属酸化物または金属水酸化物の被覆量が複合干渉顔料全量に対して0.005〜80質量%であることを特徴とする上記の複合粉末を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、上記の複合干渉顔料を、化粧料全量に対して0.05〜80質量%配合したことを特徴とする化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の干渉色を持つ板状粉末に金属コロイド粒子を固定化した着色複合干渉顔料粉末は、化粧料に配合することにより、安定性を損なうことなく鮮やかな発色をする化粧料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳述する。
【0018】
本発明の着色複合干渉顔料粉末は、干渉色を持つ板状粉末に微粒子金属コロイドを被覆した板状粉末である。この微粒子金属コロイドは、一般に市販されている金属コロイドゾルを用いることができる。微粒子金属コロイドの平均粒径は1〜40nm、好ましくは3〜20nmである。粒径が40nmを超えると、プラズモン発色効果が失われて特異的な吸収を示さなくなり、ただの金属色が現れるだけになってしまう。被覆量は板状粉末全量に対して0.001〜20質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。0.001質量%未満の被覆量では色調が薄くなりすぎて鮮やかな外観が得られない。また、20質量%を超えると、濃度が濃すぎて明度が下がり、やはり鮮やかな外観が得られなくなってしまう。
【0019】
本発明に使用される干渉色を有する板状粉末は、化粧料に用いられる干渉色を有する板状粉末を用いることができる。たとえば雲母チタン、酸化チタン被覆合成雲母、酸化チタン及び酸化ケイ素被覆雲母、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化チタン被覆シリカフレーク、酸化チタン被覆アルミナフレーク、シリカ被覆雲母、シリカ被覆合成雲母、シリカ被覆ガラスフレーク、酸化チタンフレーク、シリカ被覆アルミニウム等があげられる。干渉光を持つことにより金属コロイドにより発せられる色を強調する効果がある。市販品では、例えば、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、カーミン被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、酸化チタン被覆合成金雲母、ベンガラ・酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化チタン被覆アルミナフレーク(メルク社製シローナシルバーなど)、酸化チタン被覆シリカフレーク(メルク社製シローナマジックモーヴなど)、酸化鉄・シリカ被覆アルミニウム、酸化鉄・シリカ被覆酸化鉄、酸化チタン及び酸化ケイ素被覆雲母(メルク社製チミロンスプレンディッドゴールド、同シローナカリビアンブルーなど)、酸化チタン被覆ガラスフレーク(日本板硝子社製メタシャインMC1080RR、エンゲルハード社製リフレックスシリーズなど)を用いることができる。中でも金属コロイドの発色効果を損なうことが少なく、輝度の高い干渉色を有する外観が白色の酸化チタン被覆合成雲母、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化チタン被覆シリカフレーク、酸化チタン被覆アルミナフレーク、シリカ被覆雲母、シリカ被覆合成雲母、シリカ被覆ガラスフレーク、酸化チタンフレーク、シリカ被覆アルミニウムが望ましい。
特に、前記着色複合干渉顔料の外観色と干渉色の色相の差が少ないと色調が特に鮮やかになるため、外観色と干渉色の色相の差がマンセル表色系における色相H(Hue)値で10以内の値を有することが望ましい。
【0020】
本発明の複合粉末の製造方法は特に限定されないが、例えば、塩化金酸を還元することで調整された金属微粒子を酸性条件下、あるいは、エタノールやIPAなどのアルコール溶媒中で板状粉末と攪拌することで金属微粒子を粉末表面に被覆する方法が挙げられる。
【0021】
