説明

硬化性組成物

【課題】 硬化したエポキシ樹脂が、低吸水率、優れた誘電特性を保持しながら耐熱性、寸法安定性等の物性に優れるエポキシ樹脂系硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 分子内に下記一般式(1)で示される複素環基(a)を有する化合物(A)、分子内にエポキシ基を有する化合物(B)、活性エステル化合物(C)からなることを特徴とする硬化性組成物及びその硬化物。
一般式
【化1】


[式(1)中、X1、Y1及びZ1は、それぞれ独立に酸素又は硫黄原子であり、かつ少なくとも1つが硫黄原子;R1は炭素数2〜10の炭化水素基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、優れた誘電特性と耐熱性を有する硬化物となるエポキシ樹脂系硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂硬化物は、その機械的強度、電気絶縁性、耐薬品性に優れるためにプリント基板、半導体素子用封止材等の電子部品に広く使用されている。エポキシ樹脂の硬化には、それ自身の開環重合によるものと、硬化剤による硬化が知られている。硬化剤としては、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤等が知られている。
フェノール系硬化剤の内、活性エステル硬化剤を用いると、吸水率が比較的小さく誘電特性に優れる等の利点を有するエポキシ樹脂硬化物が得られることが知られている(例えば、特許文献1〜5)。
【特許文献1】特開平11−349666号公報
【特許文献2】特公平 5−80485 号公報
【特許文献3】特公平 4−22162 号公報
【特許文献4】特公平 4−8444 号公報
【特許文献5】特公平 7−45533 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の活性エステル硬化剤を硬化剤として用いたエポキシ樹脂系硬化性組成物は、硬化物の諸物性(耐熱性、寸法安定性)等において未だ不十分で用途が限定されており、諸物性に優れる硬化性組成物が望まれていた。
本発明者らは、諸物性に優れた硬化物が得られるエポキシ樹脂系硬化性組成物を見いだすことを目的とする。
【0004】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、分子内に下記一般式(1)で示される複素環基(a)を有する化
合物(A)、分子内にエポキシ基を有する化合物(B)、活性エステル化合物(C)からなることを特徴とする硬化性組成物;その硬化物である。
一般式
【0005】
【化1】

【0006】
[式(1)中、X1、Y1及びZ1は、それぞれ独立に酸素又は硫黄原子であり、かつ少なくとも1つが硫黄原子;R1は炭素数2〜10の炭化水素基である。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化性組成物を用いて硬化した硬化物は、低吸水率、優れた誘電特性を保持しながら特に耐熱性、寸法安定性等の物性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の組成物において、複素環基(a)は前記一般式(1)で示される。式中、X1
、Y1及びZ1は、それぞれ独立に酸素又は硫黄原子であり、かつX1、Y1及びZ1のうち少なくとも1つは硫黄原子を表す。
これらのうち反応性の観点から好ましいのはX1が硫黄原子(S)で、Y1、Z1の一方が硫黄原子(S)で他方が酸素原子(O)の場合である。
式中、R1は炭素数(以下、Cと略記)2〜10の炭化水素基であり、下記一般式
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、pは1〜9の整数である。]で示される炭化水素基である。
【0011】
(a)としては下記の一般式(2)で示されるものが反応性の観点から好ましい。
【化3】

[式(2)中、Y1、Z1の一方が硫黄原子で他方が酸素原子である。]
【0012】
上記炭化水素基としては、例えば>CHCH2−、>CHCH2CH2−、>CHCH2CH2CH2−、>CHCH2CH2CH2CH2CH2−等が挙げられる。
これらのうち硬化物の機械的物性の観点から好ましいのは、>CHCH2−、>CHCH2CH2−である。
【0013】
該複素環基(a)としては、具体的には表1に記載したものが挙げられる。
【0014】
【表1】

