説明

研磨装置

【課題】研磨パッドの寿命を正確に決定することができ、研磨パッドの交換頻度を少なくすることができる研磨装置を提供する。
【解決手段】本研磨装置は、研磨テーブル12を回転させるテーブル回転モータ70と、トップリング20を回転させるトップリング回転モータ71と、研磨パッド22をドレッシングするドレッサ50と、研磨パッド22の高さを測定するパッド高さ測定器60と、研磨パッド22の高さから研磨パッド22の減耗量を算出し、研磨パッド22の減耗量と、テーブル回転モータ70のトルクまたは電流と、トップリング回転モータ71のトルクまたは電流とに基づいて研磨パッド22の寿命を決定する診断部47とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハなどの基板を研磨する研磨装置に関し、特に研磨パッドまたはドレッサの状態を診断して、その寿命を決定する機能を備えた研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、基板の表面の平坦化は非常に重要な工程とされる。表面の平坦化に用いられる代表的な技術は、化学的機械的研磨(CMP,Chemical Mechanical Polishing)である。この化学的機械的研磨では、シリカ(SiO)等の砥粒を含んだ研磨液を研磨パッドの研磨面上に供給しつつ基板を研磨面に摺接させて基板の表面を研磨する。
【0003】
この化学的機械的研磨はCMP装置を用いて行われる。CMP装置は、上面に研磨パッドを貼付した研磨テーブルと、基板を保持するトップリングとを備えている。基板の研磨中は、研磨テーブルおよびトップリングをその軸心周りにそれぞれ回転させながら、トップリングで基板を研磨パッドの研磨面に押圧し、基板と研磨パッドとを摺接させる。研磨パッドの研磨面には研磨液が供給され、基板と研磨パッドとの間に研磨液が存在した状態で基板が研磨される。基板の表面は、アルカリによる化学的研磨作用と、砥粒による機械的研磨作用との複合作用によって平坦化される。
【0004】
基板の研磨を行なうと、研磨パッドの研磨面には砥粒や研磨屑が付着し、研磨性能が低下してくる。そこで、研磨パッドの研磨面を再生するために、ドレッサによるパッドドレッシングが行なわれる。ドレッサは、その下面に固定されたダイヤモンド粒子などの硬質の砥粒を有しており、このドレッサで研磨パッドの研磨面を削り取ることにより、研磨パッドの研磨面を再生する。
【0005】
研磨パッドは、パッドドレッシングにより徐々に減耗していく。研磨パッドが減耗すると、意図した研磨性能が発揮されなくなるため、研磨パッドを定期的に交換することが必要となる。従来、研磨パッドの交換は、研磨された基板の枚数に基づいて決定されるのが一般的である。しかしながら、研磨された基板の枚数は、必ずしも研磨パッドの寿命を正確には反映していない。そのため、研磨性能を維持するために、本来のパッド寿命よりも早い時期に研磨パッドを交換しなければならなかった。また、このような頻繁な研磨パッドの交換は、CMP装置の稼働率を低下させてしまう。
【0006】
そこで、研磨パッドの頻繁な交換を回避するため、研磨パッドの表面の位置(パッド高さ)を測定し、その測定値に基づいて研磨パッドの減耗を監視する研磨装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。このような研磨装置によれば、測定された研磨パッドの表面の位置、すなわち研磨パッドの減耗量に基づいて研磨パッドの寿命を判断することが可能である。
【0007】
しかしながら、研磨パッドの厚さや、研磨パッドの表面に形成されている溝の深さは、研磨パッドごとに異なっていることがある。このため、研磨パッドの表面の位置から研磨パッドの寿命を正確に決定することが困難であった。
【0008】
また、ドレッサの砥粒もパッドドレッシングにより徐々に減耗する。ドレッサのドレッシング性能の低下は、研磨パッドの研磨性能の低下につながるため、研磨パッドと同様に、ドレッサを定期的に交換する必要がある。このように、研磨パッドおよびドレッサは、研磨装置の消耗品であり、最近ではこれら消耗品のコストをできるだけ削減する要請が高まっている。消耗品のコスト削減を実現するために、研磨パッドおよびドレッサの交換時期、すなわちそれらの寿命を正確に決定することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−355748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、研磨パッドの寿命を正確に決定することができ、研磨パッドの交換頻度を少なくすることができる研磨装置を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、ドレッサの寿命を正確に決定することができ、ドレッサの交換頻度を少なくすることができる研磨装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した第1の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドの研磨面に押圧するトップリングと、前記研磨テーブルをその軸心周りに回転させるテーブル回転モータと、前記トップリングをその軸心周りに回転させるトップリング回転モータと、前記研磨パッドの前記研磨面をドレッシングするドレッサと、前記研磨パッドの高さを測定するパッド高さ測定器と、前記研磨パッドの高さ、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流、および前記トップリング回転モータのトルクまたは電流を監視する診断部とを備え、前記診断部は、前記研磨パッドの高さから前記研磨パッドの減耗量を算出し、前記研磨パッドの減耗量と、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流と、前記トップリング回転モータのトルクまたは電流とに基づいて前記研磨パッドの前記研磨面の状態を診断することを特徴とする研磨装置である。
【0012】
上述した第2の目的を達成するために、本発明の第2の態様は、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドの研磨面に押圧するトップリングと、前記研磨テーブルをその軸心周りに回転させるテーブル回転モータと、前記トップリングをその軸心周りに回転させるトップリング回転モータと、前記研磨パッドの前記研磨面をドレッシングするドレッサと、前記研磨パッドの高さを測定するパッド高さ測定器と、前記研磨パッドの高さ、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流、および前記トップリング回転モータのトルクまたは電流を監視する診断部とを備え、前記診断部は、前記研磨パッドの高さから前記研磨パッドの減耗量を算出し、前記研磨パッドの減耗量および所定の研磨基板枚数当たりの総ドレッシング時間から前記研磨パッドのカットレートを算出し、さらに前記研磨パッドのカットレートと、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流と、前記トップリング回転モータのトルクまたは電流とに基づいて前記ドレッサのドレッシング面の状態を診断することを特徴とする研磨装置である。
【発明の効果】
【0013】
研磨パッドが減耗してその研磨性能が低下すると、後述するように、基板の研磨中、研磨テーブルを回転させるモータ電流(トルク)およびトップリングを回転させるモータ電流(トルク)に特徴的な変化が現われる。上述した本発明の第1の態様によれば、研磨パッドの減耗量に加えて、研磨テーブルを回転させるモータ電流およびトップリングを回転させるモータ電流から研磨パッドの研磨面の状態を診断することができ、その診断結果から研磨パッドの寿命を正確に決定することができる。
【0014】
また、ドレッサのドレッシング性能が低下すると、研磨パッドが減耗したときと同様に、基板の研磨中に研磨テーブルを回転させるモータ電流(トルク)およびトップリングを回転させるモータ電流(トルク)に特徴的な変化が現われる。上述した本発明の第2の態様によれば、研磨パッドのカットレート(ドレッサにより削り取られる研磨パッドの単位時間当たりの量)に加えて、研磨テーブルを回転させるモータ電流およびトップリングを回転させるモータ電流からドレッサのドレッシング面の状態を診断することができ、その診断結果からドレッサの寿命を正確に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態における研磨装置を示す模式図である。
【図2】変位センサによって測定された研磨パッドの高さを示すグラフである。
【図3】研磨パッドの減耗量と研磨された基板枚数との関係を示すグラフである。
【図4】研磨パッドの減耗量と研磨パッドの交換周期を示すグラフである。
【図5】トップリングおよび研磨テーブルを回転させるモータの電流を検出する構造を示す模式図である。
【図6】図6(a)は、研磨パッドの減耗量が許容範囲内にあるときの、トップリング回転モータおよびテーブル回転モータの電流を示すグラフであり、図6(b)は、研磨パッドの減耗量が許容範囲を超えたときの、トップリング回転モータおよびテーブル回転モータの電流を示すグラフである。
