説明

硬化性組成物からの光学物品

複数のペンダント及び/又は末端エチレン性不飽和フリーラジカル重合性官能基と、フリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、光開始剤とを有するオリゴマーを含む硬化性組成物を提供する。硬化時、組成物は、非黄変であり、低収縮及び低複屈折を示して、それを光学レンズ、光学繊維、プリズム、ライトガイド、光学接着剤及び光学フィルムなどの多くの光学用途に好適にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に硬化して光学物品及びコーティング剤を製造するオリゴマーを含有するオリゴマー組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
光学材料及び光学製品は、光の流れ及び強度を制御するのに有用である。有用な光学製品の例としては、フレネルレンズなどの光学レンズ、プリズム、光ファイバー、光導波管、全内部反射フィルムを含む光学フィルム、再帰反射シーティング、並びに輝度強化フィルム及びセキュリティ製品などのマイクロ複製製品が挙げられる。これらの製品のいくつかが、とりわけ特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載されている。
【0003】
高分子材料は、光学物品に多種多様な用途を見出しており、すりガラスから作製されるそのような物品の代わりに幅広く使用されている、というのは、前者は、重さが軽く、製造するのに費用がかからないからである。例えば、カーボネートポリマーは、優れた透明性、耐変色性、高強度、及び耐高衝撃性を特徴とする。しかし、ポリマーを形成するモノマーの熱重合は、一般に硬化時の高収縮(例えば、11〜20%)及び長時間にわたる硬化時間(例えば、5〜16時間又はそれ以上)を伴う。高収縮レベルは、この材料からの精密光学部品(レンズ又はプリズムなど)の製造、特により大きい厚さ又は物品の中心と縁部との間で大きい厚さの差を有する物品の製造に困難をもたらす。長時間にわたる硬化時間は、製造設備を拘束し、物品を成型する金型の効率の悪い利用をまねく。また、モノマーを重合するのに使用される熱硬化サイクルは、多量のエネルギーを消費し、金型に望ましくない熱的な応力を加える。
【0004】
光学製品は、高屈折率(メタ)アクリレートモノマー、ハロゲン化モノマー等などのモノマー及び光学製品技術で既知のその他のそのような高屈折率モノマーを含む高屈折率材料から調製することができる。特許文献5、特許文献6、特許文献7、及び特許文献8を参照のこと。これらのポリマーのいくつかは、有利に射出成形され得るが、このような成型作業は、得られた物品に高複屈折をもたらし、それに続くアニーリング段階が必要な場合がある。更に、ポリ(メチルメタクリレート)ポリマーは、感湿である傾向があり、水分又は湿度に曝露すると膨潤し、更に複屈折をもたらすことになる。
【特許文献1】米国特許第4,542,449号公報
【特許文献2】米国特許第5,175,030号公報
【特許文献3】米国特許第5,591,527号公報
【特許文献4】米国特許第5,394,255号公報
【特許文献5】米国特許第4,568,445号公報
【特許文献6】米国特許第4,721,377号公報
【特許文献7】米国特許第4,812,032号公報
【特許文献8】米国特許第5,424,339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いくつかの開示は、光学コーティング剤に関し、それは、一般に50.8マイクロメートル(2ミル)未満の厚さである。それらは、これらの組成物が、フレネルレンズを含むレンズ及びプリズムなどの精密光学部品の製造に必要な低重合収縮、低粘度、無着色、高硬度、耐応力亀裂性、水分又は湿度感受性及び低複屈折などの有用な特性の所望のバランスを有するかどうかを説明していない。更に、それらは、注型精密光学物品を提供するのに有用である特性の所望のバランスをもたらす樹脂をどのようにして得るかを教示していない。更に、高分子組成物の多くは、一般に、光学注型目的に有用であるには粘度が高すぎる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のペンダントエチレン性不飽和フリーラジカル重合性官能基を有し20℃以上のT(好ましくは50℃以上のTを有する)を有するオリゴマーと、フリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、光開始剤とを含む硬化性組成物を含む。硬化時、組成物は、非黄変であり、低収縮、低複屈折及び水分に対して低感受性を示して、それを光学レンズ、光学繊維、プリズム、回折レンズ、マイクロレンズ、マイクロレンズアレイ、フレネルレンズ、ライトガイド、並びに光学フィルム及びコーティングを含むがこれらに限定されない多くの光学用途に好適にする。組成物は低粘度であるため、光学接着剤として及び従来の成型作業に使用されてもよく、連鎖付加法により分子量を増やしてもよい。更に、物品は、注型及び硬化法により調製されてもよく、それにより射出成形法により引き起こされる複屈折を回避する。
【0007】
一般に、有意な量の溶媒、モノマー及び反応性希釈剤を含有する硬化性の系は、未硬化から硬化状態に変わると密度の有意な増大を引き起こし、最終的な体積の収縮を起こし得る。周知のように、収縮は、レンズのような光学要素の製造で必要とされるもののような精密成型作業において予測不可能なレジストレーションを引き起こす可能性がある。収縮は、このような光学物品において残留応力も生じさせる可能性があり、これはその後高複屈折を含む光学的欠陥につながる恐れがある。
【0008】
本発明は、光学物品を含む形成物品、及び1つの実施形態では
(1)構成成分を混合して光学注型組成物を形成する工程と、
(2)所望により組成物を脱ガスする工程と、
(3)所望により組成物を加熱する工程と、
(4)組成物を適した金型に注入する工程と、
(5)組成物の重合、好ましくは光重合を行う工程とを含む、形成物品を調製する方法も提供する。
【0009】
本発明は、迅速に硬化し、溶媒を含まない、硬化性組成物を提供して、電子ディスプレイ、カメラ、双眼鏡、ファクス機器、バーコードスキャナー及び光学通信装置での用途に対して低複屈折を有する光学レンズ、ライトガイド、プリズム等の密精度光学部品を製造することにより、産業界のニーズに対処する。本発明は、光学撮像装置及び光学式読取装置に使用される偏光ビームスプリッタ(PBS)に用いられるものなどのプリズムを調製するのに特に有用である。本明細書で使用するとき、用語「光学撮像装置」は、視聴者が見る映像を作り出す幅広い光学装置を含むことを意味する。本発明の光学撮像装置は、例えば、正面及び背面投射装置、投射型ディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、バーチャルビューア、ヘッドアップディスプレイ、光学計算装置、光学相関装置、並びにその他の光学ビューイング及びディスプレイ装置に使用されることができる。
【0010】
PBSは、入射光線を第1偏光構成要素及び第2偏光構成要素に分割する光学部品である。伝統的なPBSは、光の入射面、すなわち入射光線及び偏光表面に対する法線により画定される平面に基づき機能する。入射面は反射光線及び反射表面に対する法線により画定される反射面とも呼ばれる。伝統的な偏光子の動作に基づいて、光線は、2つの偏光構成要素、p及びs構成要素を有するとして記載されている。p構成要素は、入射面内で偏光される光線に相当する。s構成要素は、入射面に対して垂直に偏光される光線に相当する。
【0011】
光学撮像装置で最大可能効率を実現するために、低f/#システムが望ましい(F.E.ドアニ(Doany)ら、投射ディスプレイ処理能力;光学透過及び光源集光の効率(Projection display throughput; Efficiency of optical transmission and light-source collection)、IBM J.Res.Develop.42巻、5月/7月、1998年、387〜398頁を参照)。f/#は、光学レンズの集光能力を測定し、
f/#=f(焦点距離)÷D(レンズの直径又は開口部)として定義される。f/#(又はF)は、光学要素を照明するために使用できる光錐の寸法を測定する。f/#が低くなればなるほど、レンズは速くなり、その光学要素で使用できる光錐は大きくなる。より大きい光錐は、一般により高い光線処理能力を意味する。したがって、より速い(より低いf/#)照明システムは、より広い範囲の入射角を有する光線を受容できるPBSを必要とする。最大入射角Θmax(光錐の外側光線)は、数学的にf/#から誘導され得る;
Θmax=tan−1((2F)−1
【0012】
伝統的な折返し光路光学撮像装置は、マクニール(MacNeille)偏光子として既知の光学要素を使用している。マクニール偏光子は、異なる屈折率(n)の2つの媒体間の境界面からp偏光が反射されないブルースター角(Brewster’s angle)と呼ばれる角度が存在するという事実をうまく利用している。ブルースター角は、
Θ=tan−1(n/n)により得られ、
式中、nは、1つの媒体の屈折率であり、nは、他方の屈折率である。入射光線の入射角がブルースター角に達すると、反射されたビーム部分は、入射面に対して垂直な平面内で偏光される。透過ビーム部分は、入射面と平行の平面内で優先的に(だが完全ではない)偏光される。s偏光の効率的な反射を実現するため、マクニール偏光子は、所望の角度のブルースター角条件に適合する材料の薄膜の複数の層から構成される。フィルムの厚さは、フィルム層の対が、四分の一波長スタックを形成するように選択される。
【0013】
ブルースター角条件が波長(材料内での分散を除く)に依存しない点でこの構造体には利点がある。しかしながら、マクニール偏光子は、一対の材料のブルースター角条件が、厳格に1つの入射角のみに適合されるという事実のため、広い角度の性能を実現するのが困難である。入射角がこの角度から逸脱すると、スペクトル的に不均一な漏れが現れる。フィルムスタック上の入射角がブルースター角よりもより垂直になると、この漏れは特に激しくなる。以下に説明するように、各光線の反射面に関連して、p及びs偏光の使用に伴い、折返し光路プロジェクタにとってコントラストに関する不利な点もある。
【0014】
典型的に、マクニールPBSは、ガラスの立方体内に収容されており、PBS薄フィルムスタックは、立方体の対角面に沿って適用される。立方体内のガラスの指数を好適に選択することにより、PBSは立方体の面と垂直な入射光線がPBSのブルースター角で入射するように構成され得る。しかし、立方体の使用は、主として構成要素の偏光性能を低下させる熱応力誘引複屈折の生成に伴い、特定の不都合を引き起こす。高価なプレアニールの立方体でさえ、この困難を被る場合がある。また、立方体は、コンパクトなシステムにかなりの重量を加える。
【0015】
伝えられるところによれば、s偏光とp偏光との間の識別が、f/2.5まで低いf/#で可能な一方、純粋なs偏光又は純粋なp偏光の入射ビーム間で100:1を超える消光レベルをもたらす、マクニール型PBSが開発された。あいにく、以下に説明するように、マクニール型PBSを反射撮像装置で折返し光路に使用すると、コントラストは、主光線の反射面を基準として回転する反射面を有する光線の脱分極のため低下する。以下で使用するとき、用語「脱分極」は、主光線の偏光状態からの光線の偏光状態の偏差を説明することを意味する。投射装置の光は、一般に錐体として投射されるので、光線のほとんどは、主光線と完全には平行にならない。脱分極は、f/#が減少すると増加し、色選択フィルムからのその後の反射で拡大される。この「脱分極カスケード」は、一部の光学撮像装置設計者により計算されており、マクニールPBS系プロジェクタのf/#を約3.3に有効に制限し、それによりこれらの装置の光線処理能力効率を制限する。A.E.ローゼンブルス(Rosenbluth)ら、反射液晶ライトバルブインプロジェクションディスプレイのコントラスト特性(Contrast properties of reflective liquid crystal light valves inprojection displays)、IBM J.Res.Develop.42巻、5月/7月、1998年、359〜386頁を参照のこと。
【0016】
本明細書で使用するとき、
「化学線」とは、光化学的に活性な放射線及び粒子線を意味する。化学線は、これらに限定されるものではないが、加速粒子、例えば電子ビーム、並びに電磁放射線、例えば、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、及びガンマ線を含む。放射線は、単色又は多色、可干渉性又は非干渉性とすることができ、本発明の組成物に使用される化学線硬化性組成物に相当な数のフリーラジカルを生成するのに十分な強さであるべきである。
【0017】
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の両方を意味し、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基が挙げられる。
【0018】
「エチレン性不飽和基」としては、ビニル、(メタ)アクリロイル及びその類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
「溶融処理可能」は、従来の成型又はコーティング装置を使用して、100℃以下の温度でコーティング又は成型を行うのに好適な低い粘度を有する又は実現するオリゴマー組成物に言及するのに使用される。
【0020】
「光硬化」及び「光重合」は、本出願において、比較的単純な分子が化合して鎖又は網様の巨大分子を形成する、化学線に誘発される化学反応を示すために互換可能に使用される。
【0021】
「100%ソリッド」は、溶媒のような非反応性種を含まない組成物を意味する。
【0022】
放射エネルギーの「透過率」とは、ある材料を通る放射エネルギーの通過を指す。
【0023】
「透明性」は、通常の透過度として考えられてもよく、したがって、対象物をそのシートを通して見ることができる材料の特性である。透明な材料は、有意な拡散又は散乱もなく光を透過させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基を有し20℃以上のT(好ましくは、50℃以上のT)を有する1つ以上のオリゴマー、好ましくは(メタ)アクリロイルオリゴマーと、フリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、光開始剤とを含む硬化性材料を提供する。オリゴマーは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド及びポリカーボネートオリゴマーから選択されてよい。
【0025】
多くの実施形態において、本発明は、低収縮、低残留応力及び低複屈折を有する、精密光学部品及び電子ディスプレイの用途に対して光学的に透明で非黄変である硬化性材料を提供する。
【0026】
本発明の組成物は、オリゴマーの最適な分子量、並びに架橋剤及び/又は反応性希釈剤の充填により、収縮及び複屈折を最小限にする。本発明の低収縮組成物は、成型用途において又は正確な成型及び/若しくはレジストレーションが必要とされるいかなる用途においても特に有用である。本発明は、100%ソリッドとして配合され、フリーラジカル手段によって硬化されてもよく、当該技術分野における特性を満たすか又はそれを超える特性を示す、新規組成物を提供する。本発明は、5%未満、好ましくは3%未満の収縮を示す組成物を提供する。組成物は粘度が低く、精密成型法を含む成型法に好適である。組成物は、100℃以下の使用温度で20Pa.s(20,000センチポアズ)未満、15Pa.s(15,000センチポアズ)未満、又は10Pa.s(10,000センチポアズ)未満の粘度を通常有する。組成物は、100℃以下の使用温度で少なくとも0.1Pa.s(100センチポアズ)、又は少なくとも0.5Pa.s(500センチポアズ)の粘度を通常有する。
【0027】
本発明の物品は、約0.5ミリメートルを超える厚さ、一般に1×10−6未満の複屈折(絶対)、約85%を超える、好ましくは90%を超える光透過、及び4.8ミリメートルの厚さを有する試料に関して約1.5単位未満、好ましくは約1.0単位未満のCIELAB b*を有してもよい。
【0028】
組成物は、複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基を有し20℃以上、好ましくは50℃以上のTgを有する50〜99重量部、好ましくは60〜95重量部、及び最も好ましくは70〜95重量部のオリゴマーと、
1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部、及び最も好ましくは5〜30重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、
100重量部のオリゴマー並びに架橋剤及び/又は反応性希釈剤モノマーを基準として、0.001〜5重量部、好ましくは0.001〜1重量部、最も好ましくは0.01〜0.1重量部の光開始剤とを一般に含む。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態では、架橋剤は、1〜40重量部、好ましくは1〜30重量部、及び最も好ましくは1〜20重量部含む。いくつかの実施形態では、反応性希釈剤は、25重量部未満、好ましくは15重量部未満、及び最も好ましくは10重量部未満含む。
【0030】
オリゴマーは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド及びポリカーボネートオリゴマーから選択されてよい。本発明の組成物に好適なオリゴマーは、約20℃を超える、好ましくは約50℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有する。組成物に有用な(メタ)アクリロイル官能化オリゴマーは、以下の一般構造(I):
【0031】
【化1】

