説明

研削装置

【課題】カメラによる撮影データを利用してワークの研削加工を行う研削装置において、複数の加工ステージを備えてワークの生産効率を高めつつも、装置の大型化を防ぎ、コスト増大を防ぎ、さらに、カメラへの研削用冷却水の付着を防止することができる研削装置を提供する。
【解決手段】ワークWの研削加工を行う複数の加工ステージ30…と、ワークWの投入及び取出を行う投入取出ステージ4と、各加工ステージ30…と投入取出ステージ4と間で、各々ワークWを搬送する搬送ロボット2と、搬送ロボット2に設けられたカメラ23と、を備え、このカメラ23で、各加工ステージ30…を撮影して、各加工ステージ30…で用いる画像データを取り込むもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物品を砥石等で研削する研削装置、具体的には、物品(ワーク)をカメラで撮影して、カメラの撮影データを利用して物品を研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物品、例えば、携帯端末の液晶モニター等に用いられる薄板ガラスを、所定の形状に研削する場合に、カメラを利用して研削加工を行うものが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、こうした薄板ガラスの端面を研削する研削装置(面取装置)が開示されている。この特許文献1に記載された研削装置では、薄板ガラスの上方から薄板ガラスの端面(外縁)をカメラで撮影して、薄板ガラスの研削位置や研削量を算出して、研削工具やテーブルの動きを制御することで、薄板ガラスの端面を研削している。
【0004】
このように、カメラによる撮影データを利用して、薄板ガラスの端面を研削することで、薄板ガラスの加工精度を高めることができ、薄板ガラスの寸法精度を高めることができる。また、カメラを利用して研削を行うことで、倣い加工のようにマスターとなる治具を用意しなくてもよいため、加工スペースを広く確保することができ、研削装置の小型化を図ることもできる。
【0005】
なお、下記特許文献2では、搬送ロボット自体にカメラを設けて、被搬送物であるワークを予め撮影して、ワークの位置を確認した後に、搬送ロボットでワークを搬送するものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−223005号公報
【特許文献2】特開平5−045120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般に研削装置では、研削加工中の発熱等を防止するため、研削用冷却水を用いて、ワークを冷却することが行われる。このとき、大量の研削用冷却水を用いてワークを冷却するため、加工ステージの周囲には研削用冷却水が飛び散る可能性がある。
【0008】
特許文献1のような、カメラを利用してワークを撮影するものでは、カメラのレンズに水滴が付着すると、撮影データに歪み等が生じ、研削加工の制御が不安定になるおそれがある。そこで、研削装置においては、研削加工時に、カメラをワークから離間させることで、研削用冷却水がカメラに付着しないようにすることが求められる。こうしたことから、例えば、カメラに移動機構を設けることで、ワーク撮影時には、カメラをワークに近接させて、研削加工時には、カメラをワークから離間させることで、レンズに研削用冷却水が付着しないようにすることが考えられる。
【0009】
また、一般に、物品を加工する場合には、多くのワークを同時に加工して生産効率を高めることが求められる。このため、研削装置においても、加工ステージを複数設けて、多くのワークを同時に加工することが考えられる。さらに、こうした際には、ワークを撮影するカメラについても、各加工ステージに対応して各々設けることが、通常考えられる。
【0010】
しかし、各加工ステージにカメラを設けると、前述したカメラの移動機構も複数設ける必要が生じてしまい、研削装置が大型化するという問題が生じる。また、カメラの個数も増加してしまい、装置全体のコストも増大してしまうという問題も生じる。
【0011】
なお、特許文献2の考え方をベースにして、特定の作業を行うロボットにカメラを設け、このカメラでその作業対象のワークを撮影することも考えられるが、加工前にワークを撮影する場合は、ワークを研削加工する「研削スピンドル」自体にカメラを設けることになり、そもそも、前述した研削加工時に研削用冷却水がレンズに付着するといった問題を解決できないことになる。
【0012】
そこで、本発明は、カメラによる撮影データを利用してワークの研削加工を行う研削装置において、複数の加工ステージを備えてワークの生産効率を高めつつも、装置の大型化を防ぎ、コスト増大を防ぎ、さらに、カメラへの研削用冷却水の付着を防止することができる研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の研削装置は、カメラによる撮影データを利用してワークの研削加工を行う研削装置であって、第一の研削スピンドルを備えてワークの研削加工を行う第一の加工ステージと、第二の研削スピンドルを備えて別のワークの研削加工を行う第二の加工ステージと、前記ワークの投入及び取出を行う投入取出ステージと、前記第一の加工ステージと前記投入取出ステージ間、及び前記第二の加工ステージと前記投入取出ステージ間で、各々ワークを搬送する搬送ロボットと、該搬送ロボットに設けられ、第一の加工ステージにワークを搬送した後に当該加工ステージに載置したワークを撮影して、第一の研削スピンドルの制御用データを取り込み、第二の加工ステージに別のワークを搬送した後に当該加工ステージに載置した別のワークを撮影して、第二の研削スピンドルの制御用データを取り込むカメラと、を備えるものである。