【図7】図7(a)は、研磨パッドの減耗量が許容範囲内にあるときの、研磨された基板の実際の膜厚と予め設定された目標膜厚との差異を示すグラフであり、図7(b)は、研磨パッドの減耗量が許容範囲を超えたときの、研磨された基板の実際の膜厚と予め設定された目標膜厚との差異を示すグラフである。
【図8】研磨パッドの寿命を決定する方法を示すフローチャートである。
【図9】研磨パッドの高さおよび研磨パッドの高さの移動平均値の変化を示すグラフである。
【図10】研磨レートの評価を説明するフローチャートである。
【図11】研磨レートの評価の他の例を示すフローチャートである。
【図12】研磨レートの評価のさらに他の例を示すフローチャートである。
【図13】図8に示す研磨パッドの寿命を決定する方法の変形例を示すフローチャートである。
【図14】図8に示す研磨パッドの寿命を決定する方法の別の変形例を示すフローチャートである。
【図15】図10に示す研磨レートの評価を説明するフローチャートの変形例を示すフローチャートである。
【図16】ドレッサの寿命を決定する方法を示すフローチャートである。
【図17】研磨パッドの高さおよびカットレートの変化を示すグラフである。
【図18】図16に示すドレッサの寿命を決定する方法の変形例を示すフローチャートである。
【図19】基板の複数の領域を独立に押圧する複数のエアバッグを備えたトップリングの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態における研磨装置を示す模式図である。図1に示すように、研磨装置は、研磨テーブル12と、支軸14の上端に連結されたトップリング揺動アーム16と、トップリング揺動アーム16の自由端に取り付けられたトップリングシャフト18と、トップリングシャフト18の下端に連結された略円盤状のトップリング20と、各種データを処理する診断部47とを備えている。診断部47は、図示しないが、データを記憶する記憶部と、該データを処理する演算処理部とを有している。図1においては図示しないが、トップリングシャフト18は、タイミングベルト等の連結手段を介してトップリング回転モータに連結されて回転駆動されるようになっている。このトップリングシャフト18の回転により、トップリング20が矢印で示す方向にトップリングシャフト18周りに回転するようになっている。
【0017】
研磨テーブル12は、テーブル軸12aを介してその下方に配置されるテーブル回転モータ70に連結されており、このテーブル回転モータ70により研磨テーブル12がテーブル軸12a周りに矢印で示す方向に回転駆動されるようになっている。この研磨テーブル12の上面には研磨パッド22が貼付されており、研磨パッド22の上面22aが半導体ウェハなどの基板を研磨する研磨面を構成している。
【0018】
トップリングシャフト18は、上下動機構24によりトップリング揺動アーム16に対して上下動するようになっており、このトップリングシャフト18の上下動によりトップリング20がトップリング揺動アーム16に対して上下動するようになっている。なお、トップリングシャフト18の上端にはロータリージョイント25が取り付けられている。
【0019】
トップリング20は、その下面に半導体ウェハなどの基板を保持できるように構成されている。トップリング揺動アーム16は支軸14を中心として旋回可能に構成されており、下面に基板を保持したトップリング20は、トップリング揺動アーム16の旋回により基板の受取位置から研磨テーブル12の上方に移動される。そして、トップリング20を下降させて基板を研磨パッド22の上面(研磨面)22aに押圧する。基板の研磨中は、トップリング20および研磨テーブル12をそれぞれ回転させ、研磨テーブル12の上方に設けられた研磨液供給ノズル(図示せず)から研磨パッド22上に研磨液を供給する。このように、基板を研磨パッド22の研磨面22aに摺接させて基板の表面を研磨する。
【0020】
トップリングシャフト18およびトップリング20を昇降させる昇降機構24は、軸受26を介してトップリングシャフト18を回転可能に支持するブリッジ28と、ブリッジ28に取り付けられたボールねじ32と、支柱30により支持された支持台29と、支持台29上に設けられたACサーボモータ38とを備えている。サーボモータ38を支持する支持台29は、支柱30を介してトップリング揺動アーム16に連結されている。
【0021】
ボールねじ32は、サーボモータ38に連結されたねじ軸32aと、このねじ軸32aが螺合するナット32bとを備えている。トップリングシャフト18は、ブリッジ28と一体となって昇降(上下動)するようになっている。したがって、サーボモータ38を駆動すると、ボールねじ32を介してブリッジ28が上下動し、これによりトップリングシャフト18およびトップリング20が上下動する。
【0022】
この研磨装置は、研磨テーブル12の研磨面22aをドレッシングするドレッシングユニット40を備えている。このドレッシングユニット40は、研磨面22aに摺接されるドレッサ50と、ドレッサ50が連結されるドレッサシャフト51と、ドレッサシャフト51の上端に設けられたエアシリンダ53と、ドレッサシャフト51を回転自在に支持するドレッサ揺動アーム55とを備えている。ドレッサ50の下面はドレッシング面50aを構成し、このドレッシング面50aは砥粒(例えば、ダイヤモンド粒子)から構成されている。エアシリンダ53は、支柱56により支持された支持台57上に配置されており、これらの支柱56はドレッサ揺動アーム55に固定されている。
【0023】
ドレッサ揺動アーム55は図示しないモータに駆動されて、支軸58を中心として旋回するように構成されている。ドレッサシャフト51は、図示しないモータの駆動により回転し、このドレッサシャフト51の回転により、ドレッサ50がドレッサシャフト51周りに矢印で示す方向に回転するようになっている。エアシリンダ53は、ドレッサシャフト51を介してドレッサ50を上下動させ、ドレッサ50を所定の押圧力で研磨パッド22の研磨面22aに押圧する。
【0024】
研磨パッド22の研磨面22aのドレッシングは次のようにして行われる。ドレッサ50はエアシリンダ53により研磨面22aに押圧され、これと同時に図示しない純水供給ノズルから純水が研磨面22aに供給される。この状態で、ドレッサ50がドレッサシャフト51周りに回転し、ドレッシング面50aを研磨面22aに摺接させる。さらに、ドレッサ揺動アーム55を支軸58を中心として旋回させてドレッサ50を研磨面22aの半径方向に移動させる。このようにして、ドレッサ50により研磨パッド22が削り取られ、研磨面22aがドレッシング(再生)される。
【0025】
この研磨装置では、このドレッサ50の縦方向の位置を利用して研磨パッド22の減耗量を測定する。すなわち、ドレッシングユニット40はドレッサ50の縦方向の変位を測定する変位センサ60を備えている。この変位センサ60は、研磨パッド22の高さ(すなわち研磨面22aの高さ)を測定するパッド高さ測定器である。研磨パッド22の高さとは、研磨パッド22の上面(すなわち研磨面22a)の高さであり、変位センサ60は、その値の変化(変位)を測定する。そして、この変化(変位)が研磨パッド22の減耗量である。変位の基準は装置内にはなく、最初に測定した研磨パッド22の研磨面22aの高さが基準となる。すなわち、基準は研磨パッドごとの固有の値であり、研磨パッドごとに基準を測定する。
【0026】
ドレッサシャフト51にはプレート61が固定されており、ドレッサ50の上下動にともなって、プレート61が上下動するようになっている。変位センサ60はプレート61に固定されており、プレート61の変位を測定することによりドレッサ50の変位を測定する。すなわち、変位センサ60は、該変位センサ60の下端とドレッサ揺動アーム55の上面との相対変位を測定できるように構成されている。
【0027】
エアシリンダ53を駆動すると、ドレッサ50、ドレッサシャフト51、プレート61、および変位センサ60が一体に上下動するようになっている。一方、ドレッサ揺動アーム55の上下方向の位置は固定である。変位センサ60は、ドレッサ揺動アーム55の上面に対するドレッサ50の縦方向の変位を測定することにより、研磨パッド22の研磨面22aの高さを間接的に測定する。なお、この例では、変位センサ60として接触式変位センサが用いられているが、非接触式変位センサを用いてもよい。具体的には、リニアスケール、レーザ式センサ、超音波センサ、または渦電流式センサなどを変位センサ60として用いることができる。また、変位センサに代えて、2点間の距離を測定する距離センサを用いてもよい。
【0028】
研磨パッド22の減耗量は、次のようにして求められる。まず、エアシリンダ53を駆動させてドレッサ50を、初期ドレッシング済の研磨パッド22の研磨面22aに当接させる。この状態で、変位センサ60はドレッサ50の初期位置(初期高さ)を測定し、その初期位置(初期高さ)を診断部47に記憶する。そして、1つの、または複数の基板の研磨処理が終了した後、再びドレッサ50を研磨面22aに当接させ、この状態でドレッサ50の位置を測定する。ドレッサ50の位置は研磨パッド22の減耗量に応じて下方に変位するため、診断部47は、上記初期位置と研磨後のドレッサ50の位置との差異を求めることで、研磨パッド22の減耗量を求めることができる。
【0029】
ドレッシングユニット40は、基板を研磨する毎に研磨パッド22のドレッシングを行なう。なお、通常は、1枚の基板を研磨する毎に研磨パッド22のドレッシングを行なう。ドレッシングは、基板研磨の前または後、あるいは基板の研磨中に実施される。また、基板研磨の前または後、および基板の研磨中にドレッシングが実施される場合もある。研磨パッド22の減耗量の算出には、いずれかのドレッシング時に取得された変位センサ60の測定値が使用される。
