説明

研磨装置、研磨ヘッドおよび研磨方法

表面に研磨クロス25を貼付した定盤24と、ウェーハ30の一面を保持して研磨クロス25に当接させるチャック19と、チャック19の外周に同心状に配置された円環状のリテーナリング23を有する。リテーナリング23はチャック19に対して揺動及び上下動可能であり、粗研磨工程ではリテーナリング23により研磨クロス25を押圧し、仕上げ研磨工程ではリテーナリング23を上方に退避させ、粗砥粒の仕上げ研磨ステージへの持込を防止して、粗研磨と仕上げ研磨を同じ研磨ヘッドで連続して行う。これにより、粗研磨における粗砥粒を仕上げ研磨ステージに持ち込ませず、粗研磨と仕上げ研磨を同じ研磨ヘッドで連続して行うことにより装置のコストダウンが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、半導体ウェーハや液晶基板等の製造に関し、特に半導体ウェーハや液晶基板等の平坦面を有する被研磨物の表面を研磨するための装置、研磨ヘッド及びその研磨方法に関する。
本願において、仕上げ研磨とはウェーハ製造の研磨工程のうち最終の研磨工程をいい、粗研磨とは仕上げ研磨以外の研磨工程をいう。
【背景技術】
図7は、従来の一般的な鏡面ウェーハの製造工程を示すフロー図である。同図に基づいて、半導体デバイスを作製するための原料ウェーハとして用いられる鏡面ウェーハの一般的な製造方法の概略を説明する。
まず、チョクラルスキー法(CZ法)や浮遊帯域溶融法(FZ法)等により単結晶のインゴットを成長させる(STEP101)。成長した単結晶インゴットは外周形状が歪(いびつ)であるため、次に外形研削工程(STEP102)においてインゴットの外周を円筒研削盤等により研削し、インゴットの外周形状を整える。これをスライス工程(STEP103)でワイヤソー等によりスライスして厚さ500〜1000μm程度の円板状のウェーハに加工し、さらに面取り工程(STEP104)でウェーハ外周の面取り加工を行う。
その後、平面研削および/またはラッピングにより平坦化加工を行い(STEP105)、エッチング処理工程(STEP106)において化学研磨処理を施す。更に、ウェーハ表面を粗研磨(STEP107)、仕上げ研磨(STEP108)した後、ウェーハ洗浄(STEP109)を施して鏡面ウェーハとする。
このような工程を経て得られた鏡面ウェーハの表面に回路を形成させて半導体デバイスを作製するため、近年の高精度のデバイス作製では極めて高い平坦度が要求される。ウェーハの表面平坦度が低いと、フォトリソグラフィ工程における露光時にレンズ焦点が部分的に合わなくなるため、回路の微細パターン形成が難しくなるという問題が生ずる。また、半導体ウェーハのみならず液晶基板等の平坦面を有する被研磨材においても表面を平坦にすることが求められている。
このように極めて高い平坦度を有するウェーハを製造するために、ウェーハの研磨は非常に重要であるといえる。一般に、研磨を行う研磨装置として、表面に研磨用のクロスが貼付された円板状の定盤と、研磨すべきウェーハの一面を保持して研磨クロスにウェーハの他面を押し付けるウェーハチャックを有し、ウェーハと研磨クロスの間にスラリーを供給し、ウェーハと定盤とを相対回転させることにより研磨を行うものが広く知られている。
また、研磨クロスは弾性を有するため、ウェーハのみを研磨クロスに押し付けながら研磨を行うと、ウェーハは研磨クロスに僅かに沈み込むことになる。すると、研磨クロスからの弾性応力はウェーハの縁に集中するため、ウェーハ中心部に比し外周部でウェーハにかかる圧力が大きくなり、ウェーハ外周部が過剰に研磨されるという問題が発生する。
これを解消すべく、ウェーハチャックの外周に同心状に円環状のプレッサリングを配設し、プレッサリングにより研磨クロスを任意の圧力で押圧してウェーハの外周部における研磨クロスの変形を抑えて、過剰な研磨を防止しているものもある。例えば、米国特許6,350,346号では、図8に示すような研磨装置が開示されている。この研磨装置は、ウェーハチャック51の外側にプレッサリング52を設け、ウェーハチャック51とプレッサリング52は相対的に回転することができ、それぞれ独立して加圧力を制御できる。また、プレッサリング52はトップリング53に対して垂直に移動することができる。
しかしながら、プレッサリング52を研磨クロス54に対して完全に平行に作成することは現実的には非常に難しい。特にこの構成では、プレッサリング52は垂直に移動することができるのみであるため、プレッサリング52と研磨クロス54は完全には平行にならずに、研磨中、プレッサリング表面で発生する圧力に分布ができてしまい、ウェーハ周辺部の平坦度が劣化したり、ウェーハ研磨形状が片べりしたりする場合がある。
【発明の開示】
本出願に係る発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その第1の目的とするところは、ウェーハ周辺部の平坦度の劣化を防止し、ウェーハ研磨形状が片べりしないウェーハ研磨装置およびその研磨方法を提供することにある。
また、本出願に係る発明の第2の目的は、粗研磨における粗砥粒を仕上げ研磨ステージに持ち込ませず、粗研磨と仕上げ研磨を同じ研磨ヘッドで連続して行うことにより装置のコストダウンを可能とすることにある。
さらに、本出願に係る発明の第3の目的は、リテーナリングの加工精度に起因するウェーハ平坦度の劣化を防止することにある。
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、研磨クロスを備えた定盤と、被研磨物を保持して、前記研磨クロスに前記被研磨物を当接させるチャックと、前記チャックの外周に配置されたリテーナリングと、を有し、前記定盤と前記チャックとの相対運動により前記研磨クロスで前記被研磨物を研磨する研磨装置において、前記リテーナリングと前記チャックは互いに独立して揺動可能であることを特徴とする。
また、第2の発明は、研磨クロスを備えた定盤と、被研磨物を保持して、前記研磨クロスに前記被研磨物を当接させるチャックと、前記チャックの外周に配置されたリテーナリングと、を有し、前記定盤と前記チャックとの相対運動により前記研磨クロスで前記被研磨物を研磨する研磨装置において、前記リテーナリングは前記チャックに対して上下動可能であると共に、揺動可能であることを特徴とする。
さらに、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記揺動を可能にする1個または複数のクリアランスが設けられていることを特徴とする。
また、第4の発明は、第1乃至3のいずれかの発明において、
前記チャックと前記リテーナリングが常に一定範囲のギャップを保ちながら研磨加工することを特徴とする。
さらに、第5の発明は、第4の発明において、
前記ギャップの範囲が0.5mm〜2.0mmであることを特徴とする。
また、第6の発明は、第4または第5の発明において、
前記チャックの中心と前記被研磨物の中心の距離が0.5mm以内であることを特徴とする。
さらに、第7の発明は、第1乃至第6のいずれかの発明において、
前記リテーナリングが、前記チャックに対して回転可能であることを特徴とする。
また、第8の発明は、チャックに保持した被研磨物を研磨クロスに押圧しつつ、前記被研磨物と前記研磨クロスとの間に研磨液を介在させた状態で、前記チャックと定盤との相対運動により前記研磨クロスで前記被研磨物を研磨するウェーハ研磨方法において、前記チャックの外周に上下動可能に配置されたリテーナリングを有し、前記研磨クロスに押圧する前記リテーナリングの押圧力を、研磨工程に応じて設定することを特徴とする。
また、第9の発明は、第8の発明において、粗研磨工程では、前記リテーナリングにより前記研磨クロスを押圧した状態で研磨し、仕上げ研磨工程では、前記リテーナリングを前記研磨クロスから退避させた状態で研磨することを特徴とする。
