説明

硬質発泡合成樹脂の製造方法

【課題】水を発泡剤として用い、接着性、寸法安定性に優れる、軽量硬質フォームの製造方法の提供。
【解決手段】ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを水等と共に反応させる硬質フォームの製造方法において、ポリオール化合物として、脂肪族アミンおよび脂環族アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種を開始剤として用い、エチレンオキシドのみを開環付加重合させて製造された、水酸基価が150〜800mgKOH/gであるポリオキシエチレンポリオールを含み、ポリマー微粒子が安定に分散したポリオール混合物を用い、発泡剤として水を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。より詳しくは、発泡剤として比較的多量の水を使用することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム等の硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを発泡剤等の存在下で反応させて、硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリイソシアヌレートフォーム等の硬質発泡合成樹脂(以下、硬質フォームという。)を製造することは広く行われている。ここで、硬質フォームを製造するための発泡剤としては種々の化合物が知られている。以前は低沸点の含フッ素化合物が主に用いられてきた。しかし環境への負荷を考慮すると含フッ素化合物の使用を削減することが望ましい。そこでその使用量を削減するために、発泡剤として水を多く使用する技術が検討されてきた。水を多く使用すると、比較的軽量の硬質フォームが安価に得られるという特徴を有している。
【0003】
しかし水を多く用いて硬質フォームを製造する場合、ポリオール化合物と水との相溶性は一般的にはそれほど高くないため、水がポリオール化合物に充分に分散、溶解しにくくなりやすい。その結果、水とポリイソシアネート化合物との反応が充分に進行せず、結果として製造された硬質フォームの密度を低くすることが困難となりやすい。特に低温環境において硬質フォームを製造する場合に硬質フォームの密度を低く制御することが困難となりやすい。具体的には特に冬季に建築現場においてスプレー発泡による硬質フォームの製造を行う場合には、温度管理が困難であり、製造される硬質フォームの密度を低く制御できなかった。また水を多く用いて硬質フォームの密度を低くした場合には、さらに得られた硬質フォ−ムが収縮しやすいという問題が生じる。
【0004】
また水とポリオール化合物との相溶性が低いことは、ポリオール化合物、水、その他の添加剤等の混合液(ポリオールシステム液)とポリイソシアネート化合物との相溶性、混合性の低下を招くことになる。その結果、硬質フォームの製造時に微細な気泡を均一に形成しにくく、得られた硬質フォームにセル荒れや縞模様が発現しやすくなる。
【0005】
また水を多く使用して製造された硬質フォームは、水とポリイソシアネート化合物とが反応して生じるウレア結合の比率が増すため、得られたフォームが脆くなりやすく、そのため硬質フォームの接着性が低下するという問題がある。
【0006】
これらの問題のうち、水を多く用いて軽量の硬質フォームを製造する方法として、1−(2−アミノエチル)ピペラジン等のピペラジン類を開始剤として用いて製造したポリオキシアルキレンポリオールを使用することが提案されている(例えば特許文献1、2等を参照。)。
【0007】
また得られた硬質フォームが収縮しやすいという問題を解決するために、上記のピペラジン類を開始剤として用いて製造したポリオキシアルキレンポリオールに加えて、ポリマー微粒子が安定に分散したポリマー分散ポリオールを使用することが提案されている(例えば特許文献3、4等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−87943号公報
【特許文献2】特開平8−100044号公報
【特許文献3】特開2000−226427号公報
【特許文献4】特開2000−256434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし特許文献1、2等で提案された技術では、得られた硬質フォームが収縮しやすいという問題が充分に解決されていない。また、特許文献3、4等で提案された技術では、水を比較的多量に使用してかつ得られた硬質フォームが収縮しにくいという特徴があるが、硬質フォームの軽量化(低密度化)、接着性の点で改良が望まれている。
【0010】
すなわち本発明は上記の問題を解決し、水を発泡剤として用い、軽量で、接着性に優れ、かつ収縮がほとんどない、機械的特性の良好な硬質フォームを製造し、かつ、原料の貯蔵安定性に優れた硬質フォームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、ポリオール化合物として、下記ポリオール(A)を含み、水酸基価が100〜700mgKOH/gであり、かつ、ポリマー微粒子が安定に分散しているポリオール混合物を用い、発泡剤として水を用いることを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法を提供する。ただしポリオール(A)とは、開始剤として脂肪族アミンおよび脂環族アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種を用い、エチレンオキシドのみを開環付加重合させて製造された、水酸基価が150〜800mgKOH/gであるポリオキシエチレンポリオールである。
【0012】
