説明

硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、光学材料、並びに発光装置

【課題】容易に製造でき、微粒子の添加によって屈折率が増加した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、その複合材料が硬化して形成された樹脂−微粒子複合体からなり、適度な柔軟性を有し、発光素子の封止部材や充填部材などとして好適な光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置を提供する。
【解決手段】高屈折率無機微粒子の表面を、微粒子同士の凝集を防止する第1の表面処理剤と、末端にシリコーン樹脂材料と重合できる反応部位を有する第2の表面処理剤とで処理する。次に、C=C結合を有するシロキサン系化合物(1)及びSiH基を有するシロキサン系化合物(2)を含有するシリコーン樹脂材料と、上記微粒子と、ヒドロシリル化触媒とを混合し、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を調製する。この際、シロキサン系化合物(1)と(2)は、別々に前記微粒子と混合して貯蔵しておき、硬化処理に際して両者を混合して重合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子の添加によって樹脂の特性が変更された樹脂−微粒子複合体の材料である硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、その硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなる光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズや光透過性フィルムなどの一般光学部品や、オプトエレクトロニクス用の精密光学部品の材料として、有機高分子樹脂からなる光学材料(以下、略して有機光学樹脂と言う。)が用いられる傾向が強まっている。この理由として、有機光学樹脂が、無機光学材料に比べて、軽量、安価で、壊れにくく、加工性や量産性に優れていることが挙げられる。
【0003】
例えば、有機光学樹脂は、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)などの発光素子を備えた発光装置(発光デバイス)の封止材料等として用いられている。これらの発光装置は、小型でありながら、高輝度であるため、自動車のストップランプ、信号灯、野外用大型ディスプレイ等、種々の用途で用いられている。また、消費電力が少なく、長寿命であることから、最近では携帯電話用液晶ディスプレイや大型液晶テレビのバックライト光源等としても用いられている。
【0004】
図4は、上記発光装置の一般的な構造の一例を示す断面図である。図4に示すように、発光装置100では、反射カップ11の凹部12に発光素子13が配置され、発光素子13に接して凹部12を埋め込むように封止部材114が配置されている。発光素子13から出射された光は、封止部材114との境界面を通過した後、封止部材114内を通り、直接に、或いは反射カップ11の壁面で反射されて、外部に取り出される。
【0005】
封止部材114は、発光素子13や配線が空気中の酸素や湿気やその他の腐食性ガスに直接接触するのを防止することや、さらには発光素子が外力によって物理的な損傷を受けるのを防止すること等を目的として設けられるもので、発光装置100の特性や封止部材114の設置目的に応じて、適宜適当な形状や厚さで配置される。例えば、一般的なLEDでは、発光素子13の上あるいは上方に、図4に示すような形状で適当な厚さに配置される。
【0006】
封止部材114の材料としては、従来、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等の透明樹脂が用いられているが、多くの場合、エポキシ系樹脂が用いられている。しかし、エポキシ系樹脂は耐熱性および耐光性が不足し、近年需要が増大している高出力の発光素子に用いるには問題がある。
【0007】
例えば、エポキシ系樹脂のガラス転移点Tgは100〜150℃であり、ガラス転移点Tg以上の温度では線膨張係数が増大する(Phys.Stat.Sol.(a),194,No.2,380-388(2002)参照。)。このため、エポキシ系樹脂を封止部材として用いた場合、発光素子の発熱によってエポキシ系樹脂がガラス転移点Tg以上の温度に加熱されると、封止部材の変形によって発光素子への配線が切断されるおそれが生じる。これを防止するためには、発光素子の出力を、エポキシ系樹脂の温度がガラス転移点Tgを越えない大きさに制限せざるを得なくなる。
【0008】
また、エポキシ系樹脂は耐光性、特に紫外光や青色光に対する耐光性が不足している。このため、高輝度LEDや青色発光LED等の封止に用いられた場合、LEDから放射される光に暴露されると黄色に変色し、時間の経過とともにLEDの出力を低下させる原因になる。
【0009】
そこで、最近、発光素子、特に高輝度LEDや青色発光LEDでは、エポキシ樹脂に代わる封止材料として、シリコーン系樹脂が用いられるようになってきている。シリコーン系樹脂は耐光性が良好であり、高輝度LEDや青色発光LED等の封止に用いられた場合でも、LEDの出力を低下させる原因になりにくい。また、適度な柔軟性を有するので、発光素子の発熱によって加熱され高温になった場合でも、発光素子への配線に加わる応力を小さく抑えることができ、配線を切断してしまうことがない。
【0010】
一方、上記とは別の有機光学樹脂の問題点として、屈折率が小さいことが挙げられる。例えば、実用化されているシリコーン系樹脂の屈折率は高々1.5程度であり、これよりやや大きいエポキシ系樹脂の屈折率でも1.53〜1.57である。一般に屈折率が1.7をこえる有機光学樹脂を得ることは難しい。これに対し、高輝度LEDや青色発光LEDなどのチップ基板として用いられることの多いサファイア基板の屈折率は、1.76である。このように、従来の発光装置では、発光素子13と封止部材114との間に大きな屈折率の差が存在するため、発光素子13から出射された光の一部が発光素子13と封止部材114との界面において全反射され、全反射された光の多くが発光素子13によって吸収される。この結果、発光素子13から光を取り出す効率が低く抑えられている。従って、発光素子13からの光取り出し効率を向上させるために、封止部材114の高屈折率化が求められている。
【0011】
そこで、大きな屈折率を有する無機ナノ粒子を有機光学樹脂に分散させ、有機光学樹脂を複合体化することによって、より大きな屈折率を有し、しかも、有機光学樹脂と同様に軽量、安価で、壊れにくく、加工性や量産性に優れている材料を実現しようとする研究開発が行われている。近年、粒径が1μm以下のナノ粒子が注目されており、粒径が光の波長の1/4以下のナノ粒子であれば、光を散乱させることが少ない。無機材料の中には、金属酸化物などからなり、大きな屈折率を有するものがある。
【0012】
例えば、後述の特許文献1には、上述した有機光学樹脂−無機ナノ粒子複合体を介して、LEDなどの発光素子からの光を取り出すように構成された発光装置が提案されている。有機光学樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が例示され、高屈折率の無機材料としては、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が例示され、高屈折率の無機ナノ粒子の添加によって、複合体の屈折率を1.5から1.8程度へ向上させることができると記載されている。
【0013】
しかしながら、特許文献1には、有機光学樹脂に無機ナノ粒子を均一に分散させる構成や製造方法に関しては何も述べられていない。通常、有機光学樹脂に無機微粒子を均一に分散させる方法としては、まず、適当な溶媒に無機微粒子を分散させた分散液を調製し、これに硬化前の硬化性有機光学樹脂モノマーを均一に混合した後、モノマーを重合させ、有機光学樹脂−無機微粒子複合体を形成する方法が用いられる。この際、無機微粒子は一般に有機材料に対する親和性が乏しく、しかも、無機微粒子同士は凝集し合う力が極めて強いので、無機微粒子同士が凝集し、上記複合体の透明性が損なわれてしまう懸念がある。このような凝集を起こさせず、無機微粒子を有機光学樹脂中に均一に分散させるためには、無機ナノ粒子の表面処理など、何らかの追加的構成や製造方法が必要であるのは明らかである。
【0014】
無機粒子の表面処理に関しては、例えば、後述の特許文献2に、粒子径が1〜100nmの金属酸化物超微粒子の表面を酸性基、あるいは酸性基と塩基性基の両方で修飾し、電子供与性を有するポリマー中に分散させた複合体が提案されている。ポリマーとしては、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、およびビスフェノールAとエピクロロヒドリンの共重合ポリマー等が例示され、酸性基を有する表面処理剤としては、炭素数1〜20の飽和あるいは不飽和脂肪族カルボン酸が例示され、塩基性基を有する表面処理剤としては、炭素数1〜20の飽和あるいは不飽和脂肪族アミンが例示されている。
【0015】
また、後述の特許文献3には、ポリマーと無機粒子とをリンカー分子によって一体化させたブレンド材料によって屈折率が異なる種々の材料を形成し、これらの材料を積層することによって、フォトニック結晶などの光学構造体を作製した例が報告されている。特許文献3によれば、ポリマーは、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、複素環ポリマー、および修飾されたポリオレフィンなどの有機ポリマー、ポリシランおよびポリシロキサンなどの無機ポリマー、あるいはこれらの共重合体である。
【0016】
また、リンカー分子は、官能基を支持するフレーム部分と、フレーム部分によって支持される2個以上の官能基とを有する。フレーム部分は、主として脂肪族や芳香族の炭化水素基などの有機基であるが、シリル基及び/又はシロキシ基を含むこともできる。官能基の1つは、無機粒子への化学結合に適するものであり、無機粒子の組成に応じて適切な官能基が選択される。ここでいう化学結合は、共有結合、イオン結合、配位結合などを含む幅広い結合を意味する。もう1つの官能基は、ポリマーとの共有結合に適するものである。ポリマーは、リンカー分子の官能基と共有結合する適当な官応基を含むように選択されるか、またはそのように合成される。ここでいう共有結合は、極性結合を含む幅広い共有結合を意味する。
【0017】
【特許文献1】特開2004−15063号公報(第8−10頁、図2及び3)
【特許文献2】特開2003−73558号公報(第2−4頁)
【特許文献3】特表2004−537767号公報(第12−16頁、図31)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
既述したように、特許文献1には、無機ナノ粒子の表面処理に関して何も述べられていない。特許文献2に示されている酸性基を有する表面処理剤(炭素数1〜20の飽和あるいは不飽和脂肪族カルボン酸)、および塩基性基を有する表面処理剤(炭素数1〜20の飽和あるいは不飽和脂肪族アミン)のそれぞれ1種では、複合体に分散させ得る無機ナノ粒子の添加量、複合体における屈折率の向上の度合い、対応できる有機樹脂材料の種類などが狭い範囲に限定される。
【0019】
特許文献3には、ポリマー中に無機粒子を分散させるための構成として、無機粒子表面を活性化させるリンカー分子を用いる構成が示されている。しかしながら、このリンカー分子は、無機粒子との化学結合に適する官能基と、ポリマーとの共有結合に適する官能基とを既にもっているので、さらに無機粒子の凝集を防ぐ特性や所望の光学的特性を追加しようとすると、その分子は特殊な構造の分子になり、市販品の中から入手することが難しく、特別に合成することが必要になる。実際、特許文献3には、リンカー分子の具体的な構造式などは示されていない。また、ポリマーや無機粒子の特性が変化した場合、それに合わせて官能基やフレーム部分を最適化しようとすると、いちいち別種のリンカー分子を合成することが必要になる。従って、特許文献3の構成のままで、ポリマーと無機粒子とを最適なリンカー分子によって一体化させたブレンド材料を実現することは難しい。
【0020】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、容易に製造でき、微粒子の添加で屈折率が増加した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、その複合材料が硬化して形成された樹脂−微粒子複合体からなり、適度な柔軟性を有し、発光素子の封止部材や充填部材などとして好適な光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
即ち、本発明は、屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化の、架橋環構造を含まないシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料であって、
前記微粒子の表面が第1の表面処理剤と第2の表面処理剤とによって表面処理されて おり、
前記第1の表面処理剤及び前記第2の表面処理剤が、それぞれ、下記の一般式(1) および一般式(2)で示される有機分子からなる、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料に係わるものである。