(I)
により、表わされることができ、式中、Rは、H又はCHであり、
Zは、
【0032】
【化2】

であり、
は、(CHであり、ここでmは、1〜6であり、
【0033】
【化3】

であり、Xは、ポリ(メタ)アクリロイル、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリエポキシド及びポリカーボネートなどのオリゴマー化モノマー単位(すなわち、オリゴマー鎖)から得られた多価ラジカル基であり、nは、2以上である。複数のペンダント又は末端フリーラジカル重合性官能基を有するオリゴマーは、オリゴマーのフリーラジカル単独重合(例えば、光又は熱反応開始)が、約20℃以上、好ましくは約50℃以上のガラス転移温度を有するポリマーを生成するように選択される。
【0034】
構造(I)(式中、nは、2以上である)の場合、複数のペンダント又は末端(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーがもたらされる。本発明のある実施形態では、重合度が10〜300、好ましくは15〜200、より好ましくは20〜200であるようなnを有するオリゴマーが利用される。好ましくは、式Iは、(メタ)アクリレート化脂肪族ウレタンオリゴマー、(メタ)アクリレート化脂肪族ポリエステルオリゴマー、(メタ)アクリレート化脂肪族エポキシオリゴマー、(メタ)アクリレート化脂肪族ポリカーボネートオリゴマー又は(メタ)アクリレート化脂肪族アクリルオリゴマーを定義する。このようなオリゴマーの製造方法は、当該技術分野において周知であり、多くの有用なフリーラジカル重合性オリゴマーが市販されている。
【0035】
(メタ)アクリレート化ウレタンは、ヒドロキシ末端イソシアネート伸長ポリオール、ポリエステル又はポリエーテルの多官能(メタ)アクリレートエステルである。(メタ)アクリレート化ウレタンオリゴマーは、例えばジイソシアネート又は他の多価イソシアネート化合物と多価ラジカルポリオール(ポリエーテル及びポリエステルポリオールを含む)とを反応させて、イソシアネート末端ウレタンプリポリマーをもたらすことにより合成することができる。ポリエステルポリオールは、多塩基酸(例えば、テレフタル酸又はマレイン酸)と多価アルコール(例えばエチレングリコール又は1,6−ヘキサンジオール)とを反応させることにより形成することができる。アクリレート官能化ウレタンオリゴマーを作るのに有用なポリエーテルポリオールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(2−メチル−テトラヒドロフラン)、ポリ(3−メチル−テトラヒドロフラン)及びその類から選択することができる。あるいは、アクリレート化ウレタンオリゴマー(構造(II))のポリオール連鎖は、ポリカーボネートポリオールであることができる。
【0036】
続いて、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを、次にプレポリマーの末端イソシアネート基と反応させることができる。芳香族及び好ましい脂肪族イソシアネートの両方を使用して、ウレタンと反応させ、オリゴマーを得ることができる。アクリレート化オリゴマーを作るのに有用なジイソシアネートの例は、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びその類である。アクリレート化オリゴマーを作るのに有用なヒドロキシ末端アクリレートの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びその類が挙げられるが、これらに限定されない。
(メタ)アクリレート化ウレタンオリゴマーは、例えば、少なくとも2つのアクリレート官能基及び一般に約6未満の官能基を有するいかなるウレタンオリゴマーであることもできる。好適な(メタ)アクリレート化ウレタンオリゴマーは市販もされており、例えば、ヘンケル社(Henkel Corp.)から入手可能な商品名フォトマー(PHOTOMER)6008、6019、6184(脂肪族ウレタントリアクリレート)により既知のもの;UCBケミカル(UCB Chemical)から入手可能なエベクリル(EBECRYL)220(分子量1000の六官能性芳香族ウレタンアクリレート)、エベクリル284(12%の1,6−ヘキサンジオールジアクリレートで希釈した分子量1200の脂肪族ウレタンジアクリレート)、エベクリル4830(10%のテトラエチレングリコールジアクリレートで希釈した分子量1200の脂肪族ウレタンジアクリレート)及びエベクリル6602(40%のトリメチロールプロパンエトキシトリアクリレートで希釈した分子量1300の三官能性芳香族ウレタンアクリレート);並びにペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Co.)から入手可能なサートマー(SARTOMER)CN1963、963E75、945A60、963B80、968及び983などである。
【0037】
あるいは、アクリレート官能化オリゴマーは、ポリエステルアクリレートオリゴマー、アクリレート化アクリルオリゴマー、ポリカーボネートアクリレートオリゴマー又はポリエーテルアクリレートオリゴマーであることができる。好適なアクリレート化アクリルオリゴマーとしては、例えば、その両方がUCBケミカルズ(UCB Chemicals)(ジョージア州スマーナ(Smyrna))から入手可能なエベクリル(Ebecryl)745及び1710などの市販の製品が挙げられる。有用なポリエステルアクリレートオリゴマーとしては、サートマー社(ペンシルベニア州エクストン)からのCN293、CN294及びCN2250、2281、2900、並びにUCBケミカルズ(ジョージア州スマーナ)からのエベクリル80、657、830及び1810が挙げられる。好適なポリエーテルアクリレートオリゴマーとしては、サートマー社(ペンシルベニア州エクストン)からのCN501、502及び551が挙げられる。有用なポリカーボネートアクリレートオリゴマーは、米国特許第6,451,958号(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington)のサートマー・テクノロジー社(Sartomer Technology Company Inc.)により調製されることができる。
【0038】
(メタ)アクリレート化エポキシは、ビスフェノール−Aエポキシ樹脂の(メタ)アクリレート化エステルなどの、エポキシ樹脂の多官能(メタ)アクリレートエステルである。市販のアクリレート化エポキシの例としては、ジョージア州スマーナのUCBケミカルから入手可能な商品名エベクリル(EBECRYL)600(分子量525のビスフェノール−Aエポキシジアクリレート)、エベクリル605(25%のトリプロピレングリコールジアクリレートを有するエベクリル600)、エベクリル3700(分子量524のビスフェノール−Aジアクリレート)及びエベクリル3720H(20%のヘキサンジオールジアクリレートを有する分子量524のビスフェノール−Aジアクリレート)により既知のもの;並びにニュージャージー州ホボケン(Hoboken)のヘンケル社から入手可能なフォトマー3016(ビスフェノールAエポキシアクリレート)、フォトマー3016−40R(エポキシアクリレートと40%のトリプロピレングリコールジアクリレートとのブレンド)及びフォトマー3072(変性ビスフェノールAアクリレート等)が挙げられる。
【0039】
好ましい実施形態では、オリゴマーは、
a)20℃以上、好ましくは50℃以上のガラス転移温度を有するポリマーに単独重合可能な50〜99重量部、好ましくは60〜97重量部、最も好ましくは80〜95重量部の(メタ)アクリロイルモノマー単位であって、好ましくは(メタ)アクリレートモノマー単位である(メタ)アクリロイルモノマー単位と、
b)ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有する1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部、最も好ましくは5〜20重量部のモノマー単位と、
c)100重量部のa)及びb)を基準として、20℃未満のガラス転移温度を有するポリマーに単独重合可能な40重量部未満、好ましくは30重量部未満、最も好ましくは20重量部未満のモノマー単位とを含む重合アクリロイルモノマー単位を一般に含む。
第1構成成分オリゴマーは、1つ以上の高Tモノマーを含み、それは、単独重合した場合、20℃を超える、好ましくは50℃を超えるTを有するポリマーをもたらす。好ましい高Tモノマーは、少なくとも6つの炭素原子を有する単環式及び二環式脂肪族アルコール並びに芳香族アルコールの一官能性(メタ)アクリレートエステルである。脂環式及び芳香族基の両方が、例えばC1〜6アルキル、ハロゲン、イオウ、シアノ及びその類により置換されてもよい。特に好ましい高Tモノマーとしては、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−ビフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレートが挙げられる。高Tモノマーの混合物も使用することができる。モノマーが、(メタ)アクリレートモノマーを含む残りのモノマーと重合することができるという条件で、スチレン、ビニルエステル及びその類を含むいかなる高Tモノマーを使用することもできる。しかしながら、Tモノマーは、典型的にアクリレート又はメタクリレートエステルである。
【0040】
その他のTモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アリルメタクリレート(allyl methaylacrylate)、ブロモエチルメタクリレートなどのC〜C20アルキル(メタ)アクリレート;スチレン;ビニルトルエン;ビニルプロピオネート、ビニルアセテート、ビニルピバレート及びビニルネオノナノエートなどのビニルエステル;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、及びt−ブチルアクリルアミドなどのアクリルアミド、並びに(メタ)クリロニトリルが挙げられる。高Tモノマーのブレンドが使用されてもよい。
【0041】
最も好ましい高Tモノマーは、環境(熱及び光)に対する安定性のため、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート及びそれらの混合物などの、直鎖、分枝鎖、シクロ、架橋シクロ脂肪族(メタ)アクリレートから選択される。
【0042】
組成物の第1構成成分オリゴマーは、フリーラジカル重合性不飽和を含む1つ以上のペンダント基を含む。好ましいペンダント不飽和基としては、(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルオキシ、プロパルギル及び(メタ)アクリルアミドが挙げられる。かかるペンダント基は、ポリマー内に少なくとも2つの方法で組み入れることができる。最も直接的な方法は、エチレンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)又はビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレートのモノマー単位内に含めることである。有用な多価不飽和モノマーとしては、アリル、プロパルギル及びクロチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、並びにアリル2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテートが挙げられる。
【0043】
ペンダントフリーラジカル重合性官能基を組み入れる「直接法」を使用する場合、有用な官能性モノマーとしては、ビニル、ビニルオキシ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド及びアセチレン官能基を含む炭素−炭素二重結合を含有する基などのフリーラジカル付加が可能な官能基を含む約36までの炭素原子を有する不飽和脂肪族、脂環式及び芳香族化合物が挙げられる。
【0044】
使用することができるポリエチレン性不飽和モノマーの例としては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサメチレンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジ−、トリ−及びテトラアクリレート、並びに1,12−ドデカンジオールジアクリレートなどのポリアクリル官能性モノマー;アリルメタクリレート、2−アリルオキシカルボニルアミドエチルメタクリレート及び2−アリルアミノエチルアクリレートなどのオレフィン性アクリル官能性モノマー;アリル2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテート;ジビニルベンゼン;2−(エテニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(エチニルオキシ)−1−プロペン、4−(エチニルオキシ)−1−ブテン、及び4−(エテニルオキシ)ブチル−2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテートなどのビニルオキシ基置換官能性モノマー、並びにその類が挙げられるが、これらに限定されない。ペンダント不飽和を有するポリマーを調製するのに使用されてもよい有用な多価不飽和モノマー及び有用な反応性/共反応性化合物が、米国特許第5,741,543号(ウィンスロウ(Winslow)ら)により詳細に記載されている。
【0045】
好ましい多価不飽和モノマーは、不飽和基が不等反応性のものである。当業者は、不飽和基に付いた特定の部分が、これらの不飽和基の相対反応性に影響を及ぼすことを認識する。例えば、等反応性の不飽和基(例えば、HDDA)を有する多価不飽和モノマーを使用する場合、組成物の早期ゲル化に対して、例えば、ラジカルスカベンジャーとして作用する酸素の存在により、保護されなければならない。逆に、異なる反応性の不飽和基を有する多価不飽和モノマーを使用する場合、より反応性の基((メタ)アクリルアミドとしての(メタ)アクリレートなど)は、反応性のより少ない不飽和基(ビニル、アリル、ビニルオキシ又はアセチレンなど)が反応して組成物を架橋する前にポリマー主鎖に優先的に組み入れられる。直接法は、分枝及び早期ゲル化の制御が困難なため、一般には好ましくない。
【0046】
重合性不飽和を含むペンダント基を第1ポリマーに組み入れる、間接的であるが好ましい方法は、ポリマーのモノマー単位のうちで反応性官能基を含むものをいくらか含めることである。有用な反応性官能基としては、ヒドロキシル、アミノ(特に二級アミノ)、オキサゾロニル、オキサゾリニル、アセトアセチル、カルボキシル、イソシアナト、エポキシ、アジリジニル、ハロゲン化アシル及び環状無水基が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中で好ましいのは、カルボキシル、ヒドロキシル及びアジリジニル基である。これらのペンダント反応性官能基を、反応性ペンダント官能基と共反応性である官能基を含む不飽和化合物と反応させる。2つの官能基を反応させると、ペンダント不飽和を有するオリゴマーがもたらされる。
【0047】
ペンダントフリーラジカル重合性官能基を組み入れる「間接法」を使用する場合、有用な反応性官能基としては、ヒドロキシル、二級アミノ、オキサゾリニル、オキサゾロニル、アセチル、アセトニル、カルボキシル、イソシアナト、エポキシ、アジリジニル、ハロゲン化アシル、ビニルオキシ及び環状無水基が挙げられる。ペンダント反応性官能基がイソシアナト官能基の場合、共反応性官能基は、好ましくは二級アミノ又はヒドロキシル基を含む。ペンダント反応性官能基がヒドロキシル基を含む場合、共反応性官能基は、好ましくはカルボキシル、イソシアナト、エポキシ、無水物又はオキサゾリニル基を含む。ペンダント反応性官能基がカルボキシル基を含む場合、共反応性官能基は、好ましくはヒドロキシル、アミノ、エポキシ、イソシアネート又はオキサゾリニル基を含む。最も一般的には、置換又は縮合作用により反応する求核官能基と求電子官能基との間の反応である。
【0048】
有用な共反応性化合物の代表的な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;3−アミノプロピル(メタ)アクリレート及び4−アミノスチレンなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;2−エテニル−1,3−オキサゾリン−5−オン及び2−プロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オンなどのオキサゾリニル化合物;(メタ)アクリル酸及び4−カルボキシベンジル(メタ)アクリレートなどのカルボキシ置換化合物;イソシアナトエチル(メタ)アクリレート及び4−イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのイソシアナト置換化合物;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ置換化合物;N−アクリロイルアジリジン及び1−(2−プロペニル)−アジリジンなどのアジリジニル置換化合物、並びに(メタ)アクリロイルクロリドなどのアクリロイルハロゲン化物が挙げられる。
【0049】
好ましい官能性モノマーは、一般式
【0050】
【化4】

を有し、式中、Rは、水素、C〜Cアルキル基又はフェニル基、好ましくは水素又はメチル基であり、Rは、エチレン性不飽和基を重合性又は反応性官能基Aに結合する単結合又は二価結合基であり、34まで、好ましくは18まで、より好ましくは10までの炭素、並びに所望により酸素及び窒素原子を好ましくは含有し、Rが単結合でない場合、好ましくは
【0051】
【化5】

