説明

硬化性電子供与体化合物

【課題】接着剤、または接着剤中の構成成分として用いるのに適した電子供与体化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式の硬化性電子供与体化合物。


(nは1〜6であり、Arは芳香族環であり、RおよびRは水素、アルキル基などであり、Gは−OR、−SRなどであり、Rは前記のArかアルキル基であり、QはC〜C12のアルキル基であり、Xはアミド基、カルバモイル基などであり、Zはアルキル基、シロキサン、芳香族などである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子供与体化合物を含有する硬化性接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤組成物、特に伝導性接着剤は、半導体パッケージおよびミクロ電子工学デバイスの二次加工および組立において種々の目的のために用いられる。より顕著な用途は、集積回路チップとリードフレームまたはその他の基板の結合、および回路パッケージまたはアセンブリーとプリント配線板の結合である。
チップ結合用途のための低弾性率接着剤中で、特に速硬性接着剤中で用いるための電子受容体/供与体接着剤が存在するが、この場合、ビニルエーテルが電子供与体である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、供与体として適したビニルエーテルの数は、それらの低沸点、高揮発性および製造の困難性のために限定される。したがって、接着剤用途における使用に適した新規な電子供与体の開発の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、分子(小分子)または高分子基に結合される電子供与体基を含む電子供与体化合物を含有する硬化性接着剤組成物に関する。電子供与体は、芳香族環に連結される、ならびに芳香族環中の不飽和と共役する炭素−炭素二重結合である。
【0005】
芳香族環上の電子供与性置換基の存在は、炭素−炭素二重結合における電子密度を増大し、反応性をより高くさせる。反応性は、立体的相互作用によっても影響される。炭素−炭素二重結合におけるアルキル置換基の数の増大は、反応性を低減する。好ましくは炭素−炭素二重結合に関する置換基はすべて水素であるか、または唯一の他の置換基としてメチル基を伴う水素である。
【0006】
電子供与体は、電子供与体上の官能基と分子または重合体基上の共反応性官能基との間の反応の生成物である連結基を介して分子または重合体基に連結される。あるいは、電子供与体基は、(電子供与体の)芳香族環の外部の炭素−炭素二重結合が反応中に形成されるカップリング反応を介して分子または重合体基に結合することができる。
分子または重合体基は、分枝または線状アルカン(環状部分を有する)、シロキサン、ポリシロキサン、C1〜C4のアルコキシ末端シロキサンもしくはポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(ブタジエン)、または芳香族、ポリ芳香族もしくはヘテロ芳香族基であり得る。
【0007】
本発明は、1種以上の本発明の電子供与体化合物、ならびに任意に硬化剤および1種以上の充填剤を含む硬化性組成物でもある。
本発明は、1種以上の本発明の電子供与体化合物および1種以上の共重合可能な電子受容体化合物、ならびに任意に硬化剤および1種以上の充填剤を含む硬化性組成物でもある。共重合のための適切な電子受容体化合物は、フマレートおよびマレエート、例えばジオクチルマレエート、ジブチルマレエート、ジオクチルフマレート、ジブチルフマレートである。アクリレートおよびマレイミド官能基を含有する樹脂または化合物は、その他の適切な電子受容体物質である。
【0008】
本発明の電子供与体化合物は、下記の構造式(III):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、nは1〜6であり、
Arは、環構造内の炭素数が3〜10の芳香族もしくはヘテロ芳香族環または縮合環であって、異種原子はN、OまたはSであり、
1、R2およびR3は別々に、水素、炭素数1〜12のアルキル基または前記のArであり、好ましくは、R1、R2およびR3は、水素、炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくはすべて水素であり、
Gは、−OR4、−SR4、−N(R1)(R2)、前記のAr、または炭素数1〜12のアルキル基であって、R1およびR2は前記のとおりであり、そしてR4は前記のArであるかまたは炭素数1〜12、好ましくは1〜4のアルキル基であり、
Qは、炭素数1〜12のアルキル基であり、
Xは、以下の
【0011】
【化2】

