説明

硬化性組成物、該硬化性組成物を用いた光学フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板及び画像表示装置

【課題】経時又は高温条件下でのブリードアウト、接触媒体へのシリコーン成分の転写、素材の滑り性等に優れる硬化性組成物、硬化性組成物を用いた反射防止フィルムなどの光学フィルム、光学フィルムを用いた偏光板、及び光学フィルム又は偏光板に用いた画像表示装置を提供すること。
【解決手段】主鎖に特定のポリシロキサン構造を有する構成単位及び側鎖にエチレン性不飽和基を含有する構成単位を含む共重合体、及びエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物を含有し、且つオルガノシラン化合物又はその加水分解物及び/又はその部分縮合物、重合開始剤、及び無機微粒子のうち少なくとも1成分を含有する硬化性組成物、及びこれらを用いて形成された光学フィルム、偏光板、画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、該硬化性組成物を用いた光学フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板及び、該光学フィルム又は該偏光板をディスプレイの最表面に用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルム、特に反射防止フィルムは、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)などのような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止フィルムは、一般的には、支持体又はその上に形成されている高屈折率層の上に、適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。低屈折率層の素材としては、反射防止性能の観点から、できる限り屈折率の低い素材が望まれ、同時にディスプレイの最表面に用いられるため高い防汚性、耐擦傷性、及び下層への密着性が要求される。
【0004】
低屈折率層を形成するポリマーとして、低屈折率の含フッ素ポリマーを硬化させて用いることはよく知られており、またその硬化手段も種々の方法が知られていて、例えば水酸基等を有するポリマーを硬化剤によって硬化させることが行われてきた(特許文献1〜3)。しかしながら、皮膜硬度の点で十分とはいえず、改良が望まれていた。
【0005】
材料の屈折率を下げる手段としては、上記の特許文献1〜3のように(1)フッ素原子を導入する手段の他にも(2)密度を下げる(空隙を導入する)という手段もあるが、いずれも皮膜強度が損なわれ耐擦傷性が低下することがある。
【0006】
低屈折率を保ちながら防汚性、耐擦傷性を大きく向上させる手段として、表面への滑り性付与が有効である。滑り性付与に対しては、フッ素の導入、珪素の導入等の手法が有効である。特に、低屈折率素材に対して少量のシリコーン系化合物を添加することにより、滑り性発現効果、防汚性向上効果及び耐擦傷性改良効果は顕著に現れる。しかし、一方で、低屈折率層素材との相溶性、経時又は高温条件下でのブリードアウト、接触媒体へのシリコーン成分の転写、これらに伴う性能の劣化、製造ラインの汚染等が予期される。
【0007】
特に反射防止フィルムにおいては、相溶性不足によるヘイズの発生が、光学性能を悪化させることがある。また低屈折率層塗布後のフィルムを巻き取った際に、フィルムの裏面にシリコーン系化合物が付着することがありその後の加工工程に不都合である。すなわち、シロキサン部位のみ効果的に表面に偏析させて、珪素に結合した残りの部位は低屈折率層皮膜中に効果的にアンカリングさせる技術が求められている。
【0008】
この課題に対して、シリコーン系マクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入した含フッ素オレフィン共重合体、及び該含フッ素オレフィン共重合体を反射防止フィルム用途へ適用する技術(特許文献4〜7)が提案されている。これらの技術は、ブリードアウト及び接触媒体へのシリコーン成分の転写その他を抑制し、被膜の均一性を向上させるという点で極めて有効な手法であるものの、シリコーン系化合物の添加手段と比較すると防汚性及び耐擦傷性の点において改善が求められている。
【特許文献1】昭57−34107号公報
【特許文献2】昭61−275311号公報
【特許文献3】特開平8−92323号公報
【特許文献4】特開平11−189621号公報
【特許文献5】特開平11−228631号公報
【特許文献6】特開2000−17028号公報
【特許文献7】特開2000−313709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような背景から、経時又は高温条件下でのブリードアウト、接触媒体へのシリコーン成分の転写、これらに伴う性能の劣化、製造ラインの汚染等を抑制しつつ、素材の滑り性を向上させ、防汚性及び耐擦傷性を改善しうる技術の開発が求められていた。
【0010】
本発明の目的は:第1に、経時又は高温条件下でのブリードアウト、接触媒体へのシリコーン成分の転写、これらに伴う性能の劣化、製造ラインの汚染等が少なく、素材の滑り性を向上させることのできる硬化性組成物を提供することにあり;第2に、経時又は高温条件下でのブリードアウト、接触媒体へのシリコーン成分の転写、これらに伴う性能の劣化、製造ラインの汚染等が少なく、防汚性、耐擦傷性、及び密着性に優れ、大量生産に適した塗布型の光学フィルムを提供することにあり;第3に、偏光膜の保護フィルムとしてこのような光学フィルムを用いた偏光板を提供することに有り;第4に、その最表面にこのような光学フィルム又は偏光板を用いることにより、表面の防汚性、耐擦傷性に優れた画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、下記構成の硬化性組成物、光学フィルム、偏光板、及び画像表示装置が提供され、上記目的が達成される。
【0012】
[1] 以下の成分(A)及び(B)を含有し、且つ以下の成分(C)、(D)及び(E)のうち少なくとも1成分を含有する硬化性組成物:
(A)主鎖に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成単位、及び側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を含む共重合体、
【0013】
一般式(1):
【化1】

【0014】
{一般式(1)中、R11、R12は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。pは10〜500の整数を表す。}
(B)エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物、
(C)オルガノシラン化合物又は、該オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物、
(D)重合開始剤、
(E)無機微粒子。
[2] 成分(C)におけるオルガノシラン化合物が、下記一般式(2)で表される[1]に記載の硬化性組成物。
【0015】
一般式(2):
【化2】

【0016】
{一般式(2)において、R22は、水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカルボ
ニル基、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子を表す。U21は、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基又はウレア基を表す。L21は、2価の連結鎖を表す。m1は0又は1を表す。R20は、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。X21は水酸基又は加水分解可能な基を表す。X21が複数存在するとき、複数のX21は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。}
[3] 成分(E)の無機微粒子がシリカ微粒子である[1]又は[2]に記載の硬化性組成物。
[4] シリカ微粒子が、平均粒子径が30nm以上150nm以下の中空シリカ微粒子である[3]に記載の硬化性組成物。
[5] 成分(A)の共重合体が、下記一般式(3)で表される共重合体である[1]〜[4]のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0017】
一般式(3):
【化3】

【0018】
{一般式(3)中、X31は上記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を含む単位を表す。Y31は任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一であっても複数種で構成されていてもよい。L31は単結合又は2価の連結基を表し、R31及びR32は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。x〜zはそれぞれ各構成単位のモル分率(%)を表し、10≦x<100、0≦y≦90、1≦z≦50を満たす値を表す。}
[6] 一般式(3)において、上記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を含む構成単位X31のモル分率(%)xが、50≦x<100を満たす[5]に記載の硬化性組成物。
[7] 成分(B)のエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物が多官能(メタ)アクリレートモノマーである[1]〜[6]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[8] 成分(B)のエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物が、下記一般式(4)で表される含フッ素共重合体である[1]〜[7]のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0019】
一般式(4):
【化4】

【0020】
{一般式(4)中、Rf41は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表し、Rf42は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよい。L41は単結合又は2価の連結基を表し、R41は水素原子又はメチル基を表す。A41は任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一であっても複数種で構成されていてもよい。B41はポリシロキサン構造を主鎖又は側鎖に含む構成単位を表す。a〜dはそれぞれ各構成単位のモル分率(%)を表し、30≦a+b≦95、5≦a≦90、0≦b≦70、5≦c≦50、0≦d≦90を満たす値を表す。eは重合単位B41の、他の構成単位全体の質量に対する質量分率(%)を表し、0≦e<20の関係を満たす。}
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化してなる機能層を少なくとも1層有する光学フィルム。
[10] 機能層が低屈折率層であり、光学フィルムが光学干渉による反射防止機能又は防眩機能を有する[9]記載の光学フィルム。
[11] [9]又は[10]に記載の光学フィルムが、偏光板における偏光膜の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられている偏光板。
[12] [9]もしくは[10]に記載の光学フィルム、又は[11]に記載の偏光板がディスプレイの最表面に用いられている画像表示装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明で用いられる、(A)主鎖にポリシロキサン構造を有する構成単位、側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を含む共重合体、及び(B)エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物を含有し、且つ(C)オルガノシラン化合物又は、該オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物、(D)重合開始剤、及び(E)無機微粒子のうち少なくとも1成分を含有する硬化性組成物は、経時又は高温条件下でのブリードアウト、接触媒体へのシリコーン成分の転写が少ない上、滑り性が付与され、強度に優れた皮膜を形成する。また、被膜の均一性を損なうことなく、シリコーン成分の導入量を容易に制御できる。
【0022】
本発明の組成物を硬化させて得られる機能層を有する光学フィルムは、経時又は高温条件下でのブリードアウト、接触媒体へのシリコーン成分の転写が少ない上、防汚性、耐擦傷性に優れており、下層との密着性にも優れる。
【0023】
本発明の光学フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置は、防汚性、耐擦傷性、及び密着性も高いという優れた効果を奏する。また、本発明の組成物を低屈折率用組成物として用い反射防止機能を付与した光学フィルムは、これらの性質に加え更に反射率が低く、この光学フィルムを用いた偏光板装置及び液晶表示装置は、更に外光の映り込みが十分に防止されるという優れた特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、以下の成分(A)及び(B)を含有し、且つ以下の成分(C)、(D)及び(E)のうち少なくとも1成分を含有する(明細書において本発明の硬化性組成物と称することがある)。
【0025】
(A) 主鎖に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成単位、及び側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を含む共重合体、
【0026】
一般式(1):
【化5】

【0027】
{一般式(1)中、R11、R12は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。pは10〜500の整数を表す。}
【0028】
(B) エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物、
(C) オルガノシロキサン化合物又は、該オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物、
(D) 重合開始剤、
(E) 無機微粒子。
【0029】
〔成分(A):主鎖に一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成単位、及び側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を含む共重合体〕
本発明の硬化性組成物は、主鎖に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成単位、及び側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を含む共重合体(A){以下、単にポリシロキサン構造含有共重合体(A)ともいう}、並びにエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物(B)を含有し、且つオルガノシラン化合物又は、該オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物(C)、重合開始剤(D)並びに無機微粒子(E)のうち少なくとも1成分を含有する硬化性組成物である。
【0030】
一般式(1):
【化6】

【0031】
一般式(1)中、R11、R12は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。アルキル基としては炭素数1〜4が好ましく、例としてメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基等が挙げられる。アリール基としては炭素数6〜20が好ましく、例としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらの中でもメチル基及びフェニル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。pは10〜500の整数を表わし、好ましくは50〜300であり、特に好ましくは100〜250の場合である。
【0032】
共重合体(A)は、添加量を適宜調節することにより、シロキサン成分の導入量を制御できる。さらにシロキサンの表面偏在性及びエチレン性不飽和基の存在により、シロキサン部位のみを効果的に表面に偏析させて低屈折率層皮膜中に効果的にアンカリングさせることができる。
【0033】
共重合体(A)は、下記一般式(3)で表される共重合体であることが好ましい。
【0034】
一般式(3):
【化7】

【0035】
上記一般式(3)において、X31は前記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を含む単位を表す。Y31は任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一であっても複数種で構成されていてもよい。L31は単結合又は2価の連結基を表し、R31及びR32は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。x〜zはそれぞれ各構成単位のモル分率(%)を表し、10≦x<100、0≦y≦90、1≦z≦50を満たす値を表す。
【0036】
[ポリシロキサン構造を有する構成単位]
本発明における成分(A)である、主鎖に一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成単位(X31:以下、単に「単位(X)」ともいう)を含有する共重合体の合成法としては、従来よりいくつかの方法が提案されている。
【0037】
例えば、J.C.Saamらは“Macromolecules”,3巻、1頁(1970年)において、アニオン重合法によりスチレン−ジメチルシロキサンブロック共重合体を得たことを報告している(以下、この方法をアニオン重合法と呼ぶ)。
【0038】
また、手塚育志らは“Makromol.Chem.,Rapid Commun.”,5巻、559頁(1984年)において、官能基を有するプレポリマー同士のカップリング反応により、酢酸ビニル−ジメチルシロキサンブロック共重合体を得たことを報告している(以下、この方法をプレポリマー法と呼ぶ)。
【0039】
さらに、井上弘らは「高分子学会予稿集」、34巻、293頁(1984年)において、ラジカル重合開始能を有するアゾ基含有ポリシロキサンアミドによるラジカル重合により、メチルメタクリレート−ジメチルシロキサンブロック共重合体を得たことを報告している(以下、この方法を高分子開始剤法と呼ぶ)。
【0040】
しかし、上記アニオン重合法やプレポリマー法では、反応に適応できるビニル基単量体が限られており、反応工程が多段階になったり、反応条件が工業的に利用するには困難になったりしうる。工業的にブロック共重合体を製造するためには、ラジカル重合を用いて
合成することが可能で、多くのビニル型単量体に適用でき、反応工程が少ないことが好ましい。
【0041】
以上のような観点から、本発明で用いられるポリシロキサン構造含有共重合体(A)は高分子開始剤法で製造されることが好ましい。こうした高分子開始剤は、例えばアゾ基、ペルオキシ基等のラジカル発生可能な基を有するポリシロキサン化合物である。なお、こうした開始剤は、例えば特公平6−104711号公報、特開平6−93100号公報等に記載のごとくに合成できる。
【0042】
(高分子開始剤の好適例)
こうした高分子開始剤のうち好ましいものの例を以下に示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
【化10】