から選択され、式中、Rは、1〜6の炭素原子を有するアルキレン基、5〜10の炭素原子を有する5若しくは6員環シクロアルキレン基、又は各アルキレンが1〜6の炭素原子を含む若しくは6〜16の炭素原子を有する二価の芳香族基であるアルキレンオキシアルキレンであり、Aは、フリーラジカル重合性官能基を組み入れるために炭素−炭素二重結合にフリーラジカル付加ができる官能基又は共反応性官能基と反応可能な反応性官能基である。
【0052】
第1構成成分オリゴマーの前記状況において、フリーラジカル重合性基を有するエチレン性不飽和モノマーが、架橋剤及び反応性希釈剤とフリーラジカル重合可能であるように選択されることが理解されるであろう。官能基間の反応は、構成成分間のエチレン性不飽和基のフリーラジカル付加反応により共有結合を形成することによって架橋をもたらす。本発明において、ペンダント官能基は、付加反応により反応し、そこでは、副生成物分子は作り出されず、例示された反応パートナーがこの好ましいモードにより反応する。
硬化性組成物が高温を使用して処理されるべきであり、ペンダント不飽和を含める直接法が使用された場合、これらのペンダント基を活性化させず、早期ゲル化を生じさせないように注意しなければならない。例えば、ホットメルト処理温度は、比較的低く維持することができ、重合阻害物質を混合物に添加することができる。それ故に、組成物を処理するために熱が使用されるべきである場合、前記間接法が、ペンダント不飽和基を組み入れる好ましい方法である。
【0053】
オリゴマーは、20℃未満のTを有するポリマーに単独重合されてもよい低Tアルキル(メタ)アクリレートエステル又はアミドを所望により更に含んでもよい。本発明に有用なアルキル(メタ)アクリレートエステルモノマーとしては、C〜C20アルキル基を含有するアルキルエステルの直鎖、環状、及び分枝鎖異性体が挙げられる。T及び側鎖結晶化度を考慮して、好ましい低Tアルキル(メタ)アクリレートエステルは、C〜Cアルキル基を有するものである。有用なアルキル(メタ)アクリレートエステルの具体的な例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート及びデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。最も好ましい(メタ)アクリレートエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレートが挙げられる。低Tアルキル(メタ)アクリレートエステルは、得られるオリゴマーが20℃以上のTを有するような量で添加される。一般に、かかる低Tgモノマーは、40重量部以下、好ましくは30重量部以下、最も好ましくは20重量部以下の量で使用される。
【0054】
オリゴマーの理論Tは、例えばL.H.スパーリング(Sperling)、「物理高分子科学の概論(Introduction to Physical Polymer Science)」、第2版、ジョン・ワイリー&サンズ、ニューヨーク、357頁(1992年)及びT.G.フォックス、Bull.Am.Phys.Soc.、1巻、123頁(1956年)に記載されるように、例えば、フォックス式(Fox equation)、1/T=(w/T+w/T)(式中、w及びwは、2つの構成成分の重量分画を指し、T及びTは、2つの構成成分のガラス転移温度を指す)を使用して算出されることができる。構成成分モノマーのT及びオリゴマー中のその重量分画の推計を使用することにより、得られるオリゴマーのTを算出してもよい。当業者により理解されるように、フォックス式は、2つを超える構成成分を有する系に使用されることができる。
【0055】
オリゴマーは、ラジカル重合技術を使用して、連鎖移動剤の存在下で反応開始剤とモノマーとを組み合わせることにより調製されてもよい。この反応では、連鎖移動剤が、1つの成長鎖の活性部位を別の分子に移動させ、それが、次に新しい鎖の開始を可能にして、重合度を制御することができる。得られるオリゴマーの重合度は、10〜300、好ましくは15〜200、より好ましくは20〜200であってよい。重合度があまりに高すぎる場合、組成物は、粘度があまりにも高すぎ、容易に溶融処理ができないことがわかった。逆に、重合度があまりにも低すぎる場合、硬化組成物の収縮が過度となり、硬化組成物の高複屈折をまねく。
【0056】
連鎖移動剤は、本明細書に記載されるモノマーを重合して、得られるオリゴマーの分子量を制御する際に、使用されてもよい。好適な連鎖移動剤としては、ハロゲン化炭化水素(例えばカーボンテトラブロミド)及びイオウ化合物(例えば、ラウリルメルカプタン、ブチルメルカプタン、エタンチオール及び2−メルカプトエチルエーテル、チオグリコール酸イソオクチル、t−ドデシルメルカプタン、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール)が挙げられる。有用な連鎖移動剤の量は、オリゴマーの所望の分子量及び連鎖移動剤の種類により決まる。連鎖移動剤は、モノマーの総重量を基準として約0.1部〜約10部、好ましくは0.1〜約8部、より好ましくは約0.5部〜約6部の量で通常使用される。
【0057】
このオリゴマー化反応に好適な反応開始剤としては、例えば熱反応開始剤及び光開始剤が挙げられる。有用な熱反応開始剤としては、アゾ化合物及び過酸化物が挙げられる。有用なアゾ化合物の例としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、(バゾ(Vazo)52、E.I.デュポン・ド・ヌムール&カンパニー(duPont de Nemours & Co.)から市販)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、(バゾ64、E.I.デュポン・ド・ヌムール&カンパニーから市販)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、(バゾ67、E.I.デュポン・ド・ヌムール&カンパニーから市販)、1,1’−アゾビス(シアノシクロヘキサン)、(バゾ88、E.I.デュポン・ド・ヌムール&カンパニーから市販)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、(V−40、ワコー・ピュア・ケミカル・インダストリーズ社(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)から市販)、及びジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)、(V−601、ワコー・ピュア・ケミカル・インダストリーズ社から市販)が挙げられる。有用な過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル;ジ−t−アミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ラウロイルペルオキシド及びt−ブチルペルオキシピバレートが挙げられる。有用な有機ヒドロペルオキシドとしては、t−アミルヒドロペルオキシド及びt−ブチルヒドロペルオキシドなどの化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
有用な光開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインブチルエーテルなどのベンゾインエーテル;2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン及び2,2−ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン誘導体;並びにジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、イソプロポキシ(フェニル)−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド及びジメチルピバロイルホスホネートなどのアシルホスフィンオキシド誘導体及びアシルホスホネート誘導体が挙げられる。これらのうち、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノンが好ましい。反応開始剤は、100重量部のモノマー当たり0.001〜5重量部のレベルで通常使用される。
組成物は、複数のペンダントエチレン性不飽和フリーラジカル重合性官能基を有する架橋剤を更に含む。有用な架橋剤は、1つを超える、好ましくは2つ以上の平均官能価(1分子当たりのエチレン性不飽和フリーラジカル重合性官能基の平均数)を有する。官能基は、第1構成成分オリゴマーのペンダントエチレン性不飽和フリーラジカル重合性官能基と共重合可能であるように選択される。有用な官能基としては、第1構成成分オリゴマーに関して記載されたものが挙げられ、ビニル、ビニルオキシ、(メタ)アクリロイル及びアセチレン官能基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
有用な架橋剤は、一般式:
R−(Z)
を有し、式中、Zは、炭素−炭素二重結合などのフリーラジカル重合性官能基であり、nは、1より大きく、Rは、nの原子価を有する有機ラジカルである。Rは、直鎖又は分枝鎖であってよい原子価nの脂肪族アルキルラジカルであることが好ましい。
【0059】
かかる架橋剤の例としては、C〜C18アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、C〜C18アルキレントリオールトリ(メタ)アクリレート、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンシルベニア州エクストンのサートマー社からのCD501などのプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(pentaeritritol)トリ(メタ)アクリレート、及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、並びにジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレート、例えば、コグニス社(Cognis Co.)からのバイソマー(Bisomer)(商標)EP100DMAが挙げられる。混合を容易にするため、好ましい架橋剤は、使用温度で固体材料ではない。
【0060】
本発明による組成物は、少なくとも1つの反応性希釈剤を含んでよい。反応性希釈剤は、組成物の粘度を調節するために使用できる。したがって、反応性希釈剤は、各々が化学線に曝露したときに重合することができる官能基を少なくとも1つ含有する低粘度モノマーであることができる。例えば、ビニル反応性希釈剤及び(メタ)アクリレートモノマー希釈剤を使用してもよい。
【0061】
反応性希釈剤に存在する官能基は、硬化性(メタ)アクリレートオリゴマーに使用されるものと同じであってもよい。好ましくは、反応性希釈剤に存在する放射線硬化性官能基は、放射線硬化性オリゴマーに存在する放射線硬化性官能基と共重合することができる。反応性希釈剤は、一般に約550以下の分子量又は室温で約500mパスカル秒(100%希釈として測定)未満の粘度を有する。
【0062】
反応性希釈剤は、(メタ)アクリロイル又はビニル官能性及びC〜C20アルキル部分を有するモノマーを含んでもよい。かかる反応性希釈剤の例は、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート及びその類である。イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの低揮発性アルキル(メタ)アクリレートが、好ましい反応性希釈剤である。
【0063】
反応性希釈剤は、本明細書に記載される試験方法により測定したとき、硬化組成物の収縮が5%前後を超えない、好ましくは3%前後を超えないような量で添加されるのが好ましい。反応性希釈剤の好適な量は、約25重量部未満、好ましくは約0〜約15重量部、及びより好ましくは約0〜約10重量部であることが分かっている。好ましくは、反応性希釈剤と架橋剤との量の合計は、40重量部未満である。
【0064】
組成物の構成成分は組み合わされ、光開始剤で硬化されてもよい。光開始剤は、硬化速度及び硬化性組成物の転化率を改善するが、(より厚いコーティング又は成形物品の)硬化の深さは、光開始剤が試料の厚さを浸透する透過光を減衰させ得るので、悪影響を受けるおそれがある。光開始剤は、1.0重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、最も好ましくは0.05重量%未満の量で使用される。
【0065】
従来の光開始剤を使用することができる。例としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、例えば、α−ヒドロキシアルキルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル及びベンジルケタール、モノアシルホスフィンオキシド、並びにビス−アシルホスフィンオキシドが挙げられる。好ましい光開始剤は、ニュージャージー州マウントオリーブ(Mt. Olive)のBASFから入手可能なエチル2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(ルシリン(Lucirin)TPO−L)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(イルガキュア(IRGACURE)1173(商標)、チバ・スペシャルティーズ(Ciba Specialties))、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(イルガキュア651(商標)、チバ・スペシャルティーズ、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(イルガキュア819、チバ・スペシャルティーズ)である。その他の好適な光開始剤としては、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾオキサゾール及びヘキサリールビスイミダゾールが挙げられる。多くの場合、光開始剤の混合物は好適なバランスの特性をもたらす。
【0066】
その後、組成物を所望の基材に適用するか又は金型に加え、紫外線のような化学線に曝露することができる。組成物は、可視光線又は紫外線などのいかなる形態の化学線に曝露されてもよいが、UVA(320〜390nm)又はUVB(395〜445nm)に曝露されるのが好ましい。一般に、化学線の量は、非粘着性で寸法安定性の固体塊を形成するのに十分であるべきである。一般に、本発明の組成物を硬化するのに必要なエネルギーの量は約0.2〜20.0J/cmの範囲である。
【0067】