第1の表面処理剤:R1−X1・・・(1)
第2の表面処理剤:R2−X2・・・(2)
(式中、R1は、前記微粒子同士が凝集するのを防止する有機基で、アリール基、アリールオキシ基、及び、飽和又は不飽和の脂肪族又は脂環族炭化水素基からなる群から選ばれた少なくとも1種からなり、その一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。R2は、前記シリコーン樹脂材料の少なくとも一部分と親和する構造を有し、かつ、前記シリコーン樹脂材料の硬化に際し前記シリコーン樹脂材料と重合できる反応部位を末端に有する炭化水素基であり、その一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、また、分子鎖中にエステル結合及び/又はエーテル結合を有していてもよい。X1及びX2は、前記微粒子の表面と結合を形成し得る官能基である。)
【0022】
本発明は、また、屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化の、架橋環構造を含まないシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料であって、
前記微粒子の表面が、第1の表面処理剤と第2の表面処理剤とによって表面処理され ており、
前記第1の表面処理剤及び前記第2の表面処理剤が、それぞれ、下記の一般式(1) および一般式(2)で示される有機分子からなる、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法であって、
前記第1の表面処理剤と前記第2の表面処理剤とを含む溶媒中において、前記微粒子 の2次凝集を解消する分散処理を行い、前記微粒子の表面を前記第1の表面処理剤と前 記第2の表面処理剤とで表面処理する工程を行った後に、
表面処理された前記微粒子と、前記の未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料とを混 合する工程を行う、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法に係わるものである。
第1の表面処理剤:R1−X1・・・(1)
第2の表面処理剤:R2−X2・・・(2)
(式中、R1は、前記微粒子同士が凝集するのを防止する有機基で、アリール基、アリールオキシ基、及び、飽和又は不飽和の脂肪族又は脂環族炭化水素基からなる群から選ばれた少なくとも1種からなり、その一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。R2は、前記シリコーン樹脂材料の少なくとも一部分と親和する構造を有し、かつ、前記シリコーン樹脂材料の硬化に際し前記シリコーン樹脂材料と重合できる反応部位を末端に有する炭化水素基であり、その一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、また、分子鎖中にエステル結合及び/又はエーテル結合を有していてもよい。X1及びX2は、前記微粒子の表面と結合を形成し得る官能基である。)
【0023】
本発明は、また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなる、光学材料に係わり、また、発光素子から出射された光が、前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている、発光装置に係わるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の特徴は、前記の無機材料からなる微粒子の表面処理剤として、特性の異なる2種類の表面処理剤、すなわち、前記第1の表面処理剤と前記第2の表面処理剤とを用いることにある。
【0025】
前記第1の表面処理剤R1−X1は、基X1によって前記微粒子の表面に吸着されるが、このとき、有機基R1は前記微粒子の表面を被覆する。この結果、前記第1の表面処理剤は前記微粒子同士が結びつき凝集するのを防止する立体障害として機能し、屈折率の大きな無機材料からなる前記微粒子が、凝集することなく、未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に均一に分散する。このため、前記微粒子の添加によって、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料、及びこれから得られる前記樹脂−微粒子複合体の透明性を損なうことなく、それらの屈折率を向上させることができる。
【0026】
前記R1は、直鎖状、分岐状、環状の何れでもよく、飽和でも不飽和でもよく、また、各種の置換基を有していてもよい。必要に応じて、前記第1の表面処理剤を2種類以上用いてもよい。屈折率を高めるためには前記シリコーン樹脂材料が芳香族環を含むことが好ましく、その場合には、屈折率を高めるためにも、また、前記シリコーン樹脂材料との親和性を向上させるためにも、有機基R1が芳香族環を含むことが好ましい。
【0027】
前記第2の表面処理剤R2−X2は、基X2によって前記微粒子の表面に吸着される一方、前記炭化水素基R2によって前記シリコーン樹脂材料の少なくとも一部分と親和する。このR2は、末端に前記シリコーン樹脂材料と重合できる反応部位を有しているため、効率よく前記シリコーン樹脂材料が硬化する際に前記シリコーン樹脂材料と結合し、前記シリコーン樹脂材料と一体化する。このようにして、前記第2の表面処理剤R2−X2は、硬化した樹脂−微粒子複合体において前記微粒子を安定に保持する働きをする。
【0028】
特許文献1のように、前記シリコーン樹脂材料と重合する性質をもたない、前記第1の表面処理剤R1−X1のような表面処理剤のみで表面処理された前記微粒子からなる硬化性樹脂材料−微粒子複合材料では、前記微粒子と前記シリコーン樹脂材料との結びつきが弱いため、前記シリコーン樹脂材料の重合度が大きくなり、前記シリコーン樹脂材料同士の結びつきが強まると、前記微粒子が排除され、前記微粒子同士の凝集が生じ、白濁することがある。これに対し、本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料では、前記シリコーン樹脂材料と重合した前記第2の表面処理剤R2−X2が、シリコーン樹脂と前記微粒子との間を橋かけし、強く結びつける働きをする。この結果、前記微粒子を取り込みながら前記シリコーン樹脂材料の硬化が進行するので、シリコーン樹脂から排除された前記微粒子が凝集して白濁を生じるというようなことは起こらない。必要に応じて、前記第2の表面処理剤を2種類以上用いてもよい。
【0029】
上記のように、前記シリコーン樹脂材料の重合度を大きくしても、白濁しない硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を構成するには、前記第2の表面処理剤R2−X2が必須である。しかしながら、これは、前記微粒子の表面処理剤のすべてが前記シリコーン樹脂材料と重合できる反応部位を有する必要がある、ということではない。前記シリコーン樹脂材料と重合できる反応部位を有する必要があるのは、前記微粒子の表面処理剤の一部で十分であり、他の表面処理剤には、前記第1の表面処理剤R1−X1のように、表面処理剤に求められる他の特性、すなわち、前記微粒子の凝集を防ぐ特性や、所望の屈折率などの光学的特性をもたせるようにすればよい。
【0030】
この結果、特許文献3のリンカー分子のみを用いる構成と異なり、特殊な構造の表面処理剤をわざわざ合成しなくても容易に製造でき、前記シリコーン樹脂材料の重合度を大きくした場合にも透明性が保たれ、硬化後に適度な柔軟性を有し、屈折率が向上した、発光素子の封止部材や充填部材などとして好適な硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を実現することができる。
【0031】
上記のように、本発明では表面処理剤がもつべき機能を、前記第1の表面処理剤と前記第2の表面処理剤とで分担して実現する。この結果、各表面処理剤がもつべき機能は限られたものになり、前記第1の表面処理剤及び前記第2の表面処理剤として、一般的で容易に入手可能な材料の中から最適なものを選択して用いることができる。また、前記シリコーン樹脂材料と前記微粒子との混合比率に対応して、前記第1の表面処理剤と前記第2の表面処理剤との比率を最適化することも可能である。前記第1の表面処理剤と前記第2の表面処理剤との物質量(mol)の比率は、
前記第1の表面処理剤の物質量:前記第2の表面処理剤の物質量=1:1〜30:1
が好ましく、
前記第1の表面処理剤の物質量:前記第2の表面処理剤の物質量=2.5:1〜20:1
がより好ましい。第2の処理剤が少なすぎる場合には、硬化時の白濁を抑えられず、一方、第2の処理剤が多すぎる場合には、粒子の分散性が損なわれるか、もしくは十分な屈折率が得られないことがある。
【0032】
なお、特開2005−272697号公報には、架橋環式構造の導入によって、シリコーン系樹脂の硬度および強度を高めることができる例が示されている。このような構成は、硬化後の前記樹脂−微粒子複合体の硬度および強度を特に向上させたい場合には有効であるが、本発明の硬化性樹脂−微粒子複合体はそれほどの硬度および強度を必要とせず、むしろ適度な柔軟性を残している方が好ましい。従って、前記シリコーン樹脂材料は架橋環構造を含まない。この架橋環式構造とは、厳密には、架橋環式炭化水素(又はその置換体)から1個又は複数個の水素原子を取り除くことによって生じる構造を有する、1価又は多価の基のことである
【0033】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法は、前記した本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法であって、
前記第1の表面処理剤と前記第2の表面処理剤とを含む溶媒中において、前記微粒子 の2次凝集を解消する分散処理を行い、前記微粒子の表面を前記第1の表面処理剤と前 記第2の表面処理剤とで表面処理する工程を行った後に、
表面処理された前記微粒子と、前記の未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料とを混 合する工程を行う、
ので、前記微粒子の前記2次凝集を解消し、前記微粒子を前記未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料中に均一に分散させることができ、本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を確実に製造することができる。
【0034】
また、本発明の光学材料は、前記した本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料中の前記未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料が硬化して生じたシリコーン樹脂と前記微粒子との樹脂−微粒子複合体からなるので、上述したように、透明性が高く、シリコーン樹脂単独の光学材料よりも大きな屈折率を有している。また、この光学材料は、従来のシリコーン樹脂と同様、化学的に安定で、耐光性が良好であり、軽量、安価で、加工性や量産性に優れている。
【0035】
また、前記光学材料は、前記光学材料は、透明性を損なうことなくシリコーン樹脂材料の重合度を高めることができるので、前記発光素子の封止部材などとして用いられた場合に、前記発光素子を保護する性能が高い。また、発光素子の発熱によって加熱されて高温になった場合でも、流動性が増大しすぎて前記光学材料が前記発光装置から流出するといった現象が発生することがなく、前記発光装置の長期的信頼性を確保することができる。一方、適度な柔軟性を有するので、発光素子への配線に加わる応力を小さく抑えることができ、配線を切断してしまうことがない。以上の結果、歩留まりよく、耐久性に優れた発光装置を提供することができる。
【0036】
また、本発明の発光装置では、発光素子から出射された光が、本発明の光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている。この際、前記光学材料は、透明性が高く、シリコーン樹脂単独の光学材料よりも大きな屈折率を有しているので、前記発光素子からの光取り出し効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料において、前記シリコーン樹脂材料の硬化が、付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C二重結合)と、水素原子と結合しているケイ素原子からなる基(SiH基)とのヒドロシリル化反応によって行われるのがよい。これに応じて、前記R2は、前記シリコーン樹脂材料と重合できる前記反応部位として、付加反応性炭素-炭素二重結合(C=C二重結合)を末端に有するか、又は前記反応部分として水素原子と結合しているケイ素原子からなる基(SiH基)を末端に有しているのがよい。
【0038】
付加反応性とは、アルケンなどの炭素−炭素二重結合が一般的に有する、酸分子などの付加を受けやすい反応性のことであるが、本発明では、特に、下記の反応式(1)で示されるように、C=C二重結合を形成している2個の炭素原子が、SiH基の付加を受け、それぞれ、水素原子およびケイ素原子と結合を形成するヒドロシリル化反応を行う反応性を意味するものとする。
【0039】
反応式(1):
【化1】