【0046】
【化11】

【0047】
【化12】

【0048】
【化13】

【0049】
【化14】

【0050】
また、本発明で用いられるポリシロキサン構造含有共重合体(A)は、側鎖にエチレン性不飽和基を含有する構成単位(以下、「単位(Z)」ともいう)を含む。該有機官能基を有することにより、架橋が可能となり、転写を防ぐという効果が得られる。
【0051】
[側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位]
次に、本発明で用いられる共重合体(A)中の、側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位(Z)、すなわち下記一般式(5)で表される重合単位について説明する。
【0052】
一般式(5):
【化15】

【0053】
一般式(5)中、L31は単結合又は2価の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。R31、R32は水素原子又はメチル基を表す。
【0054】
連結基L31の好ましい例としては、*−(CH22−O−**、*−(CH22−NH−**、*−(CH24−O−**、*−(CH26−O−**、*−(CH22−O−(CH22−O−**、−CONH−(CH23−O−**、*−CH2CH(OH)CH2−O−*、*−CH2CH2OCONH(CH23−O−**(*は共重合体主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す)等が挙げられる。
【0055】
共重合体(A)への(メタ)アクリロイル基の導入法は、特に限定されるものではない
が、例えば:
(1)水酸基、アミノ基等の求核基を有する共重合体を合成した後に、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸とメタンスルホン酸の混合酸無水物等を作用させる方法、
(2)上記求核基を有する共重合体に、硫酸等の触媒存在下、(メタ)アクリル酸を作用させる方法、
(3)上記求核基を有する共重合体にメタクリロイルオキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、
(4)エポキシ基を有する共重合体を合成した後に(メタ)アクリル酸を作用させる方法、
(5)カルボキシル基を有する共重合体にグリシジルメタクリレート等のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、
(6)3−クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で脱塩化水素を行う方法、
などが挙げられる。
【0056】
これらの中で本発明では、特に水酸基を含有する共重合体に対して、(1)又は(2)の手法によって(メタ)アクリロイル基を導入することが好ましい。共重合体への(メタ)アクリロイル基の導入では、導入量を調整することにより、共重合体の水酸基を完全に(メタ)アクリロイル基で置換することも、水酸基を一部残して(メタ)アクリロイル基で置換することもできる。水酸基以外の官能基を有する共重合体に対しても、同様の導入が可能である。
【0057】
これらの(メタ)アクリロイル基含有重合単位の組成比を高めれば、皮膜強度は向上するが屈折率も高くなる。(メタ)アクリロイル基含有重合単位は、含フッ素ビニルモノマー重合単位の種類によって組成比を変えることができ、1〜50モル%を占め、1〜40モル%を占めることが更に好ましく、1〜30モル%を占めることが特に好ましい。
【0058】
以下、上記一般式(5)で表される重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0059】
【化16】

【0060】
[任意のビニルモノマーに基づく重合単位]
前記一般式(3)で表される本発明で用いられるポリシロキサン構造含有共重合体(A)は、基材への密着性、溶媒への溶解性、他の塗布液組成物との相溶性、透明性等種々の観点から、上述した構成単位以外にも、他の任意のビニルモノマーに基づく重合単位(Y31:以下、単に「単位(Y)」ともいう)を有してもよい。
【0061】
このような任意のビニルモノマーに基づく重合単位(Y)を構成する単量体の例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0062】
任意のビニルモノマーに基づく重合単位を構成する単量体の例としては、他に含フッ素ビニルモノマーを挙げることができる。特に、本発明の硬化性組成物の成分(B)である、エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物が含フッ素重合体である
ときは、相溶性の観点から、任意のビニルモノマーに基づく重合単位(Y)が含フッ素ビニルモノマー由来の重合単位であることが好ましい。
【0063】
(含フッ素ビニルモノマー)
含フッ素ビニルモノマーの好ましい例として、下記一般式(6)で表される重合単位及び下記一般式(7)で表される重合単位について説明する。
【0064】
一般式(6):
【化17】

【0065】
一般式(7):
【化18】

【0066】
一般式(6)及び(7)中、Rf31は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表す。またRf32は炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜15の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよい。Rf32は炭素数1〜15の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基であることが好ましく、エーテル結合を有していてもよい。
【0067】
一般式(6)及び一般式(7)で表される重合単位は、いずれも含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位であり、具体的な含フッ素ビニルモノマーの例としては、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオリド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類{例えばペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)}、ペルフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類{例えばペルフルオロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)}を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0068】
溶解性、透明性、入手性等の観点から、特に好ましくはヘキサフルオロプロピレン単独、又は、ヘキサフルオロプロピレンとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類もしくはペルフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類の併用である。
【0069】
以下に、本発明の一般式(3)で表されるポリシロキサン構造含有共重合体(A)中の、上記一般式(6)で表される重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0070】
【化19】

【0071】
以下に本発明の一般式(3)で表されるポリシロキサン構造含有共重合体(A)中の、上記一般式(7)で表される重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0072】
【化20】

【0073】
以上のような観点から、本発明におけるポリシロキサン構造含有共重合体(A)は、ポリシロキサン構造を有する構成単位(X)に加え、任意のビニルモノマーに基づく重合単位(Y)、及び側鎖にエチレン性不飽和基を含む構成単位である(メタ)アクリロイル基を有する重合単位(Z)からなる形態が好ましい。
【0074】
各構成単位のモル分率(%)は、10≦x<100、0≦y≦90、1≦z≦50を満たすように選択される。
【0075】
本発明におけるポリシロキサン構造含有共重合体(A)中、ポリシロキサン構造を有する構成単位(X)は素材に十分な耐擦傷性を付与し、かつ透明性、防汚耐久性を付与するための構成単位であり、単位(X)のモル分率(%)を表すxは、30≦x<100であることが好ましく、50≦x<100であることがより好ましい。
【0076】
上記共重合体(A)中、側鎖にエチレン性不飽和基を含む構成単位である(メタ)アクリロイル基を有する重合単位(Z)の導入量は、単位(X)の比率が低くなりすぎて、十分な耐擦傷性、防汚耐久性、透明性が得られにくくなることがないような範囲で適宜選択することが好ましい。そのため、単位(Z)の好ましいモル分率の範囲は、1≦z≦40であり、より好ましくは1≦z≦30である。
【0077】
上記共重合体(A)中、単位(X)及び単位(Z)以外の重合単位(Y)は、基材への密着性、溶媒への溶解性、他の塗布液組成物との相溶性、透明性等種々の性能を付与するために適宜導入してもよいが、単位(Y)の導入量は、単位(X)の比率が低くなりすぎて、十分な耐擦傷性、防汚耐久性、透明性が得られにくくなることがないような範囲で適宜選択することが好ましい。そのため、単位(Y)の好ましいモル分率の範囲は、0≦y≦40であり、より好ましくは0≦y≦15である。
【0078】
表1に、本発明で有用な共重合体(A)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表1中の数字はそれぞれの重合単位のモル分率を表す。
【0079】
【表1】

【0080】
なお、表1中の略語は以下を表す。
MMA:メチルメタクリレート由来の重合単位
n−BuMA:n−ブチルメタクリレート由来の重合単位
X:ポリシロキサン構造を含む単位
Y:任意のビニルモノマーに基づく重合単位
Z:上記一般式(5)で表される重合単位
x:Xのモル分率
y:Yのモル分率
z:Zのモル分率
【0081】
[ポリシロキサン構造含有共重合体(A)の合成]
本発明に用いられるポリシロキサン構造含有共重合体(A)の合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合によって行うことができる。またこの際、回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で合成することができる。
【0082】
重合の開始方法は、ラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。
【0083】
溶液重合法で用いられる溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トル
エン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶媒の単独又は2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
【0084】
重合温度は、生成する共重合体(A)の分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜120℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
【0085】
高分子開始剤を用いてポリシロキサン部位を導入する場合、必要に応じて、他のラジカル開始剤を併せて使用することもできる。
【0086】
併用できるラジカル開始剤としては、例えばアセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類;メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類;t−ブチルペルオキシアセタト、t−ブチルペルオキシピバラト等のペルオキシエステル類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ペルフルオロエチルヨージド、ペルフルオロプロピルヨージド、ペルフルオロブチルヨージド、(ペルフルオロブチル)エチルヨージド、ペルフルオロヘキシルヨージド、2−(ペルフルオロヘキシル)エチルヨージド、ペルフルオロヘプチルヨージド、ペルフルオロオクチルヨージド、2−(ペルフルオロオクチル)エチルヨージド、ペルフルオロデシルヨージド、2−(ペルフルオロデシル)エチルヨージド、ヘプタフルオロ−2−ヨードプロパン、ペルフルオロ−3−メチルブチルヨージド、ペルフルオロ−5−メチルヘキシルヨージド、2−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルヨージド、ペルフルオロ−7−メチルオクチルヨージド、2−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)エチルヨージド、ペルフルオロ−9−メチルデシルヨージド、2−(ペルフルオロ−9−メチルデシル)エチルヨージド、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルヨージド、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルヨージド、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルヨージド、テトラフルオロ−1,2−ジヨードエタン、オクタフルオロ−1,4−ジヨードブタン、ドデカフルオロ−1,6−ジヨードヘキサン等のヨウ素含有フッ素化合物;などを挙げることができる。
【0087】
上記ヨウ素含有フッ素化合物は、それぞれ単独で、又は上記有機過酸化物、アゾ系化合物もしくは過硫酸塩と併用して用いることができる。
【0088】
また上記ラジカル重合開始剤には、必要に応じて、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等の無機還元剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリン等の有機還元剤を併用することができる。
【0089】
得られた共重合体の再沈殿溶媒としては、水、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール、及び、これらの混合溶媒が好ましい。
【0090】
〔成分(B):エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物〕
エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物(B)の好ましい態様としては、
(1) エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する含フッ素化合物、
(2) 2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー(中空構造を有する無機微粒子と共に用いることが好ましい)、
などを挙げることができる。これにより、本発明の硬化性組成物により得られる層は、
フッ化マグネシウムやフッ化カルシウムを用いた従来の低屈折率層に比べ、最外層として用いても耐擦傷性に優れ、ひいては耐擦傷性に優れた光学フィルムが得られる。
【0091】
[(1)エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する含フッ素化合物]
エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する含フッ素化合物の好ましい例としては、含フッ素モノマーとエチレン性不飽和基を含有する官能基を有するモノマーの共重合体が挙げられる。
【0092】
(含フッ素共重合体)
含フッ素共重合体は、フッ素を含まない通常のポリマーに比べ屈折率が低く、低屈折率層用の硬化性組成物に適する。一方、ポリシロキサン構造含有共重合体(A)は滑り性付与による耐擦傷性の向上、及び防汚性の向上機能を持つ。両者により、耐擦傷性、防汚性に優れた反射防止フィルムの低屈折率層などに好ましく用いられる硬化性組成物が実現される。含フッ素共重合体は、2種類以上使用してもよい。また、上記多官能(メタ)アクリレートモノマーなど、他のエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物(B)と併用してもよい。
【0093】
本発明に用いられる含フッ素共重合体は、一般式(4)で表される構造であることが好ましい。
【0094】
一般式(4):
【化21】

【0095】
一般式(4)中、Rf41は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表し、Rf42は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよい。L41は単結合もしくは2価の連結基を表し、R41は水素原子又はメチル基を表す。A41は任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一であっても複数種で構成されていてもよい。B41はポリシロキサン構造を主鎖又は側鎖に含む構成単位を表す。a〜dはそれぞれ各構成単位のモル分率(%)を表し、30≦a+b≦95、5≦a≦90、0≦b≦70、5≦c≦50、0≦d≦90を満たす値を表す。好ましくは、35≦a+b≦70、30≦a≦60、0≦b≦30、10≦c≦50、0≦d≦50の場合であり、特に好ましくは40≦a+b≦60、40≦a≦55、0≦b≦20、15≦c≦50、0≦d≦40の場合である。但し、a+b+c+d=100(モル%)である。eは共重合体中の重合単位Bの質量分率(%)を表し、0≦e<20である。好ましくは0≦e<10であり、特に好ましくは0≦e<5の場合である。
【0096】
{一般式(6’)及び(7’)で表される重合単位}
先ず、本発明の一般式(4)で表される含フッ素共重合体中の、下記一般式(6’)で表される重合単位及び下記一般式(7’)で表される重合単位について説明する。
【0097】
一般式(6’):
【化22】