上記構成によれば、第一の加工ステージと投入取出ステージ間、及び第二の加工ステージと投入取出ステージ間で、各々ワークを搬送する搬送ロボットに、カメラを設け、このカメラによって、第一の加工ステージにワークを搬送した後にその加工ステージに載置したワークを撮影して、第一の研削スピンドルの制御用データを取り込み、また、第二の加工ステージに別のワークを搬送した後にその加工ステージに載置した別のワークを撮影して、第二の研削スピンドルの制御用データを取り込むことになる。
このため、カメラは一つだけで、複数の加工ステージの研削スピンドルの制御用データを取り込むことができ、加工ステージごとに複数のカメラを設ける必要がなくなる。また、カメラが搬送ロボットに設けられていることにより、搬送直後のワーク撮影時にはワークに近接して、撮影後の研削加工時にはワークから離間することになり、カメラに別途、移動機構を設けなくても、カメラのレンズに研削用冷却水が付着するのを防止できる。すなわち、カメラを搬送用ロボットに設けることで、ワークを搬送する搬送ロボットを、カメラを移動させる移動機構として兼用できるのである。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記カメラを、前記第一の研削スピンドル及び前記第二の研削スピンドルよりも高い位置に設置したものである。
上記構成によれば、搬送ロボットに設けられるカメラが、第一の研削スピンドル及び第二の研削スピンドルよりも、高い位置に設置されることになる。
このため、カメラには、第一の研削スピンドル及び第二の研削スピンドルが回転駆動した際の飛散物(冷却水等)が付着しにくくなり、レンズの汚れを防止することができる。
よって、より確実に、カメラのレンズへの冷却水等の付着を防止でき、研削加工の制御が不安定になるのを防止できる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記カメラを、搬送ロボット本体よりも高い位置に設置したものである。
上記構成によれば、カメラが搬送ロボット本体よりも高い位置に設置されることにより、他のユニットからのカメラへの飛散物を少なくでき、レンズの汚れを少なくすることができる。また、搬送ロボットが移動する際にも、カメラが邪魔になる恐れを少なくすることができ、搬送ロボットの移動範囲を最大限確保することができる。
よって、搬送ロボットにカメラを設けたとしても、カメラのレンズの汚れを少なくでき、また、搬送ロボットの移動範囲への影響もなくすことができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記カメラを、搬送ロボットの上下スライド軸に設けたものである。
上記構成によれば、搬送ロボットの上下スライド軸にカメラが設けられることで、カメラの撮影角度や高さ位置の自由度を高めることができる。
よって、ワークを撮影する際に、確実に適切な撮影角度や位置にカメラを移動させることができ、カメラの撮影の自由度を高めることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記カメラを、水平方向に延びる取付ブラケットを介して、上下スライド軸に設けたものである。
上記構成によれば、水平方向に延びる取付ブラケットを介して上下スライド軸にカメラを設けたことで、カメラを、上下スライド軸から水平方向に離間した位置に位置させることができる。
よって、カメラが下方を向いてワークを撮影する際に、搬送ロボットの一部が撮影データに映り込むのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、カメラは一つだけで、複数の加工ステージの研削スピンドルの制御用データを取り込むことができ、加工ステージごとに複数のカメラを設ける必要がなくなる。また、カメラが搬送ロボットに設けられていることにより、搬送直後のワーク撮影時にはワークに近接して、撮影後の研削加工時にはワークから離間することになり、カメラに別途、移動手段を設けなくても、カメラのレンズに研削用冷却水が付着するのを防止することができる。
よって、カメラによる撮影データを利用してワークの研削加工を行う研削装置において、複数の加工ステージを備えてワークの生産効率を高めつつも、装置の大型化を防ぎ、コスト増大を防ぎ、さらに、カメラへの研削用冷却水の付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】研削装置の上面図。
【図2】研削装置の正面図。
【図3】研削装置の側面図。
【図4】搬送ロボットの三面図で、(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が上面図。
【図5】搬送ロボットの搬送時の動作を説明する図で、(a)が基準状態からワーク保持開始状態を示した図、(b)がワーク保持開始状態から加工ステージへのワーク搬送状態を示した図。
【図6】搬送ロボットの搬送時の動作を説明する図で、(c)が加工ステージへのワーク搬送状態からカメラ撮影状態を示した図、(d)カメラ撮影状態から次のワークの保持開始状態を示した図。
【図7】第二加工ユニットの上面図。
【図8】第二加工ユニットの一部断面を含む正面図。
【図9】第二加工ユニットの一部断面を含む側面図。
【図10】大径の研削ツールを使用した際の詳細側面図。
【図11】小径の研削ツールを使用した際の詳細側面図。
【図12】研削装置の制御方法を示したフローチャートで、(a)がメインフロー、(b)が搬送処理フローである。
【図13】カメラで加工ステージを撮影している状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0021】
まず、研削装置の全体構成について説明する。図1は本発明の研削装置の上面図、図2は研削装置の正面図、図3は研削装置の側面図(上部のみ中央位置からの側面図)である。なお、各図において、具体的には描いていないが、この研削装置でも、周知のように、作業者の安全性を確保するため、周囲にガード板を設けている。
【0022】