さらに、第10の発明は、少なくとも粗研磨工程と仕上げ研磨工程を有するウェーハ製造方法において、被研磨物を保持して研磨クロスに当接させるチャックと、前記チャックの外周に上下動可能に配置されたリテーナリングと、を有する研磨ヘッドを用い、前記粗研磨工程では前記リテーナリングにより前記研磨クロスを押圧した状態で研磨し、前記仕上げ研磨工程では、前記リテーナリングを前記研磨クロスから退避させた状態で研磨することにより、前記粗研磨工程と前記仕上げ研磨工程とを同一の研磨ヘッドで行うことを特徴とする。
上記開示した本発明によれば、前記リテーナリングと前記チャックは独立に好適な圧力で加圧でき、しかも互いに揺動可能なので、平坦度を作り込むための粗研磨ではウェーハ周辺部の平坦度を向上させることができ、ウェーハ研磨形状が片べりしないウェーハ研磨装置およびその研磨方法を得ることができる。
また、本発明によれば、粗研磨工程では、前記リテーナリングにより前記研磨クロスを押圧した状態で研磨し、仕上げ研磨工程では、前記リテーナリングを前記研磨クロスから退避させた状態で研磨するため、粗研磨における粗砥粒を仕上げ研磨ステージに持ち込むことがない。また、粗研磨と仕上げ研磨を同じ研磨ヘッドで連続して行うことにより装置のコストダウンができる。
さらに、本発明によれば、前記リテーナリングが前記ウェーハチャックに対して相対的に回転できるため、この回転機構により、前記リテーナリングの加工精度に起因するウェーハ平坦度の劣化、前記リテーナリングの偏磨耗等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は第1の実施の形態にかかわるウェーハ研磨装置の全体構成図である。
図2は第1の実施の形態にかかわる第1ステージ3または第2ステージ4におけるチューブ加圧型研磨ヘッド11の縦断面図である。
図3は第1の実施の形態にかかわる第3ステージ5におけるチューブ加圧型研磨ヘッド11の縦断面図である。
図4は第2の実施の形態にかかわる第1ステージ3または第2ステージ4におけるベローズ加圧型研磨ヘッド40の縦断面図である。
図5は第2の実施の形態にかかわる第3ステージ5におけるベローズ加圧型研磨ヘッド40の縦断面図である。
図6Aはリテーナリングのない従来のウェーハ研磨装置を用いてウェーハを研磨した場合の、研磨前の素材ウェーハのSFQRを横軸に、研磨後のウェーハのSFQRを縦軸に表したグラフ、図6Bは本願発明にかかわるウェーハ研磨装置を用いてウェーハを研磨した場合の、研磨前の素材ウェーハのSFQRを横軸に、研磨後のウェーハのSFQRを縦軸に表したグラフ、図6Cは本願発明にかかわるウェーハ研磨装置において、リテーナリングとウェーハ間の距離を横軸に、研磨後のウェーハのSFQRを縦軸に表したグラフである。
図7は半導体ウェーハの製造方法の概略を示すフロー図である。
図8は従来技術のウェーハ研磨装置の一例を示した概略図である。
図9は本発明の第3の実施の形態にかかわる直列2重エアバック方式の研磨ヘッド60のリテーナリングを下降させた状態を示す縦断面図である。
図10は第3の実施の形態にかかわる直列2重エアバック方式の研磨ヘッド60のリテーナリングを上昇させた状態を示す縦断面図である。
図11は第4の実施の形態にかかわるエアシリンダ+エアバック方式の研磨ヘッド90のリテーナリングを詳細に示す部分縦断面図である。
図12は第4の実施の形態にかかわるエアシリンダ+エアバック方式の研磨ヘッド90のリテーナリングを下降させた状態を示す部分縦断面図である。
図13は本発明の第4の実施の形態にかかわるエアシリンダ+エアバック方式の研磨ヘッド90のリテーナリングを上昇させた状態を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本出願に係るウェーハ研磨装置について、図面に基づいて詳細に説明する。但し、以下の実施の形態に記載される構成部品の材質、寸法、形状などは特に限定的な記載が無い限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる説明例に過ぎない。また、以下の実施の形態において、具体例としてシリコンウェーハを研磨する場合について説明しているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、各種半導体基板や液晶ガラス基板等の薄板状体に対しても適用することができることは言うまでもない。
[実施の形態1]
まず、第1の実施の形態について図1乃至図3を用いて説明する。図1は本発明のウェーハ研磨装置の全体構成図、図2は本実施の形態にかかわる第1ステージ3または第2ステージ4におけるエアバック加圧型研磨ヘッド11の縦断面図、図3は本実施の形態にかかわる第3ステージ5におけるエアバック加圧型研磨ヘッド11の縦断面図である。
はじめに図1を参照してウェーハ研磨装置の全体の構成を簡単に説明する。図1は本発明の研磨ヘッド11を備えた研磨装置1の平面図であり、第1〜3のステージ3,4,5とウェーハのロード・アンロードステージ2で構成されている。
第1ステージ3と第2ステージ4は粗研磨工程、第3ステージ5は仕上げ研磨工程となっており、粗研磨工程では前の工程でウェーハ表面に入った加工ダメージの除去とウェーハ平坦度の作り込みを担当し、仕上げ研磨工程では粗研磨で入った加工ダメージの除去とウェーハ平坦度の維持を担当している。粗研磨が2工程に分かれているのは、粗研磨にかかる時間と仕上げ研磨にかかる時間との関係から、トータルのスループットを考慮して設計されたものである。
研磨装置1の中央上部には十字形状の研磨ヘッド支持部6を備えており、研磨ヘッド支持部6は垂直軸を中心に水平面内で回転自在に設置される。研磨ヘッド支持部6の先端にはそれぞれ研磨ヘッド11を垂直下向きに2個ずつ、合計8個の研磨ヘッド11を備えている。
図2及び図3は、研磨ヘッド支持部6の先端に固定された研磨ヘッド11及びその下に配置された定盤24の縦断面図であり、説明の便宜上、1個の研磨ヘッド11及び定盤24の左半分のみを示しているが、中心線に対して右側にも対称な構造が備わっている。第1〜第3ステージ3,4,5における定盤24は円板形状であって水平に保持し、図2に示すように第1及び第2ステージ3,4では定盤24の上面に粗研磨用クロス25を、図3に示すように第3ステージ5では上面に仕上げ研磨用クロス26を貼付している。
研磨効率を高めるためには、研磨砥粒の分布を均一にすることが重要であるため、粗研磨用クロス25と仕上げ研磨用クロス26の材質には気泡が均一に分散しているウレタン等の発泡材を用い、気泡を砥粒の保持サイトとして機能させている。定盤24の下部には、スピンドル27を垂直に連結し、スピンドル27は図示しない定盤回転モータの回転軸に連結している。定盤24は、この定盤回転モータを駆動することにより、スピンドル27を中心に水平面内で回転する。定盤24の中央上方には図示しない研磨液供給ノズルを設置しており、研磨液供給ノズルは図示しない研磨液供給タンクに接続している。
各ステージ3〜5では2個の研磨ヘッド11により2枚のウェーハ30が同時に研磨加工され、研磨加工終了後に次の工程へ順時送られて引き続き研磨加工される。このとき、第2ステージ4の粗研磨工程から第3ステージ5の仕上げ研磨工程へ移動する前に、一旦ロード・アンロードステージ2へ移動して粗研磨工程で研磨ヘッド11に付着した砥粒を水洗いすることができるように、ロード・アンロードステージ2にはジェット水流を噴射することができるノズルを設置している。
次に、図2を参照して本実施の形態におけるチューブ加圧型研磨ヘッド11について詳細に説明する。研磨ヘッド11は、シャフト28、フレーム29、エアバック15、ウェーハチャック19、リテーナフレーム36、及びリテーナリング23等から構成される。図中、符号28は円筒状の中空シャフトであり、このシャフト28の外周にフレーム29を配置している。フレーム29はシャフト28の中心軸から放射状に穿設された4個の雌ねじ部29aをそれぞれ90°の間隔をあけて有し、その雌ねじ部29aを通して外側からボルト29cをねじ込んで、フレーム29をシャフト28に固定している。
