磁性粒子測定デバイスおよび方法
本発明は、磁気標識された検体(12)の定性的および定量的測定のためのデバイス(10)に関する。このデバイス(10)は、試験基材(11)に吸収されたサンプルから検体(12)を測定するためのコイル配列(13、18)を含んでいる。このコイル配列は、少なくとも1個の測定コイル(13)とそれに接続して配列された基準コイルから形成される。このコイル配列(13、18)の信号から磁気標識された検体(12)の含有物と相関するインダクタンスの変化が検出されるように構成されている。入力信号(31)の周波数で測定されるように構成された、コイル配列(13、18)の出力信号(32)に現れる振幅および/または位相の変化(ΔA、Δφ)から、インダクタンスの変化が検出されるように構成されている。また、本発明は、これに対応する方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気標識された検体の定性的および定量的測定のためのデバイスに関し、このデバイスは、試験基材に吸収されたサンプルから検体を測定するために、少なくとも1つの測定コイルとそれに接続して配列された基準コイルから形成されるコイル配列を含んでおり、このコイル配列の信号から磁気標識された検体の含有物と相関するインダクタンスの変化が検出されるように構成されている。また、本発明は、これに対応する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
例えば分析試験において、磁性粒子を測定するための数多くの方法および装置が従来技術から知られている。例えば、フィンランド特許番号第113297号は、試験基材に吸収されたサンプルから検体を測定するためのいわゆる無定位コイル配列の使用に関する着想を開示している。その中では、磁気標識された検体の含有物と相関するインダクタンスの変化を検出するためにコイル配列が用いられる。
【特許文献1】フィンランド特許第113297号
【特許文献2】国際公開WO2005/111614号
【特許文献3】国際公開WO2005/111615号
【特許文献4】国際公開WO03/076931A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のコイル技術をこのような配列に適用することは、例えば、装置の感度に関連する重大な問題を伴う。これらのいくつかの例は、コイルのループの容量性寄生電流である。別の問題はコイルの非対称性ということができ、これは例えばコイルの手動巻線により生じる。
【0004】
磁性粒子の磁性ひいてはコイルシステムにおいてそれらが作り出すインダクタンスの変化は、例えば、環境または試験基材それ自体に起因するエラー信号と比較して非常に僅かである。したがって、装置を用いて得られる測定結果には不十分な点が多い。
【0005】
加えて、従来技術による試験基材のせいで、例えば試薬が高価なために試験基材上での検体の反応の発生が非常に小規模である。したがって、デバイスに対する試験基材の配置が、例えば、誤った配置が試験結果を歪める可能性があると同時に困難な問題を生み出す。加えて、試験基材には、特に巻かれたコイル構造に関する特別な要求がある。
【0006】
国際公開WO2005/111614号およびWO2005/111615号に開示された解決法も、分析迅速試験におけるコイルデバイスの適用を知らせるものである。これらは、共振周波数の変化からインダクタンスの変化を検出することに基づいている。共振周波数の変化を測定すると、コイルのインダクタンスまたはコンデンサの容量が変化する際にLC回路の共振ピークが異なる周波数に変化する。しかしながら、コイルの低いインダクタンスが問題を生じる。あらゆる種類の寄生現象は低いインダクタンスを持ったコイルに容易に結びつく可能性があり、故にそれらはこの周波数形態で測定された信号からも区別することができる。
【0007】
国際公開WO03/076931A1号は、従来技術から知られるさらに別の測定方法を開示している。これも周波数の変化の検出に基づいている。
【0008】
様々ないわゆるSQUID型方法も知られている。しかしながら、それらの動作原理は非常に低い温度、絶対零度近傍での動作を要求する。これにより、例えばPOCT(Point of care testing)用途において装置が複雑化することになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、磁気標識された検体を定性的および定量的に測定するための改良されたデバイスおよびこれに対応する方法を提供することを目的とする。これによって、例えば室温で動作するコイル配列に基づいて、既知の装置を用いる場合よりも実質的により正確な測定情報を生成することができる。本発明によるデバイスの特徴は添付の請求項1に記載され、それに対応する方法の特徴は請求項15に記載されている。
【0010】
本発明のデバイスによれば、コイル配列の出力信号に現れる振幅および/または位相の変化からインダクタンスの変化が検出されるように構成され、これは入力信号の周波数で測定されるように構成されている。
【0011】
一実施形態によれば、誘導性リアクタンスを抵抗よりも大きくなるように増大させるために、本デバイスで用いられる測定周波数は105〜109Hz、好ましくは106〜108Hzとなるように構成されている。このような非常に高い測定周波数を用いることにより、このデバイスを用いて得られる測定結果の精度が驚くほど改善される。
【0012】
より高度に開発された一実施形態によれば、デバイスはさらにエラー信号を補償するコイル配列を含むことができ、このコイル配列はいくつかの異なる方法で形成可能である。コイル配列は、例えば環境および/または非特異的に試験基材に結合された磁性粒子に起因するエラー信号を補償するために用いることができる。基準コイルは、一方でこの補償目的に用いることもできる。それはとりわけ、試験基材に起因するエラー信号を補償するために用いることができる。なお、無論、本発明によるデバイスにおいて、基準コイルが他の機能も有しており、これに関連して言及される補償機能は他の機能を何ら排除するものではない。一実施形態による補償構成は、例えば差動コイルシステムとして実施可能である。この差動コイルシステムの一例は、インピーダンスブリッジである。その場合には、測定コイルおよび基準コイルは補償構成に関連する。
【0013】
本発明によるデバイスによって、非常に弱い磁性検体の場合でも非常に正確な測定結果が得られる。測定で適用される高い測定周波数および差動コイル構成は、デバイスが、その温度条件の観点で、室温での使用にも極めて適していることを意味している。従来の周波数測定と比較すると、本発明によるデバイスおよび方法は、測定した出力信号から容易に区別できないので寄生現象に対して感度が低く、位相差および/または振幅が入力信号の周波数で測定される。
【0014】
一実施形態によれば、デバイスは非常にエンドユーザに使い易くすることもできる。試験基材がコイル配列と相互作用するように一体化されれば、別個にコイル手段との接続設定をする必要がなくなる。サンプルを基材上に置き、測定を行えばよくなるであろう。デバイスの実施形態としては、これは特に精確にミクロサイズスケールのコイルにおいて、例えばポイントオブケア試験すなわちPOCT用途が考えられる。
【0015】
本発明によるデバイスおよび方法の他の特徴は添付の請求の範囲に記載され、達成されるさらなる利点は発明の詳細な説明に列挙されている。
【0016】
以下において、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、添付の図面を参照してより詳細に検討される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明によるデバイス10およびこれらのデバイス10に基づく測定方法によって、試験基材11から磁性粒子の量を検出することが可能である。この測定は、コイル配列13、18〜20の使用に基づいており、その動作において磁性粒子の存在が検出可能な発散を生じさせる。
【0018】
図1〜図3は、磁気標識された検体12の定性的および定量的測定のための、本発明によるデバイス10における使用に適したコイル21の簡略化された数例を示す。
【0019】
図1は、コイル21の第1の例を示し、これはデバイス10に適用可能である。この場合には、コイル構造が平面状矩形螺旋を形成し、その巻き数はここでは2である。長尺の試験基材11は全く自由に配置可能であるが、いずれにしてもコイル21に対して、より一般的にはデバイスのコイル配列に対して非対称である。この場合には、試験基材11がコイル21を横断しており、その長手方向は接点端子14、15により定められる方向に対して直角とされ、この接点端子14、15からコイルループ21が接続可能である。このようなコイル21のインダクタンスの範囲の例は略1pH〜1mH、より具体的には1nH〜1000nHであり、抵抗の範囲は略1〜100Ω、より具体的には10mΩ〜10Ω(使用される測定周波数に依存する)である。一般に、抵抗およびインダクタンス値の主な有効因子はコイルの寸法であるといえる。この場合は、所与の測定値が後述のコイル寸法に適合されている。
【0020】
図2は、デバイス10で用いられるコイル21の第2の例を示している。この実施形態が示すように、コイル21の構造は実に非常に簡単にできる。ここでは、コイルが単層の導体ループのみで形成されており、図1に示すコイル構造の簡略化されたバージョンである。導体ループは単層巻線平面コイル21を形成し、これにより試験基材11から磁性粒子12との相互接続をなすことが可能である。この場合にも、コイルループ21は、接点端子14および15から接続されるが、この例では接点端子14および15が同じ側にある。このようなコイル構造のコイルループ21のインダクタンスの範囲の一例は1nH〜20nHとすることができ、抵抗の範囲は1mΩ〜100mΩとすることができる。
【0021】
図3は、単層コイル21の構造の第3の例を示している。この場合、コイル21は上述した2つの例におけるよりもさらに簡単な構造で形成されている。この例は、コイル21が試験基材11を横断して引き出された直線導体構造、導体梁で形成することさえできることを示している。簡単な構造であるが、導体ビーム21は、電子素子に接続されれば電気回路においてコイル部品を形成するので、この構造もやはり議論の余地なくコイルである。ここでも、導体21は接点端子14、15から接続可能である。このような構造のインダクタンスの範囲の一例は100pH〜3nH、抵抗の範囲は0.1mΩ〜10mΩとすることができる。
【0022】
図4および図5は本発明によるデバイス10のいくつかの実施形態を示し、ここでは図1〜図3に示したコイル構造を適用することができる。本発明によるデバイス10では、試験基材11に吸収されたサンプルから検体12を測定するコイル配列が、導体構造で形成された少なくとも2個のコイル13、18をその基本形状に含んでおり、コイルの導体構造は例えば平面状であり互いにガルバニー的に接続されている。なお、図1〜図10は簡略化のために、デバイス10の実施に必要である、または求められ得る、回路基板22上で必要とされるであろう絶縁体や測定電子素子に関連する機器を示していない。図6はこのような全ての詳細を有する全体を示している。
【0023】
図4に示したデバイス10は、2個の平面状四角形螺旋形状コイル13、18を含んでおり、その両方が同一平面状で互いに隣り合い、直列に接続されている。コイル13は実際の測定に用いられ、測定コイル13の基準としてのコイル18が近接しており、この場合コイル18は、一方で、補償構造を形成する。測定コイル13に接続された基準コイル18は、例えば測定コイル13の同一の複製としてもよく、測定コイル13に対して対称的に整列された鏡像としてもよい。同一の複製または鏡像特性を用いることにより、コイル配列の耐干渉性が改善される。コイル13、18間の距離は、測定の観点からそれらが十分に互いに近接するように、一方で測定の観点からコイル13、18の磁界が互いにあまり相互作用しないように構成される。コイル13、18は、同じ方向に巻かれる。
【0024】
なお、測定コイル13および基準コイルは、単一の小型の全体性を形成することによって、測定コイル13および基準コイルにより形成されるコイル配列およびそれらに対して設置される試験基材11が互いに相互作用し、その出力は単一の測定信号32であり、その信号から入力信号31の周波数で測定された振幅および/または位相の変化ΔA、Δφ(デルタA、デルタファイ)から、検査される検体に関する必要な結論が引き出される。これにより、センサ10の構造および動作が簡単になる。
【0025】
