説明

硬化性組成物、シーリング剤及び接着剤

【課題】
雰囲気中の湿気により硬化し、ゴム状の硬化物を与え、更に、深部硬化性に優れ、表面タック性がなく、硬化後の高伸び性に優れた硬化性組成物及び該硬化性組成物を用いたシーリング剤及び接着剤の提供。
【解決手段】
架橋可能な加水分解性シリル基を含有する有機重合体(a)と、数平均分子量が有機重合体(a)の3分の2未満であり有機重合体(a)と実質的に同じ主鎖構造を有する有機重合体(b)を含有してなる硬化性組成物であって、下記式(1)を満たす硬化性組成物。
b/fa=0.55〜0.9 (1)
(fa、fbはそれぞれ重合体(a)、重合体(b)中の加水分解性シリル基密度を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気の湿気により架橋して、弾性を有する硬化物を与える硬化性組成物に関し、例えば、シーリング剤、接着剤、塗料、コーティング材、シーラント、プライマー等に好適に用いられる硬化性組成物に関する。更に、この硬化性組成物を用いるシーリング剤及び接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル重合体を主成分とする硬化性組成物が種々提案されている。(例えば、下記特許文献1、2)。これらの硬化性組成物は、雰囲気の湿気により架橋し、弾性を有する硬化物を与える。そのため、上記硬化性組成物は、塗料、コーティング剤、接着剤、感圧接着剤、シーラント及びシーリング剤等の様々な用途に用いられている。
【0003】
上記硬化性組成物は、雰囲気の湿気により硬化するために表面は硬化しやすいが、表面が硬化すると深部への湿気の浸透が低下し易く、深部硬化性が劣るという問題があった。
深部硬化性を改善する方法として、硬化速度を遅くしたり、架橋密度を下げたりする方法が考えられるが、このような方法では表面の硬化が十分でなく表面タック性に問題があった。すなわち、硬化終了後も硬化物表面にべとつき(以下、タックという)が残り、たとえばシーリング材に用いた場合、ほこりの付着等による目地汚染をひきおこし建築物の外観を損なう原因となっていた。
表面タック性に問題がなく深部硬化性を改善する方法として、加水分解性ケイ素基を分子内に1個以上有する有機重合体、および、トリアルキルシリルオキシ基を分子内に2.1個以上含有し、加水分解によりシラノール化合物を発生しうる化合物を含有する硬化性組成物が提案されている(特許文献3)。この提案によれば、タックが改善されるとともに、深部硬化性も改良されるものの、官能基数が高くなるほど伸び物性に与える影響が大きく、必ずしも十分ではなく、さらにタック改善および内部硬化性、ならびに、伸び物性の両立が求められていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭57−179210号公報
【特許文献2】特開平04−43512号公報
【特許文献3】特開平11−241029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、雰囲気中の湿気により硬化し、ゴム状の硬化物を与え、更に、深部硬化性に優れ、表面タック性がなく、硬化後の高伸び性に優れた硬化性組成物及び該硬化性組成物を用いたシーリング剤及び接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、架橋可能な加水分解性シリル基を含有する有機重合体(a)と、数平均分子量が有機重合体(a)の3分の2未満であり有機重合体(a)と実質的に同じ主鎖構造を有する有機重合体(b)を含有してなる硬化性組成物であって、下記式(1)を満たす硬化性組成物である。
/f=0.55〜0.9 (1)
(f、fはそれぞれ重合体(a)、重合体(b)中の加水分解性シリル基密度を表し、1分子中のシリル基量を分子量で除した値である。)
【0007】
請求項2記載の発明は、有機重合体(a)の主鎖構造体が、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド、ポリシロキサン及び重合性不飽和基を重合して得られるビニル系重合体の主鎖構造体及びこれらの主鎖構造を組み合わせて得られる主鎖構造を有する有機重合体の群から選択された1種である請求項1に記載の硬化性組成物である。
【0008】
請求項3記載の発明は、有機重合体(a)がビニル系重合体である請求項2に記載の硬化性組成物である。
【0009】
請求項4記載の発明は、ビニル系重合体が、過酸化物を重合開始剤として用いたラジカル重合により得られるビニル系重合体である請求項3に記載の硬化性組成物である。
【0010】
請求項5記載の発明は、有機重合体(a)がビニル系重合体であり、架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(c)が更に配合されてなる請求項3又は4に記載の硬化性組成物である。
【0011】
請求項6記載の発明は、無機粉体(d)が更に配合されてなる請求項1〜5の何れか1項に記載の硬化性組成物である。
【0012】
請求項7記載の発明は、無機粉体(d)が炭酸カルシウム粉体(d1)である請求項6に記載の硬化性組成物である。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7の何れか1項に記載の硬化性組成物を用いるシーリング剤である。
【0014】
請求項9記載の発明は、請求項1〜7の何れか1項に記載の硬化性組成物を用いる接着剤である。
【0015】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0016】
(有機重合体(a))
本発明で用いられる有機重合体(a)は、架橋可能な加水分解性シリル基を有する限り特に制限されるものではない。上記加水分解性シリル基が加水分解してシロキサン結合を形成することにより有機重合体が架橋しゴム状の硬化物となる。
【0017】