【0030】
ドレッサ50は、ドレッサ揺動アーム55の揺動により、ドレッシング中研磨パッド22上をその半径方向に揺動(スキャン)する。研磨パッド22の高さの測定値は、変位センサ60から診断部47に送られ、ここでドレッシング中の研磨パッド22の高さの測定値の平均が求められる。なお、1回のドレッシング動作につき、ドレッサ50は、1回または複数回研磨パッド22上を往復(スキャン)する。
【0031】
図2は、変位センサ60によって測定された研磨パッド22の高さを示すグラフである。図2のグラフにおいて、縦軸は研磨パッド22の研磨面22aの高さを表し、横軸は時間を表している。時間t1は、ドレッサ50が研磨パッド22に向かって下降し始めた時点を示し、時間t2’は、ドレッサ50が研磨パッド22からの上昇を完了した時点を示している。したがって、図2のグラフは、研磨パッド22のドレッシングが時間t1から時間t2’までの間に行なわれたことを示している。変位センサ60は、ドレッサ50がドレッサ揺動アーム55の揺動により研磨面22a上を移動している間に研磨パッド22の高さを測定して複数の測定値を取得し、診断部47は、得られた測定値に基づいて研磨パッド22の高さを決定する。
【0032】
しかしながら、図2から分かるように、ドレッサ50が研磨パッド22に接触し始めたドレッシング初期段階、およびドレッサ50が研磨パッド22から離間し始めたドレッシング最終段階において取得された測定値は、研磨パッド22の高さを正確には反映していない。そこで、診断部47は、ドレッサ50が研磨パッド22に接触してから離間するまでに取得された研磨パッド22の高さの測定値から、予め定められたドレッシング初期期間Δt1とドレッシング最終期間Δt2に取得された測定値を除去して、研磨パッド22の高さを反映したパッド高さ測定値を取得し、このパッド高さ測定値の平均値を求める。このように、ドレッシングの初期期間Δt1および最終期間Δt2を除くドレッシング期間Δt中に取得された測定値のみが使用されて研磨パッド22の高さが求められる。
【0033】
ドレッシング時間内におけるドレッシング初期期間Δt1およびドレッシング最終期間Δt2は、次のようにして特定することができる。図2に示す一点鎖線は、ドレッサ50のドレッシング位置信号を表している。このドレッサ50のドレッシング位置信号は、ドレッサ50のドレッシング位置を決定する信号であり、図2に示すドレッシング位置信号は、時間t1から時間t2までの所定期間において、ドレッサ50が研磨パッド22をドレッシングすることを示している。ドレッサ50は、このドレッシング位置信号に基づいて上下動およびスキャン動作を行なう。ドレッシング初期期間Δt1は、ドレッサ50の下降開始点を示すドレッシング位置信号の時間t1を基準として決定することができる。すなわち、ドレッシング初期期間Δt1は、ドレッシング開始点を示すドレッシング位置信号の時間t1から始まる所定の固定時間である。同様に、ドレッシング最終期間Δt2は、ドレッサ50の上昇開始点を示すドレッシング位置信号の時間t2を基準として決定することができる。すなわち、ドレッシング最終期間Δt2は、ドレッシング終了点を示すドレッシング位置信号の時間t2から始まる所定の固定時間である。
【0034】
診断部47は、1回のドレッシング動作中に取得された複数の測定値の平均値を求め、得られた平均値を研磨パッド22の高さとして決定する。さらに、診断部47は、得られた研磨パッド22の高さと予め求められた研磨パッド22の初期高さとの間の差異を算出することにより、研磨パッド22の減耗量を取得する。
【0035】
図3は、研磨パッド22の減耗量と研磨された基板枚数との関係を示すグラフである。図3のグラフにおいて、縦軸は、変位センサ60の測定値から得られた研磨パッド22の減耗量を表し、横軸は、研磨された基板の枚数を表している。横軸の基板の枚数は、時間としても表すことができる。したがって、図3のグラフの傾きは、単位時間当たりの研磨パッド22の減耗量を示している。
【0036】
図4は、研磨パッドの減耗量と研磨パッドの交換周期を示すグラフである。図4のグラフの縦軸は研磨パッドの減耗量を表し、横軸は研磨された基板の枚数を表している。図4に示すように、従来では、図4に示すように、研磨パッド22の減耗量がその限界レベルに達する前に研磨パッド22が交換されていた。したがって、研磨パッド22の減耗量の限界レベルが正確に把握できれば、研磨パッド22の寿命を約10%以上延ばすことができることが期待される。
【0037】
本実施形態では、変位センサ(パッド高さセンサ)60によって測定される研磨パッド22の減耗量に加えて、研磨パッド22の減耗に起因して変化するいくつかのパラメータに基づいて、研磨パッド22の寿命を決定する。具体的には、監視すべきパラメータとして、トップリング20および研磨テーブル12の回転に必要なモータ電流(トルク)が使用される。
【0038】
図5は、トップリング20および研磨テーブル12を回転させるモータの電流を検出する構造を示す模式図である。図5に示すように、研磨テーブル12はテーブル回転モータ70によって回転駆動され、トップリング20はトップリング回転モータ71によって回転駆動される。テーブル回転モータ70およびトップリング回転モータ71には、モータ電流を検出するテーブルモータ電流検出部75およびトップリングモータ電流検出部76がそれぞれ接続されている。なお、これら電流検出部75,76を設けずに、モータ70,71にそれぞれ接続されたモータドライバ(図示せず)から出力される電流を診断部47が監視することもできる。
【0039】
基板Wの研磨中は、基板Wの表面と研磨パッド22の研磨面22aとが摺接するため、基板Wと研磨パッド22との間には摩擦力が生じる。一般に、基板Wの研磨レート(単位時間当たりの基板の膜の除去量、除去レートともいう)は、この摩擦力に依存する。すなわち、基板Wと研磨パッド22との間の摩擦力が小さくなると、基板Wの研磨レートが低下する。この摩擦力は抵抗トルクとしてテーブル回転モータ70およびトップリング回転モータ71に作用する。したがって、基板Wと研磨パッド22との間の摩擦力の変化はテーブル回転モータ70およびトップリング回転モータ71にかかるトルク変化として検出することができる。さらに、このトルク変化は、テーブル回転モータ70およびトップリング回転モータ71の電流の変化として検出することができる。本実施形態では、基板Wの研磨中に研磨テーブル12およびトップリング20の回転速度を維持させるために必要なモータ70,71の電流(すなわち、トルク電流)は、テーブルモータ電流検出部75およびトップリングモータ電流検出部76によって検出される。なお、上述したように、基板Wの研磨中に研磨テーブル12およびトップリング20の回転速度を維持させるために必要なモータ70,71の電流(すなわち、トルク電流)は、モータ70,71に接続されたモータドライバから検出することもできる。また、これらの例にかぎらず、モータ70,71の電流(トルク電流)は、いかなる公知の技術を使って検出してもよい。以下の説明では、モータ電流を用いて記載するが、モータ電流をモータトルクに置き換えてもよい。モータのトルクはモータ電流から求めてもよく、またはモータ駆動用のドライバから出力(モニタ)されるトルク値、電流値を用いてもよい。
【0040】
図6(a)は、研磨パッド22の減耗量が許容範囲内にあるときの、トップリング回転モータ71およびテーブル回転モータ70の電流を示すグラフであり、図6(b)は、研磨パッド22の減耗量が許容範囲を超えたときの、トップリング回転モータ71およびテーブル回転モータ70の電流を示すグラフである。なお、図6(a)および図6(b)に示すモータ電流は、1枚の基板を研磨するたびに得られるモータ電流の測定値の平均値をプロットすることにより描かれている。
【0041】
本実施形態では、1枚の基板が研磨されるたびに、研磨中におけるテーブル回転モータ70の電流の平均値およびトップリング回転モータ71の電流の平均値が診断部47によって求められる。正確な電流の平均値を求めるために、研磨テーブル12およびトップリング20が、実質的に一定の回転速度でそれぞれ回転しているときに取得されたテーブル回転モータ70の電流の平均値およびトップリング回転モータ71の電流の平均値を算出することが好ましい。ここで、実質的に一定の回転速度とは、例えば、設定速度の±10%の範囲内の回転速度である。
【0042】
図6(a)と図6(b)との対比から分かるように、研磨パッド22の減耗量が許容範囲を超えると、テーブル回転モータ70の電流は大きく減少し、トップリング回転モータ71の電流は大きく上昇する。これは次の理由によると考えられる。通常、基板の研磨中、研磨テーブル12とトップリング20は、図1に示すように、同じ方向に回転し、それぞれの回転速度もほぼ同じである。このため、トップリング20には研磨テーブル12のつれ回りトルクが作用し、トップリング20は研磨テーブル12の回転によってある程度回転させられる。研磨面22aによる基板の研磨ができなくなるまで研磨パッド22の減耗が進行すると、研磨テーブル12の負荷が低下し、その結果、テーブル回転モータ70の電流が低下する(すなわち、研磨テーブル12の回転速度維持のために必要なトルクが低下する)。一方、トップリング20には、研磨テーブル12のつれ回りトルクが作用しなくなるので、トップリング20の回転速度維持のためにトップリング回転モータ71の電流が増加する(すなわち、トップリング20の回転速度維持のために必要なトルクが増加する)。