【0015】
本発明の硬化性組成物中の化合物(A)は、例えば、分子内に環状エーテル基(b)を有する化合物と二硫化炭素を、触媒存在下、必要により溶剤中で反応させることにより得られる。また、分子内に環状チオエーテル基を有する化合物と二酸化炭素を反応させることによっても同様に得ることができる。
該(b)としては、環内に酸素原子を1個有するものならば特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられ、反応性の観点から好ましいのはエポキシ基である。
【0016】
分子内にエポキシ基を有する化合物としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有していれば特に限定されず、用途、目的に応じて適宜選択することができる。作業性の観点から好ましくは分子中にエポキシ基を2〜10個有するものである。エポキシ化合物のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、好ましくは65〜1,000であり、より好ましくは90〜500である。エポキシ当量が1,000以下であると、硬化物の耐水性、耐薬品性、機械的強度等の物性が良好であり、一方、エポキシ当量が65以上であると硬化物の靱性が良好である。
該化合物の例としては、下記[1]から[6]が挙げられる。これらは、1種又は2種以上併用してもよい。
【0017】
[1]グリシジルエーテル
(i)2価フェノールのジグリシジルエーテル
2価フェノール(C6〜30)のジグリシジルエーテル、例えば、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えばテトラクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル等)、カテキンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フロオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応から得られるジグリシジルエーテル等;
【0018】
(ii)多価フェノール(3価〜6価又はそれ以上)のポリグリシジルエーテル
多価フェノール〔C6〜重量平均分子量[以下、Mwと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]5,000の3価〜6価又はそれ以上〕のポリグリシジルエーテル、例えば、ピロガロールトリグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフチルクレゾールトリグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、ジナフチルトリオールトリグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)フェニルグリシジルエーテル、ビス(ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、フェノール又はクレゾールノボラック樹脂(Mw200〜5,000)のグリシジルエーテル、リモネンフェノールノボラック樹脂(Mw400〜5,000)のグリシジルエーテル、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒド、又はホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール(Mw400〜5,000)のポリグリシジルエーテル、及びレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるMw400〜5,000のポリフェノールのポリグリシジルエーテル等;
【0019】
(iii)脂肪族2価アルコールもしくは高分子ジオールのジグリシジルエーテル
脂肪族2価アルコール(C2〜100)もしくは高分子ジオール(Mw150〜5,000)のジグリシジルエーテル、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール(Mw150〜4,000)ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール(Mw180〜5,000)ジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコール(Mw200〜5,000)ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等;
【0020】
(iv)3価〜6価又はそれ以上の脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル
多価アルコール(C3〜Mw10,000の3価〜6価又はそれ以上)のグリシジルエーテル、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、ポリ(n=2〜5)グリセロールポリグリシジルエーテル等;
【0021】
(v)エポキシ変性シリコーン
2個以上の水酸基を含有するMw200〜2,000のポリジアルキルシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン等)のグリシジルエーテル、例えば、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−ポリ(n=2〜20)テトラメチルジシロキサン等。
【0022】
[2]グリシジルエステル
芳香族カルボン酸(C6〜20又はそれ以上で、2価〜6価又はそれ以上)のグリシジルエステル、及び脂肪族もしくは脂環式カルボン酸(C6〜20又はそれ以上で、2価〜6価又はそれ以上)のグリシジルエステルが挙げられる。
(i)芳香族カルボン酸、例えばフタル酸類のグリシジルエステル(フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル等)、トリメリット酸トリグリシジルエステル;
(ii)脂肪族もしくは脂環式カルボン酸のグリシジルエステルとしては、前記芳香族カルボン酸のグリシジルエステルの芳香核水添加物、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体(重合度は例えば2〜10)等。
【0023】
[3]グリシジルアミン
芳香族アミン(C6〜20又はそれ以上で、2〜10又はそれ以上の活性水素原子をもつもの)のグリシジルアミン及び脂肪族、脂環式もしくは複素環式アミン(C5〜20又はそれ以上で、2〜10又はそれ以上の活性水素原子をもつもの)のグリシジルアミンが挙げられる。
(i)芳香族アミンのグリシジルアミンとしては、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジエチルジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジルアミノフェノ−ル等;
【0024】
(ii)脂肪族アミンのグリシジルアミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン等;
(iii)脂環式アミンのグリシジルアミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリ
シジルキシリレンジアミンの水添化合物、N,N,N’,N’−テトラグリシジルシクロヘキサンジアミン等;
(iv)複素環式アミンのグリシジルアミンとしてはトリスグリシジルメラミン等。
【0025】
[4]鎖状脂肪族エポキサイド
C6〜50又はそれ以上で2価〜6価又はそれ以上の鎖状脂肪族エポキサイド、例えばエポキシ化(ポリ)アルカジエン[例えば、エポキシ当量130〜1,000のエポキシ化ブタジエン(分子量260〜Mw2,500)]、エポキシ化油脂[エポキシ化大豆油(分子量130〜Mw2,500)]等が挙げられる。
[5]脂環式エポキサイド
C6〜Mw2,500、エポキシ基の数2〜4又はそれ以上の脂環式エポキサイド、例えば、ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、及びビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン等が挙げられる。また、前記(1)(i)、(ii)のフェノールのエポキシ化合物の核水添化物も含む。
【0026】
[6]構造中にウレタン結合を持つウレタン変性エポキシ樹脂
ポリエーテルウレタンオリゴマー(Mw200〜2500、例えばポリエーテルジオールとジイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー)とグリシドールの反応物等が挙げられる。
【0027】
[1]〜[6]以外のものでも、チオール等の活性水素と反応可能なグリシジル基を2個以上もつポリエポキサイドであれば使用できる。
これらの内で好ましいのは[1]グリシジルエーテル、[3]グリシジルアミンであり、特に好ましいものはフェノールのポリグリシジルエーテル[(i)および(ii)]である。
【0028】
該(b)として上記エポキシ基を有する化合物を使用して前記の反応を行って得られる該複素環基(a)は、下記一般式(3)で示される。
一般式
【0029】
【化4】

