説明

研磨ブラシ用毛材および研磨ブラシ

【課題】従来の研磨ブラシ用毛材と比べ毛腰が高く、被研磨物の表面に存在する複雑な凹凸部分の隅々まで効率よく研磨することができると共に、砥材粒子の脱落を極力抑えることができ、被研磨面を汚さず、かつ折損耐久性にも優れており、持続的な研磨性能を発揮する研磨ブラシ用毛材および研磨ブラシを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂モノフィラメント本体2の繊維軸方向外周に、この繊維軸と平行に連続して突出した複数の凸条部3を有するモノフィラメントであって、前記凸条部は、前記モノフィラメント本体を形成する熱可塑性樹脂よりも高硬度の熱可塑性樹脂と砥材粒子との混合物からなることを特徴とする研磨ブラシ用毛材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板などの金属部材および機械部品などの被研磨物の研磨加工において、金属表面および精密機器等を研磨するために使用する研磨ブラシ用毛材および研磨ブラシの改良に関し、さらに詳しくは、毛腰が高く、砥材粒子の脱落率が小さく、被研磨面を汚さず研磨できることから、研磨性能が極めて優れ、被研磨物の表面に存在する複雑な凹凸部分の隅々まで効率よく研磨することができると共に、この優れた研磨性能の持続性が良好な研磨ブラシ用毛材および研磨ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板などの金属部材および機械部品などの被研磨物の表面研磨加工においては、砥材粒子を含有する合成樹脂モノフィラメントを毛材として植毛したロールブラシ、カップブラシ、筒状ブラシおよびホイルブラシなどを被研磨物の表面に押圧し、回転を付与することによって、表面研磨および端面のバリ取り研磨などの研磨作業が行われている。
【0003】
しかるに、これらの被研磨物の被研磨面は、平面だけでなく凹凸面などの存在により複雑になってきていることから、近年では研磨バリ取り加工が益々困難になっている。また、研磨およびバリ取り加工中に研磨ブラシから砥材粒子が脱落し、それが研磨面に残留することにより、最終製品の欠陥に繋がることから、研磨ブラシの取り扱いが特に厳しくなってきている。
【0004】
こうした問題を解決する手段としては、複雑な凹凸面の研磨に対し、直径をより細くした研磨ブラシ用毛材を使用することが検討されており、この場合にはさらに、砥材粒子と合成樹脂との接着力を向上させて砥材粒子の脱落を防止するために、砥材粒子表面にシランカップリング処理を施した研磨ブラシ用毛材(例えば、特許文献1参照)、合成樹脂と研磨砥材粒子とからなる繊維にマルチ繊維をカバーリングした研磨ブラシ用毛材(例えば、特許文献2参照)などが既に提案されている。
【0005】
しかし、シランカップリング処理を施した研磨ブラシ用毛材は、シランカップリング処理を施していない研磨ブラシ用毛材に比べて、砥材粒子と合成樹脂との接着力はある程度改善されるものの、研磨時に毛材同士が強く擦れ合うために、やはり砥材粒子の脱落防止には十分な効果を発揮せず、また植毛した毛材の根元部分の屈曲疲労性が低いため、毛材の折損が発生しやすいという問題があった。
【0006】
また、マルチ繊維でカバーリングした研磨ブラシ用毛材においても、やはり毛材同士が強く擦れ合うために、マルチ繊維が解れてしまうばかりか、マルチ繊維が切れて被研磨物に付着したり、マルチ繊維が解れた箇所から砥材粒子が脱落して被研磨物表面に付着したりするという問題が残されているため、研磨ブラシ用毛材に対しては更なる改善が強く要望されていた。
【0007】
さらに、従来の研磨ブラシ用毛材を使用した研磨ブラシでは、研磨ブラシ用毛材の直径を細くするには限度があり、しかもそれだけでは被研磨物の複雑な凹凸面には対応できず、バリ取りおよび研磨加工が完全に行われない傾向にあるため、従来よりも一層優れた研磨性能を持ち、それを持続的に発揮する研磨ブラシ用毛材の実現が求められていた。
【特許文献1】特開昭55−51813号公報