フレーム29の下端部には円板形状の板ばね及び板ゴムを固定し、板ゴムとフレーム29で仕切られた空洞部を空気室16として、エアバック15を形成する。そして、エアバック15の下面には円板状のウェーハチャック19を固定している。ウェーハチャック19は多孔質セラミックプレートの硬質チャックベースであり、その中央上部はエアバック15を貫通する真空配管32を介して真空ポンプ56に接続している。
一方、フレーム29は上面の外周部において、垂直方向に延びる円筒状の突起部とその突起部に続いて外周水平方向に突出して形成されるフランジ部とを有する。フランジ部のすぐ下には、ドーナツ状のエアバック17を備え、さらにその下に圧縮スプリング18を30°おきに12個備える。そして、このエアバック17と圧縮スプリング18の間にリテーナフレーム36を挟んで支持している。
リテーナフレーム36は、断面コ字状の円環状部材であり、下面にリテーナリング23を備える。リテーナフレーム36は、上部に内周水平方向に突出して形成されるフランジ部を有する。このフランジ部にはフレーム29の円筒状の突起部の外表面に対して所定のクリアランスを有するように貫通穴が形成されている。このフランジ部が圧縮スプリング18により下方から付勢され、エアバック17によって上方から付勢されて支持される。
エアバック17はドーナツ状の一本のチューブであるため、内部の気圧はチューブの外表面で均一に発生する。そのため、例えば、図2のリテーナフレーム36の右側からエアバック17の一部に上方に押し上げる偏荷重が加わった場合であっても、その偏荷重はエアバック17内で均一化され、エアバック17の左側よりリテーナフレーム36を下方に押し下げる力が発生する。この結果、リテーナフレーム36はフレーム29に対して揺動し、研磨クロス25,26の表面に対して調心することができる。
また、このようにリテーナフレーム36を揺動及び調心できる構成としたために、リテーナフレーム36とウェーハチャック19の最低隙間を保つ機構が必要になる。そのため、リテーナフレーム36の中腹部にボールプランジャ21を縦に2箇所、回転軸に対して45°おきに合計16箇所設けている。ボールプランジャ21を縦に2箇所設けているのは、リテーナフレーム36の昇降に従いボールプランジャ21が昇降しても、いずれかのボールプランジャ21がフレーム29とリテーナフレーム36の最低間隔を保つ機能を果たすことができるようにするためである。また、この最低間隙を保つ機構を設けることにより、所定の位置精度でウェーハチャック19に取り付けられたウェーハがリテーナリング23に接触することを防止できる。
更に、リテーナフレーム36の中腹下部にはボールベアリング22を備えており、ボールベアリング22より下側のリテーナフレーム36の下面に、円環状のリテーナリング23を固定している。リテーナリング23は、吸着させるウェーハと略同外径のウェーハチャック19の外周部との間に0.5〜2.0mm程度の隙間を空けて、ウェーハチャック19とほぼ同心状に水平に配置されている。リテーナリング23は、ボールベアリング22によってリテーナフレーム36に対して滑らかに回転可能であり、ウェーハチャック19に対して相対的に回転する。この回転機構により、リテーナリング23の加工精度に起因するウェーハ平坦度の劣化、リテーナリング23の偏磨耗、およびリテーナリング23に発生するせん断力の発生(ねじれ)を防止することができる。
エアバック17はリテーナ加圧配管31を介して電気空気レギュレータRに接続しており、空気室16はウェーハ加圧配管33を介して電気空気レギュレータWに接続している。電気空気レギュレータRの先には圧縮空気ポンプ57が接続され、電気空気レギュレータWの先には圧縮空気ポンプ58が接続されている。
一方、図示しないがシャフト28の上部はその外周部にタイミングプーリを設けている。そして、タイミングプーリはタイミングベルトを介して、研磨ヘッド回転用モータに設けられたタイミングプーリに接続されている。なお、シャフト28の上端部と研磨ヘッド回転用モータの基部とは研磨ヘッド支持部6に固定されたシリンダに連結し、研磨ヘッド11を上下動可能としている。
本実施の形態ではウェーハチャック19として多孔質セラミックプレートよりなる硬質チャックベースを用いたが、ピンチャックやリングチャックまたはホールチャックをウェーハチャック19として用いても良い。また、本実施の形態ではボールプランジャ21を45°おきに16個、圧縮スプリング18を30°おきに12個形成しているが、ボールプランジャ21や圧縮スプリング18の数はこれらに限られるものではなく、所望の機能を果たす範囲内であれば、さらに多くてもまたは少なくても良い。
次に、上記した構成を有するウェーハ研磨装置1によって、ウェーハ30を研磨する方法について図1乃至図3を用いて以下に説明する。
ロード・アンロードステージ2において、ウェーハ搬入装置7により未研磨のウェーハ30を研磨ヘッド11のウェーハチャック19直下に移動させる。次に、真空ポンプ56が吸気を行うことにより、真空配管32を介して多孔質セラミックプレート内部を負圧とし、ウェーハチャック19の下面に未研磨ウェーハ30を吸着させる。このとき、ウェーハチャック19の中心と未研磨ウェーハ30の中心の距離が0.5mm以内になる様に位置合わせをして吸着させる。未研磨ウェーハ30のロードが行われると、研磨ヘッド支持部6が右回りに90°回転し、未研磨ウェーハを吸着した研磨ヘッド11を第1ステージ3へ移動させる。
次に、電気空気レギュレータWを駆動させ、圧縮空気ポンプ58からウェーハ加圧配管33を介して空気室16に圧縮空気を供給し、空気室16内の空気によって5g/mmの圧力でエアバック15の全体を均一に押圧する状態を保つ。その後、研磨ヘッド回転用モータと定盤回転用モータを駆動させることにより、研磨ヘッド11と定盤24とを相対回転させ、研磨液供給ノズルにより研磨液を供給する。その状態で不図示のシリンダを駆動させて、ウェーハ30が粗研磨用クロス25に接するまで研磨ヘッド11を下降させる。
ウェーハ30は全面に5g/mmの均一な圧力を受けて粗研磨用クロス25に押圧されて、被研磨面が平坦に研磨される。エアバック15は板ゴムと板バネでできているため、ウェーハチャック19は粗研磨用クロス25の表面の歪みに合わせて揺動及び調心することができる。したがって、ウェーハ30は常に粗研磨用クロス25の表面に対して平行状態を保ち、かつ、ウェーハ全体にわたって均一の圧力で粗研磨用クロス25に押圧されることになる。
上記の粗研磨工程を行っている間は、電気空気レギュレータRを駆動させ、圧縮空気ポンプ57からリテーナ加圧配管31を介してエアバック17に圧縮空気を供給する。すると、エアバック17が膨らみ圧縮スプリング18に抗してリテーナフレーム36を下方向に付勢し、リテーナリング23を粗研磨用クロス25に押圧する。リテーナフレーム36はエアバック17と圧縮スプリング18により支持されているため、リテーナフレーム36及びリテーナリング23はウェーハチャック19と独立して揺動し、粗研磨用クロス25の表面に調心することができる。
したがって、リテーナリング23は常に粗研磨用クロス25の表面に対して平行状態を保ち、かつ、リテーナリング23の全体にわたって均一の圧力で粗研磨用クロス25に押圧される。この際、望ましくはリテーナリング加圧力がウェーハ加圧力と同様の5g/mmとなるように、エアバック17に供給する圧縮空気の圧力を調整する。リテーナリング加圧力をウェーハ加圧力と等しくすることにより、ウェーハ30の外周部における粗研磨用クロス25の変形を抑えて、過研磨を防止することができる。また、研磨後のウェーハ30の仕上げ形状に応じて、リテーナリング加圧力を調整することもできる。
このように電気空気レギュレータWにより供給する空気圧を調整することによりウェーハ加圧力を調整することができ、電気空気レギュレータRにより供給する空気圧を調整することによりリテーナ加圧力を調整することができる。したがって、ウェーハ加圧力とリテーナ加圧力は独立に任意の加圧力を設定できる。また、前述のようにウェーハチャック19とリテーナリング23はそれぞれ独立した自動調芯機能をもっているため、粗研磨用クロス25の研磨面に対してそれぞれが常に平行になる。
