説明

石炭ガス化複合発電設備

【課題】 水分の含有率が比較的高い低品位炭を用いても発電効率の低下を防止することができる石炭ガス化複合発電設備を提供する。
【解決手段】 供給された石炭のガス化を行うガス化部3と、ガス化部3から供給されたガスを用いて発電を行うガス発電部4と、ガス発電部4から排出された排気ガスの熱を用いて発電を行う蒸気発電部5と、蒸気発電部5から排出された排熱を用いて石炭の乾燥を行い、ガス化部3に乾燥された石炭を供給する石炭乾燥部15と、が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、褐炭や亜瀝青炭などの低品位炭などを燃料として用いるのに好適な石炭ガス化複合発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭ガス化複合発電(以後、「IGCC」と表記する。)は、石炭をガス化し、C/C(コンバインドサイクル発電)と組み合わせることにより、従来型石炭火力に比べ、更なる高効率化・高環境性を目指した発電システムである。
IGCCは資源量が豊富な石炭を利用可能であることも大きなメリットであるが、適用炭種を拡大することにより、さらにメリットが大きくなることが知られている。
【0003】
例えば、乾式給炭方式を採用するIGCCでは、比較的高水分の石炭でも適用可能であるが、褐炭や亜瀝青炭などの低品位炭では持ち込まれる水分が多く、この水分により発電効率が低下するという問題があった。
上述の問題を解決するため、高温のガス化ガスを用いて石炭を乾燥させる技術や、ガスタービン排気ガスを用いて石炭の粉砕・乾燥させる技術などが知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【特許文献1】特開2002−155288号公報
【特許文献2】特表平8−500850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1および2に記載の技術では、高温ガスを用いるため、エクセルギ損失を無視できず、発電システムとしての効率向上に寄与する割合が小さいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、水分の含有率が比較的高い低品位炭を用いても発電効率の低下を防止することができる石炭ガス化複合発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の石炭ガス化複合発電設備は、供給された石炭のガス化を行うガス化部と、該ガス化部から供給されたガスを用いて発電を行うガス発電部と、該ガス発電部から排出された排気ガスの熱を用いて発電を行う蒸気発電部と、該蒸気発電部から排出された排熱を用いて石炭の乾燥を行い、前記ガス化部に乾燥された石炭を供給する石炭乾燥部と、が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、石炭はガス化部に供給される前に石炭乾燥部により乾燥されるため、水分の含有量が多い石炭である低品位炭を用いても、含有水分の蒸発や、水蒸気の流出による熱の持ち去り等による熱エネルギの損失を抑制することができる。
さらに、石炭の乾燥に蒸気発電部から排出された排熱を用いるため、熱エネルギの利用効率を向上させることができる。一方、石炭を乾燥させるために別途熱を発生する発熱部を設けた場合と比較して、新たな燃料やエネルギを投入する必要がない。
【0008】
上記発明においては、前記蒸気発電部には、前記蒸気発電部から排出された蒸気の熱を回収するコンデンサが設けられ、前記石炭乾燥部は、前記コンデンサにより回収された熱を用いて石炭の乾燥を行うことが望ましい。
【0009】
本発明によれば、コンデンサにより回収された熱を用いて石炭の乾燥を行うことで、水蒸気と接触させることなく石炭を乾燥させることができ、石炭に水蒸気の水分が吸収されることが防止される。
【0010】
上記発明においては、前記蒸気発電部には、前記ガス発電部から排出された排気ガスの熱により生成された水蒸気が供給される蒸気タービン部が設けられ、前記ガス化部には、前記蒸気タービン部から抽気された水蒸気が、前記石炭のガス化剤として供給されていることが望ましい。
【0011】
本発明によれば、蒸気タービン部から抽気された水蒸気をガス化剤として用いるため、例えば、ガス化剤の圧力を高める昇圧コンプレッサや、ガス化剤を生成する大規模な酸素製造装置などを設ける必要がない。
【0012】
上記発明においては、前記ガス化部には、前記ガス発電部から排出された排気ガスが、加熱用熱源として供給されていることが望ましい。
【0013】
本発明によれば、排気ガスをガス化部に導き、排気ガスの熱によりガス化部が加熱される。そのため、ガス化部の温度を維持するために、別途燃料やエネルギなどを投入する必要がない。
【0014】
上記発明においては、前記蒸気発電部には、前記ガス発電部から排出された排気ガスの熱を用いて水蒸気を生成するボイラが設けられ、前記ガス化部には、前記ボイラから排出された前記排気ガスが、前記石炭のガス化剤として供給されていることが望ましい。
【0015】
本発明によれば、ガス発電部から排出され、ボイラにおいて水蒸気の生成に用いられた後の排気ガスをガス化剤として用いるため、例えば、ガス化剤の圧力を高める昇圧コンプレッサや、ガス化剤を生成する大規模な酸素製造装置などを設ける必要がない。
ここで、ガス発電部としては、ガス化部から供給されたガスを燃料とするガスタービンを用いたガスタービン発電部や、上記ガスを燃料として用いる燃料電池発電部などを例示することができる。
【0016】
上記発明においては、前記ガス化部には、前記ボイラにより生成された水蒸気が、前記石炭のガス化剤として供給されていることが望ましい。
【0017】
本発明によれば、ボイラにより生成された水蒸気をガス化剤として用いるため、例えば、ガス化剤の圧力を高める昇圧コンプレッサや、ガス化剤を生成する大規模な酸素製造装置など別途設ける必要がない。