【0043】
図7(a)は、研磨パッド22の減耗量が許容範囲内にあるときの、研磨された基板の実際の膜厚と予め設定された目標膜厚との差異を示すグラフであり、図7(b)は、研磨パッド22の減耗量が許容範囲を超えたときの、研磨された基板の実際の膜厚と予め設定された目標膜厚との差異を示すグラフである。図7(a)のグラフは図6(a)のグラフに対応し、図7(b)のグラフは図6(b)のグラフに対応している。また、図7(b)中のA点は、図6(b)中のA点に対応している。図7(a)から分かるように、研磨パッド22の減耗量が許容範囲内にあるときは、研磨された基板の膜厚と目標膜厚との差異は小さい。一方、図7(b)に示すように、研磨パッド22の減耗量が許容範囲を超えると、研磨された基板の膜厚と目標膜厚との差異が大きくなる。したがって、研磨パッド22の研磨性能が維持される限りにおいて、研磨パッド22の交換時期をできるだけ延ばすことが好ましい。
【0044】
上述したように、本実施形態では、研磨パッド22の寿命を決定するパラメータとして、研磨パッド22の減耗量に加えて、研磨テーブル12のモータ70の電流、およびトップリング20のモータ71の電流が使用される。研磨パッド22が減耗して研磨レートが大きく低下すると、図6(b)に示すように、モータ70,71の電流が特徴的な変化を示す。したがって、モータ70,71の電流は、研磨レートの低下を示すパラメータということもできる。
【0045】
診断部47は、研磨パッド22の減耗量と、モータ70,71の電流によって示される研磨レートの変化とに基づいて、研磨パッド22の研磨面22aの状態を診断し、その診断結果から、研磨パッド22の寿命、すなわち交換時期を決定する。すなわち、診断部47は、変位センサ60の測定値から算出される研磨パッド22の減耗量と、テーブルモータ電流検出部75(またはテーブル回転モータ70のモータドライバ)から得られたテーブル回転モータ70の電流と、トップリングモータ電流検出部76(またはトップリング回転モータ71のモータドライバ)から得られたトップリング回転モータ71の電流を監視し、これらのパラメータに基づいて研磨パッド22の寿命、すなわち減耗限界値を決定する。
【0046】
研磨パッド22の寿命は、具体的には、次のようにして決定される。1枚の基板が研磨されるたびに、変位センサ60は研磨パッド22の研磨面22aの高さを測定し、診断部47は研磨パッド22の高さの測定値および初期高さからパッド減耗量を算出する。また、診断部47は、1枚の基板が研磨されるたびに、その基板の研磨中に取得されたテーブル回転モータ70の電流の平均値およびトップリング回転モータ71の電流の平均値を算出する。診断部47は、さらにテーブル回転モータ70の電流の平均値の移動平均値と、トップリング回転モータ71の電流の平均値の移動平均値を算出する。
【0047】
診断部47は、得られたパッド減耗量と所定の管理値とを比較し、このパッド減耗量が所定の管理値を超えたか否かを判断する。この管理値は、研磨パッド22の特性などに基づいて予め決定される。パッド減耗量が上記管理値を超えた場合は、診断部47は、トップリング回転モータ71の電流の移動平均値が所定の第1の設定値を上回り、かつテーブル回転モータ70の電流の移動平均値が所定の第2の設定値を下回った否かを判断する。トップリング回転モータ71の電流の移動平均値が所定の第1の設定値を上回り、かつテーブル回転モータ70の電流の移動平均値が所定の第2の設定値を下回ったとき、診断部47は、研磨パッド22がその寿命に達したと判断する。
【0048】
トップリング回転モータ71の電流およびテーブル回転モータ70の電流を用いた研磨パッド22の寿命の判断は、次のように行なってもよい。パッド減耗量が上記管理値に達すると、診断部47は、テーブル回転モータ70の電流の移動平均値とトップリング回転モータ71の電流の移動平均値との差が、所定の設定値以下であるか否かを判断し、上記差が所定の設定値以下であるとき、診断部47は、研磨パッド22がその寿命に達したと判断する。
【0049】
さらに別の例では、パッド減耗量が上記管理値に達すると、診断部47は、トップリング回転モータ71の電流の移動平均値の変化率とテーブル回転モータ70の電流の移動平均値の変化率との差が所定の設定値よりも大きいか否かを判断する。上記差が所定の設定値を上回ったとき、診断部47は、研磨パッド22がその寿命に達したと判断する。
【0050】
なお、テーブル回転モータ70の電流の平均値とトップリング回転モータ71の電流の平均値の変動が小さい場合もあり得る。したがって、上記移動平均値を求めずに、テーブル回転モータ70の電流の平均値およびトップリング回転モータ71の電流の平均値を使用して、上述の方法に従って研磨パッド22の寿命を判断してもよい。
【0051】
以下、研磨パッド22の寿命を決定する方法について図8を参照してより詳細に説明する。図8は、研磨パッド22の寿命を決定する方法を示すフローチャートである。ステップ1では、n枚目の基板が研磨された後、ドレッサ50の揺動中に変位センサ60により研磨パッド22の高さを複数の計測点で計測し、診断部47は研磨パッド22の高さの測定値の平均値を算出して、n枚目の基板研磨後の研磨パッド22の高さH(n)を決定する。研磨パッド22の高さHは、研磨パッド22がドレッシングされるたびに取得される。
【0052】
ステップ2では、現在の基板の枚数nが所定の数よりも大きいか否かが診断部47によって決定される。本実施形態では、この所定の数は30に設定されている。基板の枚数nが30以下である場合は、次の基板(n+1枚目の基板)について処理シーケンスをステップ1から繰り返す。一方、基板の枚数nが30よりも大きい場合は、研磨パッド22の高さH(n)の移動平均が診断部47により求められる(ステップ3)。具体的には、所定枚数分の基板に対応する研磨パッド22の高さHの複数の値から移動平均値が求められる。本実施形態では、n枚目の基板(現在の基板)からn−30枚目の基板(先行して研磨された基板)までの直近の複数の基板に対応する研磨パッド22の高さ(H(n),…,H(n−30))が時系列データとして定義され、この時系列データの平均値、すなわち移動平均値Hma(n)が診断部47により算出される。すなわち、診断部47は、現在の基板(n枚目の基板)に対応する研磨パッド22の高さH(n)が得られるたびに、直近31枚の基板に対応する研磨パッド22の高さ(H(n),…,H(n−30))の移動平均値Hma(n)を算出する。
【0053】
図9は、研磨パッド22の高さHおよび研磨パッド22の高さの移動平均値Hmaの変化を示すグラフである。図9のグラフの横軸は、ドレッシング累積時間を表している。移動平均値Hmaは、上述したように、直近31枚の基板に対応したパッド高さの値からなる時系列データの平均値を示している。図9から分かるように、研磨パッド22の高さHは大きくばらつき、そのばらつきの大きさは100μmを超えている。一方、研磨パッド22の高さの移動平均値Hmaはばらつきが小さく、研磨パッド22の高さHの値が平滑化されているのが分かる。研磨パッド22の高さHおよびその移動平均値Hmaは、研磨パッド22がドレッシングされるたびに取得される。なお、1つの移動平均値Hmaの算出に使用される時系列データの数は31に限られず、適宜決定することができる。また、研磨パッド22の高さHのばらつきが小さい場合は、移動平均値Hmaを算出することは不要である。この場合は、研磨パッド22の減耗量は、研磨パッド22の高さHおよび初期高さから求められる。
【0054】
図8に戻り、ステップ4では、n枚目の基板(現在の基板)に対応する移動平均値Hma(n)と、n−30枚目の基板に対応する移動平均値Hma(n−30)との差の絶対値|Hma(n)−Hma(n−30)|が、診断部47によって求められる。そして、診断部47は、得られた差の絶対値が所定のしきい値以下であるか否かを決定する。この例では、しきい値として100μmが設定されている。ステップ5では、差異|Hma(n)−Hma(n−30)|が100μm以下の場合は、研磨パッド22の減耗量の算出に、研磨パッド22の初期高さHがそのまま使用される(H=H)。一方、差異|Hma(n)−Hma(n−30)|が100μmよりも大きい場合は、研磨パッド22の初期高さHの値として、移動平均値Hma(n)が用いられる(H=Hma(n))。なお、ステップ4およびステップ5は、研磨パッド22が交換されたか否かを判断するためのステップである。研磨パッド22の交換時間が装置情報から得られる場合は、これらのステップを省略し、初期高さHを更新してもよい。
【0055】
ステップ6では、診断部47は、現在の移動平均値Hma(n)と研磨パッド22の初期高さHとの間の差異を算出することで現在の研磨パッド22の減耗量を求め、得られた減耗量が所定の管理値よりも大きいか否かを決定する。本実施形態では、管理値は600μmに設定されており、この管理値は研磨パッド22の特性などに基づいて予め決定される。
【0056】