光重合は、炭素アーク灯、低、中又は高圧水銀蒸気ランプ、渦流プラズマアーク灯、キセノンフラッシュランプ、紫外線発光ダイオード及び紫外線発光レーザーを含むいかなる好適な光源により行われてもよい。多くの用途に対して、硬化を行うためLED光源又はアレイを使用するのが望ましい場合がある。かかるLED源は、より速い硬化を行い、硬化中組成物に、より少ない熱をもたらすことができる。1つの好適なLED源は、ノーラックス(Norlux)大面積アレイ、シリーズ808(イリノイ州キャロルストリーム(Carol Stream)のノーラックス(Norlux)から入手可能)である。
【0068】
オリゴマーの好ましい製造方法は、断熱重合法(例えば、米国特許第5,986,011号(エリス(Ellis))又は米国特許第5,753,768号(エリス)を参照のこと)による。かかる重合では、重合開始剤を低レベルで使用して、ポリマーに組み入れられた反応開始剤断片による色を減少させてもよい。更に、断熱重合中、1つには低反応開始剤レベルのため、及び1つには重合に伴って上昇する温度特性のため、反応開始剤が重合中又は重合の終了時に本質的に完全に消耗されるように条件を選択することができる。全ての熱重合開始剤を消耗することで、ペンダントフリーラジカル重合性官能基(本明細書に記載)を組み入れる「間接法」を使用したオリゴマーの官能化工程中に不必要な重合及び架橋を有利に防止又は低減させる。更に、熱反応開始剤の有意な痕跡を存在させないことで、成型及び更なる硬化前の保管及び輸送中の官能化オリゴマーの安定性を有利に改善する。
【0069】
断熱重合法は、
(a)本発明のオリゴマー組成物をバッチ反応器に供給する工程と、
(b)混合物を脱酸素する工程であって、工程(b)が所望により少なくとも部分的に工程(c)と重なり合う工程と、
(c)重合を開始するように、混合物を十分な温度に加熱して少なくとも1つの熱フリーラジカル反応開始剤から十分な反応開始剤フリーラジカルを生成する工程と、
(d)混合物を本質的に断熱条件下で重合させて少なくとも部分的に重合した混合物をもたらす工程と、
(e)所望により混合物を加熱して反応開始剤フリーラジカルを生成していない任意の反応開始剤の一部又は全てからフリーラジカルを生成し、その後混合物を本質的に断熱条件下で重合させて更なる重合混合物をもたらす工程と、
(f)所望により工程(e)を1回以上繰り返す工程と、
(g)繰り返しの間で冷却させて、所望により工程(a)〜(e)を1回以上繰り返す工程とを含む。
【0070】
工程(g)は、モノマーが反応熱を有している場合に有用である、というのは、過度に熱くならずに1つの断熱重合工程でオリゴマーへの所望の転化を実現するのは困難だからである。繰り返しの間で適切な温度に冷却させる工程(a)〜(e)の複数の繰り返し及びその結果その1回以上の繰り返しで更に断熱重合することは、最終重合温度を所望のレベルに制御するのに有益であることができる。このことで重合熱の結果としてのポリマー分解による黄変を防止することができる。
【0071】
反応開始剤、工程(a)の量、及び工程(g)の任意の使用を適切に選択することにより、ポリマーの転化は、十分に高くなるよう有利に制御されることができ、その結果、低い収縮、残留応力及び複屈折を有する硬化性材料がもたらされる。更に、場合によっては、その後、反応性希釈剤の官能化及び添加を行うことができ、同時に同じ反応装置内で最終硬化性製剤の汚染及び酸化を最小限にすることができる。
【0072】
本発明の光学製品を製造するための組成物及び方法は、光学レンズ、例えばフレネルレンズ、プリズム、光学フィルム、例えば高屈折率フィルム、非反り及び低複屈折フィルム、例えばマイクロ複製フィルム、例えば全内部反射フィルム又は輝度強化フィルム、フラットフィルム、多層フィルム、再帰反射シーティング、光ファイバー又は管、並びにその他を含む光学要素が必要な種々の用途に適用することができる。かかる光学製品は、光学組立品、プロジェクションテレビなどの光学投射装置、並びにディスプレイ及び光学組立品を含む他の装置に有用である。この発明の光学製品としては、現在すりガラス又は射出成型プラスチックから調製される物品が挙げられる。
【0073】
かかる物品は、約0.5mm以上の厚さを有してよく、この発明の硬化性組成物から調製することができ、それは、オリゴマー、架橋剤及び/又は反応性希釈剤並びに光開始剤を好適な容器内で任意の便利な順番で混合することにより作製される。混合は、組成物の構成成分が単一相になるまで継続される。厚さ25mmの物品が、この発明の組成物及び硬化方法を使用して実現されている。
【0074】
組成物は、使用時に、好ましくは約3.33kPa(25トル)未満の真空を用いて、又は組成物を好適な境界を超えた薄膜内に流すことによって、脱ガスされる。脱ガス組成物は、調製することが望まれる物品の形状に対応する金型内に約0.19MPa〜39.22MPa(2〜400Kg/cm)の圧力を所望により使用して導入される。かかる金型は、一般にプラスチック、ガラス若しくは金属、又はそれらの組み合わせから作製される。
【0075】
1つの実施形態では、硬化性組成物は、必要な形状を有する金型の表面、又はレンズなどの所望の光学物品に対応する金型要素に適用され得る。金型又は金型要素に入る硬化性組成物の体積は、スキージを金型の表面に対して摺動させることにより制御することができる。硬化性組成物の量は、ローラーの使用によるなどの他の既知のコーティング技術によっても適用することができる。望ましい場合、組成物の粘度を低下させ、より効果的な成型を提供するために、加熱を用いてもよい。記載されるように、本発明の多くの実施形態が溶融加工可能である、すなわち、100℃以下の温度でのコーティング又は成型に好適な低粘度を有するか又は達成する。
【0076】
金型要素は、完全に充填されてもよく、又は部分的に充填されてもよい。光重合可能な組成物が100%ソリッドの、収縮のない、硬化性材料である場合、硬化組成物の形状は、金型要素の形状と同じままであろう。しかし、光重合可能な組成物が硬化とともに収縮する場合、該液体が収縮し、信頼性のないレジストレーションを生み出し、光学的欠陥をもたらすであろう。好ましくは、光重合性組成物は、硬化中、約5体積%未満、好ましくは約3体積%未満だけ収縮する材料を含む。
【0077】
光重合を開始するため、金型は充填され、金型内に収容される組成物の重合を本質的に完了(80%を超える)させるために供給されるような曝露の持続時間及び強度を有する高エネルギー紫外線源などの化学線源下に設置される。望ましい場合、反応性構成成分又は光重合に悪影響を及ぼし得る波長を排除するためにフィルターを使用してもよい。光重合は、硬化性組成物の曝露表面を介して、又は重合をもたらすために必要な波長において必要な透過を有する金型材料を適切に選択することにより「スルーモールド(through-mold)」を介してもたらされてもよい。
【0078】
光開始エネルギー源は、化学線、すなわち、本発明の光学的注型樹脂の付加重合及び連鎖重合を開始できるフリーラジカルを、直接的又は間接的のいずれかで発生させることができる700ナノメートル以下の波長を有する放射線を放出する。好ましい光開始エネルギー源は、紫外線、すなわち約180〜460ナノメートルの波長を有し、炭素アーク灯、低、中又は高圧水銀蒸気ランプ、渦流プラズマアーク灯、キセノンフラッシュランプ、紫外線発光ダイオード及び紫外線発光レーザーなどの光開始エネルギー源を含む、放射線を放出する。特に好ましい紫外線光源は、型式RC−600、RC−700及びRC−747パルス化UV−Vis硬化装置などの、マサチューセッツ州ウィルバーン(Wilburn)のキセノン社(Xenon Corp)から入手可能なキセノンフラッシュランプ、並びにノーラックス(Norlux)シリーズ808大面積アレイ(イリノイ州キャロルストリームのノーラックス(Norlux)から入手可能)などのLED源である。好ましくはないが、硬化性組成物は、前述した従来の熱反応開始剤を使用してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、光学製品は、平面若しくは曲面(凸状及び凹状表面を含む)又は複製若しくはマイクロ複製表面(フレネルレンズなど)などの1つ以上の機構を含んでもよく、そのいずれもが、本発明の組成物及び好適な金型から得ることができる。構造支持物品は、種々の形態に構成されることができ、一連の交互の頂上及び溝を有する複数の線状プリズム型構造体を含むものが挙げられる。そのようなフィルムの例は、BEFであり、対称の頂上及び溝の規則的な繰り返しパターンを有する。他の例としては、頂上及び溝が対称ではなく、寸法、向き又は頂上と溝との間の距離が均一でないパターンが挙げられる。輝度強化フィルムとして有用な表面構造支持物品のいくつかの例が、米国特許第5,175,030号(ルー(Lu)ら)及び米国特許第5,183,597号(ルー)に記載されている。
【0080】
ルー及びルーらの記載によると構造支持光学製品は、(a)重合性組成物を調製する工程と、(b)マスターネガティブミクロ構造化成型表面にマスターのキャビティを充填するのにかろうじて十分な量で重合性組成物を付着させる工程と、(C)重合性組成物のビーズを、少なくとも一方が可撓性である、予め形成されたベースとマスターとの間で移動させることによりキャビティを充填する工程と、(d)組成物を硬化する工程とを含む方法により調製することができる。マスターは、ニッケル、ニッケルメッキ銅、若しくは黄銅のような金属製であることができ、又は重合条件下で安定であり、かつ、重合材料をマスターからきれいに取り出すのを可能にする表面エネルギーを好ましくは有する熱可塑性材料であることができる。
【0081】
好ましい実施形態では、光学物品は、偏光ビームスプリッタを含み、入射光線は、画像表示装置に使用され得る第1及び第2の実質的に偏光したビーム状態に分割される。図1に示すように、ビームスプリッタは、第1プリズム(60a)、第2プリズム(60b)、それらの間に配置される通過軸線を有する偏光層(20)を含む。少なくとも1つのプリズムは、瞬間硬化組成物を含む。プリズムのそれぞれは、偏光層と一致する第1表面及び2つ以上の外側表面を有する。本明細書で使用するとき、用語「プリズム」は、偏光層を通る入射光線の角度伝達及び物品を出る光線の角度特性を制御する光学要素を指す。プリズムは、三角プリズムなどの正多角形であってもよく、あるいは湾曲した面などの、物品に屈折力を付与する1つ以上の機構又はマイクロレンズ(及びそのアレイ)若しくはフレネルレンズなどのマイクロ複製機構を有してもよい。更に、プリズムは、1つ以上の表面上に蒸着金属コーティングなどのミラー要素を更に含んでもよい。これらの要素の組み合わせ、例えば、マイクロレンズ若しくはマイクロレンズアレイの回折要素を更に有する曲面、又はミラー要素を有する曲面も検討される。
【0082】
2つの三角プリズムを含むとして示されているが(図1及び2を参照)、プリズムは、PBSの所望の目的を達成するために、偏光層の一方又は両側に配置される好適ないかなる形状であってもよい。いくつかの実施形態では、第1及び第2プリズムの外側表面の1つ以上、すなわち偏光層に隣接していない表面の1つは、凸状若しくは凹状のいずれかで湾曲していてもよく、又はフレネルレンズ表面などの構造化表面を構成してもよい。かかる曲面は、偏光ビームスプリッタに屈折力を提供する、すなわち、それらは、偏光ビームスプリッタを通過する光線を収束又は分岐させる。レンズ又はミラーが光線を収束又は分岐させる度合は、通常、装置の焦点距離の逆数と等しい。
【0083】
更に、第1表面(すなわち、偏光層に隣接した表面)の1つ以上は、湾曲されてもよく又はマイクロ複製化されてもよい。例えば、偏光層がそれらの間に配置された状態で、第1プリズムは、凸状の第1表面を有してもよく、第2プリズムは、合わさった凹状の第1表面を有してもよい。更に、第1及び第2プリズムの外側表面の1つ以上(すなわち、偏光層に隣接していない表面の1つ)が、完全に又は部分的に反射性であってもよい、すなわち、蒸着金属コーティングを含む。
【0084】
本開示により構成される代表的なPBSの反射偏光層は、通過軸線を有する線状反射偏光子を含む。1つの実施形態では、偏光層は、シュナベル(Schnabel)ら、「副波長周期金属ストライプ回折格子による偏光可視光線の研究(Study on Polarizing Visible Light by Subwavelength-Period Metal-Stripe Gratings)」、光学工学(Optical Engineering)38(2)、220〜226頁、1999年2月に記載されたものなどのワイヤグリッド偏光子であってもよく、その適切な部分がここに参照により組み込まれる。ワイヤグリッド偏光子は、ガラス又は他の透明な基材上にコーティングされた金属の非常に微細な平行な線又はリボンのアレイから成る。ワイヤアレイは、幅及び間隔が入射波長と比較して小さい場合に、入射光線を効率良く偏光する。ワイヤグリッドアレイの一般的な金属としては、当該技術分野において既知のものの中でも金、銀及びアルミニウムが挙げられる。
【0085】
1つの実施形態において、偏光ビームスプリッタは、第1表面及び少なくとも2つの外側表面を有する第1プリズム、第1表面及び少なくとも2つの外側表面を有する第2プリズム、並びに第1及び第2プリズムの第1表面の間に配置されるワイヤグリッド偏光子を含んでもよい。好ましくは、ガラスなどの基材を含むワイヤグリッド偏光子は、光学接着剤の手段により第1表面に固着される。それほど好ましくはないが、ワイヤグリッドは、蒸着技術などで前記第1表面の1つ及びそれに固着された第2プリズムに付着される。
【0086】
ワイヤグリッド偏光子は、受容した光線のごく一部を吸収する。これが基材内に熱を発生させ、したがって、好ましくない。例えば、光の5%〜10%は、アルミニウムミラー表面と同じ方法でアルミニウムストライプによって吸収される。ワイヤグリッド偏光子の性能が金属ストライプの幾何学的安定性に感応するので、熱膨張による基材の小さい変化は、偏光子の性能を低下させる。
【0087】
別の実施形態では、偏光層は、一方又は両方のプリズムの第1表面上に付着される一対の無機薄膜材料の交互繰り返し層を含んでもよい。一対の薄膜材料は、1つの低屈折率材料と1つの高屈折率材料とを含む。マクニール対と呼ばれる指標は、光線の所定の入射角に対してp偏光の反射係数(rd)が各薄膜境界面で本質的にゼロであるように選択される。rがゼロである角度は、ブルースター角と呼ばれ、ブルースター角を指標の数値と関連付けた式が、マクニール条件(MacNeille condition)と呼ばれる。s偏光(r)の反射係数は、各薄膜境界面で非ゼロである。したがって、より多くの薄膜が付加されると、s偏光の全反射率は増加するが、一方、p偏光の反射率は、本質的にゼロのままである。したがって、薄膜スタックに入射した非偏光光線は、一部又は全てのs偏光構成要素を反射させ、一方、本質的に全てのp偏光構成要素が透過される。
【0088】
1つの実施形態では、一対の無機薄膜材料の繰り返し層(光学スタック)が、プリズムの第1表面上に付着され、光学接着剤などで第2プリズムの第1表面に固着されて、偏光ビームスプリッタを形成する。偏光ビームスプリッタは、互いと比較して低及び高屈折率を有する材料の少なくとも1つの組の対の交互層を含む。層の厚さは、四分の一波長基準が入射平行光線の波長に関して低及び高屈折率材料の層のそれぞれにより満たされるように選択される。プリズム材料の光学特性及び複合光学スタックの特性の全てが組み合わされて、入射光線を2つの偏光構成要素に分割する。