また、リテーナフレーム36の内側にはボールプランジャ21を設けているため、リテーナリング23とウェーハチャック19との間の隙間を一定範囲以下に設定することができる。本実施の形態では、隙間が0.5mm〜2.0mmの時に最も良好な研磨結果を得ることができた。間隙が2.0mm以上になると研磨後のウェーハの平坦度が悪くなった。
そこで、リテーナリング23とウェーハチャック19との間の隙間を標準状態で1.0mmとすると共に、ボールプランジャ21のボール部とフレーム29の隙間を0.1mmとし、ボールプランジャ21のバネのストロークを0.4mmとしている。これによりリテーナリング23とウェーハチャック19が揺動しても、隙間は0.5mm〜1.5mmの範囲内の変動で安定する。
粗研磨工程の研磨液としては、SiC、SiO等の直径12nm程度の粗研磨用砥粒と水性又は油性の液体を混合したスラリーなどを用いることができる。このように研磨液を供給しながら、研磨ヘッド11と定盤24とを相対回転させ、5分間ウェーハ30の粗研磨を行う。
粗研磨終了後、シリンダを駆動し研磨ヘッド11を上昇させ、研磨ヘッド支持部6を右回りに90°回転させて、研磨ヘッド11を第2ステージ4へ移動させる。
第2ステージ4へ研磨ヘッド11が移動すると、第1ステージ3における作用と同様にして研磨ヘッド11が下降してウェーハ30を研磨する。加工条件において第1ステージ3における作用と異なる点は、ウェーハ加圧力とリテーナ加圧力をそれぞれ2g/mmとすること、及び研磨時間を2分間とすることである。
粗研磨終了後、シリンダを駆動し研磨ヘッド11を上昇させ、研磨ヘッド支持部6が左回りに180°回転し、研磨ヘッド11をロード・アンロードステージ2へ移動させる。
ロード・アンロードステージ2へ研磨ヘッド11が移動すると粗研磨用の砥粒を仕上げ研磨のステージへ持ち込ませないために、ノズルから噴射するジェット水流によって、ウェーハ30の被研磨面及びリテーナリング23に付着した砥粒を約10秒間、純水又はオゾン水により洗浄する。
研磨ヘッド11の洗浄終了後、研磨ヘッド支持部6が左回りに90°回転し、研磨ヘッド11を第3ステージ5へ移動させる。
ウェーハ加圧力が1g/mmと低いため、ウェーハ30は仕上げ研磨用クロス26に殆ど沈み込まない。したがって、仕上げ研磨用クロス26からの弾性応力はウェーハ30の縁に集中せず、ウェーハ外周部が過剰に研磨されるという問題が発生しない。また、研磨取代も少ないため、リテーナリング23を使用する必要がない。
そこで、本実施の形態では、第3ステージ5への移動中にエアバック17の圧力を抜き、スプリング18の反力によりリテーナリング23を上方へ退避させておく。この移動量は約5mmに設計している。これは、リテーナリング23に付着した粗研磨用の砥粒を仕上げ研磨のステージへ持ち込ませないためである。
第3ステージ5へ研磨ヘッド11が移動したら、電気空気レギュレータWを駆動させ、圧縮空気ポンプ58からウェーハ加圧配管33を介して空気室16に圧縮空気を供給し、空気室16内の空気が1g/mmの圧力でエアバック15の全体を均一に押圧する状態を保つ。その後、研磨ヘッド回転用モータと定盤回転用モータを駆動させることにより、研磨ヘッド11と定盤24とを相対回転させ、研磨液供給ノズルにより研磨液を供給する。その状態で不図示のシリンダを駆動させて、ウェーハ30が仕上げ研磨用クロス26に接するまで研磨ヘッド11を下降させる。
ウェーハ30は全面に1g/mmの均一な圧力を受けて仕上げ研磨用クロス26に押圧されて、被研磨面が仕上げ研磨される。エアバック15はゴムと板バネでできているため、ウェーハチャック19は揺動し、仕上げ研磨用クロス26の表面形状に合わせて調心することができる。したがって、ウェーハ30は常に仕上げ研磨用クロス26に対して平行状態を保ち、かつ、ウェーハ全体にわたって均一の圧力で仕上げ研磨用クロス26に押圧される。
仕上げ研磨工程の研磨液としては、SiC、SiO等の直径5〜500nm程度の仕上げ研磨用砥粒と水性又は油性の液体を混合したスラリーなどを用いることができる。このように、研磨液を供給しながら、研磨ヘッド11と定盤24とを相対回転させ、5分間ウェーハ30の仕上げ研磨を行う。
仕上げ研磨終了後、シリンダを駆動し研磨ヘッド11を上昇させ、研磨ヘッド支持部6を右回りに90°回転させ、研磨ヘッド11をロード・アンロードステージ2へ移動させる。
ロード・アンロードステージ2へ研磨ヘッド11を移動させると共に、ウェーハ搬出装置8の不図示の搬出用ハンドをウェーハチャック19直下へ移動させる。次に、真空ポンプ56を停止すると、ウェーハチャック19の吸着力がなくなり、ウェーハチャック19に吸着されていたウェーハ30はウェーハ搬出用ハンドに載置され、その後、ウェーハ搬出装置8により搬出される。以上によりウェーハ30の研磨工程が終了する。
[実施の形態2]
次に、第2の実施の形態について図4および図5を用いて説明する。図4は本発明の第2の実施の形態にかかわる第1ステージ3または第2ステージ4におけるベローズ加圧型研磨ヘッド40の縦断面図、図5は本実施例にかかわる第3ステージ5におけるベローズ加圧型研磨ヘッド40の縦断面図である。
本実施の形態における全体構成は、図1に示す第1の実施の形態における全体構成と同様であるため、相違点となる研磨ヘッド40の構成についてのみ図4を参照して説明する。図4は、研磨ヘッド支持部6の先端に固定された研磨ヘッド40及びその下に配置された定盤24の縦断面図であり、説明の便宜上、1個の研磨ヘッド40及び定盤24の左半分のみを示しているが、中心線に対して右側にも対称な構造が備わっている。
本実施の形態におけるベローズ加圧型研磨ヘッド40は、シャフト28、フレーム47、ベローズ45,46、ウェーハチャック19、ガイドピン41,44、ボールベアリング42、およびリテーナリング43等から構成される。図中、符号28は円筒状の中空シャフトであり、このシャフト28の外周にフレーム47を固定している。フレーム47は中心軸から放射状に穿設された4個の雌ねじ部47aをそれぞれ90°の間隔をあけて有し、その雌ねじ部47aの外側からボルト47cをねじ込んで、フレーム47をシャフト28に固定している。
フレーム47の外周下面には、円環状の薄板である上部リテーナフレーム50aを固着している。この上部リテーナフレーム50aの下面には、同心円状に円筒状のベローズ45を2枚垂直下向きに固定し、ベローズ45の下端は円環状の薄板である下部リテーナフレーム50bの上面に固着されている。そして、2枚のベローズ45と上部リテーナフレーム50a及び下部リテーナフレーム50bにより囲まれた円環状の密閉された空間は空気室48となる。
下部リテーナフレーム50bの下にはさらに、ボールベアリング42を備え、ボールベアリング42の下には円環状のリテーナリング43を固定している。リテーナリング43は、吸着させるウェーハと略同外径のウェーハチャック19の外周部との間に僅かな隙間を空けて、ウェーハチャック19とほぼ同心状に水平に配置されている。リテーナリング43はボールベアリング42により、ウェーハチャック19に対して滑らかに相対的に回転可能な構成となっている。このボールベアリング42による回転機構により、リテーナリング43の加工精度に起因するウェーハ平坦度の劣化、リテーナリング43の偏磨耗、およびリテーナリング43に発生するせん断力の発生(ねじれ)を防止することができる。
更に、リテーナリング43はベローズ45により吊り下げられて保持されており、このベローズ45はハステロイ等により作成され伸縮可能なため、リテーナリング43はフレーム47に対して揺動することができる。また、このようにリテーナリング43を揺動できる構成としたために、リテーナリング43とウェーハチャック19の隙間の変動を一定範囲に保つべく、上部リテーナフレーム50aには円柱状のガイドピン41を垂直下向きに、下部リテーナフレーム50bの上面にはL字状に折り曲げた板材からなるガイドピン受け38を、それぞれ60°おきに6個固定している。ガイドピン受け38には、揺動を一定範囲に保つために、ガイドピン41に対して所定のクリアランスを有した貫通穴が設けられており、この貫通穴にガイドピン41が挿通している。