この例では単一の基準コイル18を含んでいる基準コイル配列は、本発明によるデバイスにおいて互いに排除しないいくつかの異なる影響をもたらす。基準コイルの第1の機能は、自己インダクタンス、抵抗、抵抗の温度依存、および測定コイル13の容量を補償することである。一般に、コイル13自体に起因する電気パラメータおよびそれらの磁性粒子に起因しない変化の補償と言うことが可能である。コイル13、18の自己インダクタンスが同じ場合、粒子の量に比例する差分が測定コイル13の出力に現れ、このため、測定が差動であると言える。また、基準コイル18は、一方で試験基材11および/または環境に起因する誤差を補償するために用いることもでき、これは一方で配列の差動的な性質にも関連する。例えば、試験基材11で非特異的に結合された粒子、コイルの巻線および試験基材11の材料間の可能な容量性接続、ならびにサンプルと粒子とを搬送する媒体(サンプル溶液または類似物)およびコイルの巻線間の容量性接続を、試験基材11に起因する誤差として分類することができる。環境に起因する誤差の源は、例えば温度変動に起因する抵抗の変化、入力電子素子23から誘発されるエラー信号、地球の磁界、およびその他の障害である。
【0026】
試験基材11上の粒子12は、測定コイル13を用いて検出される。この測定は、いわゆる中間出力測定としてコイル13、18間の接点15から行うことが可能である。試験基材11が無粒子の場合には、接点14、16からコイル13、18に供給される交流電流信号は、中間出力15において合計ゼロとなる。コイル配列に属する測定コイル13の磁界は検出される粒子を磁化するために用いられ、この粒子は少なくともデバイス10の測定コイル13と相互作用する。磁化した粒子が測定コイル13自体の磁界を補強するので、測定コイル13はこの変化をインダクタンスの変化として見なす。測定コイル13の磁界を強化した結果として、入力信号の接地と比較され、粒子数に比例する電圧が中間出力15に現れる。これに関連して、差動接続と言うことがまさしく可能である。すなわち、出力は2つの信号間の差分である。
【0027】
故に、デバイス10のコイル配列13、18〜20は、磁気標識された検体12の含有物に対応するインダクタンスの変化を検出するために用いることができ、本発明によるデバイス10および方法では、インダクタンスの変化は入力信号31の周波数で測定されたコイル配列の13、18の出力信号32に現れる振幅および/または位相の変化ΔA、Δφから測定される。一実施形態によれば、これは測定コイル13および基準コイル18の中間出力15の振幅および/または位相の変化ΔA、Δφから測定することができる。この測定方法は、本明細書で後に述べる格別な利点を達成した。インダクタンスの変化は粒子の数および位置に比例するが、これは意図した測定結果であり、そこから試験の結果に関する結論が導かれる。本発明によるデバイスの場合には、コイル導体の特性を測定するインピーダンス/インダクタンスセンサと言うことがまさしく可能である。
【0028】
図4では、試験基材11が測定コイル13のみの上面に置かれている。あるいは、図5の実施形態に示すように、試験基材11を両コイル分岐13、18上に配置することもできる。接点端子14〜16からコイル13、18により形成される測定配列への電気的接続がある。
【0029】
図5は、差動センサループ対の第2の実施形態であり、互いに平行な2個の単一巻線平面コイルループ13、18で形成されている。この構造は図4に示した実施形態よりも若干簡単であるため、製造がより安価にできる。本実施形態では、磁性粒子12を含む試験基材11が両コイル13、18の上面に横断するように置かれる。両コイル13、18の上面に試験基材11を有するので、とりわけ試験基材11に起因する測定誤差の解消が改善される。接点端子14〜16から測定システムに接続されており、そのうちの端子15はここでも両コイル13、18に共通の中間出力である。なお、各コイル13、18は、この実施形態によらないそれ自体の接点端子14〜16を有してもよい。
【0030】
両実施形態において、測定コイル13および測定コイル13用の補償構造を形成する基準コイル18が、ひいては差動コイル配列を形成している。測定コイル13に接続して配列された基準コイル18は、測定コイル13のインダクタンス変化に相関する出力信号32の振幅Aおよび/または位相φを差動的に測定するために用いることができる。これにより、環境干渉や、特に過剰な非特異的に配置された磁性粒子に起因するエラー信号を最小限に抑える。
【0031】
デバイス10は、エラー信号用の補償構造を複数個含んでいてもよい。この構造の数および測定コイル13への接続は、それぞれのケースでの測定の変動に依存する。
【0032】
図6は、回路コンポーネントでモデル化されたデバイス10の実施形態を示し、ここでは4個のコイル13、18〜20を用いたブリッジ測定原理が適用される。複数の追加的な補償構造19、20または単数の構造およびそれらの配置(例えば、対称、重なり)は、この場合には主に環境に起因するエラー信号をなくすために用いることができる。エラー信号は、例えば電磁気機械およびデバイスに起因するほか地球の磁界にも起因することがある。加えて、ブリッジ測定は「浮遊測定」を可能にし、この測定では、信号は、他の誤差の原因になり得る接地電位と比較されない。
【0033】
この例では、補償構造は基準コイル18だけでなく少なくとも2個の追加コイル19、20を含んでいる。この場合、測定コイル13、基準コイル18、および補償構造19、20が互いに関連してインピーダンスブリッジに配列されている。また、コイル13、18〜20は互いに対して対称的にも配列されている。そのような場合、コイル13、18〜20は、例えばコイル13の同一の複製としても鏡像としてもよく、それらの特性が配列の干渉耐性を改善するために用いられる。したがって、測定コイル13、基準コイル18、および補償構造19、20は、例えばそれらのインダクタンス、抵抗および/または容量が同じ大きさでもよい。故に、それらの電気パラメータの少なくともいくつかは同じ大きさとしてよい。同一コイルの適用により、全てのインピーダンスが主として同じ大きさとなるのでブリッジ測定の感度が大幅に高められる。
【0034】
インピーダンスブリッジは、このように測定コイル13、その基準コイル18、およびそれらの補償コイル19、20で形成される。試験基材11は、例えば図8〜図10に示す方法で少なくとも測定コイル13と、この例では基準コイル18上にも配置可能である。残りのコイル19、20は補償用である。図6では、コイル13、18〜20がそれらの略等価な回路(コイルL、直列抵抗R、および並列コンデンサCp)を表すように示されている。信号源は参照番号23で示されている。
【0035】
図6は、共振コンデンサを配置するいくつかの可能な方法(CR1〜CR6)も含んでいる。共振コンデンサの配列方法の一例は、回路の入力側のコンデンサを直列に接続し、また測定側のコンデンサを並列に接続するように配列することである。コンデンサは、共通の基材22上にコイル13、18〜20とともに製造することが可能である。この利点は、信号を増大する第1の増幅段を容易に達成することである。
【0036】
ブリッジ接続では、信号32は2個の別々のコイル対間で測定される。測定コイル対13、18の中間出力15から得られる信号32は、対応する無粒子の補償コイル対19、20の中間出力17と比較されるので、差動測定と言うことも可能である。同様に、「浮遊測定」と言うことも可能である。というのは、実際の出力、すなわち測定信号32が接地電位と比較されるためであるが、これはガルバニー接点でなく例えば入力デバイス23の接地電位である。
【0037】
図8〜図10は、4コイルブリッジ測定のためにコイル13、18〜20を配置するいくつかの可能な方法を示している。図8は、一実施形態を示しており、ここでは全てのコイル13、18〜20が同じ高さにあり、マトリクス状構造とされている。この構造では、測定コイル13および基準コイル18が測定信号導体15および17について対称的に整列されている。補償コイル19、20は、同じ高さの四角形状に互いに隣り合っている。また、補償コイル19、20は少なくとも一軸について測定信号導体15、17と第1のコイル対13、18に対称的である。測定信号導体15、17を出る電流は入力信号導体14、16に入ってくる電流よりもかなり小さいために、この種の対称的配列は例えば干渉の補償において重要な更なる利点を達成する。対称的連続性は、コイル13、18〜20の影響範囲まで及ぶこともできる。コイル13、18〜20の影響範囲は、環境干渉が支配的になると終わるといえる。
【0038】
磁性粒子12を含んだ試験基材11は、両コイル13、18の上面に横断するように配置されている。入力信号導体14、16は回路カードの側に配置されており、測定信号導体15、17は、中間に2つの高さで配置されている。出力信号32は、2個の測定信号導体15、17間(図6の「出力」)で測定される。
【0039】
図9は、ブリッジ測定の別の実施形態を示している。この実施形態では、コイル対13、18、19、20が互いの上面に置かれている。一般に、層状配列と言うことができ、この配列では、コイルの少なくともいくつかが他のコイルに対して異なる高さにある。そして、同じ高さのコイル13、18は、例えば対で対称となるように互いに平行となる。重要な非特異的結合が少ない場合は、より詳細に後述するように、これらのコイル13、18〜20を単独にすることができる。
【0040】
測定コイル13および基準コイル18は、ここでも測定信号導体15、17について対称的に整列されている。入力信号導体14、16は側部にくる。図8に示した実施形態とは異なり、補償コイル19、20はここでは測定コイル13および基準コイル18の下側にある。本実施形態では、磁性粒子12を含んだ試験基材11は、両「コイルスタック」の上面に横断するように配置されている。この場合、コイル13、18〜20の積層された幾何学的配置は図8に示した実施形態よりもより良く干渉を最小限に抑える。また、本実施形態により、試験基材11上にコイルをより良好に配置することができる。これは、特に側方流動試験を用いる場合の利点である。
【0041】
図10は、ブリッジ測定の第3の実施形態を示しており、コイル対13、18〜20はここでも同じ高さにあるが、この基材では列形状となっている。同様に、測定コイル13および基準コイル18は、測定信号導体15、17について対称的に整列されている。また、この場合、入力信号導体14、16は側部から出ている。補償コイル19、20は、ここでは測定および基準コイル13、18の両側のコイルアレイの端部にある。磁性粒子12を含んだ試験基材11は、同様にコイル13、18〜20の上面に横断するように配置されている。この構造の一利点は、試験基材11に関してより良好な整列であることである。
【0042】
さらに別のブリッジ測定実施形態によれば、コイル13、18〜20はポスト上に同軸に配置することもできる。この場合、図9を参照すると、測定および基準コイル13、18の信号導体は、図9とは異なって、例えばフライス削りにより必要に応じて絶縁材料をコイル周囲から除去することができるように配設することができる。このように、測定および基準コイル13、18は、それらの周囲、例えば他の導体等よりも明らかに高くできる。例えば、図9の導体17は導体15の後方下側に配設することもできる。この構造の利点はいくつかの試験基材上により良く整列することである。
【0043】
一実施形態によれば、試験基材11は、別体の使い捨て基材22(図10)上のセンサ構造13、18〜20に一体化することもできる。その場合は、少なくとも測定コイル13は試験基材11の直近に一体化され、試験基材11に取付けられるか少なくとも非常に近接される(距離<コイル13の直径の1/10)。いずれにしろ、配列とは関係なく、試験基材11およびコイル配列、最低限測定コイル13間の相互作用接続と言うことが可能である。このようなデバイスにおいて、これに対応する試験基材11とコイル13、18との接続を行う方法も可能であり、このデバイスに対して試験基材11を着脱可能な方式とすることができる。同じ基材22上で、コイル(基準コイル18、補償コイル19、20)のいくつかまたは全ておよび/または測定電子素子の少なくとも一部または全てでさえ一体化することも可能である。一体化された使い捨て基材22は、例えばガルバニー的、容量的、または誘導的に残りの電子素子に接続することができる。
【0044】
上述した実施形態が示すように、試験基材11はコイル平面に平行(XY平面)であるだけではなくコイル平面に垂直(Z軸)にも配置可能である。試験領域は、測定コイル13を横断させることもできる(XY平面上)。
【0045】