【特許文献2】特開2001−32756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、鋼板などの金属部材、機械部品および精密機器等の被研磨面の複雑な凹凸部分のバリ取りおよび研磨加工において、研磨性能が極めて優れ、被研磨物の表面に存在する複雑な凹凸部分の隅々まで効率よく研磨することができると共に、この優れた研磨性能の持続性が良好な研磨ブラシ用毛材および研磨ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明によれば、熱可塑性樹脂モノフィラメント本体の繊維軸方向外周に、この繊維軸と平行に連続して突出した複数の凸条部を有する多葉断面モノフィラメントから構成されるブリッスルであって、前記凸条部は、前記モノフィラメント本体を形成する熱可塑性樹脂(A)とは異なる熱可塑性樹脂(B)と砥材粒子との樹脂組成物からなることを特徴とする研磨ブラシ用毛材が提供される。
【0010】
なお、本発明の研磨ブラシ用毛材においては、
前記多葉断面モノフィラメントの断面外周に存在する凸条部の数が2〜6の範囲にあること、
前記熱可塑性樹脂(A)がナイロン6/610共重合体および/またはナイロン6/612共重合体であり、前記熱可塑性樹脂(B)がポリエチレンナフタレートであること、
前記凸条部を構成する樹脂組成物が熱可塑性樹脂(B)80〜95重量%と砥材粒子20〜5重量%とからなること、および
前記砥材粒子の粒度が#800〜2000であること
がさらに好ましい条件として挙げられ、これらの条件を満たすことにより、より優れた効果を取得することができる。
【0011】
また、本発明の研磨ブラシは、上記研磨ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とし、従来の研磨ブラシ用毛材と比べ毛腰が高く、且つ毛材からの砥材粒子の脱落が極めて少なく、研磨性能が良好であり、かつこの優れた研磨性能を持続的に発揮するなどの従来の研磨ブラシ用毛材にはない優位な効果を発現する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、毛腰が高く、砥材粒子の脱落率が小さく、被研磨面を汚さず研磨できることから、研磨性能が極めて優れ、被研磨物の表面に存在する複雑な凹凸部分の隅々まで効率よく研磨することができると共に、この優れた研磨性能の持続性が良好な研磨ブラシ用毛材および研磨ブラシを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の研磨ブラシ用毛材および研磨ブラシについて図面に従って具体的に説明する。
【0014】
図1(a)は本発明の研磨ブラシ用毛材の一例を示す側面図、(b)は(a)のA―A線断面図である。
【0015】
図1に示したように、本発明の研磨ブラシ用毛材は、熱可塑性樹脂モノフィラメント本体2の繊維軸方向外周に、この繊維軸と平行に連続して突出した複数の凸条部3を有する多葉断面モノフィラメントのブリッスル1から構成されている。
【0016】
そして、この多葉断面モノフィラメントのモノフィラメント本体2は、熱可塑性樹脂(A)のみから構成されており、砥材粒子を含んでいないため、高い毛腰が維持され、かつモノフィラメントにおける砥材粒子の全体量が従来よりも低くなることから、毛材からの砥材粒子の脱落が相対的に減少して、極めて優れた研磨性能の確保を可能としている。
【0017】
また、凸条部3は、熱可塑性樹脂(A)とは異なる熱可塑性樹脂(B)と砥材粒子との樹脂組成物から構成されており、この熱可塑性樹脂(B)として、熱可塑性樹脂(A)とは異なり、好ましくは高硬度或いは高粘度の熱可塑性樹脂(B)を採用したことにより、優れた研磨性能の実現を可能としたばかりか、この凸条部3にのみ砥材粒子を含有させたことにより、砥材粒子の全体量を少なくすることができ、毛材からの総体的な砥材粒子脱落量の減少を可能としている。
【0018】
つまり、モノフィラメント本体2と凸条部3とを同じ熱可塑性樹脂から構成した場合には、優れた研磨性能の発現を期待することができないため好ましくない。
【0019】
なお、多葉断面モノフィラメントの断面外周に存在する凸条部3の数は2〜6の範囲、特に3〜5の範囲にあることが好ましく、2未満では研磨性能が低下し、6を超えると砥材粒子の脱落量が増す傾向となる。
【0020】
このような構成とすることにより、凸条部3が被研磨物の表面に存在する複雑な凹凸部分の隅々まで入り込み、それらを効率よく研磨することができるばかりか、毛材全体の毛腰が高く、砥材粒子の脱落率が小さく、かつ被研磨面を汚さず研磨できるため、優れた研磨性能の持続性も良好となるのである。
【0021】
また、凸条部3における熱可塑性樹脂(B)と砥材粒子との配合割合は、80〜95重量%/20〜5重量%、特に85〜95重量%/15〜5重量%であることが好ましく、砥材粒子の割合が上記の範囲未満の場合は優れた研磨性能が発現せず、上記の範囲を越えると毛材からの脱落量が大きくなるという好ましくない傾向が招かれる。
