説明

硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びそれを用いた半導体装置

【課題】低粘度で充填性が良く、硬化性が良好で、硬化して屈折率が大きく、光透過率が高く、基材に対する密着性が高く、耐クラック性に優れ、ガス透過性が低い硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び該組成物で被覆された半導体装置の提供。
【解決手段】少なくとも、(A)次式で表されるオルガノポリシロキサン、(RSiO3/2(RSiO2/2(RSiO1/2(XO1/2、(B)一分子中に、少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有し、ケイ素原子に結合した全置換基の少なくとも10モル%以上がアリール基である直鎖状のオルガノポリシロキサン:(A)成分に対して5/95〜95/5の量比、(C)水素に結合したケイ素を含む有機ケイ素化合物:(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜200質量部、(D)ヒドロシリル化反応用触媒、からなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び半導体装置に関し、詳しくは、低粘度で充填性が良く、硬化性が良好で、硬化して、屈折率が大きく、光透過率が高く、基材に対する密着性が高く、耐クラック性、ガスバリア性に優れる硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び該組成物の硬化物により半導体素子が被覆されている、信頼性に優れる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロシリル化反応により硬化する硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、フォトカプラー、発光ダイオード、固体撮像素子等の光学用半導体装置における半導体素子の保護コーティング剤として使用されている。このような半導体素子の保護コーティング剤は、前記素子が発光したり、あるいは受光したりするため、光を吸収したり、散乱したりしないことが要求されている。
【0003】
ヒドロシリル化反応により硬化して、屈折率が大きく、光透過性が高い硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物としては、例えば、ケイ素原子結合フェニル基とケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンシクロシロキサン、及びヒドロシリル化反応用触媒からなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物(特許文献1参照)、ケイ素原子結合フェニル基とケイ素原子結合アルケニル基を含有する粘度が10000cp(25℃)以上の液状又は固体のオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及びヒドロシリル化反応用触媒からなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物(特許文献2参照)、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有し、かつケイ素原子に結合したアリール基を有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、及び白金のアリール基含有オルガノシロキサンオリゴマー錯体からなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物(特許文献3参照)、分子鎖両末端がシロキサン結合を介してケイ素原子結合水素原子で封鎖されたオルガノポリシロキサン組成物(特許文献4参照)等が挙げられる。
【0004】
しかし、これらの硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、粘度が高く、充填性が乏しかったり、また硬化して得られる硬化物の密着性が乏しく、基材から剥離し易い、またシロキサン結合の割合が多くなるためガス透過性が高くなり基板を腐蝕し易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−176447号公報
【特許文献2】特開平11−1619号公報
【特許文献3】特開2003−128922号公報
【特許文献4】特開2005−105217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、低粘度で充填性が良く、硬化性が良好で、硬化して、屈折率が大きく、光透過率が高く、基材に対する密着性が高く、耐クラック性に優れ、ガス透過性が低い硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び該組成物の硬化物により半導体素子が被覆されている、信頼性が優れる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、
(A)下記平均単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
(RSiO3/2(RSiO2/2(RSiO1/2(XO1/2 (1)
{式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基(但し、Rの0.1〜50モル%はアルケニル基であり、Rの10モル%以上はアリール基である)であり、Xは水素原子又はアルキル基である。aは正数、bは0又は正数、cは0又は正数、dは0又は正数であり、(b+c+d)/aは0〜3である。}
(B)一分子中に、少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有し、ケイ素原子に結合した全置換基の少なくとも10モル%以上がアリール基である直鎖状のオルガノポリシロキサン:(A)成分に対して、質量比で5/95〜95/5となる量、
(C)下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物:(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜200質量部となる量、
【化1】

