説明

硬化性樹脂成分の製造方法

【課題】エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸無水物とから得られ、水酸基価が極めて低くて、低吸水性で、耐熱性、耐薬品性、耐擦傷性等の耐久性、絶縁性、機械的強度に優れた硬化物を形成するのに用いられ、無着色の硬化性樹脂成分を、簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂成分の製造方法は、エポキシ基含有フルオロ化合物、エポキシ基含有共重合化合物、芳香環基、脂環基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はアルキレン基を含有するエポキシ樹脂から選ばれる何れかのエポキシ化合物中のエポキシ基1.0モル当量に対し、(メタ)アクリル酸無水物の0.1〜1.0モル当量を、金属含有化合物触媒の存在下で、開環付加させるというものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ基を含有している化合物に(メタ)アクリル酸無水物を開環付加させて、成形材料、低誘電性部材、低吸水性部材の原材料として用いられる硬化性樹脂成分を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家電製品・精密機器のような製品の部材、電子部品・光学部品の部材、機能性コーティング材等を形成して、優れた電気絶縁性や耐薬品性や強い機械的強度を発現し、綺麗な表面を形成する組成物の成分として、硬化性樹脂成分が用いられている。
【0003】
硬化性樹脂成分とりわけエポキシ樹脂は、プリント基板用の表面塗装組成物の樹脂成分として、また電子部品用の封止剤組成物の樹脂成分として、用いられている。中でもエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させた硬化性不飽和樹脂成分は、光照射により硬化するため、微細なパターニング等のように優れた加工性を要する表面塗装のための硬化性樹脂組成物の樹脂成分として、汎用されている。
【0004】
一般にこのような(メタ)アクリル酸とエポキシ樹脂とを反応させた硬化性不飽和樹脂成分は分子内に多くの水酸基を有するため高い水酸基価を示す。この樹脂成分を硬化させて形成された被膜は、吸水性が高いうえ、機械的強度等の塗装特性や、耐熱性、絶縁性、耐薬品性、耐擦傷性等の耐久性や、密封性が不十分なものであった。
【0005】
水酸基価を低減させた硬化性不飽和樹脂成分を用い塗装特性等を改善する組成物として、例えば特許文献1に、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸無水物とを反応させ、二重結合当量が200〜500、エステル価が100〜300、水酸基価が130以下、好ましくは20〜130である(メタ)アクリロイル基を含有する不飽和樹脂と、エチレン性不飽和単量体と、ラジカル重合開始剤とを含有した硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0006】
このような(メタ)アクリロイル基を含有する硬化性の不飽和樹脂成分は、水酸基を低減させてもなお相当残存しているうえ、着色していたり所望外の分子量のオリゴマーや副生成物が多量に混入していたりする。その所為で、それを硬化させた膜状の硬化物は、完全に無色透明でなく、しかも最終製品の高付加価値化を満たすのに要求される塗装特性、耐久性、密封性がまだまだ十分とは言えない。
【0007】
最終製品に一層優れた耐久性等の高付加価値化が求められているため、硬化性樹脂成分をさらに改善し、それの硬化物の塗装特性、耐久性、密封性を向上させることが望まれている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−346315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸無水物とから得られ、水酸基価が極めて低くて、低吸水性で、耐熱性、耐薬品性、耐擦傷性等の耐久性、絶縁性、機械的強度に優れた硬化物を形成するのに用いられ、無着色の硬化性樹脂成分を、簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の硬化性樹脂成分の製造方法は、エポキシ基含有フルオロ化合物、エポキシ基含有共重合化合物、芳香環基、脂環基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はアルキレン基を含有するエポキシ樹脂から選ばれる何れかのエポキシ化合物中のエポキシ基1.0モル当量に対し、(メタ)アクリル酸無水物の0.1〜1.0モル当量を、金属含有化合物触媒の存在下で、開環付加させることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の硬化性樹脂成分の製造方法は、請求項1に記載されたもので、前記金属含有化合物触媒が、金属アルコキシドであることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の硬化性樹脂成分の製造方法は、請求項2に記載されたもので、前記金属アルコキシドが、その金属をチタン又はジルコニウムとし、そのアルコキシド基を炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状又は環状で飽和又は不飽和のアルコールに由来するものとすることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の硬化性樹脂成分の製造方法は、請求項1に記載されたもので、金属含有化合物触媒が、酸を含む助触媒を共存させていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の硬化性樹脂成分の製造方法は、請求項1に記載されたもので、前記エポキシ化合物が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のパーフルオロアルキル基、パーシャルフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基及び/又はパーシャルフルオロアルキレン基を含有している前記エポキシ基含有フルオロ化合物であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の硬化性樹脂成分の製造方法は、請求項5に記載されたもので、前記エポキシ基含有フルオロ化合物が、下記化学式(I)
A−Rf−B ・・・(I)
(化学式(I)中、A−は、
【化1】

から選ばれるエポキシ基含有基、
−Rf−は、-CH2-(CF2)m-(CH2)n-(m=1〜20、n=0〜1の整数)、-CH2-(CF2)p-C[-(CF2)q-F][-(CF2)r-F]-CH2-(p=1〜10、q=0〜22、r=1〜22の整数)、又は-CH2-(CF2)s-(-O-Ct2t)u-O-(CF2)v-(CH2)w-(s=1〜3、t=1〜4、u=1〜100、v=0〜3、w=0〜1の整数)、