一体化の度合いにかかわらず、本発明によるコイル配列は、通常、絶縁体または半導体上に製造することができる。このような絶縁体は、例えば、ガラス(石英)、プラスチック(FR4)、または半導体酸化物(SiO2)であってもよい。用いられる絶縁体材料は、製造技術に依存する。測定コイル13、基準コイル18、および可能な補償コイル/構造19、20は、例えば銅、アルミニウム、金、または銀等の導電性金属から作成することができるが、例えば導電性ポリマまたはドーピングされた半導体等の他の導電体からも作成できる。この構造を製造するために、例えばフォトリソグラフィ、ウェットまたはドライエッチング、ドーピング、メタライゼーション、印刷電子工学、および/または肥厚技術等の例えばマイクロマシニング方法を用いることが可能である。この構造は、例えばフライス加工等の機械加工方法を用いて作成することもできる。
【0046】
一実施形態によれば、例えば測定コイル13等のコイル配列の誘導性リアクタンスを増大させるために、デバイス10の測定周波数を従来技術の既知の測定周波数よりも高く適合させることができる。このような測定周波数の一例は、105〜109Hz、特に106〜108Hzとすることができる。デバイス10のコイル13の小さい寸法10−7〜10−1m、特に10−5〜10−3m、および高い測定周波数105〜109Hz、特に106〜108Hzでは、従来のインダクタンス変化測定デバイスおよび方法よりも優れた感度が達成される。本発明による方法では、測定はコイル配列10に供給される入力信号31と同じ周波数を用いて行われる。いくつかのケースや測定配列においては周波数が変化することもあるが、本発明のケースでは周波数が測定されないためこれは検出されない。周波数変化の代わりに、入力信号31の周波数における出力信号32の振幅Aおよび/または位相φが測定される。
【0047】
本発明の観点では、試験基材11も非常に多くの形状をとることができる。これらのいくつかの例として、いわゆる側方流動試験、ピット試験、毛細管、マイクロフルイディクスチャネル、マイクロアレイ、またはデバイス10の近傍内に測定される粒子を送り込むいくつかの他の方法がある。より多くの粒子を搬送するためには、その簡便さ、信頼性、および安価の理由から後流動試験を用いることが可能である。より少ない量の粒子および小さいセンサ搬送フォーマットから特別な配置精度(コイル13からの距離)が期待される。マイクロフルイディクスは側方試験よりも適しており、試験基材11はコイル13に接続して永久的に一体化されてもよく、これによりコイル13と試験基材11の互いに対する位置について非常に高い位置精度を可能にする。
【0048】
個々の粒子の直径は、本発明によるデバイス10を用いて規定可能であり、例えば1nm〜10μmの範囲とすることができる。特に注目されるのは、試験基材によるが、例えば直径が30nm〜10μmの範囲または特に100〜600nmの範囲の粒子塊であり、これらは例えばより小さい5〜30nmの粒子から形成されている。マグネタイトまたは対応する磁性材料の量は、例えば1ng〜1mgのオーダであり、対応するサンプル体積は例えば1nl〜1mlの範囲である。その場合、試験基材上の粒子数は1〜1012粒子の範囲、特に103〜1010(例えば側方流動試験)または1〜108(例えば小型化診断)の範囲とすることができる。一般に、粒子のサイズおよび数の最小値および最大値は、使用されるコイル配列の用途および寸法に依存する。
【0049】
測定コイル13の形状ならびにデバイス10に属してもよい他のコイルデバイス18〜20の形状は、例えば多角形(例えば、四角形、矩形、三角形、六角形)または丸形(例えば、円形、楕円形、オメガ形)、場合により螺旋状、平面状、連続的、導電性、通電導体構造とすることができる。
【0050】
本発明によるデバイス10では、少なくとも1つのコイル構造13の導体構造の少なくとも1つの寸法は、数マイクロメータから数百マイクロメータの大きさの範囲のオーダである。故に、例えば、導体の高さすなわち厚さ(および同時に絶縁間隔および巻線間隔)を10−7〜10−4m、導体の幅を10−6〜10−4mとすることができる。ここで、導体の高さおよび厚さの用語は基材22に垂直な方向を指し、幅の用語は基材22の平面に平行な方向を指す。
【0051】
デバイス10に属する各コイル13、18〜20の平面に平行なスケール(その平面の断面および/または長さおよび/または幅)は、例えば10−7〜10−2m、特に10−5〜10−3mである。これは、特に複数個の導体で形成したコイル構造のケースである。製造技術によって、平面に平行な寸法の例は3mm×3mmまたは300μm×300μmとすることができる。これに対応して、コイル13、18〜20の巻きの間隔は、例えば100μmまたは10μmとすることができる。ブリッジ構造を適用したコイル構造では、コイル13、18〜20の互いからの距離は1〜5mm、例えば1〜3mm等とすることができる。故に、一般にマクロまたはマイクロコイルと言うことが可能である。
【0052】
試験基材11のサイズおよびその反応領域は、用いる用途および粒子数に依存する。比較的多数の粒子の搬送に適した側方流動試験は、例えば3mm幅、50mm長、および数百マイクロメータ厚とすることができる。側方流動試験の試験領域の表面積は、例えば3mm×1mmまたは5mm×1mmとすることができる。このような試験では、粒子分布を例えばストリップ11の全厚さにわたって比較的一様な分布とすることができる。比較的少数の粒子の搬送により適しているマイクロフルイディクスのチャネル径は例えば約100μm、試験領域の表面積は例えば約300μm×300μmとすることができる。マイクロフルイディクスを用いて実施される試験では、粒子分布が例えば試験領域の表面か、またはその直近となる。
【0053】
コイル13、18〜20の寸法は測定システムの感度に重大な影響を及ぼす。図1〜図3に示す実施形態は、平面コイルの基本的な幾何学的配置を示す。簡略にするために、ここでは矩形コイル形状のみが示されている。他の可能なコイル形状については既に述べた。図1〜図3の実施形態におけるコイルの巻き数、長さ、厚さ、および幅は、互いに相対的に変更してもよい。コイルの電気的特性は、その幾何学的配置と寸法によって決まる。測定およびシミュレーションに基づく概算推定値がその変動値(それらに限定されない)について、インダクタンスおよび抵抗について上記されており、ここで、銅製コイルの断面積は約36μm×100μmであり、XおよびY方向のコイルの断面は2〜4mmである。これらの値から決まるインピーダンスは用いる周波数に依存する。
【0054】
以下は、本発明によるデバイス10の動作原理およびこれに対応する方法の簡単な説明である。磁性粒子12は、適当な試験基材11を用いて測定コイル13の測定領域に送り込むことができる。粒子は、コイル13の磁界の影響下でコイル13の環境の磁界を強化する。コイル13は、この影響を環境の比透磁率の変化として受ける(μr>1)。これにより、測定コイル13のインダクタンス(L0)の変化(ΔL)が引き起される。
【0055】
ΔL=L0(μr−1)
XL=ω0L0
粒子数に比例するインダクタンスの変化(ΔL)は、誘導性リアクタンス(XL)の変化(ΔXL)に起因する全インピーダンスの変化(z)として検出することができる。これにより、高い周波数での振幅Aおよび/または位相φの測定能力が向上する。LC回路もこの測定に用いることができるが、その場合も測定されるのは振幅A(y軸)であって周波数ではない。
【0056】
コイル13のインダクタンス(例えば1〜100nH)およびその変化(例えば約50fH〜50pH)は、高周波電圧の振幅および/または位相変化ΔA、Δφまたは測定コイル13に供給される電流信号31の測定によって検出することができる。信号源23により与えられる入力電圧は0.1〜10Vの間、特に0.5〜2.5Vの間で、入力電流(インピーダンス)は0.001〜10Aの間、特に0.05〜1Aの間で変更することができる。入力電圧/電流の周波数は105〜109Hzの間、特に106〜108Hzの間(例えばマイクロコイル用)で変更することができる。周波数の例としては、一マクロスケールパイロット装置における5〜20MHz、特に7〜14MHzの使用を参照すると、振幅および/または位相変化ΔA、Δφの測定は、磁性粒子に露出する前後の測定コイル13のインピーダンスおよび/または位相φの絶対値を監視することによって実施でき、この監視はコイル配列10に供給される入力信号31の周波数を用いて行われる。このような測定配列における最大の問題は外部干渉であり、これは測定結果を歪めて測定の信頼性を低下させるが、その影響は補償構造18〜20を用いて驚くほど排除することができる。
【0057】
例えば、図4および図5に示す差動構造を用いて比較を行うことができ、この構造は空の測定コイル13に起因する測定信号からの信号(コイルのインピーダンスおよび環境干渉)を離れた基準コイル18において補償するために用いられる。このような差動構造は図4に示されている。この構造では、2個の同一の螺旋コイル13、18が直列に接続され、高周波電圧または電流信号31がコイルに供給されている(上記した通常の電流、電圧および周波数の変更範囲)。理想的な状況では、両コイル13、18がインダクタンスおよび抵抗において完全に同一であると仮定することが可能である。故に、両コイル13、18にかかる電圧はコイル13、18間の中間出力15において合計ゼロとなるべきである。磁性粒子はこのバランス状態から逸れている。このアンバランスは、例えば中間出力15の電流/電圧信号32として測定することができる。
【0058】
図4および図5に示すデバイス10の感度は、コイル13またはコイル13、18を適当な周波数(特に106〜108Hzの範囲)で共振させることにより高めることができる。これは、図6に示すように、例えば別体のLC回路を用いて適当なコンデンサを測定コイル/回路の複数のコイルと並列または直列に追加することにより実施できる。このようなコンデンサの値は、とりわけコイルのインダクタンスと所望の共振周波数から決定される。言及された周波数範囲について、容量は(例えば50nHコイルを用いて)1fF〜1μF、特に50pH〜500nF間で変更することができる。
【0059】
図6〜図10のブリッジ回路を用いることにより測定感度をさらに改善できるが、ここでは2個の差動構造の中間出力15、17間で測定が行われる。この構造を用いることによって、より高い感度および耐干渉性が達成される。図6はインピーダンスブリッジの概略図を示すが、他のタイプのブリッジ解決法も考慮することができる。図6は、共振コンデンサCR1〜CR6を配置するいくつかの可能な方法を含んでいる。これらのコンデンサの少なくともいくつかまたは全てをも用いることができる。コンデンサの容量は、コイルのインダクタンスと所望の共振周波数を根拠として用いるそれ自体は既知の方法で決定される。容量の範囲の一例は1fF〜1μF、特に50pH〜500nFである。
【0060】
このシステムの信号レベルは、例えばブリッジ測定の出力、または差動測定の出力、逆位相且つ同振幅の電流および/または電圧信号等のシステムの出力に供給することによってゼロに設定することができる。
【0061】
図7は、測定回路の簡略化した例を示すが、これは図6によるコイル配列10に適用することができる。この測定配列は、本発明による基本概念を限定する意図はなく、本発明による測定を行うことができる手段の例に過ぎないことは、当業者には明らかであろう。
【0062】
図6および図7の第1の増幅器段24は、例えばテキサス・インスツルメンツ社(Texas Instruments)製のTHS7530等の例えば低ノイズ(LNA)広帯域差動増幅器とすることができる。ノイズ排除性を最大化するために、ブリッジの駆動および/または測定側、すなわちコイル配列10を変圧器(図示しない)で浮かせることができる。増幅器24の後には、低周波ノイズおよび50Hz干渉を除去するとともに位相差測定を可能にするために直交検出を行ってもよい。
【0063】
直交検出は、ミキサ25、26を用いて、出力信号32をDDS発振器23(同相I)により形成される入力信号31の正弦およびDDS発振器27(直交Q)により形成される余弦とを混合することにより行うことができる。
【0064】
IおよびQミキサ25、26の出力は、ローパスフィルタ29.1、29.2によりフィルタリングされ、増幅され、16ビットのADC30に送られる。第3のDDS発振器33は、測定ブリッジの対称性および製造精度にもかかわらず現れる、ブリッジ10に属するコイル13、18、19、20の差分を除去するように構成されている。このフィードバックによって、振幅および位相制御等化信号34がブリッジ10の出力に供給される。信号34は、コイル配列10の影響範囲に磁性粒子がない場合にブリッジ10の出力を強制的にゼロとする。