(式中、Rは同一又は異なっていても良い、二価の置換又は非置換の炭素数1〜10の有機基であり、Rは同一又は異なっていても良い、一価の置換又は非置換で炭素数1〜10の有機基である。pは同一又は異なっていても良い1〜3の整数、mは0〜5の整数、nは0〜2の整数である。)
及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒:触媒量、
からなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【0008】
このような本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、低粘度で充填性が良く、硬化性も良好である。また、硬化した場合には、屈折率が大きく、光透過率が高く、基材に対する密着性が高く、耐クラック性に優れ、ガス透過性が低い硬化物となる。
【0009】
また、前記(B)成分が、
【化2】

で表される単位構造を10モル%以上含むオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0010】
このように、(B)成分が上記単位構造を10モル%以上含んでいれば、より耐クラック性や透明性に優れた硬化物を得ることができる。
【0011】
また本発明は、前記硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物により半導体素子が被覆されていることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0012】
このような本発明の半導体装置は、屈折率が大きく、光透過率が高く、基材に対する密着性が高く、耐クラック性に優れ、ガス透過性が低い本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物で被覆されているため、信頼性に優れるものとなる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、低粘度で充填性が良く、硬化性が良好で、硬化して、屈折率が大きく、光透過率が高く、密着性が高く、耐クラック性に優れ、ガス透過性が低い硬化物を形成するという特徴があり、また、本発明の半導体装置は、半導体素子が上記組成物の硬化物により被覆されているので、信頼性に優れるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の半導体装置の一例であるLEDの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
上述のように、従来の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、粘度が高く充填性に乏しい、硬化物の密着性が乏しく基材から剥離し易い、シロキサン結合の割合が多いことによりガス透過性が高くなり基板を腐食し易い、耐クラック性に劣るといった問題を有していた。
【0016】
そこで、本発明者が上記問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、成分中に多くの二価の有機結合を有する硬化剤を用いれば、ガス透過性を低くすることや、熱衝撃試験時の耐久性等を向上させることが可能となり、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
即ち、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、少なくとも、
(A)下記平均単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
(RSiO3/2(RSiO2/2(RSiO1/2(XO1/2 (1)
{式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基(但し、Rの0.1〜50モル%はアルケニル基であり、Rの10モル%以上はアリール基である)であり、Xは水素原子又はアルキル基である。aは正数、bは0又は正数、cは0又は正数、dは0又は正数であり、(b+c+d)/aは0〜3である。}
(B)一分子中に、少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有し、ケイ素原子に結合した全置換基の少なくとも10モル%以上がアリール基である直鎖状のオルガノポリシロキサン:(A)成分に対して、質量比で5/95〜95/5となる量、
(C)下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物:(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜200質量部となる量、
【化3】