−Bは、該A−と同一若しくは異なる前記エポキシ基含有基、-Cy2y+1若しくは-OCH2-Cy2y+1(y=1〜22の整数)、又は-Cz2z-1若しくは-OCH2-Cz2z-1(z=3〜20の整数)である。)
で表されることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の硬化性樹脂成分の製造方法は、請求項1に記載されたもので、前記エポキシ化合物が、エポキシ基含有不飽和モノマーとエポキシ基非含有不飽和モノマーとの共重合による前記エポキシ基含有共重合化合物であることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の硬化性樹脂成分の製造方法は、請求項7に記載されたもので、前記エポキシ基含有共重合化合物が、
【化2】

から選ばれるエポキシ基含有基及び(メタ)アクリロイル基を含有する前記エポキシ基含有不飽和モノマーと、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、パーフルオロアルキル基又はパーシャルフルオロアルキル基、及び(メタ)アクリロイル基を含有する前記エポキシ基非含有モノマーとの共重合体であって、そのエポキシ基一つあたりの分子量を100〜10000とすることを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の硬化性樹脂成分の製造方法は、請求項1に記載されたもので、前記エポキシ化合物が、前記芳香環基、脂環基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はアルキレン基を含有するエポキシ樹脂であって、そのエポキシ基一つあたりの分子量を100〜10000とすることを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の硬化性樹脂成分の製造方法は、請求項9に記載されたもので、前記エポキシ樹脂が、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールエポキシ樹脂、ビフェノールエポキシ樹脂、ビスフルオレン型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタンエポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタンエポキシ樹脂、フェノールジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂から選ばれる芳香環基を含有するエポキシ化合物;それらの飽和体、およびトリシクロデカン骨格含有エポキシ樹脂から選ばれる前記脂環基を含有するエポキシ樹脂;アルキレンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルから選ばれる前記直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を含有するエポキシ樹脂のいずれかであって、そのエポキシ基一つあたりの分子量を100〜10000とすることを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の硬化物の製造方法は、請求項1〜10の何れかに記載の硬化性樹脂成分の製造方法により、製造された該硬化性樹脂成分を、含有させて硬化性樹脂組成物を調製し、それを塗布し又は成型して硬化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の硬化性樹脂成分の製造方法は、一つのエポキシ基に1分子の(メタ)アクリル酸無水物が丁度当量だけ開環付加して、二つの(メタ)アクリル酸エステル基を形成するというものである。
【0022】
立体障害が比較的大きいため副反応を生じ難いメタクリル酸無水物のみならず、立体障害が小さいため一般的に副反応を生じて着色したり副生成物を生じたりし易いアクリル酸無水物も、開環付加させて硬化性樹脂成分にしたときに、この硬化性樹脂成分は赤外吸収スペクトル法で水酸基のピークが殆ど認められない程度であるから水酸基価が極めて小さく、しかも硬化性樹脂成分は着色していない。
【0023】
この成分は、プレポリマーとして硬化性樹脂組成物に含有させて用いられる。そのため、それを含む組成物を硬化させると、低吸水性で耐熱性、絶縁性、耐薬品性、耐擦傷性、機械的強度に優れた無着色の硬化物が形成される。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0024】
以下、本発明の実施のための好ましい形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明の硬化性樹脂成分の製造方法の好ましい一形態は、複数の芳香環基を含有するエポキシ樹脂としてビスフェノールAジグリシジルエーテルのエポキシ基1.0モル当量に対し、金属含有化合物触媒である金属アルコキシド存在下、(メタ)アクリル酸無水物の1.0モル当量を加え、無溶媒で、60〜120℃にて、反応させ、一つのエポキシ基に1分子の(メタ)アクリル酸無水物を開環付加させて、硬化性樹脂成分を得るというものである。
【0026】
金属アルコキシドは、例えばM-OR(Mは金属原子、ORはアルコキシド基)で表わされるものである。具体的には、その金属原子:Mとしてチタン、ジルコニウムが挙げられ、アルコキシド基:ORとして、炭素数1〜4の直鎖状、分岐鎖状、又は環状で、飽和又は不飽和のアルコール由来のアルコキシド基が挙げられる。金属アルコキシドは、より具体的には、テトラn−ブチルチタネート(Ti[O(CH2)3CH3]4)、テトライソプロピルチタネート(Ti[OCH2(CH3)2]4)、ブチルチタネートダイマー([(BuO)3Ti-O-Ti(OBu)3])、テトラn−ブトキシジルコニウム(Zr[O(CH2)3CH3]4)が挙げられる。
【0027】
エポキシ化合物と前記(メタ)アクリル酸無水物とに対し、金属含有化合物触媒を0.1〜5重量%用いることが好ましい。金属含有化合物触媒とともに、酸である助触媒を0.01〜2重量%用いてもよい。助触媒として、硬化性樹脂成分と共重合し得るジ−(2−メタクリロイルオキシエチル)−ホスフェートであるライトエステルP−2M(共栄社化学株式会社製;商品名)が挙げられる。
【0028】
金属含有化合物触媒が、得られた硬化性樹脂成分中に残存していてもよく、酸及び/又はアルカリ吸着作用を有する吸着剤を用いた後処理により除去されていてもよい。吸着剤として、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素から選ばれる1種類以上を含有する吸着剤が挙げられる。より具体的には、キョーワード(協和化学工業株式会社製;商品名)が挙げられる。