さらに、生成された水蒸気をガス化部に導き、水蒸気の熱によりガス化部が加熱される。そのため、ガス化部の温度を維持するために、別途燃料やエネルギなどを投入する必要がない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の石炭ガス化複合発電設備によれば、石炭はガス化部に供給される前に石炭乾燥部により乾燥されるため、水分の含有量が多い石炭である低品位炭を用いても、含有水分の蒸発や、水蒸気の流出による熱の持ち去り等による熱エネルギの損失を抑制することができる。つまり、水分の含有率が比較的高い低品位炭を用いても発電効率の低下を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備ついて図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備の構成を説明する模式図である。
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1は、褐炭や亜瀝青炭など、比較的水分量の高い低品位炭を燃料として発電を行うものである。
石炭ガス化複合発電設備1には、図1に示すように、石炭の前処理および乾燥などを行う前処理部2と、石炭のガス化を行うガス化部3と、ガス化部3から供給されたガスを用いて発電を行うガスタービン発電部(ガス発電部)4と、ガスタービン発電部4の排気ガスの熱を用いて発電を行う蒸気発電部5と、が設けられている。
【0020】
前処理部2は、石炭ガス化複合発電設備1に供給された褐炭や亜瀝青炭などの石炭に前処理を施して、ガス化部3に前処理を施した石炭を供給するものである。前処理は、石炭をガス化部3における石炭のガス化反応に適したものにする処理であって、例えば、供給された石炭を微粒化する処理や、ガス化反応温度を低下させる触媒を混入する処理などが含まれる。
【0021】
前処理部2には、褐炭などの石炭を供給する石炭供給部(図示せず)と、供給された石炭を微粒化するとともにスラリ化するスラリ床部12と、スラリを加熱するスラリ熱交換部13と、スラリに含まれる過剰な水および触媒を除去するろ過部14と、微粒化された石炭を乾燥させる乾燥部(石炭乾燥部)15と、触媒を含む過剰水を加熱する灰熱交換部16と、触媒を含む水を供給する水触媒供給部(図示せず)と、乾燥部15に供給されるコンデンサ排気を加熱する乾燥用熱交換部18と、が設けられている。
【0022】
石炭供給部は、外部から石炭ガス化複合発電設備1に褐炭などの石炭が供給されるところである。
石炭供給部は、水触媒供給部とスラリ床部12との間の経路に接続され、触媒を含む水とともに、スラリ床部12に石炭を供給可能に接続されている。
【0023】
スラリ床部12は、供給された石炭を、ガス化部3における石炭ガス化に適した粒径に粉砕し、触媒を含む水を用いてスラリ化するものである。スラリ床部12において生成されたスラリには重量比で約90%の水が含まれている。さらに、粉砕された石炭の粒径としては、ガス化炉31における石炭のガス化反応促進の観点から、約1mm以下であることが望ましい。
スラリ床部12はスラリ熱交換部13と接続され、スラリ床部12において生成されたスラリがスラリ熱交換部13に流入可能に構成されている。なお、スラリ床部12の構成としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0024】
スラリ熱交換部13は、後述するガス洗浄部41において回収された熱を、スラリ床部12により生成されたスラリに与え、スラリを加熱するものである。
スラリ熱交換部13はスラリ床部12とろ過部14との間に配置され、スラリがスラリ熱交換部13内を通過可能に構成されている。さらに、スラリ熱交換部13は、ガス洗浄部41のヒートパイプ熱交換部44との間で熱を運搬する熱媒が循環するように構成されている。
【0025】
ろ過部14は、スラリ床部12において生成されたスラリから過剰な水および触媒を取り除き、微粒化された石炭に含まれる水分量を低減させた脱水ケーキとするものである。脱水ケーキには、重量比で70%程度の水が含まれている。
ろ過部14はスラリ熱交換部13と乾燥部15との間に配置され、スラリがろ過部14に流入するとともに、脱水ケーキがろ過部14から乾燥部15に供給されるように構成されている。一方、ろ過部14により取り除かれた触媒を含む過剰水は、灰熱交換部16に流入するように構成されている。
なお、ろ過部14としては、真空脱水機などを例示することができるが、特にこれに限定するものではない。
【0026】
乾燥部15は、ろ過部14において生成された脱水ケーキに含まれる水をさらに取り除き、乾燥させるものである。乾燥部15において乾燥された微粒化石炭には、重量比で約20%から約30%の水が含まれている。
乾燥部15はろ過部14とガス化部3との間に配置され、ろ過部14により生成された脱水ケーキが乾燥部15に供給され、乾燥部15において乾燥された微粒化石炭がガス化部3のガス化炉31に供給されるように構成されている。
【0027】
一方、乾燥部15には、後述するコンデンサ74から排出された乾燥用空気(コンデンサ排気)を乾燥部15に供給する乾燥用流路21が接続されている。乾燥部15は、乾燥用流路21から供給された乾燥用空気を用いて脱水ケーキの水分を取り除き、乾燥可能な構成とされている。
さらに、乾燥部15から回収された触媒を含む水は、灰熱交換部16に流入するように構成されている。
なお、乾燥部15の構成としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0028】
乾燥用流路21には、乾燥用空気を加熱する乾燥用熱交換部18が設けられている。乾燥用熱交換部18は乾燥用空気が通過可能に構成されているとともに、ボイラ71から排出されたタービン63の排気ガスの一部が供給されている。
【0029】
灰熱交換部16は、ろ過部14および乾燥部15から回収された触媒を含む過剰水を加熱するものである。
灰熱交換部16はろ過部14および乾燥部15と、水触媒供給部との間に配置され、ろ過部14および乾燥部15から回収された触媒を含む過剰水が通過するように構成されている。一方、灰熱交換部16には、ガス化炉31から排出された灰が供給され、灰と触媒を含む過剰水との間で熱交換可能に構成されている。