研磨パッド22の減耗量が所定の管理値以下の場合、次の基板(n+1枚目の基板)について同様の処理シーケンスをステップ1から繰り返す。一方、研磨パッド22の減耗量が所定の管理値を上回った場合、診断部47は、テーブル回転モータ70の電流およびトップリング回転モータ71の電流の変化に基づいて、研磨レートを評価する(ステップ7)。この研磨レートの評価方法について、図10を参照して説明する。診断部47は、n枚目の基板の研磨中に測定されたトップリング回転モータ71の電流の平均値T1(n)およびテーブル回転モータ70の電流の平均値T2(n)を求める。ここで、T1(n),T2(n)は、過去のデータの代表値など(最大値、最小値)でスケーリング化してもよい。さらに、診断部47は、トップリング回転モータ71の電流の平均値T1(n)の移動平均値T1ma(n)およびテーブル回転モータ70の電流の平均値T2(n)の移動平均値T2ma(n)を求める。
【0057】
モータ71,70の電流の移動平均値T1ma(n),T2ma(n)は、上述した研磨パッド22の高さの移動平均値Hma(n)と同様にして求められる。すなわち、所定の枚数分の基板に対応するトップリング回転モータ71の電流の平均値(T1(n),T1(n-1),…,T1(n-N))から移動平均値T1ma(n)が求められ、同様に、所定の枚数分の基板に対応するテーブル回転モータ70の電流の平均値(T2(n),T2(n-1),…,T2(n-N))から移動平均値T2ma(n)が求められる。Nは適宜決定することができる。
【0058】
次に、診断部47は、トップリング回転モータ71の電流の移動平均値T1ma(n)が所定の第1の設定値P1を上回ったか否かを決定する。トップリング回転モータ71の電流の移動平均値T1ma(n)が第1の設定値P1以下である場合(T1ma(n)≦P1)は、研磨レートが良好であると判断される。一方、移動平均値T1ma(n)が第1の設定値P1を上回った場合(T1ma(n)>P1)は、診断部47は、さらに、テーブル回転モータ70の電流の移動平均値T2ma(n)が所定の第2の設定値P2を下回った否かを判断する。
【0059】
テーブル回転モータ70の電流の移動平均値T2ma(n)が第2の設定値P2以上である場合は(T2ma(n)≧P2)、研磨レートが良好であると判断される。一方、移動平均値T2ma(n)が第2の設定値P2を下回った場合は(T2ma(n)<P2)、研磨レートが低下したと判断される。図8に戻って、研磨レートが低下したと判断されると、診断部47は、研磨パッド22がその寿命に達したと判断し、図示しない警報装置に研磨パッド22の交換通知を発信し、この警報装置にアラームを発生させる。
【0060】
研磨パッド22の交換通知を発信した後、診断部47は、次の基板(n+1枚目の基板)について上記処理シーケンスをステップ1から繰り返す。
【0061】
図11は、研磨レートの評価の他の例を示すフローチャートである。まず、診断部47は、n枚目の基板の研磨中に測定されたトップリング回転モータ71の電流の平均値T1(n)およびテーブル回転モータ70の電流の平均値T2(n)を求める。さらに、診断部47は、トップリング回転モータ71の電流の平均値T1(n)の移動平均値T1ma(n)およびテーブル回転モータ70の電流の平均値T2(n)の移動平均値T2ma(n)を求める。
【0062】
次に、診断部47は、テーブル回転モータ70の電流の移動平均値T2ma(n)とトップリング回転モータ71の電流の移動平均値T1ma(n)との差が、所定の設定値P3以下であるか否かを判断する。上記差が所定の設定値以下であるとき(T2ma(n)−T1ma(n)≦P3)、診断部47は、研磨レートが低下した、すなわち研磨パッド22が寿命に達したと判断し、図示しない警報装置にアラームを発生させる。一方、上記差が所定の設定値よりも大きいときは(T2ma(n)−T1ma(n)>P3)、診断部47は研磨レートが良好であると判断し、次の基板(n+1枚目の基板)について上記処理シーケンスをステップ1から繰り返す。
【0063】
図12は、研磨レートの評価のさらに他の例を示すフローチャートである。まず、診断部47は、n枚目の基板(現在の基板)の研磨中に測定されたトップリング回転モータ71の電流の平均値T1(n)およびテーブル回転モータ70の電流の平均値T2(n)を求める。さらに、診断部47は、トップリング回転モータ71の電流の平均値T1(n)の移動平均値T1ma(n)およびテーブル回転モータ70の電流の平均値T2(n)の移動平均値T2ma(n)を求める。
【0064】
次に、診断部47は、トップリング回転モータ71の電流の移動平均値T1ma(n)と、n−Δn枚目の基板(先行する基板)の研磨後に算出されたトップリング回転モータ71の電流の移動平均値Tma1(n−Δn)との差(T1ma(n)−T1ma(n−Δn))を求め、n枚目の基板とn−Δn枚目の基板との間の基板の枚数差Δnで上記差(T1ma(n)−T1ma(n−Δn))を割り算することで、n枚目の基板に関するトップリング回転モータ71の電流の移動平均値の変化率T1´ma(n)を求める。つまり、トップリング回転モータ71の電流の移動平均値の変化率T1´ma(n)は、次の式で表される。
T1´ma(n)={T1ma(n)−T1ma(n−Δn)}/Δn (1)
なお、T1´ma(n)は、関数y=f(x)(ただし、yはT1ma、xは基板数)におけるn点での微分値でもよい。
【0065】
同様に、診断部47は、テーブル回転モータ70の電流の移動平均値T2ma(n)と、n−Δn枚目の基板(先行する基板)の研磨後に算出されたテーブル回転モータ70の電流の移動平均値Tma2(n−Δn)との差(T2ma(n)−T2ma(n−Δn))を求め、n枚目の基板とn−Δn枚目の基板との間の基板の枚数差Δnで上記差(T2ma(n)−T2ma(n−Δn))を割り算することで、n枚目の基板に関するテーブル回転モータ70の電流の移動平均値の変化率T2´ma(n)を求める。つまり、テーブル回転モータ70の電流の移動平均値の変化率T2´ma(n)は、次の式で表される。
T2´ma(n)={T2ma(n)−T2ma(n−Δn)}/Δn (2)
なお、T2´ma(n)は、関数y=f(x)(ただし、yはT2ma、xは基板数)におけるn点での微分値でもよい。
【0066】
なお、本明細書において、電流の移動平均値の変化率とは、所定の基板枚数Δn当たりの電流の移動平均値の変化量をいう。Δnは自然数であり、適宜設定される。この電流の移動平均値の変化率は、1枚の基板が研磨されるたびに診断部47により算出される。
【0067】
診断部47は、次に、トップリング回転モータ71の電流の移動平均値の変化率T1´ma(n)とテーブル回転モータ70の電流の移動平均値の変化率T2´ma(n)との差(T1´ma(n)−T2´ma(n))を求め、得られた差が所定の設定値P4より大きいか否かを決定する。得られた差が所定の設定値P4より大きい場合は(T1´ma(n)−T2´ma(n)>P4)、診断部47は、研磨レートが低下した、すなわち研磨パッド22が寿命に達したと判断し、図示しない警報装置にアラームを発生させる。一方、上記差が所定の設定値以下であるときは(T1´ma(n)−T2´ma(n)≦P4)、診断部47は研磨レートが良好であると判断し、次の基板(n+1枚目の基板)について上記処理シーケンスをステップ1から繰り返す。
【0068】
研磨レートを評価するためのさらに別の例として、膜厚測定器を用いて研磨前後の膜厚を測定し、その膜厚の値と研磨時間とから研磨レートを算出し、予め定めた設定値と求めた研磨レートとを比較して、研磨レートの低下を判定してもよい。
【0069】
図8に示した例では、モータ電流を用いた研磨レートの評価に基づいて研磨パッド22の寿命が決定されているが、研磨レートの評価に加えて、面内均一性の評価に基づいて研磨パッド22の寿命を決定してもよい。図13は、図8に示す研磨パッドの寿命を決定する方法の変形例を示すフローチャートである。この例では、研磨レートの評価の後、面内均一性が評価される(ステップ8)。研磨レートの評価および面内均一性の評価の結果がいずれも良好である場合は、次の基板(n+1枚目の基板)について処理シーケンスをステップ1から繰り返す。一方、研磨レートの評価および面内均一性の評価のいずれか一方の結果が悪かった場合は、診断部47は、研磨パッド22が寿命に達したと判断し、図示しない警報装置にアラームを発生させる。なお、研磨レートと面内均一性との間に相関がある場合は、図13の点線で描かれた矢印に示すように、ステップ8の面内均一性の評価を省略してもよい。
【0070】
ここで、面内均一性とは、基板の表面に形成されている膜が均一に研磨されているかどうかを示す指標である。この面内均一性は、基板を研磨した後に、インラインタイプまたはオフラインタイプの膜厚測定器(図示せず)によって実際に膜厚を測定することによって評価される。
【0071】
図8および図13に示す例では、研磨パッド22の高さH(n)からさらに移動平均値Hma(n)が求められ、この移動平均値Hma(n)と初期高さHとから研磨パッド22の減耗量が求められる。しかしながら、研磨パッド22の高さH(n)の変動が小さい場合には、移動平均値Hma(n)を求めなくてもよい。この場合、図8のフローチャートは、図14に示すように変更される。さらに、図10〜図12に示す例においても、電流の移動平均値T1ma(n),T2ma(n)を求めずに、電流の平均値T1(n),T2(n)を用いて研磨レートを評価してもよい。例えば、図10に示すフローチャートは図15に示すように変更される。
【0072】