【0022】
ここで、上記多葉断面モノフィラメントを構成する熱可塑性樹脂(A)および(B)の具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610(以下、N610という)、ナイロン612(以下、N612という)、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(以下、PENという)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、低密度および高密度ポリエチレン、シンジオタクチックまたはアタクチックまたはイソタクチックポリスチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン・ポリブタジエン・ポリスチレンブロックコポリマー、ポリスチレン・ポリイソプレン・ポリスチレンブロックコポリマーなどのスチレン系エラストマー、エチレン・プロピレン・ジエチレンコポリマーなどのオレフィン系ゴムとポリプロピレンまたはエチレンなどのポリオレフィンとのブレンドなどのポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、フッ素ゴム系エラストマー、ポリエーテルエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、エチレンテトラフロロエチレン、ポリビニリデンフロライドなどのフッ素系樹脂などが挙げられ、中でもポリアミドおよびポリエステルが好ましく使用される。
【0023】
熱可塑性樹脂(A)および(B)の組み合わせは、後者が高硬度或いは高粘度となるように上記の熱可塑性樹脂から適宜選択することができるが、凸条部3を構成する熱可塑性樹脂(B)としてはPENが最も好ましく使用される。
【0024】
そして、本発明における好ましい熱可塑性樹脂(A)/(B)の組み合わせとしては、N610/PEN、N612/PENなどが挙げられる。
【0025】
なお、本発明でいう熱可塑性樹脂の硬度とは、JIS K7202−2の規定に準じて測定したロックウェル硬度を意味する。
【0026】
また、本発明で使用するポリアミド系樹脂は、その相対粘度が低いと溶融紡糸が不安定となる場合があるため、相対粘度が3.0以上であるものが好ましく、ポリエステル系樹脂の場合は、その固有粘度が低いと同じく溶融紡糸が不安定となる場合があるため、固有粘度が0.6以上であるものが好ましい。
【0027】
なお、ポリアミド系樹脂の相対粘度は、濃度98%の硫酸25ccの中にポリアミド系樹脂0.25gを溶解し、この溶液を25℃の温度条件下でオストワルド粘度管を使用して測定したものであり、ポリエステル系樹脂の固有粘度は、濃度98.5%のオルトクロロフェノール25ml中にポリエステル系樹脂2.0gを溶解し、この溶液を25℃の温度条件下でオストワルド粘度管を使用して測定したものである。
【0028】
次に、本発明の研磨ブラシ用毛材を構成する多葉断面モノフィラメントの凸条部3が含有する砥材粒子としては、炭化ケイ素、緑色炭化ケイ素、酸化アルミナ、および人工ダイヤモンドなどを使用することができ、その粒度番手については#800〜#2000のものが使用できる。なお、本発明においては、砥材粒子の脱落をより効果的に低減させるために、使用する砥材粒子の表面に予めシランカップリング処理を施すことも可能である。
【0029】
本発明の研磨ブラシ用毛材の製造方法には特に限定はなく、まず公知の方法により熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(B)と砥材粒子との樹脂組成物とを別々の押出機に供給し、前者がモノフィラメント本体2を、後者が凸条部3をそれぞれ形成するように複合紡糸口金から押し出すことにより、多葉断面モノフィラメントを製造し、これを適宜延伸・熱処理した後、この多葉断面モノフィラメントを必要な長さに切断してブリッスルとすることにより、本発明の研磨ブラシ用毛材を得ることができる。
【0030】
かくして得られた本発明の研磨ブラシ用毛材は、ディスクロールブラシ、チャンネルロールブラシ、カップ状ブラシおよびホイルブラシなどの研磨ブラシの少なくとも一部に使用され、得られた研磨ブラシは、砥材粒子の脱落が極めて少なく、従来の研磨ブラシ用毛材の比べ毛腰が高く、洗浄や研磨時の毛材の折損がないなどの効果に加え、優れた研磨性能を持続的に発揮する。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を挙げ本発明の構成および効果をさらに説明する。