なお、灰熱交換部16としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0030】
水触媒供給部は触媒を含む水を供給するものであって、微粒化された石炭とともにガス化炉31に供給された触媒および水による不足分を補うものでもある。
水触媒供給部は灰熱交換部16とスラリ床部12との間に配置され、灰熱交換部16から流出した触媒を含む過剰水に対して、触媒を含む水を供給するものである。
ここで、触媒としては、約1000℃よりも低い温度における石炭のガス化反応を促進する触媒が用いられている。具体的には、アルカリ土類やアルカリ金属などを含む触媒を挙げることができる。
【0031】
ガス化部3は、前処理部2から供給された石炭のガス化処理を行い、生成されたガスをガスタービン発電部4に供給するものである。
ガス化部3には、石炭のガス化が行われるガス化炉31と、ガス化炉31内に熱を供給する外熱交換部32と、が設けられている。
【0032】
ガス化炉31は、ガス化反応により石炭から可燃性のガスを生成する炉であり、生成されたガスをガスタービン発電部4に供給するものである。
ガス化炉31内の圧力は常圧とされ、温度は約1000℃以下、より好ましくは約600℃から約700℃の範囲とされ、このような条件の下でガス化反応による石炭のガス化が行われている。
【0033】
ガス化炉31には、乾燥部15から微粒化石炭が供給されるとともに、蒸気発電部5からガス化剤として水蒸気が供給されるように構成されている。一方、ガス化炉31からは、灰熱交換部16に灰を排出するとともに、ガスタービン発電部4に生成されたガスを供給するものである。
ガス化炉31から排出される灰は、ガス化反応により石炭から生成されたものである。
【0034】
なお、ガス化炉31としては、噴流床や流動床などの公知の構造を有するものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0035】
外熱交換部32は、吸熱反応であるガス化反応が行われるガス化炉31に対して熱を供給するものである。
外熱交換部32には、ガス化炉31内のガス化剤などが通過可能に構成されているとともに、ガスタービン熱交換部65との間で熱を運搬する熱媒が循環するように構成されている。言い換えると、外熱交換部32を通過するガス化剤などにガスタービン熱交換部65から運搬された熱が与えられるように構成されている。
【0036】
ガス化部3とガスタービン発電部4との間には、ガス洗浄部41と、生成ガス圧縮機51と、が設けられている。
【0037】
ガス洗浄部41は、ガス化炉31により生成された生成ガスに含まれる不純物などを取り除くとともに、生成ガスの熱の一部を回収するものでもある。
ガス洗浄部41には、生成ガスの洗浄を行う洗浄器42と、生成ガスの熱の一部を回収するヒートパイプ43と、ヒートパイプ43に回収された熱をスラリ熱交換部13に伝達するヒートパイプ熱交換部44と、が設けられている。
【0038】
洗浄器42は、内部を通過する生成ガスに含まれる不純物などを取り除くものである。
洗浄器42はガス化炉31と生成ガス圧縮機51との間に配置され、内部を生成ガスが通過するように構成されている。さらに、洗浄器42の壁面などにはヒートパイプ43が配置され、生成ガスの熱がヒートパイプ43に伝わるように構成されている。
なお、洗浄器42の構成としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0039】
ヒートパイプ43は、洗浄器42の内部を通過する生成ガスに含まれる熱の一部を、ヒートパイプ熱交換部44に伝えるものである。
ヒートパイプ43は、洗浄器42の周囲に配置されているとともに、ヒートパイプ熱交換部44と熱交換可能に配置されている。
ヒートパイプ43としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0040】
ヒートパイプ熱交換部44は、ヒートパイプ43により回収された生成ガスの熱の一部を、スラリ熱交換部13に伝達するものである。
ヒートパイプ熱交換部44にはヒートパイプ43が取付けられ、スラリ熱交換部13との間で熱を運搬する熱媒が循環するように構成されている。
【0041】
生成ガス圧縮機51は、ガス化炉31において生成された生成ガスを昇圧し、昇圧された生成ガスをガスタービン発電部4の燃焼器62に供給するものである。
生成ガス圧縮機51はガス洗浄部41と燃焼器62との間に配置され、ガス洗浄部41により洗浄された生成ガスを吸入し、昇圧した生成ガスを燃焼器62に向けて吐出するように構成されている。
生成ガス圧縮機51としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0042】
ガスタービン発電部4は、ガス化部3により生成された生成ガスを燃焼して発電を行うものである。
ガスタービン発電部4には、空気を吸入して圧縮するコンプレッサ61と、生成ガスを燃焼させる燃焼器62と、回転駆動力を発生させるタービン63と、発電を行うガスタービン発電機64と、が設けられている。
【0043】
コンプレッサ61は、タービン63により回転駆動され、大気中の空気を吸入して圧縮した後、燃焼器62に供給するものである。
コンプレッサ61は、タービン63と同軸に配置され、タービン63において発生された回転駆動力が伝達されるように配置されている。
コンプレッサ61の構成としては公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0044】
燃焼器62は、ガス化部3から生成ガスを燃焼させるとともに、ガス化炉31に供給される抽出水蒸気を加熱するものである。
燃焼器62には、コンプレッサ61から圧縮空気が供給されるとともに、ガス化部3から生成ガスが供給されるように構成されている。さらに、燃焼器62は、燃焼器62内で生成ガスが燃焼して生成された燃焼ガスが、タービン63に供給されるように構成されている。