【0065】
ノイズレベルを下げるために、またモジュール間のフィードスルーを防ぐために、回路には必要なシールドおよび電源フィルタが含まれている。また、各メインモジュールがそれ自体のレギュレータ(図示しない)を有してもよい。
【0066】
本発明の概念においては、出力信号32は、例えばブリッジ10から直接測定された生信号、または測定を可能とするためにそれ自体は既知の方法で操作された生信号であると理解すべきである。理想的なケースでは、生信号は粒子数に正比例する。ブリッジ10の非理想性によって、ブリッジ10の出力信号は一般にオフセットを有する。オフセットは較正信号34を用いて除去される。この後、増幅された信号は、粒子数に正比例する測定信号32とされ、この信号から測定を行うことができる。本発明の基本概念を変えない他の種類の信号操作も当業者には明らかであろう。
【0067】
測定コイル13および基準コイル18の両方および/または補償コイル19、20の形状および寸法の比率を(例えばコイルの平面内で)変えることにより、サンプルの配置誤差に起因する測定誤差を減らし、ひいてはシステムのロバスト性を上げることが可能となる。
【0068】
本発明によるデバイス10においては、ガルバニー接触により測定コイル13の基準が隣接する基準コイル18から直接得られるという因子にさらに留意されたい。ガルバニー接触により、測定コイル13および基準コイル18は同じ導体/構造となることができる。中間電子素子がなく純粋にコイル13、18間の直接接触であっても驚くほど干渉が除去される。例えば、基本的な構造が可能な限り対称的で統合されるように構成されていれば、低品質の部品または非対称性による誤差をなくすことができる。
【0069】
図11は、一適用例を示し、ここでは磁性粒子に起因するコイル配列のインダクタンスの変化が振幅測定として測定される。この例では、出力電圧32の振幅Aが測定コイル13および基準コイル18の中間出力15から周波数の関数として測定され、この場合には入力電圧31に対する振幅差ΔAが得られる。振幅差ΔAにより示されるインダクタンスの変化は、測定コイル13および基準コイル18に正弦波入力電圧を供給することにより電気信号に変換される。コイル13、18間のいわゆる中間出力15から測定される電圧は、コイル13、18のインピーダンスの比率(インダクタンス)から決定され、磁性粒子の数に比例する。入力信号31の周波数、すなわち出力信号32が測定される周波数は、例えばコイルシステムの共振周波数としてもよいが、他の周波数を用いることもできる。
【0070】
図11の挿入部は、図11のような状況における時間の関数としての入力電圧を示す。信号の周波数および/または位相の変化がこのような測定で発生することもあり得る。なお、この信号は正弦波である必要はなく、例えば方形波、三角波、バースト、または当業者に明らかな他の波形であってもよい。
【0071】
図12は、図11の測定方法を用いて得られる典型的な標準グラフの例を示している。測定された振幅の変化ΔAが縦軸上に示され、相対的な粒子数が横軸上に示されている。縦軸の単位は、例えばボルト(V)、電流(I)、または信号処理においてA/Dコンバータを用いる際にはビット(Bit)としてもよい。図12から分かるように、実際の測定結果は用いた対数尺度の高い線形性に従っており、測定結果の標準グラフからの偏差を示す値R2は0.99578である。
【0072】
図13は、図11の測定手順を用いて測定したサンプル中の含有CRP(高感度C反応性タンパク質)を示している。測定された振幅の変化ΔAが縦軸上に示され、磁性粒子数に比例するCRP含有量が横軸上に示されている。
【0073】
図14は、一適用例のグラフであり、ここでは振幅Aの代わりに入力電圧31および出力電圧32間の位相差Δφが測定されている。この場合にも、測定は測定コイル13および基準コイル18間(の中間出力15)から行われた。この場合も、測定で周波数および/または位相の変化が発生することがあり得る。信号は、正弦波の代わりに、例えば方形波、三角波、バースト、または当業者には明らかな他の波形でもよい。
【0074】
本発明によるデバイス10において、ほとんど理想的な基準信号を用いることが可能であり、この基準信号はサンプルからバックグラウンド(非特異的結合磁性粒子)を測定し分け、さらに、外部干渉(例えば地球の磁界)を除去する。
【0075】
上記の説明および関連する図面は本発明を例示するためのものに過ぎないことを理解すべきである。したがって、本発明は、開示されたまたは請求の範囲に記載された実施形態だけに限定されることは全くなく、添付の請求の範囲に定義された独創的な創意の範囲内で可能な本発明の多くの様々な変更および適合は当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明によるデバイスにおいて用いられるコイル構造の可能な例を示す図である。
【図2】本発明によるデバイスにおいて用いられるコイル構造の可能な例を示す図である。
【図3】本発明によるデバイスにおいて用いられるコイル構造の可能な例を示す図である。
【図4】差動コイル対が適用された、本発明によるデバイスの第1の実施形態を示す図である。
【図5】差動ループコイル対が適用された、本発明によるデバイスの第2の実施形態を示す図である。
【図6】ブリッジ測定原理が適用された、回路コンポーネントでモデル化された本発明によるデバイスの実施形態を示す図である。
【図7】図6のブリッジ測定原理を適用する測定構成の例を示す図である。
【図8】同一平面上にあるコイルでのブリッジ測定が適用された、本発明によるデバイスの第3の実施形態を示す図である
【図9】ブリッジ測定が適用され、コイルの少なくともいくつかは異なる平面上にある、本発明によるデバイスの実施形態を示す図である。
【図10】ブリッジ測定が適用され、コイルが同一平面上で列を成している、本発明によるデバイスの実施形態を示す図である。
【図11】磁性粒子に起因するコイルのインダクタンスの変化が振幅測定として測定される、適用例のグラフを示す図である。
【図12】図11の測定手順を用いて得られる典型的な標準グラフの例を示す図である。
【図13】図11における測定原理を用いたサンプルの測定の適用例を示す図である。
【図14】磁性粒子に起因するコイルのインダクタンスの変化が位相差測定として測定される、適用例のグラフを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気標識された検体の定性的および定量的測定のためのデバイスに関し、このデバイスは、試験基材に吸収されたサンプルから検体を測定するために、少なくとも1つの測定コイルとそれに接続して配列された基準コイルから形成されるコイル配列を含んでおり、このコイル配列の信号から磁気標識された検体の含有物と相関するインダクタンスの変化が検出されるように構成されている。また、本発明は、これに対応する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
例えば分析試験において、磁性粒子を測定するための数多くの方法および装置が従来技術から知られている。例えば、フィンランド特許番号第113297号は、試験基材に吸収されたサンプルから検体を測定するためのいわゆる無定位コイル配列の使用に関する着想を開示している。その中では、磁気標識された検体の含有物と相関するインダクタンスの変化を検出するためにコイル配列が用いられる。
【特許文献1】フィンランド特許第113297号
【特許文献2】国際公開WO2005/111614号
【特許文献3】国際公開WO2005/111615号
【特許文献4】国際公開WO03/076931A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のコイル技術をこのような配列に適用することは、例えば、装置の感度に関連する重大な問題を伴う。これらのいくつかの例は、コイルのループの容量性寄生電流である。別の問題はコイルの非対称性ということができ、これは例えばコイルの手動巻線により生じる。
【0004】
磁性粒子の磁性ひいてはコイルシステムにおいてそれらが作り出すインダクタンスの変化は、例えば、環境または試験基材それ自体に起因するエラー信号と比較して非常に僅かである。したがって、装置を用いて得られる測定結果には不十分な点が多い。
【0005】
加えて、従来技術による試験基材のせいで、例えば試薬が高価なために試験基材上での検体の反応の発生が非常に小規模である。したがって、デバイスに対する試験基材の配置が、例えば、誤った配置が試験結果を歪める可能性があると同時に困難な問題を生み出す。加えて、試験基材には、特に巻かれたコイル構造に関する特別な要求がある。
【0006】
国際公開WO2005/111614号およびWO2005/111615号に開示された解決法も、分析迅速試験におけるコイルデバイスの適用を知らせるものである。これらは、共振周波数の変化からインダクタンスの変化を検出することに基づいている。共振周波数の変化を測定すると、コイルのインダクタンスまたはコンデンサの容量が変化する際にLC回路の共振ピークが異なる周波数に変化する。しかしながら、コイルの低いインダクタンスが問題を生じる。あらゆる種類の寄生現象は低いインダクタンスを持ったコイルに容易に結びつく可能性があり、故にそれらはこの周波数形態で測定された信号からも区別することができる。
【0007】
国際公開WO03/076931A1号は、従来技術から知られるさらに別の測定方法を開示している。これも周波数の変化の検出に基づいている。
【0008】
様々ないわゆるSQUID型方法も知られている。しかしながら、それらの動作原理は非常に低い温度、絶対零度近傍での動作を要求する。これにより、例えばPOCT(Point of care testing)用途において装置が複雑化することになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、磁気標識された検体を定性的および定量的に測定するための改良されたデバイスおよびこれに対応する方法を提供することを目的とする。これによって、例えば室温で動作するコイル配列に基づいて、既知の装置を用いる場合よりも実質的により正確な測定情報を生成することができる。本発明によるデバイスの特徴は添付の請求項1に記載され、それに対応する方法の特徴は請求項15に記載されている。
【0010】
本発明のデバイスによれば、コイル配列の出力信号に現れる振幅および/または位相の変化からインダクタンスの変化が検出されるように構成され、これは入力信号の周波数で測定されるように構成されている。
【0011】
一実施形態によれば、誘導性リアクタンスを抵抗よりも大きくなるように増大させるために、本デバイスで用いられる測定周波数は105〜109Hz、好ましくは106〜108Hzとなるように構成されている。このような非常に高い測定周波数を用いることにより、このデバイスを用いて得られる測定結果の精度が驚くほど改善される。
【0012】
より高度に開発された一実施形態によれば、デバイスはさらにエラー信号を補償するコイル配列を含むことができ、このコイル配列はいくつかの異なる方法で形成可能である。コイル配列は、例えば環境および/または非特異的に試験基材に結合された磁性粒子に起因するエラー信号を補償するために用いることができる。基準コイルは、一方でこの補償目的に用いることもできる。それはとりわけ、試験基材に起因するエラー信号を補償するために用いることができる。なお、無論、本発明によるデバイスにおいて、基準コイルが他の機能も有しており、これに関連して言及される補償機能は他の機能を何ら排除するものではない。一実施形態による補償構成は、例えば差動コイルシステムとして実施可能である。この差動コイルシステムの一例は、インピーダンスブリッジである。その場合には、測定コイルおよび基準コイルは補償構成に関連する。
【0013】
本発明によるデバイスによって、非常に弱い磁性検体の場合でも非常に正確な測定結果が得られる。測定で適用される高い測定周波数および差動コイル構成は、デバイスが、その温度条件の観点で、室温での使用にも極めて適していることを意味している。従来の周波数測定と比較すると、本発明によるデバイスおよび方法は、測定した出力信号から容易に区別できないので寄生現象に対して感度が低く、位相差および/または振幅が入力信号の周波数で測定される。
【0014】
一実施形態によれば、デバイスは非常にエンドユーザに使い易くすることもできる。試験基材がコイル配列と相互作用するように一体化されれば、別個にコイル手段との接続設定をする必要がなくなる。サンプルを基材上に置き、測定を行えばよくなるであろう。デバイスの実施形態としては、これは特に精確にミクロサイズスケールのコイルにおいて、例えばポイントオブケア試験すなわちPOCT用途が考えられる。