【0098】
一般式(7’):
【化23】

【0099】
上記一般式(6’)及び(7’)中のRf41及びRf42は、前記成分(A)のポリシロキサン構造含有共重合体(A)の、一般式(6)及び(7)で表される含フッ素ビニルモノマー由来の重合単位におけるRf31及びRf32とそれぞれ同じである。
【0100】
以下に、本発明の一般式(4)で表される含フッ素共重合体中の、上記一般式(6’)で表される重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0101】
【化24】

【0102】
以下に、本発明の一般式(4)で表される含フッ素共重合体中の、上記一般式(7’)で表される重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0103】
【化25】

【0104】
{一般式(8)で表される重合単位}
次に、本発明の一般式(4)で表される含フッ素共重合体中の、下記一般式(8)で表される重合単位について説明する。
【0105】
一般式(8):
【化26】

【0106】
一般式(8)中、L41は単結合もしくは2価の連結基を表し、R41は水素原子又はメチル基を表す。
【0107】
連結基L41の好ましい例としては、*−(CH22−O−**、*−(CH22−NH−**、*−(CH24−O−**、*−(CH26−O−**、*−(CH22−O−(CH22−O−**、−CONH−(CH23−O−**、*−CH2CH(OH)CH2−O−*、*−CH2CH2OCONH(CH23−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す)等が挙げられる。R41は水素原子又はメチル基を表し、硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0108】
含フッ素共重合体への(メタ)アクリロイル基の導入法は、特に限定されるものではないが、例えば:
(1) 水酸基、アミノ基等の求核基を有するポリマーを合成した後に、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸とメタンスルホン酸の混合酸無水物等を作用させる方法、
(2) 上記求核基を有するポリマーに、硫酸等の触媒存在下、(メタ)アクリル酸を作用させる方法、
(3) 上記求核基を有するポリマーにメタクリロイルオキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、
(4) エポキシ基を有するポリマーを合成した後に(メタ)アクリル酸を作用させる方法、
(5) カルボキシル基を有するポリマーにグリシジルメタクリレート等のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、
(6) 3−クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で脱塩化水素を行う方法、
などが挙げられる。
【0109】
これらの中で、本発明では、特に水酸基を含有するポリマーに対して、(1)又は(2)の手法によって(メタ)アクリロイル基を導入することが好ましい。
【0110】
含フッ素共重合体への(メタ)アクリロイル基の導入では、導入量を調整することにより、該共重合体の水酸基を完全に(メタ)アクリロイル基で置換することも、水酸基を一
部残して(メタ)アクリロイル基で置換することもできる。水酸基以外の官能基を有する共重合体に対しても、同様の導入が可能である。
【0111】
以下に、本発明の一般式(4)で表される含フッ素共重合体中の、上記一般式(8)で表される重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0112】
【化27】

【0113】
{任意のビニルモノマーに基づく重合単位A41
次に、本発明の一般式(4)で表される含フッ素共重合体中の、任意のビニルモノマーに基づく重合単位A41について説明する。A41は単一であっても複数種で構成されていてもよい。
【0114】
一般式(4)中、A41は任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体に基づく構成単位であれば、特に制限はなく、低屈折率化、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶媒への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよい。
【0115】
41として併用可能なビニルモノマー単位には、特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等);アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル);メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等);スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等);含フッ素ビニルエーテル類{但し、前記一般式(7’)で表される重合単位を除く};ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等);ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等);不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等);アクリルアミド類(N,N−ジメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等);メタクリルアミド類(N,N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0116】
上記併用可能なビニルモノマーのうち、さらなる低屈折率化という観点から、ビニルエーテル類又は含フッ素ビニルエーテル類{但し、前記一般式(7’)で表される重合単位を除く}を導入するのが好ましい。
【0117】
以下に、本発明の一般式(4)で表される含フッ素共重合体中の、任意のビニルモノマーに基づく重合単位A41の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0118】
【化28】

【0119】
【化29】

【0120】
【化30】

【0121】
(ポリシロキサン構造を主鎖又は側鎖に含む構成単位B41
次に、本発明の一般式(4)で表される含フッ素共重合体中の、ポリシロキサン構造を主鎖又は側鎖に含む構成単位B41について説明する。
【0122】
主鎖ポリシロキサン部分構造として、特に好ましいのは、下記一般式(9)で表される構造である。
【0123】
一般式(9):
【化31】

【0124】
一般式(9)において、R411〜R414は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基(炭素数1〜5が好ましい。例としてメチル基、エチル基が挙げられる)、アリール基(炭素数6〜10が好ましい。例としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる)、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜5が好ましい。例としてメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる)、又はシアノ基を表し、好ましくはアルキル基及びシアノ基であり、特に好ましくは、メチル基及びシアノ基である。
【0125】
415〜R420は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基(炭素数1〜5が好ましい。例としてメチル基、エチル基が挙げられる)、ハロアルキル基(炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましい。例としてトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が挙げられる)又はフェニル基を表し、好ましくはメチル基又はフェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0126】
r1及びr2は、それぞれ独立して、1〜10の整数を表し、好ましくは1〜6の整数であり、特に好ましくは2〜4の整数である。r3及びr4は、それぞれ独立して、0〜10の整数を表し、好ましくは1〜6の整数であり、特に好ましくは2〜4の整数である。p2は10〜1000の整数を表し、好ましくは20〜500の整数であり、特に好ましくは50〜200の整数である。
【0127】
主鎖へのポリシロキサン部分構造導入方法には特に制限はなく、例えば特開平6−93100号公報に記載のアゾ基含有ポリシロキサンアミド{市販のものでは“VPS−0501”、“VPS−1001”(商品名)、ワコー純薬工業(株)製}等のポリマー型開始剤を用いる方法;重合開始剤、連鎖移動剤由来の反応性基(例えばメルカプト基、カルボキシル基、水酸基等)をポリマー末端に導入した後、片末端又は両末端反応性基(例えばエポキシ基、イソシアネート基等)含有ポリシロキサンと反応させる方法;ヘキサメチルシクロトリシロキサン等の環状シロキサンオリゴマーをアニオン開環重合にて共重合させる方法;等が挙げられるが、中でもポリシロキサン部分構造を有する開始剤を利用する手法が容易であり好ましい。
【0128】
次に側鎖ポリシロキサン部分構造について説明する。ポリシロキサン部分構造は、一般に、下記一般式(10)の繰り返しシロキサン部位を有している。
【0129】
一般式(10):
【化32】

【0130】
一般式(10)中、R421及びR422は、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜4が好ましく、例としてメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基等が挙げられる。アリール基としては炭素数6〜20が好ましく、例としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらの中でもメチル基及びフェニル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。p3は10〜500の整数を表わし、好ましくは10〜350であり、特に好ましくは10〜250の場合である。
【0131】
側鎖に一般式(10)で表されるポリシロキサン構造を有する含フッ素共重合体は、例
えば“J.A.Appl.Polym.Sci.”,2000巻、p.78(1955年)、特開昭56−28219号公報等に記載のごとく、エポキシ基、水酸基、カルボキシル、酸無水物基等の反応性基を有するポリマーに対して、反応性を有する反応性基(例えばエポキシ基、酸無水物基に対してアミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、水酸基等)を片末端に有するポリシロキサン{例えば「サイラプレーン」シリーズ、チッソ(株)製など}を高分子反応によって導入する方法;ポリシロキサン含有シリコンマクロマーを重合させる方法によって合成することができ、どちらの方法も好ましく用いることができる。本発明ではシリコンマクロマーの重合によって導入する方法がより好ましい。
【0132】
以下に、本発明に有用な、側鎖にポリシロキサン部位を含む重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0133】
【化33】

【0134】
【化34】

【0135】
【化35】

【0136】
【化36】

【0137】
【化37】

【0138】
【化38】

【0139】
【化39】

【0140】
上記以外の、側鎖に繰り返しシロキサン部位を含む重合単位としては、前記のように、他の重合単位が有する反応性基に対して、反応性を有する反応性基を片末端に有するポリシロキサンを高分子反応させることにより形成されるものも使用することができ、このような市販のポリシロキサンとしては、次のものを例示することができる。
SS−(36):「サイラプレーンFM−0711」{チッソ(株)製}
SS−(37):「サイラプレーンFM−0721」(同上)
SS−(38):「サイラプレーンFM−0725」(同上)
【0141】
一般式(4)で表わされる含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)は、103〜106であることが好ましく、より好ましくは5×103〜5×105であり、特に好ましくは104〜105の場合である。
【0142】
表2に、本発明で有用なポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0143】
【表2】

【0144】
なお、表2中の略語は以下を表す。
Q:上記一般式(6’)で表される重合単位
N:上記一般式(7’)で表される重合単位
O:上記一般式(8)で表される重合単位
M1:任意のビニルモノマーに基づく重合単位A41
SS:ポリシロキサン構造を主鎖又は側鎖に含む構成単位B41
a:Qのモル分率
b:Nのモル分率
c:Oのモル分率
d:M1のモル分率
e:SSの、他の構成単位全体の質量に対する質量分率
Mw:質量平均分子量
【0145】
[成分(B)含フッ素共重合体の合成]
本発明に用いられる、一般式(4)で表される含フッ素共重合体の合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合によって行うことができる。また回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で合成することができる。
【0146】
重合の開始方法は、ラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。
【0147】
溶液重合法で用いられる溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶媒のそれぞれ単独、又は2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
【0148】
重合温度は、生成する含フッ素共重合体(成分(B))の分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
【0149】
反応圧力は適宜選定可能であるが、通常は0.01〜10MPa、好ましくは0.05〜5MPa、より好ましくは0.1〜2MPa程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0150】
高分子開始剤を用いてポリシロキサン部位を導入する場合、必要に応じて、他のラジカル開始剤を併せて使用することもできる。
【0151】
併用できるラジカル開始剤としては、例えばアセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類;メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類;t−ブチルペルオキシアセタト、t−ブチルペルオキシピバラト等のペルオキシエステル類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ペルフルオロエチルヨージド、ペルフルオロプロピルヨージド、ペルフルオロブチルヨージド、(ペルフルオロブチル)エチルヨージド、ペルフルオロヘキシルヨージド、2−(ペルフルオロヘキシル)エチルヨージド、ペルフルオロヘプチルヨージド、ペルフルオロオクチルヨージド、2−(ペルフルオロオクチル)エチルヨージド、ペルフルオロデシルヨージド、2−(ペルフルオロデシル)エチルヨージド、ヘプタフルオロ−2−ヨードプロパン、ペルフルオロ−3−メチルブチルヨージド、ペルフルオロ−5−メチルヘキシルヨージド、2−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルヨージド、ペルフルオロ−7−メチルオクチルヨージド、2−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)エチルヨージド、ペルフルオロ−9−メチルデシルヨージド、2−(ペルフルオロ−9−メチルデシル)エチルヨージド、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルヨージド、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルヨージド、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルヨージド、テトラフルオロ−1,2−ジヨードエタン、オクタフルオロ−1,4−ジヨードブタン、ドデカフルオロ−1,6−ジヨードヘキサン等のヨウ素含有フッ素化合物;などを挙げることができる。
【0152】
上記ヨウ素含有フッ素化合物は、それぞれ単独で、又は上記有機過酸化物、アゾ系化合物もしくは過硫酸塩と併用して用いることができる。
【0153】
また上記ラジカル重合開始剤には、必要に応じて、亜硫酸
水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等の無機還元剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリン等の有機還元剤を併用することができる。
【0154】
得られた共重合体の再沈殿溶媒としては、水、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール、及び、これらの混合溶媒が好ましい。
【0155】
[(2)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー]
更に別の好ましい態様として、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが挙げられる。2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例には、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,3,5−シクロヘキサントリオールトリメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等}、ビニルベンゼンの誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが含まれる。
【0156】
これらのなかでも、少なくとも3つの官能基を有するアクリレート又はメタアクリレートモノマー、さらには少なくとも5つの官能基を有するアクリレートモノマーが、膜硬度、すなわち耐傷性の観点で好ましい。ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物が市販されており、特に好ましく用いられる。
【0157】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーは、各種の重合開始剤その他添加剤と共に溶剤に溶解、塗布、乾燥後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化することができる。
【0158】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダーに導入してもよい。架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。
【0159】
ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。これら架橋性官能基を有するバインダーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0160】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、及び架橋官能基を導入したモノマーは、含フッ素共重合体に比較して屈折率は低くない。しかしながら、内部に空孔を有する粒子(中空粒子)と併用することで、本発明の光学フィルムの好適例である反射防止フィルムの低屈折率層として十分に有効な屈折率を得ることができる。中空粒子の具体例は、特開2002−79616号公報に記載のシリカ系粒子に記載されている。粒子屈折率は1.15〜1.40が好ましく、1.20〜1.30が更に好ましい。
【0161】
本発明の硬化性組成物のうち、成分(A){主鎖に上記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成単位、及び側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を含む共重合体}と、成分(B){エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物}の配合割合は、成分(B)100質量部に対して、成分(A)が0.1〜40質量部となるように配合するのが好ましく、1〜15質量部となるように配合するのが更に好ましい。成分(A)の配合割合が40質量部以下であれば、耐擦傷性が低下して面状が悪化するなどの問題が生じることがない。また、0.1質量部以上であれば、必要な防汚性能を得ることができるので、上記範囲内とするのが好ましい。
【0162】
〔成分(C):オルガノシラン化合物又は、該オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物〕
本発明の硬化性組成物には、ポリシロキサン構造含有共重合体(A)及びエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物(B)の他に、オルガノシラン化合物又は、該オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物(成分C)を併用することが好ましい。
【0163】
[オルガノシラン化合物]
上記オルガノシラン化合物としては、酸触媒及び金属キレート化合物の少なくともいずれかの存在下で製造されてなる、下記一般式(2−0)で表されるオルガノシランが用いられることが好ましい。次に、このオルガノシラン化合物について詳細に説明する。
【0164】
一般式(2−0):
(R20m0−Si(X214-m0
【0165】
一般式(2−0)において、R20は、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヘキシル基、t−ブチル基、s−ブチル基、ヘキシル基、デシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。アルキル基として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0166】
21は、水酸基又は加水分解可能な基を表す。加水分解可能な基としては、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基等)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、及びR22COO基(R22は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えばCH3COO基、C25COO基等)が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
【0167】
20又はX21が複数存在するとき、複数のR20又はX21はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。m0は1〜3の整数を表し、好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
【0168】
20に含まれる置換基としては、特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、プロピル基、t−ブチル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、芳香族ヘテロ環基(フリル基、ピラゾリル基、ピリジル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、アルケニル基(ビニル基、1−プロペニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−メチル−N−オクチルカルバモイル基等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アクリルアミノ基、メタクリルアミノ基等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。なお、本明細書においては、水素原子を置換するものが単一の原子であっても、便宜上置換基として取り扱う。
【0169】
20が複数ある場合は、少なくとも1つが、置換アルキル基又は置換アリール基であることが好ましい。中でも該置換アルキル基又は置換アリール基がさらにビニル重合性基を有することが好ましく、この場合、一般式(2−0)で表される化合物は、下記一般式(2)で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物として表すことができる。
【0170】
一般式(2):
【化40】