【0089】
薄膜の好適な材料としては、関心スペクトル内で透明な(低い吸収を示す)いかなる材料もが挙げられる。広帯域可視光線の場合、好適な薄膜材料は、二酸化ケイ素(n=1.45)、非晶質水素添加窒化ケイ素(n=1.68〜2.0);二酸化チタン(n=2.2〜2.5);フッ化マグネシウム(n=1.38);氷晶石(NaAlF、n=1.35);硫化亜鉛(n=2.1〜2.4);酸化ジルコニウム(n=2.05);酸化ハフニウム(n=2.0);及び窒化アルミニウム(n=2.2)である。
【0090】
いくつかの薄膜付着技術は、プリズムに複合光学スタックを付着させるために使用することができ、熱及び電子ビーム蒸発、並びにイオンビームスパッタリング及びマグネトロンスパッタリングが挙げられる。しかし、熱及び電子ビーム蒸発は、良好な薄膜品質及び許容できる製造速度として十分に高い付着率を提供すべきである。より重要なことは、フッ化マグネシウム及び氷晶石などの低指数フィルムは、この方法により付着されることができる。電子ビーム付着は、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム及び窒化アルミニウムなどの高指数材料に対してコーティング産業で普通使用されている。
【0091】
好ましくは、偏光層は、多層光学フィルムであってよい。本開示の実施形態において偏光フィルムとして使用するのに好適な反射偏光フィルムの例としては、米国特許第5,882,774号(ジョンザ(Jonza)ら)、米国特許第6,609,795号(ウェバー(Weber)ら)、及び米国特許第6,719、426号(マガリル(Magarill)ら)に記載されたものなどの、ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社(3M Corporation)により製造された複屈折材料を含む反射偏光子が挙げられる。また、偏光フィルム20の好適な反射偏光フィルムとしては、異なる高分子材料の複数の層を含む高分子反射偏光フィルムが挙げられる。例えば、偏光フィルムは、第1及び第2層の高分子材料が異なり、第1及び第2層の少なくとも1つが複屈折である、第1層及び第2層を含んでもよい。本開示の1つの実施形態では、米国特許第6,609,795号(ウェバーら)に開示されているように、偏光フィルムは、異なる高分子材料の第1及び第2交互層の多層のスタックを含んでもよい。多層反射偏光子を作製するのに好適な他の材料が、例えばジョンザらの米国特許第5,882,774号、ウェバーらの米国特許第6,609,795号に列記されている。本開示の他の実施形態では、多数の反射偏光フィルムを使用することができる。
【0092】
適切な反射偏光フィルムは典型的に、第1の高分子材料と第2の高分子材料の屈折率の差が、前記フィルム面の第1の方向に沿って大きく、第1の高分子材料と第2の高分子材料の屈折率の差が、前記フィルム面の第2の方向(第1の方向と直交)に沿って小さいことを特徴とする。いくつかの例示的な実施形態では、反射偏光フィルムは、第1の高分子材料と第2の高分子材料(例えば異なる高分子材料の第1の層と第2の層)の屈折率の差が、前記フィルムの厚さ方向に沿って小さいことも特徴とする。延伸方向(すなわちx方向)における、第1の高分子材料と第2の高分子材料の屈折率の適切な差の例は、約0.15〜約0.20の範囲である。非延伸方向(すなわちy方向及びz方向)の屈折率は、所定の材料又は層に関して互いの約5%以内であり、また異なる材料又は隣接層の当該非延伸方向の約5%以内であるのが望ましい。
【0093】
代表的な多層偏光フィルムの層に選択される高分子材料は、低レベルの光吸収を示す材料を含んでもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、1.0×10−5センチメートル−1未満の吸収係数を示す。したがって、PETを含み約125マイクロメートルの厚さを有する反射偏光子フィルムの場合、算出された吸収は約0.000023%であり、それは、比較され得るワイヤグリッド偏光子の吸収の約1/200,000である。
【0094】
低吸収が望ましい、というのは、PBSに使用される偏光子は、非常に高い光密度に曝露され、それが偏光子の破損をもたらし得るからである。例えば、吸収タイプの偏光子フィルムは、不必要な偏光を有する全ての光を吸収する。これは、かなりの熱を発生させる。このため、偏光フィルムを避けるように熱を伝導させるためには、サファイアのような熱伝導率の高い基材が必要になる。更に、基板は高い熱負荷に曝露され、それは対応して基板における熱複屈折を発生させる。この基材内における熱複屈折は、画像表示装置のような光学装置のコントラスト及びコントラストの均一性を低下させる。結果として、少数の材料だけが、伝統的なPBSを有する基材に適することができる(例えば、サファイア、石英、鉛含有ガラス、及びセラミックス)。
【0095】
本発明は、光学フィルムの一方又は両方の主表面上に多層光学フィルム及び硬化光学コーティングを含む多層物品を提供する。かかるコーティングを提供することで環境応力から多層光学フィルムを保護し、それに強度及び剛性を付加する。多層物品は、多層光学フィルムを提供し、多層光学フィルムの少なくとも1つの主表面を硬化性組成物でコーティングし、硬化することにより、調製されてもよい。別の実施形態では、硬化組成物を含む、別個に調製されたフィルムが、多層光学フィルムの一方又は両方の主表面に、本明細書で更に記載される光学接着剤の手段により接着されてもよい。
【0096】
本発明は、偏光ビームスプリッタの製造方法を提供する。この方法は、硬化性組成物を好適な金型に導入する工程、及び組成物を硬化してプリズムを形成する工程を含む。金型は、好適ないかなる形状であってもよく、その1つ以上の表面は、湾曲していてもよい。次に、偏光層は、当該技術分野において既知のような任意の光学接着剤により、得られたプリズムに固着され、接着され、ないしは別の方法で取り付けられてもよい。1つの実施形態では、第1プリズムが、偏光層の第1表面に固着され、第2プリズムが、偏光層の曝露表面に順次固着されてもよい。別の実施形態では、第1及び第2プリズムが、偏光層の対向する表面に同時に固着される。
【0097】
有用な光学接着剤は、拡張芳香族構造又は共役二重結合などのUV吸収発色団を実質的に含まない。有用な接着剤としては、例えば、ノーランド社(Norland Company)(ニュージャージー州クランベリー(Cranbury))から入手可能なNOA61UV硬化チオール−エン系接着剤、コネチカット州ロッキーヒル(Rocky Hill)のヘンケルロクタイト社(Henkel Loctite Corp.)から入手可能なロクタイト(Loctite)シリーズ(例えば、3492、3175)UV硬化アクリル接着剤、コネチカット州トリントン(Torrington)のダイマックス社(Dymax Corporation)から入手可能なOPシリーズ(例えば、21、4−20632、54、44)UV硬化アクリル接着剤が挙げられる。
【0098】
1つの有用な接着剤としては、米国特許出願2004/0202879(キア(Xia)ら)に記載の組成物が挙げられ、それは、感圧性接着剤を形成する酸又は塩基官能性のいずれかを有する少なくとも1つのポリマー、酸又は塩基官能性を有する100,000を超える重量平均分子量を有する高Tポリマー、及び架橋剤を含み、感圧性接着剤及び高Tポリマーの官能性が、相溶化ブレンドを形成する酸塩基の相互作用をもたらす。接着剤組成物をオーブン内で80℃及び90%の相対湿度で約500時間促進エージングさせた後、接着剤混合物は、半透明又は光学的に透明である。
【0099】
別の有用な接着剤としては、ミクロ構造化接着剤が挙げられ、それはミクロ構造化表面を有する感圧性接着剤の連続層を含み、ミクロ構造化表面は、一連の機構を含み、機構の横アスペクト比は約0.1〜約10の範囲であり、機構の間隔アスペクト比は約1〜約1.9の範囲であり、各機構は、約2.5〜約375マイクロメートルの高さを有する。かかる接着剤が、米国特許第5,650,215号、米国特許第6,123,890号、米国特許第6,315,851号、米国特許第6,440,880号及び米国特許第6,838,150号(全てベンソン(Benson)ら)に記載されている。
【0100】
他の有用な接着剤としては、ソーケン(Soken)(商標)1885PSA(日本のソーケンケミカル&エンジニアリング社(Soken Chemical & Engineering Co., Ltd)から市販)、(米国特許出願2004/0202879(ルーら)の実施例1に記載されたような)NEA PSA、レンズボンド(Lens Bond)(商標)C59型(EMSアクイジション社(EMS Acquisition Corp.)の一部門であるペンシルベニア州ハットフィールド(Hatfield)のサマーズ・オプティカル(Summers Optical)から入手可能な熱硬化スチレン系接着剤)及びNOA61(商標)(ニュージャージー州クランベリーのノーランド社から入手可能なUV硬化チオール−エン系接着剤)が挙げられる。
【0101】
別の実施形態では、偏光子は、図1に図式的に示したように調製されてもよい。ここで、開口第1表面又は開口第1面、並びに任意のタブ11a及びbを有するプリズム金型10aは、偏光層20及び剛性の側部プレート30と組み合わされる。金型面間の角度は、所望のように変更されてもよく、外側面12a/bのいずれか又は両方が湾曲していてもよいし、又はそれに任意の所望のパターン、例えば回折パターンが付与されてもよく、例えばフレネルレンズなどが一体的に成型されてもよい。第1及び第2プリズムのそれぞれの第1表面は湾曲していてもよく、又は一体化したマイクロ複製パターンを有していてもよい。有利には、第1及び第2プリズムの湾曲した第1表面は、偏光層がそれらの間に配置された状態で、それらが凹状及び凸状表面などと合わさることができるように構成されてもよい。
【0102】
部分10a、20及び30は、クランプによって、又は好適な他の手段によって、タブ11a/bに固定されてもよい。張力手段(図示せず)が、偏光層を平らに保持するため使用されてもよい。組み立てられた金型は、ガラスなどの滑らかで剛直な表面15上に載せられてもよく、又は一体化した底部が、金型10aに設けられてもよい。この組立体は、プリズム型キャビティ40aを画定し、その中に硬化性組成物が導入され、UVエネルギーの適用により硬化されてもよい。必要に応じて、第2剛直表面(図示せず)が、金型の上部を覆って、それを大気の酸素から保護してもよい。望ましくは、剛直(rid)表面15又は第2剛直表面のいずれかは、ガラス又は硬化のための入射光線源に対して透明な他の好適な材料から作製される。第2剛直表面の代わりに、金型組立体は、酸素を排除するために不活性ガラスで覆われてもよい。
【0103】
硬化の際、剛性の側部プレート30を取り除き、第2プリズム金型10bをそこに固定して、第2チャンバ40bを形成し、偏光層20が金型10aと10bとの間に共通面を形成してもよく、その結果、第1及び第2プリズムの第1表面は、それぞれ偏光層に隣接することになる。硬化の結果、偏光層は、今や第1プリズム型硬化組成物の第1表面と一体化している。第2金型は、湾曲した外側面又は他の所望の成型された形状(図示せず)を有してもよい。この第2チャンバ40bを硬化性組成物で充填し、硬化し、金型組立体を取り除いて、2つのプリズムを有する偏光ビームスプリッタ60aを提供してもよく、一体化した偏光層は、プリズムのそれぞれの第1表面上でそれらの間に配置される。必要に応じて、それぞれのプリズムは、好適に構成された金型により第1及び第2プリズムを共に固定するための一体化したインタロックタブが設けられてもよく、又はビームスプリッタを表示装置内の取付台に固定するためのタブを含んでもよい。更に、第1及び/又は第2プリズムには、第1及び第2プリズムを互いに対して、偏光層に対して、及び表示装置内の取付台に対して整列するためのタブ又は指標などの整列手段が設けられてもよい。
【0104】
整列手段は、相互接続する対応する雄部及び雌部を含んでもよい。偏光ビームスプリッタは、第1プリズム及び第2プリズムを含んでもよく、第1プリズムは雄部を含み、第2プリズムは雌部を含む。雄部は、反射偏光フィルムに隣接した第1プリズムの表面の一部を取り囲む長方形表面であってもよく、それはそこから突出してもよい。同様に、雌部は、反射偏光フィルムに隣接した第2プリズムの表面の大部分内に配置される長方形の凹みであってよい。
【0105】
雄部材及び雌部は、1つのプリズムが、対向するプリズムに位置するそれぞれの雌部と係合するように構成される少なくとも1つの雄部材を含むように、他の係合機構で置換されてもよい。本開示に応じて、本明細書に例示されている数と異なる数の雄部材及び雌部が使用され得ることも、当業者は容易に理解するであろう。例えば、代表的なPBSは、3つ以上の雌部内に受け入れられる3つ以上の雄部材を含み得る。
【0106】
上述の雄部材及び雌部は、それぞれの第1及び第2のプリズムとともに成型されてもよい。第1及び第2のプリズムは、次に雄部と雌部の補助で共に固定されて、偏光ビームスプリッタを形成してもよい。この技法には、第1のプリズムと第2のプリズムとの間に反射偏光フィルムを設置することを含めてもよい。第1プリズムは、続いて雄部が対応する雌部と整列されるように第2プリズムを基準として方向付けられてもよい。この整列は、第1のプリズムが第2のプリズムに対して正確に配置されることを確実にするために有益である。その後、第1プリズムは、雄部を対応する雌部に同時に挿入することにより、第2プリズムを係合してもよい。これは、滑らかで平坦な界面を提供するために、第1のプリズム及び第2のプリズムの入射表面間で、反射偏光フィルムを圧縮する。雄部は、対応する雌部に接着剤で固定されてもよい。更に、雄部材を対応する雌部に嵌合及び/又は溶接(例えば、超音波、赤外線、熱かしめ、スナップばめ、プレスばめ、及び化学的溶接)することによって、第1のプリズムが第2のプリズムに固定されてもよい。
【0107】
代替の方法が、図2に図式的に示されている。ここで、開口面110a及び110b(得られるプリズムの第1表面に対応する)を有する2つのプリズム金型は、偏光層120が金型110a及びbの共通の第1表面上の間に配置された状態で任意のタブ111a及びb(又は任意の好適な手段)によって共に固定される。これが、硬化性組成物で充填され硬化されてもよい2つのチャンバ140a/bをもたらし、単一工程で偏光ビームスプリッタを製造する。再度、金型は、好適ないかなる形状及び寸法であってもよく、外側面は湾曲していてもよい。
【実施例】
【0108】
これらの実施例は単に例示のみを目的としたものであり、添付の請求項の範囲を制限することを意味するものではない。特に記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載される部、百分率、比率等は全て、重量による。使用される溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、シグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))より入手した。
【0109】
【表1】