一方、内周側のベローズ45のさらに内側には円筒状のベローズ46をフレーム47の下端部に垂直下向きに固定し、ベローズ46の下端にはウェーハチャック19を固定している。そして、ベローズ46およびウェーハチャック19により囲まれた密閉された空間が空気室49となる。
このベローズ46の内には、フレーム47から垂直下向きに円柱状のガイドピン44を、ウェーハチャック19からは垂直上向きに略L字状の板材よりなるガイドピン受け39を、それぞれ60°おきに6本固定している。ガイドピン受け39には、揺動を一定範囲に保つために、ガイドピン44に対して所定のクリアランスを有した貫通穴が設けられており、この貫通穴にガイドピン44が挿通している。
また、ウェーハチャック19は多孔質セラミックプレートよりなる硬質チャックベースであり、その中央上部を真空配管32を介して真空ポンプ56に接続している。
2枚のベローズ45の間に形成された空気室48はリテーナ加圧配管31を介して電気空気レギュレータRに接続しており、空気室49はウェーハ加圧配管33を介して電気空気レギュレータWに接続している。電気空気レギュレータRの先には圧縮空気ポンプ57が接続され、電気空気レギュレータWの先には圧縮空気ポンプ58が接続されている。
図示しないがシャフト28の上部はその外周部にタイミングプーリを設けている。そして、タイミングプーリはタイミングベルトを介して、研磨ヘッド回転用モータに設けられたタイミングプーリに接続されている。なお、シャフト28の上端部と研磨ヘッド回転用モータの基部とを研磨ヘッド支持部6に固定されたシリンダに連結し、研磨ヘッド11を上下動可能としている。
本実施の形態ではウェーハチャック19として多孔質セラミックプレートの硬質チャックベースを用いたが、ピンチャックやリングチャックまたはホールチャックをウェーハチャック19として用いても良い。また、ガイドピン41,44を60°おきに6個ずつ設けているが、ガイドピン41,44の数は所望の機能を果たす範囲内であれば、6個より多くても又は少なくても良い。
次に、上記した研磨ヘッド40を有する研磨装置1によって、ウェーハ30を研磨する方法について図1および図4,5を用いて以下に説明する。図1においては、研磨ヘッド11を本実施の形態における研磨ヘッド40に置き換えて説明する。
ロード・アンロードステージ2において、ウェーハ搬入装置7により未研磨のウェーハ30を研磨ヘッド40のウェーハチャック19直下に移動させる。次に、真空ポンプ56が吸気を行うことにより、真空配管32を介して多孔質セラミックプレート内部を負圧とし、ウェーハチャック19に未研磨ウェーハ30を吸着する。このとき、ウェーハチャック19の中心と未研磨ウェーハ30の中心の距離が0.5mm以内になる様に位置合わせをして吸着させる。この動作により未研磨ウェーハ30のロードが行われると、研磨ヘッド支持部6が右回りに90°回転し、研磨ヘッド40を第1ステージ3へ移動させる。
次に図4に示すように、電気空気レギュレータWを駆動させ、圧縮空気ポンプ58からウェーハ加圧配管33を介して空気室49に圧縮空気を供給し、空気室49内の空気が5g/mmの圧力でウェーハチャック19の全体を均一に押圧する状態を保つ。その後、研磨ヘッド回転用モータと定盤回転用モータを駆動させることにより、研磨ヘッド40と定盤24とを相対回転させ、研磨液供給ノズルにより研磨液を供給する。その状態で不図示のシリンダを駆動させて、ウェーハ30が粗研磨用クロス25に接するまで研磨ヘッド40を下降させる。ウェーハ30は全面に5g/mmの均一な圧力を受けて粗研磨用クロス25に押圧されて、被研磨面が平坦に研磨される。
ベローズ46はハステロイ等により作成し伸縮可能となっているため、ウェーハチャック19は揺動可能であり、粗研磨用クロス25の表面形状にならって調心することができる。したがって、ウェーハ30は常に粗研磨用クロス25に対して平行を保ち、かつ、ウェーハ全体にわたって均一の圧力で粗研磨用クロス25に押圧されることになる。
上記の粗研磨工程を行っている間は、電気空気レギュレータRを駆動させ、圧縮空気ポンプ57からリテーナ加圧配管31を介して空気室48に大気圧よりも圧力が高い圧縮空気を供給し、空気室48の圧力により下部リテーナフレーム50bが5g/mmの圧力でリテーナリング43を粗研磨用クロス25に押圧する状態を保つ。このようにリテーナリング加圧力をウェーハ加圧力と等しくすることにより、ウェーハ30の外周部における粗研磨用クロス25の変形を抑えて、過研磨を防止することができる。また、研磨後のウェーハ30の仕上げ形状に応じて、リテーナリング加圧力を調整することもできる。
ここで、リテーナリング43はベローズ45によりフレーム47に吊り下げられているため、リテーナリング43はウェーハチャック19と独立して揺動可能であり、ウェーハチャック19の調心とは独立して粗研磨用クロス25の表面形状にならって調心することができる。
したがって、リテーナリング43は常に粗研磨用クロス25に対して平行状態を保ち、かつ、リテーナリング43の全体にわたって均一の圧力で粗研磨用クロス25に押圧される。このように電気空気レギュレータWによって空気室49に供給する空気圧を調整することによりウェーハ加圧力を調整し、電気空気レギュレータRによって空気室48に供給する空気圧を調整することによりリテーナ加圧力を調整するため、ウェーハ加圧力とリテーナ加圧力は独立に任意の加圧力を設定できる。また、前述のようにウェーハチャック19とリテーナリング43はそれぞれ独立した自動調芯機能をもっているため、粗研磨用クロス25に対してそれぞれが常に平行になる。
また、研磨ヘッド40にはガイドピン41,44を設けており、リテーナリング43とウェーハチャック19との間の隙間の変動を一定範囲以下に設定している。本実施の形態においても隙間が0.5mm〜2.0mmの時に最も良好な研磨結果を得ることができた。間隙が2.0mm以上になると研磨後のウェーハの平坦度が悪くなった。そこで、リテーナリング43とウェーハチャック19との間の隙間が0.5mm〜2.0mmの範囲内になるように、ガイドピン受け38,39に形成する貫通穴の穴径を設定している。
粗研磨時の研磨液としては、SiC、SiO等の直径12nm程度の粗研磨用砥粒と水性又は油性の液体を混合したスラリーなどを用いることができる。このように、研磨液を供給しながら、研磨ヘッド40と定盤24とを相対回転させ、5分間ウェーハ30の粗研磨を行う。
粗研磨終了後、シリンダを駆動し研磨ヘッド40を上昇させ、研磨ヘッド支持部6を右回りに90°回転させ、研磨ヘッド40を第2ステージ4へ移動させる。
第2ステージ4へ研磨ヘッド40が移動すると、第1ステージ3と同様にして研磨ヘッド40が下降してウェーハ30を研磨する。加工条件において第1ステージ3と異なる点は、ウェーハ加圧力とリテーナ加圧力を2g/mmとすること、および研磨時間を2分間とすることである。
粗研磨終了後、シリンダを,駆動し研磨ヘッド40を上昇させ、研磨ヘッド支持部6が左回りに180°回転し、研磨ヘッド40をロード・アンロードステージ2へ移動させる。
ロード・アンロードステージ2へ研磨ヘッド40が移動すると、粗研磨用の砥粒を仕上げ研磨のステージへ持ち込ませないため、ノズルから噴射するジェット水流によって、粗研磨で研磨ヘッド11に付着した砥粒を約10秒間、純水又はオゾン水で洗浄する。
研磨ヘッド40の洗浄終了後、研磨ヘッド支持部6が左回りに90°回転し、研磨ヘッド40を第3ステージ5へ移動させる。
ここで、仕上げ研磨工程ではウェーハ加圧力は1g/mmと低いため、ウェーハ30は仕上げ用研磨クロス26に殆ど沈み込まない。したがって、仕上げ研磨用クロス26からの弾性応力はウェーハ30の縁に集中せず、ウェーハ外周部が過剰に研磨されるという問題が発生しない。また研磨取代も少ないため、リテーナリング43を使用する必要がない。そこで、第3ステージ5への移動中に空気室48の圧力を抜き、リテーナリング43を上方へ退避させておく。この移動量は5mmに設計している。これはリテーナリング43に付着した粗研磨用の砥粒を仕上げ研磨のステージへ持ち込ませないためである。