【0029】
得られた硬化性樹脂成分は、水酸基価が極めて低い。それは、その反応条件下で、エポキシ樹脂のエポキシ基1モル当量と(メタ)アクリル酸無水物1モル当量とが反応して、(メタ)アクリル酸無水物が開裂して付加し、それの(メタ)アクリル酸エステル2モル当量を形成するからである。また、エポキシ樹脂が水酸基を有していないことに起因して、エポキシ基と(メタ)アクリル酸無水物とが丁度当量ずつ直接反応し、水酸基を生じるような副反応を殆ど引き起さないからである。
【0030】
水酸基含有エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸無水物とを反応させた場合や、水酸基非含有エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸無水物とを混合して反応させる場合や、特許文献1に記載のようにエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸無水物とを反応させる場合は、水酸基価が数10程度以上も残存したものとなってしまう。
【0031】
エポキシ基1.0モル当量に対し、(メタ)アクリル酸無水物がちょうど1.0モル当量用いられた例を示したが、0.1モル当量以上1.0モル当量未満用いられていてもよい。例えば、エポキシ基1.0モル当量に対し、(メタ)アクリル酸無水物を0.5モル当量用いた場合、水酸基を生じさせる副反応を殆ど起こさずに0.5モル当量分のエポキシ基を含有した(メタ)アクリレートが得られる。通常このような部分アクリル化エポキシ樹脂は、例えばエポキシ基1.0モル当量に対し、(メタ)アクリル酸を0.5モル当量用いて反応する事により得られるが、(メタ)アクリル酸と同等量の水酸基が生成する。従って、(メタ)アクリル当量が低く、水酸基を含有していることから、必要な性能を発現するための設計が困難であり、貯蔵安定性も悪くなる。これに対し、本発明の方法により得られる部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、十分な(メタ)アクリル当量が得られることから、必要な性能を発現するための設計が可能で、水酸基価が極めて小さいことから、貯蔵安定性が向上したものとなる。
【0032】
硬化性樹脂成分を、複数の芳香環基を含有するエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸無水物とから製造した例を示したが、このようなエポキシ樹脂に代えて、複数の別な芳香環基を含有するエポキシ樹脂、単数の芳香環基を含有するエポキシ樹脂、エポキシ基含有フルオロ化合物、エポキシ基含有共重合化合物、複数の脂環基、及び/又は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を含有するエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0033】
エポキシ基含有フルオロ化合物は、前記式(I)で表されるA−Rf−Bであることが好ましい。
【0034】
エポキシ基含有フルオロ化合物を構成するA−は、グリシジルエーテル基のような末端エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基のような脂環上にエポキシ基を含有する基、より具体的には、
【化3】

のようなエポキシ基含有基が挙げられる。
【0035】
エポキシ基含有フルオロ化合物を構成する−Rf−は、-CH2-(CF2)m-(CH2)n-(m=1〜20、n=0〜1の各整数)、より具体的には、例えばn≠0のとき、2,2-ジフルオロプロパンジオール、2,2,3,3-テトラフルオロブタンジオール、2,2,3,3,4,4,-ヘキサフルオロペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-デカフルオロヘプタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロオクタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-テトラデカフルオロノナンジオール、及び2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘプタデカフルオロデカンジオールの何れかの脱水素残基;
-CH2-(CF2)p-C[-(CF2)q-F][-(CH2)r-F]-CH2-(p=1〜10、q=0〜22、r=1〜22の整数)、より具体的には、2-フルオロ-2-パーフルオロオクチル-1,3-プロパンジオール、2-フルオロ-2-パーフルオロイソオクチル-1,3-プロパンジオール、及び2-フルオロ-2-パーフルオロ(4-エチル-ヘキシル)-2-ヒドロキシメチル-1-メタノールの何れかの脱水素残基;
-CH2-(CF2)s-(-O-Ct2t)u-O-(CF2)v-(CH2)w-(s=1〜3、t=1〜4、u=1〜100、v=0〜3、w=0〜1の整数)、より具体的には、2,2,4,4-テトラフルオロジエチレングリコール、2,2,4,4,5,5,7,7-オクタフルオロトリエチレングリコール、2,2,4,4,5,5,7,7,8,8,10,10-ドデカフルオロテトラエチレングリコール、2,2,4,4,5,5,7,7,8,8,10,10,11,11,13,13-ヘプタデカフルオロペンタエチレングリコール、2,2,4,4,5,5,7,7,8,8,10,10,11,11,13,13,14,14,16,16-イコサデカフルオロヘキサエチレングリコール、2,2,4,4,5,5,7,7,8,8,10,10,11,11,13,13,14,14,16,16,17,17,19,19-テトラコサフルオロヘプタエチレングリコール、2,2,4,4,5,5,7,7,8,8,10,10,11,11,13,13,14,14,16,16,17,17,19,19,20,20,22,22-オクタコサフルオロオクタエチレングリコール、2,2,4,4,5,5,7,7,8,8,10,10,11,11,13,13,14,14,16,16,17,17,19,19,20,20,22,22,23,23,25,25-ドトリアコンタフルオロノナエチレングリコール、2,4,4-トリフルオロ-2,5-ジ(トリフルオロメチル)ジエチレングリコール、2,4,4,5,7,7-ヘキサフルオロ-2,5,8-トリ(トリフルオロメチル)トリエチレングリコール、2,4,4,5,7,7,8,10,10-ノナフルオロ-2,5,8,11-テトラ(トリフルオロメチル)テトラエチレングリコール、2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13-ドデカフルオロ-2,5,8,11,14-ペンタ(トリフルオロメチル)ペンタエチレングリコール、2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