この研削装置Mは、図2、図3に示すように、下部に略矩形状で格子状に組まれたベースフレーム1を設け、上部に研削加工を行うための様々なユニットを設置している。
【0023】
ベースフレーム1は、周知の鋼製の角材11,12,13を、左右方向、前後方向、及び上下方向に組むことで、上部の各ユニットを強固に支持するように構成している。
【0024】
下部のベースフレーム1の上面には、鉄属製の平板材14を全体に張架することで、ベースフレーム1内の目隠しを行う共に、ベースフレーム1上に各ユニットを設置できるようにしている。
【0025】
なお、ベースフレーム1内には、電子制御ユニット15が設置され、研削加工を行う各種ユニットの制御を行うようにしている。また、詳細には記載しないが、この電子制御ユニット15内には加工情報等を記憶する記憶手段を備えている。さらに、図示しないものの、この電子制御ユニット15に対して作業者Hが情報を入力するための制御盤も設けている。
【0026】
図1に示すように、研削装置Mの上部に設置されるユニットは、中央に設置される搬送ロボット2と、その周囲に設置される四つの加工ユニット3A、3B、3C、3Dと、搬送ロボット2の前方に設置される投入取出ステージ4と、搬送ロボット2の左右両側位置で前後方向に延びるように設置される照明移動ユニット5とで、構成している。
【0027】
前述の搬送ロボット2は、いわゆる水平方向に動く三関節のスカラロボットで構成している。図1〜図3では、動いていない基準状態で示しているが、後述する図4〜図6によって、動作状態について説明する。
【0028】
搬送ロボット2の前端に設けた上下スライド軸20の下端には、ワークである薄板ガラスWを吸着保持するハンド機構としての吸着ハンド21を設けている。また、上下スライド軸20の上端には、取付ブラケットを介して、画像取り込み用のカメラ23を設けている。
【0029】
この搬送ロボット2は、ワークである薄板ガラスW(Wo,Wi)を、投入取出ステージ4から各加工ユニット3A、3B、3C、3Dへ、また、各加工ユニット3A、3B、3C、3Dから投入取出ステージ4へ、それぞれ搬送するようにしている。このワークWの搬送作業は、前述した吸着ハンド21を利用して行う。また、この搬送ロボット2では、前述したカメラ23により、搬送後に載置したワークWを、各加工ユニット3A、3B、3C、3Dの上方から撮影するようにしている。
【0030】
前述の四つの加工ユニットは、搬送ロボット2の前後左右にそれぞれ設けられ、第一加工ユニット3Aと、第二加工ユニット3Bと、第三加工ユニット3Cと、さらに、第四加工ユニット3Dとして設置されている。
【0031】
各加工ユニット3A、3B、3C、3Dの構成要素は、全て同じもので設定しており、全て同じ研削作業を行えるようにしている。例えば、第一加工ユニット3Aで示すように、構成要素には、ワークWを研削状態で吸着保持する加工ステージ30と、加工ステージ30の上方からワークWを研削する研削スピンドル31と、加工ステージ30に隣接して複数の研削ツール(砥石)を保持するルーツマガジン32と、を備えている。
【0032】
そして、このうち、加工ステージ30には、中央の加工テーブル33を左右方向にスライド移動させる左右スライド機構34を設けており、加工テーブル33の左右両側(右側は研削スピンドル等で隠れており図示せず)には樹脂製のジャバラカバー35を設けて、左右スライド機構34に研削用冷却水が侵入するのを防止している。また、加工テーブル33の上面には、矩形ボックス状で上方が開放したキャッチパン36を設けて研削用冷却水が飛散するのを防止している。また、詳細には図示しないが、研削用冷却水をワークWに噴射する冷却水プレート37を、キャッチパン36に隣接して設けている。
【0033】
また、研削スピンドル31は、前後方向にスライド移動する前後スライド機構38を備えており、この前後スライド機構38との間に、上下方向に移動する上下ガイド機構39を設けている。こうして、研削スピンドル31が前後方向のみならず上下方向にも自由に移動するように構成している。
【0034】
なお、前後スライド機構38は、図2に示すように、前後方向に延びる大型角材のサイドフレーム16に対して強硬に固定している。これにより、研削スピンドル31の支持剛性が高められ、研削精度を高めることができる。
【0035】
ツールマガジン32は、最大五本の研削ツール(砥石)6…(図2、図3参照)が保持できるように構成している。こうして、径の異なる砥石や研磨材の異なる砥石など、複数の研削ツール6を、研削スピンドル31で自動的に交換できるようにしている。
【0036】
前述の投入取出ステージ4は、作業者Hが開閉操作する開閉扉40と、開閉扉40と連動して動く長方形形状のカートリッジ設置台41と、カートリッジ設置台41に着脱自在に設置されるワークカートリッジ42と、を備えている。
【0037】
開閉扉40は、下端に水平方向に延びるヒンジ軸43(図3参照)を設けた横長長方形の鋼板によって構成され、上部外面には平面視略コ字形状のハンドル部44を設けている。この開閉扉40を作業者Hがハンドル部44を持ってヒンジ軸43を中心に手前側に回動させることで、投入取出ステージ4を開放することができ、研削装置M内へワークWの出し入れを行うことができる。
【0038】
カートリッジ設置台41は、その両側端に開閉扉40に連結されたリンク機構45を設けており、また、下部を前後方向に延びるスライドレール46(図3参照)にスライド係合している。このため、作業者Hが開閉扉40を開閉操作すると、カートリッジ設置台41もこの開閉操作に連動して研削装置Mの内外を行き帰するようになる。
【0039】
ワークカートリッジ42は、左右方向に四列でワークWの積層体が並ぶように、樹脂壁47で仕切った積層部48を、四つ設けている。このうち、右側二つの積層部48では、未加工のワークWiを積層して、左側二つの積層部48では、加工済のワークWoを積層するように設定している。このワークカートリッジ42は、作業者Hがカートリッジ設置台41から容易に取り外しできるように、持ち運びする際の把持部49を両端に設けている。