上記で得られる金属コロイド被覆複合粉末は、場合により、1種以上の金属酸化物または金属水酸化物を、さらに被覆することが出来る。被覆する金属酸化物、金属水酸化物は、公知の成分のものを公知の方法で1種以上被覆することができる。例えば、酸化鉄、水酸化鉄も用いることができるが、金属酸化物または金属水酸化物の金属は、チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコン、亜鉛のいずれかが望ましい。特に白色である水酸化チタン、酸化チタン、水酸化ケイ素、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛などが望ましい。これらを被覆することで、被覆した金属コロイドの系への溶出を抑制することができ、また、表面の反射率を制御することにより、外観の明度、彩度をコントロールすることが可能となる。
【0022】
金属コロイド被覆複合粉末に、さらに金属酸化物または金属水酸化物が被覆した複合粉末は、例えば、硫酸チタニル法や四塩化チタン法などにより酸化チタン、水酸化チタンを被覆することができ、また金属アルコキシドの加水分解により金属水酸化物を、さらにそれを100℃〜800℃程度に焼成することにより金属酸化物を被覆することにより製造できる。具体的製法は、実施例にて後述する。なお、実施例2及び4で製造される着色複合顔料粉末は、被覆金属コロイドの上に、さらに金属酸化物または金属水酸化物が被覆された粉末になっている。すなわち、板状干渉顔料粉末があり、その表面に金属コロイドが存在し、さらにその上に金属酸化物または金属水酸化物が被覆されている。
【0023】
金属酸化物または金属水酸化物の被覆量は特に限定されないが、複合粉末全量に対して0.005〜80質量%であることが好ましい。それ以上被覆すると、金属コロイドの発色が低下してしまう傾向があり、外観の魅力が低減してしまう。
【0024】
上記で得られる複合粉末は化粧料配合原料として極めて優れた有色粉末である。化粧料への配合量は、化粧料全量に対して0.05〜80質量%、好ましくは1.0〜40質量%である。0.05重量%未満では十分な発色効果が得られず、一方、80重量%超では他の原料を入れる処方幅が非常に狭くなり、粘度、硬度などの製品の物性調整ができなくなってしまう。
【0025】
本発明の複合粉末を配合できる化粧料は限定されない。例えば、ファンデーション、アイシャドー、口紅、グロス、マスカラ、アイライナー、ネールエナメル、ネールエナメルベースコート等のメーキャップ化粧料、化粧水、乳液、クリーム等の基礎化粧料、ヘアスプレー、頭髪油などの毛髪化粧料等に、複合粉末を配合して本発明の化粧料が得られる。
特にメーキャップ化粧料が好ましい。
【0026】
本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない程度に必要に応じて固体、半固体、液状の油剤、水、水溶性高分子、多価アルコール、溶剤、界面活性剤、粉体、樹脂、有機変性粘土鉱物、高分子、紫外線吸収剤、保湿剤、防腐剤、殺菌剤、香料、酸化防止剤、美肌用成分、生理活性成分粉末、顔料、染料、パール剤、ラメ剤、薬剤、保湿剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、充填剤、界面活性剤、金属石鹸等の一般に化粧料に配合される原料を配合することができる。
【実施例】
【0027】
本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。本発明は下記の実施例により限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0028】
各実施例の記載に先立ち、製造粉末の外観色、及び干渉色の色相測色方法を以下に記載する。
各種板状複合粉体をニトロセルロースラッカー(武蔵塗料社製)に1(粉体)/15(ニトセルロースラッカー)の割合で均一に攪拌混合し、白黒下地のカラーマッチングペーパーに0.101mmの塗膜を作成した。それを白下地上の塗膜、及び黒下地上の塗膜をそれぞれ積分球型分光測色機CM-2600d(ミノルタ社製)を用いてマンセル表色系における色相H(Hue)を測色した。このとき、白下地上の測色結果を外観色の色調、黒下地上の測色結果を干渉色の色調として用いた。
【0029】
<着色複合顔料粉末>
「実施例1 微粒子金コロイドコーティング粉末の製造」
5mol/lの塩酸を用いてPH1.5に調整した1000gのイオン交換水に雲母チタン(メルク社製チミロンスーパーレッド)100gを入れ、室温で5分間攪拌した。ついで微粒子金コロイドゾル(日本ペイント製ファインスフェアゴールド;粒径約10nm金コロイドの10wt%分散水溶液)5gを徐々に添加した。全量滴下後、室温で1時間攪拌した。次いでろ過、水洗し、105℃で2時間乾燥させ、鮮やかな赤色の外観色、及び鮮やかな赤色の干渉色を呈する0.5%金コロイド被覆板状着色複合干渉顔料粉末A(複合粉末A)を得た。