【0171】
一般式(2)において、R22は、水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子を表す。該アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。R22としては、水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子及び塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子及び塩素原子が更に好ましく、水素原子及びメチル基が特に好ましい。
【0172】
21は、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基又はウレア基を表す。単結合、エステル基及びアミド基が好ましく、単結合及びエステル基が更に好ましく、エステル基が特に好ましい。
【0173】
21は、2価の連結鎖であり、具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル基、エステル基、アミド基)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、又は内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基であり、なかでも、置換もしくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基、内部に連結基を有する炭素数3〜10のアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテル連結基又はエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテル連結基又はエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい

【0174】
21が複数存在するとき、複数のX21は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。m1は0又は1を表し、好ましくは0である。
20は、一般式(2−0)のR20と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、又は無置換のアリール基が好ましく、無置換のアルキル基、無置換のアリール基が更に好ましい。
【0175】
21は、一般式(2−0)のX21と同義であり、ハロゲン、水酸基、無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0176】
本発明に用いるオルガノシラン化合物として、下記一般式(2−1)で表されるものも好ましい。
一般式(2−1):(Rf21−L22m3−Si(R234-m3
【0177】
上記一般式(2−1)中、Rf21は炭素数1〜20の直鎖、分岐、環状の含フッ素アルキル基、又は炭素数6〜14の含フッ素芳香族基を表す。Rf21は、炭素数3〜10の直鎖、分岐、環状のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数4〜8の直鎖のフルオロアルキル基が更に好ましい。L22は炭素数10以下の2価の連結基を表し、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、更に好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基を表す。アルキレン基は、直鎖もしくは分岐の、置換もしくは無置換の、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミド)を有していてもよいアルキレン基である。アルキレン基は置換基を有していてもよく、その場合の好ましい置換基は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。R23は水酸基又は加水分解可能な基を表し、炭素数1〜5のアルコキシ基又はハロゲン原子が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、及び塩素原子が更に好ましい。m3は1〜3の整数を表す。
【0178】
一般式(2−1)で表される含フッ素オルガノシラン化合物の中でも、下記一般式(2−2)で表される含フッ素オルガノシラン化合物が好ましい。
一般式(2−2):Cn2n+1−(CH2r5−Si(R243
【0179】
上記一般式(2−2)中、nは1〜10の整数を表し、4〜10が好ましく、r5は1〜5の整数を表し、1〜3が好ましい。R24は炭素数1〜5のアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、メトキシ基、エトキシ基、及び塩素原子が好ましい。
【0180】
一般式(2−0)、(2)、(2−1)及び(2−2)の化合物は、2種類以上を併用してもよい。
【0181】
(オルガノシラン化合物の具体例)
以下に一般式(2−0)、(2)、(2−1)又は(2−2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0182】
【化41】

【0183】
【化42】

【0184】
【化43】

【0185】
【化44】

【0186】
【化45】

【0187】
【化46】

【0188】
【化47】

【0189】
【化48】

【0190】
【化49】

【0191】
【化50】

【0192】
【化51】

【0193】
これらの具体例の中で、(OS−1)、(OS−2)、(OS−56)、(OS−57)等が特に好ましい。また、特許第3474330号公報の参考例に記載のA,B,Cの化合物も好ましい。
【0194】
[オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又は部分縮合物]
そして、前記オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又は部分縮合物は、一般に前記オルガノシラン化合物を触媒の存在下で処理して製造されるものである。
【0195】
(触媒)
触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;蓚酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類;Zr、Ti又はAlなどの金属を中心金属とする金属キレート化合物等が挙げられる。本発明においては、金属キレート化合物、無機酸類及び有機酸類の酸触媒を用いるのが好ましい。
【0196】
(無機酸類及び有機酸類)
無機酸では塩酸、硫酸が好ましく、有機酸では、水中での酸解離定数{pKa値(25℃)}が4.5以下のものが好ましく、更には、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸が好ましく、特に、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、具体的には、メタンスルホン酸、蓚酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、蓚酸が特に好ましい。
【0197】
(金属キレート化合物)
金属キレート化合物としては、一般式R51OH(式中、R51は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールとR52COCH2COR53(式中、R52は炭素数1〜10のアルキル基、R53は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用してもよい。
【0198】
本発明に用いられる金属キレート化合物は、一般式Zr(OR51s1(R52COCHCOR534-s1、Ti(OR51t1(R52COCHCOR534-t1、及びAl(OR51u1(R52COCHCOR533-u1で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又は部分縮合物の縮合反応を促進する作用をなす

【0199】
金属キレート化合物中のR51及びR52は、同一又は異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基など、又はアリール基、例えばフェニル基である。また、R53は、R51及びR52と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。
s1は、1〜3の整数を表し、t1は、1〜3の整数を表し、u1は、1または2の整数を表す。
【0200】
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
【0201】
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0202】
(β−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物)
また、本発明の硬化性組成物には、更にβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物が添加されることが好ましい。以下にさらに説明する。
【0203】
本発明で使用されるのは、一般式R52COCH2COR53で表されるβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物であり、本発明の硬化性組成物の安定性向上剤として作用するものである。ここで、R52は炭素数1〜10のアルキル基、R53は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を表す。すなわち、上記金属キレート化合物(ジルコニウム、チタニウム及び/又はアルミニウム化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物によるオルガノシラン化合物の加水分解物及び/又は部分縮合物の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる組成物の保存安定性を向上させる作用をなすものと考えられる。β−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物を構成するR52及びR53は、上記金属キレート化合物を構成するR52及びR53と同様である。
【0204】
このβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−s−ブチル、アセト酢酸−
t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、5−メチルヘキサンジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0205】
本発明において、β−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物は、金属キレート化合物1モルに対し好ましくは2モル以上、より好ましくは3〜20モル用いられる。2モル以上用いることにより、得られる組成物の保存安定性が向上するので好ましい。
【0206】
前記オルガノシラン化合物は硬化性組成物に直接添加してもよいが、前記オルガノシラン化合物を、予め触媒の存在下に処理して、オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又は部分縮合物を調製し、得られた反応溶液(ゾル液)を用いて前記硬化性組成物を調整するのが好ましく、本発明においては、先ずオルガノシラン化合物の加水分解物及び/又は部分縮合物、及び金属キレート化合物を含有する組成物を調製し、これにβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物を添加した液を硬化性組成物に含有せしめて塗設することが好ましい。
【0207】
本発明の硬化性組成物のうち、成分(C){オルガノシラン化合物又は、該オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物}と、成分(B){エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物}の配合割合は、成分(B)100質量部に対して、成分(C)が0.1〜50質量部となるように配合するのが好ましく、0.5〜20質量部となるように配合するのが更に好ましい。
【0208】
〔成分(D):重合開始剤〕
本発明の硬化性組成物には、成分(A)のポリシロキサン構造含有共重合体、及び成分(B)のエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物の他、成分(D)である重合開始剤を添加するのが好ましい。重合開始剤(D)は通常用いられるものであれば特に限定はされず用いることができるが、熱及び/又は電離放射線硬化性の開始剤であることが好ましい。
【0209】
本発明で用いる成分(D)の重合開始剤並びに、前記成分(C)であるオルガノシラン化合物又は、該オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物のそれぞれのSP値は、合わせて用いる成分(B)のエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物よりも大きいことが好ましい。このSP値差により、成分(B)の化合物が、本発明の光学フィルムの機能層、特に反射防止フィルムの低屈折率層の上部(最表面側)に局在化しやすくなり、一方、添加する成分(D)と成分(C)とが、低屈折率層の下部(最表面とは反対側)に局在化しやすくなって、重合が効率よく進行するものと考えられる。これらのことにより、接触媒体へのシリコーン成分の転写や、製造ラインの汚染等を充分に抑制できるので好ましい。
【0210】
[SP値]
化合物のSP値とは溶解性パラメーターのことであって、どれだけ溶媒などに溶け易いかということを数値化したものであり、有機化合物ではよく使われる極性と同義で、このSP値が大きい程、極性が大きいことを表す。SP値はFedors法で計算した計算値を使用することができる。
【0211】
重合開始剤は、以下に示す重合開始剤骨格のいずれの構造を有するものでもよい。また、これらの重合開始剤にオルガノシラン化合物の硬化性部位が分子内で連結結合した化合物も重合開始剤として用いることができ、この連結結合した化合物のSP値が、上記成分
(B)の化合物より大きければ同様な効果を有する。また、後述するように、エチレン性不飽和基を含むモノマーの硬化性部位が分子内で連結結合した化合物も重合開始剤として用いることができ、この連結結合した化合物のSP値が上記成分(B)の化合物より大きければ同様な効果を有する。
【0212】
[電離放射線硬化性重合開始剤骨格]
電離放射線硬化性重合開始剤骨格としては、通常用いられる光ラジカル重合開始剤と同様の化合物であって、好ましくは硬化性組成物に用いられる各共重合体、特に成分(B)の多官能(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリレート基含有含フッ素共重合体のSP値よりも大きな値を示す開始剤骨格を有することが好ましい。
【0213】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号等)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
【0214】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシジメチル−p−イソプロピルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルホリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン等が含まれる。
【0215】
ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0216】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0217】
ボレート塩としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martinらの“Rad Tech’98.Proceeding April”、19〜22頁、1998年(Chicago)等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物、前記特開2002−116539号公報の段落番号[0022]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。またその他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が挙げられ、具体例にはカチオン性色素とのイオンコンプレックス類が挙げられる。
【0218】
ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
活性エステル類の例には、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,
2−(O−ベンゾイルオキシム)]、スルホン酸エステル類、環状活性エステル化合物などが含まれる。具体的には特開2000−80068号公報の実施例記載化合物1〜21が特に好ましい。
オニウム塩類の例には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
【0219】
活性ハロゲン類としては、具体的には、若林 等の“Bull Chem.Soc Japan”、42巻、2924頁(1969年)、米国特許第3,905,815号明細書、特開平5−27830号公報、M.P.Huttの“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”、1巻(3号)(1970年)等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:s−トリアジン化合物が挙げられる。より好適には、少なくとも1つのモノ−、ジ−又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0220】
具体的な例には、s−トリアジンやオキサチアゾール化合物が知られており、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−スチリルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−[3−ブロモ−4−ジ(アセトキシエチル)アミノフェニル]−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−トリハロメチル−5−(p−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールが含まれる。具体的には特開昭58−15503号公報のp14〜p30、特開昭55−77742号公報のp6〜p10、特公昭60−27673号公報のp287記載のNo.1〜No.8、特開昭60−239736号公報のp443〜p444のNo.1〜No.17、米国特許第4701399号明細書のNo.1〜19などの化合物が特に好ましい。
【0221】
無機錯体の例には、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル]チタニウムが挙げられる。
クマリン類の例には3−ケトクマリンが挙げられる。
これらの開始剤は単独でも混合して用いてもよい。
【0222】
「最新UV硬化技術」、(株)技術情報協会、1991年、p.159及び、「紫外線硬化システム」、加藤清視著、平成元年、総合技術センター発行、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0223】
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製の“KAYACURE(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCA)”など;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア(651,184,500,819,907,369,1173,1870,2959,4265,4263)」など;サートマー社製の“Esacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,TZT)”など、及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0224】
(光増感剤)
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーケトン及びチオキサントンなどを挙げることができる。更にアジド化合物、チオ尿素化合物、メルカプト化合物などの助剤を1種以上組み合わせて用いてもよい。
【0225】
市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製の“KAYACURE(DMBI,EPA)”などが挙げられる。
【0226】
[熱ラジカル重合開始剤骨格]
熱ラジカル重合開始剤骨格についても、通常用いられる熱ラジカル重合開始剤と同様の化合物であって、好ましくは低屈折率層を形成するための硬化性組成物に用いられる各共重合体、特に成分(B)の化合物のSP値よりも大きな値を示す開始剤骨格を有することが好ましい。
【0227】
熱ラジカル重合開始剤としては、有機又は無機の過酸化物、有機アゾ−及びジアゾ化合物等を用いることができる。
【0228】
具体的には、有機過酸化物として、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド;無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等;アゾ化合物として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等;ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
これらの開始剤は単独でも混合して用いてもよい。
【0229】
本発明で好ましく用いることができる開始剤の具体例とそのSP値(Fedors法にて計算)を下記に示すが、これらに制限はない。
【0230】
【化52】