【0040】
このワークカートリッジ42に、加工前のワークWをセット(設置)して、作業者HがワークWをセットしたワークカートリッジ42をカートリッジ設置台41に置き、開閉扉40を閉鎖することで、加工前準備を整えることができる。
【0041】
前述の照明移動ユニット5は、搬送ロボット2の両側位置で前後方向に延びる移動スライドレール50と、この移動スライドレール50に上下移動機構51を介して支持された略正方形の照明枠52と、を備えている。
【0042】
移動スライドレール50は、前端と後端を、支持ブラケット50a,50aを介して金属製の平板材14に設置している。この移動スライドレール50の後端は、後側の加工ユニット(第二加工ユニット3B、第四加工ユニット3D)のツールマガジン32の位置まで延設している。このため、照明枠52が研削装置Mの後側に大きく移動することになり、照明枠52を使用しない待機タイミング(各加工ユニット3A、3B、3C、3Dで研削加工等を行っているタイミング)では、照明枠52を後側の位置まで後退させることができる。
【0043】
照明枠52は、各枠部52a…の内周面に図示しないLEDを複数埋め込むことで、枠内を照射するように構成している。この照明枠52は、カメラ23でワークWを撮影する際に、加工ステージ30のキャッチパン36内に投入して、LEDでワークWを側方から照射することで、ワークWの外形形状(輪郭)を浮かび上がらせて、ワークWの撮影を容易にしている。
【0044】
次に、搬送ロボット2について、図4〜図6で説明する。図4は、搬送ロボットの三面図で(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が上面図である。図5、図6は、搬送ロボットの搬送時の動作を説明する図であり、図5(a)が基準状態からワーク保持開始状態を示した図、図5(b)がワーク保持開始状態から加工ステージへのワーク搬送状態を示した図、図6(c)が加工ステージへのワーク搬送状態からカメラ撮影状態を示した図、図6(d)カメラ撮影状態から次のワークの保持開始状態を示した図、である。
【0045】
搬送ロボット2は、前述のように水平方向に移動する三関節のスカラロボットで構成しており、水平方向で縦横無尽に動くように構成している。具体的には、図4(b)に示すように、第一関節2Ja、第二関節2Jb、及び第三関節2Jcによって、左右方向に自由に動き、前側アーム24の前端の上下スライド軸20は、水平方向に自由に移動するようになっている。
【0046】
この上下スライド軸20は、前側アーム24前端を上下方向に貫通設置しており、上下方向にも自由にスライド移動するようになっている。
【0047】
上下スライド軸20の下端には、前述した吸着ハンド21を設けている。この吸着ハンド21は、長方形の平板状のベースプレート25に、下側を向いた四つの吸盤26…を設けている。この吸盤26に負圧を作用させることで、吸着力を生じさせ、ワークである薄板ガラスWを吸着保持するように構成している。
【0048】
この四つの吸盤26…は、図4(c)にも示すように、二つずつ、左右に設けることで、それぞれ、二つの吸盤26で一枚のワークWを吸着保持するようにしている。このため、一つの吸着ハンド21で二枚のワークW、Wを一度に搬送することができる。
【0049】
また、この吸着ハンド21には、下向きに突出したピン27をベースプレート25の両端に設けている。このピン27、27は、ワークカートリッジ42内のワークWがワークカートリッジ42内で整列するように、ワークWを搬送する前に、搬送ロボット2で一旦、ワークWをワークカートリッジ42内に押し込む際に用いる当接部材である。
【0050】
上下スライド軸20の上端には、前述したようにカメラ23を設けている。このカメラ23は、吸着ハンド21のワークWの保持位置(ベースプレート25の突出部分)から、約90°ズラした位置に設置している。これは、カメラ23で下方を撮影する際に、ベースプレート25が邪魔にならないようにするためである。このカメラ23は、一般的なCCDカメラで構成しており、二次元の画像データを取り込むようにしている。
【0051】
また、このカメラ23は、図2、図3にも示すように、研削装置Mの内で最も高い位置、具体的には最も高い搬送ロボット3本体の前側アーム24よりも高い位置に設置している。このようにカメラ23を設置することで、他の加工ユニット3A,3B,3C,3Dから飛んでくる飛散物が、カメラ23に飛び散るのを防ぐことができ、カメラ23のレンズ(図示せず)に飛散物が付着するのを防止できる。特に、全ての加工ユニット3A、3B、3C、3Dの研削スピンドル31…よりも、カメラ23を高い位置に設置しているため、研削加工時に、研削スピンドルから飛散する研削用冷却水がカメラ23のレンズに付着するのを確実に防止できる。
【0052】
また、上下スライド軸20にカメラ23を設けることで、カメラ23の撮影角度や上下方向位置を、上下スライド軸20を上下左右に動かすことで自由に変更することができる。よって、カメラ23の撮影の自由度も高めることができる。
【0053】
また、このカメラ23は、取付ブラケット22を介して上下スライド軸20に取り付けている。この取付ブラケット22は、やや下向きに屈曲して水平方向に延びる腕部22aと、上下方向位置を調整可能なカメラ取付部22bと、上下スライド軸20に筒状に固定されるシャフト固定部22cとで構成している。このように、カメラ23を、水平方向に延びる腕部22aを備える取付ブラケットを介して上下スライド軸20に設けているため、カメラが上下スライド軸20から水平方向に離間して位置し、撮影時には、前側アーム24の一部が映り込むのを防ぐことができる。
【0054】
次に、搬送ロボット2の搬送時の動作を、図5、図6を利用して説明する。
【0055】