(式中、Rは同一又は異なっていても良い、二価の置換又は非置換の炭素数1〜10の有機基であり、Rは同一又は異なっていても良い、一価の置換又は非置換で炭素数1〜10の有機基である。pは同一又は異なっていても良い1〜3の整数、mは0〜5の整数、nは0〜2の整数である。)
及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒:触媒量、
からなることを特徴とする。
【0018】
以下、本発明の各成分につき、詳細に説明する。
<(A)成分>
(A)成分は、下記平均単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである。
(RSiO3/2(RSiO2/2(RSiO1/2(XO1/2 (1)
{式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基(但し、Rの0.1〜50モル%はアルケニル基であり、Rの10モル%以上はアリール基である)であり、Xは水素原子又はアルキル基である。aは正数、bは0又は正数、cは0又は正数、dは0又は正数であり、(b+c+d)/aは0〜3である。}
【0019】
R中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、特に、ビニル基であることが好ましい。R中のアルケニル基は、0.1〜50モル%、好ましくは1〜40モル%、特に好ましくは5〜30モル%である。0.1モル%未満では、組成物の硬化性が不十分となり、50モル%を超えると硬化物が脆くなり、耐クラック性が低下する。
【0020】
また、R中のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が例示され、特に、フェニル基であることが好ましい。R中のアリール基の含有量は、10モル%以上、好ましくは40〜99.9モル%、特に好ましくは45〜95モル%である。10モル%未満であると、硬化物の光透過性が低下する。
【0021】
また、R中のアルケニル基及びアリール基以外のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の置換又は非置換の一価炭化水素基等が例示され、特に、メチル基であることが好ましい。
また、上記平均単位式(1)中、Xは水素原子又はアルキル基であり、このアルキル基としては、前記と同様の基が例示され、特に、メチル基、エチル基であることが好ましい。
【0022】
また、aは正数であり、bは0又は正数であり、cは0又は正数であり、dは0又は正数であり、(b+c+d)/aは0〜3((RSiO3/2)単位の含有量が25モル%以上)、好ましくは0〜2((RSiO3/2)単位の含有量が33.3モル%以上)、特に好ましくは0〜1((RSiO3/2)単位の含有量が50モル%以上)である。(RSiO3/2)単位の含有量が25モル%未満であると耐クラック性等が不十分となる。このような(A)成分の分子量は限定されないが、THF溶媒を用いたGPC測定(標準ポリスチレン換算)による重量平均分子量(Mw)が500〜10,000であることが好ましく、より好ましくは700〜5,000、特に好ましくは、1,000〜3,000である。
【0023】
<(B)成分>
(B)成分は、本組成物を硬化して得られる硬化物に可とう性を付与するための成分であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基と、少なくともケイ素原子に結合した全置換基(但し、シロキサン結合を形成する酸素原子は除く)10モル%以上、好ましくは10〜99.9モル%、より好ましくは20〜60モル%のケイ素原子結合アリール基を有する直鎖状のオルガノポリシロキサンである。(B)成分中のアルケニル基としては、(A)成分のRで例示したものと同様の基が例示され、特に、ビニル基であることが好ましい。また、(B)成分中のアリール基としては、(A)成分のRで例示したものと同様の基が例示され、特に、フェニル基であることが好ましい。アルケニル基、アリール基以外の置換基としては(A)成分のRで例示したものと同様の基が例示され、特に、メチル基が好ましい。
ケイ素原子結合アリール基の含有量が10モル%未満であると屈折率、透明性が不十分となる。
【0024】
また特に、(B)成分は、
【化4】

で表されるジフェニルシロキサン単位構造を10モル%以上、特に20〜60モル%含んでいることが好ましい。この単位の含有量が10モル%以上であると、屈折率、透明性に優れると共に、耐クラック性もより優れたものとなる。
【0025】
このような(B)成分の25℃における粘度は限定されないが、回転粘度計の測定において10〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、100〜50,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。これは、(B)成分の粘度が上記範囲内であると、得られる硬化物の機械的強度がより優れたものとなり、得られる組成物の取扱作業性もより優れたものとなる。
【0026】
(B)成分の含有量は、(A)成分に対する(B)成分の質量の比{(B)成分の質量/(A)成分の質量}が5/95〜95/5となる範囲内の量であり、好ましくは、10/90〜70/30となる範囲内の量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる硬化物の可とう性が低下し、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の取扱作業性が低下したり、得られる硬化物が極めて軟らかいものとなるからである。
【0027】
<(C)成分>
(C)成分は本組成物の硬化剤であり、下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表されるケイ素原子結合水素原子で封鎖された有機ケイ素化合物である。
【化5】