【0030】
[式(3)中、Y1、Z1は一方が硫黄原子で他方が酸素原子である。]
【0031】
化合物(A)の製造方法は特に限定されないが、例えば、分子内に前記環状エーテル基(b)を有する化合物に対して、該(b)当たり0.1〜10倍当量、好ましくは0.5〜5倍当量の二硫化炭素を、触媒存在下、必要により溶剤中で反応させることにより得られる。
触媒は、反応性の観点からアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が好ましく、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、沃化リチウム、塩化カリウム、臭化カルシウム等が挙げられ、特に好ましくは臭化リチウムである。
触媒の量は、該(b)に対し、0.001〜1.0倍当量である。好ましくは0.01〜0.1倍当量である。
必要により添加する溶剤としては、反応を阻害せず、原料および生成物を溶解するものなら特に制限はなく、通常、非プロトン性溶剤が挙げられる。例えば、エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルセロソルブ、ジオキソラン、トリオキサン、ジブチルセロソルブ、ジエチルカービトール、ジブチルカービトール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等)、その他極性溶剤(アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等)等が挙げられ、溶解性の観点から好ましいのはテトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチルである。
反応温度は、反応収率の観点から好ましくは0〜100℃、より好ましくは、20〜70℃である。
【0032】
該化合物(A)のMwは溶解性の観点から好ましくは120〜12,000であり、さらに好ましくは200〜8,000である。
複素環基(a)の当量は好ましくは60〜1,200であり、さらに好ましくは120〜1,000、とくに好ましくは200〜800である。
【0033】
該化合物(A)としては、具体的には表2に記載したもの、すなわち、1,6−ビス(1,3−オキサチオラン−2−チオン)メチルオキシナフタレン、1,6−ビス(1,3−オキサチオラン−2−チオン)メチルオキシ−アルキル置換ビフェニレン、ポリ(1,3−オキサチオラン−2−チオン)メチルオキシフェノールノボラック樹脂およびポリ(1,3−オキサチオラン−2−チオン)メチルオキシクレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上併用してもよい。
【0034】
【表2】