ここで、前記ポリオール(A)の開始剤としてピペラジン類を用いることが好ましい。また、前記ポリオール混合物が下記ポリオール(BA)および/またはポリオール(BB)を含むことが好ましい。ただしポリオール(BA)とは、開始剤として芳香族化合物を用い、アルキレンオキシドを開環付加重合させて製造された、水酸基価が100〜700mgKOH/gであるポリオキシアルキレンポリオールである。またポリオール(BB)とは、芳香族化合物を含むモノマーを重縮合して製造された、水酸基価が100〜700mgKOH/gであるポリエステルポリオールである。またここで、前記ポリオール(BA)の開始剤として、マンニッヒ縮合物、ジアミノトルエンおよびビスフェノールAからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。さらに、前記ポリマー微粒子が重合性不飽和結合を有するモノマーを重合して得られることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、水を発泡剤として用い、軽量で、接着性に優れ、かつ収縮がほとんどなく外観が良好で、機械的特性の良好な硬質フォームを製造が可能となった。また原料の貯蔵安定性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の硬質フォームの製造方法においては、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する。以下にその詳細について説明する。
【0015】
(ポリオール化合物)
本発明においてポリオール(A)とは、開始剤として脂肪族アミンおよび脂環族アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種を用い、エチレンオキシドのみを開環付加重合させて製造された、水酸基価が150〜800mgKOH/gであるポリオキシエチレンポリオールである。このポリオール(A)を用いることで、水とポリオール化合物との溶解安定性が向上する、水とポリイソシアネート化合物との反応性も向上し、より低密度の硬質フォームが製造できる等の効果が得られる。
【0016】
ポリオール(A)の製造に用いる開始剤としては、脂肪族アミンおよび脂環族アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。ここで開始剤としては、脂環族アミンがより好ましい。前記脂肪族アミンとしては、アルキルアミン類、アルカノールアミン類が挙げられる。アルキルアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンが挙げられる。またアルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、アミノエチルエタノールアミンが挙げられる。脂環族アミンとしては、ピペリジン類、ピペラジン類、ピロリジン類等が挙げられ、ピペラジン類が特に好ましく、アミノアルキル基で置換されたピペラジンが最も好ましい。ピペラジン類はウレタン結合生成反応を促進する触媒としての効果が高く、ポリオール(A)の開始剤として用いることで、硬質フォーム製造時の反応性を高くする効果が得られる。ピペリジン類としては、1−(2−アミノエチル)ピペリジン等が挙げられる。ピペラジン類としては、ピペラジン、N−アミノメチルピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン等が挙げられる。ピロリジン類としては、1−(2−アミノエチル)ピロリジン等が挙げられる。
【0017】
またポリオール(A)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシドのみを用いる。エチレンオキシドのみとすることにより、ポリオール(A)と水との親和性が向上し、水とポリオールとの溶解安定性向上に効果がある。またエチレンオキシドのみを用いることにより、ポリオール(A)の水酸基が一級水酸基となり、ポリオール(A)の反応性が高くなり、接着性の向上に効果がある。
【0018】
またポリオール(A)の水酸基価は、150〜800mgKOH/gであるが、250〜700mgKOH/gが好ましい。ポリオール(A)の水酸基価が上記範囲内であれば、ポリオール化合物と水との相溶性が確保でき、またポリオール化合物の反応性が高くでき、硬質フォームの接着性を確保しやすく、好ましい。またポリオール(A)の平均官能基数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。ここで平均官能基数とは、開始剤の活性水素原子の数の平均を意味する。
【0019】
本発明に用いるポリオール混合物のうち、ポリオール(A)の割合は、5〜95質量%が好ましく、15〜80質量%がより好ましい。ポリオール(A)の割合が5質量%未満であると、硬質フォームの接着性が悪くなりやすく好ましくない。またポリオール(A)の割合が85質量%を超えて多いと、硬質フォームの強度が得られにくくなり好ましくない。
【0020】
本発明において、前記ポリオール混合物はポリオール(BA)および/またはポリオール(BB)を含むことが好ましい。このポリオール(BA)および/またはポリオール(BB)を用いることで、得られる硬質フォームに難燃性能が付与できる。
【0021】
本発明においてポリオール(BA)とは、開始剤として芳香族化合物を用い、アルキレンオキシドを開環付加重合させて製造された、水酸基価が100〜700mgKOH/gであるポリオキシアルキレンポリオールである。
【0022】
ポリオール(BA)の製造に用いる開始剤としては、芳香族化合物を用いるが、マンニッヒ縮合物、ジアミノトルエンおよびビスフェノールAからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。ここで芳香族化合物とは、芳香環を有する化合物を意味する。またここで芳香環とは、炭素原子のみからなる環であっても、窒素原子等の炭素原子以外の原子(ヘテロ原子)を含む環であってもよい。炭素原子のみからなる環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。また炭素原子以外の原子を含む環としては、ピリジン環等が挙げられる。ただしこれらの環のヘテロ原子の有無については、置換基は含めないで考える。
【0023】