【0040】
硬化性シリコーン樹脂材料には、C=C二重結合を有するシロキサン系化合物と、SiH基を有するシロキサン系化合物とを含有し、両者がヒドロシリル化反応によって重合することによって硬化するものがある。前記の未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料がこのような硬化性シリコーン樹脂材料で構成されていると、加熱するだけで、いかなる物質の出入りもなく前記シリコーン樹脂材料を硬化させることができるので好ましい。
【0041】
この場合、前記第2の表面処理剤が前記R2の末端に有する前記反応部位が、前記シリコーン樹脂材料中に含まれるSiH基とヒドロシリル化反応を行えるC=C二重結合であるか、前記シリコーン樹脂材料中に含まれるC=C二重結合とヒドロシリル化反応を行えるSiH基であればよい。このようであれば、前記の未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料がヒドロシリル化反応によって硬化する際に、前記第2の表面処理剤もまたヒドロシリル化反応によって前記シリコーン樹脂材料と重合して、生成するシリコーン樹脂と一体化する。この結果、前記シリコーン樹脂材料が硬化する際に前記第2の表面処理剤が結合している前記微粒子もシリコーン樹脂内に取り込まれ、前記微粒子がシリコーン樹脂から排除されて凝集し白濁を生じるということが起こらない。
【0042】
上述したように、ヒドロシリル化反応による重合が加熱によって促進されることによって、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の前記硬化処理が行われるのがよい。また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料にヒドロシリル化反応を促進するヒドロシリル化反応触媒が含まれているのがよい。
【0043】
このヒドロシリル化反応触媒は白金族系触媒であるのがよく、具体的には、塩化白金酸、白金アセチルアセトネート、塩化白金酸とオクタノールとの錯体、白金のビニルシロキサンとの錯体を挙げることができる。白金族系触媒の添加量は、白金の質量が、オルガノシロキサン系化合物の全質量に対して0.5〜200ppmであるのが好ましい。白金族系触媒の添加量が多すぎると、前記樹脂−微粒子複合体が黄変または茶変する等の問題が生じることがある。
【0044】
また、前記シリコーン樹脂材料が、付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C二重結合)を1分子中に2つ以上有する第1のシロキサン系化合物、水素原子と結合しているケイ素原子(SiH基)を1分子中に2個以上有する第2のシロキサン系化合物、及びヒドロシリル化反応触媒とからなり、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とは別々に貯蔵され、ヒドロシリル化反応によって前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とを重合させる硬化処理の前に、混合されるのがよい。このように、C=C二重結合とSiH基とを別々のシロキサン系化合物に保有させ、両者を別々に貯蔵することによって、貯蔵中にヒドロシリル化反応が進行してしまうことを完全に防止することができる。この結果、長期間の保存が可能となり、いわゆるポットライフが長くなる。
【0045】
前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とが次々に連結して高分子を形成するには、各シロキサン系化合物がC=C二重結合およびSiH基をそれぞれ2個以上保有していることが必要である。それ以外の制限はこれらのシロキサン系化合物にないが、適切な特性を有するシロキサン系化合物を用い、重合度を適切に調節することによって、硬化前の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度、および硬化後の前記樹脂−微粒子複合体の硬度を所望の大きさにするか、少なくとも近づけることができる。例えば、低分子量のシロキサン系化合物を用いれば、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度を低下させることができる。また、シロキサン系化合物1分子が保有するC=C二重結合及び/又はSiH基の数を増加させることによって、三次元網目状に高分子鎖を連結して、前記樹脂−微粒子複合体の硬度および強度を向上させることができる。
【0046】
前記微粒子は、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とのいずれに混合されていてもよく、両者に混合されていてもよい。両者に混合されている場合、前記第1のシロキサン系化合物に混合される微粒子と前記第2のシロキサン系化合物に混合される微粒子とは、同じ種類の微粒子であってもよいし、異なる種類の微粒子であってもよい。
【0047】
前記ヒドロシリル化反応触媒は、前記第2の表面処理剤が有する前記反応部位がC=C二重結合である場合には、前記第1のシロキサン系化合物に混合されているのがよく、前記反応部位がSiH基である場合には、前記第2のシロキサン系化合物に混合されているのがよい。これは、上記の逆にした場合、貯蔵中に前記第2の表面処理剤と前記第1又は前記第2のシロキサン系化合物との間でヒドロシリル化反応が進行し、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料がゲル化してしまうおそれがあるからである。
【0048】
前記第1のシロキサン系化合物が保有するC=C二重結合を含む基として、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基などを挙げることができる。これらの基が含まれる位置は前記第1のシロキサン系化合物の末端でも側鎖でもよい。
【0049】
また、前記第2のシロキサン系化合物において、SiH基が含まれる位置は前記第2のシロキサン系化合物の末端でも側鎖でもよい。
【0050】
前記第1のシロキサン系化合物および前記第2のシロキサン系化合物の構成の一例を、それぞれ、下記一般式(3)と(4)および(5)と(6)に示す。一般式(3)および(5)は分子骨格が直鎖状である例であるが、分子骨格が枝分かれを有していてもよい。一般式(4)および(6)は分子骨格が環状である例であるが、環が側鎖を有していてもよい。また、下記一般式(3)〜(6)は、分子を構成している構造単位を示すのみで、それらの結合順などの構造を示すものではない。
【0051】
前記第1のシロキサン系化合物の一般式(3):
【化4】

【0052】
前記第1のシロキサン系化合物の一般式(4):
【化5】

(ただし、一般式(3)および(4)中、XはC=C二重結合を含む基を表し、RA〜RCはアルキル基またはシクロアルキル基を表す。lおよび(m+n)は1以上の整数であり、pは2以上の整数である。)
【0053】
前記第2のシロキサン系化合物の一般式(5):
【化6】

【0054】
前記第2のシロキサン系化合物の一般式(6):
【化7】

(ただし、一般式(5)および(6)中、ZはSiH基を含む基を表し、RA〜RCはアルキル基またはシクロアルキル基を表す。lおよび(m+n)は1以上の整数であり、qは2以上の整数である。)
【0055】
なお、一般式(3)〜(6)でRA〜RC、l、m、およびnは同じ記号を用いたが、これは便宜上であって、これらが示す構造又は数値は、一般式(3)〜(6)において同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【0056】
前記第1のシロキサン系化合物の具体的な例として、下記の化学式(1)〜(4)で示される化合物を挙げることができる。また、前記第2のシロキサン系化合物の具体的な例として、下記の化学式(5)〜(8)で示される化合物を挙げることができる。なお、化学式(1)〜(8)は、分子を構成している構造単位を示すのみで、これらの結合順などの詳細な構造を示すものではない。
【0057】
前記第1のシロキサン系化合物の構造式(1):
【化8】