上記加水分解性シリル基とは、珪素原子に1〜3個の加水分解性基が結合したものであり、該加水分解性基としては、例えば、水素、ハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、アシルオキシド基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシド基などが好ましい例として挙げられ、反応の際に有害な副生成物を生成しないアルコキシ基が特に好ましい。
【0018】
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等を挙げることができ、これらアルコキシ基は同じ種類であってもよいし異なった種類が組み合わされていても良い。
アルコキシ基が珪素原子に結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基等のジメトキシシリル基;メトキシジメトキシシリル基、エトキシジメチルシリル基等のモノアルコキシシリル基を挙げることができる。これらを複数個組み合わせて用いてもよし、異なるアルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよい。
【0019】
上記有機重合体(a)及び有機重合体(b)の主鎖構造は特に限定されず、ポリエーテル主鎖構造、ポリエステル主鎖構造、ポリカーボネート主鎖構造、ポリウレタン主鎖構造、ポリアミド主鎖構造、ポリウレア主鎖構造、ポリイミド主鎖構造、ポリシロキサン主鎖構造、重合性不飽和基を重合して得られるビニル系重合体主鎖構造などが挙げられ、さらにこれらの構造を組み合わせて得られた主鎖構造であってもよい。上記主鎖構造の内、有機重合体(a)の主鎖構造としては、硬化後の強度、製造の容易さ等からビニル系重合体主鎖構造が好ましい。
【0020】
上記ポリエーテル主鎖構造としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の主鎖構
上記シロキサン結合を形成することにより架橋し得る珪素含有基、すなわち架橋可能な加水分解性シリル基を少なくとも1個有する有機重合体(a)の主鎖構造は特に限定されず、ポリエーテル主鎖構造、ポリエステル主鎖構造、ポリカーボネート主鎖構造、ポリウレタン主鎖構造、ポリアミド主鎖構造、ポリウレア主鎖構造、ポリイミド主鎖構造、ポリシロキサン主鎖構造、重合性不飽和基を重合して得られるビニル系重合体主鎖構造などが挙げられ、さらにこれらの構造を組み合わせて得られた主鎖構造であってもよい。有機重合体(a)は、好ましくは、ビニル系重合体及び/またはポリエーテル系重合体からなる。すなわち、主鎖構造が、ビニル系重合体主鎖構造であっても、ポリエーテル主鎖構造であっても、ポリエーテル主鎖構造部分及びビニル系重合体主鎖構造部分の双方を有していてもよい。
【0021】
上記ポリエーテル主鎖構造としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の主鎖構造や、これらの共重合体構造、置換基を有するこれら誘導体を挙げることができる。加水分解性シリル基を有するポリエーテル主鎖構造の市販の重合体として、鐘淵化学工業(株)から商品名MSポリマーとしてMSポリマーS−203、S−303、S−903等、サイリルポリマーとしてサイリルSAT−200、MA−403、MA−447等、旭硝子(株)からエクセスターESS−2410、ESS−2420、ESS−3630等を挙げることができる。
【0022】
上記ポリエステル主鎖構造としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールとテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸を縮合させて得られるポリエステル主鎖構造が挙げられる。
上記ポリウレタン主鎖構造としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等のポリオールとキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート等のジイソシアネートを重付加させて得られるポリウレタン主鎖構造等が挙げられる。
上記ポリアミド主鎖構造としては、ジアミンとジカルボン酸を縮合、あるいはカプロラクタムを開環重合させて得られるポリアミド主鎖構造が挙げられる。
上記ポリウレア主鎖構造としては、ジアミンとジイソシアネートを重付加させて得られるポリウレア主鎖構造が挙げられる。
ポリイミド主鎖構造としては、ジアミンと一分子中に2個の環状酸無水物構造を有する化合物のイミド化によって得られるポリイミド主鎖構造が挙げられる。
ポリシロキサン主鎖構造としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のポリシロキサン主鎖構造が挙げられる。
【0023】
また、重合性不飽和基を重合して得られるビニル系重合体主鎖構造としては、重合性不飽和基を有する化合物を重合して得られるビニル系重合体構造であれば特に限定されない。上記重合性不飽和基を有する化合物を重合して得られるビニル系重合体としては、ビニルモノマーを重合して得られる重合体であれば良く、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル等を挙げることができる。また、これらビニル重合体部分を有する共重合体であっても良い。上記ビニル系重合体の内、凝集力や接着性等から、(メタ)アクリレート系重合体、(メタ)アクリレートモノマーと他のビニルモノマーとの共重合体が好適に用いられ、数平均分子量は8000以上であるのが好ましく、さらに好ましくは、20000〜70000である。数平均分子量が8000未満の場合は、硬化物のゴム物性、特に伸びが低下し好ましくない。ここで、(メタ)アクリレートとはメタクリレートとアクリレートをまとめて示した表現である。
【0024】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシプロピルフタル酸、
[化合物1]
CH2=CH−C(O)O−CH2CH2O−
[C(O)CH2CH2CH2CH2CH2O]n−H
(n=1〜10)
[化合物2]