であり、
Yは、以下の
【0012】
【化3】

であり、
【0013】
Zは、アルキル基、シロキサン、ポリシロキサン、C1〜C4のアルコキシ末端シロキサンもしくはポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(ブタジエン)、または芳香族、ポリ芳香族もしくはヘテロ芳香族基である)
を有する。尚、前記の構造式(I)および(II)を有する電子供与体化合物は、参考のものである。また、前記の構造式(III)を有する電子供与体化合物において、前記の構造式(III)中のArが、環構造内の炭素数が3〜5および7〜10の芳香族環もしくは環構造内の炭素数が3〜10のヘテロ芳香族環または縮合環であって、異種原子がN、OまたはSである化合物も、参考のものである。
【0014】
Z基としての製造のための出発物質は、多数の供給元から市販されている。例えば、芳香族およびポリ芳香族物質は、BASFまたはBayerから得られる。シロキサンおよびポリシロキサンはGelestから、ポリエーテルはBASFから、ポリエステルはUniqemaまたはBayerから、ポリ(ブタジエン)はElf-Atochemから、ポリウレタンはBayerまたはBASFから、そして分枝または線状アルカンはUniqemaから入手し得る。これらの供給元のいくつかは、電子供与体上の共反応性官能基との反応のためにすでに官能化された利用可能なZ物質を有する。他の場合には、実施者は電子供与体出発物質との反応のために製造に際して物質を官能化する必要がある。
【0015】
Z基は、電子供与体化合物を製造するための合成経路によって、環状部分または異種原子を含有し得るし、ペンダントヒドロキシルまたはチオール基を含有し得る。例えば、出発物質の1つがエポキシ官能基と反応するヒドロキシルまたはチオール官能基を含有する場合、Z基はペンダントヒドロキシルまたはチオール基を含有する。
【0016】
Zの正確な組成または分子量は本発明には重要ではなく、電子供与体化合物に関する最終用途の要求条件によって広範囲に及ぶ。Zの組成は、最終配合物中に特別な物質特性、例えば流動学的特性、親水性または疎水性特性、靱性、強度または柔軟性を生じるよう選択することができる。例えば、低レベルの架橋および重合体結合周囲の自由回転は、化合物に柔軟性を付与し、シロキサン部分の存在は、疎水性および柔軟性を付与する。分子量および鎖長は粘度に影響を及ぼし、分子量が大きく、鎖長が長いほど、粘度は高い。
【0017】
本明細書中で用いる場合、芳香族とは、芳香族化合物の古典的定義を満たす化合物を意味し、即ちそれは、分子の平面より上および下に非局在化するπ電子の環状雲を含有し、π雲は合計(4n+2)個の電子を有する。
【0018】
これらの電子供与体化合物は、電子供与体基を含有する出発物質上の官能基と分子または重合体基を含有する出発物質上の共反応性官能基との間の標準的添加または縮合反応により、あるいは一般的カップリング反応、例えばウィッティッヒ反応、ヘック反応またはスティレ反応により製造することができる。例えば、電子供与体部分に関する有用な出発化合物は、シンナミルアルコールまたはクロリドおよび3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートである。当業者は反応における適切な変更を工夫し得るが、しかし変更は、出発物質の商業的入手可能性または合成経路の容易性により実際上は左右される。
【0019】
代表的合成経路を以下に示す:
1.カルバメート、尿素またはチオカルバメート結合をそれぞれ作製するためのイソシアネート官能基の(i)ヒドロキシルまたは(ii)アミンまたは(iii)チオール官能基との反応、
2.エーテル、アミンまたはチオ−エーテル結合をそれぞれ作製するためのハロゲンの(i)ヒドロキシルまたは(ii)アミンまたは(iii)チオール官能基による置換、
3.エーテル、アミンまたはチオ−エーテル結合をそれぞれ作製するためのエポキシ官能基の(i)ヒドロキシルまたは(ii)アミンまたは(iii)チオール官能基との反応。
【0020】