【0058】
前記第1のシロキサン系化合物の構造式(2):
【化9】

【0059】
前記第1のシロキサン系化合物の構造式(3):
【化10】

【0060】
前記第1のシロキサン系化合物の構造式(4):
【化11】

【0061】
前記第2のシロキサン系化合物の構造式(5):
【化12】

【0062】
前記第2のシロキサン系化合物の構造式(6):
【化13】

【0063】
前記第2のシロキサン系化合物の構造式(7):
【化14】

【0064】
前記第2のシロキサン系化合物の構造式(8):
【化15】

【0065】
また、前記シリコーン樹脂材料は、主として有機シロキサン、例えばジメチルシロキサンの構造を有する部分からなるのがよい。有機シロキサンは化学的に安定な構造である。また、前記シリコーン樹脂材料は、フェニル基を含有する構造部分、例えばメチルフェニルシロキサンやジフェニルシロキサンの構造を有する部分からなるのがよい。フェニル基を含有すると、前記シリコーン樹脂材料、ひいては前記樹脂−微粒子複合体の屈折率が高くなるので好ましい。
【0066】
また、前記シリコーン樹脂材料は、エポキシ基、カルボキシル基、ポリエーテル基、及びカルビノール基からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有するのがよい。これらの基は、前記シリコーン樹脂材料と基板材料などとの結びつきを強化する働きをする。
【0067】
また、前記第1の表面処理剤及び前記第2の表面処理剤において、前記X1及び前記X2は、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、メルカプト基−SH、及び、ハロゲン及び/又は有機性の基で置換されたシラニル基であるのがよい。上述したX1およびX2のうち、カルボキシル基、ヒドロヒドロキシホスホリル基、ホスホノ基、スルフィノ基、およびスルホ基は、前記微粒子の表面とイオン結合する。メルカプト基は、前記微粒子の表面と共有結合する。ハロゲン及び/又は有機性の基で置換されたシラニル基は、前記微粒子の表面のヒドロキシ基−OHと反応して、前記微粒子の表面に−O−Si−結合を形成して結合する。その他に、前記第1の表面処理剤及び前記第2の表面処理剤は、前記微粒子の表面と配位結合あるいは水素結合を形成する官能基を有するものであってよい。
【0068】
また、前記第1の表面処理剤及び前記第2の表面処理剤の分子量が1×103以下であるのがよい。前記表面処理剤の分子量が1×103を超えると、低屈折率成分である前記表面処理剤の割合が大きくなりすぎ、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における、高屈折率成分である前記微粒子の体積充填率を十分に大きくすることができない。この結果、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率、ひいては前記樹脂−微粒子複合体の屈折率を所望の値に向上させることができなくなるおそれがある。なお、前記微粒子の体積充填率とは、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における前記微粒子の体積の割合のことである。また、前記表面処理剤の分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。この際、分子量が既知のポリスチレンを用いて検量線を作成し、これを基準として分子量を決定するのがよい。
【0069】
前記微粒子の表面を被覆し、前記微粒子同士の凝集を防止するために、前記R1は、炭素数6〜18程度の大きさを有しているのがよい。具体的には、前記第1の表面処理剤として、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、アセチル安息香酸、ジフェニル−4−安息香酸、フェニル酢酸、ジフェニル酢酸、メチル安息香酸、ブチル安息香酸、フェノキシ酢酸、フェノキシ安息香酸、フェニルブタン酸、フェニル酪酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、デカンチオール、ドデカンチオール、およびオクタデカンチオールなどを挙げることができる。
【0070】
また、前記第1の表面処理剤がシラン置換体である場合、オクチルトリメトキシシラン、オクチルジメチルメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルメチルジエトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、4−フェニルブチルジメチルクロロシラン、4−フェニルブチルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、およびm−フェノキシフェニルジメチルクロロシランなどを挙げることができる。
【0071】
なお、4−フェニルブチルジメチルクロロシラン、4−フェニルブチルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、m−フェノキシフェニルジメチルクロロシラン、およびスチリルエチルトリメトキシシランなどのシラン置換体は、屈折率が高いので、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率を高くするのに好適である。これらシラン置換体は、用いるシリコーン樹脂材料に応じて複数を任意の比率で配合して用いることができる。
【0072】
前記第2の表面処理剤として、アクリル酸、メタクリル酸、3−ブテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、9−デセン酸、3−ビニル安息香酸、および4−ビニル安息香酸などを挙げることができる。また、前記追加の表面処理剤がシラン置換体である場合、7−オクテニルジメチルクロロシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、およびスチリルエチルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0073】
また、前記樹脂−微粒子複合体の硬度を調整する目的で、前記第1のシロキサン系化合物および前記第2のシロキサン系化合物と重合しない非重合性シロキサン系化合物を前記シリコーン樹脂材料に含めることができる。非重合性シロキサン系化合物の例として、ジオルガノポリシロキサンを挙げることができる。特にフェニル基を含むジオルガノポリシロキサンは、前記樹脂−微粒子複合体の屈折率が高くなるので好ましい。非重合性シロキサン系化合物の添加量は、前記第1のシロキサン系化合物および前記第2のシロキサン系化合物の合計を100重量部としたとき、80重量部以下とすることが好ましい。また、非重合性シロキサン系化合物の分子量は、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の流動性が損なわれない範囲で選択するのがよい。
【0074】
前記第1のシロキサン系化合物および前記第2のシロキサン系化合物の粘度として、1×10-2〜10Pa・s、好ましくは1×10-2〜5Pa・s、より好ましくは1×10-2〜2.5Pa・sを例示することができる。これらのシロキサン系化合物の粘度が大きすぎる場合には、前記微粒子を分散させた前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の流動性が損なわれ、発光素子を封止することが困難になる場合がある。上記のシロキサン系化合物の数平均分子量としては、2×102〜2×104を例示することができる。なお、粘度は、コーンプレート型の回転式粘度計を用いて測定した数値である。また、シロキサン系化合物の分子量は、GPCを用いた方法に基づき測定することができる。
【0075】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は透明であるのがよい。このようであれば、硬化して得られる樹脂−微粒子複合体を光学材料として好適に用いることができる。なお、本発明において「透明である」とは、後述の実施例において説明する光透過率の測定方法に基づいて測定された、厚さ0.5mmの試料の光透過率が、可視光及び/又は近赤外光に対して80%以上であることを意味するものとする。
【0076】
また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率が可視光域において1.55以上であるのがよい。この場合、この硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は、既存のエポキシ樹脂の屈折率と同等以上となり、屈折率の高い光学樹脂材料として高い利用価値をもつことになる。なお、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は、前記微粒子の種類と体積充填率とに基づき制御が可能であり、可視光域において屈折率1.55以上を達成することができる。なお、屈折率は、例えばアッベ屈折率計あるいはVブロック方式の屈折率計を用いて測定する。
【0077】
また、前記微粒子を構成する前記無機材料は、可視光域において1.9以上の屈折率を有するのがよい。この前記無機材料は、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化セリウム(CeO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、五酸化ニオブ(Nb25)、五酸化タンタル(Ta25)、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、及びケイ素の単体からなる群から選ばれた少なくとも1種類の無機物質からなるのがよい。前記微粒子は、これら無機化合物のうちの2種類以上の前記微粒子が混合された状態で構成されていてもよい。なお、上記の無機化合物を構成する金属元素の窒化物によって、前記微粒子を構成することもできる。
【0078】
また、前記微粒子の粒径(R)が2〜20nmであるのがよく、好ましくは2〜10nmであることが望ましい。ここで言う前記微粒子の粒径は、ミクロトームを用いて前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の薄片を作製し、これを透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察し、前記微粒子の観察像の粒径を計測することによって得られた測定値である。透過型電子顕微鏡にて観察された前記微粒子の立体形状が球形ではない(平面形状が円形ではない)場合には、観察された前記微粒子の平面形状の面積と同じ面積を有する円形を想定し、その円形の直径を粒径とするものとする。球形ではない前記微粒子の立体形状の例として、ロッド状、回転楕円体状、直方体などを挙げることができる。
【0079】
前記微粒子の粒径(R)の平均値をRave、標準偏差をσとしたとき、前記微粒子の粒径(R)の上限が20nmであり、好ましくは10nmであるとは、
ave+2σ≦20nm
であり、好ましくは
ave+2σ≦10nm
であることを意味するものとする。
【0080】
前記微粒子の粒径を20nm以下に限定することで、レイリー散乱に起因した樹脂−微粒子複合体における光透過率の低下を抑制することができ、実用上、透明な樹脂−微粒子複合体を得ることができる。光透過率は、光路長が長くなるに伴って指数関数的に減少するので、光路長が長くなる程、小さな微粒子を用いることが好ましい。なお、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料中において前記微粒子の凝集体が形成されると、凝集体のサイズが実効的な粒子サイズとなるので、光の散乱を抑えるためには、既述したように、前記微粒子が凝集体を形成しないように表面処理された状態で分散していることが必要である。
【0081】
なお、前記微粒子の粒径が2nmより小さくなると、前記微粒子の比表面積が著しく大きくなり、前記微粒子の表面を被覆するために必要になる表面処理剤の量が多くなりすぎる。このような場合、被覆された前記微粒子において、屈折率の小さい表面処理剤の割合が大きくなりすぎ、前記微粒子を添加しても硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率をそれほど高めることができなくなる。また、粒径が2nmより小さくなると、少量の前記微粒子の添加で前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度が著しく増加する。これらの理由から、前記微粒子の粒径は2nm以上であるのがよい。
【0082】
本発明の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は、以下の考え方に基づき、前記微粒子の充填量によって調節することができる。すなわち、高屈折率の前記微粒子が樹脂材料中に均一に分散した前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率は、Maxwell-Garnet理論に基づく下記の関係式(1)を用いて見積もることができる(C. F. Bohren and D. R. Huffman, "Adsorpiton and Scattering of Light by Small Particles", John Wiley & Sons, New York, 1983, pp 213 参照)。但し、関係式(1)においては、前記微粒子を被覆する表面処理剤はないものと仮定している。
【0083】
数式(1):
【数1】

(数式(1)中、
εav :前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料全体の平均比誘電率
εp :前記微粒子の比誘電率
εm :樹脂の比誘電率
η :前記微粒子の体積充填率
である。)
【0084】
屈折率nは、n=ε1/2で表されるので、式(1)を用いて、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料全体の平均屈折率を見積もることができる。例えば、屈折率2.5のアナターゼ型の酸化チタン・ナノ粒子を前記微粒子として用い、屈折率1.5のシリコーン樹脂中に分散させた場合には、前記微粒子の体積充填率ηを0.06および0.15としたとき、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料全体(平均)の屈折率は、1.55および1.63となる。
【0085】
この例のように、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料に含有させる前記微粒子の体積充填率ηを変えることによって、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料全体の屈折率を調整することが可能である。それ故、予め前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の目標の屈折率に応じて前記微粒子の構成材料を選定し、更には、体積充填率ηを設定すればよい。ここで、前記微粒子の体積充填率ηは、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を加熱して有機成分を燃焼した後の残渣(前記微粒子)の量から求めることができる。加熱重量変化は、例えば、TG測定により測定することができる。最終的に得られた前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における前記微粒子の体積充填率の値は、例えば、0.01〜0.4であることが好ましい。
【0086】
また、粒径が光の波長よりも十分に小さい場合のレイリー散乱に基づく前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における光透過率は、以下の数式(2)、(3)および(4)から得ることができる。
【0087】
数式(2):
【数2】