【0110】
試験方法
SECによる分子量測定
分子量及び分子量分布について、ウォーターズ(Waters)717プラス(Plus)オートサンプラー、1515HPLCポンプ、2410差分検出器及び以下のウォーターズカラム、すなわちスチラゲル(Styragel)HR5E、スチラゲルHR1を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施した。全ての試料は、流速1.0mL/分で35℃においてTHFで実行された。線状ポリスチレン基準を較正に使用した。
【0111】
動的機械分析(DMA)測定
TgのDMA及び硬化組成物の弾性率測定をねじれモードでLC−ARESテストステーション(レオメトリック・サイエンティフィック(Rheometric Scientific)、ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway))を使用して行った。試料寸法は、約25ミリメートル×10ミリメートル×1ミリメートルであった。試料の長さは、テストステーションにより測定され、試料の幅及び厚さは、キャリパーで測定した。試験は、温度を25℃から180℃まで、1分につき5℃上昇させることによって実施した。使用した周波数は、1ヘルツであった。
【0112】
耐黄変試験
3.2センチメートル(1.25インチ)の直径×0.5センチメートル(0.19インチ)の厚さの硬化試料の420ナノメートルの波長における透過率(T%)を、120℃オーブン内で7日間のエージング前後に測定した。T%は、TCSプラス(Plus)分光光度計(BYK−ガードナー(BYK-Gardner)USA、ミズーリ州シルバースプリング(Silver Spring))を使用して測定した。一般に、420ナノメートルで85%未満のT%を有する試料は、黄色を呈する。エージング後420ナノメートルでのT%が85%を超える場合、試料は、良好な耐黄変を有すると考えられる。
【0113】
体積収縮測定
硬化性組成物及び硬化材料の密度が、比重瓶により測定された。体積収縮%は、硬化性材料の硬化中の密度変化に基づき計算された。体積収縮%=100×(硬化材料の密度硬化前の硬化性材料の密度)/硬化前の硬化性材料の密度。
【0114】
吸水率測定
秤量された3.2センチメートル(1.25インチ)の直径×0.5センチメートル(0.19インチ)の厚さの硬化ディスク試料を、14日間、23℃で水中に設置する。吸水率%=100×(水中14日後の試料重量水浸漬前の試料重量)/水浸漬前の試料重量。
【0115】
複屈折測定
試料のリターダンス(retardance)を測定するために、透過スペクトルエリプソメトリー(Transmission Spectral Ellipsometry)(TSE)を使用した。試料の複屈折は、リターダンスを試料の厚さで除して算出した。試料は、3.2センチメートル(1.25インチ)の直径×0.5センチメートル(0.19インチ)の厚さの円形のディスクである。試料を回転ステージ上に載せ、J.A.ウーラム(Woollam)M2000可変角度スペクトルエリプソメータを使用して一連の位置でTSEリターダンスデータを測定した。合計8つの面内測定に関して、2つの直交する方向に6ミリメートル離れた4つの位置で面内測定を行った。測定したリターダンスは、λ=545〜555ナノメートルの範囲の波長で平均した。
【0116】
(実施例1〜7)
オリゴマーシロップの調製
実施例1〜7では、表1によるIBOA、HEA、連鎖移動剤IOTG又はMCE並びに熱反応開始剤バゾ52及び88の第1分量を、還流凝縮器、温度計、機械的攪拌器及び窒素ガス入口を装備した四つ口フラスコに添加した。混合物を窒素下で攪拌し、60℃に加熱した。反応混合物の温度は、重合中150℃前後でピークに達した。反応のピーク後、バッチを第2反応開始剤バゾ88を添加して30分間140℃で更に重合させて、残留モノマーを低減させ、反応開始剤を取り除いた。この反応期間の最後に、SECによるオリゴマーの分子量測定のために試料を採取した。その後、バッチを100℃まで冷却した。HDDMA反応性希釈剤を反応器に添加し、バッチの粘度を低減させた。次に、IEM中のDBDL触媒の溶液をバッチに添加して、IBOA/HEAポリマー鎖のヒドロキシルと反応させ、メタクリレート官能基をポリマーに組み入れた。反応は、2時間で完了した。
【0117】
硬化試料の調製
反応の完了後、表1の反応性オリゴマーシロップは、0.02重量%のTPOL光開始剤が配合され、試験試料の調製の項で記載した手順に従ってキセノンフラッシュランプにより硬化された。硬化試料は、体積収縮%、複屈折、Tg、吸水率、透過率%及びエージング安定性について、上記試験方法の項に記載した方法を使用して試験された。
【0118】
【表2】

