説明

硬化性組成物除去液

【課題】顔料を含有する硬化性組成物の除去性能に優れた硬化性組成物除去液を提供する。
【解決手段】顔料を含有する硬化性組成物の除去液であって、(A)脂環式ケトン類および(B)一般式(1)で示されるグリコールジアルキルエーテル類を含有し、化合物(A)の含有量が除去液全体に対して30質量%以上であることを特徴とする硬化性組成物除去液。
−O−[C2n−O]−R (1)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、nは正の整数である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物除去液に関する。本発明は、特に、ガラス基板や半導体ウェーハなどに硬化性組成物皮膜を形成する工程における基板の周辺部、縁辺部または裏面部の未硬化の硬化性組成物皮膜の除去、または製造装置部材や器具の表面に付着した未硬化の硬化性組成物を除去するための除去液に関する。
【0002】
本発明の硬化性組成物除去液は、特に、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、イメージセンサに用いられるカラーフィルターの製造における基板上に硬化性組成物皮膜を形成する工程で、基板の周辺部、縁辺部または裏面部に残存する未硬化の顔料を含有する硬化性組成物皮膜の除去、または製造装置部材や器具の表面に付着した未硬化の顔料を含有する硬化性組成物の除去に有用である。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイまたは半導体の製造工程では、通常、リソグラフィーやインクジェット技術を用いた硬化性組成物のパターン形成が行われる。
【0004】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、イメージセンサ等に用いられるカラーフィルター製造におけるRGBもしくは樹脂ブラックマトリックスのパターン形成方法としては、顔料分散法、染色法、印刷法、電着法、インクジェット法などが用いられる。またこれらに使用される硬化性組成物はパターン形成方法により感光性(光硬化性)組成物および熱硬化性組成物が用いられる。顔料分散法は、顔料を含有する感光性組成物を用いたフォトリソグラフィーにより各色のパターニングを行う方法であり、安定な着色皮膜が得られることからカラーフィルター製造には好適な方法である。この方法により基板上に感光性組成物皮膜を形成する場合には、顔料を含有する感光性組成物を基板上に塗布する工程が含まれ、その塗布方法としてはスピンコート、スリットコート、ワイヤーバーコート、ロールコート、ディップコート、スプレーコートあるいはこれらの組み合わせなどの方法が知られている。また、インクジェット法は、主に顔料を含有する熱硬化性組成物を用いたインクジェットノズルによりパターニングを行う方法であり、マスクレスによるRGB同時印刷での工程短縮およびガラス基板の大型化に対するコストダウンが可能となるためカラーフィルター製造時の大型化に対して好適な方法である。顔料分散法およびインクジェット法でのカラーフィルター製造では顔料を含有する硬化性組成物中の顔料分散性を保持する事が重要となる。
【0005】
顔料を含有する感光性組成物を基板上にスピンコートする場合、感光性組成物コート後の基板の周辺部、縁辺部の感光性組成物膜の盛り上がり部分や裏面に付着した感光性組成物を除去するために、通常、感光性組成物除去液によるリンス処理、いわゆるエッジリンス、バックリンスが行われる。さらに、スピンコーティングでは、カップに飛散した感光性組成物を除去する工程、いわゆるカップリンスにおいても、感光性組成物除去液による感光性組成物除去処理が行われる。
【0006】
また、カラーフィルター製造における感光性組成物塗布工程としては、前述のスピンコート以外にもスリットコート法による感光性組成物塗布やワイヤーバーを用いた塗布、ロールコーターによる塗布が行われるが、これらの方法においても感光性組成物塗布後にそれぞれスリットノズルやワイヤーバー等、塗布装置の一部または全部に付着した不要な感光性組成物の除去が実施される。
【0007】
さらに、その他にも、感光性組成物を移送するための装置配管など、塗布装置の部材に付着した感光性組成物の除去が実施される場合がある。また、インクジェット法では、インクジェットノズル内部での顔料の凝集や表面残留は詰まりなどの原因となるため、インクジェットノズル内部や表面に付着した硬化性組成物の除去が必要となる。通常、このような硬化性組成物の除去には除去液を用いた洗浄処理が行われる。
【0008】
このような基板および装置に付着した硬化性組成物のいずれの除去工程においても、硬化性組成物成分の残留が問題となる。カラーフィルターの製造に用いられる顔料を含有する硬化性組成物、すなわちRGB形成に用いられるカラーレジストや、樹脂ブラックマトリックス形成に用いられるブラックレジストは、顔料成分が基板や装置表面へ残留しやすく、これらが僅かであっても異物の原因となってカラーフィルター製造の不良率増加、あるいはカラーフィルターの色純度変化やコントラスト低下をきたす可能性がある。近年のカラーディスプレイに用いられるカラーフィルターには基板の大画面化、高精細化、および低コスト化の要求が高くなっている。フォトリソグラフィーによる大型装置の製造においては、大面積の基板へのスピンレス方式による感光性組成物塗布が主流となっており、基板に均一塗布を実施するために、スリットノズルによる顔料を含む感光性組成物の塗布が行われる。この塗布方法においては、繰返し塗布を実施するためにスリットノズル等の洗浄が実施される(例えば、特許文献1参照)。スリットノズルの洗浄には洗浄性と乾燥性が要求される。特に顔料を含む感光性組成物の塗布では、凝集した顔料の蓄積が問題となり、洗浄液には顔料の高い除去性と分散性維持が要求される。このような状況にあってカラーフィルターの性能、歩留まりに影響を及ぼす感光性組成物成分残留の回避はますます重要となってきている。
