説明

硫化フェノール添加剤、中間体および組成物の製造方法

【課題】エラストマーシールと適合性であり、かつまた潤滑油組成物の塩素含有率にそれ程寄与しない、該潤滑油組成物中で高濃度で使用できる、硫化フェノール添加剤に対する需要がある。
【解決手段】ニトリルシールと適合性である潤滑油添加剤を調製するための油溶性硫化フェノール中間体組成物であって、前記中間体組成物の塩素含有率が1000ppm未満であり、かつ、硫黄含有率が少なくとも4質量%であり、下記式Iを有する化合物を含む、前記中間体組成物。


(式中、Rは1〜50個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、yは0〜4の整数であって、各芳香核で異なっていてもよく、nは0〜20の整数であり、xは1〜7の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化フェノール潤滑油添加剤、潤滑油組成物およびこのような添加剤を含有する濃厚物の製造法、このような添加剤の潤滑油処方における使用、並びにこのような添加剤の中間体の調製および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
伝動装置、例えば自動伝動装置は、汚染物質の侵入を防止するための、シャフトおよびベアリングシールを必要とする。シールの寿命は、特に選択された該シールの実際に適用された用途に対する適正、該シールの設定に払われた注意の度合、使用中に該シールが暴露される温度、使用中に該シールが接触することになる潤滑剤の特性、および使用中に該シールが接触することになる表面の状態に依存する。シールの破壊は、多くの場合に潤滑剤の漏れを生じ、次第に許容できないものとなり、また最早その意図された機能を果たし得ないシールは、通常は取り替える必要がある。従って、該シールの寿命を出来る限り延長したいとの要望がある。
また、仕上げ油処方物中での使用が、該仕上げ潤滑油処方物中での高い塩素濃度に寄与しないように、低い塩素濃度を有する潤滑油添加剤の開発に対する強い要望もある。潤滑油中の塩素の存在は、廃棄物の棄却および環境的観点から問題である。高濃度の塩素を含有する潤滑油を、使用後に、例えば焼却によって分解した場合には、有害な塩素化または多重塩素化ビフェニルが生成する可能性がある。従って、塩素−含有添加剤を主成分とする組成物の廃棄物棄却は、問題となり、塩素を含まない添加剤または低濃度で塩素を含有する添加剤を生産し得ることが有利であろう。
【0003】
硫黄−含有添加剤は、種々の潤滑剤、例えばクランクケース潤滑油、ギヤー潤滑油、および種々の機能性流体、例えば作動流体、自動変速機油、および熱媒油において広範に使用されている。このような硫黄−含有添加剤の最も一般的なものの一つは、硫化フェノール、例えばアルキル置換フェノールスルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィド、その塩、その過塩基塩(overbased salts)およびその混合物等である。これらの添加剤はこれら種々の流体のカテゴリーに対する洗浄剤、酸化防止剤、耐磨耗性添加剤および荷重負担添加剤として機能する。
これらの硫黄−含有添加剤は、上記の如き機能については全く有効であることが分かっているが、これらは一般的に、ベアリングおよびベアリングライナーとして幅広く使用されている、銅および銅合金等の金属に対して腐食性であることが分かっている。これらは、またシールまたは封止装置として使用されるエラストマー材料の劣化を引き起こすことも分かっている。これは硫化フェノール添加剤に特有な一つの問題である。硫化フェノールを高濃度で使用し得ることが望ましいが、銅の腐食および/またはシールに関連する諸問題が、このような使用を阻んでいる。また、潤滑油処方物の灰分含有率を出来る限り低く保ち得ることが望ましい。硫化フェノールに関連する問題は、元素状硫黄を包含する、硫黄種の存在によるものと考えられており、これら硫黄種はしばしば不安定な、遊離のまたは活性な硫黄と呼ばれている。
従来技術においては、油処方物中で、エラストマーシールに暴露された場合にも、該シールの適合性に悪影響を与えることのない、および/または低い銅腐食性を呈する、潤滑油用の硫化フェノールおよび他の硫黄−含有添加剤を提供するために、種々の試みがなされている。
【0004】
米国特許第4,228,022 号には、硫化フェネート(sulfurized phenate)を十分なα−オレフィン(C15-18)と反応させて、最終生成物が実質的に残留遊離硫黄を含まず、結果として該生成物が腐食防止特性をもつこと、即ち該生成物が金属エンジン部材を腐食しないことを保証する方法が記載されている。使用できるα−オレフィンの濃度は、該フェネートを調製するのに使用したフェノールの量を基準として、25重量%までである。より一般的には、該オレフィンは、好ましくは10〜30個の炭素原子、特に15〜20個の炭素原子を含み、かつ直鎖または分枝鎖何れであってもよいことが示されている。エラストマー材料の性能については議論されていない。
国際特許出願WO 85/04986 号明細書は、潤滑剤用の不安定な硫黄を含まない添加剤が、不安定なまたは活性な硫黄を含有する硫化フェノール添加剤を、銅、または銅と不安定な硫黄に対して反応性の他の物質とで、あるいはモノオレフィン、特にα−オレフィン(α−オレフィンは、好ましくは炭素原子数4〜30、特に10〜20のを含む)で処理することにより得ることができる、ことを示している。該オレフィンは、該硫化添加剤を基準として10重量%までであって、かつ存在する該活性硫黄を除去するのに十分な量でのみ使用される。不安定な硫黄−含有添加剤によって生ずる、金属の腐食性およびエラストマー材料の劣化は、実質的に排除することができる。具体的なエラストマー材料についての言及はなく、また実施例で言及しているオレフィンはC12、C15-18またはC16-18α−オレフィンである。
米国特許第4,309,293 号には、一塩化硫黄と置換フェノールとの反応によって誘導される硫化フェノールを、更にビニルエーテルと反応させる方法が記載されている。このビニルエーテルは、存在するフェノール性ヒドロキシル基と反応する。エラストマー材料の性能についてはなにも言及していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
該公知技術は、銅腐食の問題が存在する、潤滑油組成物中での硫化フェノールの使用に関連する該諸問題点を克服するために幾分かは進展したが、このような組成物の、エラストマーシールとの適合性およびより具体的にはニトリルシールとの適合性においては、比較的改善の度合が低かった。従って、シールとの適合性、特にニトリルシールとの適合性の点で更に改良された、硫化フェノール添加剤に対する、およびこのような添加剤の改良された製造法に対する需要がある。その上、潤滑油処方物中の塩素の存在に関連する上記問題を更に深刻なものとしない、かつ結果として硫化フェノールを高濃度で使用することを可能とする、このような添加剤および方法に対する需要もある。このことは、潤滑油処方物中で硫化フェノールを高濃度で使用することが、潤滑油処方物中の該灰分濃度に寄与する、金属含有洗浄剤および他の金属含有添加剤の濃度を減ずることを可能とするので、望ましいことである。これらの問題は、通常高濃度の硫黄−含有添加剤を必要とする、重量級ディーゼルエンジン用の潤滑油にとっては、特に重大である。重量級ディーゼルエンジン用の潤滑油は、典型的には3質量%(mass %)までの硫黄−含有化合物、例えば硫化フェノールを含むであろう。従って、エラストマーシールと適合性であり、かつまた潤滑油組成物の塩素含有率にそれ程寄与しない、該潤滑油組成物中で高濃度で使用できる、硫化フェノール添加剤に対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、本出願人はまた、硫化フェノール中間体を製造するための改良法をも見出し、該中間体は、本発明の硫化添加剤の製造のために有利に使用することができ、あるいはそれ自体潤滑油組成物における添加剤として、特に低濃度の塩素を含有する潤滑油組成物を処方するための添加剤として使用することができる。
従って、本発明はニトリルシールと適合性の、油溶性硫化フェノール添加剤の調製方法を提供し、該方法は以下の工程を含むことを特徴とする。即ち、
(i) 少なくとも100 ℃の温度にて、油溶性の活性硫黄含有硫化フェノール中間体と、該硫化フェノール中間体中に存在する活性硫黄との反応に必要とされる量よりも過剰量の、オレフィンまたはアセチレン系化合物とを一緒に反応せしめる工程、および
(ii)実質上全ての未反応オレフィンまたはアセチレン系化合物を除去する工程とを含む。
本発明は、また上記方法によって得ることのできる、ニトリルシールと適合性の、油溶性硫化フェノール添加剤をも提供する。
本発明は、更に潤滑油組成物を提供し、該組成物は主成分としての潤滑油と、上記方法によって得ることのできる油溶性硫化フェノール添加剤とを含む。
本発明は、また潤滑油濃厚物をも提供し、該濃厚物は1種以上の潤滑添加剤、並びに上記方法によって得ることのできる油溶性硫化フェノール添加剤および潤滑油を含む。
本発明は、更に潤滑油組成物の、該ニトリルエラストマーシール適合性および/または銅腐食特性を改善するための、上記方法によって得ることのできる油溶性硫化フェノール添加剤の使用法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の該油溶性硫化フェノール添加剤の調製において使用するのに適したオレフィンは、モノ−オレフィン、ジ−オレフィン、トリ−オレフィンまたはより高次のその同族体を包含する。適しているなる表現は、オレフィンが活性硫黄と反応可能であり、かつ本発明の方法で使用したかかるオレフィンの過剰分を、大幅な該硫化フェノール添加剤の分解を生ずることなしに、該反応混合物から除去できるような特性をもつことを意味する。好ましいオレフィンは、200 ℃までの沸点を有するもの、および最も好ましくは150 〜200℃の範囲の沸点を有するオレフィンである。
上記の要件を満たす任意のモノ−オレフィンを、本発明の添加剤の調製において使用できる。該モノ−オレフィンは未置換の脂肪族モノ−オレフィン(これは該オレフィンが炭素および水素のみを含むことを意味する)であり得、あるいは該モノ−オレフィンは1種以上の複素原子および/または複素原子含有基、例えばヒドロキシル、アミノ、シアノ等で置換されていてもよい。適当なシアノ置換モノ−オレフィンの一例は、フマロニトリルである。これらのモノ−オレフィンは、また例えばスチレンにおけるように、芳香族基で置換されていてもよい。該モノ−オレフィンは、例えばエステル、アミド、カルボン酸、カルボキシレート、アルカリル、アミジン、スルフィニル、スルホニルまたはその他の基を含むことができる。該モノ−オレフィンが脂肪族であり、かつ複素原子および/またはヒドロキシルまたはカルボキシレート基以外の複素原子含有基で置換されていないことが好ましい。これらのモノ−オレフィンは、分枝もしくは非−分枝であり得るが、これらは分枝していることが好ましい。分枝しているとは、該オレフィンが1以上の三級炭素原子、即ち少なくとも3つの他の炭素原子と結合している炭素原子を含むことを意味し、あるいは1種以上の複素原子または複素原子含有基が該オレフィン中に存在する場合には、結合しているこれら炭素原子の1以上が複素原子であり得る。