【0231】
また、エチレン性不飽和基を含むモノマーと、重合開始部位が分子内で連結結合した自己重合開始性の化合物も、本発明において重合開始剤として好適に用いることができる。このような化合物を次に例示する。
【0232】
【化53】

【0233】
さらに、本発明で使用できる開始剤の具体的化合物を以下に示す。
【0234】
【化54】

【0235】
重合開始剤(D)の使用量に特に制限はないが、併用して用いるポリシロキサン構造含有共重合体(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
【0236】
またこれらの重合開始剤化合物は、1種でも、また複数種を使用してもよいし、他の光増感剤などと併用して使用してもよい。このような光増感剤としては、前記のものを挙げることができ、具体的には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。更にアジド化合物、チオ尿素化合物、メルカプト化合物などの助剤を1種以上組み合わせて用いてもよい。
【0237】
〔成分(E):無機微粒子〕
本発明の硬化性組成物には、ポリシロキサン構造含有共重合体(A)及びエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物(B)の他、成分(E)である無機微粒
子を添加するのが好ましい。
【0238】
本発明の光学フィルムの機能層、特に反射防止フィルムの低屈折率層に含有させる無機微粒子(E)は、低屈折率であることが望ましく、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点でシリカ微粒子が好ましい。
【0239】
[シリカ微粒子]
シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。すなわち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
ここで、無機粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0240】
シリカ微粒子の粒径が上記下限値以上であれば、耐擦傷性の改良効果が発揮され、上限値以下であれば低屈折率層表面に微細な凹凸ができて黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化するなどの問題が生じないので、シリカ微粒子は上記の粒径の範囲内の物を用いることが好ましい。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよく、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題ない。
【0241】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。
【0242】
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
【0243】
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コスト及び保持剤効果の点で好ましい。
【0244】
低屈折率粒子の塗設量は、1〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5〜80mg/m2、更に好ましくは10〜60mg/m2である。塗布量が該下限値以上であれば、耐擦傷性の改良効果が発揮され、上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化するなどの問題が生じないので好ましい。
【0245】
(中空シリカ粒子)
屈折率をより低下させる目的のためには、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましい。
【0246】
中空のシリカ微粒子の屈折率は1.15〜1.40が好ましく、更に好ましくは1.17〜1.35、最も好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をri、粒子外殻の半径をroとすると、空隙率xは下記数式(1)で表される。
数式(1):x=(4πri3/3)/(4πro3/3)×100
中空シリカ粒子の空隙率xは、好ましくは10〜60%、更に好ましくは20〜60%
、最も好ましくは30〜60%である。
【0247】
中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.15以上の低屈折率の粒子が好ましい。
【0248】
中空シリカの製造方法は、例えば特開2001−233611号公報や特開2002−79616号公報に記載されている。特にシェルの内部に空洞を有している粒子で、そのシェルの細孔が閉塞されている粒子が特に好ましい。なお、これら中空シリカ粒子の屈折率は特開2002−79616号公報に記載の方法で算出することができる。
【0249】
中空シリカの塗設量は、1〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5〜80mg/m2、更に好ましくは10〜60mg/m2である。中空シリカの塗設量が該下限値以上であれば、低屈折率化の効果や耐擦傷性の改良効果が十分に発揮され、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化するなどの不具合が生じないので好ましい。
【0250】
中空シリカの平均粒径は、使用される機能層、例えば低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。すなわち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、中空シリカの粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上100nm以下、更に好ましくは、40nm以上65nm以下である。シリカ微粒子の粒径が該下限値以上であれば、空腔部の割合が小さくなりすぎることはないので屈折率の低下が発揮され、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観や、積分反射率が悪化するなどの不具合が生じないので好ましい。
【0251】
中空シリカは、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよく、また単分散粒子が好ましい。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題ない。
【0252】
また、中空シリカは粒子平均粒子サイズの異なるものを2種以上併用して用いることができる。ここで、中空シリカの平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0253】
本発明において、中空シリカの比表面積は、20〜300m2/gが好ましく、更に好ましくは30〜120m2/g、最も好ましくは40〜90m2/gである。表面積は窒素を用いBET法で求めることができる。
【0254】
本発明においては、中空シリカと併用して空腔のないシリカ粒子を用いることができる。空腔のないシリカの好ましい粒子サイズは、30nm以上150nm以下、更に好ましくは35nm以上100nm以下、最も好ましくは40nm以上80nm以下である。
【0255】
無機粒子がシリカである場合、カップリング剤を使用することができる。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例えば、チタンカップリング剤、シランカップリング剤など)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング剤による処理が特に有効である。
【0256】
上記カップリング剤は、例えば低屈折率層の無機微粒子の表面処理剤として該層塗布液調製以前に、予め表面処理を施すために用いられるが、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
【0257】
シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷
軽減のために好ましい。
【0258】
本発明に好ましく用いることのできる表面処理剤及び表面処理用の触媒の具体的化合物は、例えば、国際公開第2004/017105号パンフレットに記載のオルガノシラン化合物及び触媒を挙げることができる。これらの表面処理は、2種類以上を併用することもできる。
【0259】
〔その他の添加剤〕
本発明の硬化性組成物において、必要性に応じて各種添加剤及び/又は適当な溶媒を添加することができる。得られる硬化性組成物の固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが、一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1〜20質量%程度である。
【0260】
本発明の硬化性組成物が反射防止フィルムの低屈折率層形成用に用いられるとき、該低屈折率層と直接接する下層との界面密着性等の観点からは、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸又はその無水物等の硬化剤を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して30質量%以下の範囲とすることが好ましく、20質量%以下の範囲とすることがより好ましく、10質量%以下の範囲とすることが特に好ましい。
【0261】
また、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、上記オルガノシラン化合物以外にも公知のフッ素系化合物の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には、硬化性組成物全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0262】
[フッ素系化合物]
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖{例えば−CF2CF3、−CH3(CF34H、−CH2(CF28CF3、−CH2CH2(CF24H等}であっても、分岐構造{例えば−CH(CF32、−CH2CF(CF32、−CH(CH3)CF2CF3、−CH(CH3)(CF25CF2H等}であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばペルフルオロシクロへキシル基、ペルフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)であってもよく、エーテル結合を有していてもよい(例えば−CH2OCH2CF2CF3、−CH2CH2OCH248H、−CH2CH2OCH2CH2817、−CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
【0263】
フッ素系化合物は、さらに機能層、例えば低屈折率層皮膜との結合形成又は相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。
【0264】
フッ素系化合物中のフッ素原子含有量には特に制限はないが、20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としては、ダイキン工業(株)製の"R−2020"、"M−2020"、"R−3833"、"M−3833"(以上商品名);大日
本インキ化学工業(株)製の「メガファックF−171」、「メガファックF−172」、「メガファックF−179A」、「ディフェンサMCF−300」(以上商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0265】
[防塵剤、帯電防止剤等]
本発明の硬化性組成物が、光学フィルムの機能層、特に反射防止フィルムの低屈折率層の形成用に用いられるとき、該硬化性組成物には、防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、さらに公知のカチオン系界面活性剤又はポリオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は、上記のシリコーン系化合物やフッ素系化合物に、その構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。
【0266】
これらを添加剤として添加する場合には、機能層、例えば低屈折率層の全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0267】
好ましい化合物の例としては、大日本インキ化学工業(株)製「メガファックF−150」(商品名)、東レ・ダウコーニング(株)製"SH−3748"(商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0268】
その他、低屈折率層形成用に用いられる硬化性組成物には、各種シランカップリング剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜添加してもよい。
【0269】
[機能層塗設用の溶媒]
本発明の硬化性組成物が、機能層、特に低屈折率層を形成するための塗布液組成物として用いられるとき、使用される溶媒は、各成分を溶解又は分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶媒が使用できる。乾燥にかかる負荷の少なさの観点からは、常圧、室温における沸点が100℃以下の溶媒を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶媒を少量含有することが好ましい。
【0270】
沸点が100℃以下の溶媒としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類;ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル (90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類;ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類;アセトン(56.1℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類;メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類;アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類;二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0271】
沸点が100℃を以上の溶媒としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン{メチルイソブチルケトン(MIBK)と同じ、115.9℃}、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
【0272】
<光学フィルム>
本発明の光学フィルムは、本発明の硬化性組成物を硬化してなる機能層を少なくとも1層有する。
【0273】
〔光学フィルムの代表的層構成〕
本発明の光学フィルムは、支持体上に一層以上の機能層を積層した光学フィルムであり、ハードコート層のみのハードコートフィルムや、低屈折率層のみの反射防止フィルムなどのように単層構成でもよく、また、高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層と積層した反射防止フィルム、帯電防止層/ハードコート層と積層したハードコートフィルムなどのように多層構成でもよいが、好ましくは多層構成の形態である。
【0274】
本発明の光学フィルムは、特に限定されないが画像表示装置のディスプレイの最表面に用いることもできる。その場合、そのまま、又は偏光膜と組み合わせた偏光板の形で画像表示装置に使用できるが、前もって透明な支持体上に機能層を形成して光学フィルムとして画像表示装置に配置することが好ましい。
【0275】
本発明の硬化性組成物を硬化してなる機能層は、特にその用途は限定されないが、防汚層、透明導電性層、ハードコート層、防眩層、及び低屈折率層などであることが好ましく、低屈折率層、ハードコート層であることがより好ましく、低屈折率層であることが特に好ましい。
【0276】
本発明の光学フィルムの代表的な態様である反射防止フィルムは、支持体上に、必要に応じて、後述のハードコート層を有し、その上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されている。低反射性の反射防止フィルムは、最も単純な構成では、支持体上に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、反射防止層を、支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成することが好ましい。構成例としては、支持体側から高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(基材又はハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。
【0277】
[反射防止フィルムの代表的層構成]
本発明の反射防止フィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。
・支持体/低屈折率層、
・支持体/帯電防止層/低屈折率層、
・支持体/防眩層/低屈折率層、
・支持体/防眩層/帯電防止層/低屈折率層、
・支持体/帯電防止層/防眩層/低屈折率層、
・支持体/ハードコート層/低屈折率層、
・支持体/ハードコート層/防眩層/低屈折率層、
・支持体/ハードコート層/防眩層/帯電防止層/低屈折率層、
・支持体/ハードコート層/帯電防止層/防眩層/低屈折率層、
・支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、
・支持体/ハードコート層/帯電防止層/高屈折率層/低屈折率層、
・支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・支持体/防眩層/高屈折率層/低屈折率層、
・支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・支持体/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・支持体/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/支持体/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層。
【0278】
光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。高屈折率層は防眩性のない光拡散性層であってもよい。また、帯電防止層は導電性ポリマー粒子又は金属酸化物微粒子(例えば、ATO、ITO)を含む層であることが好ましく、塗布又は大気圧プラズマ処理等によって設けることができる。
【0279】
[反射防止フィルム以外の光学フィルムの層構成]
上記反射防止フィルムの層構成以外で、本発明の光学フィルムとして好ましい層構成の例を下記に示す。
・支持体/帯電防止層、
・支持体/防眩層、
・支持体/防眩層/帯電防止層、
・支持体/帯電防止層/防眩層、
・支持体/ハードコート層、
・支持体/ハードコート層/帯電防止層、
・支持体/ハードコート層/防眩層、
・支持体/ハードコート層/防眩層/帯電防止層、
・支持体/ハードコート層/帯電防止層/防眩層、
・支持体/帯電防止層/ハードコート層、
・支持体/防眩層/ハードコート層、
・帯電防止層/支持体/ハードコート層、
・帯電防止層/支持体/防眩層。
【0280】
以下に、本発明の光学フィルムの一態様として好適な反射防止フィルムの基本的な構成を、図面を参照しながら説明する。
【0281】
図1(a)に模式的に示される断面図は、本発明の光学フィルムの一例である反射防止フィルムである。反射防止フィルム1aは、透明支持体2、ハードコート層3、高屈折率層4、そして本発明の硬化性組成物を硬化させることによって得られる低屈折率層5の順序の層構成を有する。高屈折率層4の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層5の屈折率は1.30〜1.44の範囲にあることが好ましい。
【0282】
本発明においてハードコート層は、このように高屈折率層とは別に設置されてもよいし、高屈折率層の機能を併せ持つ高屈折率ハードコート層でもよい。またハードコート層は、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。さらにハードコート層はなくてもよい。従って、図1に示したハードコート層は必須ではないが、フィルム強度付与のためにこれらのハードコート層のいずれかが塗設されることが好ましい。低屈折率層は最外層に塗設される。
【0283】
図1(b)に模式的に示される断面図は、本発明の光学フィルムの別の一例である反射防止フィルムである。反射防止フィルム1bは、透明支持体2、ハードコート層3、中屈折率6、高屈折率層4、本発明の硬化性組成物を硬化させることによって得られる低屈折
率層(最外層)5の順序の層構成を有する。透明支持体2、中屈折率層6、高屈折率層4及び低屈折率層5は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
【0284】
図1(b)のような層構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記数式(2)、高屈折率層が下記数式(3)、低屈折率層が下記数式(4)をそれぞれ満足することがより優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる点で好ましい。
【0285】
数式(2):(hλ/4)×0.7<n11<(hλ/4)×1.3
数式(3):(iλ/4)×0.7<n22<(iλ/4)×1.3
数式(4):(jλ/4)×0.7<n33<(jλ/4)×1.3
【0286】
数式(2)〜(4)において、hは正の整数(一般に1、2又は3)であり、iは正の整数(一般に1、2又は3)であり、jは正の奇数(一般に1)である。n1、n2及びn3は、それぞれ中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層の屈折率であり、そして、d1、d2及びd3は、それぞれ中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長(nm)であり、380〜680nmの範囲の値である。
【0287】
図1(b)のような層構成では、中屈折率層が下記数式(2−1)、高屈折率層が下記数式(3−1)、低屈折率層が下記数式(4−1)をそれぞれ満足することが、特に好ましい。ここで、λは500nm、hは1、iは2、jは1である。
【0288】
数式(2−1):(hλ/4)×0.80<n11<(hλ/4)×1.00
数式(3−1):(iλ/4)×0.75<n22<(iλ/4)×0.95
数式(4−1):(jλ/4)×0.95<n33<(jλ/4)×1.05
【0289】
なお、ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは、層相互の相対的な屈折率の高低をいう。また、図1(b)では、高屈折率層を光干渉層として用いており、極めて優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる。
【0290】
〔低屈折率層〕
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層について以下に説明する。
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であり、好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は、上記のように下記数式(4)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
【0291】
数式(4):(jλ/4)×0.7<n33<(jλ/4)×1.3
【0292】
式中、j、n3、d3及びλは前記のとおりであり、λは380〜680nmの範囲の値である。
なお、上記数式(4)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(4)を満たすj(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0293】
硬化した低屈折率層表面の動摩擦係数は、好ましくは0.03〜0.15、水に対する接触角は好ましくは90〜120°である。
【0294】
本発明における低屈折率層は、本発明の硬化性組成物を塗布硬化させることによって形成されることが好ましい。
【0295】
低屈折率層の膜厚は、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましく、30nm〜500nmであることが最も好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
【0296】
〔ハードコート層〕
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、必要に応じて、支持体の表面に設けるものである。特に、支持体と高屈折率層(又は中屈折率層)の間に設けることが好ましい。またハードコート層は、層中に上記の高屈折率粒子などを含有させることにより、高屈折率層を兼ねることもできる。また、ハードコート層だけを支持体の表面に形成して、ハードコートフィルムを作製することもできる。
【0297】
[ハードコート層用材料]
(バインダー)
ハードコート層が本発明の光学フィルムの最表面の機能層である場合は、以下に示すハードコート層用材料の他に、前記本発明の硬化性組成物の成分(A)であるポリシロキサン構造含有共重合体を加えることが好ましい。ハードコート層が本発明の光学フィルムの最表面の機能層でない場合は、該成分(A)は加えない方が好ましい。
【0298】
ハードコート層は、電離放射線硬化性樹脂の架橋反応、又は重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は重合反応させることにより形成することができる。この中でも特に、前記本発明の硬化性組成物の成分(B)であるエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物を硬化させることによって形成されることが、皮膜強度、塗布液の安定性、塗膜の生産性、などの点で好ましく、エチレン性不飽和基を1分子中に2個以上含むモノマーを含有する塗布液組成物を硬化させることによって形成されることが更に好ましい。
【0299】
エチレン性不飽和基を1分子中に2個以上有するモノマーは、本発明の硬化性組成物の成分(B)の説明の中で例示したものを用いることができる。多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等)、ビニルスルホン(例えばジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えばメチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
なお本明細書においては、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を表す。
【0300】
形成される皮膜を高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含む高屈折率モノマーや、フルオレン骨格を分子内に有するモノマー等を選択すればよい。
【0301】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用することができる。
【0302】
上述したように、ハードコート層が本発明の光学フィルムの最表面の機能層である場合は、前記本発明の硬化性組成物の成分(A)であるポリシロキサン構造含有共重合体を加えることが好ましい。その場合、成分(A)と成分(B)との配合割合は、成分(B)の化合物100質量部に対して、成分(A)の共重合体中のポリシロキサン構造部が0.001〜40質量部となるように配合するのが好ましく、0.01〜15質量部となるように配合するのが更に好ましい。成分(B)の化合物100質量部に対し、成分(A)の共重合体中のポリシロキサン構造部が40質量部以下であれば、耐擦傷性が低下したり面状が悪化したりするなどの不具合が生じることがなく、また、0.001質量部以上であれば、必要な防汚性能を得ることができるので、成分(A)と成分(B)との配合割合は、該範囲内とするのが好ましい。
【0303】
(重合開始剤)
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。これら重合開始剤としては、本発明の成分(D)として前記した光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0304】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
【0305】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。
【0306】
ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0307】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
【0308】
また、「最新UV硬化技術」のP.159{発行人;高薄一弘、発行所;(株)技術情報協会、1991年発行}にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0309】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア(651,184,907)」等が好ましい例として挙げられる。
【0310】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で
使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0311】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例も前記のとおりであり、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
【0312】
熱ラジカル開始剤としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド;無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等;アゾ化合物として2−アゾビスイソブチロニトリル、2−アゾビスプロピオニトリル、2−アゾビスシクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0313】
熱ラジカル開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0314】
本発明においては、ポリエーテルを主鎖として有するポリマーを使用することもできる。多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、感光性酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0315】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
【0316】
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
【0317】
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0318】
また、ハードコート層は、必要に応じて防眩性を付与するためのマット粒子、及び高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機微粒子を含有することができる。
【0319】
(マット粒子)
ハードコート層には、防眩性付与の目的で、無機微粒子より大きく、平均粒径が0.1〜5.0μm、好ましくは1.5〜3.5μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有させることができる。
【0320】
マット粒子とバインダー間の屈折率差は大きすぎるとフィルムが白濁し、小さすぎると十分な光拡散効果をえることができないため、0.02〜0.20であることが好ましく、0.04〜0.10であることが特に好ましい。マット粒子のバインダーに対する添加量も屈折率同様、大きすぎるとフィルムが白濁し、小さすぎると十分な光拡散効果をえることができないため、3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0321】