(式中、Rは同一又は異なっていても良い、二価の置換又は非置換の炭素数1〜10の有機基であり、Rは同一又は異なっていても良い、一価の置換又は非置換で炭素数1〜10の有機基である。pは同一又は異なっていても良い1〜3の整数、mは0〜5、好ましくは0〜2の整数、nは0〜2の整数である。)
【0028】
このように、成分中に多くの二価の有機結合、好ましくはアルキレン結合を有することで、通常用いられているオルガノハイドロジェンポリシロキサン硬化剤と比較し、ガス透過性を低くしたり、熱衝撃試験時の耐久性を向上させることができる。
【0029】
上記一般式(2)及び(3)中のRとしては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、フェニレン基等の置換又は非置換の二価有機基が例示され、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基であり、特に、エチレン基であることが好ましい。
上記一般式(2)及び(3)中のRとしては、前記アリール基、前記アルキル基、前記アラルキル基、前記ハロゲン化アルキル基等のアルケニル基を除く置換又は非置換の一価有機基が例示され、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0030】
また、上式中のmは0〜5の整数であり、好ましくは、0〜2、特に好ましくは0、2の整数である。これは、mの値が上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物のガスバリア性が低下したり、硬化物の密着性が悪化するからである。
【0031】
(C)成分の25℃における粘度は限定されないが、1〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、2〜20,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。これは、(C)成分の粘度が上記範囲であると、揮発し難く、得られる組成物の組成がより安定し、得られる組成物の取扱作業性がより向上するからである。
また、取り扱いが容易であることから、(C)成分として上記一般式(3)で表されるものが、より好ましく用いられる。
【0032】
このような(C)成分としては、例えば、下記式で表される有機ケイ素化合物が好ましく挙げられる。
【化6】

【0033】
(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜200質量部の範囲内となる量であり、好ましくは、1〜100質量部の範囲内となる量であり、特に好ましくは、1〜50質量部の範囲内となる量である。これは、(C)成分の含有量が1質量部未満であると、得られる組成物の硬化性が不十分となり、200質量部を超えると、得られる硬化物の耐熱性が低下するからである。
【0034】
また、組成物の硬化性や耐熱性を向上させるため、(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分に含まれている合計アルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルの範囲内となる量であることが好ましく、さらには、0.2〜5モルとなる量であることが好ましく、特には、0.5〜2モルとなる量であることが好ましい。
【0035】
<(D)成分>
(D)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基と、(C)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。このような(D)成分としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒であることが好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体が例示され、特に、白金−アルケニルシロキサン錯体であることが好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等の基で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等の基で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンであることが好ましい。
【0036】
また、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加することが好ましく、特に、アルケニルシロキサンを添加することが好ましい。
【0037】
(D)成分の含有量は、本組成物の硬化(ヒドロシリル化反応)を促進する量(触媒量)であれば限定されず、具体的には、本組成物に対して、本成分中の金属原子が質量単位で0.01〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましく、さらには、0.01〜100ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特には、0.01〜50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、(D)成分の含有量が上記範囲であると、本組成物が十分に硬化するからであり、得られる硬化物に着色等の問題を生じる恐れがなくなると共に経済的であるからである。
【0038】
<任意成分>
本組成物には、その他任意の成分として、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等の反応抑制剤を含有しても良い。この反応抑制剤の含有量は限定されないが、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.0001〜5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0039】
また、本組成物には、その接着性を向上させるための接着付与剤を含有していても良い。この接着付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上有する有機ケイ素化合物であることが好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基であることが好ましい。また、この有機ケイ素化合物のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アリール基、前記アラルキル基、前記ハロゲン化アルキル基等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基等のエポキシ基含有一価有機基;3−メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。具体的にはエポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤等のシランカップリング剤やその部分加水分解縮合物(シランカップリング剤のオリゴマー)等が例示される。
【0040】
より具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、及びケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物又はシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。
【0041】
この接着付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1〜500mPa・sの範囲内であることが好ましい。下式に示すような接着付与材を添加しても良い。
【化7】