上記の芳香族化合物とは、縮合化合物であっても、非縮合化合物であってもよい。縮合化合物としては、フェノール類、アルカノールアミン類およびアルデヒド類の反応生成物であるマンニッヒ縮合物、フェノール類をアルカリ触媒の存在下で過剰のホルムアルデヒド類と縮合結合させたレゾール型初期縮合物、このレゾール型初期縮合物を合成する際に非水系で反応させたベンジリック型初期縮合物、過剰のフェノール類を酸触媒の存在下でホルムアルデヒド類と反応させたノボラック型初期縮合物等が挙げられる。これらの初期縮合物の分子量は、200〜10000程度のものが好ましい。上記において、フェノール類としては、フェノール、ノニルフェノール、クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール等が挙げられ、また、アルデヒド類としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。また非縮合化合物としては、ビスフェノールA、レゾルシノール等の多価フェノール類、ジアミノトルエン、ジエチルジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0024】
またポリオール(BA)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、スチレンオキシド等が挙げられる。このうちプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドが好ましい。
【0025】
またポリオール(BA)の水酸基価は、100〜700mgKOH/gであるが、200〜600mgKOH/gが好ましい。ポリオール(BA)の水酸基価が上記範囲内であれば、ポリオール化合物の混合性を保ちつつ充分な難燃性を付与でき好ましい。またポリオ−ル(BA)の平均官能基数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
【0026】
本発明においてポリオール(BB)とは、芳香族化合物を含むモノマーを重縮合して製造された、水酸基価が100〜700mgKOH/gであるポリエステルポリオールである。すなわち、このポリオール(BB)を製造するために用いるモノマーとしては、芳香環を有するジオールまたは芳香環を有するジカルボン酸を用いる。芳香環を有するジオールとしては、ビスフェノールAにエチレンオキシドを付加させて得られたジオール等が挙げられる。また芳香環を有するジカルボン酸としては、テレフタル酸等のフタル酸類が挙げられる。またポリオール(BB)の水酸基価は、100〜700mgKOH/gであるが、200〜600mgKOH/gが好ましい。ポリオール(BA)の水酸基価が上記範囲内であれば、ポリオール化合物の混合性を保ちつつ充分な難燃性を付与でき好ましい。
【0027】
本発明に用いるポリオール混合物のうち、ポリオール(BA)とポリオール(BB)との合計の割合は、7〜90質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。ポリオール(BA)とポリオール(BB)との合計の割合が上記範囲にあれば、得られる硬質フォームに適度な難燃性を付与でき、かつその他の機械特性等を損ねることがない。またポリオール(BA)とポリオール(BB)との割合に特に制限はない。
【0028】
本発明においてはポリオール化合物として、ポリマー微粒子が安定に分散しているポリオール混合物を用いる。このポリマー微粒子が安定に分散したポリオール混合物は、ポリオール混合物にポリマー微粒子を安定に分散させて製造してもよく、ポリマー微粒子が安定に分散したポリオールと前記ポリオール(A)等とを混合して製造してもよい。しかし、ポリオール混合物におけるポリマー微粒子の安定性が高く、かつ、本発明に係るポリオール混合物の製造が容易であることから、後者が特に好ましい。なお、ポリマー微粒子が安定に分散したポリオールを、以下、ポリマー分散ポリオールという。また、本発明において、ポリオール(A)等と混合するのに好適なポリマー分散ポリオールを、以下、ポリマー分散ポリオール(W)という。
【0029】
本発明においてポリマー分散ポリオール(W)とは、後述するポリエーテルポリオール(X)、後述するアミン系ポリエーテルポリオール(Y)および任意にその他(ポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)以外)のポリオール(Z)を含むポリオールである。ポリマー分散ポリオール(W)におけるポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)およびその他のポリオール(Z)の混合比は、質量比で(X)/(Y)/(Z)が、5〜97/3〜35/0〜92が好ましく、10〜60/5〜35/10〜85がより好ましく、25〜50/8〜25/25〜67が特に好ましい。ポリマー分散ポリオール(W)の平均水酸基価は200〜800mgKOH/gが好ましく、250〜750mgKOH/gがより好ましい。ポリマー分散ポリオール(W)における混合比、および、ポリマー分散ポリオール(W)の平均水酸基価が上記範囲にあると、ポリマー微粒子が安定に分散しやすく好ましい。
【0030】
上記のポリエーテルポリオール(X)は、水酸基価が84mgKOH/g以下であってかつオキシエチレン基含有量40質量%以上のポリエーテルポリオールである。ポリエーテルポリオール(X)の水酸基価は、84mgKOH/g以下であるが、5〜84mgKOH/gが好ましく、30〜60mgKOH/gが特に好ましい。またポリエーテルポリオール(X)の製造に用いる開始剤としては、3価以上の多価アルコールが好ましい。その具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオールが挙げられる。またポリエーテルポリオール(X)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド単独、または、プロピレンオキシド等の炭素数3以上のアルキレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が好ましい。ここでポリエーテルポリオール(X)におけるエチレンオキシドに由来するオキシエチレン基の含有量は40質量%以上であるが、50〜90質量%が好ましい。