これらのモノ−オレフィンは、好ましくは4〜36および最も好ましくは8〜20個の炭素原子を含む。該モノ−オレフィンは、例えばα−オレフィンであってもよい。本発明の方法で使用可能なα−オレフィンの例は1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、1-ヘネイコセン、1-ドコセン、1-テトラコセン、1-ペンタコセン、1-ヘキサコセン、1-オクタコセンおよび1-ナノコセンを包含する。該α−オレフィンはα−オレフィン類の混合物、例えば以下のような市販品として入手できる混合物:C15-C18、C12-C16、C14-C16、C14-C18、C16-C20、C22-C28、C30+(ガルフオイル社(Gulf Oil Company)から入手できるガルフテン(Gulftene))であり得る。
【0008】
もう一つの組のモノ−オレフィンは、飽和脂環式リングと、1個の二重結合、例えば環外二重結合とを有するものである。該脂環式リングは、好ましくは少なくとも6個の炭素原子を含み、かつ有利には、該脂環式リングは3個のリング炭素原子と共に4-員環を形成する、メチレン架橋基によって置換されている。このような架橋基における該メチレン炭素原子は、好ましくは例えばβ−ピネンにおけるように、2個のメチル基で置換されていてもよい。モノ−オレフィンのその他の例は、α−ピネン、メチレンシクロヘキサン、カンフェン、およびメチレンシクロペンタン等、および不飽和化合物例えばアクリレート、メタクリレートおよびアクリルアミド誘導体等のアクリル酸の種々の誘導体等を包含する。
適当なモノ−オレフィンの一例は、プロピレンのC12 テトラマーである。他の適当なモノ−オレフィンは、例えばエチレンのオリゴマーを包含する。典型的なオリゴマーオレフィンは混合物であり、従ってオリゴマーモノ−オレフィンの混合物、例えばプロピレンオリゴマーの混合物等を使用することができる。
これらのジ−オレフィン、トリ−オレフィンおよび高次同族体は、オレフィンに関する上記の性能要件を満たす任意のオレフィンであり得る。好ましいジ−オレフィン、トリ−オレフィンおよび高次同族体は、以下の群から選択されるものである。即ち、
(a) 少なくとも2つの二重結合をもち、隣接する二重結合が2個の飽和炭素原子によって分離されている非−環式オレフィン、または
(b) 脂環式リングを含むオレフィンであって、該リングは少なくとも8個の炭素原子と少なくとも2個の二重結合を含み、その各二重結合はこれに最も近接した二重結合から、2個の飽和炭素原子によって分離されているようなオレフィン、から選択される。
群(a) の好ましいオレフィンは未置換または置換線状テルペン類である。本発明に従って使用する未置換の線状テルペン類は、式:(C5H8)n(ここで、nは少なくとも2である)で表すことができる。即ち、炭素および水素原子のみを含むテルペンである。未置換線状テルペンの一例は、スクアレン(ここで、上記式中のnは6)である。本発明で使用する線状テルペンに関して可能な置換基は、例えばヒドロキシル基である。適当な置換テルペンはファルナソール(farnasol)およびゲラニオールを包含し、ゲラニオールが好ましい。適当なジ−オレフィンのその他の例は、ジシクロペンタジエン、ジペンテン、1,3-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、メチルシクロペンタジエン、リモネンおよび1,4-シクロヘキサジエン並びにポリブタジエンを含む。
所望ならば、上記(b) 群のオレフィンは少なくとも3個の二重結合を含んでいてもよく、各二重結合の各端部は、各隣接する二重結合から、2個の飽和炭素原子によって分離されている。3個の二重結合をもつ適当な上記(b) 群のオレフィンの一例は、1,5,9-シクロドデカトリエンである。もう一つのトリエンの例はシクロヘプタトリエンである。
【0009】
添加剤を調製するために、本発明の方法において使用する該アセチレン系の化合物は、活性硫黄と反応性であり、かつ本発明の方法で使用したかかる化合物の過剰量を、生成する硫化フェノール添加剤を大幅に分解することなしに、反応混合物から除去し得るような諸特性をもつ化合物である。適当なアセチレン系材料の一例はフェニルアセチレンである。
本発明の方法で使用するのに好ましいオレフィンはジオレフィン、例えば上記(a) 群に規定したオレフィンであり、より好ましくは1,5-ジーオレフィン、例えば1,5-シクロオクタジエンおよびゲラニオールである。オレフィンがアセチレン系化合物にとって好ましい。
勿論、必要ならば、1種以上のオレフィンを使用することができる。2種以上のオレフィンを使用する場合、これら化合物は同一の群から選択されたものである必要はない。従って、例えば好ましくはないが、モノおよびジオレフィン混合物を使用することができる。
本発明による硫化フェノール添加剤の製造方法を実施するに際しては、該オレフィンまたはアセチレン系化合物および活性硫黄−含有硫化フェノール中間体を任意の順序で添加できる。かくして、例えば該オレフィンまたはアセチレン系化合物を、該硫化フェノール中間体を既に含む容器に導入することができ、あるいはその逆であってもよく、もしくはこれら2種の物質を同時に該反応容器に導入することができる。この工程は、反応体および/または生成物にとって適当な溶媒中で実施することができる。該溶媒とは、取り出しの際に、該生成物の安定性に影響を与えるなどの問題を生じない溶媒である。使用可能な溶媒の一例はSN150 ベースストック(basestock) である。幾つかの例においては、該オレフィンを十分な量で使用する場合には、該オレフィンは該反応用の溶媒として機能することもできる。
【0010】
本発明の添加剤を調製する方法においては、硫化フェノール中間体対オレフィンまたはアセチレン系化合物の質量比は、該オレフィンまたはアセチレン系化合物が常に、該中間体中に存在する活性硫黄との反応に必要とされる量よりも過剰となるように設定される。その正確な濃度は、該オレフィンまたはアセチレン系化合物の特性、即ち例えばこれがモノ−、ジ−またはトリ−オレフィンの何れであるか、その分子量および使用する該硫化フェノール中間体の分子量、その硫黄濃度および活性硫黄濃度に依存する。例えば、該オレフィンがC12 プロピレンテトラマーである場合、この比は1.3:1〜9:1の範囲内であることが好ましい。
該硫化フェノール中間体と該オレフィンまたはアセチレン系化合物との反応は120 ℃を越える高温、最も好ましくは120〜250 ℃の範囲の温度にて、0.5 〜60時間実施する。驚くべきことに、ニトリルシール適合性が、該反応において、高濃度で該オレフィンまたはアセチレン系化合物を使用することにより改善されることを見出した。従って、使用するオレフィンまたはアセチレン系化合物の濃度は、該硫化フェノール中間体中に存在する活性硫黄との反応に必要な化学量論量よりも少なくとも100%過剰であることが好ましい。最も好ましくは、存在する該活性硫黄に対する化学量論量よりも、少なくとも400%過剰で使用し、かつより好ましくは400〜800%過剰で使用する。該生成物の該ニトリルシールに対する適合性が、より高い温度および/またはより長い反応時間において改善されることをも見出した。
【0011】
未反応のオレフィンまたはアセチレン系化合物の実質的に全部を、好ましくは真空蒸留、後反応、またはその他の分離法によって除去する。使用する実際の方法は、使用する該オレフィンまたはアセチレン系化合物の特性に依存する。幾つかの情況においては、該未反応のオレフィンまたはアセチレン系化合物は、単に該反応容器に真空を印加することにより除去でき、あるいは該反応混合物の温度を高めるために加熱する必要があるかもしれない。好ましくは、該未反応物質は真空蒸留によって除去され、場合によっては加熱される。他の材料、例えば揮発性物質は、真空蒸留を利用した場合には、該未反応のオレフィンまたはアセチレン系化合物と同時に除去することができる。実質的に全部の未反応のオレフィンまたはアセチレン系化合物とは、例えば真空蒸留等の技術を利用して除去することのできる割合を意味する。典型的には、該生成物中に残留する未反応のオレフィンまたはアセチレン系化合物の量は3重量%未満、好ましくは0〜3重量%、最も好ましくは0.5 重量%以下である。この残留物質は、例えば、オレフィンオリゴマー混合物を使用した場合、または例えばモノ−オレフィン類、ジ−オレフィン類混合物もしくはモノ−オレフィンとジ−オレフィンとの混合物を使用した場合には、正確には使用した該オレフィンまたはアセチレン系化合物の組成には対応しない。この残留物質は、主成分として、使用した元のオレフィン組成物または混合物中に存在するより高分子量の画分を含むことができる。例えば、該オレフィンがプロピレンテトラマー(これは、典型的にはオレフィン類の混合物である)である場合、過剰のオレフィンを除去した後の残留物質は、例えば高比率の、プロピレンのペンタマーおよびより高次の同族体を含む可能性がある。
実質的に全部の該未反応のオレフィンまたはアセチレン系化合物の除去が必要とされ、結果として、反応したオレフィンまたはアセチレン系化合物の添加剤を含む潤滑油組成物が、パネルコーカーテスト(Panel Coker test)において許容される性能を達成することを見出した。これは工業的な標準的ベンチテストであって、例えば酸化防止剤としての有効性および/または炭質析出物を該油中に分散した状態で維持することにより、該析出物の堆積を防止する能力を評価するために、潤滑油処方中の添加剤をスクリーニングするのに利用される。該過剰のオレフィンまたはアセチレン系化合物が除去されない場合には、該油の貧弱なパネルコーカー性能が観測される。これは、特にジ−オレフィンについて顕著な問題である。
【0012】
更に、本発明の添加剤の製造方法において使用する前に、該中間体をその反応混合物から単離しなくともよい可能性がある。例えば、本発明の好ましい方法を利用して、一塩化硫黄とフェノールとの反応が完結した際に、該中間体反応混合物の温度を、該オレフィンまたはアセチレン系化合物の反応温度即ち該反応を実施する温度にまで上昇する。この温度上昇は、該反応温度まで単調に温度増加する手段によって達成できる。このオレフィンまたはアセチレン系化合物は、この温度増加前に、その増加中にあるいはその後に、該中間体反応混合物に添加できる。