【0042】
また、上記組成物において、この接着付与剤の含有量は限定されないが、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましい。
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填剤;ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、溶剤等を含有しても良い。
【0043】
また、本組成物は、硬化して、JISに規定の硬さがショアーDで30以上、特に30〜90である硬化物を形成するものが好ましい。
このように、硬化した際に、例えばショアーDで30以上の硬化物を形成するものとすれば、半導体装置に用いた場合にも、外部応力の影響を受け難く、ゴミ等が極力付着し難くなる。
【0044】
また、本組成物は、組成物の硬化物により被覆された半導体素子を有する半導体装置に十分な信頼性を付与するため、硬化して得られる硬化物の可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.45以上であり、硬化物の光透過率(25℃)が80%以上であることが好ましい。
【0045】
尚、この屈折率は、例えば、アッベ式屈折率計により測定することができる。この際、アッベ式屈折率計における光源の波長を変えることにより任意の波長における屈折率を測定することができる。また、この光透過率は、例えば、光路長2.0mmの硬化物を分光光度計により測定することにより求めることができる。
【0046】
また、本組成物を硬化して得られる硬化物の200nm〜250nmの波長における紫外線透過率(25℃)が10%以下であることが好ましい。これは、本組成物の硬化物により半導体素子を被覆してなる半導体装置が、200nm〜250nmの短波長の紫外線を受けた場合に、その半導体装置を構成する材料の劣化を防止することができなくなるおそれがあるからである。この紫外線透過率は、例えば、光路長2.0mmの硬化物を分光光度計により測定することにより求めることができる。
【0047】
本組成物は、室温又は加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。この加熱温度としては、50〜200℃の範囲内であることが好ましい。
【0048】
本組成物を硬化して得られる硬化物はエラストマー状、例えばゲル状、あるいは柔軟なゴム状から弾性を有する樹脂状まで得られる。このような本組成物は、電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤として使用することができ、特に、光透過率が高いことから、光学用途の半導体素子の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤として好適である。
【0049】
本発明では更に、このような本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いた半導体装置を提供する。
以下、図面を参照に、本発明の半導体装置について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明の半導体装置の一例(この場合LED)を示す概略断面図である。
本発明の半導体装置1は、銀メッキ基板2が形成されたパッケージ3上に、半導体チップ4がダイボンドされており、この半導体チップ4は、ボンディングワイヤ5によりワイヤボンディングされている。
【0050】
そして、上述した本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物6により、半導体チップ4が被覆されている。
半導体チップ4の被覆は、上述した本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物6を塗布し、加熱により硬化性オルガノポリシロキサン組成物6を硬化させることにより行われる。
【0051】
この場合、外部応力の影響を受け難くし、又ゴミ等の付着を極力抑えるという観点から、硬化性オルガノポリシロキサン組成物6は、硬化により、JISに規定の硬さがショアーDで30以上の硬化物を形成するものであることが好ましい。
【0052】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、屈折率が大きく、光透過率が高く、基材に対する密着性が高く、耐クラック性に優れ、ガス透過性が低い硬化物を形成するので、このような本発明の組成物を用いた本発明の半導体装置は、信頼性に優れたものとなり、ダイオード、発光ダイオード(LED)等として特に好適である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に制限されるものではない。