【0031】
上記のアミン系ポリエーテルポリオール(Y)は、後述するアミン化合物を開始剤としてアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が250〜900mgKOH/gであるポリエーテルポリオールである。ただし前述したポリオール(A)およびポリオール(BA)のうち水酸基価が上記範囲に入るものであってもよい。アミン系ポリエーテルポリオール(Y)の水酸基価は、250〜900mgKOH/gであるが、300〜800mgKOH/gが好ましく、350〜800mgKOH/gが特に好ましい。またアミン系ポリエーテルポリオール(Y)の製造に用いる開始剤のアミン化合物としては、脂肪族アミンたは脂環族アミンが好ましい。脂肪族アミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等が挙げられる。脂環族アミンとしては1−(2−アミノエチル)ピペラジン等が挙げられる。またアミン系ポリエーテルポリオール(Y)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が好ましい。
【0032】
上記のその他のポリオール(Z)は、ポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)以外の任意のポリオールである。すなわち、前述のポリオール(A)、ポリオール(BA)、ポリオール(BB)、ポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)以外のポリオールをポリオール(V)としたときに、ポリオール(Z)は、ポリオール(BA’)、ポリオール(BB)およびポリオール(V)からなる群から選ばれる1種以上のポリオールからなる。ただしポリオール(BA’)とは、ポリオール(BA)のうち、ポリオール(Y)以外のポリエーテルポリオールである。その他のポリオール(V)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、多価アルコール、末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマー等が挙げられる。その他のポリオール(Z)の水酸基価は、200〜1000mgKOH/gが好ましく、400〜850mgKOH/gが特に好ましい。
【0033】
本発明におけるポリマー微粒子は、重合性不飽和結合を有するモノマーを重合して得られるポリマー微粒子であることが好ましい。この重合性不飽和結合を有するモノマーの具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2,4−ジシアノ−1−ブテン等のニトリル系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、その他のジエン系モノマー;マレイン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和脂肪酸エステル系モノマー;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系モノマー;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらモノマーは2種以上併用してもよい。
【0034】
重合性不飽和結合を有するモノマーの組合せとしては、ニトリル系モノマー5〜90質量%と他のモノマー10〜95質量%の組み合わせが好ましい。ニトリル系モノマーとスチレン系モノマーの組み合わせ、またはニトリル系モノマーとカルボン酸ビニルエステル系モノマーの組み合わせが、低粘度で分散安定性の良好なポリマー分散ポリオールを得るために好ましい。前記モノマーの組合せとしては、アクリロニトリルとスチレンの組み合わせ、および、アクリロニトリルと酢酸ビニルの組み合わせが特に好ましく、アクリロニトリルと酢酸ビニルの組合せが分散安定性が良好であるため特に好ましい。
【0035】
アクリロニトリルとスチレンの組み合わせの場合、その割合はアクリロニトリル/スチレンが質量比で90〜40/10〜60が好ましく、85〜60/15〜40が最も好ましい。アクリロニトリルと酢酸ビニルの組み合わせの場合、その割合はアクリロニトリル/酢酸ビニルが質量比で50〜10/50〜90が好ましく、40〜15/60〜85が最も好ましい。
【0036】
上記モノマーの使用量は特に限定されないが、ポリマー分散ポリオール(W)中のポリマー微粒子の濃度としては約1〜50質量%が好ましく、2〜45質量%が特に好ましく、5〜40質量%が最も好ましい。
【0037】
ポリマー分散ポリオール(W)を製造する方法は下記の2通りの方法等が挙げられる。第1の方法は、必要に応じて溶媒の存在下、ポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)およびその他のポリオール(Z)の混合物の中で重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させ直接粒子を析出させる方法である。第2の方法は、必要に応じて粒子を安定化させるグラフト化剤の存在下、溶媒中で重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させ粒子を析出させた後、ポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)およびその他のポリオール(Z)の混合物と溶媒を置換する方法である。本発明ではどちらの方法も採用できるが、ポリマー微粒子の安定性が良好である点で、第1の方法が特に好ましい。
【0038】