【0015】
本発明によるデバイスおよび方法の他の特徴は添付の請求の範囲に記載され、達成されるさらなる利点は発明の詳細な説明に列挙されている。
【0016】
以下において、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、添付の図面を参照してより詳細に検討される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明によるデバイス10およびこれらのデバイス10に基づく測定方法によって、試験基材11から磁性粒子の量を検出することが可能である。この測定は、コイル配列13、18〜20の使用に基づいており、その動作において磁性粒子の存在が検出可能な発散を生じさせる。
【0018】
図1〜図3は、磁気標識された検体12の定性的および定量的測定のための、本発明によるデバイス10における使用に適したコイル21の簡略化された数例を示す。
【0019】
図1は、コイル21の第1の例を示し、これはデバイス10に適用可能である。この場合には、コイル構造が平面状矩形螺旋を形成し、その巻き数はここでは2である。長尺の試験基材11は全く自由に配置可能であるが、いずれにしてもコイル21に対して、より一般的にはデバイスのコイル配列に対して非対称である。この場合には、試験基材11がコイル21を横断しており、その長手方向は接点端子14、15により定められる方向に対して直角とされ、この接点端子14、15からコイルループ21が接続可能である。このようなコイル21のインダクタンスの範囲の例は略1pH〜1mH、より具体的には1nH〜1000nHであり、抵抗の範囲は略1〜100Ω、より具体的には10mΩ〜10Ω(使用される測定周波数に依存する)である。一般に、抵抗およびインダクタンス値の主な有効因子はコイルの寸法であるといえる。この場合は、所与の測定値が後述のコイル寸法に適合されている。
【0020】
図2は、デバイス10で用いられるコイル21の第2の例を示している。この実施形態が示すように、コイル21の構造は実に非常に簡単にできる。ここでは、コイルが単層の導体ループのみで形成されており、図1に示すコイル構造の簡略化されたバージョンである。導体ループは単層巻線平面コイル21を形成し、これにより試験基材11から磁性粒子12との相互接続をなすことが可能である。この場合にも、コイルループ21は、接点端子14および15から接続されるが、この例では接点端子14および15が同じ側にある。このようなコイル構造のコイルループ21のインダクタンスの範囲の一例は1nH〜20nHとすることができ、抵抗の範囲は1mΩ〜100mΩとすることができる。
【0021】
図3は、単層コイル21の構造の第3の例を示している。この場合、コイル21は上述した2つの例におけるよりもさらに簡単な構造で形成されている。この例は、コイル21が試験基材11を横断して引き出された直線導体構造、導体梁で形成することさえできることを示している。簡単な構造であるが、導体ビーム21は、電子素子に接続されれば電気回路においてコイル部品を形成するので、この構造もやはり議論の余地なくコイルである。ここでも、導体21は接点端子14、15から接続可能である。このような構造のインダクタンスの範囲の一例は100pH〜3nH、抵抗の範囲は0.1mΩ〜10mΩとすることができる。
【0022】
図4および図5は本発明によるデバイス10のいくつかの実施形態を示し、ここでは図1〜図3に示したコイル構造を適用することができる。本発明によるデバイス10では、試験基材11に吸収されたサンプルから検体12を測定するコイル配列が、導体構造で形成された少なくとも2個のコイル13、18をその基本形状に含んでおり、コイルの導体構造は例えば平面状であり互いにガルバニー的に接続されている。なお、図1〜図10は簡略化のために、デバイス10の実施に必要である、または求められ得る、回路基板22上で必要とされるであろう絶縁体や測定電子素子に関連する機器を示していない。図6はこのような全ての詳細を有する全体を示している。
【0023】
図4に示したデバイス10は、2個の平面状四角形螺旋形状コイル13、18を含んでおり、その両方が同一平面状で互いに隣り合い、直列に接続されている。コイル13は実際の測定に用いられ、測定コイル13の基準としてのコイル18が近接しており、この場合コイル18は、一方で、補償構造を形成する。測定コイル13に接続された基準コイル18は、例えば測定コイル13の同一の複製としてもよく、測定コイル13に対して対称的に整列された鏡像としてもよい。同一の複製または鏡像特性を用いることにより、コイル配列の耐干渉性が改善される。コイル13、18間の距離は、測定の観点からそれらが十分に互いに近接するように、一方で測定の観点からコイル13、18の磁界が互いにあまり相互作用しないように構成される。コイル13、18は、同じ方向に巻かれる。
【0024】
なお、測定コイル13および基準コイルは、単一の小型の全体性を形成することによって、測定コイル13および基準コイルにより形成されるコイル配列およびそれらに対して設置される試験基材11が互いに相互作用し、その出力は単一の測定信号32であり、その信号から入力信号31の周波数で測定された振幅および/または位相の変化ΔA、Δφ(デルタA、デルタファイ)から、検査される検体に関する必要な結論が引き出される。これにより、センサ10の構造および動作が簡単になる。
【0025】
この例では単一の基準コイル18を含んでいる基準コイル配列は、本発明によるデバイスにおいて互いに排除しないいくつかの異なる影響をもたらす。基準コイルの第1の機能は、自己インダクタンス、抵抗、抵抗の温度依存、および測定コイル13の容量を補償することである。一般に、コイル13自体に起因する電気パラメータおよびそれらの磁性粒子に起因しない変化の補償と言うことが可能である。コイル13、18の自己インダクタンスが同じ場合、粒子の量に比例する差分が測定コイル13の出力に現れ、このため、測定が差動であると言える。また、基準コイル18は、一方で試験基材11および/または環境に起因する誤差を補償するために用いることもでき、これは一方で配列の差動的な性質にも関連する。例えば、試験基材11で非特異的に結合された粒子、コイルの巻線および試験基材11の材料間の可能な容量性接続、ならびにサンプルと粒子とを搬送する媒体(サンプル溶液または類似物)およびコイルの巻線間の容量性接続を、試験基材11に起因する誤差として分類することができる。環境に起因する誤差の源は、例えば温度変動に起因する抵抗の変化、入力電子素子23から誘発されるエラー信号、地球の磁界、およびその他の障害である。
【0026】
試験基材11上の粒子12は、測定コイル13を用いて検出される。この測定は、いわゆる中間出力測定としてコイル13、18間の接点15から行うことが可能である。試験基材11が無粒子の場合には、接点14、16からコイル13、18に供給される交流電流信号は、中間出力15において合計ゼロとなる。コイル配列に属する測定コイル13の磁界は検出される粒子を磁化するために用いられ、この粒子は少なくともデバイス10の測定コイル13と相互作用する。磁化した粒子が測定コイル13自体の磁界を補強するので、測定コイル13はこの変化をインダクタンスの変化として見なす。測定コイル13の磁界を強化した結果として、入力信号の接地と比較され、粒子数に比例する電圧が中間出力15に現れる。これに関連して、差動接続と言うことがまさしく可能である。すなわち、出力は2つの信号間の差分である。
【0027】
故に、デバイス10のコイル配列13、18〜20は、磁気標識された検体12の含有物に対応するインダクタンスの変化を検出するために用いることができ、本発明によるデバイス10および方法では、インダクタンスの変化は入力信号31の周波数で測定されたコイル配列の13、18の出力信号32に現れる振幅および/または位相の変化ΔA、Δφから測定される。一実施形態によれば、これは測定コイル13および基準コイル18の中間出力15の振幅および/または位相の変化ΔA、Δφから測定することができる。この測定方法は、本明細書で後に述べる格別な利点を達成した。インダクタンスの変化は粒子の数および位置に比例するが、これは意図した測定結果であり、そこから試験の結果に関する結論が導かれる。本発明によるデバイスの場合には、コイル導体の特性を測定するインピーダンス/インダクタンスセンサと言うことがまさしく可能である。
【0028】
図4では、試験基材11が測定コイル13のみの上面に置かれている。あるいは、図5の実施形態に示すように、試験基材11を両コイル分岐13、18上に配置することもできる。接点端子14〜16からコイル13、18により形成される測定配列への電気的接続がある。
【0029】
図5は、差動センサループ対の第2の実施形態であり、互いに平行な2個の単一巻線平面コイルループ13、18で形成されている。この構造は図4に示した実施形態よりも若干簡単であるため、製造がより安価にできる。本実施形態では、磁性粒子12を含む試験基材11が両コイル13、18の上面に横断するように置かれる。両コイル13、18の上面に試験基材11を有するので、とりわけ試験基材11に起因する測定誤差の解消が改善される。接点端子14〜16から測定システムに接続されており、そのうちの端子15はここでも両コイル13、18に共通の中間出力である。なお、各コイル13、18は、この実施形態によらないそれ自体の接点端子14〜16を有してもよい。
【0030】
両実施形態において、測定コイル13および測定コイル13用の補償構造を形成する基準コイル18が、ひいては差動コイル配列を形成している。測定コイル13に接続して配列された基準コイル18は、測定コイル13のインダクタンス変化に相関する出力信号32の振幅Aおよび/または位相φを差動的に測定するために用いることができる。これにより、環境干渉や、特に過剰な非特異的に配置された磁性粒子に起因するエラー信号を最小限に抑える。
【0031】
デバイス10は、エラー信号用の補償構造を複数個含んでいてもよい。この構造の数および測定コイル13への接続は、それぞれのケースでの測定の変動に依存する。
【0032】
図6は、回路コンポーネントでモデル化されたデバイス10の実施形態を示し、ここでは4個のコイル13、18〜20を用いたブリッジ測定原理が適用される。複数の追加的な補償構造19、20または単数の構造およびそれらの配置(例えば、対称、重なり)は、この場合には主に環境に起因するエラー信号をなくすために用いることができる。エラー信号は、例えば電磁気機械およびデバイスに起因するほか地球の磁界にも起因することがある。加えて、ブリッジ測定は「浮遊測定」を可能にし、この測定では、信号は、他の誤差の原因になり得る接地電位と比較されない。
【0033】
この例では、補償構造は基準コイル18だけでなく少なくとも2個の追加コイル19、20を含んでいる。この場合、測定コイル13、基準コイル18、および補償構造19、20が互いに関連してインピーダンスブリッジに配列されている。また、コイル13、18〜20は互いに対して対称的にも配列されている。そのような場合、コイル13、18〜20は、例えばコイル13の同一の複製としても鏡像としてもよく、それらの特性が配列の干渉耐性を改善するために用いられる。したがって、測定コイル13、基準コイル18、および補償構造19、20は、例えばそれらのインダクタンス、抵抗および/または容量が同じ大きさでもよい。故に、それらの電気パラメータの少なくともいくつかは同じ大きさとしてよい。同一コイルの適用により、全てのインピーダンスが主として同じ大きさとなるのでブリッジ測定の感度が大幅に高められる。
【0034】
インピーダンスブリッジは、このように測定コイル13、その基準コイル18、およびそれらの補償コイル19、20で形成される。試験基材11は、例えば図8〜図10に示す方法で少なくとも測定コイル13と、この例では基準コイル18上にも配置可能である。残りのコイル19、20は補償用である。図6では、コイル13、18〜20がそれらの略等価な回路(コイルL、直列抵抗R、および並列コンデンサCp)を表すように示されている。信号源は参照番号23で示されている。
【0035】
図6は、共振コンデンサを配置するいくつかの可能な方法(CR1〜CR6)も含んでいる。共振コンデンサの配列方法の一例は、回路の入力側のコンデンサを直列に接続し、また測定側のコンデンサを並列に接続するように配列することである。コンデンサは、共通の基材22上にコイル13、18〜20とともに製造することが可能である。この利点は、信号を増大する第1の増幅段を容易に達成することである。
【0036】