研磨レートの低下は、研磨パッド22の減耗のみならず、ドレッサ50のドレッシング性能の低下によっても起こりうる。ドレッサ50のドレッシング性能は、一般に、カットレートとして表される。カットレートとは、単位時間当たりにドレッサ50が研磨パッドを削り取る量のことである。カットレートが低下すると、研磨パッド22の研磨面22aがドレッシング(再生)されず、結果として研磨レートが低下する。このため、研磨パッド22が減耗した場合と同様に、モータ70,71の電流は、図6(b)に示すように、特徴的な変化を示す。したがって、モータ70,71の電流に基づいて、ドレッサ50のドレッシング面50aの状態を診断し、その診断結果からドレッサ50の寿命、すなわち交換時期を決定することができる。
【0073】
以下、ドレッサ50の寿命(交換時期)を決定する一実施形態について図16を参照して説明する。図16は、ドレッサ50の寿命を決定する方法を示すフローチャートである。ステップ1では、研磨パッド22の高さH(n)が診断部47により求められ、ステップ2では、研磨パッド22の高さH(n)の移動平均値Hma(n)が求められる。研磨パッド22の高さHおよびその移動平均値Hmaは、基板が研磨されるたびに取得される。
【0074】
ステップ3では、現在の基板の枚数nが所定の数よりも大きいか否かが診断部47によって決定される。本実施形態では、この所定の数は50に設定されている。基板の枚数nが50以下である場合は、次の基板(n+1枚目の基板)について処理シーケンスをステップ1から繰り返す。一方、基板の枚数nが50よりも大きい場合は、n枚目の基板(現在の基板)に対応する移動平均値Hma(n)と、n−50枚目の基板に対応する移動平均値Hma(n−50)との差の絶対値|ΔHma(n)|=|Hma(n)−Hma(n−50)|が、診断部47によって求められる。ステップ4では、診断部47は、得られた差の絶対値|ΔHma(n)|が所定のしきい値以下であるか否かを決定する。この例では、所定のしきい値として100μmが設定されている。
【0075】
差の絶対値|ΔHma(n)|が100μmよりも大きい場合は、次の基板(n+1枚目の基板)について処理シーケンスをステップ1から繰り返す。一方、差の絶対値|ΔHma(n)|が100μm以下である場合は、研磨パッド22のカットレートが所定の管理値よりも小さいか否かが診断部47により決定される(ステップ5)。研磨パッド22のカットレートは、上述した差の絶対値|ΔHma(n)|を、研磨された基板50枚当たりの総ドレッシング時間(ドレッシング時間の累積値)ΣΔtで割り算することにより得られる。つまり、研磨パッド22のカットレートは、次の式により求められる。
|Hma(n)−Hma(n−50)|/ΣΔt (3)
図17は、研磨パッド22の高さHおよびカットレート|ΔHma|/ΣΔtの変化を示すグラフである。
【0076】
得られたカットレートが上記管理値以上である場合は、次の基板(n+1枚目の基板)について処理シーケンスをステップ1から繰り返す。一方、カットレートが上記管理値よりも小さい場合は、診断部47は、テーブル回転モータ70の電流およびトップリング回転モータ71の電流の変化に基づいて、研磨レートを評価する(ステップ6)。この研磨レートの評価は、図8に示すフローチャートでの研磨レートの評価と同様に行われるので、その詳細な説明を省略する。
【0077】
研磨レートが良好であると評価された場合は、次の基板(n+1枚目の基板)について上記処理シーケンスをステップ1から繰り返す。一方、研磨レートが低下したと評価された場合は、診断部47は、ドレッサ50がその寿命に達したと判断し、図示しない警報装置にドレッサ50の交換通知を発信し、この警報装置にアラームを発生させる。ドレッサ50の交換通知を発信した後、診断部47は、次の基板(n+1枚目の基板)について上記処理シーケンスをステップ1から繰り返す。このようにして、ドレッサ50の交換時期を、研磨パッド22のカットレート、テーブル回転モータ70の電流、およびトップリング回転モータ71の電流に基づいて決定することができる。
【0078】
なお、この実施形態においても、研磨パッド22の高さの移動平均値Hma(n)を求めずに、研磨パッド22の高さH(n)からカットレートを決定してもよい。同様に、電流の移動平均値T1ma(n),T2ma(n)を求めずに、電流の平均値T1(n),T2(n)を用いて研磨レートを評価してもよい。さらに、図16の点線で描かれた矢印で示すように、カットレートが上記管理値よりも小さい場合は、診断部47は、図示しない警報装置にアラームを発生させてもよい。
【0079】
図13に示す例と同様に、研磨レートの評価に加えて、面内均一性の評価に基づいてドレッサ50の寿命を決定してもよい。図18は、図16に示すドレッサの寿命を決定する方法の変形例を示すフローチャートである。この例では、研磨レートの評価および面内均一性の評価の結果がいずれも良好である場合は、次の基板(n+1枚目の基板)について処理シーケンスをステップ1から繰り返す。一方、研磨レートの評価および面内均一性の評価のいずれか一方の結果が悪かった場合は、診断部47は、研磨レートが低下した、すなわちドレッサ50が寿命に達したと判断し、図示しない警報装置にアラームを発生させる。
【0080】
以上述べたように、本発明によれば、研磨パッドおよびドレッサの交換時期を、研磨レートの低下を示すトップリング回転モータおよびテーブル回転モータの電流の変化に基づいて正確に決定することができる。したがって、消耗品である研磨パッドおよびドレッサの交換頻度を少なくし、研磨装置のランニングコストを下げることができる。さらには、研磨パッドおよびドレッサの交換頻度が少なくなるので、研磨装置の稼働率を向上させることができる。なお、研磨パッドおよびドレッサの寿命とは、これら消耗品に起因して製品の歩留まりの低下に繋がるような研磨レートの低下、面内均一性の低下、または欠陥(ディフェクト)の増加が発生した状態をいう。
【0081】
エアバッグを備えたトップリングは、トップリング20の一つの構成例である。このタイプのトップリングは、トップリングの下面(基板保持面)を構成する1つまたは複数のエアバッグ内に加圧空気などの気体を供給し、その気体の圧力で基板を研磨パッド22に対して押圧する。このようなトップリングを用いる場合は、モータの電流またはトルクに代えて、トップリングの基板保持面を構成するエアバッグに供給する気体の流量を測定し、その測定値から研磨パッドの状態を監視することもできる。具体的には、一枚ごとの基板の研磨中に得られる流量の最大レンジ(振動などで揺れる流量の波形のピークとピークとの間の大きさ)を測定し、その所定基板枚数Nの(移動)平均値と所定の管理値との比較を行なって研磨パッドの状態を診断する。例えば、得られた流量レンジの(移動)平均値が管理値に達したときに、研磨パッドがその寿命に達したと判断することができる。別の方法としては、流量の平均値を監視するのではなく、流量の周波数分析(FFT)を行ない、その結果から研磨パッドの状態を判断することもできる。通常、気体の流量は、研磨テーブル12の回転周期に従って変動する。したがって、エアバッグに供給される気体の流量の周波数分析(FFT)を実施して、研磨テーブル12の回転周期と同周期のパワースペクトル(流量振幅)を選択的に監視し、そのパワースペクトルと所定の管理値とを比較して研磨パッドの状態を診断することができる。また、選択した周波数以外の周波数でパワースペクトルの大きな値が発生した場合には、研磨パッドの寿命以外の問題が発生したと判断できる。つまり、異常の分類分けが可能となる。
【0082】
図19は、基板の複数の領域を独立に押圧する複数のエアバッグを備えたトップリングの一例を示す断面図である。トップリング20は、トップリングシャフト18に自由継手80を介して連結されるトップリング本体81と、トップリング本体81の下部に配置されたリテーナリング82とを備えている。トップリング本体81の下方には、基板Wに当接する円形のメンブレン86と、メンブレン86を保持するチャッキングプレート87とが配置されている。メンブレン86とチャッキングプレート87との間には、4つのエアバッグ(圧力室)C1,C2,C3,C4が設けられている。エアバッグC1,C2,C3,C4はメンブレン86とチャッキングプレート87とによって形成されている。中央のエアバッグC1は円形であり、他のエアバッグC2,C3,C4は環状である。これらのエアバッグC1,C2,C3,C4は、同心上に配列されている。
【0083】
エアバッグC1,C2,C3,C4にはそれぞれ流体路91,92,93,94を介して圧力調整部100により加圧空気等の加圧流体が供給され、あるいは真空引きがされるようになっている。エアバッグC1,C2,C3,C4の内部圧力は互いに独立して変化させることが可能であり、これにより、基板Wの4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、および周縁部に対する押圧力を独立に調整することができる。また、トップリング20の全体を昇降させることにより、リテーナリング82を所定の押圧力で研磨パッド22に押圧できるようになっている。
【0084】
チャッキングプレート87とトップリング本体81との間にはエアバッグC5が形成され、このエアバッグC5には流体路95を介して上記圧力調整部100により加圧流体が供給され、あるいは真空引きがされるようになっている。これにより、チャッキングプレート87およびメンブレン86全体が上下方向に動くことができる。流体路91,92,93,94,95には、加圧流体の流量を測定する流量検出器F1,F2,F3,F4,F5がそれぞれ設けられている。これらの流量検出器F1,F2,F3,F4,F5の出力信号(すなわち流量の測定値)は診断部47(図1参照)に送られるようになっている。