電子供与体化合物は、広範な種々の用途に用いるための硬化した接着剤組成物を生成するための共重合のために、電子受容体化合物、例えばフマレート、マレエート、アクリレートおよびマレイミドと配合し得る。適切なフマレートおよびマレエートは、例えばジオクチルマレエート、ジブチルマレエート、ジオクチルフマレート、ジブチルフマレートである。適切なアクリレートは、多数であり、例えばSartomerから市販されている。適切なマレイミドは、例えば、米国特許第6,034,194号および第6,034,195号(Dershem)に記載された手法により製造される。
【0021】
電子供与体化合物は、エレクトロニクス用途に使用するのによく適した接着剤、塗料、注封品または封入剤組成物中に配合することができる。配合物は、好ましくは、1種以上の硬化剤および伝導性または非伝導性充填剤を含有し、安定化化合物、接着促進剤またはカップリング剤も含有し得る。
【0022】
硬化剤の例は、電子供与体化合物の0.1質量%〜10質量%、好ましくは0.1質量%〜3.0質量%の量で接着剤組成物中に存在する熱開始剤および光開始剤である。好ましい熱開始剤としては、ペルオキシド、例えば、ブチルペルオクトエートおよびジクミルペルオキシド、ならびにアゾ化合物、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパンニトリル)および2,2’−アゾビス(2−メチル−ブタンニトリル)が挙げられる。一連の好ましい光開始剤は、Ciba Specialty Chemicalからイルガキュア(Irgacure)の商品名で販売されているものである。いくつかの配合物では、熱開始剤および光開始剤はともに望ましく、例えば硬化工程は、照射により開始され、後期処理工程では、硬化は、熱硬化を成し遂げるために熱の適用により完了することができる。
【0023】
概して、これらの組成物は、70℃〜250℃の温度範囲内で硬化し、硬化は、10秒〜3時間の範囲内にもたらされる。各配合物の時間および温度硬化プロフィールは、特定の電子供与体化合物および配合物のその他の構成成分に伴って変化するが、硬化プロフィールのパラメーターは、過度の実験なしで、当業者により決定し得る。
【0024】
適切な伝導性充填剤は、カーボンブラック、黒鉛、金、銀、銅、プラチナ、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンドおよびアルミナである。適切な非伝導性充填剤は、バーミキュライト、マイカ、珪灰石、炭酸カルシウム、チタニア、砂、ガラス、溶融シリカ、ヒュームドシリカ、硫酸バリウムおよびハロゲン化エチレンポリマー、例えばテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、塩化ビニリデンおよび塩化ビニルの粒子である。存在する場合、充填剤は配合物の20質量%〜90質量%の量である。
【0025】
適切な接着促進剤またはカップリング剤は、シラン、シリケートエステル、金属アクリレートまたはメタクリレート、チタネート、およびキレート化配位子を含有する化合物、例えばホスフィン、メルカプタンおよびアセトアセテートである。存在する場合、カップリング剤は、電子供与体化合物の10質量%までの量で、好ましくは0.1質量%〜3.0質量%の量である。
【0026】
さらに、配合物は、結果的に生じる硬化した物質にさらに柔軟性および靱性を与える化合物を含有し得る。このような化合物は、150℃以下のTgを有するあらゆる熱硬化性または熱可塑性物質であり得るし、典型的には重合体物質、例えば、ポリアクリレート、ポリ(ブタジエン)、ポリTHF(重合したテトラヒドロフラン)、カルボキシ末端ブチロニトリルゴムおよびポリプロピレングリコールである。存在する場合、これらの化合物は、電子供与体化合物の約15質量%までの量であり得る。
【0027】
以下の例は、代表的電子供与体化合物およびそれらの製造のための反応を示す。電子供与体反応生成物は、1H−NMRおよびFT−IRにより特性化される。例は本発明の説明であって、本発明を限定するものではない。
これらの例においては、fnc−C36−fncは、オレイン酸とリノール酸の二量体化とその後の適切な官能基への転換に起因する異性体の混合物を表すが、この場合、fncは、アルコールに関しては−OH、アミンに関しては−NH2、およびイソシアネートに関しては−NCOである。
【0028】
【化4】