第3ステージ5へ研磨ヘッド40が移動すると、電気空気レギュレータWを駆動させ、圧縮空気ポンプ58からウェーハ加圧配管33を介して空気室49に大気圧よりも圧力が高い圧縮空気を供給し、空気室49の空気が1g/mmの圧力でウェーハチャック19の全体を均一に押圧する状態を保つ。その後、研磨ヘッド回転用モータと定盤回転用モータを駆動させることにより、研磨ヘッド40と定盤24とを相対回転させ、研磨液供給ノズルにより研磨液を供給する。その状態で不図示のシリンダを駆動させて、ウェーハ30が仕上げ研磨用クロス26に接するまで研磨ヘッド40を下降させる。ウェーハ30は全面に1g/mmの均一な圧力を受けて仕上げ研磨用クロス26に押圧されて、被研磨面が仕上げ研磨される。
ベローズ46は伸縮可能なハステロイにより作成されているため、ウェーハチャック19は揺動し、仕上げ研磨用クロス26の表面形状にならって調心することができる。したがって、ウェーハ30は常に仕上げ研磨用クロス26に対して平行になり、かつ、ウェーハ全体にわたって均一の圧力で仕上げ研磨用クロス26に押圧されることになる。
仕上げ研磨時の研磨液としては、SiC、SiO等の直径5〜500nm程度の仕上げ研磨用砥粒と水性又は油性の液体を混合したスラリーなどを用いることができる。このように、研磨液を供給しながら、研磨ヘッド40と定盤24とを相対回転させ、5分間ウェーハ30の仕上げ研磨を行う。
仕上げ研磨終了後、シリンダを駆動し研磨ヘッド40を上昇させ、研磨ヘッド支持部6を右回りに90°回転させ、研磨ヘッド40をロード・アンロードステージ2へ移動させる。
ロード・アンロードステージ2へ研磨ヘッド40を移動させると共に、ウェーハ搬出装置8の不図示の搬出用ハンドをウェーハチャック19直下へ移動させる。次に、真空ポンプ56を停止すると、ウェーハチャック19の吸着力がなくなり、ウェーハチャック19に吸着されていたウェーハ30は搬出用ハンドに載置される。以上によりウェーハ30の研磨工程が終了する。
上記第1および第2の実施の形態における図1で示した研磨装置1は、各ステージ3〜5において、並行してウェーハ30の研磨が可能であり、第1ステージ3及び第2ステージ4でウェーハ30の粗研磨を行っている間に、第3ステージ5で仕上げ研磨を行うことができるため、作業効率も良い。
また、研磨装置1においては、ウェーハ30の片べりなどを防止するために、研磨ヘッド40と定盤24の双方を回転させてウェーハ30を研磨しているが、いずれか一方のみを回転させて研磨することもできる。
上記の第1の実施の形態においては、エアバック15の材料として板ゴムと板バネを採用し、第2の実施の形態においては、ベローズ45,46の材料として金属の一種であるハステロイを採用したが、これに限られるものではなく、エア圧力等の流体圧力で弾性変形することができるものであればプラスチックやその他の材料を用いても良い。なお、エアバック15の代わりに、エア圧力により弾性変形するシートを用いても良い。
また、ウェーハ30の材質及び大きさに関しては、本発明を実施するにあたり何ら制限は無く、現在製造されている口径のシリコン、GaAs、GaP、InP等の半導体ウェーハ30は勿論のこと、将来製造可能となる非常に大きなウェーハ30に対しても本発明を適用することができる。
[実施の形態3]
次に、第3の実施の形態について図9および図10を用いて説明する。図9及び図10は、本発明の第3の実施の形態にかかわる直列2重エアバック方式の研磨ヘッド60の縦断面図である。図9はリテーナを下降させた状態を示し、図10はリテーナを上昇させた状態を示している。
本実施の形態における直列2重エアバック方式の研磨ヘッド60は、シャフト68、フレーム69、ウェーハチャック19、リテーナフレーム66、およびリテーナリング23等から構成される。図中、符号68は円筒状の中空シャフトであり、このシャフト68の外周にフレーム69を固定している。
リテーナリング23の上には円環状のリテーナ固定台70をボルト71により締結している。リテーナ固定台70はボルト72によって、さらにリテーナフレーム66に締結される。リテーナ固定台70とリテーナフレーム66の間には、可撓性を有する板ばね74と板ゴム73が張られ、リテーナフレーム66と板ゴム73によって密閉空間となる第2エアバック75が形成される。第2エアバック75にはシャフト68内を通るウェーハ加圧配管76が接続され、ウェーハ加圧配管76の供給口76aから第2エアバック75内に圧縮空気が供給される。
板ばね74の中央下面にはウェーハチャック19が固定されている。ウェーハチャック19は、板ゴム73の上からプラグ台77を通してボルト78をねじ込むことにより、板状に張られた板ばね74及び板ゴム73をプラグ台77とウェーハチャック19によって挟み込んだ状態で固定される。プラグ台77の外周にはフランジ状のメカストッパ77aを設けており、ウェーハチャック19がリテーナフレーム66に対して下降した際にリテーナフレーム66に係止し、ストロークエンドを示すストッパとして機能する。
ウェーハチャック19の中央上部には排気プラグ82が取り付けられている。排気プラグ82は、シャフト68内を通る排気管79に接続されており、排気管79で排気を行うことによりウェーハチャック19内の減圧を行う。この減圧状態において、ウェーハはウェーハチャック19の下面に形成された吸着面に真空吸着される。
リテーナフレーム66とフレーム69の間には可撓性を有する材質からなる円板状の板材80が張られている。フレーム69と板材80及びリテーナフレーム66により囲まれた密閉空間に第1エアバック81が形成される。第1エアバック81内には、シャフト68の中空穴68aから圧縮空気が供給される。リテーナフレーム66には、フレーム69に係止するようにフランジ状のメカストッパ66aを設ており、リテーナフレーム66がフレーム69に対して下降した際に、ストロークエンドを示すストッパとして機能する。
このように本実施の形態における研磨ヘッド60では、第1エアバック81と第2エアバック75が重ねられた状態で直列に配置される。
次に、本実施の形態における研磨ヘッド60の動作について説明する。シャフト68の中空穴68aから圧縮空気を供給し、第1エアバック81に荷重P1をかけると、リテーナフレーム66に荷重が加わり、ウェーハチャック19とリテーナリング23が一体となって下降する。このとき、ウェーハ加圧配管76から圧縮空気を供給し、第2エアバック75に荷重P2をかけると、ウェーハチャック19には荷重P2がかかり、リテーナリング23には荷重P3(=P1−P2)がかかる。
図10は、リテーナリング23を上昇させた状態を示している。本実施の形態における直列2重構造によれば、第2エアバック内の荷重P2を第1エアバック内における荷重P1よりも大きくすることにより、リテーナリング23を上昇させることができる。
例えば粗研磨時にチャック荷重を0.03MPa、リテーナ荷重を0.03MPaに設定したいときには、第1エアバック81内の荷重P1を0.043MPa、第2エアバック75内の荷重P2を0.03MPaに設定すればよい。このときメカストッパ77aは、図9に示すようにリテーナフレーム66に係合しないため、ストッパとして機能することはなく、また、板材80、板ばね74、板ゴム73を除いて、プラグ台77、フレーム69、およびリテーナフレーム66は互いに所定のクリアランスを有して配置されており、ウェーハチャック19とリテーナリング23は独立して揺動できる。
また、仕上げ研磨時には粗研磨の砥粒を仕上げ研磨ステージに持ち込みたくないため、仕上げ研磨用クロスに対してリテーナリングを浮かせながら研磨する必要がある。例えば仕上げ研磨時にチャック荷重を0.015MPa、リテーナ荷重を0.00MPa(浮いた状態)に設定したいときには、第1エアバック81内の荷重P1を0.015MPa、第2エアバック75内の荷重P2を0.020MPaに設定すればよい。