【0009】
従来、フォトリソグラフィーによる感光性組成物除去剤としては、グリコールエーテルやそのエステル、あるいはその混合物を含むものが一般的に用いられることが多い(例えば、特許文献2参照)。また、特許文献3および4にはグライム系グリコールエーテル類を含むレジスト除去用組成物が開示されている。また、特許文献5には露光、現像、エッチングを経た後、基板上に残留するレジストパターン除去における環状化合物、グリコール化合物を含むエッチングレジスト除去用組成物が開示されている。特許文献2〜5には顔料を含有するレジストの除去についての評価結果は記載されていない。これらを上記顔料を含有するカラーレジストの洗浄除去に応用した場合は、レジスト除去性が十分でなく、大量の除去液の使用が必要となったり、除去残が発生するという問題があった。
【0010】
また、顔料を含有する着色組成物の除去に、感光性組成物に使用されている溶剤成分または界面活性剤や分散剤などの感光性組成物に含有される成分を用いる方法もある(例えば、特許文献6参照)が、感光性組成物に含有される溶剤成分のみを洗浄剤として用いた場合は、顔料が沈降しやすく、十分な洗浄性が得られない。また、界面活性剤や分散剤等の、感光性組成物成分に含有される成分を洗浄液組成物中に含有させた場合は、その成分が蒸発残分として基板や装置部材上に残留しやすく、さらなる洗浄工程が必要となり、蒸発残分の残留を好まない基板の端面や裏面の感光性組成物の除去には実質上用いることができないという問題がある。なお、本出願人は先に脂環式ケトン類と、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類およびアルコール類から選ばれる少なくとも1種とを含む感光性組成物除去液を開示した(特許文献7)が、この感光性組成物除去液には改良の余地があった。
【0011】
【特許文献1】特開2004−113934号公報
【特許文献2】特公平4−49938号公報
【特許文献3】特開2003−201498号公報
【特許文献4】特開平11−174691号公報
【特許文献5】特開2007−188077号公報
【特許文献6】特開2000−273370号公報
【特許文献7】特開2007−52405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、顔料を含有する硬化性組成物の除去性能に優れた硬化性組成物除去液を提供することにある。
【0013】
特に、本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、イメージセンサ等の製造における基板上に硬化性組成物皮膜を形成する工程において、基板の周辺部、縁辺部または裏面部に残存する顔料を含有する硬化性組成物皮膜の除去、または製造装置部材や器具の表面に付着した顔料を含有する硬化性組成物の除去に有効な除去液を提供する。
【0014】
なお、この明細書においては、脂環式ケトンを化合物A、グリコールジアルキルエーテル類を化合物Bということがある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定の組成からなる除去液を用いることにより特許文献7の除去液と同等あるいはそれ以上の顔料含有硬化性組成物の洗浄除去性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、例えば、下記の事項からなる。
[1]顔料を含有する硬化性組成物の除去液であって、
(A)脂環式ケトンおよび
(B)下記一般式(1)で示されるグリコールジアルキルエーテル類
−O−[C2n−O]−R (1)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは正の整数である)
を含有し、化合物(A)の含有量が除去液全体に対して30質量%以上であることを特徴とする硬化性組成物除去液。
【0017】
[2]一般式(1)におけるnが2または3である[1]に記載の硬化性組成物除去液。
[3]化合物(A)と化合物(B)の合計に対して、化合物(A)の量が97〜30質量%であり、化合物(B)の量が3〜70質量%である[1]または[2]に記載の硬化性組成物除去液。
【0018】
[4]化合物(A)と化合物(B)の合計が除去液全体に対して70質量%以上である[1]〜[3]のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。
[5]前記脂環式ケトンが、シクロペンタノンおよびメチルシクロペンタノンから選ばれる少なくとも1種である[1]〜[4]のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。
【0019】
[6]前記一般式(1)で表されるグリコールジアルキルエーテル類が、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルおよびジプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[5]のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。