CH2=C(CH3)−C(O)O−CH2CH2O−
[C(O)CH2CH2CH2CH2CH2O]n−H
(n=1〜10)
[化合物3]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−H
(n=1〜12)
[化合物4]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−H
(n=1〜12)
[化合物5]
CH2=CH−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−H
(n=1〜12)
[化合物6]
CH2=C(CH3)−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−H
(n=1〜12)
[化合物7]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−
[CH2CH(CH3)O]m−H
(n=1〜12)
(m=1〜12)
[化合物8]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−
[CH2CH(CH3)O]m−H
(n=1〜12)
(m=1〜12)
[化合物9]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−
(CH2CH2CH2CH2O)mH
(n=1〜12)
(m=1〜12)
[化合物10]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−
(CH2CH2CH2CH2O)mH
(n=1〜12)
(m=1〜12)
[化合物11]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−CH3
(n=1〜10)
[化合物12]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−CH3
(n=1〜30)
[化合物13]
CH2=CH−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−CH3
(n=1〜10)
[化合物14]
CH2=C(CH3)−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−CH3 (n=1〜10)
[化合物15]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−
[CH2CH(CH3)O]m−H
(n=1〜10)
(m=1〜10)
[化合物16]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−
[CH2CH(CH3)O]m−H
(n=1〜10)
(m=1〜10)
[化合物17]
CH2=CH−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n
−C(O)−CH=CH2
(n=1〜20)
[化合物18]
CH2=C(CH3)−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n
−C(O)−C(CH3)=CH2
(n=1〜20)
[化合物19]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−C(O)−CH=CH2
(n=1〜20)
[化合物20]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n
−C(O)−C(CH3)=CH2
(n=1〜20)等を挙げることができる。
【0025】
上記他のビニルモノマーとして、例えば、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体;例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニル等のビニルエステル基を持つ化合物;無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4−ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテル等のビニロキシ基を持つ化合物を挙げることができる。
【0026】
また、上記ビニル系重合体は、ハロゲン元素を含有していてもよく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキル等が挙げられる。
【0027】
上記ビニル系重合体の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法等を用いることができ、かつモノマーの重合性反応に応じて適宜重合法を選択すればよく、これらの重合法の内、製造が容易であるのでフリーラジカル重合法が好ましい。フリーラジカル重合法として、重合開始剤として過酸化物系開始剤、アゾ化合物系開始剤を用いるフリーラジカル重合法が好ましく、アゾ化合物系開始剤として用いた場合は重合体が応変しやすいので、特に好ましくは、過酸化物系重合開始剤を用いたフリーら光る重合法が好ましい。
【0028】
また、架橋可能な加水分解性シリル基をビニル系重合体に導入する方法としては、架橋可能な加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、架橋可能な加水分解性シリル基を持つ共重合性モノマー、架橋可能な加水分解性シリル基を持つ開始剤、架橋可能な加水分解性シリル基を持つ連鎖移動剤等を用いて重合体の重合時に導入する方法(例えば、特開昭54−123192号公報、特開昭57−179210号公報、特開昭59−78220号公報、特開昭60−23405号公報)、アルケニル基を有する重合体を合成し、その後、ヒドロシリル化によってアルコキシシリル基を導入する方法(例えば、特開昭54−40893号公報、特開平11−80571号公報)等がある。