尚、実施例中の粘度は25℃において測定した値である。また、硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及びその硬化物の特性は次のようにして測定した。
【0054】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物の酸素ガス透過性
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を150℃の熱風循環式オーブンで3時間加熱することにより硬化させて得られた厚み1mmの硬化物を、酸素ガス透過装置を用いて測定を行った。
【0055】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物のイオウ腐食試験
銀メッキ基板が形成されたパッケージ内に硬化性オルガノポリシロキサン組成物を流し込み、150℃の熱風循環式オーブンで3時間加熱することにより硬化させて得られた硬化物で覆われたパッケージ(図1)を、イオウ粉末が入っているガラス瓶内部に入れ密閉し時間と共に銀メッキが腐食されていくか目視にて確認を行い、24時間経過後に試験前と比較し変化のなかった基板を○とし、若干の変化が見られた基板は△、黒く変化した基板は×とした。
【0056】
硬化物の硬さ
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を150℃の熱風循環式オーブンで3時間加熱することにより硬化物を作製した。この硬化物の硬さを、ショアーD硬度計を使用して測定した。
【0057】
硬化物の屈折率
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を150℃の熱風循環式オーブンで3時間加熱することにより硬化して作製した硬化物の25℃における屈折率を、アッベ式屈折率計を用いて測定した。尚、測定に用いた光源として、可視光(589nm)を用いた。
【0058】
硬化物の光透過率
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を150℃の熱風循環式オーブンで3時間加熱することにより硬化して作製した硬化物(光路長2.0mm)の25℃における400nmの波長の光透過率を測定した。
【0059】
硬化物の耐熱性
上記[硬化物の光透過率]で得られた結果を100とし、この硬化物を150℃の熱風循環式オーブンで500時間加熱後、硬化物を取り出し光透過率が100と比較してどの程度落ちるか測定した。
【0060】
硬化物の耐久後のクラック
図1のように作成したパッケージを、{−40℃(30分)、100℃(30分)}を1サイクルとする熱衝撃試験機の中に入れ、100サイクル経過後、パッケージを拡大顕微鏡で観察し、硬化物のクラックがある場合を×、クラックがない場合を○、クラックがあるかどうかが明瞭でない場合を△とした。
【0061】
[実施例1]
平均単位式:
(CSiO3/20.75[(CH=CH)(CH)SiO]0.25
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサン{性状=固体状(25℃)、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=12.5モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=75モル%、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量=2400}50質量部、粘度700mPa・sであり、直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジフェニルジメチルポリシロキサン(ケイ素原子結合ビニル基の含有量=0.055モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=30モル%)25質量部、式:
H(CHSiCHCH(CSiCHCHSi(CH
で表される分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシルエチニル基封鎖有機ケイ素化合物23質量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が質量単位で30ppmとなる量)、接着付与剤として下記構造式のSiH含有化合物を1.0質量部均一に混合して、粘度2,700mPa・sである硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【化8】