図5(a)に示すように、搬送ロボット2は、まず、基準状態から各関節を反時計廻りにわずかに回動させ、ワークカートリッジ42に積層された未加工のワークWiを吸着ハンド21で吸着する。このとき、上下スライド軸20を大きく反時計廻りに回動させることで、吸着ハンド21のベースプレート25を回動させ、左側の吸盤26で未加工のワークWiを吸着する。
【0056】
その後、図5(b)に示すように、搬送ロボット2は、各関節を大きく反時計廻りに回動させて、第一加工ユニットの加工ステージ30に、ワークWiを搬送する。このとき、ワークWiは大体の位置に搬送されて、加工ステージ30に載置されることになる。すなわち、厳密な位置確認を行うことなく、ワークWiは加工ステージ30に搬送されて、大凡の位置に載置されるのである。
【0057】
そして、図6(c)に示すように、搬送ロボット2は、前側アーム24をさらに反時計廻りに回動させると共に、上下スライド軸20を時計廻りに回動させることで、カメラ23を確実にワークWiの上方(真上)に位置させる。こうして、搬送ロボット2は、自ら搬送して載置したワークWiを、カメラ23で撮影するようにしている。なお、ワークWの撮影手順等については、後述する。
【0058】
そして最後に、図6(d)に示すように、搬送ロボット2は、ワークWiの撮影終了後に、次の未加工のワークWiを搬送するために、各関節を時計廻りに戻して、ベースプレート25の左側の吸盤26で、次のワークWを吸着するようにしている。
【0059】
そして、その後、搬送ロボット2は、図5(b)の動作を繰り返し、ワークカートリッジ42から次の加工ステージに未加工のワークWiを搬送する。こうして、空いている加工ユニットの加工ステージに、次々と未加工のワークWiを搬送して載置する。そして、その搬送後に、カメラ23で加工ステージに載置したワークWiを撮影するようにしている。
【0060】
なお、具体的には図示しないが、搬送ロボット2は、加工が終了した加工済のワークWoを、右側の吸盤26で吸着することで、加工ステージ30からワークカートリッジ42に搬送する。搬送ロボット2は、図5(b)の動作の前に、加工ステージ30から加工済のワークWoを取り上げることで、未加工のワークWiの搬送を行いつつ、加工済のワークWoの搬送も同時に行うのである。
【0061】
次に、加工ユニットについて説明する。図7は加工ユニットの上面図、図8は加工ユニットの一部断面を含む正面図、図9は加工ユニットの一部断面を含む側面図である。
【0062】
加工ユニット3B(便宜上、第二加工ユニットで説明する)は、図7に示すように、前述したワークWを保持する加工ステージ30と、ワークWを研削する研削スピンドル31と、研削ツール6を保持するツールマガジン32と、を備えている。
【0063】
そして、このうち、加工ステージ30には、前述のように、矩形の加工テーブル33と、加工テーブル33を左右に動かす左右スライド機構34と、左右スライド機構34を覆うジャバラカバー35と、加工テーブル33の上面に設置されたキャッチパン36と、研削用冷却水を噴射する冷却水プレート37と、を備えている。
【0064】
さらに、この加工ステージ30は、図8に示すように、さらに様々な構成要素を備えている。
【0065】
まず、加工テーブル33の上面には、キャッチパン36の内側中央にワークWを吸着保持するための吸着台70を設けている。この吸着台70は、上面(受け面)70aが長方形(図7参照)となった略T字状のブロック形状の台座で構成している。吸着台70の上面70aには、負圧を付与するために、複数の吸気口70b(図10、図11参照)を設けている。また、薄板ガラスであるワークWの表面に傷が生じないようにするため、吸着台70の上面70aには、平滑加工を施している。
【0066】
吸着台70の周囲には、研削加工の際の機械原点を算出するための基準ピンを二つ71,71、カメラ23側(上方側)を向くように立設している。この基準ピン71,71は、ワークWを設置(保持)した状態で、カメラ23から撮影できるように、ワークWが重ならない位置に配置している。また、二つの基準ピン71,71は、ワークWに対して対角に位置するように配置している。なお、ワークWが完全に透明である場合には、基準ピンの位置はワークWと重なるように設定してもよい。
【0067】
そして、基準ピン71の先端部71aは、図8に示すように、その高さhpが吸着台70の上面70aの高さhsと同じ高さになるように設定している。このように設定することで、カメラ23で撮影する際に、ワークWと基準ピン71との間でピントのズレが生じないため、画像データの取り込みを確実に行える。
【0068】
また、キャッチパン36の内部には、上げ底で傾斜した略四角形の背景板72を設けている。この背景板72は、全面を艶消し黒で塗付しており、カメラ23に映り込んだ際の反射を防いで、ワークWと基準ピン71の映り込みを際立たせるようにしている。また、背景板72を傾斜するように設置することで、研削用冷却水が即座に流れ落ちるようにしている。また、この背景板72には、基準ピン71と吸着台70を挿通させるための挿通穴(具体的には図示せず)を形成している。
【0069】
キャッチパン36の隣接位置には、キャッチパン36に流れ落ちる研削用冷却水を排水する排水管73と排水樋74を設けている。この排水管73と排水樋74を設けることで、研削用冷却水がキャッチパン36内に滞留することを防止している。
【0070】
左右スライド機構34は、周知のLMガイドによって、加工テーブル33が左右方向に自由にスライド移動するようになっている。そして、この左右スライド機構34はステッピングモータ34Mによって、スライド量が制御されるように構成している。すなわち、左右スライド機構34によって、加工テーブル33の左右方向の位置が制御されるようになっているのである。これにより、後述する研削加工の際には、左右スライド機構34が研削経路の左右位置を規定することになる。
【0071】