本発明を構成する架橋可能なシリル基を有するビニル系重合体の製造方法は、架橋可能なシリル基を有するビニル系重合体が得られる限り特に限定されることなく、上述の様な公知の製造技術を用いることができる。
【0029】
上記過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、イソノナノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどのジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパージカーボネート、ジ−sec−ブチルパージカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパージカーボネート、ジ−1−メチルヘプチルパージカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパージカーボネート、ジシクロヘキシルパージカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーアセテート、tert−ブチルパー−2−エチルへキサノエート、tert−ブチルパーイソブチレート、tert−ブチルパーピバレート、tert−ブチルジパーアジペート、キュミルパーネオデカノエートなどのパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、tert−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド類;キュメンヒドロキシパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどを挙げることができる。なお、過酸化物は、1種のみが用いられてもよく、複数種併用されてもよい。さらに、過酸化物は、複数回にわたって逐次添加されてもよい。
【0030】
上記架橋可能な加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトメチルトリメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシシラン、等の連鎖移動性の高い官能基を有するアルコキシシランが挙げられる。上記架橋可能な加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤配合量は、ビニル系重合性モノマー100重量部に対し、0.01〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。
【0031】
上記架橋可能な加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、N−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロペニルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらメタアクリル酸エステルは単独で用いられても良い2種以上が併用して用いられても良い。
【0032】
上記架橋可能な加水分解性シリル基を有する共重合性モノマーとしては、ビニルメチルジアセトキシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビンルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルジメチルイソペンテニルオキシシラン、ビニルジメチル−2−((2−エトキシエトキシ)エトキシ)シラン、ビニルトリス(1−メチルビニルオキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、フェニルビニルジエトキシシラン、ジフェニルビニルエトキシシラン、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、オクタ−7−エニルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基を有するアルコキシシラン等を挙げられる。これらモノマーは単独で用いられても良い2種以上が併用して用いられても良い、
上記架橋可能な加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は共重合性モノマーの量は、ビニル系重合性モノマー100重量%中の、0.01〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。
【0033】
上記有機重合体(b)の主鎖構造は上記有機重合体(a)と実質的に同じである。主鎖構造が異なった場合には、有機重合体(a)と有機重合体(b)との相溶性が低下し、上記添加効果が認められない。上記有機重合体(b)としては先述した如く、特に限定されないがビニル系重合体が好ましく、特に好ましくは(メタ)アクリレート系重合体である。 重合体(b)を構成する(メタ)アクリレート系単量体としては、特に限定されず、上述した重合体(a)に用いられる(メタ)アクリレート系単量体が用いられれてよい。また、重合体(b)は、(メタ)アクリル系単量体以外の(メタ)アクリレート系単量体と共重合可能な他の単量体が共重合されていてもよく、具体例としては、上述した単量体が挙げられる。
【0034】
上記重合体(b)は架橋可能な加水分解性シリル基を有しており、架橋可能な加水分解性シリル基の種類は上述した架橋可能な加水分解性シリル基が好適に用いられ、架橋可能な加水分解性シリル基を重合体(b)に導入する方法としては上述した方法が挙げられる。
上記重合体(b)中に含有される架橋可能な加水分解可能性シリルの量は、重合体(a)中に含有される架橋可能な加水分解性シリル基の
【0035】
また、上記重合体(b)の数平均分子量は有機重合体(a)の数平均分子量の3分の2未満であり、好ましくは、1000〜40000であることが好ましい。数平均分子量が1000未満の場合は、組成物が硬化した際に硬化物が硬くなり過ぎて伸びが低下することがある。
【0036】