好ましい態様において、本発明の添加剤の製造法は、該オレフィンまたはアセチレン系化合物と該硫化フェノール中間体との間の反応用の触媒を使用する。適当な触媒は、硫化触媒および窒素含有塩基類である。好ましい触媒は窒素含有塩基類である。適当な窒素含有塩基触媒は、市販品として入手できる物質である、窒素を含有し灰分を含まない分散剤、例えばマンニッヒ塩基を包含し、またヒドロカルビルアシル化剤とアミンとの反応生成物、特にポリイソブテニルサクシンイミド類を使用できる。これらは公知の任意の経路に従って調製できる。該分散剤による、該添加剤への塩素の組み込みを、例えばポリイソブテニルサクシンイミドの調製によって最小化することが好ましい。ここで、該サクシンイミドの調製においては、塩素を使用することなしに、アミンと反応させて最終的な該分散剤を調製する前に、ポリイソブテンを直接無水マレイン酸と反応させる、所謂加熱工程を利用してポリイソブテニル琥珀酸無水物が調製される。他の適当な窒素含有塩基類は単純なアミン類、例えばモノ−、ジ−およびトリ−ブチルアミン、ポリアミン類、例えばジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)およびテトラエチレンペンタミン(TEPA)、環状アミン類、例えばモルホリンおよび芳香族アミン類、例えば市販のジフェニルアミン等を包含する。特に適したアミンはn-オクチルアミンである。また、驚くべきことに、ニトリルシール適合性が、高濃度で触媒を使用して、本発明の添加剤を調製することによっても改善されることを見出した。
【0013】
本発明の更なる局面において、オレフィンまたはアセチレン系化合物との該反応は、硫化化合物、例えば本発明の硫化中間体または一塩化硫黄、二塩化硫黄またはその混合物を使用して調製される任意の硫化化合物中の塩素濃度を減ずるという利点を有する。
従って、本発明は、更に油溶性の硫化化合物の塩素含有率を低下する方法をも提供し、該方法は以下の諸工程を含むことを特徴とする。
(i) 以下の成分を少なくとも100 ℃の温度にて一緒に反応する工程と:
a)一塩化硫黄、二塩化硫黄またはその混合物を使用して調製され、かつ塩素含有率100ppm以上を有する油溶性の硫化化合物、および
b)オレフィンまたはアセチレン系化合物、
(ii) 実質的に全部の未反応のオレフィンまたはアセチレン系化合物を除去する工程と、を含む。
この反応は、S2Cl2を使用して調製された硫化フェノール中の塩素濃度を低下するのに特に有用であることが分かっており、また特に以下に説明する本発明の方法によって調製した硫化中間体を使用する場合に有効である。かくして、500ppm以下および300ppm程度まで並びに100ppm程度の塩素濃度が、オレフィンまたはアセチレン系化合物との反応後の、最終添加剤中で達成できる。この濃度低下の程度は、該硫化添加剤とオレフィンまたはアセチレン系化合物との間のより高い反応温度を使用することにより増大される。この工程において、該硫化添加剤は硫化フェノールであることが好ましく、また最も好ましくは以下に説明するように本発明の硫化された中間体である。
【0014】
本発明に従って油溶性の硫化フェノール添加剤の調製で使用する、該油溶性の活性硫黄−含有硫化フェノール中間体は、フェノールのモノ−、ジ−およびポリスルフィドまたはヒドロカルビル基置換フェノール、例えばアルキルフェノールを包含する。このヒドロカルビル基置換フェノールは、その芳香族リング当たり1以上のヒドロカルビル基を含むことができる。
添加剤の調製において本発明の方法で使用するのに適した中間体は、以下の一般式I:
【化1】

(ここで、Rはヒドロカルビル基を表し、nは0〜20の整数であり、yは0〜4の整数であり、各芳香核毎に異なっていてもよく、またXは1〜7、典型的には1〜4の整数である)で示される。ヒドロカルビル基1個当たりの平均炭素原子数は、該硫化されたヒドロカルビル基置換フェノール中間体の油中での十分な溶解度を保証するために十分なものである。Rによって表される個々の基は、同一でも異なっていてもよく、また1〜50、好ましくは5〜30および最も好ましくは8〜20個の炭素原子をもつことができる。好ましくは、ヒドロカルビル基Rは、アルキル基を表す。好ましい硫化アルキルフェノール中間体は、nが0〜4であり、yが1または2であり、またこれらは芳香核毎に異なっていてもよく、xが1〜4であり、Rが8〜20個、最も好ましくは9〜12の炭素原子をもつような中間体である。これらの硫化ヒドロカルビル基置換フェノール中間体は、上記一般式の中間体の混合物であってもよく、また硫化されていないフェノール系物質を含んでいてもよい。この硫化されていないフェノール系物質の濃度を、最小限度に維持することが好ましい。最終生成物は20重量%まで、好ましくは12重量%までの硫化されていないフェノール系物質を含むことができる。好ましい一群の硫化ヒドロカルビル基置換フェノール中間体は、硫黄含有率4〜16質量%、好ましくは4〜14質量%および最も好ましくは6〜12質量%を有するものである。通常は種々の化合物の混合物を含むであろう該硫化添加剤は、典型的には少なくとも幾分かの遊離状態の、あるいは弱く結合した硫黄を含み、かくして該硫黄はニトリルエラストマーシールを攻撃し、従って活性硫黄と呼ばれる。この活性硫黄は、例えばxが一般式Iにおいて3以上である場合、ポリスルフィド形状で存在することができ、この形状において、該活性硫黄は、典型的には2重量%まであるいはそれ以上の濃度で存在する可能性がある。
【0015】
これらのヒドロカルビル基置換フェノール中間体は、当分野で周知の方法によって調製できる。例えば、硫化試薬の存在下での、ヒドロカルビル基置換フェノールの反応によって得ることができ、ここで該硫化試薬は、xが1〜7である場合には、フェノール間に架橋基S x を導入する試薬である。かくして、この反応は元素状硫黄またはそのハロゲン化物、例えば一塩化硫黄または二塩化硫黄を使用して実施できる。
該ヒドロカルビル基置換フェノールは、以下の一般式IIの任意のフェノールであり得る:
【化2】

ここで、Rおよびyは上記定義通りである。一般式IIのフェノールの混合物を使用することができる。
【0016】
該油溶性硫化フェノール中間体が、一塩化硫黄から誘導され、かつ低い塩素含有率をもつことが好ましく、かくして更なる本発明の局面において、本発明は1000 ppm未満の塩素を含有し、かつ少なくとも4重量%の硫黄を含有する、油溶性硫化フェノール中間体の製法を提供し、該方法は以下の工程を含む。即ち、a)一塩化硫黄と、少なくとも1種の一般式IIのフェノールとを、反応混合物中にて、-50 〜250 ℃の範囲の温度で反応させる工程を含む。
ここで、反応混合物中におけるモル比、フェノール:S2Cl2、は1.7:1 以上である。
油溶性の硫化中間体調製のためのこの好ましい方法においては、一般式IIのフェノールにおけるRは5〜30および最も好ましくは8〜20の炭素原子を含み、またyは1または2である。該フェノールはフェノール類の混合物であり、その平均分子量164 以上、好ましくは200 以上および最も好ましくは220 以上、例えは250以上であることが好ましい。最も好ましい混合物は、一般式IIのモノ−およびジ−置換フェノールの混合物、例えばp-およびo-/p- 置換フェノールの混合物である。好ましくは、該中間体の製造方法において、該フェノール系化合物は20〜90重量%のp-モノ−置換フェノール化合物および10〜80重量%の少なくとも1種のジ−置換フェノール化合物(少なくとも1個の自由な反応性のオルト位置をもつ)、好ましくはo-/p- ジ−置換フェノール化合物を含む。この方法で使用する一般式IIのフェノール類はヒンダードフェノールではないが、これらは少量の、例えば25重量%未満、例えば10重量%未満のヒンダードフェノールを含有するフェノール類の混合物であり得る。ヒンダードフェノールなる用語は、オルトおよびパラ位の反応サイトの全てが置換されているフェノール類、あるいは両オルト位またはオルト位の一方およびパラ位が置換されている立体的に障害をもつフェノールを意味し、何れの場合も、該置換基はt-アルキル基、例えばt-ブチル基である。モノ−およびジ−アルキル置換フェノール、例えばノニル置換フェノールの所定の混合物に対して、該モノ−置換フェノールは少なくとも20重量%、好ましくは10〜65重量%の範囲内であることが好ましい。平均分子量が250 以上300 未満である場合、該フェノール混合物は50重量%以上、好ましくは60重量%以上、例えば65重量%のモノ−置換フェノールを含むことが好ましい。該平均分子量が300 を越える場合には、該フェノール混合物は50重量%以上、好ましくは70重量%以上、例えば80重量%のジ−置換フェノールを含むことが好ましい。フェノール対一塩化硫黄のモル比は2以上であることが好ましく、また最も好ましくは2.2 以上である。
【0017】
本発明のこの局面において、この改良方法は中間体を生成し、該中間体は低レベルで塩素を含有し、しかも同時に所定の硫黄濃度およびフェノール物質の転化率の達成を可能とする。好ましくは、該塩素含有率は900ppm以下、例えば800ppm以下および最も好ましくは500ppm以下である。硫黄濃度、該未硫化物質を最小に維持するために必要なフェノール物質の転化率および該塩素濃度は関連性を有している。塩素濃度を低く保ち、かつ硫黄含有率を高めしかも所定の転化率を達成することは困難である。というのは、より多くの塩素を含有する出発物質、即ちS2Cl2 が、通常これらの目標を達成するのに必要とされるからである。この作業は低塩素含有率を達成し、同時に有害な影響を他の2つの因子に及ぼさないようにしなければならない。該中間体の製造法において、該反応は-15 または-10 〜150 ℃、例えば20〜150 ℃、および好ましくは60〜150 ℃の範囲の温度にて実施することが好ましい。最も好ましくは、この反応は110 ℃未満の温度にて実施することが好ましく、幾つかのフェノールについて110 ℃未満の反応温度の使用は、低濃度の塩素を含有する中間体を与える。典型的には、この反応温度は60〜90℃の範囲内にある。好ましくは、該一塩化硫黄は、4X10-4〜15-4cm3min-1g-1フェノールなる割合で、該反応混合物に添加される。この反応混合物が、この添加中に十分に混合されていない場合には、該中間体の塩素含有率は増大する可能性がある。かくして得られる生成物は、好ましくは少なくとも4%、例えば4〜16%、より好ましくは4〜14% および最も好ましくは少なくとも6%、例えば7〜12% の塩素含有率を有する。この方法は、該中間体生成物中の塩素のレベルを減ずるために、複雑な後反応精製段階を必要としないという利点をもつ。
一塩化硫黄から誘導された該好ましい中間体を、本発明による硫化フェノール添加剤の上記製造方法で使用した場合には、該オレフィン処理のために、ニトリルシール適合性添加剤を与えるばかりか、低塩素含有率をもつ添加剤を与える。この硫化フェノール添加剤が、これらの好ましい硫化中間体から誘導された場合には、該最終の添加剤生成物は低濃度、即ち1000 ppm未満、好ましくは900ppm以下、例えば800ppm以下および最も好ましくは500ppm以下の塩素を含むものであり得る。
【0018】