ジャバラカバー35は、いわゆるアコーディオンのように左右方向に伸縮するように構成している。このため、加工テーブル33が左右スライド機構34で左右に移動したとしても、加工テーブル33とジャバラカバー35との間で隙間が生じず、左右スライド機構34に研削用冷却水が流れ込むのを防ぐことができる。
【0072】
キャッチパン36は、前述のように上方が解放した矩形ボックス状に構成しており、外部に研削用冷却水が漏れないように設定している。具体的には、図8に示すように、キャッチパン36の側壁36aを、基準ピン71(hp)や吸着台70(hs)よりも高い位置hcまで延ばして、研削用冷却水の漏れを防いでいる。
【0073】
冷却水プレート37は、左右方向に出没自在になるように構成しており、研削加工時には、キャッチパン36の上方を覆う位置まで突出するように構成している。そして、この冷却水プレート37の中央には、前後方向に延びる長穴状の研削挿通穴37aを設けている。この研削挿通穴37aは、研削加工時に研削ツール6を挿通するために設けている。また、具体的に図示しないものの、冷却水プレート37の裏面(下面)には、複数の噴射口を設けて、冷却水プレート37内部を流れる研削用冷却水を下方(ワークW側)に噴射するように構成している。
【0074】
研削スピンドル31は、研削を行う際の回転駆動力を発生する電動モータ31aと、電動モータ31aのスピンドル軸に研削ツール6(砥石)を固定するチャック31bと、を備えている。
【0075】
研削スピンドル31は、前述したように、前後スライド機構38を備えている。この前後スライド機構38は、前後方向に延びるスライドレール38aと、スライドレール38a上を移動するスライダー38bとを備えている。この前後スライド機構38も、ステッピングモータ38Mによってスライダー38bのスライド量が制御されるように構成しており、この前後スライド機構38によって研削スピンドル31の前後位置が制御されるようになっている。よって、研削加工の際には、この前後スライド機構38が研削経路の前後方向位置を規定することになる。
【0076】
また、研削スピンドル31と前後スライド機構38との間には、前述のように、上下ガイド機構39を設けている。この上下ガイド機構39も、上下方向に延びるレール39aと、レール上を移動する移動部材39bとを備えている。さらに、この上下ガイド機構39もステッピングモータ39Mによって移動部材の上下移動量が制御されるように構成しており、この上下ガイド機構39によって、研削スピンドル31の上下位置を制御するようになっている。これにより、研削ツール6をワークWに位置合わせする際には、この上下ガイド機構39を使って、位置調整するようにしている。
【0077】
ツールマガジン32は、前述のように、最大五本の研削ツール6…を保持できるように構成している。具体的には、図9に示すように、研削ツール6…を保持する五つのツール保持部32a…を前後方向に一列に並べて、このツール保持部32aと研削スピンドル31との間で、自動的に研削ツール6のやり取りを行うように構成している。
【0078】
このため、この研削装置Mでは、研削箇所に応じて、複数の研削ツール6…を自動的に交換することができ、研削自由度を高めることができる。
【0079】
研削スピンドル31の研削ツール6について、図10、図11によって説明する。図10は大径の研削ツールを使用した際の詳細側面図、図11は小径の研削ツールを使用した際の詳細側面図である。
【0080】
前述したように、この研削スピンドル31は、チャック31bによって研削ツール6を着脱することができ、図10に示すような大径の研削ツール6Aと、図11に示すような小径の研削ツール6Bとを切り替えて装着することができる。
【0081】
図10に示す、大径の研削ツール6Aは、ダイヤモンド粒子60を表面に付着させた大径円柱状の加工部61と、チャック31bに固定される上下方向に延びるシャフト部62とを備え、加工部61の上側には外方に広がる鍔部63を設けている。また、加工部61の下部には三条で筋状に窪んだ凹部64を形成している。
【0082】
この大径の研削ツール6を、研削スピンドル31で回転させて、ワークWの外縁(外形)Waに凹部64を当接させることで、ワークWの外形研削や面取りを行うことができる。なお、70は吸着台である。
【0083】
こうして、大径の研削ツール6AによってワークWを研削することで、研削加工時に研削ツール6Aが安定して切削が行われるため、加工精度を高めることができる。また、研削ツール6Aが大径であるため、ツールの工具寿命も長くすることができ、ワークWを大量に連続して研削できる。
【0084】
図11に示す小径の研削ツール6Bは、表面にダイヤモンド粒子160を付着させた小径円柱状の加工部161と、チャック31bに固定されるシャフト部162とを備え、加工部161の上側には鍔部163を設けている。また、加工部161の下部には、三条で筋状に窪んだ凹部164を形成している。
【0085】
この小径の研削ツール6Bでは、径が小さいため、研削ツール6をワークWの穴部Wb内に差し込んで、穴部Wbの内縁Wcに凹部164を当接させることで、ワークWの穴部Wbの内形研削や面取りを行うことができる。
【0086】
こうして、小径の研削ツール6BでワークWの穴部Wbの内形を研削することによって、穴部Wbの径が小さく加工しにくい場合であっても、研削加工を確実に行うことができる。
【0087】
次に、研削装置Mの制御方法、特に、搬送ロボット2の搬送制御とカメラ23撮影時の制御方法を、図12、図13で説明する。図12は研削装置の制御方法を示したフローチャートで、(a)がメインフロー、(b)が搬送処理フローを示した図である。図13はカメラで加工ステージを撮影している状態を示す側面図である。
【0088】