【0020】
[7]前記硬化性組成物がアクリル系硬化性組成物である[1]〜[6]のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。
[8]顔料を含有する硬化性組成物の除去に用いられる[1]〜[7]のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。
[9]前記硬化性組成物が感光性組成物である請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。
【発明の効果】
【0021】
本発明の硬化性組成物除去液は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、イメージセンサ等の製造における基板上に硬化性組成物皮膜を形成する工程において、基板周辺部、縁辺部または裏面部に残存する顔料を含有する硬化性組成物皮膜の除去、または製造装置部材や器具の表面に付着した顔料を含有する硬化性組成物の除去に効果的に用いることができる。本発明の硬化性組成物除去液は、乾燥性や顔料凝集抑制への要求が高いスピンレスコーターの洗浄工程に適しており、スリットノズル洗浄に特に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の硬化性組成物除去液の好ましい態様について説明する。
【0023】
本発明の硬化性組成物除去液は、顔料を含有する硬化性組成物の除去に用いられるものであり、脂環式ケトン(化合物A)およびグリコールジアルキルエーテル(化合物B)を含有する。ここで、硬化性組成物とは、光により硬化する感光性組成物の他熱により硬化する熱硬化性組成物も含む。
【0024】
本発明に用いられる脂環式ケトン(化合物A)は、硬化性組成物に含有される樹脂成分の溶解性が高いことから、硬化性組成物除去液の主成分として好適に使用される。具体例としては、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロペンタノンなどを挙げることができ、これらの少なくとも1種を好適に使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
これらの中でも、シクロヘキサノン、シクロペンタノンおよびメチルシクロペンタノンが硬化性組成物の溶解性の高さ、入手の容易さ、安全性から好ましく、特に顔料の分散除去性の点でシクロペンタノンおよびメチルシクロペンタノンが好ましい。
【0026】
本発明に用いられる下記一般式(1)で表されるグリコールジアルキルエーテル類(化合物B)
−O−[C2n−O]−R (1)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは正の整数である)
は、脂環式ケトン類と混合されることにより硬化性組成物に含有される樹脂成分の溶解性を高めることから、硬化性組成物除去液の主成分として好適に使用される。ここで、一般式(1)におけるオキシアルキレン繰返し単位数は2である。オキシアルキレン繰返し単位数が増加するに伴い粘性は増加し、洗浄性は低下する傾向があるため好ましくない。また、一般式(1)におけるnは2または3であることが好ましい。ここでnが3の場合は、CHCHCHとCHCH(CH)の両方を意味する。nが増加するにつれて粘性は増加し、洗浄性は低下する傾向があるため、nが4以上の場合は好ましくない。一方、nが1であるオキシアルキレン単位の一例としてビス(メトキシメチル)エーテルが挙げられるが、この場合には沸点が低く取り扱い性に難がある。R、Rのアルキル基の炭素数を増加させることで化合物(B)は沸点が高くなるが、nが1でR、Rのアルキル基の炭素数が2以上のものは入手に難がある。したがって、取り扱いおよび入手の容易さの点から、一般式(1)におけるnは2または3であり、かつ、R、Rのアルキル基の炭素数は、1〜8であるのが好ましく、1〜4であるのがさらに好ましい。
【0027】
グリコールジアルキルエーテル類の好ましい具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルブチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルブチルエーテルなどを挙げることができ、これらの少なくとも1種を使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
これらの中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルが感光性組成物の溶解性の高さ、入手の容易さから特に好ましい。
【0029】
本発明の硬化性組成物除去液に含有される化合物Aおよび化合物Bの比率は、化合物Aと化合物Bの合計に対して、化合物Aが97〜30質量%、化合物Bが3〜70質量%であるのが好ましい。さらに顔料除去性や乾燥状態を改善するためより好ましい比率は、化合物Aと化合物Bの合計に対して、化合物Aが97〜50質量%、化合物Bが3〜50質量%である。本発明の硬化性組成物除去液は、化合物AおよびBの2成分で構成される場合は両者の総和が100質量%となる。
【0030】
本発明の硬化性組成物除去液の化合物Aおよび化合物Bの含有量が上記の範囲であれば、硬化性組成物に含有される樹脂成分等の溶解性と顔料の分散除去性が良好である。
【0031】