【0032】
なお、以下の実施例における砥粒粒子の脱落評価、折損耐久性評価および研磨性評価は下記の方法により行ったものである。
【0033】
[砥材粒子の脱落性評価]
50mmにカットしたブリッスルを20本束ね、まずこの束の質量A(g)を測定した。次に、この束を上下2枚の金属板に挟み、1kgの荷重で押圧しながら、上側の金属板をモノフィラメント束が転がる方向に往復距離5cm、且つ5分間往復運動させた。その後モノフィラメント束の質量Bを再び測定し、次式100×(A−B)/Aから砥材粒子脱落率(%)を算出した。砥材粒子脱落率(%)が低いほど砥材粒子の脱落が少ないことを示す。
【0034】
[折損耐久性]
JIS P8115に記載する屈曲揉み疲労(MIT)試験機を使用し、荷重15.7N(1.5kgf)、折り曲げ角度270°(左右135°)、且つ毎分175±10回の速度で、得られたモノフィラメントを繰り返し折り曲げ、モノフィラメントが切断するまでの往復折り曲げ回数を5回測定した。この5回の測定値の平均が大きいほど折損耐久性に優れていることを示す。
【0035】
[研磨性]
得られたモノフィラメントを使用し、内径45mm、外径70mm、毛丈30mmのカップ状ブラシを作製した。そして、このカップ状ブラシをハンドグラインダーに取り付け、圧力50N、回転数8000rpmで凹凸を有する金属板の凹凸面を1分間研磨し、金属面の研磨後の状態を目視確認した。
◎;被研磨体の凹凸面の研磨状態が良好、
○;被研磨体の凹凸面の研磨状態が普通、
×;被研磨体の凹凸面の研磨状態が不良。
【0036】
[実施例1]
モノフィラメント本体を構成する熱可塑性樹脂として、相対粘度が3.8のナイロン樹脂(東レ(株)製N610、M2041)を、前記モノフィラメント本体の繊維軸方向外周に平行に連続して突出した5つの凸条部を構成する熱可塑性樹脂として、固有粘度が6.3のポリエステル樹脂(東洋紡績社製PEN、PN640)と、シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SH6040)0.2重量%で被覆処理した粒度番手#1500の炭化ケイ素砥材粒子(昭和電工社製)5重量%とからなる樹脂組成物を使用し、これらを複合溶融紡糸機に供給し、それぞれ280℃の温度で溶融混練した後、多葉断面孔ノズルから押し出し、次に押出された糸条を30℃の冷却浴で冷却固化した後、引き続き190℃の熱風雰囲気中で6.0倍に延伸することにより、平均直径0.6mmのモノフィラメントを得た。
【0037】
このようにして得られた毛材を使用して上記した構成のカップ状ブラシを作製し、このカップ状ブラシについて評価した結果を表1に併せて示す。
【0038】
[実施例2]
モノフィラメント本体を構成する熱可塑性樹脂を、相対粘度が3.5のナイロン樹脂(ダイセルデグザ社製N612、D22)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で研磨ブラシ用毛材を得た。そして得られた毛材を使用してカップ状ブラシを作成し、評価した結果を表1に示す。
【0039】
[実施例3]
モノフィラメント本体の繊維軸方向外周に平行に連続して突出した複数の凸条部の数を5つから3つに変更した以外は、実施例1と同じ条件で研磨ブラシ用毛材を得た。そして得られた毛材を使用してカップ状ブラシを作成し、評価した結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
モノフィラメント本体の繊維軸方向外周に、繊維軸と平行に連続して突出した複数の凸条部を構成する熱可塑性樹脂を、前記モノフィラメント本体と同じ、相対粘度が3.8のナイロン樹脂(東レ(株)製N610、M2041)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で研磨ブラシ用毛材を得た。なお、この場合には、毛材の耐久性が劣ることに加え、研磨性が悪く、本発明の条件を満たさない結果となった。評価した結果を表1に示す。
【0041】
[比較例2]
前記モノフィラメント本体の繊維軸方向外周に平行に連続して突出した凸条部をなしとした以外は、実施例1と同じ条件で研磨ブラシ用毛材を得た。評価した結果を表1に示す。
【0042】
[比較例3]
前記モノフィラメント本体の繊維軸方向外周に平行に連続して突出した凸条部の数を5つとし、砥材粒子を非含有とした以外は、実施例1と同じ条件で研磨ブラシを得た。評価した結果を表1に示す。