,17-ペンタデカフルオロ-2,5,8,11,14,17-ヘキサ(トリフルオロメチル)ヘキサエチレングリコール、2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,17,19,19,20-オクタデカフルオロ-2,5,8,11,14,17,20-へプタ(トリフルオロメチル)ヘプタエチレングリコール、2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,17,19,19,20,22,22,23-ドコサフルオロ-2,5,8,11,14,17,20,23-オクタ(トリフルオロメチル)オクタエチレングリコール、2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,16,16,17,19,19,20,22,22,23,25,25,26-テトラコサフルオロ-2,5,8,11,14,17,20,23,26-ノナ(トリフルオロメチル)ノナエチレングリコール、2,2,3,3,4,4,6,6,7,7,8,8-ドデカフルオロジテトラメチレングリコール2,2,3,3,4,4,6,6,7,7,8,8,9,9,11,11,12,12,13,13-イコサフルオロトリテトラメチレングリコール、2,2,3,3,4,4,6,6,7,7,8,8,9,9,11,11,12,12,13,13,14,14,16,16,17,17,18,18-オクタコサフルオロテトラテトラメチレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-デカフルオロシクロヘキシル)-1,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシメチル-デカフルオロシクロヘキシル)-1,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-オキシ(1,1-ジフルオロエトキシ)-デカフルオロシクロヘキシル]-1,3-ヘキサフルオロプロパン、及び2,2-ビス[4-オキシ(1-パーフルオロメチル-1-フルオロエトキシ)-デカフルオロシクロヘキシル]-1,3-ヘキサフルオロプロパンの何れかの脱水素残基;
が挙げられる。
【0036】
エポキシ基含有フルオロ化合物を構成する−Bは、該A−と同一若しくは異なる前記エポキシ基含有基;
-Cy2y+1若しくは-OCH2-Cy2y+1(y=1〜22の整数)、より具体的には、-OCH2-Cy2y+1として、例えばパーフルオロメタノール、パーフルオロエチルメタノール、パーフルオロプロピルメタノール、パーフルオロブチルメタノール、パーフルオロペンチルメタノール、パーフルオロヘキシルメタノール、パーフルオロオクチルメタノール、パーフルオロノニルメタノール、パーフルオロデシルメタノール、パーフルオロウンデシルメタノール、パーフルオロドデシルメタノール、パーフルオロトリデシルメタノール、パーフルオロテトラデシルメタノール、パーフルオロペンタデシルメタノール、パーフルオロヘキサデシルメタノール、パーフルオロヘプタデシルメタノール、パーフルオロオクタデシルメタノール、パーフルオロノナデシルメタノール、パーフルオロイコシルメタノール、またはパーフルオロヘニコシルメタノールの何れかの脱水素残基;
-Cz2z-1若しくは-OCH2-Cz2z-1(z=3〜20の整数)、より具体的には、-Cz2z-1として、パーフルオロシクロヘキシル基、また-OCH2-Cz2z-1として、1-ウンデカフルオロシクロヘキシルメタノール、または2-フルオロ-2-ウンデカフルオロシクロヘキシルエタノール、2,2,3-トリフルオロ-3-ウンデカフルオロシクロヘキシルプロパノールの脱水素残基が挙げられる。
【0037】
−Rf−Bは、(Cy2y+1)-(CF2CF2-O-)u-CF2CH2O-(y,uは前記に同じ)であるとき、より具体的には、2-パーフルオロメトキシ-2,2-ジフルオロエタノール、2-パーフルオロエトキシ-2,2-ジフルオロエタノール、2-パーフルオロブトキシ-2,2-ジフルオロエタノール、2-パーフルオロオクトキシ-2,2-ジフルオロエタノール、5-パーフルオロメトキシ-4,4,5,5-テトラフルオロエトキシ-2,2-ジフルオロエタノール、5-パーフルオロブトキシ-4,4,5,5-テトラフルオロエトキシ-2,2-ジフルオロエタノール、5-パーフルオロオクトキシ-4,4,5,5-テトラフルオロエトキシ-2,2-ジフルオロエタノール、8-パーフルオロメトキシ-7,7,8,8-テトラフルオロエトキシ-4,4,5,5-テトラフルオロエトキシ-2,2-ジフルオロエタノール、8-パーフルオロオクトキシ-7,7,8,8-テトラフルオロエトキシ-4,4,5,5-テトラフルオロエトキシ-2,2-ジフルオロエタノール、11-パーフルオロメトキシ-10,10,11,11-テトラフルオロエトキシ-7,7,8,8-テトラフルオロエトキシ-4,4,5,5-テトラフルオロエトキシ-2,2-ジフルオロエタノール、または11-パーフルオロオクトキシ-10,10,11,11-テトラフルオロエトキシ-7,7,8,8-テトラフルオロエトキシ-4,4,5,5-テトラフルオロエトキシ-2,2-ジフルオロエタノールの脱水素残基が挙げられる。フルオライトFE−16(共栄社化学株式会社製;商品名)であるパーフルオロデカンジオールジグリシジルであってもよい。
【0038】
これらのエポキシ基含有フルオロ化合物は、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0039】
エポキシ基含有共重合化合物は、フルオロ基を有していてもよく前記のようなエポキシ基含有基及び(メタ)アクリロイル基のような不飽和基を有するエポキシ基含有不飽和モノマーと、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、パーフルオロアルキル基又はパーシャルフルオロアルキル基、及び(メタ)アクリロイル基のような不飽和基を含有する前記エポキシ基非含有モノマーとの共重合体であってもよい。このようなエポキシ基含有共重合化合物は、より具体的には、前記のようなエポキシ基含有基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、エポキシ基非含有の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が挙げられる。
【0040】
エポキシ基含有共重合化合物を構成するエポキシ基含有不飽和モノマーは、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレートのような炭素数2〜10のアルキル基を有するグリシジロキシアルキル(メタ)アクリレート;炭素数2〜10のアルキル基を有する3,4−エポキシシクロへキシルメトキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの炭素数2〜10のアルキルの代わりに、炭素数2〜4のアルキレン基を有するポリアルキレングリコール(繰り返し単位;2〜20)骨格を含有したもの等が挙げられる。