【0045】
一方、燃焼器62の周囲には、蒸気発電部5から抽気され、ガス化炉31に供給される抽気水蒸気が流れるガス化剤流路75が配置されている。ガス化剤流路75をこのように配置することで、ガス化炉31に供給される抽気水蒸気が、燃焼器62における生成ガスの燃焼熱により加熱される。
【0046】
タービン63は、燃焼器62から供給された燃焼ガスを用いて回転駆動力を発生させ、コンプレッサ61およびガスタービン発電部4を回転駆動するものである。タービン63はコンプレッサ61と同軸に配置され、コンプレッサ61およびガスタービン発電部4に回転駆動力を伝達するように配置されている。
さらに、タービン63は、タービン63から排出された排気ガスが、ガスタービン熱交換部65に供給されるように構成されている。
タービン63の構成としては公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0047】
ガスタービン発電機64は、タービン63により発生された回転駆動力により回転され発電を行うものである。ガスタービン発電機64は、タービン63から回転駆動力が伝達されるように構成されている。
ガスタービン発電機64の構成としては公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0048】
ガスタービン発電部4と蒸気発電部5との間には、ガスタービン熱交換部65が設けられている。
ガスタービン熱交換部65は、タービン63から排出された排気ガスの熱の一部を回収し、外熱交換部32に供給するものである。
ガスタービン熱交換部65はタービン63とボイラ71との間に配置され、排気ガスが内部を通過するように構成されている。さらに、外熱交換部32との間で熱を運搬する熱媒が循環するように構成されている。
【0049】
蒸気発電部5は、ガスタービン発電部4から排出された排気ガスの熱を利用して発電を行うものである。
蒸気発電部5には、水蒸気を発生させるボイラ71と、水蒸気から回転駆動力を発生させる蒸気タービン(蒸気タービン部)72と、発電を行う蒸気タービン発電機73と、蒸気タービン72から排出された水蒸気の熱の一部を回収するコンデンサ74と、が設けられている。
【0050】
ボイラ71は、ガスタービン発電部4の排気ガスの熱を用いて水蒸気を生成するものである。
ボイラ71はガスタービン熱交換部65の下流に配置され、ガスタービン発電部4の排気ガスが通過するように構成されている。一方、ボイラ71にはコンデンサ74により凝縮された水が流れるように構成されている。言い換えると、排気ガスと凝縮した水との間で熱交換が行われ、水蒸気が発生されるように構成されている。
一方、ボイラ71を通過した排気ガスの一部は、乾燥用熱交換部18に導かれ、乾燥用空気の加熱に用いられ、残りの排気ガスは排煙として放出される。
【0051】
蒸気タービン72は、ボイラ71から供給された水蒸気から回転駆動力を発生させるものである。
蒸気タービン72はボイラ71とコンデンサ74との間に配置され、ボイラ71から水蒸気が流入し、蒸気タービン72から排出された水蒸気がコンデンサ74に流入するように構成されている。
蒸気タービン72としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0052】
一方、蒸気タービン72には、蒸気タービン72に供給された水蒸気の一部を抽気し、ガス化剤としてガス化炉31に導くガス化剤流路75が接続されている。
ガス化剤流路75は、蒸気タービン72とガス化炉31との間を繋ぐとともに、燃焼器62との間で熱交換可能に配置されている。言い換えると、燃焼器62における燃焼熱によりガス化剤流路75を流れる水蒸気を加熱するように構成されている。
【0053】
蒸気タービン発電機73は、蒸気タービン72において発生された回転駆動力を用いて発電を行うものである。蒸気タービン発電機73は、蒸気タービン72から回転駆動力が伝達されるように構成されている。
蒸気タービン発電機73の構成としては公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0054】
コンデンサ74は、蒸気タービン72から排出された水蒸気を凝縮させるとともに、水蒸気の熱の一部を回収するものである。
コンデンサ74は、蒸気タービン72とボイラ71との間に配置され、蒸気タービン72から水蒸気が流入し、コンデンサ74から凝縮した水がボイラ71に流入するように構成されている。一方、大気から導入された乾燥用空気がコンデンサ74内を通過し、乾燥用流路21に流入するように構成されている。
【0055】
次に、上記の構成からなる石炭ガス化複合発電設備1における発電方法について、図1を参照しながら説明する。
石炭供給部に供給された石炭は、水触媒供給部などから供給された触媒を含む水とともにスラリ床部12に供給される。スラリ床部12では、供給された石炭を粉砕して微粒化し、スラリを生成する。このとき、石炭の粒径は約1mm以下であることが好ましい。スラリ床部12により生成されたスラリは、重量比で約90%の水を含み、約100℃から約200℃の温度になっている。
【0056】
スラリはスラリ床部12からスラリ熱交換部13に流入し、ガス洗浄部41のヒートパイプ熱交換部44から供給された熱により加熱される。加熱されたスラリはスラリ熱交換部13からろ過部14に供給される。
【0057】
ろ過部14は、供給されたスラリに含まれる過剰な水や触媒を取り除き、脱水ケーキを生成する。ろ過部14により生成された脱水ケーキには、重量比で70%程度の水が含まれている。一方、取り除かれた過剰な水や触媒は、灰熱交換部16に供給される。
【0058】
脱水ケーキはろ過部14から乾燥部15に供給され、乾燥用流路21から供給された乾燥用空気により乾燥され、ガス化炉31に供給される。乾燥された微粒化石炭には、重量比で約20%から約30%の水が含まれている。
【0059】