【0119】
* 実施例3、4及び5のIBOAモノマー及びHDDMA反応性希釈剤は、アルドリッチ(Aldrich)からの活性塩基性酸化アルミニウム粉末、ブロックマン(Brokmann)1、約150のメッシュ、58A°、155m/gのカラムを通過させることにより精製して、阻害物質を除去した。同じ実施例のIEMモノマーを蒸留して、阻害物質を除去した。実施例3、4及び5の他の成分及び実施例1、2、6及び7の全ての成分は、精製せずに業者から受けとられたまま使用した。
【0120】
(実施例8〜10)
実施例8〜10の反応性オリゴマーシロップを調製するため、表2によるHDDMA反応性希釈剤を、実施例7で調製した反応性オリゴマーシロップの試料に添加した。反応性オリゴマーシロップは、0.02重量%のTPOL光開始剤が配合され、キセノンフラッシュランプにより80℃で5分間硬化された。硬化試料は、体積収縮%、複屈折、Tg、吸水率、透過率%及びエージング安定性について、上記試験方法の項に記載した方法を使用して試験された。
【0121】
【表3】

【0122】
(実施例11〜12)
表3の実施例11及び12の反応性オリゴマーシロップを調製するため、140℃で第2反応開始剤を添加してから30分後に、MAnhを添加し、混合物を効率的に攪拌しながら更に3時間140℃で反応させた以外は、上記実施例1〜7に記述したのと同じ重合手順に従った。その後、バッチを110℃まで冷却し、HDDMA反応性希釈剤を反応器に添加して、バッチの粘度を更に低減させた。
【0123】
【表4】

【0124】
(実施例13〜14)
反応性オリゴマー及び反応性希釈剤混合物、CN945A60、CN1963は、0.02%のTPOL光開始剤が配合され、試験試料の調製で記載した手順に従ってキセノンフラッシュランプにより80℃で5分間硬化された。
【0125】
【表5】

【0126】
実施例1〜14の試験試料の調製
実施例及び比較例に記載した所望の光開始剤及び他の添加物(使用した場合)を有するオリゴマーシロップを80℃で予備加熱し、DAC−100ミキサーにより白色の使い捨てカップ(カップ及びミキサーは両方とも、ニュージャージー州ランドラム(Landrum)のフラックテク社(Flack Tek Inc)から入手可能)内で混合することにより、光開始剤及び他の添加物を有する硬化性組成物を調製した。該組成物を真空槽内で脱ガスし、その後、使用前に室温まで冷却させた。
【0127】
上記硬化性材料の硬化は、以下の工程により実施された:1)約15センチメートル(6インチ)×15センチメートル(6インチ)×0.5センチメートル(0.19インチ)のパイレックスガラスプレート上に、51マイクロメートル(2ミル)A31剥離ライナーの約15センチメートル(6インチ)×15センチメートル(6インチ)の片を設置し、2)中央に3センチメートル(1.25インチ)の直径の開口部を有するほぼ同じ寸法のガラス又はシリコーンゴム金型を剥離ライナーの上部に設置し、3)次に、気泡を避けるよう注意しながら金型を硬化性組成物で充填し、4)その後、51マイクロメートル(2ミル)A31剥離ライナーの約15センチメートル(6インチ)×15センチメートル(6インチ)の第2片を充填した金型の上部に設置し、5)約15センチメートル(6インチ)×15センチメートル(6インチ)×0.5センチメートル(0.19インチ)の別のパイレックスガラスプレートを剥離ライナーの上部に設置し、6)最後に、充填した金型を80℃でチャンバ内の加熱ステーション上に設置し、平衡させた。硬化性組成物は、RC−747パルスUV/可視システム(Pulsed UV/Visible System)を有するキセノンフラッシュランプ(型式番号4.2ランプハウジング(Lamp Hsg)、パルスレート8Hz)(キセノン社(Xenon Corporation)、マサチューセッツ州ウォーバーン(Woburn))を用いて、5分間硬化された。
【0128】
SECにより測定した重量平均分子量、動的機械分析(DMA)により測定したTg、比重瓶により測定した体積収縮%、及びエリプソメトリーにより測定した複屈折を表5に示す。120℃のオーブンにおける7日間のエージング後の明白に顕著な色及びTCSプラス(Plus)分光光度計により測定した透過率%も図5に示す。上記試験方法の項に記述されたように得られた吸水率データを表6に示す。
【0129】
【表6】