【0035】
分子内にエポキシ基を有する化合物(B)としては、上記(b)のところで挙げられた分子内にエポキシ基を有する化合物と同じものが挙げられ、好ましいものも同じでよい。
【0036】
活性エステル化合物(C)としては、例えば、特開平6−293823号公報に記載のフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等が挙げられる。
【0037】
該(C)の具体例としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、1,2,3,4,−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族系多価カルボン酸(好ましくはC3〜15、カルボキシル基数2〜5)、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸等の芳香族系カルボン酸(好ましくはC8〜15、カルボキシル基数2〜5)、及びこれらに対応する多価チオカルボン酸のフェニルエステル、チオフェニルエステル、クロロフェニルエステル、ジクロロフェニルエステル、ニトロフェニルエステル、ジニトロフェニルエステル、メチルフェニルエステル、メトキシフェニルエステル、フルオロフェニルエステル、ブロモフェニルエステル、チオベンゾチアゾールエステル、チオベンゾオキサゾールエステル、チオベンゾイミダゾールエステル、ベンゾトリアゾールエステル、ナフチルエステル等の芳香族又は複素環ヒドロキシ化合物のエステル;多価フェノール(ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール等)、および多価チオール(1,4−ブタンジチオール、1,8−オクタジエンジチオール等)の安息香酸エステル、ニトロ安息香酸エステル、クロロ安息香酸エステル、チオ安息香酸エステル、クロロ酢酸エステル、フルオロ酢酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル等の芳香族又は脂肪族カルボン酸及びこれらに対応するチオカルボン酸のエステル;等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上併用してもよい。
【0038】
これらのうち、好ましいものは多価カルボン酸や多価チオカルボン酸のエステル化合物、多価フェノールや多価チオールのカルボン酸やチオカルボン酸のエステル化合物である。
【0039】
本発明の組成物において、前記化合物(B)と前記化合物(C)の比率は、(B)中のエポキシ基1当量に対して、好ましくは(C)が0.7〜1.3当量であり、さらに好ましくは0.9〜1.1当量である。この比率が0.7以上、あるいは1.3以下であると、硬化性の低下がなく、硬化物の諸物性(耐熱性、寸法安定性等)が良好である。
【0040】
該(B)と前記化合物(A)の比率は、(B)中のエポキシ基1当量に対して、好ましくは(A)中の複素環基(a)が0.01〜1.0当量であり、さらに好ましくは0.05〜0.8当量である。この比率が0.01以上、あるいは1.0以下では硬化性の低下がなく、硬化物の諸物性(耐熱性、寸法安定性等)の低下もなく好ましい。
該(A)の添加量は、硬化性組成物100重量部に対して好ましくは0.1〜80重量部であり、さらに好ましくは0.5〜70重量部、とくに好ましくは1〜50重量部である。添加量が0.1重量部以上では、硬化物の諸物性(耐熱性、寸法安定性等)の向上効果が十分であり好ましい。
【0041】
本発明の硬化性組成物には、硬化物の諸物性(耐熱性、寸法安定性等)をさらに向上させる目的で、必要により酸無水物(D)をさらに含有させることができる。
該(D)としては、エポキシ樹脂用の硬化剤として一般的に使用されている酸無水物が使用できる。
【0042】
該(D)の具体例としては、C4〜C20、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキル(C1〜5)テトラヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、クロレンド酸無水物、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上併用してもよい。
【0043】
該(D)を含有させる場合、その添加量は特に限定されないが、好ましくは前記(C)のエステル基と(D)の酸無水物基との当量比が1:10〜10:1、好ましくは1:2〜2:1である。
【0044】
本発明の硬化性組成物には、硬化物の諸物性(耐熱性、寸法安定性等)をさらに向上させる目的で、必要により硬化促進剤(E)をさらに含有させることができる。
該(E)としては、公知のエポキシ開環触媒が使用できる。該(E)の具体例としては、例えば、イミダゾール系触媒(イミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール及び1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等)、第3級アミン系触媒〔ベンジルメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等〕、及びオニウム塩系触媒(三新化学工業社製、サンエイドSIシリーズ等)等が挙げられる。