図12(a)に示すように、搬送ロボット2は、まず初めに、S1で、第一加工ユニット3Aと投入取出ステージ4との間でワークWの搬送処理を行う。この搬送処理は、後述する図12(b)の搬送工程フローで具体的に説明するが、第一加工ユニット3Aと投入取出ステージ4との間で、ワークWのやり取りを行う処理であり、搬送ロボット2の吸着ハンド21等を使って行う処理である。
【0089】
次に、S2で、第二加工ユニット3Bと投入取出ステージ4との間でワークWの搬送処理を行う。この搬送処理も、対象の加工ユニットが第二加工ユニット3Bになるだけで、S1と同様に、第二加工ユニット3Bと投入取出ステージ4との間で、ワークWのやり取りを行う。
【0090】
さらにその後、S3で、第三加工ユニット3Cと投入取出ステージ4との間でワークWの搬送処理を行う。この搬送処理も、第三加工ユニット3Cである点が異なるものの、S1と同様の処理である。
【0091】
そして、最後に、S4で、第四加工ユニット3Dと投入取出ステージ4との間でワークWの搬送処理を行う。この処理も、第四加工ユニット3Dが異なるものの、S1と同様の処理である。
【0092】
このように、搬送ロボット2自体では、一つのロボットで、四つの加工ユニット3A、3B、3C、3Dと投入取出ステージ4との間で、ワークWの搬送処理を行いつつも、各加工ユニットの加工ステージでは、各々個別に研削作業を行うことによって、複数の加工ステージで、多くのワークWをできるだけ効率よく研削することができる。
【0093】
なお、四つの加工ユニット3A、3B、3C、3Dの搬送処理の順番は、必ずしもこれに限られるものではなく、ワークWの研削加工が終了したところから順番に、搬送処理するようにしてもよい。また、不具合が発生した加工ユニットについては、順番から除いて搬送処理するようにしてもよい。
【0094】
次に、図12(b)で、搬送処理フローの詳細について説明する。
【0095】
この搬送処理フローでは、まず、S11で、第N加工ユニット(N=1〜4)へ未加工のワークWiを搬送する。この搬送によって、未加工のワークWiは、第N加工ユニットに持ち込まれる。
【0096】
その後、S12で、加工ステージ30に加工済のワークWoがあるかを判断する。加工済のワークWoが加工ステージ30に存在すれば、加工ステージ30に未加工のワークWiを載置できないからである。
【0097】
このS12で、加工済のワークWoがあると判断した場合(YES判断)には、S13に移行して、加工済のワークWoを加工ステージから取り出す。なお、この加工ステージ30からの取り出しは、前述したように、吸着ハンド21のベースプレート25の右側の吸盤26で行う。
【0098】
一方、加工済のワークWoがあると判断しなかった場合(NO判断)には、S13には移行せず、そのままS14に移行する。
【0099】
次に、S14で、未加工のワークWiを加工ステージ30に載置する。この載置する状態を示した図が前述した図5(b)である。この加工ステージ30のワークWの載置により、未加工のワークWiの加工ステージ30への搬送が終了する。
【0100】
その後、S15で、載置した未加工のワークWiをカメラ23で撮影する。この撮影状態を示した図が前述した図6(c)である。さらに、このカメラ23による撮影状態を示したのが図13である。
【0101】
この図13に示すように、搬送ロボット2は、上下スライド軸20の最上部に取り付けたカメラ23によって、加工ステージ30のワークWiと基準ピン71,71を撮影する。このように上方の離れた位置から加工ステージ30を撮影することで、取り込むワークWiや基準ピン17,17の画像データの歪みをできるだけ少なくするようにしている。
【0102】
こうして取り込んだ画像データは、具体的には図示しないが、各加工ステージ30の研削スピンドル31等の研削経路を演算算出するための情報として、各加工ステージ30…への搬送終了直後に、電子制御ユニット15に取り込まれる。
【0103】
最後に、S16で、投入取出ステージ4に戻る。なお、S13で加工済ワークWoを加工ステージ30から取り出た場合には、加工済ワークWoを投入取出ステージ4(ワークカートリッジ42)に搬送する。このように、搬送ロボット2(吸着ハンド21)が投入取出ステージ4に戻ることで、次の搬送処理に備えることができる。
【0104】
以上、このようなステップによって、搬送処理フローは終了して、メインフローに戻ることになる。
【0105】
以上のように、この実施形態の研削装置Mは、カメラ23による撮影データを利用してワークWの研削加工を行う研削装置Mであって、ワークWの研削加工を行う複数の加工ステージ30…と、ワークWの投入及び取出を行う投入取出ステージ4と、各加工ステージ30…と投入取出ステージ4と間で、各々ワークWを搬送する搬送ロボット2と、搬送ロボット2に設けられたカメラ23と、を備えており、このカメラ23によって、第一の加工ステージ30(例えば、第一加工ユニット3Aの加工ステージ)にワークWを搬送した直後に、その加工ステージ30に載置したワークWを撮影して、その加工ステージ30の研削スピンドル31用の画像データを取り込み、また、第二の加工ステージ30(例えば、第二加工ユニット3Bの加工ステージ)に別のワークWを搬送した直後に、その加工ステージ30に載置した別のワークWを撮影して、その加工ステージ30の研削スピンドル31用の画像データを取り込んでいる。
【0106】
このため、カメラ23は、一つだけで、複数の加工ステージ30…の研削スピンドル31用の画像データを取り込むことができ、加工ステージ30ごとに複数のカメラを設ける必要がなくなる。また、カメラ23が搬送ロボット2に設けられていることにより、搬送直後のワーク撮影時にはワークWに近接して、撮影後の研削加工時にはワークWから離間することになり、カメラ23に別途、移動機構を設けなくても、カメラ23のレンズに研削用冷却水が付着するのを防止できる。
【0107】
よって、カメラ23による撮影データを利用してワークWの研削加工を行う研削装置において、複数の加工ステージ30…を備えてワークWの生産効率を高めつつも、装置の大型化を防ぎ、コスト増大を防ぎ、さらに、カメラ23への研削用冷却水の付着も防止することができる。