本発明の硬化性組成物除去液には、上記化合物AおよびB以外の第3の成分を、洗浄特性、樹脂成分等溶解性、顔料の分散除去性に悪影響を及ぼさない、除去液全体に対して30質量%以下の範囲内の量で含有させることができる。かかる第3の成分としては、例えば、硬化性組成物除去液の粘度を下げ、硬化性組成物の除去速度を向上させるとともに、得られる除去液に適度な乾燥性を付与し、また除去後の乾燥時における乾燥ムラ等を防止する点で有効な成分を挙げることができる。
【0032】
具体的には、酢酸エステル類(酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸sec−アミル、酢酸ヘキシル、酢酸シクロヘキシル等)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステル類(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、3−アルコキシカルボン酸エステル類(3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等)、鎖状ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等)、エーテル類(ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等)を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができることができる。
【0033】
本発明の硬化性組成物除去液が化合物A、Bに加えて上記第3の成分を含有する場合これら3成分で100質量%となるように配合される。
【0034】
次に、本発明の除去液が適用される硬化性組成物について詳細に説明する。
【0035】
本発明の除去液が適用できる硬化性組成物は、通常、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、イメージセンサ等のカラーフィルター形成工程に用いられる、顔料を含有する有色硬化性組成物である。これらの有色硬化性組成物は、顔料を含有させることにより着色した感光性または熱硬化性樹脂組成物であり、その中でも一般的にアルカリで現像可能な皮膜形成物質、感光性物質、および顔料等を含有するものが特に好適である。
【0036】
有色硬化性組成物に含まれる皮膜形成物質としては、アクリル系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂などを挙げることができるが、本発明は特にアクリル系樹脂を皮膜形成物質として含有する有色硬化性組成物の除去に好適に用いることができる。皮膜形成物質として使用されるアクリル系樹脂は、アルカリ可溶性の分子量1,000〜500,000程度の高分子重合体あるいは共重合体であり、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体およびその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体が好適に用いられる。
【0037】
有色硬化性組成物に含有される感光性物質としては、アクリル系樹脂を皮膜形成物質とする場合、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、アミノアセトフェノン系化合物、増感色素と有機ホウ素塩系化合物との組み合わせ、チタノセン系化合物、オキサジアゾール系化合物等が挙げられる。
【0038】
有色硬化性組成物に含有され得る顔料としては、通常カラーフィルターの製造に用いられている顔料であれば問題なく使用することができ、黒色、黄色、赤色、青色、緑色等の有機もしくは無機顔料の単独あるいは混合物を任意に使用することができる。顔料の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛、鉄黒、酸化鉄系黒色顔料、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラック、C.I.ピグメントイエロー20、24、83、86、93、109、110、117、125、137、138、139、147、148、153、154、166、C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:4、15:6、22、27、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、10、36、37、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等を挙げることができる。
【0039】
有色硬化性組成物には、上記の皮膜形成物質、感光性物質および顔料のほかにさらにエチレン性不飽和単量体を配合することもできる。エチレン性不飽和単量体は、活性光線照射時に光重合開始剤から発生するラジカルで重合する化合物である。
【0040】
本発明の硬化性組成物除去液が適用される有色硬化性組成物には、上記の成分以外に有機溶剤、顔料分散剤、密着向上剤、レベリング剤、現像改良剤、酸化防止剤、熱重合禁止剤等が適宜配合されていてもよい。
【0041】
本発明の硬化性組成物除去液は、被洗浄物に塗布あるいは付着された状態の有色硬化性組成物の除去に適用することができ、特に感光前の有色感光性組成物の除去に好適に用いることができる。有色感光性組成物は、溶剤が含有されている状態であってもよいし、溶剤が揮発した後の状態であってもよい。
【0042】
有色硬化性組成物を除去する方法としては、有色硬化性組成物が塗布されまたは付着した被洗浄物に本発明の除去液をノズルなどから棒状、液滴状あるいはミスト状に吹きかけて除去する方法、本発明の除去液に有色硬化性組成物が付着した被洗浄物を浸漬する方法などが挙げられる。除去を効率的に行うために、超音波照射や、ブラシ等による物理的洗浄を併用することも可能である。