本発明の添加剤または中間体は、アルカリまたはアルカリ土類金属塩または化合物との反応によって、フェネートおよび過塩基性のフェネートを調製するのに利用できる。本発明の中間体またはかかる中間体から誘導される添加剤から導かれた、該フェネートおよび過塩基性のフェネートは、また低塩素含有率、例えば1000 ppm未満の、これらを調製するのに使用した該添加剤または中間体中に存在する程度に低いあるいはそれよりも低い塩素含有率をもつことができる。フェネートは実質的に化学量論量の金属を含むことができ、この場合該フェネートは通常正塩または中性塩として記載され、また典型的には0〜80の範囲の全塩基数またはTBN(ASTM D2896により測定した如き) を有するであろう。過剰量の金属化合物、例えば酸化物または水酸化物を、酸性ガス、例えば二酸化炭素と反応させることにより、大量の金属塩基を含むことができる。得られる過塩基性のフェネートは、金属塩基(例えば、炭酸塩)ミセルの外部層として、中和された洗浄剤を含む。このような過塩基性のフェネートは、150 以上、典型的には250 〜450 またはそれ以上のTBN を有する。これら金属は、特にアルカリまたはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムおよびマグネシウムである。最も一般的に使用される金属はカルシウムおよびマグネシウムであり、これらは両者共に、潤滑剤中で使用されるフェネート中に存在でき、またカルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物であってもよい。特に有利なフェネートは、TBN 50〜450 の中性および過塩基性カルシウムフェネートおよび硫化フェネートである。
フェノールおよび硫化フェノールの金属塩は、適当な金属化合物、例えば酸化物または水酸化物との反応によって調製され、また中性もしくは過塩基性生成物は当分野で周知の方法により得ることができる。
【0019】
本発明の潤滑油添加剤および中間体は油溶性であるか、あるいは(以下で言及する幾つかの他の添加剤と共通であるが)適当な溶媒の助けによって油中に溶解し得、あるいは安定に分散し得る物質である。
本発明は、また潤滑油組成物をも提供し、該組成物は大量の潤滑油と、上記方法によって得ることのできる、少量の油溶性硫化中間体を含む。
本発明は、更に潤滑油濃厚物をも提供し、該濃厚物は少量の潤滑油と、上記方法によって得ることのできる、大量の油溶性硫化中間体を含む。
本発明は、更に低塩素含有率の潤滑油組成物をも提供し、該組成物は、
a)潤滑粘度をもつ油、
b)塩素含有率1000 ppm未満の、1種以上の硫化中間体または硫化添加剤、
c)非−ハロゲン化ポリマーから調製された1種以上の灰分を含まない分散剤を含有し、該潤滑油組成物の塩素含有率は100ppm以下である。
本発明は、更に潤滑油濃厚物を提供し、該濃厚物は、
a)潤滑油と、
b)塩素含有率1000 ppm未満の、少なくとも1種の硫化中間体または硫化添加剤とを含み、該濃厚物中に存在する塩素は、該濃厚物から調製される低塩素含有率の潤滑油組成物がl00ppm未満の塩素を含有するようなレベルにある。
この低塩素含有率の潤滑油組成物は、50 ppm以下の、最も好ましくは10 ppm以下の、例えば5ppm以下の塩素を含有することが好ましい。該濃厚物は、更に非−ハロゲン化ポリマーから調製された、1種以上の灰分を含まない分散剤をも含むことが好ましい。
【0020】
本明細書で使用するような、油溶性、溶解性または安定に分散できるなる用語は、該添加剤または中間体が、あらゆる比率で、油中に、必ずしも可溶性、溶解性、混和性または懸濁可能であることを意味しない。しかしながら、これらは、例えば該油を使用する環境において、その意図した効果を発揮するのに十分な程度に、油中に可溶性または安定的分散性であることを意味する。更に、他の添加剤の付随的な配合は、必要に応じて、特定の添加剤または中間体の高濃度での配合を可能とする場合がある。
本明細書に記載する本発明の添加剤および中間体は、任意の有利な方法で、油中に配合できる。かくして、これらを所定の濃度レベルで、場合によっては適当な溶媒、例えばトルエン、シクロヘキサンまたはテトラヒドロフランの助けによって、該油中に分散または溶解することにより、これらを直接該油中に添加できる。幾つかの場合には、配合は室温にて実施でき、他の場合には有利には例えば100 ℃までの高温度下で実施できる。
【0021】
該添加剤および中間体と共に使用することのできるベースオイルは、火花点火および圧縮点火式内燃機関、例えば自動車およびトラックのエンジン、海洋および鉄道走行用のディーゼルエンジン等のクランクケース潤滑油で使用するのに適したものを包含する。
合成ベース油はジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコールおよびアルコール、ポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、燐酸の有機エステルおよびポリシリコーン油を包含する。
天然のベース油は、無機潤滑油を包含し、これらはその源に関連して、例えばこれらがパラフィン系、ナフテン系、混合即ちパラフィン系−ナフテン系混合物であるかどうか、並びにその製造に使用した方法、例えば蒸留範囲、直留またはクラッキング、ハイドロリファイニング、溶媒抽出等に関して広範囲で変化する可能性がある。
より具体的には、使用可能な天然潤滑油ベース原料油は直留無機潤滑油またはパラフィン系、ナフテン系、アスファルト系または混合ベース原油由来の蒸留物であり得る。また、必要ならば種々のブレンド油、例えば残油、特にアスファルト成分が除去されたものを使用できる。該油は任意の適当な方法、例えば酸、アルカリの使用、および/またはクレーまたは他の試薬例えば塩化アルミニウムを使用することにより精錬されていてもよく、あるいは溶媒例えばフェノール、二酸化硫黄、フルフラール、ジクロロジエチルエーテル、ニトロベンゼン、またはクロトンアルデヒドによる溶媒抽出によって製造した抽出油であってもよい。
該潤滑油ベース原料油は、有利には100 ℃において、約2.5 〜約12 cSt、即ちmm2/sec および好ましくは約3.5 〜約9 cSt、即ちmm2/sec を有する。
本明細書に記載する本発明の添加剤および中間体は、潤滑油組成物において使用でき、該組成物は典型的には大量の潤滑油および典型的には少量の該添加剤を含む。付随的な添加剤を、該組成物に配合して、特定の要件を満足させることができる。潤滑油組成物に含めることのできる添加剤の例は、粘度指数改良剤、腐食防止剤、酸化防止剤、摩擦改善剤、分散剤、洗浄剤、金属腐食防止剤、耐磨耗性付与剤、流動点降下剤および消泡剤である。
【0022】
該灰分を含まない分散剤は、油溶性ポリマー型炭化水素骨格を含み、該骨格は分散すべき粒子と結合できる官能基を有する。典型的には、該分散剤はアルコール、アミン、アミド、しばしば架橋基を介して該ポリマー骨格に付着したエステル極性部分を含む。該灰分を含まない分散剤は、例えば油溶性塩、エステル、アミノ−エステル、アミド、イミドおよび長鎖炭化水素で置換されたモノまたはジカルボン酸またはその無水物のオキサゾリン類、長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体、直接結合したポリアミンを有する長鎖脂肪族炭化水素、および長鎖置換フェノールとホルムアルデヒドおよびポリアルキレンポリアミンを縮合することにより形成されるマンニッヒ縮合生成物から選択することができる。
該油溶性ポリマー型炭化水素骨格は、典型的にはオレフィンポリマーまたはポリエン、特に多量のモル量(即ち、50モル%を越える量)のC2〜C18オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、オクテン-1、スチレン)および典型的にはC2〜C5オレフィンである。この油溶性ポリマー型炭化水素骨格は、ホモポリマー(例えば、ポリプロピレンまたはポリイソブチレン)または2種以上のこのようなオレフィンのコポリマー(例えば、エチレンとα−オレフィン、例えばプロピレンまたはブチレンとのコポリマーまたは2種の異なるα−オレフィンのコポリマー)であり得る。その他のコポリマーは、少量のモル量の該コポリマー用のモノマー、例えば1〜10モル%がα,ω−ジエン、例えばC3〜C22非−共役ジオレフィンであるもの(例えば、イソブチレンとブタジエンとのコポリマー、エチレン、ブロピレンおよび1,4-ヘキサジエンまたは5-エチリデン-2- ノルボルネンのコポリマー)を包含する。典型的に700 〜5000の範囲の平均分子量(Mn)avを有するアタクチックプロピレンオリゴマーも使用でき、これらは例えばEP-A-490454 号に記載されているもの、並びにヘテロポリマー、例えばポリエポキシド等である。
好ましい1群のオレフィンポリマーは、ポリブテン類および特にポリイソブテン類(PIB) またはポリ-n- ブテン、例えばC4精油所流出流の重合により調製できるものである。他の好ましい群のオレフィンポリマーは、末端ビニリデン不飽和の高い度合 (例えば、)30%)を有する、エチレン/α−オレフィン(EAO) コポリマーおよびα−オレフィンホモ−およびコ−ポリマーである。即ち、該ポリマーは以下の構造を有する:
P-HC(R)=CH2
ここで、Pは該ポリマー鎖であり、RはC1〜C18 アルキル基、典型的にはメチルまたはエチル基である。好ましくは、該ポリマーは、少なくとも50% の、末端ビニリデン不飽和度をもつ該ポリマー鎖を有する。この型のEAO コポリマーは、好ましくは1〜50重量%のエチレン、およびより好ましくは5〜48重量%のエチレンを含有する。このようなポリマーは、1以上のα−オレフィンを含み、かつ1種以上のC3〜C22 のジオレフィンを含むことができる。また、有用なのは種々のエチレン含有率をもつEAO の混合物である。異なるポリマー型、例えばEAO およびPIB を、混合または配合でき、並びにポリマーは(Mn)avにおいて異なっていてもよく、これらを由来とする成分を混合しまたは配合することができる。
【0023】
適当なオレフィンポリマーおよびコポリマーを、種々の接触重合法により調製することができる。一方法においては、炭化水素供給原料流、典型的にはC3〜C5モノマーを、ルイス酸触媒および場合により触媒プロモーター、例えばエチルアルミニウムジクロリド等の有機アルミニウム触媒と、HCl 等の随意のプロモーターの存在下で、カチオン重合する。最も一般的には、ポリイソブチレンポリマーは、ラフィネート(Raffinate) I精油所供給原料流から誘導される。種々の形状の反応器、例えば環状または攪拌式タンク反応器を使用でき、並びに均質触媒系に加えて、固定床触媒系を使用することもできる。このような重合法および触媒は、例えばUS-A 4,935,576、US-A 4,952,739、US-A 4,982,045およびUK-A 2,001,662に記載されている。
公知のチーグラー−ナッタ重合法を利用して、分散剤および他の添加剤を調製する際に使用するのに適したオレフィンポリマーを得ることも可能である。しかしながら、好ましいポリマーは、少なくとも1種のメタロセン(例えば、シクロペンタジエニル−遷移金属化合物)を含む特定の型のチーグラー−ナッタ触媒および好ましくは助触媒または活性化剤、例えばアルモキサン(alumoxane) 化合物またはイオン化するイオン性活性化剤、例えばトリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロンの存在下で、適当なモノマーを重合することにより調製できる。
【0024】
メタロセン触媒は、例えば以下の式で示される、バルキーなリガンドをもつ遷移金属化合物である:
[L]m M[A]n
ここで、Lはバルキーなリガンドであり、Aは脱離基であり、Mは遷移金属であり、mおよびnは全リガンドの原子価が該遷移金属の原子価となるような値である。好ましくは、この触媒は4配位であって、該化合物は1+ 原子価状態にイオン化可能である。