一方、乾燥用空気は、大気から導入され、コンデンサ74において水蒸気の熱により約80℃に加熱された後に、乾燥用熱交換部18において排気ガスの熱によりさらに加熱され、乾燥部15に供給されている。乾燥部15において脱水ケーキから水分を奪った乾燥用空気は外部に放出される。
【0060】
乾燥部15において脱水ケーキから分離された過剰な水や触媒は、ろ過部14において分離された過剰な水や触媒とともに灰熱交換部16へ供給される。
灰熱交換部16に供給された触媒を含む水は、灰熱交換部16においてガス化炉31から排出された灰の熱により加熱される。加熱された触媒を含む水は、スラリ床部12に向かって流れ、水触媒供給部から新たな触媒を含む水の補給を受け、石炭供給部から石炭の供給を受けた後に、スラリ床部12に再び流入する。
【0061】
ガス化炉31には、乾燥部15から微粒化石炭が供給されるとともに、蒸気タービン72から抽気された水蒸気であるガス化剤が供給される。さらに、ガス化炉31には、外熱交換部32を介して排気ガスの熱が供給され、ガス化炉31は、例えば約600℃から約700℃に保たれる。
ガス化炉31内は常圧に保たれ、石炭のガス化反応により可燃性のガスが生成される。生成されたガスは、ガス化炉31からガス洗浄部41に供給される。石炭には触媒が含まれているため、例えば約600℃から約700℃の温度であっても石炭のガス化反応が進行し、可燃性のガスが生成される。
【0062】
このように、触媒を用いて石炭のガス化反応温度を約1000℃より低い温度で行うことで、より高温でガス化反応を行う場合と比較して、エクセルギ(有効エネルギ)損失を低く抑えることができる。つまり、高効率な発電を行うことができる。
【0063】
ガス化炉31に供給されるガス化剤である水蒸気は、ガス化剤流路75を蒸気タービン72からガス化炉31に向かって流れる間に、燃焼器62における燃焼熱の供給を受けて加熱される。具体的には、蒸気タービン72から抽気された段階で、例えば約150℃未満の温度であった水蒸気は、燃焼熱を受け取ることで、例えば約700℃程度の温度にまで加熱される。
より好ましくは、ガス化炉31におけるガス化反応温度よりも、数10℃高い温度に加熱される。
【0064】
さらに、蒸気タービン72から蒸気を抽出する箇所を選定することにより、ガス化炉31内の圧力に近い圧力を有する水蒸気がガス化炉31に供給される。
【0065】
一方、石炭が可燃性の生成ガスを放出した後には、灰が生成され、灰熱交換部16に供給される。なお、石炭のガス化反応として公知の反応を用いることができ、特に限定するものではない。
【0066】
ガス化炉31により生成された生成ガスは、ガス洗浄部41の洗浄器42に流入し、不純物が取り除かれるとともに、生成ガスの有する熱の一部がヒートパイプ43に回収される。
ガス化炉31から流出した生成ガスの温度は、例えば約500℃未満であり、ガス洗浄部41において熱の一部が回収されることにより、例えば約300℃未満にまで温度が低下する。
ガス洗浄部41のヒートパイプ43は生成ガスの熱の一部を回収し、回収した熱を、ヒートパイプ熱交換部44を介してスラリ熱交換部13に供給する。
【0067】
不純物が取り除かれた生成ガスは生成ガス圧縮機51に流入し、昇圧された後に燃焼器62に供給される。昇圧後の生成ガスの圧力としては、約1.5MPaを例示することができる。
【0068】
燃焼器62には、昇圧された生成ガスと、コンプレッサ61により圧縮された空気と、が供給され、生成ガスの燃焼が行われる。圧縮された空気の温度としては、約300℃未満の温度を例示することができる。
生成ガスの燃焼により発生した熱の一部は、ガス化剤流路75内を流れる水蒸気に昇温に用いられ、残りの熱は燃焼器排気ガスとともにタービン63に流入する。つまり、高温となった燃焼器排気ガスはタービン63に供給される。燃焼器排気ガスの温度としては、約1000℃以上より望ましくは1200から1500℃の温度を例示することができる。
【0069】
タービン63では、高温の燃焼器排気ガスから回転駆動力が取り出され、回転駆動力がコンプレッサ61およびガスタービン発電機64に伝達される。言い換えると、タービン63は高温の燃焼器排気ガスが供給されることにより、コンプレッサ61およびガスタービン発電機64を回転駆動する。
ガスタービン発電機64は回転駆動されることにより電力を発電し、コンプレッサ61は大気から導入された空気を圧縮し、燃焼器62に圧縮された空気を供給する。
【0070】
タービン63を回転駆動した排気ガスは、タービン63からガスタービン熱交換部65に流入し、その熱の一部が回収された後、ボイラ71に流入する。ボイラ71に流入する排気ガスの温度としては、約600℃未満の温度を例示することができる。
ガスタービン熱交換部65に回収された熱は、外熱交換部32を介してガス化炉31に供給される。
【0071】
ボイラ71では、流入した排気ガスの熱の一部を、コンデンサ74から供給された水に供給して水蒸気を生成する。ボイラ71で生成された水蒸気は蒸気タービン72に供給され、蒸気タービン72を回転駆動する。
蒸気タービン72において取り出された回転駆動力は、蒸気タービン発電機73に伝達され、発電に用いられる。
【0072】
蒸気タービン72に供給された水蒸気の一部は蒸気タービン72から抽気され、ガス化剤流路75を介してガス化炉31に供給される。一方、蒸気タービン72に供給された水蒸気の大半はコンデンサ74に流入し、コンデンサ74において凝縮される。
【0073】
コンデンサ74には、蒸気タービン72から排出された水蒸気と、大気から導入された乾燥用空気と、が供給されている。コンデンサ74では、排出された水蒸気の熱が乾燥用空気に奪われ、排出された水蒸気は凝縮する。凝縮した水は、再びボイラ71に供給され水蒸気となる。
一方、排出された水蒸気の熱を吸収して昇温した乾燥用空気は、乾燥用流路21に流入し、乾燥部15に向かって流れる。
【0074】
コンデンサ74から流出した排気ガスは、一部が乾燥用熱交換部18に供給され、乾燥用空気の昇温に用いられる。一方、大半の排気ガスは排煙として放出される。放出される排気ガスの温度としては、約80℃から約150℃の範囲の温度を例示することができる。
【0075】