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、真球又は不定形のいずれも使用できる。
【0322】
異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。
2種類以上のマット粒子を用いる場合には両者の混合による屈折率制御を効果的に発揮するために屈折率の差が0.02以上、0.10以下であることが好ましく、0.03以上、0.07以下であることが特に好ましい。またより大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与するマット粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なるマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0323】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては、単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほどよい。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0324】
上記マット粒子は、形成されたハードコート層中のマット粒子量が好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは100〜700mg/m2となるようにハードコート層に含有される。
【0325】
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0326】
(無機微粒子)
ハードコート層には、層の屈折率を高めるため、及び硬化収縮を低減するために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機微粒子が含有されることが好ましい。
【0327】
また、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いたハードコート層では、層の屈折率を低目に保つために珪素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は上記の無機微粒子と同じである。
【0328】
ハードコート層に用いられる無機微粒子の具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO、SiO2等が挙げられる。TiO2及びZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。
【0329】
無機微粒子は、表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、微粒子表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0330】
これらの無機微粒子の添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜70%である。
【0331】
なお、このような微粒子は、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該微粒子が分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0332】
本発明におけるハードコート層の、バインダー及び無機微粒子の混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を該範囲とするには、バインダー及び無機微粒子の種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0333】
〔低屈折率層・ハードコート層以外の層〕
[防眩層]
防眩層は、表面散乱による防眩性と、好ましくはフィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。
【0334】
防眩層を形成する方法としては、特開平6−16851号公報記載のような、表面に微細な凹凸を有するマット状の賦型フィルムをラミネートして形成する方法;特開2000−206317号公報記載のように、電離放射線照射量の差による電離放射線硬化型樹脂の硬化収縮により形成する方法;特開2000−338310号公報記載のように、乾燥にて透光性樹脂に対する良溶媒の重量比が減少することにより、透光性微粒子及び透光性樹脂をゲル化させつつ固化させて塗膜表面に凹凸を形成する方法;特開2000−275404号公報記載のように、外部からの圧力により表面凹凸を付与する方法;などが知られており、これら公知の方法を利用することができる。
【0335】
本発明で用いることができる防眩層は、好ましくはハードコート性を付与することのできるバインダー、防眩性を付与するための透光性粒子、及び溶媒を含有し、透光性粒子自体の突起又は複数の粒子の集合体で形成される突起によって表面の凹凸を形成されるものであることが好ましい。
【0336】
マット粒子の分散によって形成される防眩層は、バインダーとバインダー中に分散された透光性粒子とからなる。防眩性を有する防眩層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えていることが好ましい。
【0337】
防眩層に用いられるマット粒子も、前記ハードコート層で防眩性付与の目的で使用されるマット粒子と同様のものであることができる。その作用も同様である。
【0338】
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、球形あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0339】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに防眩性反射防
止フィルムを貼り付けた場合に、「ギラツキ」と呼ばれる表示画像品位上の不具合が発生する場合がある。「ギラツキ」は、防眩性反射防止防止フィルム表面に存在する凹凸により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与するマット粒子よりも小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なるマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0340】
上記マット粒子は、形成された防眩層中のマット粒子量が、好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは100〜700mg/m2となるように防眩層に含有される。
【0341】
防眩層の膜厚は1〜10μmの範囲であることが好ましく、1.2〜8μmの範囲であることがより好ましい。防眩層の膜厚が該下限値以上であれば、優れたハード性を付与することができ、該上限値以下であれば、カールや脆性が悪化して加工適性が低下するなどの不具合が生じないので、前記範囲内とするのが好ましい。
【0342】
一方、防眩層の中心線平均粗さ(Ra)は0.10〜0.40μmの範囲となるようにするが好ましい。中心線平均粗さが0.40μm以下であれば、ギラツキや外光が反射した際の表面の白化等の問題は生じにくい。また、透過画像鮮明度の値は、5〜60%とするのが好ましい。
【0343】
防眩層の表面硬度は、鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0344】
[高屈折率層、中屈折率層]
本発明の反射防止フィルムには、高屈折率層、中屈折率層を設け、反射防止性を高めることができる。
【0345】
以下の本明細書では、この高屈折率層と中屈折率層を高屈折率層と総称して呼ぶことがある。なお、本発明において、高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層の「高」、「中」、「低」とは層相互の相対的な屈折率の大小関係を表す。また、透明支持体との関係で言えば屈性率は、透明支持体>低屈折率層、高屈折率層>透明支持体の関係を満たすことが好ましい。
さらに本明細書では高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層を総称して反射防止層と総称して呼ぶことがある。
【0346】
高屈折率層の上に低屈折率層を構築して、反射防止フィルムを作製するためには、高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であることが好ましく、より好ましくは1.60〜2.20、更に好ましくは、1.65〜2.10、最も好ましくは1.80〜2.00である。
【0347】
支持体から近い順に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を塗設し、反射防止フィルムを作製する場合、高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。
【0348】
高屈折率層及び中屈折率層に用いるTiO2を主成分とする無機粒子は、分散物の状態で高屈折率層及び中屈折率層の形成に使用する。
無機粒子は、分散剤の存在下で分散媒体中に分散するのがよい。
【0349】
本発明に用いる高屈折率層及び中屈折率層は、分散媒体中に無機粒子を分散した分散液
に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(例えば、前記の電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0350】
さらに、高屈折率層及び中屈折率層のバインダーを層の塗布と同時又は塗布後に、分散剤と架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
【0351】
このようにして作製した高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、例えば、上記の好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。さらに高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、アニオン性基が無機粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機粒子を含有する高屈折率層及び中屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
【0352】
高屈折率層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して、5〜80質量%添加する。
【0353】
高屈折率層における無機粒子の含有量は、高屈折率層の質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。無機粒子は高屈折率層内で2種類以上を併用してもよい。
【0354】
高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましい。
【0355】
高屈折率層に、芳香環を含む電離放射線硬化性化合物、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)を含む電離放射線硬化性化合物、S,N,P等の原子を含む電離放射線硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
【0356】
高屈折率層の膜厚は用途により適切に設計することができる。高屈折率層を光学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170nm、特に好ましくは60〜150nmである。
【0357】
高屈折率層のヘイズは、防眩機能を付与する粒子を含有しない場合、低いほど好ましい。5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0358】
高屈折率層は、前記透明支持体上に直接、又は、他の層を介して構築することが好ましい。
【0359】
[帯電防止層、導電性層]
本発明においては、帯電防止層を設けることが反射防止フィルム表面での静電気防止の点で好ましい。帯電防止層を形成する方法は、例えば、導電性微粒子と反応性硬化樹脂を含む導電性塗工液を塗工する方法、又は透明膜を形成する金属や金属酸化物等を蒸着やスパッタリングして導電性薄膜を形成する方法等の従来公知の方法を挙げることができる。導電性層は、支持体に直接、又は支持体との接着を強固にするプライマー層を介して形成することができる。また、帯電防止層を反射防止フィルムの一部として使用することもで
きる。この場合、最表層から近い層で使用する場合には、膜の厚さが薄くても十分に帯電防止性を得ることができる。
【0360】
帯電防止層の厚さは、0.01〜10μmが好ましく、0.03〜7μmであることがより好ましく、0.05〜5μmであることがさらに好ましい。帯電防止層の表面抵抗は、105〜1012Ω/□であることが好ましく、105〜109Ω/□であることがさらに好ましく、105〜108Ω/□であることが最も好ましい。帯電防止層の表面抵抗は、四探針法により測定することができる。
【0361】
帯電防止層は、実質的に透明であることが好ましい。具体的には、帯電防止層のヘイズは10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。また波長550nmの光の透過率は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
【0362】
本発明における帯電防止層は、その表面硬度が優れていることが好ましく、具体的な帯電防止層の表面硬度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがさらに好ましく、4H以上であることが最も好ましい。
【0363】
[防汚層]
本発明の反射防止フィルムの最表面には防汚層を設けることができる。防汚層は反射防止フィルムの表面エネルギーを下げ、親水性又は親油性の汚れを付きにくくするものである。
【0364】
防汚層は含フッ素ポリマーや防汚剤を用いて形成することができる。
【0365】
防汚層の厚さは2〜100nmであることが好ましく、5〜30nmであることがさらに好ましい。
【0366】
このようにして形成された本発明の光学フィルムは、ヘイズ値が3〜70%であることが好ましく、特に4〜60%の範囲にあることが好ましい。また、光学フィルムが反射防止機能を有する場合、ヘイズ値が上記の範囲にあることに加え、450nmから650nmの平均反射率が3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることが特に好ましい。本発明の反射防止フィルムが該範囲のヘイズ値及び平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴わずに良好な防眩性及び反射防止性が得られる。
【0367】
以上述べた低屈折率層以外の層、すなわちハードコート層、防眩層、高屈折率層、中屈折率層、帯電防止層、防汚層なども、必要に応じて、本発明の硬化性組成物の主要な成分である、前記の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を硬化させることにより形成することができる。
【0368】
〔支持体〕
本発明の光学フィルム、例えば反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル{例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム(株)製“TAC−TD80U”、“TAC−TD80UF”等}、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂{「アートン」(商品名)、JSR(株)製}、非晶質ポリオレフィン{「ゼオネックス」(商品名)、日本ゼオン(株)製}などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0369】
また、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルム、及びその製造法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されており、ここに記載されたセルロースアシレートも本発明に好ましく用いることができる。
【0370】
[鹸化処理]
本発明の光学フィルムを画像表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。光学フィルムの支持体がトリアセチルセルロースの場合は、偏光板の偏光膜を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の光学フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
【0371】
本発明の光学フィルムは、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用したりする場合には、十分に接着させるため、支持体上に機能層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。
【0372】
鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗し、また希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の支持体の表面が親水化される。
【0373】
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏光膜と接着させる際に、偏光膜と光学フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
【0374】
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の、支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0375】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)及び(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、光学フィルム面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れている。
【0376】
(1)支持体上に機能層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)支持体上に機能層を形成する前又は後に、アルカリ液を光学フィルムの機能層を形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗及び/又は中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0377】
〔塗膜形成方法〕
本発明の光学フィルムは、以下の方法で形成することができるが、この方法に制限され
ない。
【0378】
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。塗布液を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)等により支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。
【0379】
これらの塗布方式のうち、グラビアコート法での塗布では、光学フィルムの各層のような、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができるので好ましい。グラビアコート法の中でも、マイクログラビア法は膜厚均一性が高く、より好ましい。
【0380】
またダイコート法を用いても、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、さらにダイコート法は前計量方式のため、膜厚制御が比較的容易であり、さらに塗布部における溶媒の蒸散が少ないため好ましい。
【0381】
複数の層からなる光学フィルムにおいては、2層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2,761,791号、同第2,941,898号、同第3,508,947号、同第3,526,528号の各明細書、及び原崎勇次著「コーティング工学」、253頁、{朝倉書店(1973年)}に記載がある。
【0382】
<光学フィルムの用途>
〔偏光板〕
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の光学フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の光学フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の光学フィルム、特に反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0383】
[偏光膜]
偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。
【0384】
偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は、以下の方法により作製される。すなわち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を、保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45゜傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0385】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落0020〜0030に詳しい記載がある。
【0386】
〔画像表示装置〕
本発明の画像表示装置は、前記光学フィルム、反射防止フィルム又は前記偏光板をディスプレイの最表面に用いたものである。例えば、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた態様では、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0387】
VAモードの液晶セルには、
(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、
(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル{“SID97,Digest of tech.Papers”(予稿集)、28集(1997年)、p.845記載}、
(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル{日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載}及び、
(4)SURVAIVALモードの液晶セル(「LCDインターナショナル98」で発表)が含まれる。
【0388】
VAモードの液晶セル用には、2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムを、本発明の反射防止フィルムと組み合わせて作製した偏光板が好ましく用いられる。2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムの作製方法については、例えば、特開2001−249223号公報、特開2003−170492号公報などに記載の方法を用いることが好ましい。
【0389】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許第4,583,825号、同第5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0390】
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」{東レリサーチセンター発行(2001年)}などに記載されている。
【0391】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを、偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の光学フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで光学フィルム(特に反射防止フィルム)の効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【0392】
本発明の光学フィルムは、さらに、ケースカバー、光学用レンズ、眼鏡用レンズ、ウインドウシールド、ライトカバーやヘルメットシールドにも利用できる。
【実施例】
【0393】
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0394】
<反射防止フィルムの作製>
〔各種塗布液の調製〕
[帯電防止層用塗布液の調製]
【0395】
{帯電防止層用塗布液(AS−1)}
「ペルトロンC−4456−S7」 100質量部
市販のATO分散ハードコート剤、日本ぺルノックス(株)製、固形分:45%
シクロヘキサノン 30質量部
メチルエチルケトン 10質量部
“KBM−5103” 1.5質量部
シランカップリング剤、信越化学工業(株)製、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0396】
上記混合液を攪拌した後、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して帯電防止層用塗布液(AS−1)を調製した。
【0397】
[硬化性組成物の調製]
(ハードコート層用塗布液の調製)
【0398】
参考例1−1:ハードコート層用塗布液(HC−1)
“DPHA” 25.4質量部
日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物
メチルイソブチルケトン 40.0質量部
プロピレングリコール 6.3質量部
「イルガキュア184」 1.3質量部
重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
“KBM−5103” 5.2質量部
シランカップリング剤、信越化学工業(株)製
“CAB−531−1” 0.50質量部
セルロースアセテートブチレート、イーストマンケミカル(株)製
架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子 21.0質量部
共重合組成比=50/50、屈折率1.536、平均粒径3.5μm、30質量%メチルイソブチルケトン分散液
【0399】
上記混合液を攪拌した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液(HC−1)を調製した。
【0400】
参考例1−2:ハードコート層用塗布液(HC−2)
“DPHA” 25.4質量部
日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物
メチルイソブチルケトン 40.0質量部
プロピレングリコール 6.3質量部
「イルガキュア184」 1.3質量部
重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
“KBM−5103 5.2質量部
シランカップリング剤、信越化学工業(株)製
“CAB−531−1” 0.50質量部
セルロースアセテートブチレート(分離量40,000)、イーストマンケミカル(株)製
【0401】
上記混合液を攪拌した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液(HC−2)を調製した。
【0402】
実施例1−2:ハードコート層用塗布液(HC−3)
“KZ7973” 100質量部
市販のジルコニア超微粒子分散ハードコート剤、JSR(株)製、固形分50質量%、屈折率1.69
「ブライト20GNR4.6−EH」 0.1質量部
導電性粒子、日本化学工業(株)製、金及びニッケルでメッキしたベンゾグアナミン・メラニン・ホルムアルデヒド縮合物球状粉体
ポリシロキサン構造・水酸基含有共重合体(P−1) 3質量部
【0403】
上記混合液を攪拌した後、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して導電性ハードコート層用塗布液(HC−3)を調製した。
【0404】
実施例1−1:ハードコート層用塗布液(HC−4)
“PET−30” 540.0質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製、
ポリメタクリル酸メチル溶液(20質量%) 300.0質量部
「イルガキュア184」 20.0質量部
重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
架橋ポリスチレン粒子 17.0質量部
平均粒径8.0μm、30質量%トルエン分散液
架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子 133.0質量部
平均粒径8.0μm、30質量%トルエン分散液
トルエン 47.0質量部
シクロヘキサノン 98.0質量部
シリコーンオイル「X−22−164C」 0.1質量部
ポリシロキサン構造・水酸基含有共重合体(P−1) 32.4質量部
上記混合液を攪拌した後、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液(HC−4)を調製した。
【0405】
[低屈折率層用の調製]
{オルガノシラン化合物(ゾル液a)の調製}
ゾル液aは以下のように作製する。
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120質量部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン{“KBM−5103”、信越化学工業(株)製}100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3質量部を加え混合した。次いでこれにイオン交換水30質量部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100質量%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。固形分の濃度が29質量%になるようにメチルエチルケトンで調節してゾル液aとした。
【0406】
(中空シリカ分散液の調製)
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径40nm、シェル厚み6nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.30、特開2002−79616号公報の調製例4に準じてサイズを変更して作製)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン{“KBM−5103”、信越化学工業(株)製}30質量部、トリメチルメトキシシラン2質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5質量部加え混合した後に、イオン交換水を9質量部加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加した。
【0407】
この分散液500gに、ほぼシリカの含量が一定となるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力20kPaで減圧蒸留による溶媒置換を行った。分散液に異物の発生はなく、固形分濃度をシクロヘキサノンで調整し26質量%にしたときの粘度は、25℃で10mPa・sであった。得られた中空シリカ分散液のイソプロピルアルコールの残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1.0質量%であった。
【0408】
実施例2−1〜2−40及び比較例2−1〜2−4
{低屈折率層用塗布液(Ln1)〜(Ln44)}
下記表3に示す各成分を混合し、メチルエチルケトンに溶解して固形分6質量%に調製し攪拌した後、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して低屈折率層用塗布液(Ln1〜Ln44)を作製した。表3中の数字は各成分の固形分の質量部を表す。
【0409】
【表3】