該リガンドLおよびAは、相互に架橋されていてもよく、また2つのリガンドAおよび/またはLが存在する場合、これらは架橋されていてもよい。該メタロセン化合物は、2以上のリガンドL(これはシクロペンタジエニルリガンドまたはシクロペンタジエニル由来のリガンドであり得る)を有する完全なサンドイッチ型の化合物であり、またこれらは1つのこのようなリガンドLを有する半サンドイッチ型の化合物であり得る。このリガンドは、単核または多核であり得、あるいは該遷移金属にη-5結合できる任意の他のリガンドであり得る。
1以上の該リガンドは、該遷移金属原子に対してπ結合することができ、該遷移金属は周期律表の第4、5または6群の遷移金属および/またはランタニドまたはアクチニド遷移金属であり得、ジルコニウム、チタンおよびハフニウムが特に好ましい。
該リガンドは置換または未置換であり得、また該シクロペンタジエニルリングのモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ−置換が可能である。場合により、該置換基は、該リガンドおよび/または脱離基および/または遷移金属間の1以上の架橋として機能し得る。このような架橋は、典型的には1以上の炭素、ゲルマニウム、珪素、リンまたは窒素原子−含有基を含み、好ましくは該架橋は架橋されている部分間に1原子の結合が配置されるが、該当する原子は他の置換基をもつことができ、またしばしばこのような置換基をもつ。
該メタロセンは、また好ましくは助触媒によって置換される、置換可能なリガンド、即ち脱離基をも含むことができ、該脱離基は通常広範囲のヒドロカルビル基およびハロゲン原子から選択される。
このような重合、触媒、並びに助触媒または活性化剤は、例えば米国特許第4,530,914 号、同第4,665,208 号、同第4,808,561 号、同第4,871,705 号、同第4,897,455 号、同第4,937,299 号、同第4,952,716 号、同第5,017,714 号、同第5,055,438 号、同第5,057,475 号、同第5,064,802 号、同第5,096,867 号、同第5,120,867 号、同第5,124,418 号、同第5,153,157 号、同第5,198,401 号、同第5,227,440 号、同第5,241,025 号、USSN 992,690(1992年12月17日付け出願)、EP-A-129,368、EP-A-277,003、EP-A-277,004、EP-A-420,436、EP-A-520,732、WO91/04257、WO92/00333、WO93/08199、WO93/08221およびWO94/07928に記載されている。
【0025】
この油溶性ポリマー型炭化水素骨格は、通常300 〜20,000の範囲の数平均分子量(Mn)avをもつであろう。このポリマー骨格の(Mn)avは、好ましくは500 〜10,000、より好ましくは700 〜5,000 の範囲内にあり、その用途は主として分散剤としての機能をもつ成分を調製することにある。比較的低分子量(例えば、(Mn)av=500〜1500)および比較的高分子量(例えば、(Mn)av=1500〜5000またはそれ以上)のポリマー両者は、分散剤の製造にとって有用である。分散剤において使用するのに特に有用なオレフィンポリマーは1500〜3000の範囲の(Mn)avをもつ。該油添加剤成分が粘度改良作用をももつように意図されている場合には、典型的には2000〜20000 の(Mn)avをもつ高分子量のポリマーを使用することが望ましく、また該成分が、主として粘度改良剤として機能するように意図されている場合には、より高分子量、例えば20,000〜500,000 あるいはそれ以上の(Mn)avを有していてもよい。更に、分散剤を調製するのに使用する該オレフィンポリマーは、ポリマー鎖当たり約1個の二重結合を、好ましくは末端二重結合として有する。
ポリマー分子量、具体的には(Mn)avは、種々の公知の技術を使用して測定できる。一つの有利な方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC) であり、これは付随的に分子量分布に関する情報をも提供する (W.W.ヤウ(Yau),J.J.カークランド(Kirkland),D.D.ブライ(Bly),モダーンサイズイクスクルージョンクロマトグラフィー(Modern Size Exclusion Liquid Chromatography)),ジョンウイリー&サンズ,N.Y.,1979)。もう一つの、特に低分子量ポリマーのための有用な方法は、蒸気圧浸透圧法である(例えば、ASTM D3592を参照)。
【0026】
該油溶性ポリマー型炭化水素骨格は、該ポリマーの骨格に、あるいは該ポリマー骨格からの1以上のペンダント基として官能基を組み込むように官能性を付与することができる。この官能基は、典型的には極性基であり、また例えばP、O、S、N、ハロゲン原子またはホウ素原子等のヘテロ原子を1個以上含むことができる。これは、置換反応を介して該油溶性ポリマー型炭化水素骨格の飽和炭化水素部分に、または付加または環付加反応を介してオレフィン部分に結合させることが可能である。また、該官能基は、該ポリマー鎖末端の酸化または開裂(例えば、オゾン分解におけるように)に関連して、該ポリマー中に組み込むことができる。
有用な官能性付与反応は、オレフィン結合における該ポリマーのハロゲン化およびそれに引き続き行われる該ハロゲン化ポリマーとエチレン性不飽和含有化合物との反応(例えば、該ポリマーをマレイン酸またはその無水物と反応させるマレイン酸エステル化反応)、ハロゲン化を含まない、「エン」反応による該ポリマーと不飽和官能性化合物との反応、該ポリマーと少なくとも1つのフェノール基との反応(これは、マンニッヒ塩基−型の縮合における誘導体形成を可能とする)、不飽和点における、該ポリマーと一酸化炭素との、コッホ(Koch)型反応を利用した反応(イソまたはネオ位置へのカルボニル基の導入)、ラジカル触媒を使用した、ラジカル反応による、該ポリマーと該官能性が付与された化合物との反応、チオカルボン酸誘導体との反応、および該ポリマーの、空気酸化法、エポキシド化、クロロアミノ化またはオゾン分解による反応を包含する。該ポリマーがハロゲン化されていないことが好ましい。
【0027】
次いで、この官能性の付与された油溶性ポリマー型炭化水素骨格は、更に求核試薬、例えばアミン、アミノアルコール、アルコール、金属化合物またはその混合物により誘導体形成に付され、対応する誘導体が形成される。
官能性付与ポリマーを誘導するのに有用なアミン化合物は、少なくとも一つのアミノ基を含み、かつ1以上の付随的なアミノまたは他の反応性のもしくは極性の基を含むことができる。これらのアミンはヒドロカルビルアミン類であり得、またヒドロカルビル基が他の基、例えばヒドロキシル基、アルコキシ基、アミド基ニトリル基、イミダゾリン基等を含む、主としてヒドロカルビルアミン類であり得る。特に有用なアミン化合物は、モノ−およびポリ−アミン類、例えば分子内に、約2〜60、有利には2〜40(例えば、3〜20)の全炭素原子数および約1〜12、有利には3〜12、および好ましくは3〜9の窒素原子数をもつ、ポリアルキレンおよびポリオキシアルキレンポリアミン類を包含する。アミン化合物の混合物が有利に使用でき、その例はアルキレンジハライドとアンモニアとの反応によって調製されるものである。好ましいアミン類は、脂肪族飽和アミンであり、例えばl,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、ポリエチレンアミン類、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、およびポリプロピレンアミン類、例えば1,2-プロピレンジアミン、およびジ-(1,2-プロピレン) トリアミンを包含する。
他の有用なアミン化合物は、1,4-ジ(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミン類、およびイミダゾリン類等の複素環式窒素原子含有化合物を包含する。特に有用なアミン群は、米国特許第4,857,217 号、同第4,956,107 号、同第4,963,275号および同第5,229,022号に記載されているような、ポリアミドおよび関連するアミド−アミン類である。同様に有用なアミン化合物は、米国特許第4,102,798号、同第4,113,639号および同第4,116,876号並びに英国特許第989,409号に記載されているような、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン(THAM)である。デンドリマー類、星状アミン類、および櫛状構造のアミン類も、使用できる。同様に、米国特許第5,053,152 号に記載されている縮合アミン類を使用することも可能である。該官能性を付与したポリマーを、EP-A 208,560、米国特許第4,234,435 号および同第5,229,022 号に記載のような公知の技術に従って、アミンと反応させる。
この官能性が付与された油溶性ポリマー型炭化水素骨格は、またヒドロキシル化合物、例えばモノヒドロキシおよびポリヒドロキシアルコールと、あるいは芳香族化合物、例えばフェノール類およびナフトール類と反応させて誘導体形成することができる。多価アルコールは、好ましくは例えばアルキレングリコールであり、ここで該アルキレン基は2〜8個の炭素原子をもつ。他の有用な多価アルコールはグリセロール、グリセロールモノーオレエート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノメチルエーテル、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびこれらの混合物を包含する。エステル分散剤も、不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、シンナミルアルコール、プロパルギルアルコール、1-シクロヘキサン-3-オール、およびオレイルアルコールから誘導できる。灰分を含まない分散剤を製造し得るアルコールの更に別の群は、エーテル−アルコールであり、その例はオキシ−アルキレンおよびオキシ−アリーレンを包含する。アルキレン基が1〜8個の炭素原子を有する、150 までのオキシ−アルキレン基をもつエーテル−アルコールにより例示される。該エステル分散剤は琥珀酸のジエステルまたは酸性エステル、即ち琥珀酸の部分エステル、並びに部分的にエステル化された多価アルコールまたはフェノール、即ち遊離のアルコールまたはフェノール性ヒドロキシル基をもつエステルであり得る。エステル分散剤は数種の公知法の何れか、例えば米国特許第3,381,022 号に記載の方法によって調製できる。
【0028】