【0088】
数式(3):
【数3】

【0089】
数式(4):
【数4】

(数式(2)〜(4)中、
sca:散乱断面積(単位:nm2
αsca:消光率(単位:nm-1
m :マトリクス(シリコーン樹脂)の屈折率
p :球状粒子(前記微粒子)の屈折率
r :球状粒子(前記微粒子)の半径(=Rave/2)
λ :空気中の光の波長
T :透過率
I :材料透過後の光強度
ini:入射光強度
t :厚さ(単位:nm)
である。)
【0090】
従って、例えば、屈折率2.5のアナターゼ型の酸化チタン・ナノ粒子を前記微粒子として用い、屈折率1.5のシリコーン樹脂中に分散させた場合には、体積充填率ηが0.15のとき、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の光が通過する部分の厚さt=0.5mmにおいて透明であるためには、前記微粒子の粒径Rを6nm以下にしなければならない。また、屈折率2.2の酸化ジルコニウム・ナノ粒子を前記微粒子として用い、屈折率1.5のシリコーン樹脂中に分散させた場合には、体積充填率ηが0.15のとき、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の光が通過する部分の厚さt=0.5mmにおいて透明であるためには、前記微粒子の粒径Rを8nm以下にしなければならない。このように前記微粒子の粒径R及び体積充填率ηは、用いるマトリクス樹脂材料の屈折率及び前記微粒子の屈折率により、所望の透明性が得られるように適宜選択されることが望ましい。
【0091】
また、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料には、耐熱性、耐光性を維持する目的で、公知の酸化防止剤や光安定剤が、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料に含まれていてもよい。
【0092】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、発光装置の光路に屈折率調整部材を配置するための発光装置用充填材料として用いられるのがよい。前記樹脂材料単独の場合と同様に、透明、軽量、安価で、加工性や量産性に優れており、しかも、前記樹脂単独の場合よりも大きな屈折率を有するため、発光装置の光路に屈折率調整部材を配置するための発光装置用充填材料として好適に用いられ、発光装置からの光出射効率を向上させることができる。
【0093】
本発明の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法において、前記表面処理剤による前記微粒子の表面処理は、液相中において行う。具体的には、まず、前記微粒子を有機溶媒中に展開し、次に、前記必須の表面処理剤と、必要なら前記追加の表面処理剤を添加する。有機溶媒は、前記表面処理剤が溶解するものであればよい。前記表面処理剤の添加量は、前記微粒子表面を1層だけ被覆する量よりも少し過剰な量とすることが望ましい。
【0094】
次に、この混合物に対して、公知の分散機を用いた分散処理を行う。これによって、前記微粒子の2次凝集体が解砕される。前記微粒子が、液相合成されたものであって、未乾燥のものであれば、2次凝集が緩やかであるため、解砕が容易であり、好適である。また、前記表面処理剤は、分散機による解砕処理の際に前記微粒子表面に吸着される。分散機による解砕処理の温度は、室温から80℃までの間であることが望ましい。
【0095】
その後、前記表面処理剤で被覆された前記微粒子を、前記微粒子が一様に分散した分散液あるいは沈殿物として回収する。分散液あるいは沈殿物の違いは、使用する有機溶媒の種類による。また、得られた分散液に貧溶媒を添加して前記微粒子を再凝集させ、遠心分離により沈殿物として回収することも可能である。沈殿物として回収する場合には、遠心分離による沈殿分離、洗浄用の有機溶媒による洗浄を繰り返して余剰の前記表面処理剤を除去した後、真空乾燥して回収すればよい。
【0096】
また、本発明の前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法において、前記第1および第2の表面処理剤によって表面処理された前記微粒子と、前記第1のシロキサン系化合物及び/又は前記第2のシロキサン系化合物との混合は、具体的には、以下の2通りの方法の何れかによって行うことができる。すなわち、第1の方法は、シロキサン系化合物、および必要に応じて添加される添加成分と共通の良溶媒中に前記微粒子を分散させた後、シロキサン系化合物および添加成分を添加し、攪拌、混合した後、溶媒のみを加熱減圧下で除去する方法である。この際、シロキサン系化合物および添加成分は蒸気圧が低いため、ほとんど蒸発することはない。第2の方法は、微粒子の乾燥粉と、シロキサン系化合物および添加成分とを直接混合し、公知の混練機を用いて均一に混ぜ合わせる方法である。
【0097】
そして、表面処理された前記微粒子と前記第1のシロキサン系化合物とを混合して第1の混合物を調製する工程と、表面処理された前記微粒子と前記第2のシロキサン系化合物とを混合して第2の混合物を調製する工程とを行い、前記第1の混合物と前記第2の混合物を別々に貯蔵しておき、前記硬化処理の前に混合するのがよい。この際、前記第1のシロキサン系化合物に混合される微粒子と前記第2のシロキサン系化合物に混合される微粒子とは、同じ種類の微粒子であってもよいし、異なる種類の微粒子であってもよい。ヒドロシリル化反応触媒は、前記第1のシロキサン系化合物に混合されているのがよい。この理由は前述した通りである。
【0098】
ヒドロシリル化触媒が添加され、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とが均一に混合された前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は、温度80〜150℃に加熱することによってヒドロシリル化反応を促進し、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とを重合させて、硬化させる。加熱雰囲気は大気雰囲気とすることができ、具体的な加熱方法としては、公知のオーブンを用いて150℃にて5時間保持するといった方法を例示することができる。
【0099】
この際、表面処理剤として前記第2の表面処理剤が含まれていると、前記第2の表面処理剤が末端に付加反応性炭素−炭素二重結合(C=C)を有するため、効率よくその一部の分子がヒドロシリル化反応によって前記第2のシロキサン系化合物と一体化する。このため、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における前記微粒子の分散性が維持されたまま、硬化が起こり、前記微粒子の位置が固定化されるので、硬化時における前記微粒子同士の凝集を効果的に防止することができる。
【0100】
本発明の光学材料は、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなり、屈折率調整材料、光学レンズ材料、光導波路材料、及び反射防止材料として用いられるのがよい。例えば、前記屈折率調整材料としては発光装置用の封止部材や充填部材として用いることができる。
【0101】
前記樹脂−微粒子複合体は、固体状あるいはゲル状である。なお、本発明で前記樹脂−微粒子複合体がゲル状であるとは、柔軟性を有し、しかも、塑性変形しない性状であることを意味するものとする。
【0102】
前記樹脂−微粒子複合体の線膨張係数は、20〜150℃において5×10-4以下であるのがよい。前記樹脂−微粒子複合体は、線膨脹係数が大きすぎず、適度な硬さを有する。上記の条件を満たすことによって、前記発光素子の封止部材などとして用いられた場合に、発光装置の動作時、発光素子の発熱に起因して前記樹脂−微粒子複合体が高温になった場合でも、発光素子への配線に加わる応力を小さく抑えることができ、配線を切断してしまうことがない。なお、線膨張係数は熱機械分析装置(TMA)を用いて測定することができる。
【0103】
本発明の発光装置は、前記発光素子と、前記発光素子を封止する封止部材とを具備する発光装置であって、前記封止部材が前記光学材料からなるのがよい。この際、反射カップの凹部に前記発光素子が配置され、前記発光素子に接して前記凹部を埋め込むように前記封止部材が配置されており、前記発光素子から出射された光が、直接に、或いは反射カップの壁面で反射されて、前記封止部材を構成する前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されているのがよい。
【0104】
また、前記発光素子、前記発光素子を封止する封止部材、及び前記発光素子と前記封止部材との間に存在する隙間を埋める充填部材を具備する発光装置であって、前記充填部材が前記光学材料からなるのがよい。この際、上記発光装置が、反射カップの凹部に前記発光素子が配置され、前記発光素子に接して前記凹部を埋め込むように前記充填部材が配置され、前記充填部材に接して前記封止部材が配置されており、前記発光素子から出射された光が、直接に、或いは反射カップの壁面で反射されて、前記充填部材を構成する前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されているのがよい。
【0105】
これらの発光装置において、前記封止部材の表面に防汚層が設けられているのがよい。この防汚層は、フッ素系樹脂、例えば、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物などからなるのがよい。
【0106】
以上の結果、歩留まりよく、耐久性に優れた発光装置を提供することができ、前記発光装置の長期的信頼性を確保することができ、耐久性に優れた発光装置を提供することができる。
【0107】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態に基づく発光装置についてより具体的に説明するが、本発明の発光装置はこれらの例に限定されるものではない。
【0108】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に基づく発光装置10の構造を模式的に示す断面図である。発光装置10は、請求項37及び38に記載した発光装置に対応し、図4に示した従来の一般的な発光装置100と類似した構造を有し、反射カップ11の凹部12に発光素子13が配置され、発光素子13に接して凹部12を埋め込むように充填部材14が配置され、充填部材14に接して封止部材15が配置されており、発光素子13から出射された光が、直接に、或いは反射カップ11の壁面で反射されて、充填部材14および封止部材16を介して外部に取り出されるように構成されている。充填部材14は、発光素子13の上あるいは上方に、発光装置10の目的に応じて適宜適当な形状や厚さで配置される。例えば、図1に示すように、反射カップ11の凹部12の蓋として砲弾形状で配置される。
【0109】
発光装置10の特徴は、充填部材14を構成する光学材料が、本発明の、樹脂−微粒子複合体からなる光学材料であることである。この光学材料は高屈折率材料の微粒子15の添加によって、透明で高い屈折率を有するため、発光素子13から出射された光が発光素子13と充填部材14との界面において全反射されることが抑えられ、この結果、光取り出し効率が向上している。
【0110】
しかも、光学材料が適度な柔軟性を有するが故に、動作中に発光素子13が高い温度になった場合においても、応力歪みが小さく抑えられる。例えば、充填部材14に埋め込まれて形成されている、(図示省略した)発光素子13の素子電極と配線電極とを接続するワイヤ配線に対し、光学材料から断線を生じさせるような応力が作用することがない。また、光学材料は耐光性および耐熱性の良好なものである。これらのことから、本発明による光学材料を用いることで、発光装置10に高い耐久性を付与することができる。
【0111】
発光装置10を構成する発光素子13として、例えば、発光ダイオード(LED)および半導体レーザを挙げることができる。ここで、発光ダイオードとしては、赤色光(例えば、波長640nmの光)を発光する赤色発光ダイオード、緑色光(例えば、波長530nmの光)を発光する緑色発光ダイオード、青色光(例えば、波長450nmの光)を発光する青色発光ダイオード、白色発光ダイオード(例えば、紫外または青色発光ダイオードと蛍光体粒子とを組み合わせて白色光を出射する発光ダイオード)を例示することができる。発光ダイオードは、所謂フェイスアップ構造を有していてもよいし、フリップチップ構造を有していてもよい。即ち、発光ダイオードは、基板、および、基板上に形成された発光層から構成されており、発光層から光が外部に出射される構造としてもよいし、発光層からの光が基板を通過して外部に出射される構造としてもよい。
【0112】
より具体的には、発光ダイオード(LED)は、例えば、基板上に形成された第1導電型(例えばn型)を有する化合物半導体層からなる第1クラッド層、第1クラッド層上に形成された活性層、活性層上に形成された第2導電型(例えばp型)を有する化合物半導体層からなる第2クラッド層が積層された構造を有し、第1クラッド層に電気的に接続された第1電極、および、第2クラッド層に電気的に接続された第2電極を備えている。発光ダイオードを構成する層は、発光波長に依存して、周知の化合物半導体材料から構成すればよい。
【0113】
封止部材16は、発光素子13の上あるいは上方に、発光装置10の目的に応じて適宜適当な形状や厚さで配置される。例えば、図1に示すように、充填部材14を封入するように、反射カップ11の凹部12の蓋として砲弾形状で配置される。封止部材16は、透明材料(例えば、屈折率1.6のポリカーボネート樹脂)からなるが、充填部材14との界面における光反射を抑制するという観点から、充填部材14を構成する光学材料と同程度の高屈折率材料からなるのが好ましい。
【0114】
高屈折率材料としては、例えば、セイコーオプティカルプロダクツ株式会社の商品名プレステージ(屈折率:1.74)や、昭和光学株式会社の商品名ULTIMAX V AS 1.74(屈折率:1.74)や、ニコン・エシロールの商品名NL5−AS(屈折率:1.74)などの高屈折率を有するプラスチック材料、HOYA株式会社製の硝材NBFD11(屈折率n:1.78)や、M−NBFD82(屈折率n:1.81)や、M−LAF81(屈折率n=1.731)などの光学ガラス、並びに、KTiOPO4(屈折率n:1.78)や、ニオブ酸リチウム[LiNbO3](屈折率n:2.23)などの無機誘電体材料を挙げることができる。
【0115】
或いはまた、封止部材16を構成する材料として、具体的には、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スピロ化合物、ポリメチルメタクリレートおよびその共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)、(臭素化)ビスフェノールAのモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体およびその共重合体、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂)、不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。なお、封止部材は、これらの材料の少なくとも1種類の材料から構成されていればよい。また、耐熱性を考慮した場合、アラミド系樹脂の使用も可能である。この場合、後述するフッ素系樹脂からなる防汚層を形成する際の加熱温度の上限が200℃以上となり、フッ素系樹脂の選択自由度を高めることができる。
【0116】
なお、封止部材16の代わりに、実施の形態2において後述する光取り出しレンズを取り付けた発光装置とすることもできる。また、後述するように、封止部材16の表面に防汚層を設けてもよい。
【0117】
実施の形態2
例えば、実施の形態1で説明した発光装置10では、発光素子13から出射された光は、反射カップ11による反射や、封止部材16による凸レンズ効果によって進路が変更され、発光装置10から外部へ出射される光の多くは、主として発光面に垂直な方向(z軸方向)に向かい、主として発光面に平行な方向(x軸およびy軸方向)に向かう光は少ない。このような発光装置を液晶表示装置のバックライト用光源などの面状光源装置に用いた場合、面方向に広がる光が少ないため、面状光源装置に輝度むらが発生してしまう場合がある。
【0118】
本発明の実施の形態2に基づく発光装置は、上記のような現象の発生を回避するためのもので、請求項39に記載した発光装置に対応し、発光装置から外部へ出射される光の多くが、主として発光面に平行な方向(x軸およびy軸方向)に向かうように構成されている。この発光装置は、液晶表示装置のバックライト用光源などの面状光源装置に用いるのに適している。