重合性不飽和結合を有するモノマーの重合は、通常ラジカル重合が採用される。ラジカル重合の重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNという)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)、ベンゾイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、アセチルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシド、過硫酸塩等が挙げられる。特にAIBN、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)が好ましい。
【0039】
ポリマー微粒子の分散安定性を良くするために、グラフト化剤を使用できる。グラフト化剤としては、ポリエーテル鎖やポリエステル鎖を有する化合物であって、分子内に重合性不飽和結合を有する化合物が使用できる。
【0040】
上記グラフト化剤としては、不飽和結合を分子内に有する活性水素化合物を開始剤として使用し、アルキレンオキシドを付加重合して得られる高分子量のポリオールまたはモノオール;ポリエーテルポリオールに無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を反応させた後、必要に応じてアルキレンオキシドを付加して得られた高分子量のポリオールまたはモノオール;2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブテンジオール等の不飽和結合を分子内に有するアルコールと他のポリオールとポリイソシアネートとの反応物;アリルグリシジルエーテル等の不飽和結合を分子内に有するエポキシ化合物とポリオールとの反応物等が挙げられる。これらの化合物は水酸基を有することが好ましいがそれに限定されない。
【0041】
本発明においてはポリオール化合物として、上述したポリオール(A)を含み、水酸基価が100〜700mgKOH/gであり、かつ、ポリマー微粒子が安定に分散しているポリオール混合物を用いる。ここでポリオール混合物の水酸基価は100〜700mgKOH/gであるが、150〜600mgKOH/gが好ましい。上記水酸基価がこの範囲であれば、良好な物性の硬質フォームが得られる。またポリマー微粒子の濃度としては、ポリオール混合物のうち0.05〜3質量%が好ましく、0.2〜1質量%がより好ましい。ポリマー微粒子の濃度が上記範囲であれば、得られる硬質フォームの収縮が効果的に抑制できる。すなわち、ポリマー微粒子の濃度が25質量%のポリマー分散ポリオール(W)を混合してポリオール混合物を得るとした場合には、ポリマー分散ポリオール(W)の割合は、0.2〜12質量%が好ましく、0.8〜4質量%がより好ましい。
【0042】
上記のポリオール混合物としては、ポリオール(A)、場合によってポリマー分散ポリオール(W)に加えて前述したポリオール(BA)および/またはポリオール(BB)を混合してもよく、さらにその他の活性水素含有化合物を混合して併用してもよい。ここでその他の活性水素含有化合物としては、ポリオール類、多価フェノール類、ポリアミン類が挙げられる。ここで併用してもよいポリオール類とは、ポリオール(A)、ポリオール(BA)、ポリオール(BB)、ポリマー分散ポリオール(W)以外の任意のポリオールであり、ポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y’)、ポリオール(V)からなる群から選ばれる1種以上からなる。ただしアミン系ポリエーテルポリオール(Y’)とは、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)のうち、ポリオール(A)、ポリオール(BA)以外のアミン系ポリエーテルポリオールである。
【0043】
また併用してもよい多価フェノール類としては、前述したポリオール(BA)の製造に用いる開始剤のうちフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられ、具体的には、マンニッヒ縮合物、レゾール型初期縮合物、ベンジリック型初期縮合物、ノボラック型初期縮合物、ビスフェノールA、レゾルシノール等が例示できる。また併用してもよいポリアミン類としては、ポリオール(A)の製造に用いる開始剤の脂肪族アミン、脂環族アミン、および、ポリオール(BA)の製造に用いる開始剤のうちの芳香族アミン類が挙げられる。この芳香族アミン類としては、ジアミノトルエン、ジエチルジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0044】
(発泡剤)
本発明においては、発泡剤として水を用いる。また発泡剤として、低沸点の炭化水素化合物、低沸点の含フッ素化合物、不活性ガスを併用することができる。発泡剤としての水の使用量は、ポリオール化合物100質量部に対して、1〜15質量部が好ましく、2〜13質量部が特に好ましい。水の使用量が1質量部未満であると、得られた硬質フォームが軽くなりにくく好ましくない。また使用量が15質量部を超えて多いと、水とポリオール化合物との混合性が悪くなりやすく好ましくない。環境への負荷が低い点から発泡剤としては、水のみを用いることが好ましい。
【0045】
前記の低沸点の炭化水素化合物としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。また前記の低沸点の含フッ素化合物としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(HFE−236pc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル(HFE−254pc)、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル(HFE−347mcc)等が挙げられる。また前記の不活性ガスとしては、空気、窒素、炭酸ガス等が挙げられる。
【0046】
(ポリイソシアネート化合物)