【0041】
エポキシ基含有共重合化合物を構成するエポキシ基非含有不飽和モノマーは、炭素数1〜18で直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(フェノキシフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、炭素数2〜4のアルキル基を有するフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。パーフルオロアルキル基又はパーシャルフルオロアルキル基を含有するアクリル酸エステル、例えばパーフルオロメタノール、パーフルオロエチルメタノール、パーフルオロプロピルメタノール、パーフルオロブチルメタノール、パーフルオロペンチルメタノール、パーフルオロヘキシルメタノール、パーフルオロオクチルメタノール、パーフルオロノニルメタノール、パーフルオロデシルメタノール、パーフルオロウンデシルメタノール、パーフルオロドデシルメタノール、パーフルオロトリデシルメタノール、パーフルオロテトラデシルメタノール、パーフルオロペンタデシルメタノール、パーフルオロヘキサデシルメタノール、パーフルオロヘプタデシルメタノール、パーフルオロオクタデシルメタノール、パーフルオロノナデシルメタノール、パーフルオロイコシルメタノール、またはパーフルオロヘニコシルメタノール、1-ウンデカフルオロシクロヘキシルメタノール、または2-フルオロ-2-ウンデカフルオロシクロヘキシルエタノール、2,2,3-トリフルオロ-3-ウンデカフルオロシクロヘキシルプロパノールと(メタ)アクリル酸とのエステルであってもよい。
【0042】
エポキシ樹脂は、例えばグリシジル基のようなエポキシ基含有基を有するもので、より具体的には、フェニルグリシジルエーテルのような単数の芳香環基を含有するエポキシ化合物;
jER827(ジャパンエポキシレジン株式会社製;jERは同社の登録商標)のようなビスフェノールAジグリシジルエーテル、EOCN−104S(日本化薬株式会社製;商品名)のようなクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ナフタレンジオールエポキシ樹脂、ビフェノールエポキシ樹脂、ビスフルオレン型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタンエポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタンエポキシ樹脂、フェノールジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂のような複数の芳香環基を含有するエポキシ化合物;
それらを水素添加により飽和させた前記複数の脂環基を含有するエポキシ樹脂、例えばナフタレンジオールエポキシ樹脂を水素添加したデカヒドロナフタレンエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格含有エポキシ樹脂;
ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのようなアルキレンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルから選ばれる前記直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を含有するエポキシ樹脂;
エポリードPB3300やAOE X24(何れもダイセル化学工業株式会社製;商品名)のようなαーオレフィンモノエポキシド、エポキシ化ポリブタジエンで例示されるもので、直鎖状、分岐鎖状又は環状の不飽和脂肪族炭化水素の二重結合をエポキシ化したエポキシ化合物が挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリル酸無水物は、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、アクリル酸・メタクリル酸の混合酸無水物であってもよく、それらが単独で用いられてもよく、複数が任意の比率で混合されて用いられてもよい。
【0044】
エポキシ基含有フルオロ化合物やエポキシ基含有共重合化合物やエポキシ樹脂は、エポキシ基一つあたりの分子量が100〜10000の範囲より小さいと、低沸点となり硬化性樹脂成分の製造効率や製造簡便性が悪くなり、一方この範囲より大きいと、(メタ)アクリロイル基の含有率が低減する結果、硬化させる際の反応性の低下や、得られた硬化物の硬度不足、耐擦傷性等の物性不良を惹き起こしてしまう。さらに、エポキシ基含有共重合化合物やエポキシ樹脂は、フッ素基を含有していても、この範囲より小さいと、フッ素含有率が極度に低下する結果、フッ素基が本来有する耐水性や耐油性、光学特性等の特性を発現できなくなってしまう。
【0045】
この硬化性樹脂成分を含む組成物は、硬化物を形成するのに用いられる。このような組成物は、硬化性樹脂成分の10〜99重量部と、重合開始剤0.5〜15重量部と、必要に応じて添加剤の0.1〜70重量部とを含むものである。
【0046】
重合開始剤として、光照射により分解してラジカルを生成する一般的な開始剤、例えば、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジブトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチルチオキサントン等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で、又は複数種を混合して用いられてもよい。重合開始剤として、熱によりラジカルを発生する過酸化物を用いてもよい。
【0047】
組成物は、適宜、アクリル樹脂やシリカゾル等の有機または無機のフィラー、各種添加剤、例えば増感剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、微粒子金属酸化物、レベリング剤、その他付加機能発現のための添加剤が添加されていてもよい。
【0048】
この組成物を、熱、赤外線、紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射により、膜状に硬化させたり、鋳型内で硬化させたりすると、硬化物が得られる。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明を適用する硬化性樹脂成分の製造方法により製造した例を実施例に示し、本発明を適用外の硬化性樹脂成分の製造方法により製造した例を比較例に示す。
【0050】