は、オレイン酸とリノール酸の三量体化とその後の適切な官能基への転換に起因する異性体の混合物を表すが、この場合、fncは、カルボキシル基に関しては−COOH、アルコールに関しては−CH2OHであり、そして化合物内のC36は、例示的反応後に、化合物中の二量体または三量体の残基である炭素数36の線状および分枝鎖アルキルの異性体の混合物を表わす。
【0029】
例1
【化5】

【0030】
3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(m−TMI)(35.6 g, 0.177 モル)を、機械的撹拌器、添加漏斗および窒素流入口/流出口を装備した500mL三首フラスコ中のトルエン(100g)中に溶媒和した。反応を窒素下に置き、溶液を90℃に加熱して、撹拌しながら0.033gのジブチル錫ジラウレート(触媒)を添加した。トルエン(50g)中に溶解したHO−C36−OH(50.12 g, 0.0884 モル)(Pripol 2033, Uniqema)を添加漏斗に装填した。この溶液を10分間に亘ってイソシアネート溶液に添加し、その結果生じた混合物をさらに3時間、90℃で加熱した。反応物を室温に冷却させた後、混合物を蒸留水で3回洗浄した。単離された有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過して、溶媒を真空で除去し、収率93%で生成物を得た。
【0031】
例2
【化6】

【0032】
OCN−C36−NCO(DDI 1410, Henkel)(98.79 g, 0.164 モル)を、機械的撹拌器、添加漏斗および窒素流入口/流出口を装備した500mL三首フラスコ中のトルエン(100g)中に溶媒和した。反応を窒素下に置き、溶液を90℃に加熱して、撹拌しながら0.04gのジブチル錫ジラウレート(触媒)を添加した。トルエン(50g)中に溶解したシンナミルアルコール(44.01 g, 0.328 モル)を添加漏斗に装填した。この溶液を10分間に亘ってイソシアネート溶液に添加し、その結果生じた混合物をさらに3時間、90℃で加熱した。反応物を室温に冷却させた後、混合物を蒸留水で3回洗浄した。単離した有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過して、溶媒を真空で除去し、収率94%で生成物を得た。
【0033】
例3
【化7】

【0034】
トルエン中のHO−C36−OH(Pripol 2033, Uniqema)(54.36 g, 0.096モル)、50%NaOH(400 mL)、テトラブチルアンモニウム水素スルフェート(13.8 g, 0.041 モル)およびシンナミルクロリド(33.69 g, 0.221 モル)を、53℃で5時間で、次に75℃で15時間撹拌した。反応物を室温に冷却させ、有機層を抽出して、ブラインで3回洗浄した。単離有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過して、溶媒を真空除去し、収率95%で生成物を得た。
【0035】
例4
【化8】

【0036】
エポキシプロポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(DMS-E12, Gelest Inc.)(10 g, 0.01 モル)、シンナミルアルコール(2.68 g, 0.02 モル)およびイオン交換樹脂(2g)(Amberlyst A-21)を一緒に110℃で20時間加熱した。イオン交換樹脂を反応混合物から分離して、収率94%で生成物を得た。
【0037】
例5
【化9】