【0045】
該(E)を含有させる場合、その添加量は特に限定されないが、好ましくは、(A)+(B)+(C)の合計を100重量部としたとき、0.5〜30重量部である。
【0046】
また、さらに、線膨張係数を下げる目的で必要に応じて、フィラー(F)を添加してもよい。フィラーとしては、公知の有機フィラー及び無機フィラー等が使用できる。
有機フィラーとしては、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダー及びポリエーテルスルフォンパウダー等が使用できる。有機フィラーのガラス転移温度は、170〜300℃が好ましく、より好ましくは190〜280℃、特に好ましくは210〜260℃である。すなわち、有機フィラーのガラス転移温度は、硬化物の耐熱性の観点から170℃以上が好ましく、より好ましくは190℃以上、特に好ましくは210℃以上であり、また硬化物の物性の観点から300℃以下が好ましく、より好ましくは280℃以下、特に好ましくは260℃以下である。
【0047】
無機フィラーとしては、アルミナ、ジルコニア、炭化タングステン、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド;シリカ(微粉ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ藻土、コロイダルシリカ等)、炭酸塩[沈降性(活性、乾式、重質または軽質)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等]、ケイ酸塩(微粉ケイ酸マグネシウム、タルク、ソープストーン、ステアライト、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ等)、カーボンブラック類(チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等)、白亜、寒水クレー、胡粉、チョーク、クレー類(カオリン質クレー、セリサイト質クレー、バイロフィライト質クレー、モンモリロナイト質クレー、ベントナイト、酸性白土等)、硫酸アルミニウム(硫酸バンド、硫酸アルミナ、サチンホワイト等)、硫酸バリウム(バライト粉、沈降性硫酸バリウム、リトポン等)、石膏(無水、半水等)、鉛白、雲母粉、亜鉛華、酸化チタン、活性フッ化カルシウム、ゼオライト、セメント、石灰、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、アスベスト、ガラスファイバー、ロックファイバー、マイクロバルーン等が挙げられる。これらは、2種以上併用してよく、また2種以上が複合化されたものでもよい。これらの内好ましいものは、形状が板状以外のアルミナ、シリカ、炭酸塩である。
【0048】
無機フィラーの融点は、硬化物の機械的物性の観点から300〜2,000℃が好ましく、より好ましくは400〜1,900℃、特に好ましくは500〜1,800℃である。すなわち、無機フィラーの融点は、硬化物の機械的物性の観点から300℃以上が好ましく、より好ましくは400℃以上、特に好ましくは500℃以上であり、また硬化物の機械的物性の観点から2,000℃以下が好ましく、より好ましくは1,900℃以下、特に好ましくは1,800℃以下である。
これらのフィラーの体積平均粒径は、0.01〜50μmが好ましく、より好ましくは0.02〜30μm、特に好ましくは0.03〜10μmである。すなわち、フィラーの体積平均粒径は、作業性の観点から0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.02μm以上、特に好ましくは0.03μm以上であり、また硬化物の機械的物性の観点から50μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
【0049】
これらのフィラーのうち、電気特性(絶縁性及び誘電率等)、耐熱性及び耐薬品性等の観点から、フッ素樹脂パウダー、ポリエーテルスルフォンパウダー及びシリカが好ましく、より好ましくはシリカである。
フィラーの含有量は、特に制限は無いが、硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、10〜75%が好ましく、より好ましくは15〜70%、特に好ましくは20〜60%である。すなわち、フィラーの含有量は、硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、硬化物の機械的物性の観点から10%以上が好ましく、より好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上であり、また混練性の観点から75%以下が好ましく、より好ましくは70%以下、特に好ましくは60%以下である。
【0050】