また、上記重合体(b)の中の加水分解性シリル基密度は下記式(1)の範囲である。
/f=0.55〜0.9 (1)
(f、fはそれぞれ重合体(a)、重合体(b)中の加水分解性シリル基密度を表す。)
ここで、官能機密度とは重合体の単位分子量あたりの官能基の数であり、1分子あたりの官能基数を分子量で除することにより得られる値である。
【0037】
有機重合体(a)と有機重合体(b)の配合割合は、有機重合体(a)100重量部に対して、有機重合体(b)量は5〜60重量部が好ましい。有機重合体(b)の量が5重量部未満の場合は、添加効果が認められ難く、
有機重合体(b)の量が60重量部を超えると硬化物の伸び性が低下しやすく好ましくない。
【0038】
本発明で用いられる有機重合体(a)としてビニル系重合体を用いる場合は、少なくとも架橋可能な加水分解性のシリル基を有するポリエーテル系重合体(c)を添加することが好ましく、これにより、深度硬化性をより高めたり、硬化物の耐水性を高めたり、シーリング剤を構成した場合のゴム弾性を高めることができる。
【0039】
上記架橋可能な加水分解性シリル記を含有するポリエーテル系重合体(c)とは、主鎖が本質的に、一般式 ―(R―O)n―、(式中のRは炭素数1〜4であるアルキレン基を示す。Oは酸素原子を表す。nは自然数を表す。)で表される繰り返し単位を含み、かつ架橋可能な加水分解性シリル基を含有する重合体であり、ポリエーテル主鎖構造を有する重合体(a)が用いられてよい。ポリエーテル系重合体(c)の量は、有機重合体(a)と有機重合体(b)の合計100重量部に対して、20〜80重量部であることが好ましい。
【0040】
本発明の硬化性組成物は、無機粉体(d)を含有することが好ましく、無機粉体(d)としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マグネシア、マイカ、タルク等が挙げられる。上記無機粉体(d)の、中でも、重質炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム粉体(d1)が好ましい。
【0041】
上記無機粉体(d)の量は、樹脂成分100重量部に対して80〜200重量部が好ましい。80重量部未満の場合は硬化物強度が低下し、200重量部を超えた場合は作業性が著しく低下する。
【0042】
(その他添加物)
本発明の効果・目的を阻害しない範囲において、本発明の硬化性組成物に必要に応じて、有機重合体(a)の硬化促進剤、硬化性組成物の粘性特性を調整するための増粘剤・チキソトロープ剤、引っ張り特性等を改善する物性調整剤、増量剤、補強剤、可塑剤、着色剤、難燃剤等の公地の機能を有する各種添加剤を加えても良い。
【0043】
上記硬化促進剤として、例えば、有機金属化合部を用いることができる。好適に用いることの出来る有機金属化合物として、ゲルマニウム、錫、鉛、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属元素と有機基を置換してなる有機金属化合物を挙げることが出来る。また、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物、テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物も挙げられ、これらは単独または2種以上を併用して使用することが出来る。
【0044】
上記増粘剤として、例えば、有機重合体(a)との相溶性の良い高分子化合物から選ばれ、配合される化合物から適宜選択される。例えば、アクリル系高分子、メタクリル系高分子、ポリビニルアルコール誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン誘導体、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリイソブテン、ポリオレフィン類、ポリアルキレンオキシド類、ポリウレタン類、ポリアミド類、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、NBR、SBS、SIS、SEBS、水添NBR、水添SBS、水添SIS、水添SEBS等を挙げることができる。また、これら共重合体、官能基変成体を挙げることができ、これらを適宜組み合わせてもよい。
【0045】
上記チキソトロープ剤として、硬化性組成物がチキソトロピー性を発現するような物質から適宜選ばれる。例えば、コロイダルシリカ、ポリビニルピロリドン、疎水化炭酸カルシウム、ガラスバルーン、ガラスビーズ等を挙げることができる。チキソトロープ剤の選択については、有機重合体(a)との親和性の高い表面を有することが好ましい。
【0046】
上記引っ張り特等を改善する物性調整剤としては、各種シランカップリング剤が用いられ、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン等が挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0047】
上記増量剤として、本発明の硬化性組成物中に添加してチキソトロープ性を発現しない
ものが好適に利用でき、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水珪素、含水珪素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック等を挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0048】
上記可塑剤として、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル類、グリセリンモノオレイル酸エステル等の脂肪酸−塩基酸エステル類、アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基酸エステル類、ポリプロピレングリコール類等を挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0049】