上記の構成によれば、石炭はガス化部3に供給される前に乾燥部15により乾燥されるため、水分の含有量が多い石炭である低品位炭を用いても、含有水分の蒸発や、水蒸気の流出による熱の持ち去り等による熱エネルギの損失を抑制することができ、発電効率の低下を防止することができる。
【0076】
さらに、コンデンサ74において石炭の乾燥に蒸気発電部5から排出された排熱を用いるため、熱エネルギの利用効率を向上させることができる。一方、石炭を乾燥させるために別途熱を発生する発熱部を設けた場合と比較して、新たな燃料やエネルギを投入する必要がなく、発電効率の低下を防止することができる
【0077】
蒸気発電部5のコンデンサ74により回収された熱を用いて石炭の乾燥を行うことで、水蒸気と接触させることなく石炭を乾燥させることができ、石炭に水蒸気の水分が吸収されることを防止でき、発電効率の低下を防止することができる。
【0078】
蒸気タービン72から抽気された水蒸気をガス化剤として用いるため、例えば、ガス化剤の圧力を高める昇圧コンプレッサや、ガス化剤を生成する大規模な酸素製造装置などを設ける必要がない。
【0079】
ガスタービン発電部4の排気ガスをガス化部3に導き、排気ガスの熱によりガス化炉31が加熱される。そのため、ガス化炉31内の温度を維持するために、別途燃料やエネルギなどを投入する必要がなく、発電効率の低下を防止することができる
【0080】
なお、上述の実施形態では、コンデンサ74に流入する乾燥用空気を、大気から導入する例に適用して説明したが、コンプレッサ61から抽気した圧縮空気を乾燥用空気として用いてもよく、特に限定するものではない。
乾燥用空気としてコンプレッサ61から抽気した圧縮空気を用いることで、大気から乾燥用空気を導入する方法と比較して、より乾燥した空気を乾燥用空気として用いることができ、乾燥部15における乾燥がより効率的に行うことができる。
【0081】
なお、上述の実施形態では、ガスタービン発電部4にガス化部3により生成された生成ガスを燃料として供給して発電を行う例に適用して説明したが、生成ガスを燃料とする燃料電池を用いて発電を行ってもよく、特に限定するものではない。
【0082】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備ついて図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備の構成を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0083】
本実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備101は、第1の実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備1と比較して、ガス化部3が加圧系とされている点が大きく異なり、かつ、回路構成も異なる。そのため、以下では第1の実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備1と異なる点について説明する。
【0084】
石炭ガス化複合発電設備101には、図2に示すように、石炭の前処理および乾燥などを行う前処理部102と、石炭のガス化を行うガス化部103と、ガス化部103から供給されたガスを用いて発電を行うガスタービン発電部(ガス発電部)104と、ガスタービン発電部104の排気ガスの熱を用いて発電を行う蒸気発電部105と、が設けられている。
【0085】
前処理部102は、石炭ガス化複合発電設備101に供給された褐炭や亜瀝青炭などの石炭に前処理を施して、ガス化部103に前処理を施した石炭を供給するものである。
前処理部102には、褐炭などの石炭を供給する石炭供給部(図示せず)と、供給された石炭を微粒化するとともにスラリ化するスラリ床部12と、スラリに含まれる過剰な水および触媒を除去するろ過部14と、微粒化された石炭を乾燥させる乾燥部15と、触媒を含む過剰水を加熱する灰熱交換部16と、触媒を含む水を供給する水触媒供給部と、が設けられている。
【0086】
一方、乾燥部15には、後述するコンデンサ74から排出された乾燥用空気(コンデンサ排気)を乾燥部15に供給する乾燥用流路121が接続されている。乾燥部15は、乾燥用流路121から供給された乾燥用空気を用いて脱水ケーキの水分を取り除き、乾燥可能な構成とされている。
【0087】
ガス化部103は、前処理部102から供給された石炭のガス化処理を行い、生成されたガスをガスタービン発電部104に供給するものである。
ガス化部103には石炭のガス化が行われるガス化炉131が設けられ、ガス化炉131は生成されたガスをガスタービン発電部104に供給するものである。
ガス化炉131内は所定圧力に加圧されるとともに、温度は約1000℃以下、より好ましくは約600℃から約700℃の範囲とされ、このような条件の下でガス化反応による石炭のガス化が行われている。
【0088】
ガス化炉131には、乾燥部15から微粒化石炭が供給されるとともに、ガス化剤としてガスタービン発電部104の排気ガスの一部が供給されるとともに、ボイラ171において生成された水蒸気が供給されている。一方、ガス化炉131からは、灰熱交換部16に灰を排出するとともに、ガスタービン発電部104に生成されたガスを供給し、さらに、蒸気タービン172に水蒸気を供給している。
【0089】
なお、ガス化炉131としては、噴流床や流動床などの公知の構造を有するものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0090】
ガス化部103とガスタービン発電部104との間には、ガス洗浄部141が設けられている。ガス洗浄部141は、ガス化炉131により生成された生成ガスに含まれる不純物などを取り除くとともに、生成ガスの熱の一部を回収するものでもある。
ガス洗浄部141には生成ガスの洗浄を行う洗浄器142が、ガス化炉131と燃焼器162との間に配置されている。
【0091】