ブリッジ接続では、信号32は2個の別々のコイル対間で測定される。測定コイル対13、18の中間出力15から得られる信号32は、対応する無粒子の補償コイル対19、20の中間出力17と比較されるので、差動測定と言うことも可能である。同様に、「浮遊測定」と言うことも可能である。というのは、実際の出力、すなわち測定信号32が接地電位と比較されるためであるが、これはガルバニー接点でなく例えば入力デバイス23の接地電位である。
【0037】
図8〜図10は、4コイルブリッジ測定のためにコイル13、18〜20を配置するいくつかの可能な方法を示している。図8は、一実施形態を示しており、ここでは全てのコイル13、18〜20が同じ高さにあり、マトリクス状構造とされている。この構造では、測定コイル13および基準コイル18が測定信号導体15および17について対称的に整列されている。補償コイル19、20は、同じ高さの四角形状に互いに隣り合っている。また、補償コイル19、20は少なくとも一軸について測定信号導体15、17と第1のコイル対13、18に対称的である。測定信号導体15、17を出る電流は入力信号導体14、16に入ってくる電流よりもかなり小さいために、この種の対称的配列は例えば干渉の補償において重要な更なる利点を達成する。対称的連続性は、コイル13、18〜20の影響範囲まで及ぶこともできる。コイル13、18〜20の影響範囲は、環境干渉が支配的になると終わるといえる。
【0038】
磁性粒子12を含んだ試験基材11は、両コイル13、18の上面に横断するように配置されている。入力信号導体14、16は回路カードの側に配置されており、測定信号導体15、17は、中間に2つの高さで配置されている。出力信号32は、2個の測定信号導体15、17間(図6の「出力」)で測定される。
【0039】
図9は、ブリッジ測定の別の実施形態を示している。この実施形態では、コイル対13、18、19、20が互いの上面に置かれている。一般に、層状配列と言うことができ、この配列では、コイルの少なくともいくつかが他のコイルに対して異なる高さにある。そして、同じ高さのコイル13、18は、例えば対で対称となるように互いに平行となる。重要な非特異的結合が少ない場合は、より詳細に後述するように、これらのコイル13、18〜20を単独にすることができる。
【0040】
測定コイル13および基準コイル18は、ここでも測定信号導体15、17について対称的に整列されている。入力信号導体14、16は側部にくる。図8に示した実施形態とは異なり、補償コイル19、20はここでは測定コイル13および基準コイル18の下側にある。本実施形態では、磁性粒子12を含んだ試験基材11は、両「コイルスタック」の上面に横断するように配置されている。この場合、コイル13、18〜20の積層された幾何学的配置は図8に示した実施形態よりもより良く干渉を最小限に抑える。また、本実施形態により、試験基材11上にコイルをより良好に配置することができる。これは、特に側方流動試験を用いる場合の利点である。
【0041】
図10は、ブリッジ測定の第3の実施形態を示しており、コイル対13、18〜20はここでも同じ高さにあるが、この基材では列形状となっている。同様に、測定コイル13および基準コイル18は、測定信号導体15、17について対称的に整列されている。また、この場合、入力信号導体14、16は側部から出ている。補償コイル19、20は、ここでは測定および基準コイル13、18の両側のコイルアレイの端部にある。磁性粒子12を含んだ試験基材11は、同様にコイル13、18〜20の上面に横断するように配置されている。この構造の一利点は、試験基材11に関してより良好な整列であることである。
【0042】
さらに別のブリッジ測定実施形態によれば、コイル13、18〜20はポスト上に同軸に配置することもできる。この場合、図9を参照すると、測定および基準コイル13、18の信号導体は、図9とは異なって、例えばフライス削りにより必要に応じて絶縁材料をコイル周囲から除去することができるように配設することができる。このように、測定および基準コイル13、18は、それらの周囲、例えば他の導体等よりも明らかに高くできる。例えば、図9の導体17は導体15の後方下側に配設することもできる。この構造の利点はいくつかの試験基材上により良く整列することである。
【0043】
一実施形態によれば、試験基材11は、別体の使い捨て基材22(図10)上のセンサ構造13、18〜20に一体化することもできる。その場合は、少なくとも測定コイル13は試験基材11の直近に一体化され、試験基材11に取付けられるか少なくとも非常に近接される(距離<コイル13の直径の1/10)。いずれにしろ、配列とは関係なく、試験基材11およびコイル配列、最低限測定コイル13間の相互作用接続と言うことが可能である。このようなデバイスにおいて、これに対応する試験基材11とコイル13、18との接続を行う方法も可能であり、このデバイスに対して試験基材11を着脱可能な方式とすることができる。同じ基材22上で、コイル(基準コイル18、補償コイル19、20)のいくつかまたは全ておよび/または測定電子素子の少なくとも一部または全てでさえ一体化することも可能である。一体化された使い捨て基材22は、例えばガルバニー的、容量的、または誘導的に残りの電子素子に接続することができる。
【0044】
上述した実施形態が示すように、試験基材11はコイル平面に平行(XY平面)であるだけではなくコイル平面に垂直(Z軸)にも配置可能である。試験領域は、測定コイル13を横断させることもできる(XY平面上)。
【0045】
一体化の度合いにかかわらず、本発明によるコイル配列は、通常、絶縁体または半導体上に製造することができる。このような絶縁体は、例えば、ガラス(石英)、プラスチック(FR4)、または半導体酸化物(SiO2)であってもよい。用いられる絶縁体材料は、製造技術に依存する。測定コイル13、基準コイル18、および可能な補償コイル/構造19、20は、例えば銅、アルミニウム、金、または銀等の導電性金属から作成することができるが、例えば導電性ポリマまたはドーピングされた半導体等の他の導電体からも作成できる。この構造を製造するために、例えばフォトリソグラフィ、ウェットまたはドライエッチング、ドーピング、メタライゼーション、印刷電子工学、および/または肥厚技術等の例えばマイクロマシニング方法を用いることが可能である。この構造は、例えばフライス加工等の機械加工方法を用いて作成することもできる。
【0046】
一実施形態によれば、例えば測定コイル13等のコイル配列の誘導性リアクタンスを増大させるために、デバイス10の測定周波数を従来技術の既知の測定周波数よりも高く適合させることができる。このような測定周波数の一例は、105〜109Hz、特に106〜108Hzとすることができる。デバイス10のコイル13の小さい寸法10−7〜10−1m、特に10−5〜10−3m、および高い測定周波数105〜109Hz、特に106〜108Hzでは、従来のインダクタンス変化測定デバイスおよび方法よりも優れた感度が達成される。本発明による方法では、測定はコイル配列10に供給される入力信号31と同じ周波数を用いて行われる。いくつかのケースや測定配列においては周波数が変化することもあるが、本発明のケースでは周波数が測定されないためこれは検出されない。周波数変化の代わりに、入力信号31の周波数における出力信号32の振幅Aおよび/または位相φが測定される。
【0047】
本発明の観点では、試験基材11も非常に多くの形状をとることができる。これらのいくつかの例として、いわゆる側方流動試験、ピット試験、毛細管、マイクロフルイディクスチャネル、マイクロアレイ、またはデバイス10の近傍内に測定される粒子を送り込むいくつかの他の方法がある。より多くの粒子を搬送するためには、その簡便さ、信頼性、および安価の理由から後流動試験を用いることが可能である。より少ない量の粒子および小さいセンサ搬送フォーマットから特別な配置精度(コイル13からの距離)が期待される。マイクロフルイディクスは側方試験よりも適しており、試験基材11はコイル13に接続して永久的に一体化されてもよく、これによりコイル13と試験基材11の互いに対する位置について非常に高い位置精度を可能にする。
【0048】
個々の粒子の直径は、本発明によるデバイス10を用いて規定可能であり、例えば1nm〜10μmの範囲とすることができる。特に注目されるのは、試験基材によるが、例えば直径が30nm〜10μmの範囲または特に100〜600nmの範囲の粒子塊であり、これらは例えばより小さい5〜30nmの粒子から形成されている。マグネタイトまたは対応する磁性材料の量は、例えば1ng〜1mgのオーダであり、対応するサンプル体積は例えば1nl〜1mlの範囲である。その場合、試験基材上の粒子数は1〜1012粒子の範囲、特に103〜1010(例えば側方流動試験)または1〜108(例えば小型化診断)の範囲とすることができる。一般に、粒子のサイズおよび数の最小値および最大値は、使用されるコイル配列の用途および寸法に依存する。
【0049】
測定コイル13の形状ならびにデバイス10に属してもよい他のコイルデバイス18〜20の形状は、例えば多角形(例えば、四角形、矩形、三角形、六角形)または丸形(例えば、円形、楕円形、オメガ形)、場合により螺旋状、平面状、連続的、導電性、通電導体構造とすることができる。
【0050】
本発明によるデバイス10では、少なくとも1つのコイル構造13の導体構造の少なくとも1つの寸法は、数マイクロメータから数百マイクロメータの大きさの範囲のオーダである。故に、例えば、導体の高さすなわち厚さ(および同時に絶縁間隔および巻線間隔)を10−7〜10−4m、導体の幅を10−6〜10−4mとすることができる。ここで、導体の高さおよび厚さの用語は基材22に垂直な方向を指し、幅の用語は基材22の平面に平行な方向を指す。
【0051】
デバイス10に属する各コイル13、18〜20の平面に平行なスケール(その平面の断面および/または長さおよび/または幅)は、例えば10−7〜10−2m、特に10−5〜10−3mである。これは、特に複数個の導体で形成したコイル構造のケースである。製造技術によって、平面に平行な寸法の例は3mm×3mmまたは300μm×300μmとすることができる。これに対応して、コイル13、18〜20の巻きの間隔は、例えば100μmまたは10μmとすることができる。ブリッジ構造を適用したコイル構造では、コイル13、18〜20の互いからの距離は1〜5mm、例えば1〜3mm等とすることができる。故に、一般にマクロまたはマイクロコイルと言うことが可能である。
【0052】
試験基材11のサイズおよびその反応領域は、用いる用途および粒子数に依存する。比較的多数の粒子の搬送に適した側方流動試験は、例えば3mm幅、50mm長、および数百マイクロメータ厚とすることができる。側方流動試験の試験領域の表面積は、例えば3mm×1mmまたは5mm×1mmとすることができる。このような試験では、粒子分布を例えばストリップ11の全厚さにわたって比較的一様な分布とすることができる。比較的少数の粒子の搬送により適しているマイクロフルイディクスのチャネル径は例えば約100μm、試験領域の表面積は例えば約300μm×300μmとすることができる。マイクロフルイディクスを用いて実施される試験では、粒子分布が例えば試験領域の表面か、またはその直近となる。
【0053】
コイル13、18〜20の寸法は測定システムの感度に重大な影響を及ぼす。図1〜図3に示す実施形態は、平面コイルの基本的な幾何学的配置を示す。簡略にするために、ここでは矩形コイル形状のみが示されている。他の可能なコイル形状については既に述べた。図1〜図3の実施形態におけるコイルの巻き数、長さ、厚さ、および幅は、互いに相対的に変更してもよい。コイルの電気的特性は、その幾何学的配置と寸法によって決まる。測定およびシミュレーションに基づく概算推定値がその変動値(それらに限定されない)について、インダクタンスおよび抵抗について上記されており、ここで、銅製コイルの断面積は約36μm×100μmであり、XおよびY方向のコイルの断面は2〜4mmである。これらの値から決まるインピーダンスは用いる周波数に依存する。
【0054】
以下は、本発明によるデバイス10の動作原理およびこれに対応する方法の簡単な説明である。磁性粒子12は、適当な試験基材11を用いて測定コイル13の測定領域に送り込むことができる。粒子は、コイル13の磁界の影響下でコイル13の環境の磁界を強化する。コイル13は、この影響を環境の比透磁率の変化として受ける(μr>1)。これにより、測定コイル13のインダクタンス(L0)の変化(ΔL)が引き起される。
【0055】
ΔL=L0(μr−1)
XL=ω0L0
粒子数に比例するインダクタンスの変化(ΔL)は、誘導性リアクタンス(XL)の変化(ΔXL)に起因する全インピーダンスの変化(z)として検出することができる。これにより、高い周波数での振幅Aおよび/または位相φの測定能力が向上する。LC回路もこの測定に用いることができるが、その場合も測定されるのは振幅A(y軸)であって周波数ではない。