【0043】
本発明の硬化性組成物除去液は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、イメージセンサ等に用いられるカラーフィルター製造の有色硬化性組成物塗布工程において、基板の周辺部、縁辺部、または裏面部に付着した不要の未硬化の有色硬化性組成物の除去、または塗布装置の一部または全部に付着した不要の未硬化の有色硬化性組成物の除去に好適に用いることができる。
【0044】
本発明の硬化性組成物除去液は、基板上にスピンコート法で有色硬化性組成物を塗布する際の、基板周辺部、縁辺部、あるいは裏面部の未硬化の有色硬化性組成物の除去、いわゆる、エッジリンス、バックリンスのリンス剤として、またスピンコート時にカップに飛散した有色硬化性組成物を洗浄除去する、いわゆるカップリンスにも好適に使用可能である。
【0045】
スピンコート法以外に基板上に有色硬化性組成物を塗布する方法としてスリットコート法やワイヤーバーコート法、あるいはロールコート法等が知られているが、スリットノズルやワイヤーバー、印刷版など、塗布装置の部材や器具の表面に付着した未硬化の有色硬化性組成物を除去する際にも、本発明の硬化性組成物除去液は好適に使用される。
【0046】
また、本発明の別の態様は、上記硬化性組成物除去液を用いて上記方法により未硬化の硬化性組成物が除去された基板、あるいは液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイおよびイメージセンサ等の製造用の装置、およびこの装置によって得られたカラーフィルターである。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、もちろん本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0048】
調製例1 アクリル系共重合体の調製
滴下漏斗、温度計、冷却管、撹拌機を付した4つ口フラスコにメタクリル酸(MAA)12.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA)14.0質量部、メタクリル酸n−ブチル(BMA)43.0質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEMA)6.0質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)225.0質量部を仕込み、1時間4つ口フラスコ内を窒素置換した。さらに、オイルバスで90℃まで加温した後、MA12.0質量部、MMA14.0質量部、BMA43.0質量部、HEMA6.0質量部、PGMEA225.0質量部、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3.2質量部の混合液を1時間かけて滴下した。3時間重合を行った後、AIBN1.0質量部とPGMEA15.0質量部の混合液を加え、さらに100℃に昇温して1.5時間重合を行った後放冷した。このようにして得られたアクリル系共重合体の固形分濃度は22.1質量%、JIS K 2501−2003に準じて測定した酸価は92mgKOH/g、GPCにより測定したポリスチレン換算の質量平均分子量は22,000であった。
【0049】
調製例2 感光性着色組成物A:緑色感光性着色組成物の調製
調製例1で得られたアクリル系共重合体30.0質量部(固形分6.6質量部)、PGMEA5.0質量部、フローレンDOPA−33(商標:共栄社化学株式会社製 分散剤 固形分濃度30質量%)3.3質量部、C.I.ピグメントグリーン36 6.6質量部を混合後、1晩放置した。さらに、1時間撹拌した後、3本ロールミル(株式会社小平製作所製 型式RIII−1RM−2)に4回通した。得られた緑色インキにPGMEAを加えて濃度調整することにより、固形分濃度18.0質量%の緑色着色組成物を得た。
【0050】
このようにして得られた緑色着色組成物100質量部にさらにジペンタエルスリトールヘキサアクリレート4.4質量部、4,4′−ビス(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノン0.7質量部、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール2.3質量部、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート3.8質量部およびPGMEA42質量部を加えて十分攪拌し、感光性着色組成物を得た。
【0051】
実施例1
調製例2で調製した感光性着色組成物をガラス板上(28mm×76mm)に1滴滴下し、室温にて24時間乾燥させた。
【0052】
これをシクロヘキサノン97g、ジエチレングリコールジメチルエーテル3gを混合した除去液中に3分間浸漬して静置し、表面に塗布された感光性着色組成物の洗浄除去を行った。感光性着色組成物の溶解状況を目視観察により以下の4段階で評価した。
◎ … 完全に除去されている
○ … 一部分に顔料残が見られた
△ … 部分的に溶解している
× … ほとんど溶解していない
【0053】
また、上記除去液100gに調製例2で調製した感光性着色組成物1gを滴下し、室温にて24時間放置した後、目視観察することにより、除去液に対する顔料分散性を以下の2段階で評価した。
○ … 除去液中に濁りおよび顔料の沈降は見られない