得られた着色複合粉末の色相Hは、外観色が1.18RP、干渉色が1.45RPで、H値の差は0.27であった。
【0030】
「実施例2 微粒子金、酸化チタンコーティング粉末の製造」
硫酸チタニル(キシダ化学株式会社製)160gをイオン交換水160g中で1昼夜攪拌し、50%硫酸チタニル溶液を調整した。次いで、1000gのイオン交換水に、調整した50%硫酸チタニル溶液全量を添加し、次いで酸化チタン被覆合成雲母(日本光研社製プロミネンスRD)100gを入れ、室温で5分間攪拌した。ついで微粒子金コロイドゾル(日本ペイント製ファインスフェアゴールド;粒径約10nm金コロイドの10wt%分散水溶液)10gを徐々に添加した。全量滴下後、液温を100℃に保持しながら1時間攪拌した。反応液を冷却後、ろ過、水洗した。次いで200℃で2時間焼成を行い、鮮やかな赤色の外観色、及び鮮やかな赤色の干渉色を呈する1%微粒子金コロイド及び10%酸化チタン被覆板状着色複合干渉顔料粉末B(複合粉末B)を得た。
得られた着色複合粉末の色相Hは、外観色が1.47RP、干渉色が3.07RPで、H値の差は1.6であった。
【0031】
「実施例3 微粒子金、無水ケイ酸コーティング粉末の製造」
1000gのイソプロピルアルコールに雲母チタン(メルク社製チミロンスプレンディッドレッド)100gを入れ室温で5分間攪拌した。そこへ50gのイオン交換水、28%アンモニア溶液を適量入れて溶液PHを10に調整して室温で10分間攪拌した。次いで、10gの微粒子金コロイドゾル(日本ペイント製ファインスフェアゴールド;粒径約10nm金コロイドの10wt%分散水溶液)、20gのテトラエトキシシランを溶解した100gのイソプロピルアルコールを徐々に添加した。全量滴下後、室温で24時間攪拌し、ろ過、洗浄後、105℃で1時間乾燥させた。次いで700℃で1時間焼成を行い、鮮やかな赤色の外観色、及び鮮やかな赤色の干渉色を呈する1%微粒子金コロイド及び6%無水ケイ酸被覆板状着色複合顔料粉末C(複合粉末C)を得た。
得られた着色複合粉末の色相Hは、外観色が0.40RP、干渉色が2.21RPであり、H値の差は1.81であった。
【0032】
「実施例4 微粒子金、無水ケイ酸コーティング粉末の製造」
1000gのイソプロピルアルコールに酸化チタン被覆ガラスフレーク(日本板硝子社製メタシャインMC1080RR)100gを入れ室温で5分間攪拌した。そこへ50gのイオン交換水、28%アンモニア溶液を適量入れて溶液PHを10に調整して室温で10分間攪拌した。次いで、10gの微粒子金コロイドゾル(日本ペイント製ファインスフェアゴールド;粒径約10nm金コロイドの10wt%分散水溶液)、20gのテトラエトキシシランを溶解した100gのイソプロピルアルコールを徐々に添加した。全量滴下後、室温で24時間攪拌し、ろ過、洗浄後、105℃で1時間乾燥させた。次いで700℃で1時間焼成を行い、鮮やかな赤色の外観色、及び鮮やかな赤色の干渉色を呈する1%微粒子金コロイド及び6%無水ケイ酸被覆板状着色複合顔料粉末D(複合粉末D)を得た。
得られた着色複合粉末の色相Hは、外観色が0.52RP、干渉色が2.98Pであり、H値の差は7.54であった。
【0033】
「実施例5 微粒子銀、酸化チタンコーティング粉末の製造」
硫酸チタニル(キシダ化学株式会社製)160gをイオン交換水160g中で1昼夜攪拌し、50%硫酸チタニル溶液を調整した。次いで、1000gのイオン交換水に、調整した50%硫酸チタニル溶液全量を添加し、次いで雲母チタン(メルク社製チミロンスーパーゴールド)100gを入れ、室温で5分間攪拌した。ついで微粒子銀コロイドゾル(日本ペイント製ファインスフェアシルバー;粒径約5〜7nm銀コロイドの10wt%分散水溶液)20gを徐々に添加した。全量滴下後、液温を100℃に保持しながら1時間攪拌した。反応液を冷却後、ろ過、水洗した。次いで200℃で1時間焼成を行い、鮮やかな黄色の外観色、及び鮮やかな黄色の干渉色を呈する2%銀コロイド、10%酸化チタン被覆板状着色複合干渉顔料粉末E(複合粉末E)を得た。
得られた着色複合粉末の色相Hは、外観色が6.98Y、干渉色が4.36Yであり、H値の差は2.32であった。
【0034】