【0056】
コイル13のインダクタンス(例えば1〜100nH)およびその変化(例えば約50fH〜50pH)は、高周波電圧の振幅および/または位相変化ΔA、Δφまたは測定コイル13に供給される電流信号31の測定によって検出することができる。信号源23により与えられる入力電圧は0.1〜10Vの間、特に0.5〜2.5Vの間で、入力電流(インピーダンス)は0.001〜10Aの間、特に0.05〜1Aの間で変更することができる。入力電圧/電流の周波数は105〜109Hzの間、特に106〜108Hzの間(例えばマイクロコイル用)で変更することができる。周波数の例としては、一マクロスケールパイロット装置における5〜20MHz、特に7〜14MHzの使用を参照すると、振幅および/または位相変化ΔA、Δφの測定は、磁性粒子に露出する前後の測定コイル13のインピーダンスおよび/または位相φの絶対値を監視することによって実施でき、この監視はコイル配列10に供給される入力信号31の周波数を用いて行われる。このような測定配列における最大の問題は外部干渉であり、これは測定結果を歪めて測定の信頼性を低下させるが、その影響は補償構造18〜20を用いて驚くほど排除することができる。
【0057】
例えば、図4および図5に示す差動構造を用いて比較を行うことができ、この構造は空の測定コイル13に起因する測定信号からの信号(コイルのインピーダンスおよび環境干渉)を離れた基準コイル18において補償するために用いられる。このような差動構造は図4に示されている。この構造では、2個の同一の螺旋コイル13、18が直列に接続され、高周波電圧または電流信号31がコイルに供給されている(上記した通常の電流、電圧および周波数の変更範囲)。理想的な状況では、両コイル13、18がインダクタンスおよび抵抗において完全に同一であると仮定することが可能である。故に、両コイル13、18にかかる電圧はコイル13、18間の中間出力15において合計ゼロとなるべきである。磁性粒子はこのバランス状態から逸れている。このアンバランスは、例えば中間出力15の電流/電圧信号32として測定することができる。
【0058】
図4および図5に示すデバイス10の感度は、コイル13またはコイル13、18を適当な周波数(特に106〜108Hzの範囲)で共振させることにより高めることができる。これは、図6に示すように、例えば別体のLC回路を用いて適当なコンデンサを測定コイル/回路の複数のコイルと並列または直列に追加することにより実施できる。このようなコンデンサの値は、とりわけコイルのインダクタンスと所望の共振周波数から決定される。言及された周波数範囲について、容量は(例えば50nHコイルを用いて)1fF〜1μF、特に50pH〜500nF間で変更することができる。
【0059】
図6〜図10のブリッジ回路を用いることにより測定感度をさらに改善できるが、ここでは2個の差動構造の中間出力15、17間で測定が行われる。この構造を用いることによって、より高い感度および耐干渉性が達成される。図6はインピーダンスブリッジの概略図を示すが、他のタイプのブリッジ解決法も考慮することができる。図6は、共振コンデンサCR1〜CR6を配置するいくつかの可能な方法を含んでいる。これらのコンデンサの少なくともいくつかまたは全てをも用いることができる。コンデンサの容量は、コイルのインダクタンスと所望の共振周波数を根拠として用いるそれ自体は既知の方法で決定される。容量の範囲の一例は1fF〜1μF、特に50pH〜500nFである。
【0060】
このシステムの信号レベルは、例えばブリッジ測定の出力、または差動測定の出力、逆位相且つ同振幅の電流および/または電圧信号等のシステムの出力に供給することによってゼロに設定することができる。
【0061】
図7は、測定回路の簡略化した例を示すが、これは図6によるコイル配列10に適用することができる。この測定配列は、本発明による基本概念を限定する意図はなく、本発明による測定を行うことができる手段の例に過ぎないことは、当業者には明らかであろう。
【0062】
図6および図7の第1の増幅器段24は、例えばテキサス・インスツルメンツ社(Texas Instruments)製のTHS7530等の例えば低ノイズ(LNA)広帯域差動増幅器とすることができる。ノイズ排除性を最大化するために、ブリッジの駆動および/または測定側、すなわちコイル配列10を変圧器(図示しない)で浮かせることができる。増幅器24の後には、低周波ノイズおよび50Hz干渉を除去するとともに位相差測定を可能にするために直交検出を行ってもよい。
【0063】
直交検出は、ミキサ25、26を用いて、出力信号32をDDS発振器23(同相I)により形成される入力信号31の正弦およびDDS発振器27(直交Q)により形成される余弦とを混合することにより行うことができる。
【0064】
IおよびQミキサ25、26の出力は、ローパスフィルタ29.1、29.2によりフィルタリングされ、増幅され、16ビットのADC30に送られる。第3のDDS発振器33は、測定ブリッジの対称性および製造精度にもかかわらず現れる、ブリッジ10に属するコイル13、18、19、20の差分を除去するように構成されている。このフィードバックによって、振幅および位相制御等化信号34がブリッジ10の出力に供給される。信号34は、コイル配列10の影響範囲に磁性粒子がない場合にブリッジ10の出力を強制的にゼロとする。
【0065】
ノイズレベルを下げるために、またモジュール間のフィードスルーを防ぐために、回路には必要なシールドおよび電源フィルタが含まれている。また、各メインモジュールがそれ自体のレギュレータ(図示しない)を有してもよい。
【0066】
本発明の概念においては、出力信号32は、例えばブリッジ10から直接測定された生信号、または測定を可能とするためにそれ自体は既知の方法で操作された生信号であると理解すべきである。理想的なケースでは、生信号は粒子数に正比例する。ブリッジ10の非理想性によって、ブリッジ10の出力信号は一般にオフセットを有する。オフセットは較正信号34を用いて除去される。この後、増幅された信号は、粒子数に正比例する測定信号32とされ、この信号から測定を行うことができる。本発明の基本概念を変えない他の種類の信号操作も当業者には明らかであろう。
【0067】
測定コイル13および基準コイル18の両方および/または補償コイル19、20の形状および寸法の比率を(例えばコイルの平面内で)変えることにより、サンプルの配置誤差に起因する測定誤差を減らし、ひいてはシステムのロバスト性を上げることが可能となる。
【0068】
本発明によるデバイス10においては、ガルバニー接触により測定コイル13の基準が隣接する基準コイル18から直接得られるという因子にさらに留意されたい。ガルバニー接触により、測定コイル13および基準コイル18は同じ導体/構造となることができる。中間電子素子がなく純粋にコイル13、18間の直接接触であっても驚くほど干渉が除去される。例えば、基本的な構造が可能な限り対称的で統合されるように構成されていれば、低品質の部品または非対称性による誤差をなくすことができる。
【0069】
図11は、一適用例を示し、ここでは磁性粒子に起因するコイル配列のインダクタンスの変化が振幅測定として測定される。この例では、出力電圧32の振幅Aが測定コイル13および基準コイル18の中間出力15から周波数の関数として測定され、この場合には入力電圧31に対する振幅差ΔAが得られる。振幅差ΔAにより示されるインダクタンスの変化は、測定コイル13および基準コイル18に正弦波入力電圧を供給することにより電気信号に変換される。コイル13、18間のいわゆる中間出力15から測定される電圧は、コイル13、18のインピーダンスの比率(インダクタンス)から決定され、磁性粒子の数に比例する。入力信号31の周波数、すなわち出力信号32が測定される周波数は、例えばコイルシステムの共振周波数としてもよいが、他の周波数を用いることもできる。
【0070】
図11の挿入部は、図11のような状況における時間の関数としての入力電圧を示す。信号の周波数および/または位相の変化がこのような測定で発生することもあり得る。なお、この信号は正弦波である必要はなく、例えば方形波、三角波、バースト、または当業者に明らかな他の波形であってもよい。
【0071】
図12は、図11の測定方法を用いて得られる典型的な標準グラフの例を示している。測定された振幅の変化ΔAが縦軸上に示され、相対的な粒子数が横軸上に示されている。縦軸の単位は、例えばボルト(V)、電流(I)、または信号処理においてA/Dコンバータを用いる際にはビット(Bit)としてもよい。図12から分かるように、実際の測定結果は用いた対数尺度の高い線形性に従っており、測定結果の標準グラフからの偏差を示す値R2は0.99578である。
【0072】
図13は、図11の測定手順を用いて測定したサンプル中の含有CRP(高感度C反応性タンパク質)を示している。測定された振幅の変化ΔAが縦軸上に示され、磁性粒子数に比例するCRP含有量が横軸上に示されている。
【0073】
図14は、一適用例のグラフであり、ここでは振幅Aの代わりに入力電圧31および出力電圧32間の位相差Δφが測定されている。この場合にも、測定は測定コイル13および基準コイル18間(の中間出力15)から行われた。この場合も、測定で周波数および/または位相の変化が発生することがあり得る。信号は、正弦波の代わりに、例えば方形波、三角波、バースト、または当業者には明らかな他の波形でもよい。
【0074】
本発明によるデバイス10において、ほとんど理想的な基準信号を用いることが可能であり、この基準信号はサンプルからバックグラウンド(非特異的結合磁性粒子)を測定し分け、さらに、外部干渉(例えば地球の磁界)を除去する。
【0075】
上記の説明および関連する図面は本発明を例示するためのものに過ぎないことを理解すべきである。したがって、本発明は、開示されたまたは請求の範囲に記載された実施形態だけに限定されることは全くなく、添付の請求の範囲に定義された独創的な創意の範囲内で可能な本発明の多くの様々な変更および適合は当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明によるデバイスにおいて用いられるコイル構造の可能な例を示す図である。
【図2】本発明によるデバイスにおいて用いられるコイル構造の可能な例を示す図である。
【図3】本発明によるデバイスにおいて用いられるコイル構造の可能な例を示す図である。
【図4】差動コイル対が適用された、本発明によるデバイスの第1の実施形態を示す図である。
【図5】差動ループコイル対が適用された、本発明によるデバイスの第2の実施形態を示す図である。
【図6】ブリッジ測定原理が適用された、回路コンポーネントでモデル化された本発明によるデバイスの実施形態を示す図である。
【図7】図6のブリッジ測定原理を適用する測定構成の例を示す図である。
【図8】同一平面上にあるコイルでのブリッジ測定が適用された、本発明によるデバイスの第3の実施形態を示す図である
【図9】ブリッジ測定が適用され、コイルの少なくともいくつかは異なる平面上にある、本発明によるデバイスの実施形態を示す図である。
【図10】ブリッジ測定が適用され、コイルが同一平面上で列を成している、本発明によるデバイスの実施形態を示す図である。
【図11】磁性粒子に起因するコイルのインダクタンスの変化が振幅測定として測定される、適用例のグラフを示す図である。
【図12】図11の測定手順を用いて得られる典型的な標準グラフの例を示す図である。
【図13】図11における測定原理を用いたサンプルの測定の適用例を示す図である。
【図14】磁性粒子に起因するコイルのインダクタンスの変化が位相差測定として測定される、適用例のグラフを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気標識された検体(12)の定性的および定量的測定のためのデバイス(10)であって、
試験基材(11)に吸収されたサンプルから検体(12)を測定するために、少なくとも1つの測定コイル(13)と該測定コイル(13)に接続して配列された基準コイル(18)とから形成されるコイル配列(13、18)を含み、該コイル配列(13、18)の信号(32)から磁気標識された検体(12)の含有物と相関するインダクタンスの変化が検出されるように構成され、
前記インダクタンスの変化を、コイル配列(13、18)の入力信号(31)の周波数で測定されるように構成された、コイル配列(13、18)の出力信号(32)に現れる振幅および/または位相の変化(ΔA、Δφ)から検出されるように構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