本発明の硬化性組成物には、さらに必要に応じて前記(A)〜(F)以外の添加剤(G)、例えば(G1)シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の接着性付与剤、(G2)ヒンダードアミン、硫黄含有化合物等の酸化防止剤、(G3)ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル、金属錯塩等の紫外線吸収剤、(G4)金属石けん、重金属(例えば亜鉛、錫、鉛、カドミウム等)の無機及び有機塩、有機錫化合物等の安定剤、(G5)リン酸エステル、ひまし油、流動パラフィン、アルキル多環芳香族炭化水素等の可塑剤、(G6)パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、密ロウ、鯨ロウ、低分子量(Mw1,000〜10,000)ポリオレフィン等のワックス、(G7)ベンジルアルコール、タール、ビチューメン等の非反応性希釈剤、(G8)エステル(酢酸エチル等)、芳香族炭化水素(トルエン等)、アルコール(メタノール等)、エーテル(ジエチルエーテル等)、ケトン(メチルエチルケトン等)等の溶剤、(G9)発泡剤、(G10)消泡剤、(G11)脱水剤、(G12)帯電防止剤、(G13)抗菌剤、(G14)防かび剤、(G15)香料、(G16)難燃剤、(G17)分散剤等を添加することができる。これらは2種以上を併用することも可能である。
これらの(G)の合計添加量は特に限定されないが、好ましくは(A)、(B)、(C)の合計を100重量部としたとき、0.01〜60重量部である。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法としては、用いられる材料を混合、分散できる方法であれば特に限定されず、例えば、以下の方法等が例示される。
(i)ガラスビーカー、缶、プラスチックカップ等の適当な容器中にて、撹拌棒、へら等に
より手で混練する。
(ii)ダブルヘリカルリボン翼、ゲート翼等により混練する。
(iii)プラネタリーミキサー、ビーズミル、3本ロールにより混練する。
(iv)エクストルーダー型混練押し出し機により混練する。
(A)、(B)、(C)および必要により添加されるその他の添加剤の混合順序は特に限定されず、一括混合でも、(A)、(B)および(C)を混合した後にその他の添加剤を混合する方法のいずれでもよい。
【0052】
このようにして得られた本発明の硬化性樹脂組成物の粘度は使用形態によって異なり、液状物として使用する場合には、作業性の観点から好ましくは25℃で10,000mPa・s以下であり、より好ましくは5,000mPa・s以下、特に好ましくは3,000mPa・sである。下限は成形性の観点から好ましくは5mPa・sであり、より好ましくは20mPa・sであり、特に好ましくは50mPa・sである。
シート状にして使用するに供する場合には、作業性の観点から25℃における複素粘度が10,000〜100,000Pa・sで、かつ80℃における複素粘度が100〜5,000Pa・sであるのが好ましい。
【0053】
複素粘度(剪断弾性率から計算される粘度)[単位:Pa・s]は、粘弾性測定装置(例えば、レオメトリックサイエンティフック社製のARES等)を用いて以下の条件で測定した値である。
測定治具:直径25mmアルミ製円盤(例えば、レオメトリックサイエンティフィック社製:ARES−DP25A)
ギャップ間距離:0.500mm
測定周波数:1.5915Hz
昇温速度:0℃で20分保持後、0℃から150℃まで10℃/minで昇温する。
【0054】
硬化性樹脂組成物の硬化条件については特に制限はないが、硬化物の機械的物性の観点から100〜300℃の範囲で硬化させることが好ましく、125〜250℃の範囲で硬化させることがより好ましい。
【0055】
硬化物の物性は、硬化物の耐水性の観点から吸水率は1.5%以下、誘電率(周波数:1GHz)は4.0以下、誘電正接(周波数:1GHz)は0.025以下が好ましく、より好ましくは吸水率1.0%以下、誘電率3.8以下、誘電正接0.020以下である。
また、線膨張係数は硬化物の寸法安定性の観点から好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、ガラス転移温度は硬化物の耐熱性の観点から好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。硬化物の上記物性は後述の方法で測定される。
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、実施例中「部」は「重量部」を示す。なお、実施例中の物性値の測定方法を以下に示す。
【0057】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度は、IPC−TM−650 2.4.24.2(7/95)に準拠して測定される。
<線膨張係数>
線膨張係数は、IPC−TM−650 2.4.41.3(7/95)に準拠して測定される。但し、プレスキャンは無し、25℃におけるサンプルの大きさは(長さ)15mm×(巾)2mm×(厚さ)0.040mm、荷重は49mN(引っ張り)、温度は30℃から230℃まで10℃/minで昇温、また線膨張係数は下記の式から算出される。