【0119】
図2は、本発明の実施の形態2に基づく発光装置20の構造を模式的に示す断面図である。発光装置20では、基板21の上に発光素子(発光ダイオード)22が配置され、基板21に設けられた配線部(図示せず)と発光素子22とを接続する配線29が形成されている。発光素子22の光出射側には光取り出しレンズ24が配置されており、その底面25には凹部26が設けられている。発光素子22はこの凹部26内に納められ、発光素子22と光取り出しレンズ24との間の隙間は、充填部材23によって満たされている。
【0120】
光取り出しレンズ24は、軸対称の形状をもち、円形の底面25と、側面27および頂面28とを有し、底面25の中心部に有限の大きさを有する面光源(発光素子22)が配置される(光取り出しレンズ24の詳細については、特願2005−300117参照。)。光取出しレンズ24を構成する材料の例としては、実施の形態2で前述した封止部材22を構成する材料と同じ材料を挙げることができる。
【0121】
発光素子22から上方(z軸方向)へ向かって出射された光は、充填部材23および光取り出しレンズ24内を通過した後、光取り出しレンズ24と外部との境界面であるレンズ24の頂面28に達する。小さな入射角で頂面28に入射した一部の光は、頂面28で屈折し、凹レンズ効果によって光束が広がるように光の進路が変化するものの、上方へ向かって外部へ出射される。一方、大きな入射角で頂面28に入射した大部分の光は、頂面28で全反射され、光の進路が主として発光面に平行な方向(x軸およびy軸方向)に向かうように変化し、側面27から外部へ出射される。発光素子13から光取り出しレンズ24の側面27へ向かって出射された光は、充填部材23および光取り出しレンズ24内を通過した後、小さな入射角で側面27に入射するため、わずかに屈折するだけでほぼ直進し、外部へ出射される。結局、発光素子13から出射された多くの光が、直接に、或いはレンズ24の頂面28で反射されて、側面27から外部に取り出される。
【0122】
本実施の形態に基づく発光装置20の特徴は、充填部材23を構成する光学材料が、本発明の、樹脂−微粒子複合体からなる光学材料であることである。この光学材料は高屈折率材料の微粒子(図示せず)の添加によって、透明で高い屈折率を有するため、発光素子22から出射された光が発光素子22と充填部材23との界面において全反射されることが抑えられ、この結果、光取り出し効率が向上する。
【0123】
なお、光取り出しレンズ24の要点を補足すると、下記の通りである。すなわち、底面25の中心を原点とし、底面25の中心を通る法線をz軸とする円筒座標(r,φ,z)を想定したとき、
頂面28は、面光源から出射される半全立体角放射光のうち、側面27と頂面28の 交わる部分における極角Θ0よりも小さい極角を有する放射光成分の一部分を全反射さ せるための、z軸に対して回転対称である非球面から成り、
側面27は、面光源から出射される半全立体角放射光のうち、極角Θ0よりも大きな 極角を有する放射光成分、および、頂面28によって全反射された放射光成分を透過さ せるための、z軸に対して回転対称である非球面から成り、
非球面からなる側面27を表すzを変数とした関数r=fS(z)において、側面2 7と頂面28の交わる部分のz座標をz1としたとき、0≦z≦z1の閉区間においてz が減少するとき関数r=fS(z)は単調増加し、且つ、該閉区間においてzの2階微 係値の絶対値|d2r/dz2|が極大となる点を少なくとも1つ有する。
但し、光取り出しレンズは、図2に示した光取り出しレンズ24に限定するものではなく、如何なる構成、構造の光取り出しレンズとすることもできる。
【0124】
実施の形態1および2に示した発光装置10および20は、光の出射を必要とする如何なる分野においても使用することができ、このような分野として、例えば、液晶表示装置のバックライト[面状光源装置を含み、直下型およびエッジライト型(サイドライト型とも呼ばれる)の2形式が知られている]、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送手段における灯具や灯火(例えば、ヘッドライト、テールライト、ハイマウントストップライト、スモールライト、ターンシグナルランプ、フォグライト、室内灯、メーターパネル用ライト、各種のボタンに内蔵された光源、行き先表示灯、非常灯、非常口誘導灯等)、建築物における各種の灯具や灯火(外灯、室内灯、照明具、非常灯、非常口誘導灯等)、街路灯、信号機や看板、機械、装置等における各種の表示灯具、トンネルや地下通路等における照明具や採光部を挙げることができる。
【0125】
また、封止部材16や、光取り出しレンズ24の表面に防汚層を形成することもできる。防汚層の厚さは特に限定されないが、透明性の関係から0.5〜50nm、好ましくは1〜20nmであることが望ましい。防汚層を構成する材料は、フッ素系樹脂などがよく、基本的にはパーフルオロポリエーテル基を有していればよく、好ましくはアルコキシシラニル基を有していればよい。
【0126】
防汚層を構成する材料は、本質的にはパーフルオロポリエーテル基以外の分子構造についての制限はないが、実際的には、合成の行い易さ、つまり実現性の観点からの要請に基づく制限は存在する。すなわち、防汚層を構成するのに好ましいフッ素系樹脂として、下記の一般式(7)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を例示することができる。
f(CO−U−R4−Si(OR5)3)j・・・(7)
(式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基であり、Uは2価の原子または基であり、R4はアルキレン基であり、R5はアルキル基であり、j=1または2である。)
【0127】
化学式(7)で示されるアルコキシシラン化合物の分子量は、特に制限されないが、安定性、取り扱い易さ等の点から、数平均分子量で4×102〜1×104、好ましくは5×102〜4×103である。
【0128】
パーフルオロポリエーテル基Rfは、1価または2価のパーフルオロポリエーテル基であり、このようなパーフルオロエーテル基の具体的な構造を一般式(8)〜(11)に示すが、これらに限定されるものではない。一般式(8)〜(11)中、pおよびqは1〜50の整数であることが好ましく、k〜nは、それぞれ、1以上の整数を示す。また、l/mの値は、0.5〜2.0の範囲にあることが好ましい。
【0129】
j=2である場合、一般式(7)におけるパーフルオロポリエーテル基Rfとして、下記の一般式(8)を例示することができる。
−CF2−(OC24)p−(OCF2)q−OCF2−・・・(8)
【0130】
また、j=1である場合、一般式(7)におけるパーフルオロポリエーテル基Rfとして、下記の一般式(9)〜(11)を例示することができる。但し、全てのアルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されている必要はなく、部分的に水素原子が含まれていてもよい。
F(CF2CF2CF2)k− ・・・(9)
CF3(OCF(CF3)CF2)l(OCF2)m− ・・・(10)
F(CF(CF3)CF2)n− ・・・(11)
【0131】
また、パーフルオロポリエーテル基を含む防汚層を構成する材料として、例えば、末端に極性基を持つパーフルオロポリエーテル(特開平9−127307号公報参照。)、特定構造を有するパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物(特開平9−255919号公報参照。)、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を各種材料と組み合わせて得られる表面改質剤(特開平9−326240号公報、特開平10−26701号公報、特開平10−120442号公報、および特開平10−148701号公報参照。)を用いることもできる。
【0132】
Uは、パーフルオロポリエーテル基RfとR4とを連結する、2価の原子または原子団であり、特に制限はないが、合成上、炭素以外の−O−、−NH−、−S−といった原子または原子団が好ましい。R4は炭化水素基であり、炭素数は2〜10の範囲であることが好ましい。具体的には、R4としてメチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基等のアルキレン基や、フェニレン基を例示することができる。R5はアルコキシ基を構成するアルキル基であり、通常は炭素数が3以下、つまり、イソプロピル基、プロピル基、エチル基、およびメチル基を例示することができる。但し、炭素数は4以上であってもよい。
【0133】
防汚層の形成のためには、通常、フッ素系樹脂(例えば、一般式(7)で示したアルコキシシラン化合物)を、溶媒に希釈して用いる。この溶媒としては、特に限定されないが、使用に当たっては、組成物の安定性、封止部材の表面に対する濡れ性、揮発性等を考慮して決める必要がある。具体的には、エチルアルコール等のアルコール系溶剤やアセトン等のケトン系溶剤、あるいはヘキサン等の炭化水素系溶剤等を例示することができ、更には、これらの単独あるいは2種以上の混合物を溶媒として用いることができる。
【0134】
あるいは又、フッ素系樹脂を溶解する溶媒は、使用にあたっての組成物の安定性、封止部材の表面に対する濡れ性、揮発性等を考慮して決定すればよく、例えば、フッ素化炭化水素系溶媒が用いられる。フッ素化炭化水素系溶媒は、脂肪族炭化水素、環式炭化水素、エーテル等の炭化水素系溶媒の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した化合物である。例えば、日本ゼオン社製の商品名ZEORORA−HXE(沸点78℃)、パーフルオロヘプタン(沸点80℃)、パーフルオロオクタン(沸点102℃)、アウトジモント社製の商品名H−GALDEN−ZV75(沸点75℃)、H−GALDEN−ZV85(沸点85℃)、H−GALDEN−ZV100(沸点95℃)、H−GALDEN−C(沸点130℃)、H−GALDEN−D(沸点178℃)等のハイドロフルオロポリエーテル、あるいは、SV−110(沸点110℃)、SV−135(沸点135℃)等のパーフルオロポリエーテル、住友3M社製のFCシリーズ等のパーフルオロアルカン等を挙げることができる。そして、これらのフッ素化炭化水素系溶媒の中でも、上記フッ素系化合物を溶解する溶媒として、ムラのない、膜厚が均一な防汚層を得るために、沸点が70〜240℃の範囲のものを選択し、中でも、ハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)若しくはハイドロフルオロカーボン(HFC)を選択し、これらの1種を単独で、または2種以上を混合して用いることが好ましい。沸点が低すぎると、例えば塗布ムラになり易い傾向があり、一方、沸点が高すぎると、乾燥し難くなり、均一な防汚層の形成が困難となる傾向にある。HFPEまたはHFCは、上記フッ素系化合物に対する溶解性が優れており、優れた塗布面を得ることができる。
【0135】
そして、上記フッ素系樹脂を溶媒に希釈したものを、封止部材の表面に塗布し、例えば加熱することによって溶媒を揮発させると共に、封止部材を構成する材料と防汚層を構成するフッ素系樹脂との結合を生じさせることで、封止部材の表面に防汚層を形成することができる。塗布方法としては、通常のコーティング作業で用いられる各種の方法が適用可能であるが、スピン塗布、スプレー塗布等を好ましく用いることができる。また、作業性の点から紙、布等の材料に液を含浸させて、塗布する方法を採用してもよい。加熱温度は、封止部材の耐熱性等を考慮して選定すればよく、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂を封止部材として用いた場合には、30〜80℃の範囲が適当である。
【0136】
一般式(7)で示されるアルコキシシラン化合物は、パーフルオロポリエーテル基を分子中に有することにより、撥水性を有し、耐汚染性が向上している。従って、このアルコキシシラン化合物を含有する防汚層の形成によって、更に、封止部材の表面に耐摩耗性、耐汚染性等の特性を付与することができる。
【0137】
なお、封止部材を構成する材料と、防汚層を構成する材料との間の反応を促進するための触媒として、酸、塩基、リン酸エステル、および、アセチルアセトンからなる群から選択された少なくとも1種類の材料を防汚層を構成する材料に添加することが好ましい。触媒として、具体的には、塩酸等の酸、アンモニア等の塩基、あるいは、リン酸ジラウリルエステル等のリン酸エステルを例示することができる。触媒の添加量として、1×10-3〜1mmol/Lを挙げることができる。酸または塩基を添加する場合には、アセチルアセトンのようなカルボニル化合物を添加すると、その反応性が高まることから、防汚層を形成するための組成物にカルボニル化合物を添加することが推奨される。このようなカルボニル化合物の添加量は、1×10-1〜1×102mmol/L程度とすることができる。このように、触媒を添加することによって、加熱(乾燥)温度を低くしても、封止部材と防汚層との間に強い結合を形成することができる。その結果、製造プロセス的に有利になると共に、封止部材を構成する材料の選定範囲が広がる。
【0138】
次に、実施の形態1で示した発光装置10の封止部材16の表面に防汚層を形成した実例について説明する。
【0139】
フッ素系樹脂として、両末端にパーフルオロポリエーテル基を有する、下記の一般式(12)で示されるアルコキシシラン化合物(平均分子量は約4000)
f(CO−NH−C36−Si(OCH2CH3)3)2・・・(12)
2重量部を、フッ素系溶剤であり、沸点が130℃のハイドロフルオロポリエーテル(ソルベイソレクシス社製、商品名H−GALDEN)200重量部に溶解し、更に、触媒として、リン酸のパーフルオロポリエーテルエステル0.08重量部を加えて均一な溶液とした後、更に、メンブランフィルターで瀘過を行い、防汚層形成用の組成物を得た。そして、封止部材16の表面に、防汚層形成用の組成物をスプレーを用いて塗布した後、温度70℃で1時間乾燥させ、封止部材16の表面に防汚層が形成された発光装置10を得た。
【0140】
得られた発光装置10の封止部材16にコーンスターチを振りかけ、エアガンでコーンスターチの除去を試みた後、光学顕微鏡にて封止部材22の表面を観察したところ、コーンスターチは完全に除去されていた。
【0141】
また、フッ素系樹脂として下記の一般式(13)で示される樹脂(平均分子量約2000)
f=−CH2CF2(OC24)p(OCF2)qOCF2−・・・(13)
を用い、それ以外は上記と同様にして発光装置20を得た。得られた発光装置20の封止部材22にコーンスターチを振りかけ、エアガンでコーンスターチの除去を試みた後、光学顕微鏡にて封止部材22の表面を観察したところ、コーンスターチは完全に除去されていた。
【0142】
また、フッ素系樹脂として下記の一般式(14)で示される樹脂(平均分子量約650)
CF3(CF2)8CH2Si(OC25)3・・・(14)
を用い、それ以外は上記と同様にして発光装置20を得た。得られた発光装置20の封止部材22にコーンスターチを振りかけ、エアガンでコーンスターチの除去を試みた後、光学顕微鏡にて封止部材22の表面を観察したところ、コーンスターチは完全に除去されていた。
【実施例】
【0143】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0144】
本実施例では、前記微粒子として酸化ジルコニウムZrO2(屈折率2.2)のナノ粒子を用い、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料、前記樹脂−微粒子複合体、および発光装置を作製し、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の粘度および屈折率、前記樹脂−微粒子複合体の光透過率および線膨張率、並びに発光装置の輝度向上率を測定した例について具体的に説明する。
【0145】
本実施例では、前記第1のシロキサン系化合物として、主としてメチルフェニルシロキサンからなり、両末端および側鎖にC=C二重結合を有するシロキサン系化合物(I)(屈折率=1.52、粘度=0.3Pa・s)を用いた。
【0146】
また、前記第2のシロキサン系化合物として、主としてメチルフェニルシロキサンからなり、両末端および側鎖にSiH基を有するシロキサン系化合物(II)(屈折率=1.51、粘度=0.4Pa・s)を用いた。
【0147】
シロキサン系化合物(I)および(II)の構成を示す化学式を下記の化学式(9)および(10)に示す。なお、化学式(9)および(10)は、分子を構成している構造単位を示すのみで、それらの結合順などの詳細な構造を示すものではない。
【0148】
シロキサン系化合物(I)の化学式(9):
【化16】