「実施例6 微粒子金、酸化チタンコーティング粉末の製造」
硫酸チタニル(キシダ化学株式会社製)160gをイオン交換水160g中で1昼夜攪拌し、50%硫酸チタニル溶液を調整した。次いで、1000gのイオン交換水に、調整した50%硫酸チタニル溶液全量を添加し、次いで雲母チタン(メルク社製チミロンスーパーブルー)100gを入れ、室温で5分間攪拌した。ついで微粒子金コロイドゾル(日本ペイント製ファインスフェアゴールド;粒径約10nm金コロイドの10wt%分散水溶液)10gを徐々に添加した。全量滴下後、液温を100℃に保持しながら1時間攪拌した。反応液を冷却後、ろ過、水洗した。次いで200℃で2時間焼成を行い、鮮やかさは実施例1〜5に若干劣るものの、赤色の外観色、及び青色の干渉色を呈する1%微粒子金コロイド及び10%酸化チタン被覆板状着色複合干渉顔料粉末F(複合粉末F)を得た。得られた着色複合粉末の色相Hは、外観色が3.02RP、干渉色が5.63PBで、H値の差は17.39であった。
【0035】
[顔料としての評価]
上記で製造した実施例1〜6までの複合粉末を顔料粉末として評価するため、以下の2項目にて評価を行った。
【0036】
[鮮やかさ]
実施例1〜6までの複合粉末の外観の鮮かさを色調検査に携わる専門パネル(10名)により下記の評価基準により評価した。なお、比較例には鮮やかな赤色外観色を持つ有機色材であるカーミンを被覆した雲母チタンであるメルク社製コロロナカーミンレッド、安定性の高い赤色外観色を持つ無機色材であるベンガラを被覆した雲母であるメルク社製コロロナボルドーを用いた。
<評価基準>
◎:8名以上が鮮やかと判断
○:5〜7名が鮮やかと判断
△:2〜4名が鮮やかと判断
×:1名以下が鮮やかと判断
【0037】
[光安定性]
光安定性を評価するため、サンプルへ光照射を行い、その前後の色差を測定した。測定法としては上項で作製した塗膜に50℃で30時間 キセノン光照射を行った。そして、上述した同じ方法にて、L*a*b*表色系におけるL*値(明度)、a*値(赤み)、b*値(黄み)を求め、そこから以下の式により色差を求めた。この色差は小さければ小さい程、光安定性に優れていることを示している。
[数1]
色差={(照射後L*値-照射前L*値)2+(照射後a*値-照射前a*値)2
(照射後b*値-照射前b*値)20.5
【0038】
複合粉末、及び対照品の結果を、H値とともに表1に示す。
【表1】

【0039】
表1にあるように、複合粉末AからEまでは非常に鮮やかで、色差も小さく、光安定性に優れることが確認された。また複合粉末Fも鮮やかさはAからEにやや劣るものの、鮮やかであった。比較例のコロロナカーミンレッドは鮮やかなものの、色差が大きく、光安定性に悪いことが確認され、一方のコロロナボルドーは光安定性は良いものの、鮮やかさに欠ける結果となった。このことから複合粉末AからFは、比較例に挙げたものに比べて優れるものであることが確認された。
【0040】
次に、本発明の複合粉末を配合した化粧料の実施例を挙げる。
〔実施例7,8:アイシャドー〕
(製法)
粉部、及び油相部をそれぞれ均一に分散し、その後両者を混合して金皿に打型した。
それらの外観の鮮やかさ、光安定性について、以下のように評価した。
【0041】
[外観の鮮やかさ]
各試料をブラシで採り、それを用いて化粧品の専門パネル(10名)により使用してもらい、鮮やかさを官能で評価した。
<評価基準>
◎:8名以上が鮮やかと判断
○:5〜7名が鮮やかと判断
△:2〜4名が鮮やかと判断
×:1名以下が鮮やかと判断
【0042】
[光安定性]
[0039]記載の計算法と同様に、外観の光照射時の色差を測定し、その色差を以下で評価した。
○:照射前後の色差が3未満
△:照射前後の色差が3以上〜7未満
×:照射前後の色差が7以上
【0043】
【表2】

表にあるように、実施例7,8で得られたアイシャドー、特に実施例7は比較例1,2に比べて、外観の鮮やかさ、光照射時の安定性どちらにも優れたものであった。
【0044】
〔実施例9 ファンデーション〕
複合粉末A(実施例1) 10
ジメチルポリシロキサン(粘度100mPa・s) 5
イソステアリン酸 0.5
リンゴ酸ジイソステアリル 3
トリ2−エチルヘキサンサングリセリル 1
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
球状PMMA被覆雲母 6
微粒子酸化亜鉛 0.5
微粒子酸化チタン 2
合成金雲母 2