【0130】
【表7】

【0131】
(実施例15):
実施例15では、表7によるIBOA、HEA、連鎖移動剤IOTG並びに熱反応開始剤バゾ52及び88の第1分量を、還流凝縮器、温度計、機械的攪拌器及び窒素ガス入口を装備した四つ口フラスコに添加した。混合物を窒素下で攪拌し、60℃に加熱した。反応混合物の温度は、重合中180℃前後でピークに達した。反応のピーク後、バッチを第2反応開始剤バゾ88を添加して30分間140℃で更に重合させて、残留モノマーを低減させ、反応開始剤を取り除いた。その後、バッチを100℃まで冷却し、IBOA反応性希釈剤を反応器に添加して、バッチの粘度を低減させた。次に、MAnhをバッチに添加して、オリゴマー鎖のヒドロキシル基と反応させて、メタクリレート基を組み入れた。反応時間は、約6時間であった。続いて、HDDMAを添加し、溶液を周囲温度まで冷却した。表7の反応性オリゴマーシロップは、0.02重量%のルシリン(Lucirin)TPOL光開始剤が配合されて、硬化性材料組成物を作製し、プラスチックプリズム及びPBSプリズムを調製した。
【0132】
【表8】

【0133】
(実施例16):プラスチックプリズムの調製
実施例16に関して、図1に記載したプリズム金型を使用した。構成要素10aはステンレス鋼から作製され、構成要素15はガラスプレートであり、構成要素20は使用されず、構成要素30はガラス顕微鏡スライドであった。容積40aには、実施例15で調製された、配合された反応性オリゴマーシロップが充填され、別のガラスプレートが、充填された容積40aの上部に設置された。組立体をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。
【0134】
(実施例17):プラスチックPBSプリズムの調製
実施例17に関して、図1に記載したプリズム金型を使用した。構成要素10aはステンレス鋼から作製され、構成要素15はガラスプレートであり、構成要素20はPBSフィルムであり、構成要素30はガラス顕微鏡スライドであった。容積40aには、実施例15で調製された、配合された反応性オリゴマーシロップが充填され、別のガラスプレートが、充填された容積40aの上部に設置された。組立体をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。ガラススライドを取り除き、実施例16で調製したようなプラスチックプリズムを、光学接着剤として使用される実施例15で調製された配合された反応性オリゴマーシロップでPBSフィルム表面に取り付けて、PBSプリズムを作り出した。接着剤をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。
【0135】
(実施例18):プラスチックPBSプリズムの調製
実施例18に関して、図1に記載したプリズム金型を使用した。構成要素10aはステンレス鋼から作製され、構成要素15はガラスプレートであり、構成要素20はPBSフィルムであり、構成要素30はガラス顕微鏡スライドであった。容積40aには、実施例15で調製された、配合された反応性オリゴマーシロップが充填され、別のガラスプレートが、充填された容積40aの上部に設置された。組立体をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。次に、構成要素30を取り外し、第2金型10bを硬化金型に隣接して設置した。容積40bには、実施例15で調製された、配合された反応性オリゴマーシロップが充填され、ガラスプレートが、充填された容積40bの上部に設置された。組立体をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。
【0136】
(実施例19):プラスチックPBSプリズムの調製
実施例19に関して、図2に記載したプリズム金型を使用した。構成要素110a及び110bはステンレス鋼から作製され、構成要素115はガラスプレートであり、構成要素120はPBSフィルムであった。120の両側の容積には、実施例15で調製された、配合された反応性オリゴマーシロップが充填され、別のガラスプレートが、充填された容積の上部に設置された。組立体をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。
【0137】
(実施例20):プラスチックプリズムの調製
実施例20に関して、図1に記載したプリズム金型を使用した。構成要素10aはステンレス鋼から作製され、構成要素15はガラスプレートであり、構成要素20は使用されず、構成要素30はガラス顕微鏡スライドであった。容積40aには、実施例14で調製された、配合された反応性オリゴマーシロップが充填され、別のガラスプレートが、充填された容積40aの上部に設置された。組立体をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。
【0138】
(実施例21):プラスチックPBSプリズムの調製
実施例21に関して、図1に記載したプリズム金型を使用した。構成要素10aはステンレス鋼から作製され、構成要素15はガラスプレートであり、構成要素20はPBSフィルムであり、構成要素30はガラス顕微鏡スライドであった。容積40aには、実施例14で調製された、配合された反応性オリゴマーシロップが充填され、別のガラスプレートが、充填された容積40aの上部に設置された。組立体をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。ガラススライドを取り除き、実施例20で調製されたようなプラスチックプリズムを、光学接着剤として使用される実施例14で調製されたシロップでPBSフィルム表面に取り付けて、PBSプリズムを作り出した。接着剤をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。
【0139】
(実施例22):プラスチックPBSプリズムの調製
実施例22に関して、図1に記載したプリズム金型を使用した。構成要素10aはステンレス鋼から作製され、構成要素15はガラスプレートであり、構成要素20はPBSフィルムであり、構成要素30はガラス顕微鏡スライドであった。容積40aには、実施例14で調製された、配合された反応性オリゴマーシロップが充填され、別のガラスプレートが、充填された容積40aの上部に設置された。組立体をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。次に、構成要素30を取り外し、第2金型10bを硬化金型に隣接して設置した。容積40bには、実施例14で調製された、配合された反応性オリゴマーシロップが充填され、ガラスプレートが、充填された容積40bの上部に設置された。組立体をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。
【0140】
(実施例23):プラスチックPBSプリズムの調製
実施例23に関して、図2に記載したプリズム金型を使用した。構成要素110a及び110bはステンレス鋼から作製され、構成要素115はガラスプレートであり、構成要素120はPBSフィルムであった。120の両側の容積には、実施例14で調製された、配合された反応性オリゴマーシロップが充填され、別のガラスプレートが、充填された容積の上部に設置された。組立体をキセノンフラッシュランプにより室温で5分間硬化した。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の方法の概略図。
【図2】本発明の方法の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基及び20℃以上のTを有する50〜99重量部のオリゴマーと、
b)1〜50重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、
c)100重量部のa)及びb)を基準として、0.001〜5重量部の光開始剤とを含む硬化組成物を含む、光学物品。
【請求項2】
光学レンズ、光学繊維、プリズム、回折レンズ、マイクロレンズ、マイクロレンズアレイ、フレネルレンズ、ライトガイド、導波路及び光学フィルムからなる群から選択される、請求項1に記載の光学物品。
【請求項3】
前記オリゴマーが、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド及びポリカーボネートオリゴマーから選択される、請求項1に記載の光学物品。
【請求項4】
第1表面及び少なくとも2つの外側表面を有する第1プリズム、第1表面及び少なくとも2つの外側表面を有する第2プリズム並びに第1及び第2偏光子の前記第1表面の間に配置される通過軸線を有する偏光層を含む偏光ビームスプリッタであって、少なくとも1つのプリズムが、
a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基及び20℃以上のTを有する50〜99重量部のオリゴマーと、
b)1〜50重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、
c)100重量部のa)及びb)を基準として、0.001〜5重量部の光開始剤とを含む硬化組成物を含む、偏光ビームスプリッタ。
【請求項5】
前記偏光層が、多層複屈折フィルムを含む、請求項4に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項6】
前記偏光層が、多層複屈折フィルム層を含む、請求項4に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項7】
前記多層複屈折フィルムが、前記第1及び第2プリズムの前記第1表面に接着接合される、請求項6に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項8】
前記多層複屈折フィルムが、前記第1及び第2プリズムの前記第1表面に一体化している、請求項6に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項9】
前記複屈折フィルムが、高屈折率を有する複数の交互第1ポリマー層及び低屈折率を有する複数の第2ポリマー層を含む、請求項4に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項10】
複屈折フィルムの隣接した対の層が、反射されることが望ましい光の波長の1/2である合計光学厚さを有する、請求項9に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項11】
隣接した対の層が、反射されることが望ましい光の波長の1/4である合計光学厚さを有する、請求項9に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項12】
前記プリズムが、1×10−6未満の複屈折を示す、請求項4に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項13】
前記第1及び第2プリズムいずれかの前記外側表面の少なくとも1つが、屈折力を有する、請求項4に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項14】
屈折力を有する前記表面が、一体化したフレネルレンズを構成する、請求項13に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項15】
屈折力を有する前記表面が、湾曲している、請求項13に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項16】
前記湾曲した表面が、凸状又は凹状曲面である、請求項15に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項17】
前記偏光層がそれらの間に配置された状態で、前記第1及び第2プリズムの第1表面が、合わさった曲面である、請求項4に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項18】
前記第1及び第2プリズムの外側表面の1つ以上が、ミラー化される、請求項4に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項19】
前記第1及び/又は第2プリズムが、整列手段を有する、請求項4に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項20】
前記オリゴマーが、
a)20℃以上のガラス転移温度を有するポリマーに単独重合可能な50〜99重量部の(メタ)アクリロイルモノマー単位と、
b)ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有する1〜50重量部のモノマー単位と、
c)100重量部のa)及びb)を基準として、20℃未満のガラス転移温度を有するポリマーに単独重合可能な40重量部未満のモノマー単位とを含む重合モノマー単位を含む、請求項1に記載の光学物品。
【請求項21】
硬化オリゴマー組成物を含み、かつ、第1表面及び少なくとも2つの外側表面を有する第1及び第2プリズムを提供する工程、並びに前記第1及び第2プリズムの前記第1表面の間に偏光層を接着固定する工程を含む、請求項4〜19のいずれか一項に記載の前記偏光ビームスプリッタの製造方法。
【請求項22】
開口第1面を有するプリズム金型を提供する工程、偏光層を前記開口面に固定してプリズム金型チャンバを形成する工程、前記チャンバを前記硬化性オリゴマー組成物で注型する工程、前記組成物を硬化する工程、及び第2プリズムを前記偏光層に固定する工程を含む、請求項4〜19のいずれか一項に記載の前記偏光ビームスプリッタの製造方法。
【請求項23】
前記第2プリズムが、前記偏光層に接着固定される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第1金型に固定された開口面を有する第2プリズム金型を提供し、続いて前記硬化性オリゴマー組成物を注型及び硬化することにより、前記第2プリズムを前記偏光層に固定する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの外側表面が、回折要素を含む、請求項4に記載の偏光ビームスプリッタ。
【請求項26】
その間に前記偏光層が配置された第1及び第2プリズム金型を提供する工程、前記金型内で前記硬化性組成物を注型及び硬化して、一体化した偏光層を有する偏光ビームスプリッタを製造する工程を含む、請求項4〜19のいずれか一項に記載の前記偏光ビームスプリッタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−527003(P2009−527003A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554283(P2008−554283)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/002950
【国際公開番号】WO2007/094979
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】