【0085】
基板Wの周端部はリテーナリング82に囲まれており、研磨中に基板Wがトップリング20から飛び出さないようになっている。エアバッグC3を構成する、メンブレン86の部位には開口が形成されており、エアバッグC3に真空を形成することにより基板Wがトップリング20に吸着保持されるようになっている。また、このエアバッグC3に窒素ガスやクリーンエアなどを供給することにより、基板Wがトップリング20からリリースされるようになっている。
【0086】
研磨装置の制御部(図示せず)は、各エアバッグC1,C2,C3,C4に対応する位置にある計測点での研磨の進捗に基づいて、各エアバッグC1,C2,C3,C4の内部圧力の目標値を決定する。制御部は上記圧力調整部100に指令信号を送り、エアバッグC1,C2,C3,C4の内部圧力が上記目標値に一致するように圧力調整部100を制御する。複数のエアバッグを持つトップリング20は、研磨の進捗に従って基板の表面上の各領域を独立に研磨パッド22に押圧できるので、膜を均一に研磨することができる。
【0087】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0088】
12 研磨テーブル
12a テーブル軸
14,58 支軸
16 トップリング揺動アーム
18 トップリングシャフト
20 トップリング
22 研磨パッド
22a 研磨面
24 昇降機構
25 ロータリージョイント
28 ブリッジ
29,57 支持台
30,56 支柱
32 ボールねじ
32a ねじ軸
32b ナット
38 ACサーボモータ
40 ドレッシングユニット
47 診断部
50 ドレッサ
50a ドレッシング面
51 ドレッサシャフト
52 ドレッサ回転モータ
53 エアシリンダ
55 揺動アーム
60 変位センサ
61 プレート
70 テーブル回転モータ
71 トップリング回転モータ
75 テーブルモータ電流検出部
76 トップリングモータ電流検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
基板を前記研磨パッドの研磨面に押圧するトップリングと、
前記研磨テーブルをその軸心周りに回転させるテーブル回転モータと、
前記トップリングをその軸心周りに回転させるトップリング回転モータと、
前記研磨パッドの前記研磨面をドレッシングするドレッサと、
前記研磨パッドの高さを測定するパッド高さ測定器と、
前記研磨パッドの高さ、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流、および前記トップリング回転モータのトルクまたは電流を監視する診断部とを備え、
前記診断部は、前記研磨パッドの高さから前記研磨パッドの減耗量を算出し、前記研磨パッドの減耗量と、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流と、前記トップリング回転モータのトルクまたは電流とに基づいて前記研磨パッドの前記研磨面の状態を診断することを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記診断部は、基板の研磨中における前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の平均値と、前記基板の研磨中における前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の平均値とを算出し、前記研磨パッドの減耗量と、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記平均値と、前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記平均値とに基づいて前記研磨パッドの前記研磨面の状態を診断することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記研磨パッドの減耗量が所定の管理値を上回り、かつ前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記平均値が所定の第1の設定値を上回り、かつ前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記平均値が所定の第2の設定値を下回ったときに、前記診断部は、前記研磨パッドがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記診断部は、前記研磨パッドの減耗量が所定の管理値を上回り、かつ前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記平均値と前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記平均値との差が所定の設定値以下となったときに、前記診断部は、前記研磨パッドがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記診断部は、前記研磨パッドの減耗量が所定の管理値を上回り、かつ前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記平均値の変化率と前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記平均値の変化率との差が所定の設定値を上回ったときに、前記診断部は、前記研磨パッドがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記診断部は、前記基板の研磨中に前記研磨テーブルが実質的に一定の回転速度で回転しているときの前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の平均値と、前記基板の研磨中に前記トップリングが実質的に一定の回転速度で回転しているときの前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の平均値とを求めることを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記診断部は、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記平均値の移動平均値と、前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記平均値の移動平均値とをさらに算出し、前記研磨パッドの減耗量と、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値と、前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値とに基づいて前記研磨パッドの前記研磨面の状態を診断することを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記診断部は、前記研磨パッドの減耗量が所定の管理値を上回り、かつ前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値が所定の第1の設定値を上回り、かつ前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値が所定の第2の設定値を下回ったときに、前記診断部は、前記研磨パッドがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項7に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記診断部は、前記研磨パッドの減耗量が所定の管理値を上回り、かつ前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値と前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値との差が所定の設定値以下となったときに、前記診断部は、前記研磨パッドがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項7に記載の研磨装置。
【請求項10】
前記診断部は、前記研磨パッドの減耗量が所定の管理値を上回り、かつ前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値の変化率と前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値の変化率との差が所定の設定値を上回ったときに、前記診断部は、前記研磨パッドがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項7に記載の研磨装置。
【請求項11】
前記パッド高さ測定器は、前記ドレッサが前記研磨パッドをドレッシングするたびに、前記研磨パッドの高さの複数の測定値を取得し、
前記診断部は、前記複数の測定値の平均値を前記研磨パッドの高さとして決定し、該決定された前記研磨パッドの高さと前記研磨パッドの初期高さとの間の差異から前記研磨パッドの減耗量を決定することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項12】
前記診断部は、前記決定された前記研磨パッドの高さの移動平均値を算出し、前記研磨パッドの高さの前記移動平均値と前記研磨パッドの初期高さとの間の差異から前記研磨パッドの減耗量を決定することを特徴とする請求項11に記載の研磨装置。