線膨張係数=[(L2)−(L1)]×106/[120×(L1)]

上記式中、(L1):30℃におけるサンプルの長さ、(L2):150℃におけるサンプルの長さである。
【0058】
<吸水率>
吸水率は煮沸吸水率を意味し、該煮沸吸水率はJIS−K−7209に準拠して測定する。
<誘電率・誘電正接>
誘電率・誘電正接は、JIS−C−6481に準拠して測定する。
【0059】
製造例1
反応容器に1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル(大日本インキ化学工業社製「エピクロンHP−4032」、エポキシ当量150)150部(エポキシ基として1.0当量)、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)1,000部、臭化リチウム5部を仕込んで撹拌し、窒素気流下、二硫化炭素80部(1.1モル)を40℃以下に保ちながら滴下した後、40℃で6時間熟成した。減圧下でTHF及び過剰の二硫化炭素を留去した後、残渣を酢酸エチル500部に溶解し、水200部で2回洗浄後、飽和食塩水200部で1回洗浄した。酢酸エチル相を無水硫酸マグネシウム20部で乾燥後、ろ過により無水硫酸マグネシウムを除き、酢酸エチルを減圧下留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、1,6−ビス(1,3−オキサチオラン−2−チオン)メチルオキシナフタレン(A−1)148部(複素環基として0.7当量)を得た。
(A−1)の分析値
1H−NMR(CDCl3、ppm) 4.10〜4.38(m、8H)、5.40〜5.50(m、2H)、6.69(dd、1H)、6.96(d、1H)、7.20(dd、1H)、7.30〜7.48(m、2H)、7.72(dd、1H)
上記において、mは三以上の多重ピーク、dは二重ピーク、ddは2つの二重ピーク、Hの前の数値は積分比を、それぞれ表す。
【0060】
実施例1〜4、比較例1
25℃雰囲気下で、表3に示した配合量で各成分を混合撹拌して本発明の硬化性組成物及び比較の硬化性組成物を得た。硬化は循風乾燥機(190℃×180分)にて行った。物性評価の結果を表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
なお、表3中の略号は以下のとおりである。
エピクロンHP−4032:大日本インキ化学工業社製1,6−ナフタレンジグリシジ
ルエーテル(エポキシ当量150)
エピコート154:ジャパンエポキシレジン社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂
(エポキシ当量178)
TAB:1,3,5−トリスアセトキシベンゼン
TABB:1,3,5−トリス(4−アセトキシベンゾイルオキシ)ベンゼン
HN−2200:日立化成工業社製メチルテトラヒドロ無水フタル酸
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン。サンアプロ社製登
録商標。
シリカ:アドマテック社製「アドマファインSO−C2」(体積平均粒径0.6μm)
MEK:メチルエチルケトン
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の硬化性組成物は、プリント配線板材料(例えばビルドアップ用プリント配線板材料)用、または封止材(プリント配線板用等)用の硬化性組成物等として好適に利用でき、該組成物を硬化させて硬化物とすることにより、それぞれプリント配線板材料または封止材を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に下記一般式(1)で示される複素環基(a)を有する化合物
(A)、分子内にエポキシ基を有する化合物(B)、活性エステル化合物(C)からなる
ことを特徴とする硬化性組成物。
一般式
【化1】

[式(1)中、X1、Y1及びZ1は、それぞれ独立に酸素又は硫黄原子であり、かつ少なくとも1つが硫黄原子;R1は炭素数2〜10の炭化水素基である。]
【請求項2】
(a)が、下記一般式(2)で示される複素環基である請求項1記
載の硬化性組成物。
一般式
【化2】

[式(2)中、Y1、Z1の一方が硫黄原子で他方が酸素原子である。]
【請求項3】
さらに、酸無水物(D)、硬化促進剤(E)およびフィラー(F)からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有してなる請求項1または2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか記載の硬化性組成物を用いて製造された封止材又はプリント配線板材料。

【公開番号】特開2006−28498(P2006−28498A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179872(P2005−179872)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】