【0043】
[比較例4]
実施例1において、モノフィラメント本体を構成する樹脂をポリエステル樹脂(東洋紡績社製PEN、PN640)に、また凸条部を構成する樹脂をナイロン樹脂(東レ(株)製N610、M2041)に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同じ条件で研磨ブラシを得た。評価した結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1の結果から明らかなように、本発明の条件を満たす研磨ブラシ用毛材(実施例1〜3)からなる研磨ブラシは、従来よりも被研磨物に対して高い研磨性を示し、毛腰が高く、かつ砥材粒子の脱落率も低く、折損耐久性も良好であった。
【0046】
これに対し、本発明の条件を満たさない研磨ブラシ用毛材(比較例1〜4)からなる研磨ブラシは、毛腰が低く研磨性が悪いばかりか、砥材粒子の脱落率も低く、折損耐久性も劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の研磨ブラシ用毛材は、被研磨物の複雑な部分の凹凸部分の表面および端面のバリ取り研磨加工において、表面の凹凸面の隅々まで効率よく研磨することができると共に、従来の研磨ブラシ用毛材と比べ毛腰が高く、かつ砥材粒子の脱落率が小さく、折損耐久性にも優れており、持続的な研磨性能を発揮するため、特に金属表面にバリ取り不良および研磨不良を生じたり、折損した毛材や脱落した砥材粒子が付着したりする場合に、製品安全上の問題となりやすい機械部品のバリ取りおよび研磨に使用するディスクロールブラシ、チャンネルロールブラシ、カップ状ブラシおよびホイルブラシに適用する場合に、これらの効果を遺憾なく発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)は本発明の研磨ブラシ用毛材の一例を示す側面図、(b)は(a)のA―A線断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1ブリッスル
2モノフィラメント本体
3凸条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂モノフィラメント本体の繊維軸方向外周に、この繊維軸と平行に連続して突出した複数の凸条部を有する多葉断面モノフィラメントから構成されるブリッスルであって、前記凸条部は、前記モノフィラメント本体を形成する熱可塑性樹脂(A)とは異なる熱可塑性樹脂(B)と砥材粒子との樹脂組成物からなることを特徴とする研磨ブラシ用毛材。
【請求項2】
前記多葉断面モノフィラメントの断面外周に存在する凸条部の数が2〜6の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の研磨ブラシ用毛材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(A)がナイロン6/610共重合体および/またはナイロン6/612共重合体であり、前記熱可塑性樹脂(B)がポリエチレンナフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨ブラシ用毛材。
【請求項4】
前記凸条部を構成する樹脂組成物が、熱可塑性樹脂(B)80〜95重量%と砥材粒子20〜5重量%からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨ブラシ用毛材。
【請求項5】
前記砥材粒子の粒度が#800〜2000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の研磨ブラシ用毛材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の研磨ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする研磨ブラシ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−269118(P2009−269118A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121071(P2008−121071)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】