洗浄器142は、内部を生成ガスが通過するように構成され、さらに、スラリ床部12に供給される触媒を含む水と生成ガスとの間で熱交換されるように構成されている。言い換えると、触媒を含む水を加熱するように構成されている。
なお、洗浄器142の構成としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0092】
ガスタービン発電部104は、ガス化部103により生成された生成ガスを燃焼して発電を行うものである。
ガスタービン発電部104には、空気を吸入して圧縮するコンプレッサ61と、生成ガスを燃焼させる燃焼器162と、回転駆動力を発生させるタービン63と、発電を行うガスタービン発電機64と、が設けられている。
【0093】
燃焼器162は、ガス化部103から生成ガスを燃焼させるとともに、ガス化炉131に供給される水蒸気を加熱するものである。
燃焼器162には、コンプレッサ61から圧縮空気が供給されるとともに、ガス化部103から生成ガスが供給されるように構成されている。さらに、燃焼器162は、燃焼器162内で生成ガスが燃焼して生成された燃焼ガスが、タービン63に供給されるように構成されている。
【0094】
一方、燃焼器162の周囲には、ボイラ171からガス化炉131に供給される水蒸気が流れるガス化剤流路175が配置されている。ガス化剤流路175をこのように配置することで、ガス化炉131に供給される水蒸気が、燃焼器162における生成ガスの燃焼熱により加熱される。
【0095】
蒸気発電部105は、ガスタービン発電部104から排出された排気ガスの熱を利用して発電を行うものである。
蒸気発電部105には、水蒸気を発生させるボイラ171と、水蒸気から回転駆動力を発生させる蒸気タービン(蒸気タービン部)172と、発電を行う蒸気タービン発電機73と、蒸気タービン172から排出された水蒸気の熱の一部を回収するコンデンサ74と、が設けられている。
【0096】
ボイラ171は、ガスタービン発電部104の排気ガスの熱を用いて水蒸気を生成するものである。
ボイラ171はタービン63の下流に配置され、ガスタービン発電部4の排気ガスが通過するように構成されている。一方、ボイラ71にはコンデンサ74により凝縮された水が流れるように構成されている。言い換えると、排気ガスと凝縮した水との間で熱交換が行われ、水蒸気が発生されるように構成されている。
一方、ボイラ71を通過した排気ガスの一部は、ガス化炉131に導かれ、ガス化剤として用いられ、残りの排気ガスは排煙として放出される。
【0097】
蒸気タービン172は、ガス化炉131を介してボイラ171から供給された水蒸気から回転駆動力を発生させるものである。
蒸気タービン172はガス化炉131とコンデンサ74との間に配置され、ガス化炉131を介してボイラ171から水蒸気が流入し、蒸気タービン172から排出された水蒸気がコンデンサ74に流入するように構成されている。
蒸気タービン72としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0098】
次に、上記の構成からなる石炭ガス化複合発電設備101における発電方法について、図2を参照しながら説明する。
【0099】
石炭供給部に供給された石炭は、ガス洗浄部141において加熱された触媒を含む水とともにスラリ床部12に供給される。このときの触媒を含む水の温度としては、約200℃未満の温度を例示できる。
スラリ床部12では、供給された石炭を粉砕して微粒化し、スラリを生成する。スラリ床部12により生成されたスラリは、重量比で約90%の水を含み、約100℃から約200℃の温度になっている。
【0100】
スラリはろ過部14に供給され、ろ過部14では、供給されたスラリに含まれる過剰な水や触媒が取り除かれ、脱水ケーキが生成される。ろ過部14により生成された脱水ケーキには、重量比で約80%の水が含まれている。一方、取り除かれた過剰な水や触媒は、灰熱交換部16に供給される。
【0101】
脱水ケーキはろ過部14から乾燥部15に供給され、乾燥用流路121から供給された乾燥用空気により乾燥され、ガス化炉131に供給される。乾燥された微粒化石炭には、重量比で約40%の水が含まれている。
【0102】
一方、乾燥用空気は、大気から導入され、コンデンサ74において水蒸気の熱により約80℃に加熱された後に、乾燥部15に供給されている。乾燥部15において脱水ケーキから水分を奪った乾燥用空気は外部に放出される。
【0103】
乾燥部15において脱水ケーキから分離された過剰な水や触媒は、ろ過部14において分離された過剰な水や触媒とともに灰熱交換部16へ供給される。
灰熱交換部16に供給された触媒を含む水は、灰熱交換部16においてガス化炉131から排出された灰の熱により加熱される。
加熱された触媒を含む水は、さらに、ガス洗浄部141において生成ガスから熱を吸収して昇温し、スラリ床部12に再び流入する。
【0104】
ガス化炉131には、乾燥部15から微粒化石炭が供給されるとともに、ガスタービン発電部104から排出され、ボイラ171を通過した排気ガスの一部がガス化剤として供給される。さらに、ガス化炉131には、ボイラ171から燃焼器162を介して水蒸気が供給される。
ガス化炉131は、所定圧力に加圧され、かつ、例えば約600℃から約700℃に保たれる。
【0105】
ガス化炉131内では、石炭のガス化反応により可燃性のガスが生成される。生成されたガスは、ガス化炉131からガス洗浄部141に供給される。石炭には触媒が含まれているため、例えば約600℃から約700℃の温度であっても石炭のガス化反応が進行し、可燃性のガスが生成される。
【0106】
ガス化炉131に供給される水蒸気は、ボイラ171からガス化炉131に向かって流れる間に、燃焼器162における燃焼熱の供給を受けて加熱される。例えば、ボイラ171から流出した段階で、約450℃未満の温度であった水蒸気は、燃焼熱を受け取ることで、約700℃程度の温度にまで加熱される。
より好ましくは、ガス化炉131におけるガス化反応温度よりも、数10℃高い温度に加熱される。
【0107】
