説明

砂濾過を利用した油水分離の方法

【課題】油分含有水が含む油分を効率よく且つ低コストに分離する方法を提供する。
【解決手段】油分を含有する水に凝集剤を添加し、凝集剤に油分を捕集させて凝集体を生成し、沈降分離処理および砂濾過処理を行うことにより、前記凝集体を除去する。沈降分離処理を実施した後に砂濾過処理を実施することによって凝集体を除去する。砂濾過処理を圧力式砂濾過装置によって実施する。砂濾過処理が、油分含有水を4m/h以上で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂濾過を利用して油分含有水より油水を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油水分離の方法としては、油分と水の比重差を利用した比重分離法(特許文献1)や、気泡を供給することによって気泡に油分を付着させて分離する浮上分離法が用いられていた(特許文献2)。また、凝集剤を添加することによって生成した凝集体に油分を捕集し、浮上分離法によって前記凝集体を除去する油水分離の方法があった(特許文献3)。他に、凝集体が水より重い場合には、凝集体を沈降させて分離する沈降分離法が知られている。
【0003】
一方、水中に浮遊する固形分を除去する固液分離法として、砂濾過による方法が知られている。砂濾過は、濾過砂材を充填した層を通水することによって、通水した水に含まれる固形分を除去することができる固液分離法である。砂濾過においては、砂濾過材における粒子間隙や粒子表面上で働く化学的、物理的要因によって、前記砂層を通過する液体に含まれる固形分を除去する。砂濾過を実施する装置として、液体に圧力をかけて砂層を通過させる圧力式砂濾過装置がある(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−321916号公報
【特許文献2】特開2003−154205号公報
【特許文献3】特開2009−165915号公報
【特許文献4】特開2008−73666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の比重分離法は、浮上油の分離には有効であるが、油分の一部構造が酸化されたり、界面活性剤などが共存したりすることによって水に油分が溶け込んだエマルションに対しては、十分に油水分離することができない。
また、凝集剤の添加によって生成した凝集体に油分を捕集し、浮上分離法によって前記凝集体を除去することによる油水分離の方法は、エマルションの油水分離にも適用できるが、微小な凝集体(ピンフロックやSS)に気泡が付着しにくく、十分に分離除去できないことがあった。
更に、沈降分離法によって上記凝集体を除去することによる油水分離の方法は、ピンフロック等の重量が軽いために、十分に分離除去ができず、凝集剤をより多く使用しピンフロック等を生成しないようにする必要がある。
更にまた、上述の分離方法と各種フィルタを用いた方法も提案されているが、フィルタの交換作業や交換コストがかかってしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のことから、本発明者らは、油分含有水が含む油分を凝集剤を用いて凝集体とし、沈降分離処理および砂濾過処理を行うことにより、油分を効率よく且つ低コストに分離する方法に想到し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
油分を凝集体としてから沈降分離処理および砂濾過処理を行うことによって、ピンフロック等をより効率的に除去することができる。また、沈降分離処理および砂濾過処理における処理時間を短縮でき、エマルションであっても油水分離を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の処理フローを示す図である。
【図2】シックナーの概略を示す図である。
【図3】圧力式砂濾過装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の油水分離の方法は、油分を含有する水に凝集剤を添加し、凝集剤に油分を捕集させて凝集体を生成し、沈降分離処理および砂濾過処理を行うものである。
これにより、沈降する凝集体と浮遊する凝集体とが異なる分離法で効率よく分離される。また、砂濾過処理を採用するので、濾過能力が飽和したときには逆洗を行うことで再生でき本方法を用いた装置の寿命を長期化させることができる。
【0010】
ここで、油分含有水において自然に浮上する油分(浮上油)がある場合においては、まず比重分離法によって浮上油を分離する比重分離処理を実施する。例えば、浮上油を含む油分含有水を水槽へ通し、水面より排出しないよう水槽下部から油分含有水を排出することによって、浮上油を分離する。
沈降分離処理および砂濾過処理の組み合わせ方としては、沈降分離処理においてピンフロック等を除く凝集体を分離除去し、その後に、砂濾過処理においてピンフロック等を分離除去することが好ましい(図1)。このときの砂濾過処理で用いる濾過砂材Hは600/300μmに粒度調整された砂もしくはアンスラサイトが好ましい。
【0011】
言い換えれば、油分含有水に浮上油が含まれない場合や、上記浮上油を分離除去した後の油分含有水に凝集剤を添加することがよい。かかる凝集剤は、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄などの無機系凝集剤およびポリアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレート系、キトサンなどの高分子凝集剤のいずれかが使用できる。また、単体の凝集剤を添加しても良いが、無機系凝集剤を添加後、高分子凝集剤を添加することが好ましい。
【0012】
また、前記砂濾過処理では、圧力式砂濾過装置を用いることが好ましい。
このときは、短期間に多くの油分を分離する能力を発揮できる。代表的には、砂濾過処理を、油分含有水4m/h以上で流通させることができる。
【0013】
圧力式砂濾過装置による砂濾過を実施した場合には、濾過の逆側から清浄な水を圧送することによって、濾過砂材内に溜まった凝集体を排出すること(逆洗)による砂濾過機能の復旧が可能であり、逆洗と砂濾過を自動で切り替える機構を設けることによって、人手をかけずに連続して油水分離の処理を実施し続けることができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
工業用水にA重油を添加後、撹拌し数日間静置し、浮上油を比重分離法によって取り除くことによって、油分含有水を得た。上記油分含有水に、無機凝集剤としてポリ塩化アルミニウム10%溶液を、油分含有水に対して0.01wt%添加した。沈降分離処理として、凝集剤添加後の上記油分含有水をシックナー(図2)に通過させた。配管Dから上記油分含有水を、上側仕切板Bと下側仕切板Cによって区切られた水槽Aに送水して通過させ、配管Eから排出することによって、上記油分含有水に含まれる凝集体を沈降分離除去する。
【0015】
沈降分離した凝集体が水槽Aの底に溜まるため、溜まった凝集体は配管Fより排出する。
次に、砂濾過処理として、沈降分離処理後の上記油分含有水を圧力式砂濾過装置(図3)に通過させた。沈降分離処理後の上記油分含有水を配管Iから濾過砂材Hを充填した圧力式砂濾過装置Gに圧送して配管Jから排出し、上記油分含有水に含まれるピンフロック等を濾過分離除去する。以上の実施処理をもって上記油分含有水の油分を取り除いた処理水を得た。
【0016】
逆洗工程は、配管Jから処理水を圧力式砂濾過装置Gに圧送して配管Iから排出することによって、濾過砂材Hの空隙内に溜まった凝集体を排出した。処理水の油分濃度が下水道法における規制基準5.0mg/Lを越えた時点(破過)をもって、逆洗工程を実施した。
濾過砂材Hはアンスラサイトを使用した。
【0017】
(実施例1)
上記実施工程において、圧力式砂濾過装置への送水速度は2m/時間とした。本実施例における、凝集剤添加前の油分含有水の油分濃度は60.0mg/Lであった。沈降分離工程後の上記油分含有水の油分濃度は約16.0mg/Lであり、ピンフロックの混入量により変動が見られた。砂濾過工程後、処理水の油分濃度は4㎥通水時点まで5.0mg/L未満であり、5m通水時点において6.0mg/Lであることを確認した。表1に実施例1処理水の油分濃度を示す。
【0018】
【表1】