【0149】
シロキサン系化合物(II)の化学式(10):
【化17】

【0150】
また、前記第1の表面処理剤として、アリールオキシ基を含むカルボン酸である4−フェノキシ安息香酸を用い、前記第2の表面処理剤として、末端にC=C二重結合を有する9−デセン酸を用いた。また、前記ヒドロシリル化反応触媒として、白金族系触媒である白金のビニルシロキサン錯体を用いた。
【0151】
(1)ナノ粒子表面の処理
ゾル−ゲル法で合成された粒径5nmのZrO2ナノ粒子1gをトルエン10mLに加え、これに4−フェノキシ安息香酸1gと9−デセン酸0.1gとを添加し、ディスパーを用いて室温で攪拌した。次に、エタノール40mLを加えた後、遠心分離を行ってナノ粒子を沈殿させ、沈殿物を採取した。そして、この沈殿物にトルエン10mLを加えてディスパーで分散させた後、エタノール40mLを加え、再度、遠心分離を行ってナノ粒子を沈殿させ、沈殿物を採取した。この洗浄と遠心分離との処理工程を3回繰り返した後、沈殿物を回収し、真空下にて乾燥して、4−フェノキシ安息香酸および9−デセン酸によって表面を被覆されたZrO2ナノ粒子を得た。なお、ZrO2ナノ粒子の粒径が5nmであるとは、粒径の平均値をDave、標準偏差をσとしたとき、Dave+2σの値が5nmを越えることはないことを意味する。
【0152】
(2)シリコーン系化合物−微粒子複合材料の調製
次に、上記の表面処理したZrO2ナノ粒子をトルエンに所定量添加し、ディスパーにてトルエン中でZrO2ナノ粒子を分散させた。これに、ZrO2ナノ粒子の体積充填率が10%になるようにシロキサン系化合物(I)を加え、さらに白金のビニルシロキサン錯体を、白金の質量がメチルフェニルシロキサンの質量に対して10ppmになるように加え、攪拌機にて均一に混合した。次に、この混合液からエバポレーター(設定温度40℃)を用いてトルエンを除去した。このようにして、4−フェノキシ安息香酸および9−デセン酸で被覆されたZrO2ナノ粒子が、シロキサン系化合物(I)中に分散したシリコーン系化合物−微粒子複合材料(1)を得た。
【0153】
同様に、表面処理したZrO2ナノ粒子をトルエンに所定量添加し、ディスパーにてトルエン中でZrO2ナノ粒子を分散させた。これに、ZrO2ナノ粒子の体積充填率が10%になるようにシロキサン系化合物(II)を加え、攪拌機にて均一に混合した。次に、この混合液からエバポレーター(設定温度40℃)を用いてトルエンを除去した。このようにして、4−フェノキシ安息香酸および9−デセン酸で被覆されたZrO2ナノ粒子がシロキサン系化合物(II)中に分散したシリコーン系化合物−微粒子複合材料(2)を得た。
【0154】
(3)硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の作製
次に、シリコーン系化合物−微粒子複合材料(1)とシリコーン系化合物−微粒子複合材料(2)とを1:1の質量比で配合し、攪拌、混合した後、脱泡した。
【0155】
(4)硬化処理:樹脂−微粒子複合体の作製
得られた硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を大気中、150℃にて5時間加熱することにより、シロキサン系化合物(I)とシロキサン系化合物(II)とを重合させ、樹脂−微粒子複合体を得た。
【0156】
上述した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の屈折率を、アッベ屈折率計(ATAGO社製:型番NAR−4T)を用いて25℃にて測定したところ、1.59であった。測定波長はナトリウムD線(589nm)とした。また、光路長0.5mmの石英セルに硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を封入し、150℃にて5時間、大気中で加熱して硬化させた後、得られた樹脂−微粒子複合体の光透過率を、UV−可視分光光度計(日立ハイテク社製:型番U−3410)を用い、波長350〜800nmの範囲で測定したところ、光透過率は85%以上であった。光透過率の測定結果を図3に示す。
【0157】
用いた材料を表1に、その他の測定結果を表2にまとめて示す。表2中、微粒子の体積充填率は、前記硬化性樹脂材料−微粒子複合材料における前記微粒子の体積の割合のことである。被覆剤の体積を含まない、ZrO2ナノ粒子単独の体積で求めた数値である。被覆されたZrO2ナノ粒子(粒径5nm)において、ZrO2ナノ粒子の質量分率はおよそ60〜70%であり、残りのおよそ30〜40%が表面処理剤の質量分率であった。
【0158】
(5)発光装置の作製
発光素子として、発光波長455nmの青色発光ダイオードを用い、実施の形態2で説明した発光装置20を試作し、その輝度を測定した。その結果、屈折率1.5の封止部材114を用いて作製した従来の発光装置100(図4参照。)の輝度を基準(100%)として、輝度が10%向上した。
【0159】
【表1】