灰分を含まない分散剤の好ましい群は、琥珀酸無水物基で置換され、かつポリエチレンアミン(例えば、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレン (ジ)(ペンタ) ミン(?)、ポリオキシプロピレンジアミン)アミノアルコール、例えばトリメチロールアミノメタンおよび場合により付随的な反応体、例えばアルコールおよび反応性金属、例えばペンタエリスリトールおよびその組み合わせ)と反応させたポリイソブチレンから誘導されるものを包含する。同様に有用なものは、米国特許第3,275,554 号および同第3,565,804 号に示された如き長鎖脂肪族炭化水素に、ポリアミンが直接結合している分散剤であり、ここでハロゲン化炭化水素上のハロゲン原子は種々のアルキレンポリアミンで置換される。
灰分を含まない分散剤のもう一つの群は、マンニッヒ塩基縮合生成物を含む。一般的に、これらは、例えば米国特許第3,442,808 号に記載されているように、約1モルのアルキル−置換モノ−またはポリ−ヒドロキシベンゼンと、約1〜2.5 モルのカルボニル化合物(例えば、ホルムアルデヒドおよびパラホルムアルデヒド)と、約0.5 〜2モルのポリアルキレンポリアミンとを縮合させることにより調製される。このようなマンニッヒ縮合生成物は、該ベンゼン基上に長鎖の高分子量炭化水素(例えば、1500以上の(Mn)avをもつもの)を含むことができ、あるいは米国特許第3,442,808 号に記載のように、このような炭化水素を含有する化合物、例えばポリアルケニル琥珀酸無水物と反応させることができる。
メタロセン触媒系を使用して合成したポリマーを基にして、官能性を付与したおよび/または誘導体化したポリマーの例は、米国特許第5,128,056 号、同第5,151,204 号、同第5,200,103 号、同第5,225,092 号、同第5,266,223、USSN 992,192(1992年12月17日付け出願)、USSN 992,403(1992年12月17日付け出願)、USSN 070,752(1993年6月2日付け出願)、EP-A-440,506、EP-A-513,157およびEP-A-513,211に記載されている。以下の特許に記載されている官能性付与および/または誘導体化および/または後処理も、上記の好ましいポリマーを官能化および/または誘導体化するのに適している:米国特許第3,087,936 号、同第3,254,025 号、同第3,275,554 号、同第3,442,808 号および同第3,565,804 号。
該分散剤は、更に種々の公知の後処理法、例えば一般的に米国特許第3,087,936 号および同第3,254,025 号に教示されているようなボレーション(boration)によって、更に後処理することができる。これは、アシル窒素−含有分散剤を、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ素酸およびホウ素酸のエステルからなる群から選ばれるホウ素化合物の、アシル化窒素含有組成物1モル当たり約0.1 原子比(atomic proportion) のホウ素乃至、該アシル化窒素含有組成物の窒素1原子比当たり、約20原子比のホウ素を与える量で、処理することにより、容易に達成される。有利には、該分散剤は、該ホウ素化アシル窒素原子含有化合物の全重量基準で、約0.05〜2.0 重量%、例えば0.05〜0.7 重量%のホウ素を含有する。該生成物中に脱水ホウ素酸ポリマー (主として(HBO2)3)として存在する該ホウ素は、該分散剤イミドおよびジイミドに付着して、アミン塩として、例えばジイミドのメタ硼酸塩として存在すると考えられている。ボレーションは、約0.05〜4、例えば1〜3重量%(アシル窒素原子含有化合物の重量基準で)のホウ素化合物を、好ましくは硼酸を、通常はスラリーとして、該アシル窒素原子含有化合物に添加し、次いで攪拌しつつ135 〜190 ℃、例えば140-170 ℃にて1〜5時間加熱し、引き続き窒素ガスによるストリッピングを行うことにより容易に実施できる。また、このホウ素処理は、該ジカルボン酸物質とアミンとの高温反応混合物に、水を除去しつつ、硼酸を添加することによっても実施できる。
【0029】
粘度改良剤(または粘度指数改良剤)は潤滑油に高温および低温作業性を付与する。分散剤としても機能する粘度改良剤も公知であり、かつ灰分を含まない分散剤について上記したようにして調製できる。一般的に、これらの分散性−粘度改良剤は官能性が付与されたポリマー(例えば、無水マレイン酸等の活性モノマーで後グラフト化された、エチレン−プロピレンコポリマー)であり、これらは次いで例えばアルコールまたはアミンで誘導体形成処理に付される。
該潤滑剤は公知の粘度改良剤によってまたはその不在下で、および分散性−粘度改良剤によってまたはその不在下で、処方できる。粘度改良剤として使用するのに適した化合物は、一般的にポリエステル類を包含する高分子量炭化水素ポリマーである。油溶性粘度改良ポリマーは、一般的に約10,000〜1,000,000、好ましくは20,000〜500,000 の範囲の重量平均分子量をもち、この分子量は(上記のような)ゲル浸透クロマトグラフィーまたは光散乱法によって測定できる。
適当な粘度改良剤の代表的な例は、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンと高分子量α−オレフィンのコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物とのコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルとのコポリマー、および部分水添スチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエンおよびイソプレン、/ブタジエンコポリマー、並びにブタジエンおよびイソプレンの部分水添ホモポリマーおよびイソプレン/ジビニルベンゼンコポリマーである。
【0030】
金属−含有または灰分−生成洗浄剤は、付着物を減じかつ除去する洗浄剤としての機能と、酸中和剤または防錆剤としての機能両者をもち、従って磨耗並びに腐食を減じ、かつエンジンの寿命を延長する。洗浄剤は、一般的に極性の頭部と長い疎水性の尾部を含み、該極性頭部は酸性有機化合物の金属塩を含む。該塩は実質的に化学量論量の金属を含むことができ、その場合該塩は通常正塩または中性塩として記載され、また典型的には全塩基数即ちTBN(ASTM D2896により測定される) 0〜80を有する。過剰の金属化合物、例えば酸化物または水酸化物と、酸性のガス、例えば二酸化炭素とを反応させることによって、大量の金属塩基を含めることができる。かくして得られる過塩基型洗浄剤は、金属塩基(例えば、炭酸塩)ミセルの外層として中性の洗浄剤を含む。このような過塩基型洗浄剤は、150 以上の、および典型的には250 〜450 またはそれ以上のTBN 値をもつことができる。
使用可能な洗浄剤は、油溶性の中性および過塩基型スルホネート類、フェネート類、硫化フェネート類、チオホスホネート類、サリチレート類、およびナフテネート類並びに金属、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムおよびマグネシウムの、他の油溶性カルボン酸塩類を包含する。最も一般的に使用される金属はカルシウムおよびマグネシウム(これら両者は潤滑剤中に使用されている洗浄剤中に存在することかできる)並びにカルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物である。特に有利な金属洗浄剤は、20〜450 のTBN を有する中性および過塩基型のカルシウムスルホネート類および50〜450 のTBN を有する中性および過塩基型のカルシウムフェネート類および硫化フェネート類である。
スルホネート類は、典型的には、石油の精留または芳香族炭化水素のアルキル化によって得られるような、アルキル置換芳香族炭化水素のスルホン化により得られるスルホン酸から調製できる。その例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニルまたはそのハロゲン化誘導体、例えばクロロベンゼン、クロロトルエンおよびクロロナフタレンのアルキル化によって得られるものである。このアルキル化は、触媒の存在下で、約3〜70以上の炭素原子を有するアルキル化剤を使用して実施できる。これらのアルキルスルホネートは、アルキル置換芳香族部分当たり、通常約9〜約80またはそれ以上の、好ましくは約16〜約60の炭素原子数を有する。
【0031】
該油溶性スルホネート類またはアルカリルスルホン酸は、金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、カーボネート、カルボキシレート、スルフィド、ハイドロスルフィド、ニトレート、ボレートおよびエーテルで中和することができる。金属化合物の量は該最終生成物の所定のTBN 値を勘案して選択されるが、典型的には約100〜220 重量% (好ましくは、少なくとも125 重量%)の範囲内にある。
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、しばしば耐磨耗性付与剤および酸化防止剤として使用される。該金属はアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアルミニウム、鉛、錫、モリブデン、マンガン、ニッケルまたは銅であり得る。亜鉛塩は、潤滑油中において、該潤滑油組成物全重量基準で、0.1〜10、好ましくは0.2 〜2重量%の量で、最も一般的に使用されている。これらは、まず通常は1種以上のアルコールまたはフェノールとP2S5とを反応させることにより、ジヒドロカルビルジチオ燐酸(DDPA)を生成し、次いでこの形成されたDDPAを亜鉛化合物で中和することにより調製できる。この亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、混合アルコールから調製することのできる、混合DDPAから製造できる。また、多数の亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートを製造し、その後混合することも可能である。
かくして、本発明で使用する該ジチオ燐酸含有二級ヒドロカルビル基は、一級および二級アルコールの混合物を反応させることにより調製できる。あるいはまた、多数のジチオ燐酸が調製でき、ここで一方の上のヒドロカルビル基は、性能上完全に二級であり、かつ他方の上のヒドロカルビル基は、性能上完全に一級である。この亜鉛塩を調製するためには、任意の塩基性または中性亜鉛化合物が使用できるが、酸化物、水酸化物およぴ炭酸塩が最も一般的に使用される。市販の添加剤は、しばしば過剰の亜鉛を含有し、これは該中和反応で過剰の塩基性亜鉛化合物を使用したことによる。
【0032】
本発明において有用な好ましい亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、ジヒドロカルビルジチオ燐酸の油溶性塩であり、かつ以下の式によって表すことができる:
【化3】