測定コイル(13)の誘導性リアクタンスを抵抗よりも大きくなるように増大させるために、デバイス(10)の測定周波数が106〜108Hzとされる請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項3】
デバイス(10)は、例えば、環境および/または非特異的に試験基材(11)に結合された磁性粒子に起因するエラー信号を補償するための、エラー信号を補償するコイル配列(18〜20)をさらに含む請求項1または2に記載のデバイス(10)。
【請求項4】
少なくとも基準コイル(18)が測定コイル(13)の同一の複製または鏡像である請求項1〜3のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項5】
測定コイル(13)、基準コイル(18)、および可能な補償コイル構造(19、20)が、差動コイル配列を形成するように配列される請求項1〜4のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項6】
補償コイル構造は少なくとも2つのコイル(19、20)を含み、該2つのコイル(19、20)は測定コイル(13)および基準コイル(18)に対して対称に配列される請求項3〜5のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項7】
測定コイル(13)、基準コイル(18)、および補償コイル構造(19、20)は、互いに対してインピーダンスブリッジに配列される請求項3〜6のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項8】
測定コイル(13)、基準コイル(18)、および補償コイル構造(19、20)は、少なくとも1個の電気パラメータについて同じ大きさである請求項3〜7のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項9】
インピーダンスブリッジを形成するコイル(13、18〜20)は、平面マトリクス構造である請求項7または9に記載のデバイス(10)。
【請求項10】
インピーダンスブリッジを形成するコイル(13、18〜20)は、層構造である請求項7〜9のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項11】
試験基材(11)は、コイル配列(13、18)に対して相互作用するように、デバイス(10)と一体化される請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項12】
コイル(13、18〜20)の平面方向のスケールは、10−7〜10−2m、好ましくは10−5〜10−3mである請求項1〜11のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項13】
コイル(13、18〜20)は、導体構造を形成するように配列され、導体の厚さが10−7〜10−4mおよび幅が10−6〜10−4mである請求項1〜12のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項14】
測定コイル(13)および基準コイル(18)は、測定信号導体(15、17)について対称的に整列されている請求項1〜13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
検体(12)の定性的および定量的測定のための方法であって、試験基材(11)が検体(12)を測定するために用いられ、この方法では、
サンプルが試験基材(11)中に吸収され、
試験基材(11)がコイル配列(13、18〜20)を用いて分析され、該コイル配列(13、18〜20)の信号(32)から磁気標識された検体(12)の含有物と相関するインダクタンスの変化が検出され、
入力信号(31)の周波数で測定される、コイル配列(13、18〜20)の出力信号(32)に現れる振幅および/または位相の変化(ΔA、Δφ)から、インダクタンスの変化が検出されることを特徴とする方法。
【請求項16】
コイル配列は、少なくとも1つの測定コイル(13)とそれに接続して配列された基準コイル(18)とを含み、測定コイル(13)の誘導性リアクタンスを抵抗よりも大きくなるよう増大させるために、106〜108Hzの測定周波数を用いて測定が行われる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
さらに、環境および/または非特異的に試験基材(11)に結合された磁性粒子に起因するエラー信号が補償される請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
差動コイル配列を用いて補償が行われる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
サンプルが試験基材(11)に吸収され、該試験基材(11)はコイル配列(13、18〜20)の少なくとも一部と相互作用的に一体化される請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
磁気標識された検体(12)の定性的および定量的測定のためのデバイス(10)であって、
試験基材(11)に吸収されたサンプルから検体(12)を測定するために、少なくとも1つの測定コイル(13)と該測定コイル(13)に接続して配列された基準コイル(18)とから形成されるコイル配列(13、18)を含み、該コイル配列(13、18)の信号(32)から磁気標識された検体(12)の含有物と相関するインダクタンスの変化が検出されるように構成され、
前記インダクタンスの変化を、コイル配列(13、18)の入力信号(31)の周波数で測定されるように構成された、コイル配列(13、18)の出力信号(32)に現れる振幅および/または位相の変化(ΔA、Δφ)から検出されるように構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
測定コイル(13)の誘導性リアクタンスを抵抗よりも大きくなるように増大させるために、デバイス(10)の測定周波数が106〜108Hzとされる請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項3】
デバイス(10)は、例えば、環境および/または非特異的に試験基材(11)に結合された磁性粒子に起因するエラー信号を補償するための、エラー信号を補償するコイル配列(18〜20)をさらに含む請求項1または2に記載のデバイス(10)。
【請求項4】
少なくとも基準コイル(18)が測定コイル(13)の同一の複製または鏡像である請求項1〜3のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項5】
測定コイル(13)、基準コイル(18)、および可能な補償コイル構造(19、20)が、差動コイル配列を形成するように配列される請求項1〜4のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項6】
補償コイル構造は少なくとも2つのコイル(19、20)を含み、該2つのコイル(19、20)は測定コイル(13)および基準コイル(18)に対して対称に配列される請求項3〜5のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項7】
測定コイル(13)、基準コイル(18)、および補償コイル構造(19、20)は、互いに対してインピーダンスブリッジに配列される請求項3〜6のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項8】
測定コイル(13)、基準コイル(18)、および補償コイル構造(19、20)は、少なくとも1個の電気パラメータについて同じ大きさである請求項3〜7のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項9】
インピーダンスブリッジを形成するコイル(13、18〜20)は、平面マトリクス構造である請求項7または9に記載のデバイス(10)。
【請求項10】
インピーダンスブリッジを形成するコイル(13、18〜20)は、層構造である請求項7〜9のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項11】
試験基材(11)は、コイル配列(13、18)に対して相互作用するように、デバイス(10)と一体化される請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項12】
コイル(13、18〜20)の平面方向のスケールは、10−7〜10−2m、好ましくは10−5〜10−3mである請求項1〜11のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項13】
コイル(13、18〜20)は、導体構造を形成するように配列され、導体の厚さが10−7〜10−4mおよび幅が10−6〜10−4mである請求項1〜12のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項14】
測定コイル(13)および基準コイル(18)は、測定信号導体(15、17)について対称的に整列されている請求項1〜13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
検体(12)の定性的および定量的測定のための方法であって、試験基材(11)が検体(12)を測定するために用いられ、この方法では、
サンプルが試験基材(11)中に吸収され、
試験基材(11)がコイル配列(13、18〜20)を用いて分析され、該コイル配列(13、18〜20)の信号(32)から磁気標識された検体(12)の含有物と相関するインダクタンスの変化が検出され、
入力信号(31)の周波数で測定される、コイル配列(13、18〜20)の出力信号(32)に現れる振幅および/または位相の変化(ΔA、Δφ)から、インダクタンスの変化が検出されることを特徴とする方法。
【請求項16】
コイル配列は、少なくとも1つの測定コイル(13)とそれに接続して配列された基準コイル(18)とを含み、測定コイル(13)の誘導性リアクタンスを抵抗よりも大きくなるよう増大させるために、106〜108Hzの測定周波数を用いて測定が行われる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
さらに、環境および/または非特異的に試験基材(11)に結合された磁性粒子に起因するエラー信号が補償される請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
差動コイル配列を用いて補償が行われる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
サンプルが試験基材(11)に吸収され、該試験基材(11)はコイル配列(13、18〜20)の少なくとも一部と相互作用的に一体化される請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−534641(P2009−534641A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505923(P2009−505923)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/FI2007/050211
【国際公開番号】WO2007/122293
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(503435723)
【氏名又は名称原語表記】MAGNASENSE OY
【住所又は居所原語表記】SURVONTIE 9,FI−40500 JYVASKYLA, FINLAND
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/FI2007/050211
【国際公開番号】WO2007/122293
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(503435723)
【氏名又は名称原語表記】MAGNASENSE OY
【住所又は居所原語表記】SURVONTIE 9,FI−40500 JYVASKYLA, FINLAND
【Fターム(参考)】
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