金属石鹸処理タルク 8
球状シリカ 5
ビタミンEアセテート 0.1
δ−トコフェロール 0.1
エチルパラベン 適量
トリメトキシ桂皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル 1
パラメトキシ桂皮酸2−エチルへキシル 3
球状ポリアクリル酸アルキル粉末 6
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆タルク 残余
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆セリサイト 20
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆酸化チタン 10
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆顔料(色剤) 5
(製法)
粉部、及び油相部をそれぞれ均一に分散し、その後両者を混合して金皿に打型した。ここで得られたファンデーションは、塗布時の仕上がりに優れ、美しい色彩に彩られたメーキャップ効果が得られた。
【0045】
〔実施例10:口紅〕
複合粉末C(実施例3) 5
マイクロクリスタリンワックス 1
セレシン 7
キャンデリラロウ 3
トリイソステアリン酸グリセリル 15
リンゴ酸ジイソステアリル 2
ジイソステアリン酸グリセリル 1
トリオクタン酸トリメチロールプロパン 0.5
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 残余
リン酸水素カルシウム 1
シリコン被覆顔料(ベンガラ、酸化チタンなど) 適量
硫酸バリウム 2
染料 適量
重質流動イソパラフィン 10
(製法)
各原料を混合して95℃に加熱し、その後均一に攪拌して、金型に流し込み冷却した。この結果得られた口紅は塗布時の仕上がりに優れ、美しい色彩に彩られたメーキャップ効果が得られた。
【0046】
〔実施例11:マスカラ〕
複合粉末D(実施例4) 0.5
軽質イソパラフィン 7
ジメチルポリシロキサン(粘度100mPa・s) 2
デカメチルシクロペンタシロキサン 10
トリメチルシロキシケイ酸 10
メチルポリシロキサンエマルション 適量
1,3−ブチレングリコール 4
ジオレイン酸ポリエチレングリコール 2
ジイソステアリン酸ジグリセリル 2
炭酸水素ナトリウム 0.2
酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
デヒドロ酢酸ナトリウム 適量
黒酸化鉄 7
海藻エキス 0.1
ベントナイト 1
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 6
ポリ酢酸ビニルエマルション 30
精製水 残量
(製法)
常法により得られたマスカラは塗布時の仕上がりに優れ、美しい色彩に彩られたメーキャップ効果が得られた。
【0047】
〔実施例12:ネールエナメル〕
複合粉末C(実施例3) 2
ブタノール 0.5
マカデミアナッツ油 0.1
酢酸エチル 7
酢酸ブチル 残余
ポリオキシエチレンアルキル(12−15)エーテルリン酸(2E.O.) 0.1
塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム 0.5
酸化チタン被覆合成金雲母 0.1
合成金雲母 0.1
ステアリン酸カルシウム 0.05
クエン酸 0.01
酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
酸化チタン・無水ケイ酸複合被覆マイカ(ブルー) 適量
黒酸化鉄 適量
赤色202号 適量
黄色4号 適量
青色404号 適量
ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレンイソフタレート積層末 0.2
(角八魚鱗箔社製NEWオーロラフレーク0.1:粒径150μm)
トリメリト酸系アルキッド樹脂 12
ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト 0.5
ベンジルジメチルステアリルアンモニウムベントナイト 1
ニトロセルロース 17
安息香酸ショ糖エステル 2
クエン酸アセチルトリブチル 5
(製法)
常法により得られたネールエナメルは塗布時の仕上がりに優れ、美しい色彩に彩られたメーキャップ効果が得られた。