ここで、RおよびR'は同一または異なる、炭素原子数1〜18の、好ましくは2〜12の、例えばアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリルおよび脂環式基を含むヒドロカルビル基であり得る。RおよびR'基として特に好ましい基は、炭素原子数2〜8のアルキル基である。かくして、これらの基は、例えばエチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニル基であり得る。油溶性を達成するためには、該ジチオ燐酸中の全炭素原子数(即ち、RおよびR')は、一般的には約5以上であろう。該亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、従って亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含むことができる。該ジチオ燐酸中にヒドロカルビル基を導入するのに使用したアルコールの少なくとも50(モル)%が二級アルコールてある。
【0033】
典型的には、追加の添加剤が本発明の組成物中に配合される。このような添加剤の例は酸化防止剤、耐磨耗性付与剤、摩擦改善剤、防錆剤、消泡剤、解乳化剤、および流動点降下剤である。
酸化防止剤は、無機油の使用中の劣化傾向を減じる。この劣化は、スラッジおよび金属表面上のワニス−状析出物等の酸化生成物および粘度上昇により証拠付けられる。このような酸化防止剤はヒンダードフェノール、好ましくはC5〜C12のアルキル側鎖をもつアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、灰分を含まない油溶性フェネートおよび硫化フェネート、燐化硫化または硫化炭化水素、燐エステル、金属チオカルバメート、米国特許第4,867,890 号に記載されているような油溶性銅化合物、およびモリブデン含有化合物を包含する。モリブデン化合物の例は、無機および有機酸のモリブデン塩(例えば、米国特許第4,705,641 号参照)、特に1〜50、好ましくは8〜18個の炭素原子を有するモノカルボン酸のモリブデン塩、例えばモリブデンオクトエート(2-エチルヘキサノエート)、ナフテネートまたはステアレート、EP 404 650A に記載されているような過塩基性モリブデン−含有錯体、モリブデンチオカルバメートおよびモリブデンジチオホスフェート、米国特許第4,995,996 号および同第4,966,719 号に記載されているような油溶性モリブデンキサンテートおよびチオキサンテート、油溶性のモリブデン−および硫黄−含有錯体、および好ましくは窒素原子に直接結合した2つの芳香族基を有する芳香族アミンを包含する。
一個のアミン窒素原子に直接結合した2つの芳香族基を有する、典型的な芳香族アミンは6〜16個の炭素原子を含む。これらのアミンは2以上の芳香族基をもつことができる。全体として、2つの芳香族基が共有結合によりあるいは1個の原子または基(例えば、酸素または硫黄原子もしくは-C0-、-S02-またはアルキレン基)によって結合され、かつ直接1つのアミン窒素原子に結合した、少なくとも3つの芳香族基をもつ化合物も、該窒素原子に直接結合した少なくとも2つの芳香族基をもつ芳香族アミンであると考えられる。該芳香族リングは、典型的には1種以上の、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、アシルアミノ、ヒドロキシ、およびニトロ基からなる群から選ばれる置換基によって置換されている。
【0034】
摩擦改善剤を、燃費の改善のために添加することができる。窒素含有TBN を付加するための、上記の油溶性脂肪族、オキシアルキルまたはアリールアルキルアミン以外の、他の摩擦改善剤は公知である。中でも、カルボン酸および無水物とアルカノールとの反応により形成されるエステルが好ましい。他の公知の摩擦改善剤は、一般に親油性の炭化水素鎖に共有結合的に結合した、極性の末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシル基)からなる。カルボン酸および無水物とアルカノールとのエステルは米国特許第4,702,850 号に記載されている。この公知の摩擦改良剤は、M.ベルツァー(Belzer),「ジャーナルオブトライボロジー(Journal of Tribology)」,1992,114,pp.675-682M.ベルツァー&S.ヤハンミール(Jahanmir),「ルブリケーションサイエンス(Lubrication Science)」,1988,1, pp.3-26 に記載されている。
ノニオン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、およびアニオン性アルキルスルホン酸からなる群から選ばれる防錆剤を使用できる。本発明の処方物を使用する場合、これらの防錆剤は一般的には必要とされない。
銅および鉛含有腐食防止剤を使用できるが、本発明の処方物については典型的にはその使用は必要とされない。典型的なこのような化合物は、5〜50個の炭素原子を含むチアジアゾールポリスルフィド、その誘導体およびそのポリマーである。典型的な例は、米国特許第2,719,125 号、同第2,719,126 号および同第3,087,932 号に記載されているような1,3,4-チアジアゾールである。他の同様な物質は米国特許第3,821,236 号、同第3,904,537 号、同第4,097,387 号、同第4,107,059 号、同第4,136,043 号、同第4,188,299 号および同第4,193,882 号に記載されている。他の添加剤はチアジアゾールのチオおよびポリチオスルフェナミド、例えば英国特許第1,560,830 号明細書に記載のものである。ベンゾチアゾール誘導体もこの組の添加剤に入る。これら化合物を該潤滑組成物に添加した場合、これらは好ましくは活性成分として0.2 重量%を越えない量で存在する。
【0035】
少量の解乳化剤を使用できる。好ましい解乳化化合物はEP 330,522に記載されている。これはアルキレンオキシドと、ビス−エポキシドおよび多価アルコールの反応により得られる付加物とを反応させることにより得られる。この解乳化剤は、活性成分として0.1 質量%を越えない量で使用すべきである。活性成分として0.001 〜0.05質量%なる処理率が有利である。
流動点降下剤(潤滑油流動改良剤としても知られる)は、流体が流動するもしくは流動可能となる最低温度を下げる。このような添加剤は周知である。該流体の定温流動性を改善するこれら添加剤の典型例はC8〜C18 ジアルキルフマレート/酢酸ビニルコポリマーおよびポリアルキルメタクリレートである。
発泡の制御は、ポリシロキサン型の消泡剤、例えばシリコーン油またはポリジメチルシロキサンを含む多くの化合物によって達成できる。
上記添加剤の幾つかは複数の効果を同時に与えることができ、従って例えば単一の添加剤が分散剤−酸化防止剤として機能し得る。この方法は周知であり、従って更に詳述する必要はない。
潤滑組成物が1種以上の上記添加剤を含有する場合、各添加剤は典型的には、該添加剤がその所定の機能を与えることのできる量で、該ベース油中に配合される。クランクケース潤滑剤中で使用した場合、このような添加剤の代表的な有効量を以下に掲載する。掲載した全ての値は、活性成分としての質量%で表示してある。
【0036】

【0037】
クランクケース以外の用途に対しては、上記添加剤の量および/または特性は変更することができ、例えば海洋用途のディーゼルシリンダ潤滑剤は、比較的多量の金属洗浄剤を使用する。その量は、該潤滑剤の10-50 重量%の範囲であり得る。
任意の有利な方法で、上記成分をベース油中に配合できる。従って、該成分各々は、所定レベルの濃度で、該油中に各成分を分散または溶解することにより直接添加することができる。このような配合は、周囲温度または高温度下で実施できる。
好ましくは、該粘度改良剤および流動点降下剤以外の添加剤全てを、濃厚物または添加剤包装体に配合する。即ち、これは、最終の潤滑剤を調製するために、後にベースストック(basestock) に配合される。このような濃厚物の使用は公知である。この濃厚物は、典型的には適当な量で該添加剤を含んでいて、該濃厚物を所定量のベース潤滑剤と組み合わせた場合に、最終処方物中に所定の濃度を与えるように処方されるであろう。
好ましくは、該濃厚物を、米国特許第4,938,880 号に記載の方法に従って作成する。この特許は、灰分を含まない分散剤と金属洗浄剤とのプレミックスを作成する、即ち少なくとも約100℃の温度にて予備配合することを記載している。その後、このプレミックスを少なくとも85℃まで冷却し、かつ追加の成分を添加する。
最終処方物は2〜15質量%、好ましくは5〜10質量%、典型的には約7〜8質量%の該濃厚物または添加剤包装体を使用でき、残部はベース油である。
さて、本発明を以下の実施例を参照しつつ説明するが、これら実施例は例示のみの目的で与えられる。該実施例においては、特に述べない限り、全ての添加剤の全処理率は、活性成分としての質量%単位で報告されている。
【実施例】
【0038】
硫化中間体の調製
以下に記載するのは、硫化中間体の調製に使用した方法である。
一塩化硫黄(270.1g; 2モル) を、ジノニルフェノールとノニルフェノールとの混合物(35:65wt%)であり、平均分子量253 のノニルフェノール(フェノール1)1040 g(4.11 モル)を含有する反応容器に添加した。この添加は、3時間45分間に渡って行った。この反応混合物を該添加中効率的に攪拌し、かつ温度は60℃から90℃まで単調に変化させた。一塩化硫黄の添加が完了したら、該温度を110 ℃まで上昇させ、この温度に2時間維持し、一方で該反応混合物を200 cm3min-1なる割合の窒素ガスでパージした。
種々の量の一塩化硫黄を使用しおよび/または該フェノールを1040 g(3.388モル) のノニルフェノール(フェノール2:これはジノニルフェノールとノニルフェノールとの混合物(80:20wt%)であり、平均分子量307 をもつ)で置換して、上記手順を繰り返した。得られた生成物の硫黄含有率、活性硫黄含有率、塩素含有率および動粘度を以下の第1表に与えた。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例1〜13は本発明の中間体に関する実施例である。これらの実施例は全て塩素濃度が1000 ppm未満であり、しかも100 ℃における動粘度100cSt未満であるが、比較例1〜8は塩素濃度1200 ppm以上であり、またより高い動粘度を有している。
フェノール1 (平均分子量253)の使用に関連して、該データは、フェノール対一塩化硫黄のモル比1.795 以上を使用した反応が、低塩素含有率かつ許容される硫黄濃度を有する中間体を生成することを示している。フェノール2 (平均分子量307)を使用した場合には、該比2.0 以上で良好な結果が得られる。
【0041】
実施例14
上で概説した一般的手順を繰り返した。但し、8000g(31.62 モル) のノニルフェノール(フェノール1)と、2078g(15.374モル) の一塩化硫黄を使用した (フェノール対一塩化硫黄のモル比は2.057)。添加時間は2時間30分であり、該一塩化硫黄の添加中、温度は単調に60℃から105 ℃まで上昇させ、窒素ガスパージは1.21min-1で実施した。得られた生成物は硫黄含有率10.99wt%、塩素含有率600ppmおよび100 ℃における動粘度59cS、即ちmm2sec-1を有していた。
【0042】
オレフィン処理による添加剤の調製