その他、必要に応じて、タレ防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、溶剤、香料、顔料、染料等を添加しても良い。
【0050】
本発明の硬化性組成物を主成分とし、必要に応じて硬化促進剤等の各種添加物を添加し、混練、脱泡することにより、本発明の接着剤、シーリング剤を得ることが出来る。
【発明の効果】
【0051】
本発明の組成物は、架橋可能な加水分解性シリル基を含有する有機重合体(a)と、数平均分子量が有機重合体(a)の3分の2未満であり有機重合体(a)と実質的に同じ主鎖構造を有する有機重合体(b)を含有してなる硬化性組成物であって、下記式(1)を満たすため、深度硬化性が優れ、硬化した後に、表面のタックが少なく、高伸び性の硬化物を得ることが出来る硬化性組成物を提供することが可能となる。
/f=0.55〜0.9 (1)
(f、fはそれぞれ重合体(a)、重合体(b)中の加水分解性シリル基密度を表す。)
さらに、有機重合体(a)をビニル系重合体とすることにより上記効果をさらに奏することが出来る。また、有機重合体(a)がビニル重合体である際に、ポリエーテル系重合体(c)を加えることにより上記効果をさらに奏することが出来る。また、無機粉体(d)を加えることにより、上記効果をさらに奏することが出来る。
【0052】
従って、本発明の硬化性組成物は、深度硬化性に優れ、硬化した際には表面のタックの少ない、高伸び性の硬化物が得られコーティング剤、接着剤として好適に用いることが出来る。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(参考例1 加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a1)の調製)
攪拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を供えた2Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート90g、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、品番:KBM−503)0.5g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、品番:KBM−803)0.2g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)0.1g及び酢酸エチル100gを投入して、モノマー混合溶液とした。
【0055】
このモノマー混合溶液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、攪拌しながら還流に達するまでに昇温した。還流開始後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。更に、重合開始後、2、3及び4時間後に、ジ(3,3,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048g、0.12g、及び0.36gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液をそれぞれ投入した。一回目の重合開始剤投入から7時間後、室温まで冷却し、重合を終了させ重合体(a1)を得た。得られた重合体(a1)の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により6万であり、重合体(a1)中のシリル基は、H−NMR分析より、1分子あたり1.82個であった。
【0056】
(参考例2 加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a2)の調製)
攪拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を供えた2Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート90g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、品番:KBM−803)0.4g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)0.1g及び酢酸エチル100gを投入して、混合してモノマー混合溶液とした。
【0057】
このモノマー混合溶液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、攪拌しながら還流に達するまでに昇温した。還流した後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。更に、重合開始後、2、3及び4時間後に、ジ(3,3,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048g、0.12g、及び0.36gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液をそれぞれ投入した。一回目の重合開始剤投入から7時間後、室温まで冷却し、重合を終了させ重合体(b1)を得た。得られた重合体(a1)の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により4万であり、重合体(a1)中のシリル基は、H−NMR分析より、1分子あたり1.82個であった。
【0058】
(参考例3 加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a3)の調製)