【0038】
窒素下で還流冷却器を装備した乾燥500mL三首丸底フラスコ中のLiAlH4(0.84 g, 0.022 モル)およびエーテル(100 mL)の懸濁液を、0℃に冷却した。これに、エタノール(50 mL)中の三量体三酸(10g, 0.011 モル)を徐々に添加した。反応混合物を室温で5分間撹拌した。水を添加(100 mL)し、濾過により塩を除去した。有機層を分離し、MgSO4上で乾燥した。減圧下で溶媒を除去して、三量体トリオールを得た。
【0039】
3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(m−TMI)(3.57 g, 0.018 モル)を、機械的撹拌器、添加漏斗および窒素流入口/流出口を装備した500mL三首フラスコ中のトルエン(100 mL)中に溶媒和した。反応を窒素下に置き、溶液を90℃に加熱して、撹拌しながらジブチル錫ジラウレート(0.001 g)を添加した。トルエン(50 mL)中に溶解した三量体トリオール(5.1 g, 0.0059 モル)を添加漏斗に装填した。この溶液を10分間に亘ってイソシアネート溶液に添加し、その結果生じた混合物をさらに3時間、90℃で加熱した。反応物を室温に冷却させた後、混合物を蒸留水で3回洗浄した。単離した有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過して、溶媒を真空除去し、収率95%で生成物を得た。
【0040】
例6
【化10】

【0041】
3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(m−TMI)(8.05 g, 0.04 モル)を、機械的撹拌器、添加漏斗および窒素流入口/流出口を装備した250mL三首フラスコ中のトルエン(50 g)中に溶媒和した。反応を窒素下に置き、溶液を90℃に加熱して、撹拌しながらジブチル錫ジラウレート(0.003 g)を添加した。トルエン(25 g)中に溶解したカルビノール(ヒドロキシ)末端ポリジメチルシロキサン(DMS-C15, Gelest Inc.から入手可能)(20 g, 0.04 モル)を添加漏斗に装填した。この溶液を10分間に亘ってイソシアネート溶液に添加し、その結果生じた混合物をさらに3時間、90℃で加熱した。反応物を室温に冷却させた後、混合物を蒸留水で3回洗浄した。単離した有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過して、溶媒を真空除去し、収率95%で生成物を得た。
【0042】
例7
【化11】

【0043】
3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(m−TMI)(10 g, 0.05 モル)を、機械的撹拌器、添加漏斗および窒素流入口/流出口を装備した250mL三首フラスコ中のトルエン(50 g)中に溶媒和した。反応を窒素下に置き、溶液を90℃に加熱して、撹拌しながらジブチル錫ジラウレート(0.003 g)を添加した。トルエン(25 g)中に溶解した1−オクタノール(6.47 g,0.05 モル)を添加漏斗に装填した。この溶液を10分間に亘ってイソシアネート溶液に添加し、その結果生じた混合物をさらに3時間、90℃で加熱した。反応物を室温に冷却させた後、混合物を蒸留水で3回洗浄した。単離した有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過して、溶媒を真空除去し、収率97%で生成物を得た。
【0044】
同一手法を用いて、炭素数18または24の分枝鎖アルコールを置換し得る。アルコールは、UniqemaおよびJarchemから市販されている。以下の構造式中、C18およびC24は、それぞれ、炭素数18または24の分枝鎖アルキル基を表す。
【0045】
【化12】

【0046】
例8
【化13】

【0047】
3モル当量の3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(m−TMI)を、機械的撹拌器、添加漏斗および窒素流入口/流出口を装備した三首フラスコ中のトルエン中に溶媒和した。反応を窒素下に置いた。トルエン中に溶解した1当量の三官能性アミン(三モル当量のアミン官能性)を添加漏斗に装填した。この溶液を10分間に亘ってイソシアネート溶液に添加し、その結果生じた混合物を90℃で3時間加熱した。反応物を室温に冷却させた後、混合物を蒸留水で3回洗浄した。単離した有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過して、溶媒を真空で除去し、生成物を得た。
【0048】
例9
【化14】

【0049】
2モル当量の4−ビニルベンジルアミンを、機械的撹拌器、添加漏斗および窒素流入口/流出口を装備した三首フラスコ中のTHF中に溶媒和した。反応を窒素下に置いた。THF中に溶解した1当量の1,8−ジブロモオクタンを添加漏斗に装填した。この溶液を10分間に亘ってアミン溶液に添加し、その結果生じた混合物を60℃で3時間加熱した。反応物を室温に冷却させた後、THFを減圧下で除去し、残渣をエーテルおよび水間に分配した。有機層を分離し、MgSO4上で乾燥し、濾過して、溶媒を真空で除去し、生成物を得た。
【0050】
例10
【化15】