本発明において、ポリイソシアネート化合物としては、特に制限はないが、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート;前記ポリイソシアネートの2種類以上の混合物;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等のポリイソシアネートまたはこれらのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。このうち、TDI、MDI、クルードMDI、またはこれらの変性体が好ましい。
【0047】
ポリイソシアネート化合物の使用量は、ポリオール化合物およびその他の活性水素化合物の活性水素の合計数に対するイソシアネート基の数の100倍で表して(通常この100倍で表した数値をイソシアネート指数という)、50〜300が好ましい。ここで、触媒としてウレタン化触媒を主に用いるウレタン処方においては、ポリイソシアネート化合物の使用量はイソシアネート指数で、50〜140が好ましく、60〜130がより好ましい。また触媒としてイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を主に用いるイソシアヌレート処方においては、ポリイソシアネート化合物の使用量はイソシアネート指数で、120〜300が好ましく、150〜250がより好ましい。
【0048】
(触媒)
本発明において用いられる触媒としては、ウレタン化反応を促進する触媒であれば特に制限はない。例えば、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどの3級アミン類;ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物が挙げられる。またイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を併用してもよく、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩等が挙げられる。また硬質フォームの製造方法としてスプレー発泡を採用する場合には、反応を短時間で完結させるために、2−エチルヘキサン酸鉛等の有機金属触媒を併用することが好ましい。触媒の使用量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。
【0049】
(整泡剤)
本発明においては良好な気泡を形成するため整泡剤を用いる。整泡剤としては例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤が挙げられる。整泡剤の使用量は、適宜選定すればよいが、ポリオール化合物100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0050】
(その他の配合剤)
本発明では、上述したポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒、整泡剤の他に、任意の配合剤が使用できる。配合剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0051】
(発泡装置)
本発明の硬質フォームの製造方法としては、通常の手発泡でも発泡装置を用いてもよい。発泡装置としては、高圧発泡装置、低圧発泡装置のいずれでも使用できる。また反応条件は適宜選定すればよいが、反応温度としては、0〜50℃が好ましく、15〜45℃がより好ましい。
【0052】
本発明の硬質フォームの製造方法としては、スプレー発泡が特に好ましい。これはポリオール(A)を使用することにより高い反応性が得られるためである。スプレー発泡による製造方法は種々の方法が知られているが、このうち特に配合液をミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡が好ましい。ここでスプレー発泡とは、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物とを吹き付けながら反応させる発泡方法であり、触媒等の選定により反応を短時間で完結させることを特徴とする。スプレー発泡は、建築現場において壁、天井等に硬質フォームの断熱材を施工する際に採用されることが多い。スプレー発泡は、工事現場にて直接硬質フォームを製造することから、工事コストを抑制できる、凹凸のある施工面にも隙間なく施工できる等の長所を有する。具体的な施工例としては、マンション、オフィスビル、プレハブ冷凍倉庫等の断熱材が挙げられ、また近年は高気密用戸建住宅の断熱材としても採用されつつある。
【実施例】
【0053】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお以下の例のうち、例1、2はポリマー分散ポリオールの製造例を、例3〜33は硬質ポリウレタンフォームの製造例を、例34〜63は硬質ウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの製造例を表す。ただし例3〜22および例34〜53は実施例を、例23〜33および例54〜63は比較例を表す。また表中で処方を表した部分の数値の単位は質量部である。実施例および比較例で用いた原料は、各表に示したとおりであるが、その詳細は以下のとおりである。また表中の略号として、ANはアクリロニトリル、STはスチレン、VAは酢酸ビニルを表す。
【0054】
(ポリオール化合物)
ポリオールA1:開始剤としてエチレンジアミンを用い、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が350mgKOH/gのポリオキシエチレンポリオール。
ポリオールA2:開始剤として1−(2−アミノエチルピペラジン)を用い、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が350mgKOH/gのポリオキシエチレンポリオール。
ポリオールBA1:開始剤としてビスフェノールAを用い、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が280mgKOH/gのポリオキシエチレンポリオール。