(実施例1)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下漏斗を取り付けたフラスコに、フェニルグリシジルエーテル(PGE)であるエピオールP(日本油脂株式会社製;商品名、エポキシ当量154)の154g(1モル量)、重合禁止剤であるメトキノンの0.140g(500ppm)と2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールの0.140g(500ppm)とチオジフェニルアミンの0.014g(500ppm)、触媒として金属含有化合物であるテトラn−ブチルチタネートの2.80g(1重量%)を仕込み、120℃まで昇温させた。滴下漏斗よりアクリル酸無水物の126g(1モル)を1〜2時間かけて滴下し、滴下終了後120℃で11時間反応させた。JIS K0070に準拠した方法で、このJIS K0070に準拠した測定方法により酸価が5以下となったこと、およびJIS K7236に準拠した測定方法によりエポキシ当量が7000g/当量以上となったことを確認し、反応終点とした。60℃付近まで冷却した後、フラスコから生成物を取り出し、所望とするPGEとアクリル酸無水物とからなる硬化性樹脂成分を得た。その硬化性樹脂成分の純度を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。その結果を、表1に示す。
【0051】
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
触媒と反応時間とを、表1に記載の条件に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂成分を得た。その硬化性樹脂成分の純度を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。その結果を、纏めて、表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から明らかな通り、実施例のようなルイス酸である金属を含有している金属含有化合物触媒を用いた製造方法によれば、約86〜88%の高純度の硬化性樹脂成分が得られた。この硬化性樹脂成分は、赤外吸収スペクトル法により水酸基のピークが認められなかった。一方、比較例のような4級アンモニウム塩や、ルイス塩基であるアミン又はホスフィンである金属非含有化合物触媒を用いた製造方法によれば、硬化性樹脂成分が低純度で得られるに過ぎなかった。
【0054】
(実施例6)
攪拌機、温度計、冷却管を取り付けたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(BisAジグリシジル)であるjER827(ジャパンエポキシレジン株式会社製;商品名、エポキシ当量180、純度85〜88%)(BISAEP)の180g、アクリル酸無水物の126g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルー4−メチルフェノールの0.153g、触媒としてテトラn−ブトキシジルコニウムであるオルガチックスZA−65(マツモトファインケミカル株式会社製;商品名)の3.06g(1wt%)、助触媒としてライトエステルP−2M(共栄社化学株式会社製;商品名)の0.918gを仕込み、85℃まで昇温させたのち、85℃で19時間反応させた。JIS K0070に準拠した測定方法による酸価が5以下となったこと、およびJIS K7236に準拠した測定方法によるエポキシ当量が7000g/当量以上となったことを確認し反応終点とした。60℃付近まで冷却した後、フラスコから生成物を取り出し、所望とするBISAEPとアクリル酸無水物とからなる硬化性樹脂成分を得た。その硬化性樹脂成分の純度を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。その結果を、表2に示す。
【0055】
(実施例5、7〜11)
実施例6のビスフェノールA型エポキシ樹脂jER827に代えて、フェニルグリシジルエーテル、9,9'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(エポキシ当量256、純度85〜88%)、ノボラック型エポキシ樹脂であるEOCN−104S(日本化薬株式会社製;商品名、エポキシ当量216)、パーフルオロデカンジオールジグリシジルであるフルオライトFE−16(共栄社化学株式会社製;商品名、エポキシ当量355)を用いたことと、表2に記載の通りの触媒・助触媒を用いて所定の反応時間で反応させたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂成分を得た。その硬化性樹脂成分の純度を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。その結果を、纏めて、表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
表2から明らかな通り、エポキシ化合物がフェニルグリシジルエーテルである場合、助触媒を用いた実施例5は、助触媒を用いない実施例4と比較すると、純度が向上した。また、エポキシ化合物がBisA−ジグリシジルやビスフルオレン型エポキシ樹脂である場合、その純度が85〜88%であり、硬化性樹脂成分の純度も略同等であるから、エポキシ化合物とアクリル酸無水物との反応が略定量的に進行したと考えられる。なお、エポキシ化合物がノボラック型エポキシ樹脂である場合、その分子量分布に相当の幅があることから、GCP測定による純度測定はできない。
【0058】
なお、実施例で得られた硬化性樹脂成分の赤外吸収スペクトル(IR)測定をしたところ、水酸基に基づくピークは殆ど認められなかった。また、目視により着色の有無を観察したところ、殆ど着色が認められず、とりわけテトラn−ブトキシジルコニウムと酸助触媒とを用いた場合に全く着色が認められなかった。
【0059】
(実施例12)
攪拌機、温度計、冷却管を取り付けたフラスコに、実施例14で得たビスフルオレン型エポキシ樹脂へのアクリル酸無水物の付加物である硬化性樹脂成分の50重量部と、溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの50重量部、処理剤として表3に記載の通りキョーワード#100(協和化学工業株式会社製;商品名)の5〜1重量部、水の1〜5重量部を混合し、80℃で1時間攪拌した。1時間後、60℃以下まで冷却し、濾過により触媒及びキョーワードを除去して、硬化性樹脂成分を精製した。その硬化性樹脂成分の固形分100重量部に対して、光重合開始剤であるIrgacure184(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製;商品名)の3重量部を加えて溶解させ、硬化性樹脂組成物を調製した。その組成物を、アルミ皿上に塗布し、高圧水銀灯を用いエネルギー線量が600mJ/cmとなるように紫外線照射することにより、硬化させて、膜状の硬化物を得た。その硬化物について、蛍光X線分析により、残存ジルコニウム量を定量した。なお、ブランクとして、触媒の除去をしないこと以外は同様にして、実施例14のビスフルオレン型エポキシ樹脂へのアクリル酸無水物の付加物である硬化性樹脂成分を用いて組成物を調製し、硬化させた後、蛍光X線分析を行い、ジルコニウム残存量を求めた。その結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