× … 除去液中に濁りおよび顔料の沈降が見られた
【0054】
実施例2〜8、比較例1〜10
下記の表1および表2に示す実施例2〜8および比較例1〜10の各組成の除去液を用いて、実施例1と同様に感光性着色組成物の洗浄除去および顔料分散性評価を実施した。実施例2〜8の結果を実施例1の結果と合わせて表1に示し、また比較例1〜10の結果を表2に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1および表2中の記号は、下記を示す。
CYP:シクロペンタノン
CYA:シクロヘキサノン
DDM:ジエチレングリコールジメチルエーテル
DDE:ジエチレングリコールジエチルエーテル
DPD:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
BA:酢酸ブチル
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0058】
実施例1〜8の硬化性組成物除去液は、上記洗浄性評価において、いずれも比較例1〜9の除去液より優れ、特許文献7の除去液と同等以上の良好な顔料含有硬化性組成物の洗浄除去性を有することがわかった。硬化性組成物除去液による顔料含有硬化性組成物の洗浄性は、硬化性組成物除去液と顔料含有硬化性組成物とが接触した際に顔料の凝集が発生し難いものがより好ましい。本発明では特定のグリコールジアルキルエーテル類を必須成分として使用しているのに対して、特許文献5ではグリコールモノアルキルエーテル類を使用している。これは、比較例10にプロピレングリコールモノメチルエーテルを使用した場合を一例として示した通り、顔料と溶剤との相性(顔料分散性)を検討した結果グリコールジアルキルエーテル類の方がグリコールモノアルキルエーテル類よりも優れていることを見出したことに基因する。その理由は定かではないが、グリコールモノアルキルエーテル類は水酸基を有するためグリコールジアルキルエーテル類に比べて極性が高く、その分顔料の凝集が起り易くなったものと推定される。上記の通り本発明の硬化性組成物除去液の方が特許文献7の感光性組成物除去液よりも顔料分散性が優れていることから、スリットノズル等より顔料の凝集を嫌う顔料分散性への要求が強い装置の洗浄やより微細なパターン形成には本発明の硬化性組成物除去液が適している。
【0059】
本明細書において顔料を含有する感光性組成物の除去について主として説明してきたが、本発明の除去液はインクジェット法に用いられる顔料を含有する熱硬化性インク等の未硬化の非感光樹脂組成物の除去にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、イメージセンサの製造における基板上に硬化性組成物皮膜を形成する工程において、基板周辺部、縁辺部または裏面部に残存する顔料を含有する硬化性組成物皮膜の除去、または製造装置部材や器具の表面に付着した顔料を含有する硬化性組成物の除去に有用な硬化性組成物除去液を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を含有する硬化性組成物の除去液であって、
(A)脂環式ケトンおよび
(B)下記一般式(1)で示されるグリコールジアルキルエーテル類
−O−[C2n−O]−R (1)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは正の整数である)
を含有し、化合物(A)の含有量が除去液全体に対して30質量%以上であることを特徴とする硬化性組成物除去液。
【請求項2】
一般式(1)におけるnが2または3である請求項1に記載の硬化性組成物除去液。
【請求項3】
化合物(A)と化合物(B)の合計に対して、化合物(A)の量が97〜30質量%であり、化合物(B)の量が3〜70質量%である請求項1または2に記載の硬化性組成物除去液。
【請求項4】
化合物(A)と化合物(B)の合計が除去液全体に対して70質量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。
【請求項5】
前記脂環式ケトンが、シクロペンタノンおよびメチルシクロペンタノンから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。
【請求項6】
前記一般式(1)で表されるグリコールジアルキルエーテル類が、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルおよびジプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。
【請求項7】
前記硬化性組成物がアクリル系硬化性組成物である請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。
【請求項8】
顔料を含有する硬化性組成物の除去に用いられる請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。
【請求項9】
前記硬化性組成物が感光性組成物である請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物除去液。

【公開番号】特開2010−70724(P2010−70724A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242841(P2008−242841)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】