ガス化炉131に供給された水蒸気は、その熱の一部をガス化炉131において放出し、蒸気タービン172に向かって流出する。蒸気タービン172に向かって流出した段階での水蒸気の温度は、約550℃未満の温度を例示できる。
【0108】
一方、石炭が可燃性の生成ガスを放出した後には、灰が生成され、灰熱交換部16に供給される。なお、石炭のガス化反応として公知の反応を用いることができ、特に限定するものではない。
【0109】
ガス化炉131により生成された生成ガスは、ガス洗浄部141の洗浄器142に流入し、不純物が取り除かれるとともに、生成ガスの有する熱の一部が触媒を含む水に回収される。
ガス化炉131から流出した生成ガスの温度は、例えば約500℃未満であり、ガス洗浄部41において熱の一部が回収されることにより、例えば約300℃未満にまで温度が低下する。
【0110】
燃焼器162には、不純物が取り除かれた生成ガスと、コンプレッサ61により圧縮された空気と、が供給され、生成ガスの燃焼が行われる。圧縮された空気の温度としては、約400℃未満の温度を例示することができる。
生成ガスの燃焼により発生した熱の一部は、ボイラ171からガス化炉131に供給される水蒸気の加熱に用いられ、残りの熱は燃焼器排気ガスとともにタービン63に流入する。つまり、高温となった燃焼器排気ガスはタービン63に供給される。燃焼器排気ガスの温度としては、約1000℃以上より望ましくは1200から1500℃の温度を例示することができる。
【0111】
ガスタービン発電部104における後の作用は、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0112】
ガスタービン発電部104から排出された排気ガスは、ボイラ171に供給され、ボイラ171では、流入した排気ガスの熱の一部をコンデンサ74から供給された水に供給して水蒸気を生成する。ボイラ171で生成された水蒸気は、燃焼器162を介してガス化炉131に供給された後、蒸気タービン172に供給される。
【0113】
蒸気タービン172に供給された水蒸気は、蒸気タービン172を回転駆動し、回転駆動力により蒸気タービン発電機73において発電が行われる。
蒸気タービン172から排気された水蒸気はコンデンサ74に流入し、コンデンサ74において凝縮される。
【0114】
上記の構成によれば、ガスタービン発電部104から排出され、ボイラ171において水蒸気の生成に用いられた後の排気ガスをガス化剤として用いるため、例えば、ガス化剤の圧力を高める昇圧コンプレッサや、ガス化剤を生成する大規模な酸素製造装置などを設ける必要がない。
さらに、ボイラ171において生成された水蒸気をガス化炉131に導き、水蒸気の熱によりガス化炉131が加熱される。そのため、ガス化炉131の温度を維持するために、別途燃料やエネルギなどを投入する必要がなく、発電効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1の実施形態の石炭ガス化複合発電設備の構成を説明する模式図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の石炭ガス化複合発電設備の構成を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0116】
1,101 石炭ガス化複合発電設備
3,103 ガス化部
4,104 ガスタービン発電部(ガス発電部)
5,105 蒸気発電部
15 乾燥部(石炭乾燥部)
72,172 蒸気タービン(蒸気タービン部)
74 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された石炭のガス化を行うガス化部と、
該ガス化部から供給されたガスを用いて発電を行うガス発電部と、
該ガス発電部から排出された排気ガスの熱を用いて発電を行う蒸気発電部と、
該蒸気発電部から排出された排熱を用いて石炭の乾燥を行い、前記ガス化部に乾燥された石炭を供給する石炭乾燥部と、
が設けられていることを特徴とする石炭ガス化複合発電設備。
【請求項2】
前記蒸気発電部には、前記蒸気発電部から排出された蒸気の熱を回収するコンデンサが設けられ、
前記石炭乾燥部は、前記コンデンサにより回収された熱を用いて石炭の乾燥を行うことを特徴とする請求項1記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項3】
前記蒸気発電部には、前記ガス発電部から排出された排気ガスの熱により生成された水蒸気が供給される蒸気タービン部が設けられ、
前記ガス化部には、前記蒸気タービン部から抽気された水蒸気が、前記石炭のガス化剤として供給されていることを特徴とする請求項1または2に記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項4】
前記ガス化部には、前記ガス発電部から排出された排気ガスが、加熱用熱源として供給されていることを特徴とする請求項3に記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項5】
前記蒸気発電部には、前記ガス発電部から排出された排気ガスの熱を用いて水蒸気を生成するボイラが設けられ、
前記ガス化部には、前記ボイラから排出された前記排気ガスが、前記石炭のガス化剤として供給されていることを特徴とする請求項1または2に記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項6】
前記ガス化部には、前記ボイラにより生成された水蒸気が、前記石炭のガス化剤として供給されていることを特徴とする請求項5記載の石炭ガス化複合発電設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−133268(P2009−133268A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310564(P2007−310564)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】