【0062】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いてLEDを作製した。これらの半導体装置の信頼性の評価結果を表1に示した。
【0063】
[実施例2]
平均単位式:
(CSiO3/20.8[(CH=CH)(CHSiO1/20.2
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサン{性状=固体状(25℃)、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=10モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=80モル%、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量=1,600}55質量部、粘度700mPa・sであり、直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジフェニルジメチルポリシロキサン(ケイ素原子結合ビニル基の含有量=0.055モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=30モル%)25質量部、
式:
H(CHSiCHCH(CHSiCHCHSi(CH
で表される分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシルエチニル基封鎖有機ケイ素化合物15質量部、接着付与剤として、
【化9】

で表されるシラン化合物2.0質量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が質量単位で2.5ppmとなる量)、粘度3,500mPa・sである硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0064】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いてLEDを作製した。これらの半導体装置の信頼性の評価結果を表1に示した。
【0065】
[比較例1]
粘度3,500mPa・sであり、直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ケイ素原子結合ビニル基の含有量=0.20質量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=49モル%)60質量部、平均単位式:
(CSiO3/20.75[(CH=CH)(CHSiO1/20.25
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサン{性状=固体状(25℃)、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=12.5モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=75モル%、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量=1,600}40質量部、式:
H(CHSiO[(CHSiO]Si(CH
で表されるジメチルポリシロキサン24質量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が質量単位で30ppmとなる量)を均一に混合して、粘度2,460mPa・sである硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0066】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いてLEDを作製した。これらの半導体装置の信頼性の評価結果を表1に示した。
【0067】
[比較例2]
平均単位式:
(CSiO3/20.75[(CH=CH)(CHSiO1/20.25
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサン{性状=固体状(25℃)、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=12.5モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=75モル%、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量=1,600}55質量部、粘度950mPa・sであり、平均単位式:
(CSiO3/20.60[(CHHSiO1/20.40
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合全基中のケイ素原子結合水素原子の含有率=22モル%、ケイ素原子結合全基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=33モル%、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量=1,100)12質量部、粘度3,500mPa・sであり、直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ケイ素原子結合ビニル基の含有量=0.20質量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=49モル%)50質量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が質量単位で2.5ppmとなる量)を均一に混合して、粘度3,500mPa・sである硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0068】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いてLEDを作製した。これらの半導体装置の信頼性の評価結果を表1に示した。
【0069】
[比較例3]
平均単位式:
(CSiO3/20.75[(CH=CH)(CHSiO1/20.25
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサン{性状=固体状(25℃)、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=12.5モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=75モル%、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量=1,600}45質量部、粘度3,500mPa・sであり、直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ケイ素原子結合ビニル基の含有量=0.20質量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=49モル%)55質量部、式:
H(CHSiO[CH(C)SiO]Si(CH
で表される分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン24質量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が質量単位で2.5ppmとなる量)を均一に混合して、粘度1,700mPa・sである硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0070】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いてLEDを作製した。これらの半導体装置の信頼性の評価結果を表1に示した。
【0071】
[比較例4]
実施例1の分岐鎖状のオルガノポリシロキサンを平均単位式:
(CSiO3/20.05(CHSiO3/20.70[(CH=CH)(CHSiO1/20.25{性状=固体状(25℃)、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=12.5モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=5モル%、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量2,100}とした以外は実施例1と同様にして粘度2,300mPa・sである硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0072】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いてLEDを作製した。これらの半導体装置の信頼性の評価結果を表1に示した。
【0073】
【表1】

【0074】
表1に示すように、実施例1及び2は、酸素ガス透過性も低く、イオウによる腐食がなく、硬化物の硬さも十分であり、硬化物の屈折率、光透過率及び耐熱性も良好で、硬化物にクラックの発生も見られなかった。
【0075】
一方、比較例1〜3では、硬化物の屈折率及び光透過率は良好であり、硬さも十分であったものの、酸素ガスの透過率が非常に高く、イオウによる腐食があった。
また、比較例2、3においては、クラックの発生が見られ、クラックの有無が不明瞭であった比較例1も、耐熱性に劣るものであった。
比較例4では、耐熱性は良好であったものの、酸素ガス透過性が高く、イオウによる腐食も若干見られ、硬化物の屈折率、光透過率も他の例に比べやや劣るものであった。
【0076】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0077】
上記実施例では、半導体素子のポッティング剤として本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いたが、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、特に、光透過率が高いことから、その他にも光学用途の半導体素子の接着剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤等として好適であり、また、電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤等としても、もちろん使用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1…半導体装置、 2…銀メッキ基板、 3…パッケージ、 4…半導体チップ、
5…ボンディングワイヤ、 6…ポリオルガノシロキサン組成物(硬化剤)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)下記平均単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
(RSiO3/2(RSiO2/2(RSiO1/2(XO1/2 (1)
{式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基(但し、Rの0.1〜50モル%はアルケニル基であり、Rの10モル%以上はアリール基である)であり、Xは水素原子又はアルキル基である。aは正数、bは0又は正数、cは0又は正数、dは0又は正数であり、(b+c+d)/aは0〜3である。}
(B)一分子中に、少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有し、ケイ素原子に結合した全置換基の少なくとも10モル%以上がアリール基である直鎖状のオルガノポリシロキサン:(A)成分に対して、質量比で5/95〜95/5となる量、
(C)下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物:(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜200質量部となる量、
【化1】

(式中、Rは同一又は異なっていても良い、二価の置換又は非置換の炭素数1〜10の有機基であり、Rは同一又は異なっていても良い、一価の置換又は非置換で炭素数1〜10の有機基である。pは同一又は異なっていても良い1〜3の整数、mは0〜5の整数、nは0〜2の整数である。)
及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒:触媒量、
からなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、
【化2】

で表される単位構造を10モル%以上含むオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物により半導体素子が被覆されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−256241(P2011−256241A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130237(P2010−130237)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】