【請求項13】
前記パッド高さ測定器は、前記ドレッサの縦方向の位置から前記研磨パッドの高さを間接的に測定するように構成されており、
前記パッド高さ測定器は、前記ドレッサが前記研磨パッドをドレッシングしている間に前記研磨パッドの高さを測定することを特徴とする請求項11に記載の研磨装置。
【請求項14】
前記診断部は、前記研磨パッドのドレッシング中に取得された前記複数の測定値から、所定のドレッシング初期期間および所定のドレッシング最終期間に取得された測定値を除去して、前記研磨パッドの高さを反映したパッド高さ測定値を取得し、該パッド高さ測定値の平均値から前記研磨パッドの高さを決定することを特徴とする請求項13に記載の研磨装置。
【請求項15】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
基板を前記研磨パッドの研磨面に押圧するトップリングと、
前記研磨テーブルをその軸心周りに回転させるテーブル回転モータと、
前記トップリングをその軸心周りに回転させるトップリング回転モータと、
前記研磨パッドの前記研磨面をドレッシングするドレッサと、
前記研磨パッドの高さを測定するパッド高さ測定器と、
前記研磨パッドの高さ、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流、および前記トップリング回転モータのトルクまたは電流を監視する診断部とを備え、
前記診断部は、前記研磨パッドの高さから前記研磨パッドの減耗量を算出し、前記研磨パッドの減耗量および所定の研磨基板枚数当たりの総ドレッシング時間から前記研磨パッドのカットレートを算出し、さらに前記研磨パッドのカットレートと、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流と、前記トップリング回転モータのトルクまたは電流とに基づいて前記ドレッサのドレッシング面の状態を診断することを特徴とする研磨装置。
【請求項16】
前記診断部は、基板の研磨中における前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の平均値と、前記基板の研磨中における前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の平均値とを算出し、前記研磨パッドのカットレートと、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記平均値と、前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記平均値とに基づいて前記ドレッサのドレッシング面の状態を診断することを特徴とする請求項15に記載の研磨装置。
【請求項17】
前記診断部は、前記研磨パッドのカットレートが所定の管理値を下回り、かつ前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記平均値が所定の第1の設定値を上回り、かつ前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記平均値が所定の第2の設定値を下回ったときに、前記診断部は、前記ドレッサがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項16に記載の研磨装置。
【請求項18】
前記診断部は、前記研磨パッドのカットレートが所定の管理値を下回り、かつ前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記平均値と前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記平均値との差が所定の設定値以下となったときに、前記診断部は、前記ドレッサがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項16に記載の研磨装置。
【請求項19】
前記診断部は、前記研磨パッドのカットレートが所定の管理値を下回り、かつ前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記平均値の変化率と前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記平均値の変化率との差が所定の設定値を上回ったときに、前記診断部は、前記ドレッサがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項16に記載の研磨装置。
【請求項20】
前記診断部は、前記基板の研磨中に前記研磨テーブルが実質的に一定の回転速度で回転しているときの前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の平均値と、前記基板の研磨中に前記トップリングが実質的に一定の回転速度で回転しているときの前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の平均値とを求めることを特徴とする請求項16に記載の研磨装置。
【請求項21】
前記診断部は、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記平均値の移動平均値と、前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記平均値の移動平均値とをさらに算出し、前記研磨パッドのカットレートと、前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値と、前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値とに基づいて前記ドレッサのドレッシング面の状態を診断することを特徴とする請求項16に記載の研磨装置。
【請求項22】
前記診断部は、前記研磨パッドのカットレートが所定の管理値を下回り、かつ前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値が所定の第1の設定値を上回り、かつ前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値が所定の第2の設定値を下回ったときに、前記診断部は、前記ドレッサがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項21に記載の研磨装置。
【請求項23】
前記診断部は、前記研磨パッドのカットレートが所定の管理値を下回り、かつ前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値と前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値との差が所定の設定値以下となったときに、前記診断部は、前記ドレッサがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項21に記載の研磨装置。
【請求項24】
前記診断部は、前記研磨パッドのカットレートが所定の管理値を下回り、かつ前記トップリング回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値の変化率と前記テーブル回転モータのトルクまたは電流の前記移動平均値の変化率との差が所定の設定値を上回ったときに、前記診断部は、前記ドレッサがその寿命に達したと判断することを特徴とする請求項21に記載の研磨装置。
【請求項25】
前記パッド高さ測定器は、前記ドレッサが前記研磨パッドをドレッシングするたびに、前記研磨パッドの高さの複数の測定値を取得し、
前記診断部は、前記複数の測定値の平均値を前記研磨パッドの高さとして決定し、該決定された前記研磨パッドの高さと前記研磨パッドの初期高さとの間の差異から前記研磨パッドの減耗量を決定することを特徴とする請求項15に記載の研磨装置。
【請求項26】
前記診断部は、前記決定された前記研磨パッドの高さの移動平均値を算出し、前記研磨パッドの高さの前記移動平均値と前記研磨パッドの初期高さとの間の差異から前記研磨パッドの減耗量を決定することを特徴とする請求項25に記載の研磨装置。
【請求項27】
前記パッド高さ測定器は、前記ドレッサの縦方向の位置から前記研磨パッドの高さを間接的に測定するように構成されており、
前記パッド高さ測定器は、前記ドレッサが前記研磨パッドをドレッシングしている間に前記研磨パッドの高さを測定することを特徴とする請求項25に記載の研磨装置。
【請求項28】
前記診断部は、前記研磨パッドのドレッシング中に取得された前記複数の測定値から、所定のドレッシング初期期間および所定のドレッシング最終期間に取得された測定値を除去して、前記研磨パッドの高さを反映したパッド高さ測定値を取得し、該パッド高さ測定値の平均値から前記研磨パッドの高さを決定することを特徴とする請求項27に記載の研磨装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−56029(P2012−56029A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202156(P2010−202156)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】