以下に記載するのは、活性硫黄含有硫化フェノール中間体と、オレフィンまたはアセチレン系化合物との反応による、本発明の添加剤の調製に使用した一般的方法である。
攪拌した反応容器に、触媒(触媒1)としてのホウ素化した灰分を含まない分散剤(市販品として入手可能なポリイソブテニルサクシンイミド)7.5g、希釈油としてのSN150NL 45.0gおよびジ−オレフィンとしてのゲラニオール37.05g (オレフィン比、38質量%)と共に、実施例7の中間体(97.5g) を装入した。この反応混合物の温度を1時間かけて150 ℃まで高め、かつ該反応混合物をこの温度で6時間維持し、その後真空条件下において、2時間に渡り過剰のオレフィンを除去した。真空ストリッピング後、得られた生成物をSN150NL オイルで希釈して、硫化フェノール65質量%の活性成分を得た。得られた生成物は〈0.1% の遊離ゲラニオールを含んでいた。
この手順を、幾つかの異なるオレフィンについて、フェニルアセチレン、変動するオレフィン反応時間、反応温度および種々の触媒を使用して、繰り返した。各生成物をそのシール特性について、以下の手順を利用してテストした。結果を第3表および第4表に示す。
【0043】
シール性能のテスト法
ニトリルシールに及ぼす該添加剤組成物の作用を、添加剤の有標包装体およびテストすべき添加剤を含む、潤滑油組成物中に、ニトリルエラストマーサンプルを浸漬し、浸漬後の該サンプルの破断点伸び(EAB) および/または引張強さ(TS)を、浸漬前の対応する数値と比較することによりテストした。最も有効な添加剤は、破断点伸びおよび/または引張強さにおける最小の損失(%) を与えるものである。テスト法DIN 53521 およびDIN 53504 を使用した。
【0044】
パネルコーカー(Panel Coker)性能
硫化フェノールおよびゲラニオールまたはテトラマーを使用して、上記の一般的方法に従って調製した添加剤を、公知の添加剤を含有する有標潤滑油処方物に添加し、パネルコーカーテストによってテストした。比較のために、添加剤を、反応に使用した過剰のオレフィンを除去することなしにポリブタジエンを使用して調製した。テストデータを第2表に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
これらの結果は、ストリッピングされていない添加剤Cが、本発明に従って調製した添加剤AおよびBと比較した場合に、著しく貧弱なパネルコーカー性能をもつことを示している。
【0047】
【表3】

【0048】
幾つかの特徴が、第3表に示された結果によって例示されている。
実施例18〜21は、ゲラニオールの場合において、種々の量のオレフィンとの反応のシール適合性に及ぼす作用を例示しており、オレフィンの過剰量(オレフィン比)が大きい程、得られた添加剤のシール適合性は良好である。
実施例22〜27は、ゲラニオール以外のアセチレン系化合物およびオレフィンが、シール適合性添加剤の調製に利用できることを示している。実施例23と24は、また該オレフィン処理工程において種々の触媒が使用できることを示している。
実施例18、19および20はまた、この方法によってオレフィンと反応した添加剤が、該シール適合性に悪影響を与えずに、高い処理率で使用できることを示している。
第4表に示された結果によって、幾つかの特徴が示されている。第一に、これらの結果は、1,5-シクロオクタジエンの場合において、反応温度および反応時間が、シール適合性に影響を及ぼすことを示している。比較例11は、該オレフィンとの反応が短時間(2時間)、比較的低い温度(100℃) で実施された場合においては、シール適合性における改良が殆ど見られないことを示している。第4表の他の例は、シール適合性が反応温度を高めかつ反応時間を延長することにより改善されることを示している。
【0049】
【表4】

【0050】
実施例34〜39
更に別の一群の添加剤を、以下のような種々の反応時間を使用し、上記の一般的方法に従って調製した硫化中間体(A) を使用して調製したところ、これらが硫黄含有率9.74重量%および塩素含有率900ppmをもつことを見出した。
オレフィン処理は、この中間体(A) 、オレフィンとしてテトラマー(B) 、触媒(C) として灰分を含まない分散剤(市販品として入手できるポリイソブテニルサクシンイミドである)および希釈油としてのSN150NL を使用して実施した。この反応混合物の温度は、1時間かけて200 ℃まで上げ、かつ該反応混合物をこの温度にて0.5 〜8時間維持し、その後真空を適用して、2時間に渡り、150 ℃の温度にて過剰のオレフィンを除去した。真空ストリッピング後、得られた生成物をSN150NL オイルで希釈して、硫化フェノールに関する活性成分65質量%を得た。上記の方法を利用して、各添加剤を、そのシール適合性につきテストした。結果を第5表に与える。これらの結果は、反応時間の増加が該生成する添加剤のシール適合性を改善することを示している。また実施例34および39は、該オレフィン処理が、65質量%の生成物を得るようにオイルで希釈した点を考慮しても、該未処理の中間体と比較して、低い塩素含有率を有する添加剤生成物を与えることを示している。これらの結果は、またより長い反応時間が塩素含有率のより大幅な減少をもたらすことを示している。
【0051】
【表5】

【0052】
実施例40
更に別の添加剤を、以下のようにして、実施例34〜39で使用した中間体から製造した。
中間体A(65.4g)、触媒(触媒1)としてのホウ素化した灰分を含まない分散剤(これは市販品として入手できるポリイソブテニルサクシンイミドである)5.0g、希釈油としてのSN150NL 30.2 gおよびオレフィンとしてのテトラマー13.5g からなる反応混合物を、攪拌した反応容器に投入した。この反応混合物の温度を1時間に渡り215 ℃に上げ、該反応混合物をこの温度にて8時間に渡り維持し、その後真空を印加して、2時間に渡り150 ℃の温度の下で、過剰量のオレフィンを除去した。真空ストリッピング後、得られた生成物をSN150NL 油で希釈して、65質量%の硫化フェノールに関する活性成分を得た。得られた生成物は4.1 重量%の硫黄含有率、〈0.9重量%の遊離オレフィン含有率および塩素含有率〈100 ppmを有していた。また、1.1 質量%の処理率でテストした場合には、該添加剤生成物はΔTS%-9.9およびΔEBA%-41.5を有していた。
【0053】
実施例41
また、本発明の添加剤を、VWInTDエンジンテストにおけるその性能についてもテストした。ここで、VWInTDエンジンテストはフォルクスワーゲン(Volkswagen)1.6 インタークーラーターボチャージ式ディーゼルエンジンを使用し、工業的標準CECL-46-T-93手順に従って実施した。新しいピストンを各テストの開始時点で使用し、各テスト後の該ピストンの清浄性を、標準的手順DIN 51 361パート2に従って肉眼的にランク付けし、0〜100 の範囲内の数値尺度に基づいて「ピストンメリッツ(piston merits)」として記録した。該数値が高い程、低レベルのピストン堆積物に相当する。このテストは、典型的には「合格/不合格(pass/fail)」性能テストとして使用されており、従って潤滑油組成物は、ディーゼルピストン清浄性について「合格である」ためには、少なくとも70ピストンメリッツを達成する必要がある。本発明に従って調製した該添加剤を、市販品として入手可能なある処方のジフェニルアミン酸化防止剤と比較した。該処方は、多官能性の物質VI、分散剤、洗浄剤混合物、ZDDP、他の酸化防止剤、消泡剤および解乳化剤を含有する有標添加剤包装体をベース油中に含有する。
これらテスト結果を以下の第6表に示すが、該結果は本発明の添加剤が優れたリングスティック(ring stick)性能を呈することを明らかに示している。
【0054】
【表6】

【0055】
実施例42
本発明の添加剤を、更にシーケンス(Sequence) IIIE エンジンテストにおけるその性能についてもテストした。このエンジンテストは、ガソリンエンジン用のモータオイルの、高速、高温酸化、磨耗および堆積物形成傾向を評価するために行われる。このテスト手順は、ASTM STP 315に与えられている。本発明の添加剤を、本発明の添加剤よりも高い硫黄含有率を有し、しかも高い塩素含有率を有する、市販品として入手可能な硫化フェノール添加剤と比較した。これらの添加剤は、粘度改良剤、分散剤、洗浄剤混合物、ZDDPおよび他の酸化防止剤を含有する有標添加剤包装体を、ベース油中に含む処方において比較した。これらのテスト結果を以下の第7表に示す。これらの結果は、明らかに本発明の添加剤が優れた酸化防止剤としての性能をもつことを示している。
【0056】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリルシールと適合性である潤滑油添加剤を調製するための油溶性硫化フェノール中間体組成物であって、
前記中間体組成物の塩素含有率が1000ppm未満であり、かつ、硫黄含有率が少なくとも4質量%であり、
下記式Iを有する化合物を含む、前記中間体組成物。
【化1】

(式中、Rは1〜50個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、yは0〜4の整数であって、各芳香核で異なっていてもよく、nは0〜20の整数であり、xは1〜7の整数である。)
【請求項2】
20質量%までの硫化されていないフェノール系物質含有率を有する、請求項1記載の中間体組成物。
【請求項3】
500ppm以下の塩素含有率を有する、請求項1又は2記載の中間体組成物。
【請求項4】
4〜14質量%の硫黄含有率を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の中間体組成物。
【請求項5】
12質量%までの硫黄含有率を有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の中間体組成物。
【請求項6】
主成分として潤滑油を含み、かつ、請求項1〜5のいずれか1項記載の中間体組成物を含む潤滑油組成物。
【請求項7】
1つ以上の潤滑油添加剤、請求項1〜5のいずれか1項記載の中間体組成物及び潤滑油を含む潤滑油濃厚物。
【請求項8】
潤滑油組成物の塩素含有率が100ppm以下である、請求項6記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
潤滑油組成物のニトリルエラストマーシール適合性を高めるための請求項1〜5のいずれか1項記載の中間体組成物の使用であって、前記中間体組成物を前記潤滑油組成物に添加する工程を含む前記使用。

【公開番号】特開2010−31054(P2010−31054A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258178(P2009−258178)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【分割の表示】特願2004−287148(P2004−287148)の分割
【原出願日】平成7年7月31日(1995.7.31)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】