【0108】
また、この実施形態では、搬送ロボット2に設けられるカメラ23を、全ての研削スピンドル31…よりも高い位置に設置している。
【0109】
このため、カメラ23には、研削スピンドル31が回転駆動した際の飛散物(冷却水等)が、付着しにくくなり、レンズの汚れを防止することができる。
【0110】
よって、より確実に、カメラ23のレンズへの冷却水等の付着を防止でき、研削加工の制御が不安定になるのを防止できる。
【0111】
また、この実施形態では、搬送ロボット2に設けられるカメラ23を、搬送ロボット2本体よりも高い位置に設置している。
【0112】
これにより、他のユニットからのカメラ23への飛散物を少なくでき、レンズの汚れを少なくすることができる。また、搬送ロボット2が移動する際にも、カメラ23が邪魔になる虞を少なくすることができ、搬送ロボット2の移動範囲を最大限確保することができる。
【0113】
よって、搬送ロボット2にカメラ23を設けた場合でも、カメラ23のレンズの汚れをより少なくでき、また、搬送ロボット2の移動範囲への影響もなくすことができる。
【0114】
また、この実施形態では、カメラ23を、搬送ロボット2の上下スライド軸20に設けている。
【0115】
これにより、上下スライド軸20を上下左右に自由に動かせることから、カメラ23の撮影角度や高さ位置の自由度を高めることができる。
【0116】
よって、ワークWを撮影する際に、確実に適切な撮影角度や位置にカメラ23を移動させることができ、撮影の自由度を高めることができる。
【0117】
また、この実施形態では、カメラ23を、水平方向に延びる取付ブラケット22を介して、上下スライド軸20に設けている。
【0118】
これにより、カメラ23を、上下スライド軸23から水平方向に離間した位置に位置させることができる。
【0119】
よって、カメラ23が下方を向いてワーク等を撮影する際に、搬送ロボット2の一部である前側アーム24が撮影データに映り込むのを防ぐことができる。
【0120】
以上、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、あらゆる研削装置に適用する実施形態を含むものである。
【0121】
この実施形態の研削装置Mでは、ワークWを携帯電話用の薄板ガラスとしているが、例えば、携帯音響機器用の薄板ガラスであってもよいし、また、携帯ゲーム機用の薄板ガラスであってもよい。さらに、アクリル製の板や、金属製の物品や板、木製品やプラスチック製品等であってもよい。
【0122】
また、研削装置の全体構成についても、この実施形態に限定されるものではなく、例えば、加工ユニットが、二つや三つ、さらに五つや六つなど、多くの加工ユニットを設けるようなものに、適用してもよい。
【0123】
さらに、この実施形態では、研削スピンドル31と加工テーブル33(加工ステージ30)をそれぞれ作動させることで、ワークWの研削加工を行うようにしたが、例えば、研削スピンドル31だけを動かして、ワークWを研削してもよい。
【0124】
研削ツール6についても、この実施形態に挙げたようなものに限定されるのではなく、例えば、球型の研削ツールや、円盤型の研削ツール、また円錐型の研削ツールであってもよい。また、砥石材料についてもダイヤモンドに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0125】
M…研削装置
W…ワーク(薄板ガラス)
Wi…未加工のワーク
Wo…加工済のワーク
2…搬送ロボット
3A…第一加工ユニット
3B…第二加工ユニット
3C…第三加工ユニット
3D…第四加工ユニット
4…投入取出ステージ
15…電子制御ユニット
23…カメラ
30…加工ステージ
31…研削スピンドル




【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラによる撮影データを利用してワークの研削加工を行う研削装置であって、
第一の研削スピンドルを備えてワークの研削加工を行う第一の加工ステージと、
第二の研削スピンドルを備えて別のワークの研削加工を行う第二の加工ステージと、
前記ワークの投入及び取出を行う投入取出ステージと、
前記第一の加工ステージと前記投入取出ステージ間、及び前記第二の加工ステージと前記投入取出ステージ間で、各々ワークを搬送する搬送ロボットと、
該搬送ロボットに設けられ、第一の加工ステージにワークを搬送した後に第一の加工ステージに載置したワークを撮影して、第一の研削スピンドルの制御用データを取り込み、第二の加工ステージに別のワークを搬送した後に第二の加工ステージに載置した別のワークを撮影して、第二の研削スピンドルの制御用データを取り込むカメラと、
を備える研削装置。
【請求項2】
前記カメラを、前記第一の研削スピンドル及び前記第二の研削スピンドルよりも高い位置に設置した
請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
前記カメラを、搬送ロボット本体よりも高い位置に設置した
請求項2記載の研削装置。
【請求項4】
前記カメラを、搬送ロボットの上下スライド軸に設けた
請求項1〜3いずれか記載の研削装置。
【請求項5】
前記カメラを、水平方向に延びる取付ブラケットを介して、上下スライド軸に設けた
請求項4記載の研削装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−83852(P2011−83852A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237945(P2009−237945)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(302031502)株式会社 ハリーズ (16)
【Fターム(参考)】