【0410】
なお表3中、コロイダルシリカは、日産化学工業(株)製“MEK−ST”を表す。
【0411】
〔反射防止フィルムの作製〕
実施例3−1
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}を、ロール形態で巻き出して、直接、上記のハードコート層形成用塗布液(HC−1)を、線数180本/in、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールと、ドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下酸素濃度0.1体積%で160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量110mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
【0412】
このようにして得られたハードコート層の上に、上記低屈折率層用塗布液(Ln1)を用いて、低屈折率層膜厚が95nmになるように調節して反射防止フィルム(101)を作製した。低屈折率層の乾燥条件は120℃、10分とし、紫外線硬化条件は、酸素濃度が0.01体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度120mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
【0413】
実施例3−2〜3−40及び比較例3−1〜3−4
実施例3−1において、低屈折率層用塗布液(Ln1)を用いる代わりに、低屈折率層形成用塗布液(Ln2)〜(Ln44)をそれぞれ用いて低屈折率層を形成する以外は実施例3−1と同様にして、反射防止フィルム(102)〜(144)をそれぞれ作製した。得られたそれぞれの反射防止フィルムに用いられた、ハードコート層形成用組成物及び低屈折率層形成用組成物の組み合わせを表4に示す。
【0414】
実施例3−41
実施例3−1において、ハードコート層形成用塗布液(HC−1)を用いる代わりに、ハードコート層形成用塗布液(HC−2)を用いてハードコート層を形成し、低屈折率層
用塗布液(Ln1)を用いる代わりに、低屈折率層形成用塗布液(Ln20)を用いて低屈折率層を形成する以外は実施例3−1と同様にして、反射防止フィルム(145)を作製した。得られたそれぞれの反射防止フィルムに用いられた、ハードコート層形成用組成物及び低屈折率層形成用組成物の組み合わせを表4に示す。
【0415】
実施例3−42〜3−44
実施例3−41において、低屈折率層用塗布液(Ln20)を用いる代わりに、低屈折率層形成用塗布液(Ln28)、(Ln29)又は(Ln38)を用いて低屈折率層を形成する以外は実施例3−41と同様にして、反射防止フィルム(146)〜(148)をそれぞれ作製した。得られたそれぞれの反射防止フィルムに用いられた、ハードコート層形成用組成物及び低屈折率層形成用組成物の組み合わせを表4に示す。
【0416】
[反射防止フィルムの鹸化処理]
得られた反射防止フィルム(101)〜(148)は、以下の鹸化標準条件で処理・乾燥した。
(1)アルカリ浴:1.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液、55℃−120秒
(2)第1水洗浴:水道水、60秒
(3)中和浴:0.05mol/L硫酸、30℃−20秒
(4)第2水洗浴:水道水、60秒
(5)乾燥:120℃−60秒
【0417】
[反射防止フィルムの評価〕
このようにして得られた鹸化済みの反射防止フィルムを用いて、以下の評価を行った。得られた結果を表4に示す。
【0418】
(評価1)耐擦傷性(1)−スチールウール耐性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件で各反射防止フィルム試料の擦りテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH、
擦り材:試料と接触するテスターの擦り先端部(1cm×1cm)にスチールウール“No.0000”{(株)日本スチールウール製}を巻いて、動かないようバンド固定した。その上で下記条件の往復擦り運動を与えた。
移動距離(片道):13cm、擦り速度:13cm/秒、
荷重:200g/cm2
先端部接触面積:1cm×1cm、
擦り回数:10往復。
擦り終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、擦り部分の傷を、以下の基準で評価した。
○:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○△:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△:弱い傷が見える。
△×:中程度の傷が見える。
×:一目見ただけで分かる傷がある。
【0419】
(評価2)耐擦傷性(2)−消しゴム擦り耐傷性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件で各反射防止フィルム試料の擦りテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH
擦り材:試料と接触するテスターの擦り先端部(1cm×1cm)にプラスチック消しゴム{(株)トンボ鉛筆製“MONO”}を固定した。
移動距離(片道):4cm、擦り速度:2cm/秒、荷重:500g/cm2、先端部接触面積:1cm×1cm、
擦り回数:100往復。
擦り終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、擦り部分の傷を、以下の基準で評価した。
○:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○△:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△:弱い傷が見える。
△×:中程度の傷が見える。
×:一目見ただけで分かる傷がある。
××:一面膜が傷ついている。
【0420】
(評価3)密着性の評価
サンシャインウエザーメーター“S−80”{スガ試験機(株)製}を用いて、サンシャインカーボンアーク灯、60%RH、200時間の露光後の各反射防止フィルム試料を、温度25℃、60%RHの条件で2時間調湿した。各試料の低屈折率層を有する側の表面に、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを1mm間隔で入れて、合計100個の正方形の升目を刻み、その面に日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ“No.31B”を貼りつけた。30分経時した後に、垂直方向にテープを素早く引き剥がし、剥がれた升目の数を数えて、下記4段階の基準で評価した。同じ密着評価を3回行って平均をとった。
◎:100升において剥がれが全く認められなかった。
○:100升において1〜2升の剥がれが認められた。
△:100升において3〜10升の剥がれが認められた(許容範囲内)。
×:100升において11升以上の剥がれが認められた。
【0421】
(評価4)「マジックインキ」付着性評価
表面の耐汚染性の指標として、各反射防止フィルム試料を温度25℃、60%RHで2時間調湿した後、サンプル表面に「マジックインキ」(商品名)を付着させてから、それをクリーニングクロスで拭き取ったときの状態を観察して、以下のように「マジックインキ」付着性を評価した。
◎:「マジックインキ」の跡が完全に拭き取れる。
○:「マジックインキ」の跡がわずかに見える。
△:「マジックインキ」の跡が少し見える。
×:「マジックインキ」の跡がほとんど拭き取れない。
【0422】
【表4】