還流管をつけた1Lの三口丸底フラスコに臭化第一銅(6.25g、156mmol)、アセトニトリル(50mL)、及び、ペンタメチルジエチレントリアミン(9.1mL)を仕込み、窒素ガスで置換した。アクリル酸−n−ブチル(500mL、447g、3.9mol)、及び、ジエチル−2,5−ジブロモアジペート(15.7g、43.6mmol)を添加し、70℃で7時間加熱撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、活性アルミナで処理した。揮発分を減圧下留去し、末端にハロゲンを有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)を350g得た(重合収率87%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により10700、分子量分布は1.15であった。
【0059】
次に、還流管をつけた2Lの三口丸底フラスコに、上記のようにして得られた末端にハロゲンを有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)(350g)、4−ペンテン酸のカリウム塩(22.3g、161mmol)、及び、ジメチルアセトアミド(350mL)を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で4時間反応させた。混合物を酢酸エチルで希釈し、2%塩酸、ブラインで洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧下留去することにより重合体を単離した。重合体と等量の珪酸アルミ(協和化学製:キョ−ワ−ド700PEL)を添加して100℃で4時間撹拌し、末端にアルケニル基を有するポリ(アクリル酸ブチル)を得た。オリゴマ−1分子当たりに導入されたアルケニル基は、H−NMR分析より、1.82個であった。
【0060】
次に、200mLの耐圧ガラス反応容器に、上記重合体(150g)、ジメトキシメチルヒドロシラン(18mL、145mmol)、オルトぎ酸ジメチル(2.6mL、24.2mmol)、及び、白金触媒を仕込んだ。ただし、白金触媒の使用量は、重合体のアルケニル基に対して、モル比で2×10−4当量とした。反応混合物を100℃で4時間加熱した。混合物の揮発分を減圧留去することにより、末端にシリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)を得た。
【0061】
(参考例4 加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(b1)の調製)
攪拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を供えた2Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート90g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、品番:KBM−803)0.3g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)0.2g及び酢酸エチル100gを投入して、混合してモノマー混合溶液とした。
【0062】
このモノマー混合溶液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、攪拌しながら還流に達するまでに昇温した。還流した後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。更に、重合開始後、2、3及び4時間後に、ジ(3,3,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048g、0.12g、及び0.36gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液をそれぞれ投入した。一回目の重合開始剤投入から7時間後、室温まで冷却し、重合を終了させ重合体(b1)を得た。得られた重合体(a1)の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により4万であり、重合体(a1)中のシリル基は、H−NMR分析より、1分子あたり1.46個であった。
【0063】
(参考例5 加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(b2)の調製)
攪拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を供えた2Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート90g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、品番:KBM−803)0.1g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)0.9g及び酢酸エチル100gを投入して、混合してモノマー混合溶液とした。
【0064】
このモノマー混合溶液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、攪拌しながら還流に達するまでに昇温した。還流した後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。更に、重合開始後、2、3及び4時間後に、ジ(3,3,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048g、0.12g、及び0.36gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液をそれぞれ投入した。一回目の重合開始剤投入から7時間後、室温まで冷却し、重合を終了させ重合体(b1)を得た。得られた重合体(a1)の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により2万であり、重合体(a1)中のシリル基は、H−NMR分析より、1分子あたり0.91個であった。
【0065】
(参考例6 シリル基を含有しない低分子量ビニル系重合体(X)の調製)