【0051】
1当量のH2N−C36−NH2(Versamine 552, Henkel)を、機械的撹拌器、添加漏斗および窒素流入口/流出口を装備した三首フラスコ中のTHF中に溶媒和した。反応を窒素下に置いた。THF中に溶解した2当量のシンナミルクロリドを添加漏斗に装填した。この溶液を10分間に亘ってH2N−C36−NH2溶液に添加し、その結果生じた混合物をさらに60℃で3時間加熱した。反応物を室温に冷却させた後、THFを減圧下で除去し、残渣をエーテルと水の間に分配した。有機層を分離し、MgSO4上で乾燥し、濾過して、溶媒を真空で除去し、収率90%で生成物を得た。
【0052】
例11
【化16】

【0053】
1当量のスベロイルクロリドを、機械的撹拌器、添加漏斗および窒素流入口/流出口を装備した三首フラスコ中のトルエン中に溶媒和した。反応を窒素下に置いた。THF中に溶解した2当量の3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルアミンおよび1当量のトリエチルアミンを添加漏斗に装填した。この溶液を10分間に亘ってスベロイルクロリド溶液に添加し、その結果生じた混合物を70℃で3時間加熱した。反応物を室温に冷却させた後、混合物を蒸留水で3回洗浄した。単離した有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過して、溶媒を真空で除去し、収率91%で生成物を得た。
【0054】
例12
【化17】

【0055】
2当量の3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(m−TMI)を、機械的撹拌器、添加漏斗および窒素流入口/流出口を装備した三首フラスコ中のトルエン中に溶媒和した。反応を窒素下に置いた。トルエン中に溶解した1当量の2−メチル−ペンタンジアミン、DYTEKAを添加漏斗に装填した。この溶液を10分間に亘ってイソシアネート溶液に添加し、その結果生じた混合物を90℃で3時間加熱した。反応物を室温に冷却させた後、混合物を蒸留水で3回洗浄した。単離した有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過して、溶媒を真空で除去し、生成物を得た。
【0056】
例13同様の手法により、その他の電子供与体化合物を製造し得る。以下の反応模式図は、その他の芳香族環出発物質および反応体有機化合物を、その結果生じる電子供与体化合物とともに示す。
【0057】
例13−A
【化18】