【0423】
〔ハードコートフィルムの作製〕
実施例4−1
80μmの厚さのトリアセチルセルロース“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}をロール形態で巻きだして、帯電防止層用塗布液(AS−1)を塗布し、70℃にて1分間乾燥させた後、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を100mJ/cm2として塗布層を硬化させ、厚さ約0.2μmの帯電防止層を形成した。
【0424】
上記の帯電防止層の上に、前記実施例1−1で作製したハードコート層用塗布液(HC−3)を塗布し、熱処理及び紫外線照射による硬化処理を施して、厚さ約5μmの帯電防止性ハードコートフィルム(201)を作製した。なお、熱処理及び硬化処理の条件は、120℃、5分間乾燥、窒素パージ下での紫外線照射である。
【0425】
実施例4−2
80μmの厚さのトリアセチルセルロース“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}をロール形態で巻きだして、前記実施例1−2で作製したハードコート層用塗布液(HC−4)を塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を150mJ/cm2として塗布層を硬化させ、厚さ25μmの防眩層を持つハードコートフィルム(202)を作製した。
【0426】
[ハードコートフィルムの鹸化処理及び評価]
得られたハードコートフィルムについて、上記の反射防止フィルムの場合と同様にして鹸化処理を行い、次いで得られた鹸化済みのハードコートフィルムを用いて、反射防止フィルムと同様の評価を行った。得られた結果を表5に示す。
【0427】
【表5】

【0428】
本実施例で明らかなように、本発明の反射防止フィルム(実施例3−1)〜(実施例3−44)は、反射防止フィルム(比較例3−1)〜(比較例3−4)と比較して、ポリシロキサン共重合体(A)が含有されているため、防汚性、耐擦傷性、また驚くべきことに密着性において明白な差があることがわかる。更に言えば、ゾル液aを低屈折率層に含有する反射防止フィルムは、そうでない反射防止フィルム(実施例3−8、3−16、3−25、3−33)より密着性や消しゴム擦り耐傷性評価が高く、中空シリカゾルやコロイダルシリカ“MEK−ST”などの微粒子を低屈折率層に含有する反射防止フィルムは、そうでない反射防止フィルム(実施例3−17、3−34)よりスチールウール耐傷性、消しゴム耐傷性評価に優れる。
【0429】
また、本発明の帯電防止層付きハードコートフィルム(実施例4−1)及び防眩フィルム(実施例4−2)も、優れた耐擦傷性、防汚性、及び密着性を示した。
【0430】
〔光学フィルム付き偏光板の作製〕
実施例5−1
延伸したポリビニルアルコールフィルムに、ヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。実施例3−1で作製した反射防止フィルム(101)の鹸化処理済みのものに、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、該反射防止フィルムの支持体(トリアセチルセルロース)側が偏光膜側となるように偏光膜の片側に貼り付けた。また、ディスコティック構造単位の円盤面が支持体面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と支持体面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向において変化している光学異方性層を有する視野角拡大フィルム「ワイドビューフィルムSA」{富士写真フイルム(株)製}を鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜のもう一方の側に貼り付けた。このようにして光学フィルム付き偏光板(HB−1)を作製した。
【0431】
実施例5−2〜5−44及び比較例5−1〜5−2
実施例5−1において、実施例3−1で作製した反射防止フィルム(101)を用いる代わりに、実施例3−2〜3−44及び比較例3−1〜3−4で作製した反射防止フィルム(102)〜(148)をそれぞれ用いる以外は実施例5−1と同様にして、光学フィルム付き偏光板(HB−2)〜(HB−48)をそれぞれ作製した。
【0432】
実施例6−1及び6−2
実施例5−1において、実施例3−1で作製した反射防止フィルム(101)を用いる代わりに、実施例4−1又は4−2で作製したハードコートフィルム(201)又は(202)を用いる以外は実施例5−1と同様にして、光学フィルム付き偏光板(HB−49)及び(HB−50)をそれぞれ作製した。
【0433】
〔画像表示装置の作製〕
実施例7−1〜7−44及び比較例7−1〜7−2
上記実施例3−1〜3−44及び比較例3−1〜3−4で作製した反射防止フィルム(101)〜(148)の鹸化済みのものを、それぞれ、日本電気(株)より入手したパーソナルコンピューター“PC9821NS/340W”の液晶ディスプレイ表面に貼り付け、画像表面装置サンプルを作製した。
【0434】
実施例8−1及び8−2
実施例7−1において、実施例3−1で作製した反射防止フィルム(101)を用いる代わりに、実施例4−1又は4−2で作製したハードコートフィルム(201)又は(202)を用いる以外は実施例7−1と同様にして、画像表面装置サンプルを作製した。
【0435】
上記のように作製された光学フィルム付き偏光板及び画像表示装置は、それぞれ貼り付けた光学フィルムと同様、実施例は比較例に比べ、優れた耐擦傷性、防汚性及び密着性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0436】
【図1】図1は、本発明の反射防止膜が複合膜の場合の層構成を示す断面模式図であり、(a)は4層構成、(b)は5層構成の例を示す。
【符号の説明】
【0437】
1a:反射防止フィルム
1b:反射防止フィルム
2:透明支持体
3:ハードコート層
4:高屈折率層
5:低屈折率層(最外層)
6:中屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)及び(B)を含有し、且つ以下の成分(C)、(D)及び(E)のうち少なくとも1成分を含有する硬化性組成物:
(A)主鎖に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成単位、及び側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を含む共重合体、
一般式(1):
【化1】

{一般式(1)中、R11、R12は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。pは10〜500の整数を表す。}
(B)エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物、
(C)オルガノシラン化合物又は、該オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物、
(D)重合開始剤、
(E)無機微粒子。
【請求項2】
成分(C)におけるオルガノシラン化合物が、下記一般式(2)で表される請求項1に記載の硬化性組成物。
一般式(2):
【化2】

{一般式(2)において、R22は、水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子を表す。U21は、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基又はウレア基を表す。L21は、2価の連結鎖を表す。m1は0又は1を表す。R20は、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。X21は水酸基又は加水分解可能な基を表す。X21が複数存在するとき、複数のX21は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。}
【請求項3】
成分(E)の無機微粒子がシリカ微粒子である請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
シリカ微粒子が、平均粒子径が30nm以上150nm以下の中空シリカ微粒子である請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
成分(A)の共重合体が、下記一般式(3)で表される共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
一般式(3):
【化3】

{一般式(3)中、X31は上記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を含む単位を表す。Y31は任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一であっても複数種で構成されていてもよい。L31は単結合又は2価の連結基を表し、R31及びR32は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。x〜zはそれぞれ各構成単位のモル分率(%)を表し、10≦x<100、0≦y≦90、1≦z≦50を満たす値を表す。}
【請求項6】
一般式(3)において、上記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を含む構成単位X31のモル分率(%)xが、50≦x<100を満たす請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
成分(B)のエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物が多官能(メタ)アクリレートモノマーである請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
成分(B)のエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有する化合物が、下記一般式(4)で表される含フッ素共重合体である請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
一般式(4):
【化4】

{一般式(4)中、Rf41は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表し、Rf42は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよい。L41は単結合又は2価の連結基を表し、R41は水素原子又はメチル基を表す。A41は任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一であっても複数種で構成されていてもよい。B41はポリシロキサン構造を主鎖又は側鎖に含む構成単位を表す。a〜dはそれぞれ各構成単位のモル分率(%)を表し、30≦a+b≦95、5≦a≦90、0≦b≦70、5≦c≦50、0≦d≦90を満たす値を表す。eは重合単位B41の、他の構成単位全体の質量に対する質量分率(%)を表し、0≦e<20の関係を満たす。}
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化してなる機能層を少なくとも1層有する光学フィルム。
【請求項10】
機能層が低屈折率層であり、光学フィルムが光学干渉による反射防止機能又は防眩機能を有する請求項9記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の光学フィルムが、偏光板における偏光膜の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられている偏光板。
【請求項12】
請求項9もしくは10に記載の光学フィルム、又は請求項11に記載の偏光板がディスプレイの最表面に用いられている画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−106190(P2008−106190A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292220(P2006−292220)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】