硬化性樹脂成分は、金属含有化合物触媒を含んだままでもよいが、吸着剤を用いた触媒除去処理により、触媒を除去することができる。吸着剤とともに水を用いて触媒除去処理をすると、検出限界以下に触媒を除去することができる。
【0062】
(実施例13)
攪拌機、温度計、冷却管を取り付けたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂jer827(ジャパンエポキシレジン株式会社製;エポキシ当量180)(BISAEP)の180g、アクリル酸無水物の63g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルー4−メチルフェノールの0.122g、触媒としてテトラn−ブトキシジルコニウムであるオルガチックスZA−65(マツモトファインケミカル株式会社製;商品名)の2.43g(1wt%)、助触媒としてライトエステルP−2M(共栄社化学株式会社製;商品名)の0.729gを仕込み、85℃まで昇温させたのち、85℃で10時間反応させた。JIS K0070に準拠した測定方法による酸価が5以下となったことを確認し反応終点とした。60℃付近まで冷却した後、反応容器から生成物を取り出し所望とする硬化性樹脂成分を得た。得られた樹脂を、5℃、室温、40℃で長期保存した後、GPCにより分子量分布を追跡した。その結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
表4から明らかな通り、ビスフェノールA型エポキシ樹脂へのアクリル酸無水物の部分付加物は、エポキシ樹脂中の約85%を占めるエポキシ樹脂主成分へ部分的に付加したものであり、経時的に、安定であった。なお、エポキシ樹脂中の残余の約15%を占める二量体以上の不純オリゴマーも部分的に付加される。エポキシ樹脂のエポキシ基のうち一部分を(メタ)アクリレート化した化合物は、レジスト用保護膜やプリント基板用層間絶縁膜を形成する樹脂の原材料として非常に有用である。従来のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレート化合物は、経時安定性が悪く、分解してしまう。それと異なり、この実施例で得たビスフェノールA型エポキシ樹脂へのアクリル酸無水物の部分付加物は、非常に安定であった。
【0065】
(実施例14)
攪拌機、温度計、冷却管を取り付けたフラスコに、ノボラック型エポキシ樹脂EOCN−104S(日本化薬株式会社製;エポキシ当量216)の216g、アクリル酸無水物の63g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルー4−メチルフェノールの0.140g、触媒としてテトラn−ブトキシジルコニウムであるオルガチックスZA−65(マツモトファインケミカル株式会社製;商品名)の2.79g(1wt%)、助触媒としてライトエステルP−2M(共栄社化学株式会社製;商品名)の0.837gを仕込み、85℃まで昇温させたのち、85℃で10時間反応させた。JIS K0070に準拠した測定方法による酸価が5以下となったことを確認し反応終点とした。60℃付近まで冷却した後、反応容器から生成物を取り出し所望とする硬化性樹脂成分を得た。得られた樹脂を所定の温度で保管し、GPCにより、数平均分子量と重量平均分子量との分子量分布を追跡した。その結果を表5に示す。
【0066】
【表5】

【0067】
表5から明らかな通り、数平均分子量も重量平均分子量も、長期間保存後に、殆ど変化がないことから、硬化性樹脂成分は、経時的に安定であった。
【0068】
次に、実施例5、6、9及び10で得た硬化性樹脂成分と、比較のため実施例5、6でのアクリル酸無水物(AAH)に代えてアクリル酸(AA)を用いたこと以外は実施例5、6と同様にして得た硬化性樹脂成分とを、夫々を用いて調製した組成物から、硬化物を調製した。
【0069】
(硬化物の調製実施例1〜4、硬化物の調製比較例1〜2)
実施例5、6、9及び10の硬化性樹脂成分(PGE−AAH、jER827−AAH、BFL−AAH、EOCN−104S−AAH)の100重量部と、光重合開始剤であるIrgacure184(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製;商品名)の5重量部とを、混練して、組成物を調製した。それをガラス板およびアルミ皿上に塗布し、離型PETフィルムを被せ、高圧水銀灯を用いエネルギー線量が600mJ/cm2となるように紫外線照射することにより、硬化させ、膜状の硬化物を得た。また、溶剤を含有しているものについては、80℃の乾燥機で乾燥した後、離型PETフィルムを被せ、高圧水銀灯を用いエネルギー線量が600mJ/cm2となるように紫外線照射することにより、硬化させて、硬化物調製実施例の膜状の硬化物を、調製した。同様に、アクリル酸(AA)を用いた硬化性樹脂成分(PGE−AA、jER827−AA)から、硬化物調製比較例の硬化物を調製した。
【0070】
次に、得られた硬化物について、以下の理化学分析を行った。
【0071】
(吸水率)
上記硬化方法にて得られた試料を長さ20mm、幅20mm、厚さ0.5mmに調整したものについて、試料の重量を測定し、60℃の水に24時間浸漬した後、試料表面の水を拭き取り、直ちに重量を測定し、以下の式により吸水率を算出した。
吸水率(%)=[(吸水後重量)−(吸水前重量)/(吸水前重量)]×100
その結果を表6に示す。
(鉛筆硬度)
【0072】
鉛筆硬度については、上記硬化方法にて100μmのPET基材上に10μmになるように硬化させた塗膜について、JISK5600に基づき加重1kgで測定を行い、傷の入らない最も硬い鉛筆の硬度で示した。その結果を表6に示す。
【0073】
(誘電率,誘電正接)
上記硬化方法にて得られた試料について同軸共振機型の誘電率測定装置ADMS01O(株式会社エー・イー・ティー・ジャパン社製;商品名)を用いて、周波数1GHzの条件により、誘電率(ε)及び誘電正接(tan δ)を測定した。その結果を表6に示す。
【0074】
(耐スチールウール性)
上記硬度測定と同一方法により得られた塗膜について、200g/cmの荷重にてスチールウール(0000番)で10往復した後の塗膜表面状態を観察した。5を傷無し、4を1〜10本の傷有り、3を十数本程度の傷有り、2を全面に無数の傷有り、1を白化あるいは膜剥がれ有りとする5段階で評価した。その結果を表6に示す。
【0075】
【表6】