【0160】
【表2】

【0161】
比較例1
比較例1では、表面処理剤を用いず、それ以外は実施例と同様にして、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。得られた硬化性樹脂材料−微粒子複合材料では、ZrO2ナノ粒子がシリコーン樹脂材料中で著しく凝集しており、全可視光域において透過率は1%以下であり、屈折率は測定不可能であった。
【0162】
比較例2
比較例2では、第2の表面処理剤を用いず、第1の表面処理剤として4−フェノキシ安息香酸1gのみを用いた以外は実施例と同様にして、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。得られた硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の光透過率は85%以上であり、屈折率は1.6であった。しかしながら、硬化時に硬化性樹脂材料−微粒子複合材料は白濁し、透過率は1%以下に低下した。
【0163】
比較例3
比較例3では、第1の表面処理剤を用いず、第2の表面処理剤として9−デセン酸1gを用いた以外は実施例と同様にして、硬化性樹脂材料−微粒子複合材料を作製した。得られた硬化性樹脂材料−微粒子複合材料では、ZrO2ナノ粒子がシリコーン樹脂材料中で著しく凝集しており、全可視光域において透過率は1%以下であり、屈折率は測定不可能であった。
【0164】
以上のように、本実施例の樹脂−微粒子複合体は高い透明性を有し、屈折率が高いことから、従来の部材に比べて発光装置の輝度を向上させることが可能になった。また、適度な柔軟性と硬さを有し、更に線膨張係数が大きすぎないことから、発光装置に優れた耐久性を付与することができる。
【0165】
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の硬化性樹脂材料−微粒子複合材料及びその製造方法、その硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる、無機微粒子の添加によって樹脂の特性が向上した樹脂−微粒子複合体からなる光学材料、並びにその光学材料を用いた発光装置は、光の入出射を必要とするすべての分野において応用することができ、光学装置、とりわけ発光装置の特性の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の実施の形態1に基づく発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に基づく発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施例によって得られた樹脂−微粒子複合体の光透過率を示すグラフである。
【図4】従来の発光装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0168】
10…発光装置、11…反射カップ、12…凹部、13…発光素子、14…充填部材、
15…高屈折率微粒子、16…封止部材、20…発光装置、21…基板、
22…発光素子、23…充填部材、24…光取り出しレンズ、
25…光取り出しレンズの底面、26…凹部、27…光取り出しレンズの側面、
28…光取り出しレンズの頂面、29…配線、100…発光装置、114…封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化の、架橋環構造を含まないシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料であって、
前記微粒子の表面が、第1の表面処理剤と第2の表面処理剤とによって表面処理され ており、
前記第1の表面処理剤及び前記第2の表面処理剤が、それぞれ、下記の一般式(1) および一般式(2)で示される有機分子からなる、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
第1の表面処理剤:R1−X1・・・(1)
第2の表面処理剤:R2−X2・・・(2)
(式中、R1は、前記微粒子同士が凝集するのを防止する有機基で、アリール基、アリールオキシ基、及び、飽和又は不飽和の脂肪族又は脂環族炭化水素基からなる群から選ばれた少なくとも1種からなり、その一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。R2は、前記シリコーン樹脂材料の少なくとも一部分と親和する構造を有し、かつ、前記シリコーン樹脂材料の硬化に際し前記シリコーン樹脂材料と重合できる反応部分を末端に有する炭化水素基であり、その一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、また、分子鎖中にエステル結合及び/又はエーテル結合を有していてもよい。X1及びX2は、前記微粒子の表面と結合を形成し得る官能基である。)
【請求項2】
前記シリコーン樹脂材料の硬化が、付加反応性炭素−炭素二重結合と、水素原子と結合しているケイ素原子からなる基とのヒドロシリル化反応によって行われる、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項3】
前記R2は、前記反応部分として付加反応性炭素-炭素二重結合を末端に有する、請求項2に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項4】
前記R2は、前記反応部分として水素原子と結合しているケイ素原子を末端に有する、請求項2に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項5】
前記硬化処理は加熱によって行われる、請求項2に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項6】
ヒドロシリル化反応触媒が含まれている、請求項2に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項7】
前記ヒドロシリル化反応触媒が白金族系触媒である、請求項6に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項8】
前記シリコーン樹脂材料が、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2つ以上有する第1のシロキサン系化合物、水素原子と結合しているケイ素原子を1分子中に2個以上有する第2のシロキサン系化合物、及びヒドロシリル化反応触媒からなり、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とは別々に貯蔵され、ヒドロシリル化反応による硬化処理の前に混合される、請求項2に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項9】
前記シリコーン樹脂材料は、主として有機シロキサンの構造を有する部分からなる、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項10】
前記シリコーン樹脂材料はフェニル基を含有する、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項11】
前記シリコーン樹脂材料は、エポキシ基、カルボキシル基、ポリエーテル基、及びカルビノール基からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有する、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項12】
前記X1及び前記X2は、カルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、メルカプト基−SH、及び、ハロゲン及び/又は有機性の基で置換されたシラニル基である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項13】
前記第1の表面処理剤及び前記第2の表面処理剤の分子量が1×103以下である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項14】
透明である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項15】
屈折率が1.55以上である、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項16】
前記無機材料は1.9以上の屈折率を有する、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項17】
前記無機材料は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタル、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛、及びケイ素の単体からなる群から選ばれた少なくとも1種類の無機物質からなる、請求項16に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項18】
前記微粒子の粒径が2〜20nmである、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項19】
発光装置の光路に屈折率調整部材を配置するための発光装置用充填材料として用いられる、請求項1に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料。
【請求項20】
屈折率の大きな無機材料からなる微粒子が、未硬化又は半硬化の、架橋環構造を含まないシリコーン樹脂材料中に分散している硬化性樹脂材料−微粒子複合材料であって、
前記微粒子の表面が、第1の表面処理剤と第2の表面処理剤とによって表面処理され ており、
前記第1の表面処理剤及び前記第2の表面処理剤が、それぞれ、下記の一般式(1) および一般式(2)で示される有機分子からなる、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法であって、
前記第1の表面処理剤と前記第2の表面処理剤とを含む溶媒中において、前記微粒子 の2次凝集を解消する分散処理を行い、前記微粒子の表面を前記第1の表面処理剤と前 記第2の表面処理剤とで表面処理する工程を行った後に、
表面処理された前記微粒子と、前記の未硬化又は半硬化のシリコーン樹脂材料とを混 合する工程を行う、
硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
第1の表面処理剤:R1−X1・・・(1)
第2の表面処理剤:R2−X2・・・(2)
(式中、R1は、前記微粒子同士が凝集するのを防止する有機基で、アリール基、アリールオキシ基、及び、飽和又は不飽和の脂肪族又は脂環族炭化水素基からなる群から選ばれた少なくとも1種からなり、その一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。R2は、前記シリコーン樹脂材料の少なくとも一部分と親和する構造を有し、かつ、前記シリコーン樹脂材料の硬化に際し前記シリコーン樹脂材料と重合できる反応部分を末端に有する炭化水素基であり、その一部の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、また、分子鎖中にエステル結合及び/又はエーテル結合を有していてもよい。X1及びX2は、前記微粒子の表面と結合を形成し得る官能基である。)
【請求項21】
前記シリコーン樹脂材料として、付加反応性炭素−炭素二重結合と、水素原子と結合しているケイ素原子とのヒドロシリル化反応によって硬化するシリコーン樹脂材料を用いる、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項22】
前記第2の表面処理剤として、前記R2の末端に前記反応部分として付加反応性炭素-炭素二重結合を有する表面処理剤を用いる、請求項21に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項23】
前記第2の表面処理剤として、前記R2の末端に前記反応部分として水素原子と結合しているケイ素原子を有する表面処理剤を用いる、請求項21に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項24】
ヒドロシリル化反応触媒を添加する工程を有する、請求項21に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項25】
ヒドロシリル化反応触媒として白金族系触媒を用いる、請求項24に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項26】
前記シリコーン樹脂材料として、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2つ以上有する第1のシロキサン系化合物、水素原子と結合しているケイ素原子を1分子中に2個以上有する第2のシロキサン系化合物、及びヒドロシリル化反応触媒からなるシリコーン樹脂材料を用い、前記第1のシロキサン系化合物と前記第2のシロキサン系化合物とは別々に貯蔵し、前記ヒドロシリル化反応による硬化処理の前に混合する、請求項21に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項27】
表面処理された前記微粒子と前記第1のシロキサン系化合物とを混合して第1の混合物を調製する工程と、表面処理された前記微粒子と前記第2のシロキサン系化合物とを混合して第2の混合物を調製する工程とを行い、前記第1の混合物と前記第2の混合物とを別々に貯蔵しておき、前記硬化処理の前に混合する、請求項26に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項28】
前記シリコーン樹脂材料として、主として有機シロキサンの構造を有する部分からなるシリコーン樹脂材料を用いる、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項29】
前記シリコーン樹脂材料として、フェニル基を含有するシリコーン樹脂材料を用いる、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項30】
前記シリコーン樹脂材料として、エポキシ基、カルボキシル基、ポリエーテル基、及びカルビノール基からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有するシリコーン樹脂材料を用いる、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項31】
前記表面処理剤として、前記X1及び前記X2がカルボキシル基−COOH、ヒドロヒドロキシホスホリル基−PH(O)(OH)、ホスホノ基−PO(OH)2、スルフィノ基−SO(OH)、スルホ基−SO2(OH)、メルカプト基−SH、又は、ハロゲン及び/又は有機性の基で置換されたシラニル基であり、前記表面処理において前記微粒子の表面を被覆する表面処理剤を用いる、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項32】
前記表面処理剤として、分子量が1×103以下である表面処理剤を用いる、請求項20に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料の製造方法。
【請求項33】
請求項1〜19のいずれか1項に記載した硬化性樹脂材料−微粒子複合材料が硬化してなる樹脂−微粒子複合体からなる、光学材料。
【請求項34】
屈折率調整材料、光学レンズ材料、光導波路材料、及び反射防止材料として用いられる、請求項33に記載した光学材料。
【請求項35】
発光装置用充填部材として用いられる、請求項33に記載した光学材料。
【請求項36】
発光素子から出射された光が、請求項33に記載した光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている、発光装置。
【請求項37】
前記発光素子、前記発光素子を封止する封止部材、及び前記発光素子と前記封止部材との間に存在する隙間を埋める充填部材を具備する発光装置であって、前記充填部材が前記光学材料からなる、請求項36に記載した発光装置。
【請求項38】
反射カップの凹部に前記発光素子が配置され、前記発光素子に接して前記凹部を埋め込むように前記充填部材が配置され、前記充填部材に接して前記封止部材が配置されており、前記発光素子から出射された光が、直接に、或いは反射カップの壁面で反射されて、前記充填部材を構成する前記光学材料を介して外部に取り出されるように構成されている、請求項37に記載した発光装置。
【請求項39】
前記封止部材は、円形の底面と、凸レンズ形状の側面と、凹レンズ形状の頂面とを有する軸対称形状をもち、前記底面に凹部が設けられ、前記発光素子は前記凹部内で前記底面の中心の位置に配置されており、前記発光素子から出射された光が、主として、直接に、或いは前記頂面で反射されて前記側面から外部へ取り出されるように構成されている、請求項37に記載した発光装置
【請求項40】
前記封止部材の表面に防汚層が設けられている、請求項37に記載した発光装置。
【請求項41】
前記防汚層はフッ素系樹脂からなる、請求項40に記載した発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−185120(P2009−185120A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23933(P2008−23933)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】