ポリオールBA2:開始剤としてジアミノトルエンを用い、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとを混合して反応させて得られた、水酸基価が350mgKOH/g、オキシエチレン基の割合が25質量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール。
ポリオールBB1:ジエチレングリコールとテレフタル酸とを重縮合して得られた、水酸基価が250mgKOH/gのポリオキシエチレンポリオール。
ポリオールX1:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとを混合して反応させて得られた、水酸基価が50mgKOH/g、オキシエチレン基の割合が55質量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール。
ポリオールY1:開始剤としてエチレンジアミンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオール。
ポリオールY2:開始剤としてエチレンジアミンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が350mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオール。
ポリオールY3:開始剤としてエチレンジアミンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が500mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオール。
ポリオールY4:開始剤として1−(2−アミノエチルピペラジン)を用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が350mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオール。
ポリオールZ1:開始剤としてショ糖とグリセリンの混合物(混合比は質量比で1.5:1)を用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が300mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオール。
ポリオールZ2:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が650mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオール。
【0055】
(発泡剤)
発泡剤1:HFC−245fa。
発泡剤2:HFC−365mfc。
発泡剤3:HFC−134a。
発泡剤4:シクロペンタン。
【0056】
(例1)
表1に示したポリオールを混合して用いた。5Lの加圧反応槽にこのポリオール混合物のうち70質量%を投入し120℃に昇温した。温度を保ちながら、ポリオール混合物の残り、表1に示したモノマーおよびAIBNの混合物を撹拌下で4時間かけて投入した。投入終了後、温度を保ちながら30分撹拌した。モノマーの反応率は92%であった。反応終了後、120℃の温度、50Paの圧力のもとで2時間かけて未反応モノマーを除去した。以上によりポリオールW1を得た。ポリオールW1の水酸基価は325mgKOH/g、25℃における粘度は4000mPa・sであった。
【0057】
(例2)
表1に示したポリオールを混合して用いた。5Lの加圧反応槽にこのポリオール混合物、表1に示したモノマーおよびAIBNの混合物を投入した。撹拌下で80℃まで昇温した。温度を保ちながら10時間撹拌した。モノマーの反応率は85%であった。反応終了後、110℃の温度、50Paの圧力のもとで2時間かけて未反応モノマーを除去した。以上によりポリオールW2を得た。ポリオールW2の水酸基価は330mgKOH/g、25℃における粘度は1500mPa・sであった。
【0058】
(例3〜33)
表2〜4に示したポリオールを混合してそれぞれ用いた。また発泡剤は表2〜4に示したものを用いた。ポリオール混合物および発泡剤に以下の発泡剤、触媒、整泡剤、難燃剤を添加、混合してポリオール組成物とした。触媒としては、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(商品名:カオライザーNo.10、花王社製)を用いた。その使用量は、ゲルタイムが25秒となる量とした。整泡剤としては、シリコーン整泡剤(商品名:SH−193、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を1.5質量部用いた。難燃剤としては、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート(商品名:TMCPP、大八化学社製)を10質量部用いた。ポリイソシアネート化合物としては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名:MR−200、日本ポリウレタン工業社製)を用いた。ポリイソシアネート化合物の使用量は、イソシアネート指数で110となるようにした。
【0059】
ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを液温20℃で混合し、縦200mm×横200mm×高さ200mmの木製の箱内に投入し、硬質ポリウレタンフォームを発泡、製造した。
【0060】
(例34〜63)