【0048】
〔実施例12:オーバーコート〕
複合粉末C(実施例3) 2
ニトロセルロース1/4秒(30%IPA) 8
ニトロセルロース1/2秒(30%IPA) 2
微粒子シリカ(アエロジル#380S:粒径6nm,比表面積380m2/g) 1
酸化チタン、酸化鉄被覆ガラスフレーク 2
(エンゲルハード社製ReflecksGildedGold 平均径100μm、厚み約5μm)
クエン酸アセチルトリエチル 5
イソプロピルアルコール 3
n−ブチルアルコール 2
酢酸ブチル 25
酢酸エチル 52.5
(製法)
常法により得られたオーバーコートは塗布時の仕上がり、光沢に優れ、美しい色彩に彩られたメーキャップ効果が得られた。
【0049】
〔実施例13:W/Oクリーム〕
複合粉末C(実施例3) 0.2
ジメチルポリシロキサン(粘度100mPa・s) 3
デカメチルシクロペンタシロキサン 25
トリメチルシロキシケイ酸 1
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(KF6017 信越化学社製) 2
グリセリン 1
1,3−ブチレングリコール 1
スクワラン 1
酸化チタン 1
タルク 2
ステアリン酸アルミニウム 0.5
油溶性甘草エキス 0.5
エデト酸3Na 適量
パラベン 適量
フェノキシエタノール 適量
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.8
球状ナイロン粉末 1
精製水 残余
(製法)
常法により得られたW/Oクリームはうっすらと明るい赤色を呈するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、板状粉末に特定の微粒子金属コロイドを被覆した複合粉末を、ファンデーション、アイシャドー、口紅、グロス、マスカラ、アイライナー、ネールエナメル、ネールエナメルオーバーコート、ネールエナメルベースコート、クリーム、乳液等の化粧料に配合して、安定性に優れかつ鮮やかな有色の外観を有する化粧料を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の干渉顔料に粒子径1〜40nmの微粒子金属コロイドを被覆させ、場合により、さらに1種以上の金属酸化物または金属水酸化物を被覆したことを特徴とする着色複合干渉顔料。
【請求項2】
前記微粒子金属コロイドが金、銀、白金であり、その被覆量が複合粉末全量に対して0.001〜20質量%であることを特徴とする請求項1記載の着色複合干渉顔料。
【請求項3】
前記干渉顔料が、酸化チタン被覆合成雲母、酸化チタン及び酸化ケイ素被覆雲母、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化チタン被覆シリカフレーク、酸化チタン被覆アルミナフレーク、シリカ被覆雲母、シリカ被覆合成雲母、シリカ被覆ガラスフレーク、酸化チタンフレーク、シリカ被覆アルミニウムのいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載の着色複合干渉顔料。
【請求項4】
前記着色複合干渉顔料の外観色と干渉色の色相の差が、マンセル表色系における色相H(Hue)値で10以内の値を有することを特徴とする請求項1、2または3記載の着色複合干渉顔料。
【請求項5】
前記金属酸化物または金属水酸化物の金属が、チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛のいずれかであり、金属酸化物または金属水酸化物の被覆量が複合粉末全量に対して0.005〜80質量%であることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の着色複合干渉顔料。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の着色複合干渉顔料を、化粧料全量に対して0.05〜80質量%配合したことを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2006−299051(P2006−299051A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121844(P2005−121844)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】