第2エアバック75内の荷重P2が第1エアバック81内の荷重P1よりも大きくなると、図10に示すようにウェーハチャック19はストロークエンドまでリテーナフレーム66に対して下降する。このとき、ウェーハチャック19はメカストッパ77aによりリテーナフレーム66に係止した状態になるため、第2エアバック75の加圧力は内力にかわり、チャック加圧には寄与しない。その結果、ウェーハチャック19には第1エアバック81の荷重P1のみがかかるため、荷重P1を自在に設定することでチャック荷重を容易に制御することができる。
本実施の形態によれば、直列に配置された2個のエアバックにより、ウェーハチャック19とリテーナリング23とが独立して揺動するため、ウェーハ周辺部の平坦度が劣化したりウェーハ研磨形状が片べりしたりすることを防止できる。
また、リテーナ加圧機構とチャック加圧機構を直列に配置することにより、研磨ヘッドの外形を小さくすることができる。その結果、研磨装置の設置面積を縮小することができるため、ランニングコストを下げることができる。さらに、研磨ヘッドを小型・軽量化することができるため、研磨ヘッドの交換時間を大幅に短縮することができる。
なお、図9及び図10の研磨ヘッド60においては、リテーナリング23をウェーハチャック19に対して独立して回転させる機構を設けていないが、リテーナ固定台70とリテーナリング23の間に、リテーナリング23とウェーハチャック19を独立して回転させるためのベアリング機構を設けても良い。また、研磨ヘッド60の回転機構は、シャフト68の上部に設け、シャフト68を含むシャフト以下全体を回転させるものでも、または、シャフト68は回転せずにフレーム69とともにウェーハチャック19が回転する機構としてもよい。
[実施の形態4]
次に、第4の実施の形態について図11乃至図13を用いて説明する。図11乃至図13は、本発明の第4の実施の形態にかかわるエアシリンダ+エアバック方式の研磨ヘッド90の部分縦断面図である。図11は研磨ヘッド90の詳細な縦断面図を示し、図12はリテーナを下降させた状態を、図13はリテーナを上昇させた状態を示している。
本実施の形態におけるエアシリンダ+エアバック方式の研磨ヘッド90は、シャフト91、ウェーハチャック19、リテーナフレーム92、およびリテーナリング23等から構成される。図中、符号91は円筒状の中空シャフトであり、このシャフト91の外周にリテーナフレーム92を備え付けている。
シャフト91の外周面に球面ベアリング93の内周面を固定し、球面ベアリング93の外周面にリテーナフレーム92を固定している。シャフト91とリテーナフレーム92は、球面ベアリング93によって滑らかに揺動できるように結合される。
リテーナリング23の上には円環状のリテーナ固定台70をボルト71により締結している。リテーナ固定台70はボルト72によって、さらにリテーナフレーム92に締結される。リテーナ固定台70とリテーナフレーム92の間には、可撓性を有する板ばね74と板ゴム73が張られ、リテーナフレーム92と板ゴム73によって密閉空間となるエアバック94が形成される。エアバック94内には、シャフト91の中空穴91aから圧縮空気が供給される。
板ばね74の中央下面にはウェーハチャック19が固定されている。ウェーハチャック19は、板ゴム73の上からプラグ台77を通してボルト78をねじ込むことにより、板状に張られた板ばね74及び板ゴム73をプラグ台77とウェーハチャック19によって挟み込んだ状態で固定される。プラグ台77の外周にはフランジ状のメカストッパ77aを設けており、ウェーハチャック19がリテーナフレーム92に対して下降した際にリテーナフレーム92に係止し、ストロークエンドを示すストッパとして機能する。
なお、板ばね74と板ゴム73を除いて、プラグ台77とリテーナフレーム92は互いに所定のクリアランスを有して配置されており、ウェーハチャック19とリテーナフレーム92は独立して揺動できる。
プラグ台77にはシャフト91内を通る排気管79が接続されており、排気管79で排気を行うことによりウェーハチャック19内の減圧を行う。この減圧状態において、ウェーハはウェーハチャック19の下面に形成された吸着面に真空吸着される。
シャフト91はその上部において、さらにシリンダ95に連結されている。シリンダ95は、油圧シリンダ等の流体シリンダや液体シリンダ、またはエアシリンダ等の気体シリンダを用いることができる。シリンダ95の作用により、シャフト91はリテーナフレーム92およびウェーハチャック19とともに上下動作を行う。
このように本実施の形態における研磨ヘッド90では、エアバック94とシリンダ95が重ねられた状態で直列に配置される。
次に、本実施の形態における研磨ヘッド90の動作について図12及び図13を用いて説明する。図12に示すように、シリンダ95によりシャフト91に荷重P1をかけると、リテーナフレーム92に荷重が加わり、ウェーハチャック19とリテーナリング23が一体となって下降する。このとき、図11に示すシャフト91の中空穴91aから圧縮空気を供給し、エアバック94に荷重P2をかけると、ウェーハチャック19には荷重P2がかかり、リテーナリング23には荷重P3(=P1−P2)がかかる。
図13は、リテーナリング23を上昇させた状態を示している。本実施の形態におけるエアシリンダ+エアバック方式によれば、エアバック94内の荷重P2をシリンダ95の荷重P1よりも大きくすることにより、リテーナリング23を上昇させることができる。
エアバック94内の荷重P2がシリンダ95の荷重P1よりも大きくなると、図13に示すようにウェーハチャック19はストロークエンドまでリテーナフレーム92に対して下降する。このとき、ウェーハチャック19はメカストッパ77aによりリテーナフレーム92に係止した状態になるため、エアバック94の加圧力は内力にかわり、チャック加圧には寄与しない。その結果、ウェーハチャック19にはシリンダ95の荷重P1のみがかかるため、荷重P1を自在に設定することでチャック荷重を容易に制御することができる。
本実施の形態によれば、シャフト91に揺動自在に連結されたリテーナフレーム92と、リテーナフレーム92に対して揺動自在に備え付けられたウェーハチャック19により、ウェーハチャック19とリテーナリング23とが独立して揺動するため、ウェーハ周辺部の平坦度が劣化したりウェーハ研磨形状が片べりしたりすることを防止できる。
また、リテーナ加圧機構とチャック加圧機構を直列に配置することにより、研磨ヘッドの外形を小さくすることができる。その結果、研磨装置の設置面積を縮小することができるため、ランニングコストを下げることができる。さらに、研磨ヘッドを小型・軽量化することができるため、研磨ヘッドの交換時間を大幅に短縮することができる。
なお、図11乃至図13の研磨ヘッド90においては、リテーナリング23をウェーハチャック19に対して独立して回転させる機構を設けていないが、リテーナ固定台70とリテーナリング23の間に、リテーナリング23とウェーハチャック19を独立して回転させるためのベアリング機構を設けても良い。また、研磨ヘッド90の回転機構は、シャフト91の上部に設け、シャフト91を含むシャフト以下全体を回転させるものでも、または、シャフト91は回転せずにリテーナフレーム92とともにウェーハチャック19が回転する機構としてもよい。
上記の第1〜第4の各実施の形態において、リテーナリングは円環状のものを用いて説明しているが、リテーナリングはこれに限られるものではなく、複数のブロックからなるものをリテーナフレームに沿って環状に固定したものであってもよい。また、リテーナリングの下面は、平坦であっても又は複数本の溝を設けていても良い。
また、上記の第1〜第4の各実施の形態において、仕上げ研磨工程でリテーナリングを退避させず、リテーナ加圧力を、粗研磨工程のリテーナ加圧力より小さい加圧力、たとえばウェーハ加圧力と同程度としても良い。こうすれば、粗研磨工程で作り込まれたウェーハ平坦度を悪化させることなく仕上げ研磨工程を行うことができる。