攪拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を供えた2Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート100g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)4g及び酢酸エチル100gを投入して、混合してモノマー混合溶液とした。
【0066】
このモノマー混合溶液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、攪拌しながら還流に達するまでに昇温した。還流した後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。更に、重合開始後、2、3及び4時間後に、ジ(3,3,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048g、0.12g、及び0.36gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液をそれぞれ投入した。一回目の重合開始剤投入から7時間後、室温まで冷却し、重合を終了させ重合体(b1)を得た。得られた重合体(a1)の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により5千であった。
【0067】
(実施例1)
上記で得られた酢酸エチルを除去する前の重合体(a1)の酢酸エチル溶液120gと、酢酸エチル除去前の重合体(b1)の酢酸エチル溶液40gと酢酸エチル除去前の重合体(X)の酢酸エチル溶液40gとを混合した後、ロータリーエバポレーターを用いて酢酸エチルを除去し、粘調な液状の組成物を得た。
上記のようにして得た粘調な液状の組成物に、更に、重質炭酸カルシウム70g、脂肪酸処理炭酸カルシウム30g、密封した攪拌機で均一になるまで混合し、しかる後10分間減圧脱泡し、白色ペースト状の硬化性組成物を得た。
【0068】
(実施例2〜6、比較例1〜3)
各成分の配合割合を表1に示すように変更する以外は実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。
【0069】
〔評価〕
(試験片作成)
上記で得られた硬化性組成物にさらに、アミノシラン3g、硬化促進剤3gを加え、ポリエチレン板上に膜厚が5mmとなるように塗工して試験片を作成し、下記の評価を行った。結果を表1に示した
(深部硬化性)
得られた試験片を20℃、相対湿度50%の環境下で24時間養生した後に、試験片の断面を観察し、硬化が進んでいる部分の表面からの距離を測定し硬化厚みとした。
(表面タック性)
得られた試験片を20℃、相対湿度50%の環境下で養生し、触指観察により試験片の表面のタック性が認められなくなる時間を求めて表面皮膜形成時間(TFT)とした。
【0070】
(引張試験)
得られた硬化性組成物をポリエチレン板上に、膜厚が2.5mmとなるように塗工し、その後、温度20℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生して、ゴム状のシートを得た。得られたゴム状シートをを用いて、3号ダンベル形状でクロスヘッドスピード500mm/分でJIS K 6301に準じて、引張試験を行い、最大伸度(%)を求めてシートのゴム物性を評価した。
【0071】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋可能な加水分解性シリル基を含有する有機重合体(a)と、数平均分子量が有機重合体(a)の3分の2未満であり有機重合体(a)と実質的に同じ主鎖構造を有する有機重合体(b)を含有してなる硬化性組成物であって、下記式(1)を満たすことを特徴とする硬化性組成物。
/f=0.55〜0.9 (1)
(f、fはそれぞれ重合体(a)、重合体(b)中の加水分解性シリル基密度を表す)
【請求項2】
有機重合体(a)の主鎖構造体が、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド、ポリシロキサン及び重合性不飽和基を重合して得られるビニル系重合体の主鎖構造体及びこれらの主鎖構造を組み合わせて得られる主鎖構造を有する有機重合体の群から選択された1種であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
有機重合体(a)がビニル系重合体であることを特徴とする請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
ビニル系重合体が、過酸化物を重合開始剤として用いたラジカル重合により得られるビニル系重合体であることを特徴とする請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
有機重合体(a)がビニル系重合体であり、架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(c)が更に配合されてなることを特徴とする請求項3又は4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
無機粉体(d)が更に配合されてなることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
無機粉体(d)が炭酸カルシウム粉体(d1)であることを特徴とする請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の硬化性組成物を用いることを特徴とするシーリング剤。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項に記載の硬化性組成物を用いることを特徴とする接着剤。




【公開番号】特開2006−249251(P2006−249251A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67881(P2005−67881)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】