○:下水道法規制基準の油分濃度5.0mg/L未満
×:下水道法規制基準の油分濃度5.0mg/L以上

【0019】
(実施例2)
本実施において、圧力式砂濾過装置への送水速度は4m/時間とした。本実施例における、凝集剤添加前の油分含有水の油分濃度は60mg/Lであった。沈降分離工程後の上記油分含有水の油分濃度は約22.5mg/Lであり、ピンフロックの混入量により変動が見られた。砂濾過工程後、処理水の油分濃度は8m通水時点まで5.0mg/L未満であり、10m通水時点において5.5mg/Lであることを確認した。表2に実施例2処理水の油分濃度を示す。
【0020】
【表2】

○:下水道法規制基準の油分濃度5.0mg/L未満
×:下水道法規制基準の油分濃度5.0mg/L以上

【0021】
(実施例3)
本実施において、圧力式砂濾過装置への送水速度は5m/時間とした。本実施例における、凝集剤添加前の油分含有水の油分濃度は60mg/Lであった。沈降分離工程後の上記油分含有水の油分濃度は約27.5mg/Lであり、ピンフロックの混入量により変動が見られた。砂濾過工程後、処理水の油分濃度は10m通水時点まで5.0mg/L以下であり、15m通水時点において5.5mg/Lであることを確認した。表3に実施例3処理水の油分濃度を示す。
【0022】
【表3】

○:下水道法規制基準の油分濃度5.0mg/L未満
×:下水道法規制基準の油分濃度5.0mg/L以上

【0023】
(考察)
処理水の油分濃度5.0mg/L未満の場合を、仮に5.0mg/Lとして、破過が確認される前までの実施例1〜3における油分の除去量(除去油分量)を比較する(表4)。実施例1〜3いずれにおいても、2時間通水時点において破過が見られなかったため、この時点を比較対照とする。また、全ての実施例において、実施前の油分含有水における油分濃度は60mg/Lであった。
いずれの実施例も2時間通水時点以降に破過が確認されているため、圧力式砂濾過装置への送水速度が速いほど、油分含有水の油水分離処理の効率が良いことがわかる。よって、5m/時間にて送水した実施例3が最も除去油分量が大きく、処理効率が高かった。
【0024】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、たとえば、切削油、圧延油、船舶のビルジ水、油輸送タンカーからのバラスト水、洗車排水などといったエマルション排水の処理や、重油漏洩などによる地下水汚染時に実施される揚水対策において、揚水された地下水の処理などに利用できる。
【符合の説明】
【0026】
A 水槽
B 上側仕切板
C 下側仕切板
D、E、F、I、J 配管
G 圧力式砂濾過装置
H 濾過砂材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分を含有する水に凝集剤を添加し、凝集剤に油分を捕集させて凝集体を生成し、沈降分離処理および砂濾過処理を行うことにより、前記凝集体を除去することを特徴とする油水分離の方法。
【請求項2】
前記沈降分離処理を実施した後に砂濾過処理を実施することによって前記凝集体を除去することを特徴とする請求項1に記載の油水分離の方法。
【請求項3】
前記砂濾過処理を圧力式砂濾過装置によって実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の油水分離の方法。
【請求項4】
前記砂濾過処理が、油分含有水を4m/h以上で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の湯水分離の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−212596(P2011−212596A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83437(P2010−83437)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(506347517)DOWAエコシステム株式会社 (83)
【Fターム(参考)】