【0058】
例13−B
【化19】

【0059】
例13−C
【化20】

【0060】
例13−D
【化21】

【0061】
例13−E
【化22】

【0062】
例13−F
【化23】

【0063】
例13−G
本例では、C18−OHは、Uniqemaから市販されている炭素数18の分枝鎖アルコールを表す。
【化24】

【0064】
例13−H
【化25】

【0065】
例13−I
これらの構造式中、nは、括弧内の単位の反復回数を表す整数である。これは、市販物質の選択により変わり得る。
【化26】

【0066】
例13−J
これらの構造式中、nは、括弧内の単位の反復回数を表す整数である。これは、市販物質の選択により変わり得る。
【化27】

【0067】
例13−K
【化28】

【0068】
例13−L
【化29】

【0069】
例13−M
これらの構造式中、nは、括弧内の単位の反復回数を表す整数である。これは、市販物質の選択により変わり得る。
【化30】

【0070】
例13−N
これらの構造式中、nは、括弧内の単位の反復回数を表す整数である。これは、市販物質の選択により変わり得る。
【化31】

【0071】
例13−O
【化32】

【0072】
例13−P
【化33】

【0073】
例13−Q
【化34】

(式中、p−TsOHはパラ−トルエンスルホン酸である)。
【0074】
例14
電子受容体としてビスマレイミドを用いて、前記の例からの3種の電子供与体化合物を接着剤組成物に配合した。開始剤としてUSP−MD(Witco Corporation)を用いて、米国特許第4,745,197号に略記された手法にしたがって、アミノ末端ポリオキシ−ブチレン(Versalink P650, Air Products)および無水マレイン酸からビスマレイミドを誘導した。
【0075】
DSCを用いて、接着剤組成物を硬化させた(電子供与体と電子受容体の共重合)。これらの樹脂の各々に関する発熱量はピークで、およびピークで特性の開始まで、定量的に同様であると思われた。
ミクロ電子工学デバイスに用いるためのダイ結合接着剤として用いるために、配合物も試験した。Pdリードフレームと120x120ミルシリコンダイとの間に配合物を置いて、ホットプレート上で200℃で約60秒間、硬化させた。剪断が起こるまで、室温でダイの側面に圧力を適用した。ダイ−剪断力をkgで測定した。結果は下記の配合物表に含まれ、商業的に使用可能な範囲内のダイ剪断値を示す。
【0076】
配合物1
【表1】

【0077】
配合物2
【表2】

【0078】
配合物3
【表3】

【0079】
尚、前記の例1、例5〜例9、例11,12、例13−B〜F、および例13−I,K,N,O,Pは、それぞれ参考例を示すものである。
この電子供与体化合物のさらなる利点は、低エネルギー基体に適用する場合に、ビニルエーテルを含有する接着剤配合物への少量の添加は、接着剤組成物が分散またはブリードするのを防止するという事実である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する化合物を含むことを特徴とする、硬化性接着剤組成物
【化1】

(式中、nは1〜6であり、
Arは、環構造内の炭素数が6の芳香族環であり、
1およびR2は別々に、水素、炭素数1〜12のアルキル基または前記のArであり、
Gは、−OR4、−SR4、−N(R1)(R2)、前記のAr、または炭素数1〜12のアルキル基であって、R1およびR2は前記のとおりであり、そしてR4は前記のArであるかまたは炭素数1〜12のアルキル基であり、
Qは、炭素数1〜12のアルキル基であり、
Xは、以下の
【化2】

(式中、R1は水素である)
であり、
Zは、アルキル基、シロキサン、ポリシロキサン、C1〜C4のアルコキシ末端シロキサンもしくはポリシロキサン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(ブタジエン)、または芳香族、ポリ芳香族もしくはヘテロ芳香族基である)。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性接着剤組成物であって、
前記化合物の式中、
nは1または2であり、
1およびR2は水素であり、
Gは−OCH3であり、
QはC1〜C4アルキル基であり、
Xは
【化3】

(式中、R1は水素である)
であり、
Zは分枝または線状のC18〜C36鎖アルキル基またはシロキサン基である、
前記硬化性接着剤組成物。
【請求項3】
前記化合物が以下の構造を有する
【化4】

(式中、C36は炭素数36の線状および分枝鎖アルキルの異性体の混合物である)
請求項1に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項4】
更に、フマレート、マレエート、アクリレートおよびマレイミドから成る群から選択される少なくとも1つの共重合可能な電子受容体化合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項5】
更に伝導性充填剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項6】
更に非伝導性充填剤を含む、請求項1または2に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項7】
更に、フマレート、マレエート、アクリレートおよびマレイミドから成る群から選択される少なくとも1つの共重合可能な電子受容体化合物、ならびに熱伝導性充填剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項8】
更に、フマレート、マレエート、アクリレートおよびマレイミドから成る群から選択される少なくとも1つの共重合可能な電子受容体化合物、ならびに電気的伝導性充填剤を含む、請求項1または2に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項9】
更に、フマレート、マレエート、アクリレートおよびマレイミドから成る群から選択される少なくとも1つの共重合可能な電子受容体化合物、ならびに非伝導性充填剤を含む、請求項1または2に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項10】
シリコンチップが請求項7〜9のいずれか一項に記載の硬化性接着剤組成物で基材に接着された半導体パッケージ。

【公開番号】特開2009−57565(P2009−57565A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228932(P2008−228932)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【分割の表示】特願2001−146658(P2001−146658)の分割
【原出願日】平成13年5月16日(2001.5.16)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【Fターム(参考)】