すなわち、本発明の仕上げ研磨工程において、リテーナリングを退避させておいても良く、リテーナリングの加圧力を弱めて使用しても良い。
このように本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、リテーナリング、ウェーハチャックの支持方法や、ウェーハの研磨方法、被研磨物などに関し、発明の要旨の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
[実施データ]
リテーナリングのない従来のウェーハ研磨装置を用いてウェーハを研磨した場合と、本願発明のウェーハ研磨装置を用いてウェーハを研磨した場合の効果について、図6A〜Cを参照して以下に具体的に説明する。
ウェーハの平坦度を比較する際の基準としてサブ平坦度SFQRを用いる。SFQRはウェーハから所定寸法の4角形を複数サンプリングし、各サンプルについて所望のウェーハ厚との差を求め、各サンプルの平均値を算出することにより求められる。
その結果、リテーナリングのない従来のウェーハ研磨装置を用いてウェーハを研磨した場合の、研磨前の素材ウェーハのSFQRを横軸に、研磨後のウェーハのSFQRを縦軸に表したものが図6Aである。この図からわかるように、素材ウェーハよりも研磨後ウェーハの方が平坦度が悪化している。これはリテーナリングがないため、ウェーハの外周部平坦度が劣化するからである。
これに対して、本願発明にかかわるウェーハ研磨装置を用いてウェーハを研磨した場合の、研磨前の素材ウェーハのSFQRを横軸に、研磨後のウェーハのSFQRを縦軸に表したものが図6Bである。この図からわかるように、素材ウェーハの平坦度は研磨後において維持されている。これはリテーナリングにより、ウェーハの外周部平坦度を維持可能だからである。
一方、本願発明にかかわるウェーハ研磨装置において、リテーナリングとウェーハ間の距離を横軸に、研磨後のウェーハのSFQRを縦軸に表したものが図6Cである。このグラフから、リテーナリングとウェーハ間の距離は0.5mm〜2.0mmとすることが最も望ましいことがわかる。
以上のように、本発明のウェーハ研磨装置によれば、ウェーハチャックとリテーナリングは独立に好適な圧力で加圧できるので、平坦度を作り込むための粗研磨ではウェーハ周辺部の平坦度を向上させることができる。
また、本発明のウェーハ研磨装置によれば、仕上げ研磨ではリテーナリングを研磨面から退避させるため、粗研磨砥粒の持込などによる仕上げステージの汚染を防止できる。したがって、仕上げ研磨工程と粗研磨工程とを同じ研磨ヘッドで連続して行うことができるため装置のコストダウンが可能になる。
更に、本願発明の第1の実施の形態においては、リテーナリングの退避機構はスプリングなどによりメカニカルに実現するのでリテーナ加圧配管が断線してもリテーナリングは退避位置に移動して、仕上げ研磨のステージを汚染しない。
また、従来技術のウェーハ研磨装置ではリテーナリングが揺動できないため、ウェーハ周辺部の平坦度が劣化したりウェーハ研磨形状が片べりしたりするが、本発明のウェーハ研磨装置ではウェーハチャックとリテーナリングとが独立して揺動するため、その様な不具合は発生しない。
更に、本発明のウェーハ研磨装置によれば、ウェーハチャックとリテーナリングとが相対的に回転することでリテーナ部材の加工精度に起因するウェーハ平坦度の劣化を防止できる。
また、本発明のウェーハ研磨装置によれば、枚葉研磨装置の仕上げ研磨工程と粗研磨工程とを共通の研磨ヘッドで加工することが可能であり、研磨工程の時間を大幅に低減させることができる。
また、本発明のウェーハ研磨装置によれば、所定の位置精度でウェーハチャックに取りつけられたウェーハは揺動中にリテーナリングに接触することがなく、ウェーハエッジへの機械的損傷を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
本発明は半導体ウェーハおよび液晶基板等の表面を平坦化し鏡面研磨する分野に利用できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨クロスを備えた定盤と、
被研磨物を保持して、前記研磨クロスに前記被研磨物を当接させるチャックと、
前記チャックの外周に配置されたリテーナリングと
を有し、
前記定盤と前記チャックとの相対運動により前記研磨クロスで前記被研磨物を研磨する研磨装置において、
前記リテーナリングと前記チャックは互いに独立して揺動可能であることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
研磨クロスを備えた定盤と、
被研磨物を保持して、前記研磨クロスに前記被研磨物を当接させるチャックと、
前記チャックの外周に配置されたリテーナリングと
を有し、
前記定盤と前記チャックとの相対運動により前記研磨クロスで前記被研磨物を研磨する研磨装置において、
前記リテーナリングは前記チャックに対して上下動可能であると共に、揺動可能であることを特徴とする研磨装置。
【請求項3】
前記揺動を可能にする1個または複数のクリアランスが設けられていることを特徴とする請求範囲1または2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記チャックと前記リテーナリングが常に一定範囲のギャップを保ちながら研磨加工することを特徴とする請求範囲1乃至3いずれか記載の研磨装置。
【請求項5】
前記ギャップの範囲が0.5mm〜2.0mmであることを特徴とする請求範囲4に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記チャックの中心と前記被研磨物の中心の距離が0.5mm以内であることを特徴とする請求範囲4または5に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記リテーナリングが、前記チャックに対して回転可能であることを特徴とする請求範囲1乃至6いずれかに記載の研磨装置。
【請求項8】
チャックに保持した被研磨物を研磨クロスに押圧しつつ、前記被研磨物と前記研磨クロスとの間に研磨液を介在させた状態で、前記チャックと定盤との相対運動により前記研磨クロスで前記被研磨物を研磨するウェーハ研磨方法において、前記チャックの外周に上下動可能に配置されたリテーナリングを有し、
前記研磨クロスに押圧する前記リテーナリングの押圧力を、研磨工程に応じて設定することを特徴とする研磨方法。
【請求項9】
粗研磨工程では、前記リテーナリングにより前記研磨クロスを押圧した状態で研磨し、
仕上げ研磨工程では、前記リテーナリングを前記研磨クロスから退避させた状態で研磨する
ことを特徴とする請求範囲8に記載の研磨方法。
【請求項10】
少なくとも粗研磨工程と仕上げ研磨工程を有するウェーハ製造方法において、
被研磨物を保持して研磨クロスに当接させるチャックと、前記チャックの外周に上下動可能に配置されたリテーナリングと、を有する研磨ヘッドを用い、
前記粗研磨工程では前記リテーナリングにより前記研磨クロスを押圧した状態で研磨し、
前記仕上げ研磨工程では、前記リテーナリングを前記研磨クロスから退避させた状態で研磨することにより、前記粗研磨工程と前記仕上げ研磨工程とを同一の研磨ヘッドで行う
ことを特徴とするウェーハ製造方法。

【国際公開番号】WO2004/028743
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【発行日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539552(P2004−539552)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012323
【国際出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【出願人】(000184713)コマツ電子金属株式会社 (265)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】