【0076】
表6から明らかな通り、本発明を適用する実施例の硬化性樹脂成分を硬化させた硬化物は、高い硬度を有し、誘電率・誘電正接が低く、吸水性が低かった。それに対し、本発明を適用外の比較例の硬化性樹脂成分は、実施例よりも低い硬度を示し、誘電率・誘電正接が高く、吸水性が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂成分は、家電製品や精密機器や電子部品等の製品のための成形材料、低誘電性部材、低吸水性部材等の原材料として、又、封止剤や表面塗装剤の原材料として、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基含有フルオロ化合物、エポキシ基含有共重合化合物、芳香環基、脂環基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はアルキレン基を含有するエポキシ樹脂から選ばれる何れかのエポキシ化合物中のエポキシ基1.0モル当量に対し、(メタ)アクリル酸無水物の0.1〜1.0モル当量を、金属含有化合物触媒の存在下で、開環付加させることを特徴とする硬化性樹脂成分の製造方法。
【請求項2】
前記金属含有化合物触媒が、金属アルコキシドであることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂成分の製造方法。
【請求項3】
前記金属アルコキシドが、その金属をチタン又はジルコニウムとし、そのアルコキシド基を炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状又は環状で飽和又は不飽和のアルコールに由来するものとすることを特徴とする請求項2に記載の硬化性樹脂成分の製造方法。
【請求項4】
金属含有化合物触媒が、酸を含む助触媒を、共存させていることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂成分の製造方法。
【請求項5】
前記エポキシ化合物が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のパーフルオロアルキル基、パーシャルフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基及び/又はパーシャルフルオロアルキレン基を含有している前記エポキシ基含有フルオロ化合物であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂成分の製造方法。
【請求項6】
前記エポキシ基含有フルオロ化合物が、下記化学式(I)
A−Rf−B ・・・(I)
(化学式(I)中、A−は、
【化1】

から選ばれるエポキシ基含有基、
−Rf−は、-CH2-(CF2)m-(CH2)n-(m=1〜20、n=0〜1の整数)、-CH2-(CF2)p-C[-(CF2)q-F][-(CF2)r-F]-CH2-(p=1〜10、q=0〜22、r=1〜22の整数)、又は-CH2-(CF2)s-(-O-Ct2t)u-O-(CF2)v-(CH2)w-(s=1〜3、t=1〜4、u=1〜100、v=0〜3、w=0〜1の整数)、
−Bは、該A−と同一若しくは異なる前記エポキシ基含有基、-Cy2y+1若しくは-OCH2-Cy2y+1(y=1〜22の整数)、又は-Cz2z-1若しくは-OCH2-Cz2z-1(z=3〜20の整数)である。)
で表されることを特徴とする請求項5に記載の硬化性樹脂成分の製造方法。
【請求項7】
前記エポキシ化合物が、エポキシ基含有不飽和モノマーとエポキシ基非含有不飽和モノマーとの共重合による前記エポキシ基含有共重合化合物であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂成分の製造方法。
【請求項8】
前記エポキシ基含有共重合化合物が、
【化2】

から選ばれるエポキシ基含有基及び(メタ)アクリロイル基を含有する前記エポキシ基含有不飽和モノマーと、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、パーフルオロアルキル基又はパーシャルフルオロアルキル基、及び(メタ)アクリロイル基を含有する前記エポキシ基非含有モノマーとの共重合体であって、そのエポキシ基一つあたりの分子量を100〜10000とすることを特徴とする請求項7に記載の硬化性樹脂成分の製造方法。
【請求項9】
前記エポキシ化合物が、前記芳香環基、脂環基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はアルキレン基を含有する前記エポキシ樹脂であって、そのエポキシ基一つあたりの分子量を100〜10000とすることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂成分の製造方法。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂が、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールエポキシ樹脂、ビフェノールエポキシ樹脂、ビスフルオレン型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタンエポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタンエポキシ樹脂、フェノールジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂から選ばれる芳香環基を含有するエポキシ化合物;それらの飽和体、およびトリシクロデカン骨格含有エポキシ樹脂から選ばれる前記脂環基を含有するエポキシ樹脂;アルキレンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルから選ばれる前記直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を含有するエポキシ樹脂のいずれかであって、そのエポキシ基一つあたりの分子量を100〜10000とすることを特徴とする請求項9に記載の硬化性樹脂成分の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかに記載の硬化性樹脂成分の製造方法により、製造された該硬化性樹脂成分を、含有させて硬化性樹脂組成物を調製し、それを塗布し又は成型して硬化させることを特徴とする硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2009−96758(P2009−96758A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270193(P2007−270193)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】