表5〜7に示したポリオールを混合してそれぞれ用いた。また発泡剤は表5〜7に示したものを用いた。ポリオール混合物および発泡剤に以下の発泡剤、触媒、整泡剤、難燃剤を添加、混合してポリオール組成物とした。触媒としては、N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン(商品名:ポリキャット41、エアプロダクツ社製)と、2−エチルヘキサン酸カリウムのジエチレングリコール溶液(カリウム濃度15%、商品名:プキャット15G、日本化学産業社製)とを、2質量部対3質量部の比率で混合して用いた。その使用量は、ゲルタイムが25秒となる量とした。整泡剤としては、SH−193を1.5質量部用いた。難燃剤としては、TMCPPを20質量部用いた。ポリイソシアネート化合物としては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名:MR−200、日本ポリウレタン工業社製)を用いた。ポリイソシアネート化合物の使用量は、イソシアネート指数で200となるようにした。
【0061】
ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを液温20℃で混合し、縦200mm×横200mm×高さ200mmの木製の箱内に投入し、硬質ウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームを発泡、製造した。
【0062】
(評価)
得られた硬質フォームの、コア密度(単位:kg/m)、低温収縮度(単位:%)、高温収縮度(単位:%)、初期接着性およびセル外観を評価した。低温収縮度は−30℃で24時間経過後の発泡方向に対して垂直方向の寸法変化率を、高温収縮度は、70℃、48時間経過後の発泡方向に対して垂直方向の寸法変化率を示す。初期接着性に関しては、発泡前に箱中にラミネート紙を敷いて発泡、撹拌30分後にフォームを脱型した後、ラミネート紙を剥がしたときの接着性を、良好○、不良×で評価した。セル外観は製造されたフォームを切断し内部のセル状態、および、フォーム底面の荒れ状態を○:良好、×:不良で評価した。
【0063】
表2〜7に示したように、本発明の硬質フォームの製造方法により製造された硬質フォームはいずれも密度が低く、かつ、良好な初期接着性、セル外観、寸法安定性を示した。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
(評価2)
次に例3〜10、17〜22、34〜41および、48〜53で使用したポリオール組成物に、2−エチルヘキサン酸鉛のミネラルスピリット溶液(鉛濃度:20%、商品名:ニッカオクチックス鉛20%、日本化学産業社製)を1.0質量部さらに添加して混合した。この液と、ポリイソシアネート化合物としてC−1155とを、液温35℃、室温10℃にて、ガスマー社発泡機を用いてスプレー発泡にて、壁面に吹きつけ施工を実施した。
【0072】
その結果得られたフォームは、室温10℃と冬場を想定した低温下で製造したにもかかわらず、良好な発泡経過を示し、得られた硬質フォームの密度は、コア密度が31kg/m以下と充分低く、良好なセル外観、初期接着性、自己消火性を示した。
【0073】
硬質ウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの製造例である例34〜41、および、例48〜53の硬質フォームについては、そのコア部分を厚さ15mmに切り出し、コーンカロリーメーター(東洋精機製作所社製)にてISO5600Part1に準拠した燃焼試験を実施した。その結果所定の難燃性能を満足することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る、軽量で接着性に優れる硬質フォームの製造方法は、建築現場で施工されるスプレー発泡による硬質フォームの施工に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、
ポリオール化合物として、下記ポリオール(A)を含み、水酸基価が100〜700mgKOH/gであり、かつ、ポリマー微粒子が安定に分散しているポリオール混合物を用い、発泡剤として水を用いることを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(A):開始剤として脂肪族アミンおよび脂環族アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種を用い、エチレンオキシドのみを開環付加重合させて製造された、水酸基価が150〜800mgKOH/gであるポリオキシエチレンポリオール。
【請求項2】
前記ポリオール(A)の開始剤としてピペラジン類を用いる請求項1に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオール混合物が下記ポリオール(BA)および/またはポリオール(BB)を含む請求項1または2に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(BA):開始剤として芳香族化合物を用い、アルキレンオキシドを開環付加重合させて製造された、水酸基価が100〜700mgKOH/gであるポリオキシアルキレンポリオール。
ポリオール(BB):芳香族化合物を含むモノマーを重縮合して製造された、水酸基価が100〜700mgKOH/gであるポリエステルポリオール。
【請求項4】
前記ポリオール(BA)の開始剤として、マンニッヒ縮合物、ジアミノトルエンおよびビスフェノールAからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる、請求項3に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記ポリマー微粒子が重合性不飽和結合を有するモノマーを重合して得られる請求項1、2、3または4に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2010−18817(P2010−18817A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249234(P2009−249234)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【分割の表示】特願2003−334583(P2003−334583)の分割
【原出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】